だらだら日記goo編

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人物画を描かない画家

2006-06-18 22:09:10 | アート・文化

この人の青い空の絵を観ていると、以前何度も旅した九州の広大な風土を思い出した。

こういう広大な風土には放牧されている馬が似つかわしい。

画家もそう思ったようで阿蘇や雲仙にも取材旅行に訪れたようだ。

フランス留学前は牛にこだわり、帰ってきてからは馬というなんとも面白い画家だ。

石橋美術館開館五十周年記念第二段は地元久留米の画家坂本繁二郎だ、この展覧会も気合が入っている、会場のブリヂストン美術館は普段の常設展示をすべて取りやめ、坂本繁二郎一色となっている。

初期のこの人はイギリス風景画の影響があったようだが、39歳でパリへ留学、エコールドパリの真っ只中に留学するが、ピカソなんかよりコローに関心を持ったらしい、留学時期に比較的人物画を描くが、取り上げるのが乞食だったり、家政婦だったりまあ変わっている。

帰国後は故郷の馬の絵や静物画、能面などを描くが、能面などは普通人がかぶっているところを描くだろう、しかしこの人は能面だけを描く、人は描かない。

最晩年になると月を描くが雲にかかる深夜の満月でなければいけないと変なこだわりがある。先週の高野野十郎の月とは違ってこの人の月は黄色く妖しい存在感がある。

視力を失っても絵を描いたこの人は、記憶のなかの馬と月を組み合わせて内的世界を描いたりもする。

それにしても展示133の母子馬など、なんと慈愛に満ちていることか!

この人がなぜ人物を描かなかったのかはわからないが、この人唯一の戦争画とか、初期の生活を支えるための漫画寄稿とかいろいろ展示されていて面白い。

カタログは分厚いことこの上ないが値段は二千円と良心的、石橋財団は本当にすごい。