■日刊スポーツゴルフ場計画予定地に投資ファンド系SPCが計画している群馬県最大級のメガソーラー計画では、広大な山林の樹木を伐採して、山谷を均して造成してから16万枚のパネルを敷き詰めることになっていますが、同様に、以前ゴルフ場が計画されていた山林を、ゴルフ場計画が頓挫したため、メガソーラーとして活用を図った事例が有るので、紹介します。以下、日経BPから引用します。
**********日経BPクリーンテック研究所2015/03/03 00:00
林地を切り開き10万枚のパネルを並べた杵築市のメガソーラー
急斜面での難工事に苦慮、工程ごとの所要時間は通常の3倍に
大分県杵築市にある、出力約24.47MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)が、「ハンファソーラーパワー杵築」である(図1)。
↑図1 出力約24.47MWのメガソーラー「ハンファソーラーパワー杵築」(出所:ハンファQセルズジャパン)↑
稼働済みのメガソーラーとしては、大分県で3番目に大きい規模となる。大手太陽光パネルメーカーのハンファQセルズの日本法人が、1月15日に竣工式を開催した。
杵築市山香町の約29万9940m2の山林に立地する。かつて、ゴルフ場の建設が計画されていた土地だったが、建設には至らず、メガソーラー用地として活用した。連系点は約1.5kmの距離にある。
本格的な造成をせず、山の起伏などはそのままに、約10万枚の太陽光パネルを土地なりに設置した。山肌をパネルが覆う光景はまさに圧巻である(図2)。年間発電量は、一般家庭約7190世帯の消費電力に相当する、約2500万kWhを見込んでいる。
↑図2 山の起伏に合わせて太陽光パネルが覆う。(出所:日経BP)↑
発電事業者は、ハンファQセルズジャパン(東京都港区)と、韓国ハンファエナジーの合弁によるSPC(特定目的会社)「ハンファソーラーパワー杵築」(大分県杵築市)となる。ハンファエナジーは、ハンファQセルズの子会社の発電事業者。
総工費約64億円を投じて建設した。太陽光発電システムは、三井住友ファイナンス&リース(東京都港区)、NECキャピタルソリューション、大分銀行によるリースとした。
ハンファQセルズは、太陽光パネルの販売だけでなく、発電事業にも乗り出している。杵築市のサイトは、発電事業者として稼働させた日本では3番目のメガソーラーとなった。
これまで、徳島県阿波市の出力2MWの「阿波西ソーラーヒルズ発電所」(メガソーラー探訪の関連記事)、北海道釧路市の同0.8MWの「ハンファソーラーパワー釧路発電所」が稼働している。
さらに、釧路市で約1.2MW、阿波市で約3MWのメガソーラーを建設中で、日本では、年間100MW規模で太陽光発電所を開発していく目標を掲げている。
<山の斜面を使い切る>
山の斜面に這わすように太陽光パネルを並べることで、傾斜地の土地も有効に活用し、9万7888枚のパネルを設置した(図3)。
↑図3 土地なりに9万7888枚のパネルを設置。石の古跡がある場所(下の画像の右)には設置しないなど環境に配慮(出所:上はハンファQセルズジャパン、下は日経BP)↑
これまで日本で稼働したメガソーラーは、比較的平坦な場所に、同じ向きで整然と太陽光パネルが並んでいることが多かった。今後、国内でも山林を切り開いて設置するサイトが増えてくると予想される。
「ハンファソーラーパワー杵築」は、その先駆けともいえる。建設地は、山林がほとんどで、林地開発行為の許可を取得し、一部は農地転用して太陽光発電設備を設置した。保安林に指定されていたり、石の古跡がある場所には設置しないなど、環境に配慮した。
EPC(設計・調達・施工)サービス、O&M(運用・保守)は、九電工が担っている。パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製、架台はリヒテンシュタインのヒルティ製を採用した。
ヒルティ製の架台は、角度や向きなどを調整しやすいことで知られ、今回のような斜面に合わせた設置に向く(図4、架台特集の関連記事)。
↑図4 角度や向きなどを調整しやすいヒルティ製の架台。(出所:日経BP)↑
九電工の北川忠嗣・執行役員 大分支店長によると、山の急な斜面に土地なりに太陽光パネルを並べる施工は、想定していた以上に難しいものだったという。
細かい起伏のある傾斜地での施工を、事前に図面上で正確に設計してはいるものの、実際の施工現場で調整することが多くなった。
加えて、2013年10月に着工して以降、雨による中断期間が予想以上に長くなった。
岩石が多く、基礎を変更
元々の斜面に極力、手を加えずに太陽光パネルを並べれば、造成コストを少なくできる。だが、平坦な場所への設置に比べて、施工の難易度が増すので、発電設備の据え付けコストは高くなる。造成コストを下げながら、設置コストもできるだけ抑える工夫が必要になる。
その一つとして、当初は、スクリュー型の杭基礎だけで施工する計画だった。一般的にコンクリート基礎などに比べて、調達コスト、施工コストともに下げられる。
しかし、試験的に設置してみたところ、この計画は諦めざるを得ないことがわかった。地中に岩石が多く埋まっており、スクリュー杭をねじ込めない場所が多かったからである。
結局、杭の周囲をコンクリートで固定する、「キャストイン」などと呼ばれる手法を採用した。
事前に基礎部分に穴を掘り、杭の周りをコンクリートで固めて固定するものだ。この基礎が完成するまでに、予想以上に時間を要したという。
こうした基礎工事の際に掘り出した岩石の一部は、斜面の下部に土砂や濁水が流れることを抑えるように並べた(図5)。
↑図5 埋まっていた岩石は、斜面の下部に並べた。(出所:日経BP)↑
<キャタピラー車で斜面を引き上げる>
斜面での施工は、区画ごとに、斜面の上から順に、下に向かって降りていくように作業した(図6)。まず、杭や架台、太陽光パネル、接続ケーブルといった関連資材の搬入や仮置きから、平坦な土地とは異なる。平坦な土地に設置する場合、設置する場所の近くまでトラックで資材を運び、荷台から降ろして仮置きする。
↑図6 斜面の上から下に資材を降ろしながら施工。(出所:日経BP)↑
斜面では、その方法が使えない。キャタピラーで急傾斜を登れる運搬車を使って、斜面の下から上に引き上げ、斜面の一番上に仮置きする。
その後、一番上から順に、下に向かって、資材を降ろしながら各工程を完成させていく。基礎を上から下まで作ったら、次に架台を上から下まで設置する、という具合だ。
重機を使う工程もある。一般的に、重機で通常通りに作業できるのは、15度より緩い傾斜地までという。今回は、15度以上の傾斜地も多かった(図7)。
↑図7 15度以上の傾斜地では、重機で重機を支えて施工。(出所:日経BP)↑
15度以上の斜面では、作業用の重機のほかに、もう1台、近くに重機を持ち込み、重機を重機で支えることで、安全性と作業性を確保した。
太陽光パネルなど、2人で支えて持ち運ぶ資材も多い。急斜面では、平坦な土地のように、安定して持ち運び、作業することは難しい。
資材を落としたり、機材や作業員が斜面を落下するリスクもある。そこで、作業員への留意の徹底はもとより、例えば、作業している斜面の一番上に監視者を増員し、落下などが生じた場合に、大声で注意を呼びかけるなど、さまざまな面から、安全の確保には慎重を期したという。
<延べ人数を約3万2000人に増やして工期を挽回>
こうした施工条件は予想されており、平坦な土地に建設する一般的なメガソーラーに対し、あらかじめ約1.5倍長い工程当たりの所要時間を想定していた。
しかし、実際には、1.5倍では収まらず、約3倍もかかったという。「作業性が悪いことは織り込んで施工計画を策定したが、それ以上に厳しい条件だった」(九電工の北川執行役員)。
さらに、長雨の影響が加わった。雨が降ると、斜面がぬかるみ、降りやんだ後、約2日間おいて、地面が乾燥してからでないと、重機を使えなかった。これにより施工のペースがさらに遅れた。
この遅れを取り戻すために、延べ人数約1万9000人で施工する予定が、最終的には延べ人数約3万2000人に膨れ上がった。
<30年に一度の大雨を想定>
雑草対策として、伐採した木をウッドチップに加工し、土の上に敷き詰めた(図8)。土の表面を覆って太陽光を届かなくすることで、雑草の育成を抑制する効果がある。さらに、2~3年後に、ウッドチップの上にクローバーを植える計画だ。クローバーの繁殖力の高さを生かし、他の雑草の育成を抑える効果がある。
↑図8 伐採した木をウッドチップに加工して雑草対策に。(出所:日経BP)↑
また、樹木を伐採して保水力が低下したことから、排水が重要になる。雨水は、斜面の下に作った排水溝や池を通って、調整池に流れ込む(図9)。施工前からあった調整池だけでは十分ではないため、新たに作った調整池も使って雨水を吸収する。30年に一度の大雨を想定した排水能力としているという。
↑図9 木のない斜面の排水対策で排水溝や調整池を拡充。(出所:日経BP)↑
九電工の北川執行役員は、「今回の傾斜地のメガソーラーの竣工は、今後の施工に対して自信になった」と強調する。
同社では今後、長崎県佐世保市宇久島での合計出力430MW、大分県の三井造船大分事業所内の日吉原ゴルフ場跡地の同45MWなど、傾斜地への大規模なメガソーラーの施工が相次ぐ。これらのメガソーラーには、今回得たノウハウを活用できるという。(加藤 伸一)
●発電所の概要
発電所名:ハンファソーラーパワー杵築
住所:大分県杵築市山香町大字広瀬1234-2
設置面積:約29万9940㎡
出力:約24.47MW
年間予想発電量:約2500万kWh(一般家庭約7190世帯分の消費電力に相当)
売電額:40円(税抜き)
投資額:約64億円
発電事業者:ハンファソーラーパワー杵築(大分県杵築市、ハンファQセルズジャパン(東京都港区)と、韓国ハンファエナジーの合弁による特定目的会社)
太陽光発電システムの所有者:三井住友ファイナンス&リース(東京都港区)、NECキャピタルソリューション、大分銀行
EPC(設計・調達・施工)サービス:九電工
O&M(運用・保守):九電工
太陽光パネル:ハンファQセルズ製(「Q.PRO-G3」、9万7888枚)
パワーコンディショナー:東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製(出力500kW・600V機)
着工日:2013年10月15日
売電開始日:2015年1月5日
**********
■一概に比較はできないかもしれませんが、上記のメガソーラー発電所の場合、
①山の起伏をそのままに本格的な造成をしない、
②雑草対策に伐採樹木のウッドチップ化とクローバー植生を活用、
③保水力低下による排水対策として在来の調整池の利用に加え、新規調整池の築造、
④発電事業者はパネルメーカーと同発電事業子会社のJVによるSPC、
⑤ソーラー発電システムはリースを活用、
⑥EPCは電力系電工会社が施工、
などが特徴として挙げられます。
事業責任の所在がはっきりしない日刊ゴルフ場計画地のメガソーラー計画の懸念や課題が、これらの違いから見えてくるかもしれません。
【ひらく会情報部・この項続く】
**********日経BPクリーンテック研究所2015/03/03 00:00
林地を切り開き10万枚のパネルを並べた杵築市のメガソーラー
急斜面での難工事に苦慮、工程ごとの所要時間は通常の3倍に
大分県杵築市にある、出力約24.47MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)が、「ハンファソーラーパワー杵築」である(図1)。
↑図1 出力約24.47MWのメガソーラー「ハンファソーラーパワー杵築」(出所:ハンファQセルズジャパン)↑
稼働済みのメガソーラーとしては、大分県で3番目に大きい規模となる。大手太陽光パネルメーカーのハンファQセルズの日本法人が、1月15日に竣工式を開催した。
杵築市山香町の約29万9940m2の山林に立地する。かつて、ゴルフ場の建設が計画されていた土地だったが、建設には至らず、メガソーラー用地として活用した。連系点は約1.5kmの距離にある。
本格的な造成をせず、山の起伏などはそのままに、約10万枚の太陽光パネルを土地なりに設置した。山肌をパネルが覆う光景はまさに圧巻である(図2)。年間発電量は、一般家庭約7190世帯の消費電力に相当する、約2500万kWhを見込んでいる。
↑図2 山の起伏に合わせて太陽光パネルが覆う。(出所:日経BP)↑
発電事業者は、ハンファQセルズジャパン(東京都港区)と、韓国ハンファエナジーの合弁によるSPC(特定目的会社)「ハンファソーラーパワー杵築」(大分県杵築市)となる。ハンファエナジーは、ハンファQセルズの子会社の発電事業者。
総工費約64億円を投じて建設した。太陽光発電システムは、三井住友ファイナンス&リース(東京都港区)、NECキャピタルソリューション、大分銀行によるリースとした。
ハンファQセルズは、太陽光パネルの販売だけでなく、発電事業にも乗り出している。杵築市のサイトは、発電事業者として稼働させた日本では3番目のメガソーラーとなった。
これまで、徳島県阿波市の出力2MWの「阿波西ソーラーヒルズ発電所」(メガソーラー探訪の関連記事)、北海道釧路市の同0.8MWの「ハンファソーラーパワー釧路発電所」が稼働している。
さらに、釧路市で約1.2MW、阿波市で約3MWのメガソーラーを建設中で、日本では、年間100MW規模で太陽光発電所を開発していく目標を掲げている。
<山の斜面を使い切る>
山の斜面に這わすように太陽光パネルを並べることで、傾斜地の土地も有効に活用し、9万7888枚のパネルを設置した(図3)。
↑図3 土地なりに9万7888枚のパネルを設置。石の古跡がある場所(下の画像の右)には設置しないなど環境に配慮(出所:上はハンファQセルズジャパン、下は日経BP)↑
これまで日本で稼働したメガソーラーは、比較的平坦な場所に、同じ向きで整然と太陽光パネルが並んでいることが多かった。今後、国内でも山林を切り開いて設置するサイトが増えてくると予想される。
「ハンファソーラーパワー杵築」は、その先駆けともいえる。建設地は、山林がほとんどで、林地開発行為の許可を取得し、一部は農地転用して太陽光発電設備を設置した。保安林に指定されていたり、石の古跡がある場所には設置しないなど、環境に配慮した。
EPC(設計・調達・施工)サービス、O&M(運用・保守)は、九電工が担っている。パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製、架台はリヒテンシュタインのヒルティ製を採用した。
ヒルティ製の架台は、角度や向きなどを調整しやすいことで知られ、今回のような斜面に合わせた設置に向く(図4、架台特集の関連記事)。
↑図4 角度や向きなどを調整しやすいヒルティ製の架台。(出所:日経BP)↑
九電工の北川忠嗣・執行役員 大分支店長によると、山の急な斜面に土地なりに太陽光パネルを並べる施工は、想定していた以上に難しいものだったという。
細かい起伏のある傾斜地での施工を、事前に図面上で正確に設計してはいるものの、実際の施工現場で調整することが多くなった。
加えて、2013年10月に着工して以降、雨による中断期間が予想以上に長くなった。
岩石が多く、基礎を変更
元々の斜面に極力、手を加えずに太陽光パネルを並べれば、造成コストを少なくできる。だが、平坦な場所への設置に比べて、施工の難易度が増すので、発電設備の据え付けコストは高くなる。造成コストを下げながら、設置コストもできるだけ抑える工夫が必要になる。
その一つとして、当初は、スクリュー型の杭基礎だけで施工する計画だった。一般的にコンクリート基礎などに比べて、調達コスト、施工コストともに下げられる。
しかし、試験的に設置してみたところ、この計画は諦めざるを得ないことがわかった。地中に岩石が多く埋まっており、スクリュー杭をねじ込めない場所が多かったからである。
結局、杭の周囲をコンクリートで固定する、「キャストイン」などと呼ばれる手法を採用した。
事前に基礎部分に穴を掘り、杭の周りをコンクリートで固めて固定するものだ。この基礎が完成するまでに、予想以上に時間を要したという。
こうした基礎工事の際に掘り出した岩石の一部は、斜面の下部に土砂や濁水が流れることを抑えるように並べた(図5)。
↑図5 埋まっていた岩石は、斜面の下部に並べた。(出所:日経BP)↑
<キャタピラー車で斜面を引き上げる>
斜面での施工は、区画ごとに、斜面の上から順に、下に向かって降りていくように作業した(図6)。まず、杭や架台、太陽光パネル、接続ケーブルといった関連資材の搬入や仮置きから、平坦な土地とは異なる。平坦な土地に設置する場合、設置する場所の近くまでトラックで資材を運び、荷台から降ろして仮置きする。
↑図6 斜面の上から下に資材を降ろしながら施工。(出所:日経BP)↑
斜面では、その方法が使えない。キャタピラーで急傾斜を登れる運搬車を使って、斜面の下から上に引き上げ、斜面の一番上に仮置きする。
その後、一番上から順に、下に向かって、資材を降ろしながら各工程を完成させていく。基礎を上から下まで作ったら、次に架台を上から下まで設置する、という具合だ。
重機を使う工程もある。一般的に、重機で通常通りに作業できるのは、15度より緩い傾斜地までという。今回は、15度以上の傾斜地も多かった(図7)。
↑図7 15度以上の傾斜地では、重機で重機を支えて施工。(出所:日経BP)↑
15度以上の斜面では、作業用の重機のほかに、もう1台、近くに重機を持ち込み、重機を重機で支えることで、安全性と作業性を確保した。
太陽光パネルなど、2人で支えて持ち運ぶ資材も多い。急斜面では、平坦な土地のように、安定して持ち運び、作業することは難しい。
資材を落としたり、機材や作業員が斜面を落下するリスクもある。そこで、作業員への留意の徹底はもとより、例えば、作業している斜面の一番上に監視者を増員し、落下などが生じた場合に、大声で注意を呼びかけるなど、さまざまな面から、安全の確保には慎重を期したという。
<延べ人数を約3万2000人に増やして工期を挽回>
こうした施工条件は予想されており、平坦な土地に建設する一般的なメガソーラーに対し、あらかじめ約1.5倍長い工程当たりの所要時間を想定していた。
しかし、実際には、1.5倍では収まらず、約3倍もかかったという。「作業性が悪いことは織り込んで施工計画を策定したが、それ以上に厳しい条件だった」(九電工の北川執行役員)。
さらに、長雨の影響が加わった。雨が降ると、斜面がぬかるみ、降りやんだ後、約2日間おいて、地面が乾燥してからでないと、重機を使えなかった。これにより施工のペースがさらに遅れた。
この遅れを取り戻すために、延べ人数約1万9000人で施工する予定が、最終的には延べ人数約3万2000人に膨れ上がった。
<30年に一度の大雨を想定>
雑草対策として、伐採した木をウッドチップに加工し、土の上に敷き詰めた(図8)。土の表面を覆って太陽光を届かなくすることで、雑草の育成を抑制する効果がある。さらに、2~3年後に、ウッドチップの上にクローバーを植える計画だ。クローバーの繁殖力の高さを生かし、他の雑草の育成を抑える効果がある。
↑図8 伐採した木をウッドチップに加工して雑草対策に。(出所:日経BP)↑
また、樹木を伐採して保水力が低下したことから、排水が重要になる。雨水は、斜面の下に作った排水溝や池を通って、調整池に流れ込む(図9)。施工前からあった調整池だけでは十分ではないため、新たに作った調整池も使って雨水を吸収する。30年に一度の大雨を想定した排水能力としているという。
↑図9 木のない斜面の排水対策で排水溝や調整池を拡充。(出所:日経BP)↑
九電工の北川執行役員は、「今回の傾斜地のメガソーラーの竣工は、今後の施工に対して自信になった」と強調する。
同社では今後、長崎県佐世保市宇久島での合計出力430MW、大分県の三井造船大分事業所内の日吉原ゴルフ場跡地の同45MWなど、傾斜地への大規模なメガソーラーの施工が相次ぐ。これらのメガソーラーには、今回得たノウハウを活用できるという。(加藤 伸一)
●発電所の概要
発電所名:ハンファソーラーパワー杵築
住所:大分県杵築市山香町大字広瀬1234-2
設置面積:約29万9940㎡
出力:約24.47MW
年間予想発電量:約2500万kWh(一般家庭約7190世帯分の消費電力に相当)
売電額:40円(税抜き)
投資額:約64億円
発電事業者:ハンファソーラーパワー杵築(大分県杵築市、ハンファQセルズジャパン(東京都港区)と、韓国ハンファエナジーの合弁による特定目的会社)
太陽光発電システムの所有者:三井住友ファイナンス&リース(東京都港区)、NECキャピタルソリューション、大分銀行
EPC(設計・調達・施工)サービス:九電工
O&M(運用・保守):九電工
太陽光パネル:ハンファQセルズ製(「Q.PRO-G3」、9万7888枚)
パワーコンディショナー:東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製(出力500kW・600V機)
着工日:2013年10月15日
売電開始日:2015年1月5日
**********
■一概に比較はできないかもしれませんが、上記のメガソーラー発電所の場合、
①山の起伏をそのままに本格的な造成をしない、
②雑草対策に伐採樹木のウッドチップ化とクローバー植生を活用、
③保水力低下による排水対策として在来の調整池の利用に加え、新規調整池の築造、
④発電事業者はパネルメーカーと同発電事業子会社のJVによるSPC、
⑤ソーラー発電システムはリースを活用、
⑥EPCは電力系電工会社が施工、
などが特徴として挙げられます。
事業責任の所在がはっきりしない日刊ゴルフ場計画地のメガソーラー計画の懸念や課題が、これらの違いから見えてくるかもしれません。
【ひらく会情報部・この項続く】