市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

投票終了のとたんに当選確実が報じられた前橋市長選・・・出口調査の威力まざまざ

2024-02-12 08:25:30 | 前橋市の行政問題

当選確実の報を受け、バンザイをして喜ぶ小川晶氏(中央)=前橋市で2024年2月4日午後7時34分、西本龍太朗撮影。出典:毎日新聞社


集まった支持者に敗戦の弁を述べる山本龍氏=前橋市で2024年2月4日午後7時33分、庄司哲也撮影。出典:毎日新聞社

■2月4日投開票の前橋市長選では、いつもは午後9時から始まる群馬テレビの開票速報番組で、だらだらと開票状況が進む中、解説者が時間稼ぎのコメントをしつつ、選管が中間的に出す超概算数字を画面になんども示しつつ、最後に選管の確定数値が出た段階で、当選陣営の「万歳!」のシーンと、落選候補の「不徳と致すところです」のコメントが報じられるのが常でした。

 ところが、今回の前橋市長選では、国政選挙での群馬県の自民党候補のように、投票締め切りと同時に「当確」が報じられました。出口調査で顕著な差がついたため、とは想像できますが、それでもなぜこんなに早く、という有権者がほとんどだったのではないでしょうか。

 マスコミ関係者によると、前橋市内の投票所の出口調査では、全部の地域で、新人の小川候補が優勢だったため、記者クラブで各社が情報を持ち寄って協議し、こうした異例の早期発表となったようです。

 しかも、非自民系の新人の女性候補が、自公推薦で3期目の現職候補を破ったということで、全国的にも注目されました。

■山本龍候補については、2023年9月12日に市長選への出馬を正式に表明し、10月12日に早くも公明党群馬県本部からの推薦がきまり、同月31日に自民党群馬県連からの推薦が決定し、11月14日の会見で知事の山本一太からも支援の意向が表明され、選対には自民・公明両党の県議や市議に加え、日本維新の会所属の宮崎岳志・県議も加わり、盤石との下馬評もあっただけに、真逆の結果となった原因について、政治資金パーティー券収入による裏金問題が影響したと報じられました。

 一方、当選した小川晶候補は、2023年11月26日に前橋市長選への無所属での出馬を表明し、県議選で推薦を受けた立憲民主党や国民民主党、社民党からの推薦は受けず、連合群馬や共産党系の市民団体からの支援を受けました。当初は劣勢が伝えられていたものの、立憲民主党や共産党などの支持層を固め、無党派層や自民の支持層からも支持を得て、自公が推薦する現職の山本龍を破って女性として初めて前橋市長に当選しました。

■保守王国の群馬県では、よほどのことがない限り自・公の推薦がないと当選はおぼつきません。それにもかかわらず、なぜ大方の予想を覆して、しかも相当な差で山本龍候補は敗れたのでしょうか。

 投開票から4日後に報じたNHKのリポートが参考になるかもしれません。早速見てみましょう。

**********NHK 前橋 ぐんまWEBリポート2024年02月08日
前橋市長選 保守王国・群馬に衝撃 自公推薦の現職敗戦で影響は?
 2月4日午後7時、前橋市長選挙の投票が終わったその時刻。
 「新人の小川晶氏が当選確実 自民・公明推薦の現職を破る」
 NHKはそう報じた。
 しかし、結果を待つ2人の候補の事務所ではいずれも、それに気づく人はおらず。口にするのは「うそだろ」、「本当?」、「信じられない」ということばだった。
 SNS上でも驚きの声が相次いだ。「これはすごいことだ」、「保守岩盤も揺らぎ始めたか」、「群馬での結果というところが動きを感じる」。
 自民・公明両党の推薦を受けて4期目を目指した現職が、立憲民主党など野党の議員の支援を受けた新人に敗れた今回の選挙戦。「保守王国・群馬」で起きた「前橋ショック」の背景や今後を探った。
(前橋放送局 記者 丹羽由香・田村華子/2024年1月・2月取材)
★誰にも気づかれなかった“当確”★
 当選した小川氏の事務所。NHKが「当選確実」のニュース速報を出しても気づかない。

取材スタッフから一報を聞く小川陣営の人
 現場の取材スタッフが、そのことを知らせると、驚きの表情を見せ、どよめいた。

ほどなく、沸き立つ陣営の人たち。

小川氏の当選確実を伝えるテレビ画面(山本氏の事務所)
 同時刻、山本氏の事務所。

こちらでも、自民党の国会議員や陣営幹部がテレビに駆け寄る。

「戸惑い」

心中は、その一言に尽きるのだろう。

 想定よりも早かった当確報道。小川氏は、事務所の近くで食事を取ろうとしていたということだが、連絡を受けて、慌てて箸を置き、急遽、事務所に駆けつけてきた。

当選した小川 晶 氏
「この勝利は、市民の勝利だと思う。なんとか前橋を変えたい、政治を変えたいというみなさんの思いがたくさん集まって、新しい政治の一歩を踏み出すことができた。これからみなさんと一緒に市民の力で前橋をよくしていきたい、新しいまちにしていきたい、新しい政治をつくっていきたい」
 一方、敗れた山本氏は、どこかすっきりした優しい表情で壇上に上がった。

敗れた山本 龍 氏
「私自身の力不足が一番の原因です。そしてもう1つはやはり私たちの訴えをもっともっと広く伝えられなかったこと、それも含めて私自身の不明をおわびしたい」
 組織面では“圧勝”のはずだった

 群馬の政界は“保守王国”と呼ばれるほど自民党の勢力が強く、福田赳夫氏、中曽根康弘氏、小渕恵三氏、福田康夫氏の4人の総理大臣を輩出してきた。

 現在、県内選出の自民党の国会議員は、衆議院の1区から5区の5議席。参議院の2議席も自民党が独占し、山本一太知事も、かつては自民党の国会議員だった。

 地方議会を見ても、県議会では、49人のうちおよそ7割の33人が自民党の会派に所属し、前橋市議会では、36人のうち、保守系の会派の議員を含む7割あまりの26人が、今回の前橋市長選挙で山本龍氏を支援していた。「組織」でみれば、山本氏の「圧勝」となる戦いのはずだった。実際、陣営内からは「勝てるはずの選挙だ」という声が聞かれた。それでも、小川氏に1万4000票あまりの差を付けられて敗れた。一体、何が起きたのか。両陣営への情勢取材やNHKの出口調査から探ってみたい。
★組織を固めきれず 政治資金問題も影響か★
 山本氏の大きな敗因の1つは「自民党の支持層を固めきれなかったこと」。

 投票先を支持政党別に見ると、自民党支持層で山本氏に投票したと回答した人は60%台半ばにとどまり、30%以上が小川氏に流れていた。市議会議員の7割あまりが山本氏を支援したものの、前回・4年前は保守分裂となったこともあり、陣営内には「一枚岩になれなかった」と分析する人もいた。

 私(丹羽)は山本陣営を取材していて、陣営内の「緩み」や、議員によっての支援の「温度差」、そして、街頭や遊説の時などの有権者の「反応の薄さ」を感じる場面もあった。

 3期12年の山本市政について尋ねたこちらの結果。「評価する」が64%、「評価しない」が36%。6割を超える人が評価しているにもかかわらず、「評価する」と答えた人のうちの40%あまりが小川氏に投票していた。こうした結果も、山本氏への「逆風」を裏付けるものだと思う。

 裏返して小川氏とすれば、自民党の支持層の切り崩しに成功したということになる。選挙戦で、小川氏は「保守から革新まで幅広く声を拾う」と繰り返し訴えた。また、「クリーンな政治の実現」も訴え続けた。今回の事件や、前橋市で相次いだ談合事件を踏まえたものだが、多くの有権者の共感を得たと思う。
★“前橋ショック” 今後への影響は?★
 話を山本陣営に戻そう。保守王国の県庁所在地での選挙における大敗。衆議院選挙など今後への影響は少なくないだろう。選挙戦略や政策の浸透など見直しを図るとみられる。自民党県連の幹部は、危機感を隠さない。

自民党県連 井下泰伸 幹事長
「国政の影響を受けなかったと言えばうそになると思う。市民、県民が何を求めているのか、どうしてわれわれは選ばれなかったのか、その部分をしっかり反省し、対策を講じないと、次も同じことが起こるだろう」
★小川氏 議会との向き合い方に課題★

 小川氏は、初当選から一夜明けて、前橋市役所で当選証書を受け取った。前橋市が始まった132年前の1892年以来、市長には18人が就任しているが、女性は初めてだ。
○小川 晶 氏
「多くの方からの投票だけでなく、たくさんのお祝いや期待のことばをいただき、改めて責任の重さを感じている。皆さんと一緒にしっかりスタートを切りたいと思っている」
ただ、その船出は順風満帆と言い切れない現状がある。市議会との向き合い方だ。既述のように、市議会議員の7割あまりが山本氏を支援した中で、どう独自の政策を打ち出し実現していくのかが問われる。小川氏は就任後の市議会との向き合い方について、次のように述べた。

小川 晶 氏
「政策面では、相手候補が掲げた政策と『似ている点が多い』とも言われていたので、議会ともめることはないと思っている。その中でも、進め方や議論の過程を賛成でも反対でも、皆さんに見ていただいて進めていくことが大切だと思う」
 選挙戦の取材で私(田村)が印象に残った小川氏の訴えがある。それは「選挙はあくまでも手段」ということばだ。当選することが「目的」ではなく、新しい前橋を実現するための「手段」ということだ。小川氏には、就任後も難しい市政運営が予想されるが、市政の刷新を求めた市民の声に応え、前橋、ひいては群馬に、新しい風を吹かせてほしいと思う。

**********

■群馬県の政界では、「反自民」といっても、あまりピンときません。「反自民」というと自民党以外の政党を支援するという意味になりますが、あまりにも自民党になびく県民が多いため、「反自民」という定義が明確にイメージできなくなっているからではないか、と筆者は思っています。

 一方、「非自民」という表現もあります。「非自民」というと、我が国の政治において自由民主党およびそのガス抜き役の日本共産党と共闘・連立しない立場を表します。より積極的に自民党に対抗する「反自民」とは異なり、個々の政策では是々非々の立場を取ることが多く、中道右派ないし保守ではあるものの、自民党とは同調しない立場をとろうとする場合に、「非自民」と自称するようです。

 この観点で群馬県議会の党会派別の勢力状況を見れば、一目瞭然です。
◆自由民主党(33名)
幹事長:井下泰伸
久保田順一郎 星野寛 狩野浩志 橋爪洋介 星名建市 井田泉 金井康夫 安孫子哲 須藤和臣 伊藤清 大和勲 川野辺達也 穂積昌信 松本基志 斉藤優 大林裕子 森昌彦 入内島道隆 矢野英司 高井俊一郎 相沢崇文 神田和生 亀山貴史 秋山健太郎 牛木義 追川徳信 須永聡 鈴木数成 松本隆志 今井俊哉 水野喜徳 中島豪
◆リベラル群馬(4名)
代表:後藤克己
本郷高明 加賀谷富士子 鈴木敦子
◆令明(4名)
代表:金子渡
あべともよ 井田泰彦 金沢充隆
◆公明党(3名)
代表:水野俊雄
藥丸潔 清水大樹
◆日本共産党(2名)
代表:酒井宏明
大沢綾子
◆安新会(1名)
代表:粟野好映
◆創生会(1名)
代表:丹羽あゆみ
◆群馬維新の会(1名)
代表:宮崎岳志

■本来であれば、反自民でリベラル群馬を主体に結束すべきですが、象徴的だったのは、2018年6月に国民民主党県連が正式に発足した際、県議会でリベラル群馬に所属していた当時の旧民進系県議6人の所属先は、国民、立民、無所属の3つに分裂したことでした。

 なぜなら、国民県連の結党大会に参加したのは黒沢孝行、後藤克己の両県議だけで、同年2月に立民に移った角倉邦良県議と、無所属での活動を選択した小川晶、本郷高明、加賀谷富士子の3県議は、無所属での活動を選択したからでした。

 もともと知事選では、自民党もリベラル群馬も相乗りしており、勝ち馬に乗ろうという機運が優先します。とりわけ上記の黒沢孝行などは、長年群馬県の八ッ場ダム建設計画では自民党と歩調を合わせており、本音と建て前の食い違いが目立っていました。実際、国政の動向をにらんだり、自民党の公認を得られなかったりすると、あっさりとリベラル群馬を標榜する県議も珍しくありません。

 そうした流れを組むリベラル群馬出身の小川晶候補ですから、今回の前橋市長選では、自民vs非自民という構図ではなく、山本龍vsアンチ山本龍(=小川晶)という構図となったわけです。その背景には、山本龍市長を支える「前橋地建」を談合金の元締めとする勢力と、前回立候補したものの山本龍に敗れた岩上憲司の後ろ盾の「岩上建設」を談合金の元締めにしようとする勢力とのせめぎ合いが、厳然と存在しており、前回敗れた岩上陣営が小川晶候補の支持に回ったことがうかがえます。

■実は、今回の誹謗中傷合戦と言われた市長選を象徴するかのように、選挙に絡んで、両候補の陣営に関する公選法違反行為に関するいくつかの情報が当会に提供されていました。

 山本龍候補については、買収ともとられかねない金品の配布が行われているとか、選挙事務所に看板が8枚※も掲示されているなどの情報が寄せられました。(※ちなみに選挙事務所の看板類は最大で縦横どちらでも3,500mm × 1,000mmのサイズまでの看板を3枚まで設置できます)

 一方、小川晶候補については、公示前に不特定多数の有権者に支援を依頼する郵便物に氏名の記載を依頼するチラシが相当数ばらまかれたとの情報がありました。

 いずれも、事実の確認に至らず、また、ケンカ両成敗というわけではありませんが、警察に通報しても、捜査の有無や過程、結果について教えてもらえないため、選挙戦を見守るだけとしました。これまでも、県警捜査2課からは、「なんでもいいから情報を寄せてほしい。とりわけ金品の授受に関する情報は大歓迎だ」と常日頃から言われており、当会として、本来は警察に都度通報すべきであるのは承知しています。

■こうして、保守王国の群馬県の県庁所在市の首長選において、談合体質にまみれた前橋市のかじ取りをしてきた山本龍候補でしたが、リベラルも自民もほぼ同義語と化している群馬県では、敵の敵は味方という論理で、小川晶候補に今度は自民のアンチ山本龍勢力と国民、立民、連合、共産その他が相乗りというかたちで、そしてその裏では公共事業の利権を巡るもう一つの戦いが繰り広げられた結果、開票スタート即「当確」のニュースが報じられたのでした。

 今後、談合を仕切る勢力との距離感をどのようにとっていくのか否か、「市民の勝利」を宣言した小川晶候補が、2月28日就任後の前橋市の談合体質とどのように向き合うのか、注目して参りたいと思います。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※関連報道「前橋市長選2024」
**********時事通信2024年02月04日21:53
小川氏「市民の勝利」 現職、裏金問題の影響否定―前橋市長選

前橋市長選で初当選した小川晶氏=4日午後、前橋市

前橋市長選での敗北を受け、支持者にあいさつする山本龍氏=4日午後、前橋市
 前橋市長選で新人小川晶氏(41)の勝利がテレビで報じられると事務所に歓声が上がった。政党の推薦を受けなかった小川氏は「市民の勝利だ。前橋を変えたいとの思いが集まって新しい政治の一歩を踏み出すことができた」と強調。「子育て支援や少子化対策はしっかりと大胆な政策をとっていきたい」と力を込めた。
 敗北した現職の山本龍氏(64)は支持者に「これからは前橋を愛する一市民として活動していく」と淡々と敗戦の弁。自民党派閥の裏金問題が影響した可能性を記者団に問われると、「特に関係ない。私の力不足」と繰り返した。

**********NHK News Web 2024年2月4日21:57
前橋市長選挙 野党側新人の小川晶氏が初当選 与党推す現職破る
 事実上の与野党対決の構図となった前橋市長選挙は、無所属の新人で立憲民主党など野党側の議員が支援した小川晶氏(41)が、自民党と公明党が推薦した現職を破り、初めての当選を果たしました。
 前橋市長選挙の開票結果です。
▽小川晶、無所属・新。当選。6万486票
▽山本龍、無所属・現。4万6387票
 立憲民主党、共産党、国民民主党、社民党の議員から支援を受けた元群馬県議会議員の小川氏が、自民党と公明党が推薦し、4期目を目指した山本氏を破り、初めての当選を果たしました。
 小川氏は、千葉県出身の41歳。
 弁護士で、平成23年の県議会議員選挙から、4回連続で当選し、今回、前橋市長選挙に初めて立候補しました。選挙戦で小川氏は、子育て支援策の強化やクリーンな市政の実現などを訴えました。
 その結果、立憲民主党や共産党などの支持層を固めたほか、いわゆる無党派層の支持を集めました。また、自民党の支持層からも一定の支持を集めました。
★132年前から女性市長は初★
 前橋市によりますと、市が始まった132年前の1892年以来、市長には18人が就任していますが、女性は初めてだということです。
小川氏「市民の力で 前橋をよくしていきたい」

 小川氏は、「この勝利は、市民の勝利だと思う。なんとか前橋を変えたい、政治を変えたいというみなさんの思いがたくさん集まって、新しい政治の一歩を踏み出すことができた。これからみなさんと一緒に市民の力で、前橋をよくしていきたい、新しいまちにしていきたい、新しい政治をつくっていきたい」と述べました。
★現職の山本氏「私自身の力不足が一番の原因」★

 山本氏は、「私自身の力不足が一番の原因です。もうひとつは、私たちの訴えをもっと広く伝えられなかったこと、それを含めて私自身の不明をおわびしたい」と述べました。
★投票率は前回の選挙を下回る★
 前橋市選挙管理委員会によりますと、前橋市長選挙の投票率は39.39%で、前回・4年前の43.16%を3.77ポイント下回りました。
★“保守王国” 群馬の政界で…★
 群馬の政界は“保守王国”と呼ばれるほど自民党の勢力が強く、福田赳夫氏、中曽根康弘氏、小渕恵三氏、福田康夫氏の4人の総理大臣を輩出しました。

 現在の県内選出の国会議員は、衆議院の1区から5区の5議席、参議院の2議席を自民党が独占していて、山本一太知事も、かつては自民党の国会議員でした。
 地方議会を見ても、県議会では、49人のうちおよそ7割の33人が自民党の会派に所属し、前橋市議会では、36人のうち、保守系の会派の議員を含む7割余りの26人が、今回の前橋市長選挙で山本龍氏を支援していました。

**********時事通信2024年02月04日22:09
前橋市長に小川氏初当選 自公推薦の現職4選阻む

前橋市長選で初当選した小川晶氏(中央)=4日午後、前橋市
 任期満了に伴う前橋市長選は4日投開票され、無所属新人で元県議の小川晶氏(41)が、無所属現職の山本龍氏(64)=自民、公明推薦=を破り、初当選した。同市初の女性市長となる。投票率は39.39%で、前回(43.16%)を下回った。
 小川氏は県議会で野党系会派に所属していたが、市長選では連合群馬の推薦を受けるにとどめ、無党派を強調。政党の推薦は受けずに市政の刷新や子育て支援の充実などを訴え、現職に反発する保守層にも支持を広げた。
 山本氏は、多数の業界団体からも支援を受けて組織選挙を展開。デジタル化の推進など市政の継続を訴えたが、保守分裂となった前回市長選の影響で割れた保守票をまとめきれなかった。

**********読売新聞2024年02月05日00:08
前橋市長に小川氏 初の女性、現職4選阻む…投票率39・39%で前回下回る
当選確実の知らせを受け、万歳する小川氏(中央)(4日午後7時34分、前橋市野中町で)=日野響子撮影
 前橋市長選は4日投開票され、前県議で新人の小川晶氏(41)が、4選を目指した現職の山本龍氏(64)(いずれも無所属)を破り、初当選を果たした。前橋市初の女性市長で、県内の現職首長では最年少となる。選挙戦は実質的な与野党対決となったが、3期12年に及ぶ山本市政の刷新を訴えた小川氏が競り勝った。投票率は39・39%で、2020年の前回選(43・16%)を下回った。当日有権者数は27万3592人。
 小川氏は、県議4期目の任期途中だった昨年11月に出馬を表明。推薦は連合群馬のみで、政党からの推薦は受けなかった。子育てや教育の支援を公約の柱に据え、「チェンジ前橋」を合言葉に多選を批判。「利権やしがらみのない、クリーンな政治を実現する」と主張した。
 選挙戦では、選挙カーでの遊説を中心に知名度や政策の浸透を図り、無党派層や野党支持層の支持を集めたほか、現市政に批判的な保守層の受け皿にもなった。独自候補の擁立を見送った共産党系の市民団体も、自主的に支援した。
 一方、山本氏は自民、公明両党の推薦を受け、100を超える業界団体などの支援を得て組織力を生かした選挙戦を展開。国や県、近隣市町村とのパイプや実績をアピールしたが、告示日に急きょ表明した、高齢者世帯などに3万円を支給するインフレ対策給付金などへの支持が広がらず、及ばなかった。
当 60,486 小川 晶 無新
  46,387 山本 龍 無現
(選管確定)

**********毎日新聞2024年2月5日
前橋市長選で見た相手候補への“中傷合戦” 政策本位の論戦を

当選確実の報を受け、花束を受け取る小川晶氏=前橋市で2024年2月4日午後7時35分、西本龍太朗撮影© 毎日新聞 提供
 任期満了に伴う前橋市長選は4日、投開票され、「市政刷新」を掲げた無所属新人の元県議、小川晶氏(41)が、無所属現職で3期目の山本龍氏(64)=自民、公明推薦=を破り、初当選を果たした。自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件で岸田政権への批判も影響した。北関東の県庁所在地では初の女性市長。群馬県内の女性首長は1986年の旧水上町(現みなかみ町)、2014年の安中市、23年の榛東村に続き4人目で、同村の南千晴村長が当選した当時の42歳を更新し、歴代最年少。
   ◇
 県都の人口減少は深刻だが、少子化、経済対策などで双方の公約は似通い、正面から論戦が展開されることはなかった。それなのに、激しい選挙戦を反映し、取材中に相手候補への中傷に近い批判合戦に遭遇する場面があり、その度に内心、「現代日本の県庁所在地の選挙としては昭和すぎないか」とため息をついた。「新しい政治」を掲げて初当選した小川氏にはこの際、政治のあり方を本気で変えてほしい。
 山本陣営幹部は集会で小川氏の子育て支援策に対し、「子どもを産んだことがない人が子育て、子育てと言うが、本当に分かっているのか」と批判した。当然ながら、重要なのは市長自身の経験でなく、政策の中身だ。
 共産党が候補者擁立を断念し、小川氏を支援したことにも山本陣営の批判が集中した。「共産に借りができる」「前橋に共産系市長が誕生してしまう」。小川氏を支援する保守層へのけん制とみられるが、小川氏は過去の県議選で立憲民主、国民民主両党から支援を受けた中道路線で、「共産系」は不正確だ。
 一方の小川氏の陣営でも、確認しようのないうわさ話で山本氏を批判したことがあった。中傷合戦の効果は限定的で、むしろ政治に嫌気がさす有権者の方が少なくないだろう。中傷からは脱却し、政策本位の選挙戦を根付かせるのが急務だ。【田所柳子】

**********NHK News Web 2024年2月5日17:28
前橋市長選で初当選 小川晶氏に当選証書 “責任の重さ感じる”
 前橋市長選挙で初めての当選を果たした小川晶氏に、当選証書が手渡され「改めて責任の重さを感じている。皆さんと一緒にしっかりスタートを切りたい」と抱負を述べました。
 4日の前橋市長選挙では、無所属の新人で立憲民主党など野党側の議員が支援した小川氏が自民党と公明党が推薦した現職の山本龍氏を破り、初めての当選を果たしました。
 一夜が明けた5日、小川氏は前橋市役所を訪れ、市選挙管理委員会の栗木信昌委員長から当選証書を受け取りました。

 小川氏は、報道各社の取材に対し「多くの人が投票してくれて、改めて責任の重さを感じている。皆さんと一緒にしっかりスタートを切りたいと思っている」と述べました。
 また、今回の選挙では、市議会議員の7割余りが山本氏を支援したことをめぐり、市議会との向き合い方について「政策面では、似ている点が多いとも言われていたので、議会ともめることはないと思っている。議論の過程を賛成でも反対でも、皆さんに見ていただいて進めていくことが大切だと思う」と述べました。
★立民 岡田幹事長”自民党政治への強烈な不満が招いた結果”★
 立憲民主党の岡田幹事長は、5日、記者団に対し「党本部として選挙に関与はしていないが、今の自民党政治への強烈な不満が、こういう結果を招いたと思う」と指摘しました。

**********東京新聞2024年2月6日
前橋市長に初の女性 小川さん 保守王国「裏金」で逆風

市長選当選から一夜明け、当選証書の受け取りに臨む小川晶さん(左)=前橋市役所で© 東京新聞 提供
 4日投開票された前橋市長選は、無所属新人で元県議の小川晶さん(41)が、4選を目指した無所属現職の山本龍さん(64)=自民、公明推薦=を破って初当選を決め、県都初の女性市長に駆け上がる。告示前には接戦が予想されていたが、終わってみれば約1万4千票の大差がついた。当事者らの話を総合すると、過去の選挙で生じたしこりの影響や、強者であったはずの山本陣営の誤算や油断が見え隠れする。(鈴木学、羽物一隆、小松田健一)
◆離反
 今市長選のポイントの一つは、前回選で山本さんの対立候補が立ったことで分裂した保守層の動向だった。「決して選挙に強くない」(地元県議)という山本さんにとり、保守層が一枚岩になれるかどうかは4選には不可欠の要件だった。
 しかし、山本陣営の選対幹部は「市長選で二分した戦いをしてきたので、保守の中で負けた人はこちら側に来ない。宿命的なもの」と、今も残る4年前のしこりを敗因の一つに挙げた。
 山本さんの岩盤支持層である経済界の一部にも、山本さんがデジタル政策に熱心な一方、中心市街地の空洞化や産業振興、インフラ整備で十分な成果を出していないとの不満があった。ある経営者は「立場上、小川さんをおおっぴらに応援できないが、山本さんのために動かないことが彼女のアシストになった」と指摘する。
 山本陣営からは「投票率を見ると、自民支持者で投票に行かなかった人が多いのでは。裏金問題で今回は応援したくないと思ったのではないか」との分析も出た。
 中曽根康隆衆院議員は「現体制への信頼が失われていることの一つの表れが今回の結果。保守が一つにならないと、相手がつけ込んでくれば敗れるという証しになった」と、自戒を込めて語った。
◆誤算
 自民派閥の政治資金パーティーをめぐる「政治とカネ」の問題で逮捕者も出て自民に逆風が吹いても、衆院小選挙区と参院県選挙区を自民が独占する保守王国・群馬県で影響は限定的なはずだった。山本さんは地元地方議員の大半と多数の業界団体を押さえ、圧倒的な組織力も誇った。
 基本的な政策にも決定的な差異はない。唯一警戒しなければならなかったのは、多選批判の文脈から小川陣営が掲げた「市政刷新」のスローガンだったが、「小川さんへの風は感じなかった」と山本陣営幹部は振り返る。
 しかし、地殻変動は少しずつ進んでいた。
 昨年末、共産系市民団体が独自候補擁立を見送り、小川さんの応援を打ち出した。年が明けて1月13日、共産党の演説会に小川さんがメッセージを寄せたことに、山本さんは自身のX(旧ツイッター)に「共産党と連携する政治に前橋を任せられない」と投稿。
 小川さんは約1時間後に「他の団体や地域の行事にも同じ内容でお送りしています」と反論する書き込みを投稿した。
 告示半月前になり、現職が仕掛けたネガティブキャンペーン。小川陣営幹部の一人は「有権者は不快に思い、逆効果だったのでは」とみる。
 小川さんも4日夜、勝利への分岐点の一つにこれを挙げた。「市民党」を掲げ、特定政党からの推薦、支援を受けなかった一方、批判も抑制した小川さんとの対比が鮮明になった。
 また、小川陣営の選対幹部は、選挙戦序盤に山本さんが「やや優勢」とされた世論調査の結果が報じられ、危機バネが働いたと振り返る。「陣営が引き締まり、もう一押しとなった」
  ◇ 
 市長選と同じ日程で行われた市議補選(被選挙数2)は、無所属の元職と維新の新人が当選した。
◇前橋市長選 確定得票
当 60,486 小川晶 無新<1>
  46,387 山本龍 無現 
◇前橋市議補選確定得票(被選挙数2-候補3)
当 43,363 林倫史 無元
当 31,558 小川栄治 維新
  21,792 吉原大輔 共新

**********日経2024年2月8日19:42
群馬・山本知事「事業の継続を」 前橋市長選で新人当選

定例記者会見をする群馬県の山本一太知事(8日、前橋市)
 群馬県の山本一太知事は8日の定例記者会見で、4日投開票の前橋市長選挙で新人の小川晶氏が当選したことについて「頑張っていただきたい。(現職の)山本龍市長時代に生まれた事業は、ぜひ継続していただきたい」と述べた。
 県と前橋市は市街地整備やデジタル事業など多くの分野で連携している。「前橋との関係はこれからも重視していきたい。連携してきたことはそのまま進められたらいい」と話した。
 山本知事は4選を目指した現職の山本龍氏を応援していたが、「(小川氏に対して)抵抗感はない。新しい市長との関係を大事にしていきたい」と語った。

**********産経新聞2024年2月9日
与野党対決初の敗北に「衝撃」 前橋市長選で現職応援の知事「自民党本部、重く受け止めて」

前橋市長選を振り返る山本一太知事=8日、群馬県庁(県提供)© 産経新聞
 無所属新人候補が自民、公明の推薦する現職候補を破った前橋市長選(4日投開票)について、現職の応援に入った群馬県の山本一太知事は8日の定例会見で、有権者の厳しい判断について「群馬において『与党対野党』の戦いで与党が敗れるということは一度もなかった」と、衝撃を受けたことを吐露した。そのうえで、「県連も自民党本部も重く受け止めていただきたい」と語った。
 当選した元県議の小川晶氏(41)については、「政策面では現職とあまり差はなく、県議としても優秀な方だったので今後は協力してやっていきたい」とする一方、「街づくりやデジタル化など全国からフロントランナーとみられていた前橋の施策は、維持してもらいたい」と語った。
 市長選の構図として、自民党支持層の4割近くが小川氏に流れたとの報道機関の分析結果も示しつつ、保革対決といった形ではなく「やはり小川さんの好感度や人気の高さが大きかった」と分析した。一方で、「それでも与党候補が野党系候補に敗れるというのは、私の知る限り群馬において一度もない」とし、自民党本部が同日投開票された「京都市長選へのコメントだけで、前橋市長選に言及がないのは危機感が足りない」と指摘した。
 京都市は自民、立民、公明、国民が推薦する元内閣官房副長官の松井孝治氏が制したが、共産党の支援を受けた新人候補と大接戦を演じたことを挙げ、「松井さんは候補として最高なのに、あの結末は尋常じゃない」。同様に激戦だった八王子市長選も挙げ、有権者の厳しい視線について「自民党に長年在籍した者として、もっと危機感をもって取り組んでいただきたい」と語った。
 前橋市長選で敗れた山本龍氏(64)に対しては「この4年、コロナや豚熱対応など大変なことを一緒にこなしてきたし、先進的政策も残してこられたが、有権者にはよく伝わっていなかった。伝わらなければ意味がないということを今回、身に突きつけられた」と振り返った。
**********

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

官製談合の温床・・・前橋市で繰り返される談合の連鎖の背景となっている構造的体質

2022-11-05 01:48:24 | 前橋市の行政問題

もはや定例化した感のある前橋市長はじめ同市幹部らの謝罪会見風景。4日夜前橋市役所にて(出典:上毛新聞社)
■前橋市はこれまでに何度も官製談合事件で、全国に名を馳せています。先日10月に米子市で開催された全国オンブズマン大会で、恒例の2021年度全国県庁所在地市・中核市の落札率分布表、すなわち談合疑惑度ランキングで、前橋市は66の市のうち、堂々の15位にランクインしました。ちなみに高崎市も17位で、群馬県勢が同年も高位置を占める形となりました。そうした中、またもや県都前橋市で、官製談合事件が発生。同市民はもとより、群馬県民の間ではまたか、との声がしきりと上がっております。それもそのはず、市長自ら特定の業者と癒着しており、その市長が、官製談合事件が起きるたびに「官製談合原因究明調査委員会」なるものを設置し、そこに副市長を任命し、その人間が官製談合のリード役を務めていたというのですから、もはや手のほどこしようのない体たらくであることがわかります。
 さて、今回の官製談合事件の報道をさっそく見てみましょう。

**********NHK News Web 2022年11月04日18:13
前橋市発注の水道管工事入札めぐり談合か 元副市長ら逮捕

 おととし6月、前橋市が発注した水道管工事の入札をめぐり、市内の業者に落札させるため予定価格を漏らしたとして、前橋市の元副市長が、業者の社長とともに4日、官製談合防止法違反の疑いなどで逮捕されました。警察は2人の認否を明らかにしていません。
 逮捕されたのは、前橋市の戸塚良明元副市長(72)と市内に本社がある「上武工業株式会社」の山崎正社長(62)です。
 警察によりますと、元副市長は、おととし6月、市が発注した前橋市粕川町での水道管工事の入札をめぐり、予定価格を漏らして山崎社長の会社に落札させたとして、官製談合防止法違反と入札妨害の疑いが持たれています。
 この工事は指名競争入札で行われ、あわせて10社が参加しましたが、予定価格の2305万円余りに対し、山崎社長の会社が、税込みで2255万円と予定価格に近い額で落札していたということです。
 警察は捜査に支障があるとして2人の認否を明らかにしていません。
 戸塚元副市長はおととしから副市長を務めていましたが、先月31日、「一身上の都合」として、辞任していました。
 警察は、元副市長が水道事業を管理する市の「公営企業管理者」を務めていた際に社長と知り合ったとみて、事件の詳しいいきさつを調べることにしています。
 逮捕された戸塚元副市長は、昭和48年に前橋市の職員になり、市の商工部長や教育委員会の管理部長などを務めたあと、平成23年に定年退職しました。
 その後、平成24年から6年間、市の水道局を統括する市の公営企業管理者を務め、おととしに副市長に就任しました。
 前橋市役所では去年も、当時の課長補佐が官製談合防止法違反などの疑いで逮捕され、その後、有罪となっていて、元副市長は事件の調査委員会の委員長を務めていました。
 元副市長は先月、一身上の都合として、副市長を辞任していました。

 前橋市の元副市長が逮捕されたことを受けて、前橋市の山本龍市長は4日夕方、記者会見を開き、「大変驚いている。市民の信頼を裏切ることになり、厳正に対処していきたい。市民に大きな不安を与えたことを心からおわび申し上げる」と謝罪しました。
 その上で、元副市長が先月末に辞任した経緯について、「一身上の都合で、病気と聞いていた」と述べ、今後、市としても今回の事件の事実関係を調査する考えを示しました。

**********NHK New Web 2022年11月05日06:51
談合疑いで逮捕の前副市長 携帯電話で予定価格伝えたか 前橋

 前橋市が発注した水道管工事の入札をめぐり、予定価格を業者に漏らし落札させたとして、前の副市長が4日逮捕された事件で、警察は当時、入札の情報を知りうる立場だった前副市長が、業者側に携帯電話で予定価格を漏らしていたとみて詳しく調べています。
 前橋市の前の副市長、戸塚良明容疑者(72)はおととし6月、市が発注した水道管工事の入札をめぐり、市内に本社がある会社に予定価格を漏らして落札させたとして、この会社の社長の山崎正容疑者(62)とともに、官製談合防止法違反などの疑いで4日逮捕されました。
 4日夜、前橋市役所には群馬県警の捜査員およそ30人が捜索に入り関連する資料を押収しました。
 警察は捜査に支障があるとして2人の認否を明らかにしていません。

 市によりますと前副市長は当時、担当分野の一定金額以上の入札について決裁をする立場で、警察はこの工事についても入札情報を知りうる立場だったとみています。
 また警察によりますと前副市長は以前、市の水道事業を管理する役職だった際に社長と知り合ったとみられ、予定価格は携帯電話で伝えていたとみられるということです。
 警察は、2人が関係を深めたいきさつなどについて調べを進めることにしています。

**********上毛新聞2022年11月5日(土)06:01
入札改革の「主導役」 前橋市の元副市長逮捕 官製談合容疑 先月末に「一身上の都合」で辞職

前橋市役所に家宅捜索に入る群馬県警の捜査員=4日午後7時40分
 前橋市が2020年に発注した水道工事で予定価格を漏らしたなどとして、群馬県警捜査2課と前橋署は4日、官製談合防止法違反と公契約関係競売入札妨害の疑いで、同市の元副市長の男(72)と業者社長の男を逮捕した。元副市長は市職員が21年に逮捕された贈収賄事件を受け、市が設けた原因究明調査委員会のトップを務めた。10月末に「一身上の都合」で副市長を任期途中で辞職していた。
 県警は、工事の発注に関する権限を持つ担当副市長として、水道工事の価格情報を知り得る立場だったとみて、金銭の授受を含む業者との利害関係について詳しく調べる。
 業者社長の男(62)は土木や水道、衛生設備の工事を請け負う。県警は捜査に支障があるとして、2人の認否を明かしていない。
 2人の逮捕容疑は共謀して20年6月上旬ごろ、市発注の水道工事の指名競争入札で、予定価格が2305万6千円(税込み)であることを漏らし、同26日に同社に2050万円(税抜き)で落札させて入札の公正を害した疑い。同市粕川町深津から女渕にかけての配水管の敷設替工事で、他に9社が応札していた。
 市によると、元副市長は1973年に同市に採用され、商工部長や市教委管理部長などを務めた。定年退職後に協同組合前橋生鮮食料品総合卸売市場長、市公営企業管理者などを歴任。2020年4月に4年の任期で副市長に就いた。
 県警は、工事の資料を見て予定価格を把握し、携帯電話を使って口頭で業者社長に伝えたとみている。当時、市は工事の予定価格を非公表としていた。公営企業管理者となった12年以降に、仕事上の接点から業者社長と知り合ったとみて調べを進める。
 山本龍市長は4日午後に緊急会見を開き「大変驚いている。大きな不安を与えたことをおわびする。事実だとすれば市民の信頼を裏切ることになる。厳正に対処したい」と陳謝。事件や捜査については承知していなかったとした。
 市役所には同日午後7時40分ごろ、県警の捜査員約30人が家宅捜索に入った。副市長室などで関連資料を押収したとみられる。

***********テレ朝2022年11月5日(土)06:05
前橋市の前副市長ら逮捕 予定価格漏らし官製談合か
 前橋市が発注した水道管の工事を巡り、予定価格を事前に業者に漏らしたとして、前橋市の前の副市長と業者の社長が逮捕されました。
 戸塚良明容疑者(72)は前橋市の副市長だったおととし6月、市が発注した水道管工事の指名競争入札で秘密事項である予定価格を上武工業の社長・山崎正容疑者(62)に漏らして落札させた疑いが持たれています。
 この工事の入札には10社が参加していて、市の予定価格が約2305万円なのに対し、山崎容疑者の会社は2255万円と予定価格の97.8%の額で落札していました。
 戸塚容疑者は先月31日、「一身上の都合」として副市長を辞任していました。

**********毎日新聞2022年11月4日20:02(最終更新11月4日20:03)
前橋市の前副市長、入札情報漏えい容疑で逮捕 配水管工事巡り

前橋市役所=前橋市で2019年2月22日、菊池陽南子撮影
 前橋市が発注した配水管工事の指名競争入札を巡り、予定価格を業者側に漏らして落札させたなどとして、群馬県警は4日、前副市長の戸塚良明容疑者(72)=同市上佐鳥町=と同市の水道工事会社「上武工業」社長、山崎正容疑者(62)=同市岩神町3=を官製談合防止法違反と公契約関係競売入札妨害の疑いで逮捕した。県警は2人の認否を明らかにしていない。
 逮捕容疑は2020年6月、市が発注した配水管工事の指名競争入札について、当時副市長だった戸塚容疑者が予定価格を山崎容疑者に漏らし、同社に予定価格に近い2050万円で落札させ、公正な入札を妨害したとしている。
 県警によると、入札には上武工業を含めて10社が参加していた。戸塚容疑者は電話で山崎容疑者に予定価格を伝えていたという。戸塚容疑者は市公営企業管理者となった12年以降に山崎容疑者と知り合ったとみられ、受注の見返りに金品の授受がなかったかなどを調べている。
 戸塚容疑者は市商工部長などを経て20年から副市長を務め、「一身上の都合」を理由に10月31日付で辞任していた。【西本龍太朗】

**********読売新聞2022年11月05日10:29
官製談合の調査委員長だった副市長、「一身上の都合」で突如辞職…4日後に逮捕
 前橋市発注の工事の入札で予定価格を漏らしたなどとして、同市の元副市長・戸塚良明容疑者(72)(前橋市上佐鳥町)らが4日、群馬県警に逮捕された。同市では昨年、贈収賄と官製談合が発覚し、市が調査委員会を設置したが、戸塚容疑者は委員長に就いていた。癒着の根深さが改めて浮かび上がった格好だ。

戸塚良明容疑者
 官製談合防止法違反と公契約関係競売入札妨害の両容疑で逮捕されたのは、戸塚容疑者と、前橋市の土木工事会社「上武工業」社長(62)。
 発表によると、2人は共謀のうえ、2020年6月26日に行われた市の公共工事の指名競争入札で、戸塚容疑者が予定価格を上武工業社長に漏らし、同社に予定価格に近い価格で落札させ、公正な入札を妨害した疑い。県警は2人の認否を明らかにしていない。
 工事内容は同市粕川町での配水管の敷設。入札には10社が参加し、同社は2050万円(税抜き)で落札した。予定価格は2305万6000円(税込み)で、落札率は97・8%だった。県警は、戸塚容疑者が市公営企業管理者に就いた12年4月以降に2人が知り合い、携帯電話でやりとりをしていたとみている。
 入札に参加した建設会社の男性社長は、業者間の会合などで2人とよく顔を合わせた。男性は戸塚容疑者の印象を「何度か顔を合わせたが、とても良い人。談合していたなんて信じられない」と語り、上武工業社長については「根回しは一切しない人だと思っていた」と話した。
 戸塚容疑者は亜細亜大を卒業して1973年に前橋市役所に入り、商工部長や教育委員会管理部長などの重要ポストを歴任した。2012年4月に市公営企業管理者に就き、18年3月まで6年間務めており、ここで上武工業社長と接点ができたとみられる。
 同市では、契約監理課の課長補佐が官製談合防止法違反容疑などで昨年4月に逮捕され、前橋地裁は有罪判決を言い渡した。戸塚容疑者は、事件を受けて市が設置した「官製談合原因究明調査委員会」の委員長に就き、今年2月に再発防止策などに関する意見書を山本龍市長に提出していた。

前橋市役所の捜索に入る県警の捜査員ら(4日午後7時41分)
 戸塚容疑者は20年4月から副市長を務めていたが、今年10月31日、一身上の都合を理由に突然辞職した。
 山本龍市長は4日夕、戸塚容疑者らの逮捕を受けて市役所で緊急の記者会見を開き、「市民に大きな不安を与え、心からおわび申し上げる。事実だとすれば、市民の信頼を裏切ることになり、厳正に対処していく」と話して謝罪した。
 山本市長は、昨年の事件を受けて市が設置した調査委員会の委員長を戸塚容疑者が務めたことについて「重く受け止めている」と話したが、戸塚容疑者が副市長として工事や入札を所管していたとして、「それ以外の選択肢はなかった」と述べた。
 市は昨年の事件を受けた再発防止策として、予定価格を事前に公表し、調査委員会の意見書に基づき、公共工事は原則として指名競争入札をなくし、一般競争入札にすることにした。山本市長は今回の事件を受けて対策を強化するか聞かれると、「十分な体制が整っているので、考えていない」と話した。
**********

■この事件から、次のことを感じました。

①群馬県警は、オンブズマンが告発した事件は受理すらしようとしませんが、独自に入手した事件情報は、警察の手柄となるため、今回のような事件には積極関与すること。
②前橋市は官製談合問題についての対応を、「官製談合原因究明調査委員会」なるもっともらしい組織をでっちあげて、泥棒をリーダーにして任せたこと。つまり談合防止対策をドロボーにやらせたこと。
③前橋市は、公費を乱用したあげく強制わいせつで逮捕されそうになった職員に退職を勧め、本人が退職金を受け取った後、起訴されても、支払った退職金について、とりもどしたのか否かについて、情報すら開示しないこと。つまり、ドロボー職員に対して寛大なこと。


 このように、泥棒が泥棒を裁く状況が続く限り、いくら「官製談合原因究明調査委員会」なるものを形式的に設置しても、茶番劇に終わることは明らかです。

■ それにしても山本龍市長は、官製談合が明るみに出るたびに、謝罪していますが、なぜ公取委に報告して、真相解明と責任明確化、そして再発防止を本気でやろうとしないのでしょうか。今回の事件でも、群馬県警捜査2課と前橋署による事件の捜査について「承知していなかった」と11月4日午後の緊急会見で述べています。

 公正取引委員会では、入札談合事件について厳正に対処するとともに、その未然防止を図っており、発注機関の実施する入札談合等関与行為防止法(いわゆる官製談合防止法)・独占禁止法の研修等に同委員会の職員を講師として派遣しています。なぜ、前橋市は公取委に講師派遣を求めないのでしょうか。それよりもまず、相変わらず繰り返される官製談合の温床をなくす決意を固め、公取委に報告しようとしないのでしょうか。

 公取委のHPを見ると、「入札談合等関与行為防止法」は、国・地方公共団体等の職員が談合に関与している事例、いわゆる官製談合が発生していた状況を踏まえ、発注機関に対して組織的な対応を求め、その再発を防止するために制定されたものであり、平成15年1月6日から施行されています。

 また、その後、平成18年に職員による入札等の妨害の罪の創設等を内容とする「入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律の一部を改正する法律案」が第164回通常国会に提出され、平成18年12月、第165回臨時国会で成立し、平成19年3月14日から施行されている、とあります。

 
 今回の事件の真相解明を県警に委ねるのではなく、公取委にも報告して指導を受けることが強く望まれます。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

公園市有地をタダで神社に利用させて住民監査で勧告を受けても最小限しか対応しない前橋市の無策行政

2022-09-21 10:15:21 | 前橋市の行政問題

前橋公園に隣接する前橋東照宮の周辺整備状況図。住民訴訟を契機に著しい改善が見られる

■県庁と裁判所の近くにある前橋公園は、群馬県庁舎、前橋市庁舎、地方裁判所の近くに位置しており、江戸時代前橋藩の城内の一角を占めています。春の桜のシーズンには花見客でにぎわうこの公園で、とんでもないことが起きていました。

 今回ご紹介する前橋市を巡る行政事件では、一級建築士の資格をお持ちの原告住民が弁護士に頼らず本人訴訟のかたちで原告として前橋市を相手取り住民訴訟を提起しました。当会は、たまたま4月22日(金)午前10時30分に当会が群馬県知事山本一太を相手取り住民訴訟を係争な行方不明建設残土量に係る損害賠償請求事件(通称「渋川残土問題事件」。事件番号:令和元年(行ウ)第13号)の第14回口頭弁論のため、前橋地裁第21号法廷に出頭した際、この事件を知りました。

 なぜなら開廷票に、続いて午前11時から住民監査請求に対する措置対応不服請求事件(事件番号:令和3年(行ウ)第11号)として、前橋市民のかたが、前橋市長山本龍を相手取り、住民訴訟をしていることが記されていたからです。

*****21号法廷(本館)開廷表*****
令和4年4月22日 金曜日
●開始/終了/予定:10:30/11:00/弁論
○事件番号/事件名:令和元年(行ウ)第13号/行方不明建設残土量に係る損害賠償請求事件
○当事者:小川賢/群馬県知事山本一太
○代理人:―――/紺正行
○担当:民事第2部合議係 裁判長 杉山順一
             裁判官 兼田由貴
             裁判官 竹内 峻
             書記官 近藤亜由美

●開始/終了/予定:11:00/11:30/弁論
○事件番号/事件名:令和3年(行ウ)第11号/住民監査請求に対する措置対応不服請求事件
○当事者:■■■/前橋市長山本龍
○代理人:―――/紺正行
○担当:民事第2部合議係 裁判長 杉山順一
             裁判官 兼田由貴
             裁判官 竹内 峻
             書記官 近藤亜由美

●開始/終了/予定:11:30/12:00/弁論
○事件番号/事件名:令和3年(ワ)第98号/損害賠償請求事件
○当事者:平形真理/吾妻広域町村圏振興整備組合
○代理人:羽鳥正雄/田中善信
○担当:民事第2部合議係 裁判長 杉山順一
             裁判官 兼田由貴
             裁判官 竹内 峻
             書記官 近藤亜由美
●開始/終了/予定:13:10/17:00/弁論(本人及び証人尋問)
○事件番号/事件名:令和元年(ワ)第581号/必要費償還等請求事件
○当事者:株式会社上毛新聞TR/株式会社ヤマダホールディングス
○代理人:坂入高雄/高根和也
○担当:民事第2部合議係 裁判長 杉山順一
             裁判官 板野俊哉
             裁判官 竹内 峻
             書記官 近藤亜由美
**********

 さっそく当会の事件の審理が終わった後、当該事件を傍聴しました。裁判長は同じく杉山順一裁判長で、被告席にいるのも、当会が係争中の渋川残土問題の被告群馬県の訴訟代理人の紺正行弁護士が、引き続きで法廷内に陣取っています。

杉山裁判長「この件については第1回以降、弁論準備を4回行いましたので、そこでしていただいた主張それから書面提出については、当裁判所は把握しておりますので、弁論準備の結果を陳述するということでよろしいでしょうか?」

原告・被告「はい。」

杉山裁判長「で、前回確認させていただいたように、以上で双方に主張ないと言うことで判断してよろしいですね?」

原告・被告「はい。」

杉山裁判長「以上で弁論を終結いたします。判決言渡しは7月15日(金)、13時5分から、21号法廷でとさせていただきます。」

■弁論後、原告住民ご本人にヒヤリングを申し入れたところ、当会の活動についてもよくご存じでした。

 ヒヤリングに快く応じていただいた、この事件の原告で地元前橋市在住のかたは、かつて建築業界では官民を問わず、数々のプロジェクトに携わったことのある著名な方です。リタイヤ後も、大学の教壇に立って建築分野の人材育成に尽力し、それも定年になると自治会の仕事を手伝うようになり、地元自治会の副会長を務める中で、今回の不正に直面しました。原告住民によれば、「弁護士に相談しても、市を相手にやる事件の依頼は、皆断わられてしまった。私は、東京で仕事をしていたころ、設計盗作などの被害にあい著作権訴訟も手掛けたことがあったが、費用や事案が面倒なのは事実。弱ったなと思いつつ、仕方がないので本人訴訟でやろうと決めた」ということです。

 原告住民の説明によると、事件の舞台は、裁判所のすぐそばにある前橋公園で、裁判長には、歩いて2分なので、昼休みにでも足を運んでほしいと願ったが、一度も見に来られた様子が見えない、とのことです。

 この前橋公園の北側の一角に東照宮という神社があります。原告住民は、地元自治会の活動を通じて知ったのでしょう。市との境界線をはみ出して、神社の建物が建っていることがわかったので「これはまずいね」ということで、監査請求を前橋市長に一昨年10月頃提出しました。

■監査委員の監査結果によると、「これは市として分かっていることであり、毎年5年ごとに東照宮と覚書を交わして、市との間で了解していることである」としたうえで、「しかし、市との境界からはみ出している事実が確認できたので、この部分に対して、最小限の費用で貸し出すこととする」(注:下線部は当会追記)という勧告が記されていました。

 この監査結果を見た原告住民は、「最小限」という表現に違和感を抱き、「それは何なのか?」と疑問がわきました。なぜなら、前橋市住民として監査請求を出したのも「最小限の義務」を果たしたからです。この場合、「最小限」というのは、必要最小限という意味であり、決して、いい加減な結果を想定したわけではありません。

 そこで、必要最小限の情報として、原告住民は前橋市に「神社とは、どのような契約をしたのか?」と尋ねたのですが、前橋市は一向に教えてくれません。原告住民は、監査結果の勧告とそれに対する前橋市の対応が、自分が求めていたものとかけ離れていたため、不服事件ということで訴状提出に踏み切りました。監査請求に対して市が措置をとったものの、それが請求した者にとって不服であるということで、事件名を「監査請求措置対応不服事件」としました。

 なお後日分かったことですが、当該覚書には境界線を明確にするための垣根などをつくることも約束していたのです。監査では覚書の内容について明確にしていませんでした。

■この事件は、前橋市の市有地と東照宮の私有地との間の境がハッキリしていないことが、発端で起きました。それと同時に、東照宮が、境を超えて市の土地を私物化していました。この実態を調査した原告住民は、地元自治会の住民のみなさんに前橋公園と神社の境をきいてみたところ、あまりにもあやふやな認識に驚き、「実際に法律上はこうなっているよ」と説明すると、「それじゃあ、この生け垣はとっぱらってもらおう」と、住民訴訟の必要性に共感して、当初は原告住民に加えて多数の住民による連名で訴状を提出することも検討しました。

 ところが、不服事件は監査請求をした当人しか出せないことが判明し、やむなく原告住民一人で提訴に踏み切りました。

■前橋市は、東照宮と覚書や契約を交わしていましたが、このことについて、原告住民が市会議員に聞いても誰も何も知らないことが分かりました。山本龍市長ですら知らないため、もしかしたら、現場の前橋公園事務所と東照宮の間で勝手に契約などを結んでしまったのではないか、ということも想像できます。実際に、市会議員に聞いてみても、「ちっぽけな契約だから、目くじらを立てるまでもない」という認識のようです。

 しかし原告住民は、「これは市民にとっては大変な問題であり、例えば通常、市が管理する道路などでは、市の財産とみなされる。こういう市の財産を勝手に市の一部局の、しかも課長以下の係長クラスが、しかも市会議員に報告しないで内緒に進めていたと言うのはおかしいのではないか」と疑問を抱きました。

■前橋市役所と言えば、飲酒運転の常習犯や、不倫、文書偽造は日常茶飯事、果ては強制わいせつまでしでかした管理職や、ストーカー殺人で全国的に名をはせた職員など、ユニークな職員を何人も抱えていたことで知られています。原告住民は、この事件を巡り、被告前橋市が法廷で弁論するのを聞いているうちに、「前橋市行政は、最終弁論まで、市民の立場に全く立とうとしないまま、自分の都合のいい主張ばかり終始した。私は原告として被告に対し、近隣住民、自治会とか公園利用者の視点から訴えてきた。しかし、被告は市民に奉仕するべき立場と視点をないがしろにしている」と痛感させられました。

 原告住民は、被告の提出した準備書面において、「被告前橋市は、市民に奉仕するべき立場と視点が著しくかけている」と一貫して主張しました。そしてこれに対する前橋市からの反論もないまま、弁論準備が終わりました。弁論の形態としては、最初の第1回弁論は公開でしたが、以降の4回の弁論はすべて弁論準備として非公開で開かれました。その結果、上記のやり取りのように、第5回目となる4月22日の公開の場での弁論で結審したわけです。

■原告住民は、住民訴訟の弁論を指揮した裁判所に対しても疑問を感じる、と言います。弁論準備のなかで、裁判所から事務連絡で、たとえば「原告の主張は、たとえば会計に関わることではないのではないか?」と釈明を求めてきました。「どうも、裁判所は行政に忖度しているようだ」という疑問がずっと付きまといました。当会も長年にわたる住民訴訟の経験から、「そうなんです。だから(裁判所は)レフェリーではないんです」と感想を述べました。

 原告住民は、弁護士についても疑問を抱いています。知り合いの東京の弁護士に訴状の案を見せて聞いてみたところ、「これ負けるね」と言われました。原告住民は、それでも「負けても良いが記録が残れば」と、気を取り直して、住民訴訟に踏み切らなければと思いました。そしたら、裁判が進行するに伴い、被告前橋市は、ずるずると準備書面段階で、当初の主張を変えてきました。「原告の主張は取り入れたから、非難される根拠はない」と言いはじめたのでした。要するに、「お金(の問題)が済んだから、問題となる事象は存在しない」という論点なので、役所のいつものやりかたです。

 当会も「弁護士に法律的な解釈の相談を1時間5500円はらって相談するのはよいのですが、訴訟代理人として行政訴訟業務を委任するのに30万円を支払っても、弁護士は行政に忖度するので、必死になってやってくれません。だから本人訴訟を選択した貴殿の判断は正しいですよ」とコメントを差し上げました。

■原告住民は、前橋公園の地図(冒頭の写真参照)を示して、当会に以下の説明をしてくれました。

「ここにほら、さっき言った境界です。こっちが、市の土地。本来はね。ところが、こういうところに生け垣をこういうところに作ったりしたから、どうみてもこっち側がこの神社の土地に見えるんですよね。それはもう明らかにね。だってここに門まであるから。しかも鳥居が市の敷地に建っているから。そしたら、誰も指摘しなかった。だから私が『これはおかしい』と、弁論準備の段階で主張したんです。すると市は『じゃ、つい最近鳥居はもう撤去しましたから、だからあなたの指摘したところは根拠を失っていますよ』と言い始めたんです。市は『何か訴えられたのでそのとおりにしました。だから訴えはもうないですね』という言い分ですが、でも、そういう意味ではないですよね」

 当会は、「それは行政訴訟で、裁判所と弁護士が結託して、原告に必ずと言ってよいほど持ち出してくる定番の論理です。訴えの利益がないとか、訴訟資格はないとか、彼らの常とう手段です」とコメントしました。

 原告住民はさらに裁判で前橋市の主張についての疑問点を示しました。

「あと、こういうのが会計上にあたるか、ということ。市の言い分では、『東照宮の賃貸料を決めているのは、これは公共事業と公益事業と同じ、まあ、いわゆる利益追求ではないので安く貸し出す』というのですよ。実際に東照宮は、ここ(越境ゾーン)で喫茶店をやっている。だから事業として、公益事業かもしれないが神社付属の喫茶店であれば営利事業となるはず。これは営利事業の条件で貸し出すべきだと言っています。1.5%で貸し付けているが営利なので2.6%で算定すべきだと。こういう事業なのに、前橋市の課がやっているんです。このことも問題ですが、それよりも、これまで50年経っている状況なので、違法な建築物は壊させるべきです。しかも、耐震上問題のある建物なのに、それを東照宮が勝手に建ててしまい、境界線からはみ出ていたことが公になったため、東照宮が市に『だから(市有地を)貸してくれ』というのは、本末転倒ではないか、と原告として主張しました。」

「ところが市は『代々50年前からここはそういう条件で覚書が作っている』と弁明してきました。5年ごとに覚書を交わしているというが、口約束も同然。しかも市は『今度はあらためて覚書を作った』と言い始めたんです。『じゃあ、それを見せてくれ』と市に要請したら、市は今度『これを全部、令和7年になったら売る』と言ってきました。市は、東照宮とそういう覚書を交わしていることが判明しましたが、議会にも知らせないままで、市の財産を勝手に売るなど、到底考えられないことです。しかも、既に全部測量を済ませて売るための準備をしていました。裁判でそれがバレたから、もうストップになったんです。こういうことで最終的に、(公園内にあった)鳥居も生け垣も全部撤去されました。おかげで、今年の4月、市内外の皆さんは、桜見物でここを自由に楽しそうに歩いていました。その光景を私も観察していて、『ああこれで良かったな』と感慨を覚えました」

■原告住民は、マスコミに対しても不信感を募らせています。

「こういう住民訴訟を提起したら、最初に、上毛新聞の記者が取材に来ました。『あなたが提出した訴状を見せてほしい』というので、こちらは素直だから、すぐに見せました。その後も、裁判資料を求められるままに見せたが、その後、さっぱりフォロー記事を書いてくれない。むしろ市側に忖度しているのかも…」

 ちなみに上毛新聞は、2021年8月17日に『市の対応に不服 男性が住民訴訟 前橋東照宮巡り』と題して小さく記事を掲載しました。それ以前には、2021年1月21日にも『東照宮が半世紀無償利用 前橋の公園市有地 監査委が市に是正勧告』という記事を掲載しています。上毛新聞が行政側に軸足をおく報道をしがちなことは、当会もなんども経験しております。現場の記者の皆さんは、熱心に取材してくれるのですが、結果的にそれが紙面の掲載されない原因は、デスクとよばれる編集長が、バイアスのかかった編集判断をするためであることは、これまでの経験から当会も承知しています。

■原告住民は、8か月間の住民訴訟を振り返り、感慨深げに感想を述べておられました。

「だから、私はたぶんこの裁判では負けるとは思うが、負けても実を取れたからね。素晴らしい成果が上がったと思っています。なにしろここが、散策路として取り戻せたのだから。ぜひこのあと広々した公園の現場を見てきてください」

「それにしても、市の答弁書には呆れますね。原告の請求の趣旨に対して、『全面的に棄却する。訴訟費用は原告の負担とする』などと平然と記してきます。それについても、なぜ行政が反省もせず、根拠も示さず反論してくるのでしょうね。しかも我々の税金で、弁護士を雇って対抗してきます。それで訴訟して敗訴したら、かかった費用はまた払えというのでは、かないません。自分では多分負けると思っているので…」

 当会は原告住民の方に「住民として裁判に負けても、これまで何十回もやって一度も勝ったことがありませんが、住民訴訟で敗訴しても訴訟費用を請求されることはまずないので、安心してください」とお伝えしました。

■最後に原告住民の方がおっしゃったのは、次の見解でした。

「今回訴訟という手段をとらせてもらいましたが、裁判をしないと、こういう役所内部の書類が表に出てきません。裁判に踏み切ったからこそ、出てくるわけです。おかしなことに、情報公開請求だと絶対出てきません。これは、私にとっても初めての経験です」

 ということで、同じ経験を持つ当会としても、非常に共感に値するコメントです。結びとして原告住民が語ったのは次の感想です。

「でも7月15日の判決ではおそらく負けるとしても、当初はね、なんか原告の私の方を、軽視する感じだったんですよ。それが、だんだんやっていくうちに裁判所のほうも『なるほどなあ』と聞く耳を持ってきてくれたので、敗訴判決が言い渡されるでしょうが、どういう判決が出るのか楽しみです」

■たった一人で、しかも地元自治会の副会長として、その財産を守るという強い意志を持って、いい加減な前橋市行政を質そうとした原告住民の熱意と努力は、まさにオンブズマン活動のエッセンスを凝縮して体現した結果であり、今後とも、互いに必要に応じて連絡を取り合うことで同意しました。

 そして、ついに7月15日の判決日を迎えました。午後1時5分前に地裁に着き、玄関から入って2階の21号法廷に行くと、エレベーターロビーや廊下で大勢の関係者がたむろしていました。傍聴席にも結構大勢の人を見かけました。

 まもなく定刻の午後1時5分になり、杉山裁判長が陪席裁判官2名を連れて入廷してきました。全員起立して一礼し着席すると、近藤書記官が「令和3年行ウ第11号」と事件番号を読み上げました。そして、杉山裁判長が「それでは判決言渡しをいたします。主文のみでございます。1、本件訴えを却下する。2、訴訟費用は原告の負担とする」と言い終わるなり、法定を退出していきました。その間、わずか30秒足らずでした。

 原告住民に「この間はどうも」と挨拶をしました。原告住民は「だいたい、こうなるかなと思っていました」と判決の感想を述べました。続けて「でも実際は、勝訴したようなものです」とおっしゃいました。書記官から判決文の写しは3階で交付されると告げられたので、一緒に3階の民事第2部の窓口に向かいました。

 原告住民が、判決文の写しの交付を受けている間、エレベーターホールのベンチで待っていると、思いもかけず、原告住民の奥様から声をかけていただきました。筆者は思わず、自らの経験から「奥様の理解があったからこそ、ご主人はここまで裁判を続けることができたのだと思います」とコメントを述べました。奥様も「これ(住民訴訟)をやらなければ、今の公園整備は全然実現しなかったんですよ。おかげでだいぶ良くなりました。それと、裁判をやっていなければ、いろいろな資料は手に入りませんでした」と、ご主人と同じように住民訴訟の意義を理解しておられました。

 判決文はかなりの分量でしたので、後日コピーを電子ファイルでお送りいただくことにして、原告住民ご夫妻とお別れしました。

■7月26日に判決文を送っていただいたので、さっそく拝読しました。

*****7/15判決文*****
令和4年7月15日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和3年(行ウ)第11号 住民監査請求に対する措置対応不服請求事件
口頭弁論終結日 令和4年4月22日
          判         決
  前橋市大手町3丁目6番12号
       原       告     ■   ■       ■
  前橋市大手町2丁目12番1号
       被       告     前   橋   市   長
                     山   本       龍
       同訴訟代理人弁護士     紺       正   行
       同 指 定 代 理 人      狩   野       健
       同             石   原   則   之
       同             風   間   健   一
          主         文
        1 本件訴えを却下する。
        2 訴訟費用は原告の負担とする。
          事 実 及 び 理 由
第1 請求の趣旨及び原因
 1 本件訴えの請求及び原因は、別紙の訴状(写し)、令和3年6月4日付け回答書(写し)及び訴状訂正申立書(写し)に各記載のとおりであり、要するに、本件訴えは、前橋市が前橋公園の用地となっている土地(以下「本件公園用地」という。)を所有及び管理し、宗教法人東照宮(以下「前橋東照宮」という。)が本件公園用地に隣接する土地(前橋東照宮の境内地。以下「本件境内地」という。)を所有しているところ、前橋市の住民である原告が、前橋市の執行機関である被告を相手方として、①被告が、前橋市が前橋東照宮に対して本件公園用地の一部を賃貸する旨の契約(以下「本件賃貸借契約」という。)に係る契約書(以下「本件契約書」という。)及び前橋東照宮が前橋市から令和7年3月31日を期限として上記の一部の士地を買い取る旨の合意(以下「本件合意」という。)に係る覚書(以下「本件覚書」という。)の原告に対する開示を違法に怠っていると主張して、地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項3号の規定に基づき、当該怠る事実が違法であることの確認を求め(以下「本件訴え①」という。)、②前橋市が前橋東照宮との間で本件賃貸借契約及び本件合意を締結することは政教分離原則に違反し違法であると主張して、同項1号の規定に基づき、本件賃貸借契約及び本件合意の締結の差止めを求め(以下「本件訴え②」という。)、③前橋市が前橋東照宮との間で本件公園用地と本件境内地との境界と管理に閲する契約の締結を違法に怠っていると主張して、同項3号の規定に基づき、当該怠る事実が違法であることの確認を求め(以下「本件訴え③」という。)、④前橋市が本件境内地内に前橋公園を利用する者が車両で進入可能な園路があること及び前橋公園内の駐車場も利用可能であることを表示する看板の設置を違法に怠っていると主張して、同項3号の規定に基づき、当該怠る事実が違法であることの確認(以下「本件訴え④」という。)を求めた住民訴訟であると解される。
 2 前提事実(争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)
  (1) 当事者等
   ア 原告は、前橋市の住民である。
   イ 被告は、前橋市の執行機関である。
   ウ 前橋市は、普通地方公共団体であり、本件公園用地(前橋市大手町3丁目600番1の土地及びその周辺の土地)を所有し、同士地を前橋公園として管理している。
   エ 前橋東照宮は、宗教法人であり、本件公園用地と隣接した本件境内地(前橋市大手町3丁目13番1、同2及び同3の各土地)を所有している。
     なお、同土地上には、前橋東照宮が管理する本殿、拝殿、社務所(以下「本件社務所」という。)等の建物があり、本件社務所の一部が本件公園用地」に存在する。
  (2) 原告の住民監査請求
    原告は、令和2年10月21日、前橋市監査委員に対し、同日付け「前橋市職員措置請求書」と題する書面(乙1)により、住民監査請求をし、同月26日、同日付け「前橋市職員措置請求書・補正書」と題する書面(乙2)により、上記の住民監査請求の内容を補充した(これらを併せて、以下「本件住民監査請求j という。」、その内容は、要旨、次のとおりである。
   ア 前橋市は、前橋東照宮に対し、無償で本件公園用地の一部を使用させており、同土地の適正な管理を怠っている。
   イ 前橋市は、前橋東照宮との間で、上記アに記載の本件公園用地の一部の使用に係る賃貸借契約又は売買契約を締結し、前橋東照宮にその正当な対価を支払わせるべきである。
   ウ 本件公園用地と本件境内地との境界が不明瞭であり前橋市民にとって不便であるから、前橋市は、本件公園用地の財産管理を徹底して境界を明確化すべきである。
  (3) 住民監査請求に対する監査結果
    前橋市監査委員は、 上記(2)の本件住民監査請求を受け、令和2年12月16日頃、同請求のうち、本件社務所の一部が本件公園用地に越境している部分については理由があるものと認め、その余の請求を監査の対象外ないし棄却するとの判断をし、原告に対し、同日頃、その旨の通知をした。また、同委員は、同月18日頃、被告に対し、法242条5項の規定に基づき、①本件公園用地に本件社務所が越境している部分について、適切な財産管理に資する措置を講ずること、②本件公園用地の利用実態に鑑み、当該越境部分を前橋市が確保し続ける必要性について検討した上で、必要に応じて本件公園用地の一部の売却又は有償貸付を検討するなど、長年にわたる懸案事項の解消に努めることなどを勧告した。(甲1)
  (4) 前橋市の措置
    上記(3)の勧告を受け、前橋市は、令和3年3月15日付けで、前橋東照宮との間で、本件公園用地について、本件社務所の建物の一部が越境している部分があるところ、その部分を含めた最小限の土地を普通財産に変更した後、前橋東照宮に対して賃貸する旨の土地賃貸借契約(本件賃貸借契約)を締結するとともに、前橋東照宮が令和7年3月31日を期限として同土地の買取りを行う旨の合意(本件合意)を締結した(甲2、3)。
    前橋市監査委員は、令和3年3月19日頃、原告に対し、法242条9項の規定に基づき、同日付け「前橋市職員措置請求に係る監査結果に対する措置について(通知)」と題する書面(甲3)により、上記の措置内容を通知した。
  (5) 本件訴えの提起
    原告は、令和3年4月12日、本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。
 3 争点
  (1) 本件訴えの適法性(本案前の争点)
  (2) 財務会計上の行為又は怠る事実の違法性の有無
 4 争点及び当事者の主張
  (1) 争点(1)(本件訴えの適法性)について
   (原告の主張)
    本件訴え①及び本件訴え②の対象は「契約の締結・履行」であり、本件訴え③及び本件訴え④の対象は「財産の管理を怠る事実」であるから、法242条1項所定の財務会計上の行為又は怠る事実に該当し、いずれも住民訴訟として適法である。
   (被告の主張)
   ア 本件訴え①は、前橋市が本件契約書及び本件覚書の開示を怠っている事実が違法であることの確認を求めるものであるが、住民監査請求の前提がされていないから、不適法である。
   イ 本件訴え②は、本件賃貸借契約及び本件合意の締結の差止めを求めるものであるが、本件賃貸借契約及び本件合意の締結は既に完丁しているから、訴えの利益は消滅しており、不適法である。
   ウ 本件訴え③は、前橋市が前橋東照宮との間で本件公園用地と本件境内地との境界と管理の契約の締結を怠っている事実が違法であることの確認を求めるものであるが、住民監査請求の前提がされていないから、不適法である。
   エ 本件訴え④は、前橋市が看板の設置を怠っている事実が違法であることの確認を求めるものであるが、①看板の設置は、法242条1項所定の財務会計上の行為又は怠る事実のいずれにも該当しないこと、②請求の趣旨に含まれていないこと、③住民監査請求の前提がされていないことから、不適法である。
  (2)争点(2)(財務会計上の行為又は怠る事実の違法性の有無)について
   (原告の主張)
   ア 本件訴え①について
     被告は原告に対して本件契約書及び本件覚書の関示をせず、これを怠っているが、被告のかかる行為は違法である。
   イ 本件訴え②について
     本件公園用地は守られるべき市民の財産であるにもかかわらず、本件賃貸借契約及び本件覚書の内容は市民に不利で前橋東照宮に有利なものであり、同土地を普通財産に変え、前橋東照宮に売却することは不当であるから、差し止められるべきである。
   ウ 本件訴え③について
     本件公園用地と本件境内地との境界は、近隣住民及び公園利用者の視点からすると不明瞭のままであるから、前橋市は、前橋東照宮との間で、①本件公園用地と本件境内地との境界に柵や看板を設置して明確にすること、②本件公園用地内に存在する鳥居(以下「本件鳥居」という )を本件境内地内に移築すること及び③本件境内地内に園路(本件境内地と本件公園用地とを行き来するための通路)があることを表示することを内容とする「境界と管理に関する契約」を締結すべきであるのに、これを怠っていることは違法である(第2回弁論準備手続調書参照)。
   エ 本件訴え④について
     前橋市は、前橋公園の利用者に対し、本件境内地の北側にある道路(主要地方道前橋・安中・富岡線)から車両が進入可能な園路があることや本件公園用地内の駐車場も利用可能であることを表示する看板を設置すべきであるのに、これを怠っていることは違法である
   (被告の主張)
   ア 本件訴え①について
     本件契約書及び本件覚書は、前橋市の情報公開条例に規定する行政情報に該当すると考えられ、原告は、被告に対し、同条例の規定に基づき、当該行政情報の公開の請求を行うことができるのであるから、本件契約書及び本件覚書の公開に係る不作為について違法はない。
   イ 本件訴え②について
     本件賃貸借契約及び本件合意の内容は、前橋市監査委員の勧告に沿うものであり、前橋市民等の便益や前橋公園の価値を減少させるものでもない。また、前橋市が、前橋東照宮に対し、本件公園用地の一部を有償で使用させることは、政教分離の原則に直ちに反するものではない。
   ウ 本件訴え③について
     本件公園用地と本件境内地との境界に柵や看板を設置して明確にすべきとの点については、前橋市は、本件公園用地における本件境内地との境界付近において、園路のカラーペイント塗装の施工、車止めの設置、生垣の撤去等を既に実施し、さらに境界を明確にするために縁石の施工を行うなどし、境界管理を明確化している。
     本件公園用地内に存在する本件烏居を本件境内地内に移築すべきとの点については、前橋東照宮は、令和3年12月17日に本件鳥居を既に撤去しているから、原告の主張はその前提を欠くものである。
     本件境内地内に園路があることを表示すべきであるとする点については、本件境内地内に園路は存在しないから、原告の主張はその前提を欠くものである。
   エ 本件訴え④について
     上記ウに記載のとおり、本件境内地に園路は存在しないから、原告の主張はその前提を欠くものである。
第2 当裁判所の判断
 1 争点(1)(本件訴えの適法性)について
  (1) 本件訴え①について
    本件訴え①は、被告が原告に対して本件契約書及び本件覚書の開示を怠っている事実が違法であることの確認を求めるものであるところ、弁論の全趣旨(第2回弁論準備手続調書参照)によれば、被告は、令和3年11月19日頃、原告に対して本件契約書及び本件覚書を開示したことが認められ、もはや違法確認の対象である怠る事実が存在しないから、木件訴え①は、住民訴訟の類型に該当しない訴えとして、不適法であるというべきである。
  (2) 本件訴え②について
    本件訴え②は、本件賃貸借契約及び本件合意の締結の差止めを求めるものであるが、差止めの訴えにおいて差止めの対象とした行為が完了すれば差止めの余地がなくなるからかかる訴えは不適法になると解されるところ、前提事実(4)で認定したとおり、前橋市と前橋東照宮との間における本件賃貸借契約及び本件合意の締結は、令和3年3月15日頃に既に完了しているから、本件訴え②は、不適法であるというべきである。
  (3) 本件訴え③について
   ア 原告は、前橋市において、前橋東照宮との間で、①本件公園用地と本件境内地との境界に柵や看板を設置し明確にすること、②本件公園用地内に存在する本件島居を本件境内地内に移築すること、③本件境内地内に園路(本件境内地と本件公園用地とを行き来するための通路)があることを表示することを内容とする「境界と管理に関する契約」を締結しないことが、違法に財産の管理を怠るものである旨の主張をする。
   イ 上記ア①を内容とする契約を締結しないことについて
    (ア) 法242条の2に定める住民訴訟は、地方財務行政の通正な運営を確保することを目的とし、その対象とされる事項は、法242条1項に定める事項、すなわち公金の支出、財産の取得・管理・処分、契約の締結・履行、債務その他の義務の負担、公金の賦課・徴収を怠る事実、財産の管理を怠る事実に限られるのであり、これらの事項はいずれも財務会計上の行為又は事実としての性質を有するものである。そして、上記の住民訴訟の目的に照らせば、これらの事項のうち「財産の管理」とは、当該財産の経済的価値に着目し、その価値の維持・保全を図る財務的処理を直接の目的とする財務会計上の財産管理行為をいい、「財産の管理を怠る事実」とは、そのような財務会計上の財産管理行為を怠る事実をいうと解するのが相当である(最高裁昭和62年(行ツ)第22号平成2年4月12日第一小法廷判決・民集44巻3号431頁参照)。
    (イ) これを本件についてみると、原告は、前橋市において、前橋東照宮との間で、本件公園用地と本件境内地との境界に柵や看板を設置して明確にすることを内容とする契約を締結すべきである旨の主張をする。しかし、このような柵や看板の設置は、前橋公園の利用者等の便宜を図ることを目的として、同公園の施設を整え、公共の用に供するという公園管理行政の見地からする公園行政担当者としての行為ないし判断であって、これらの行為ないし判断に係る契約の締結が、前橋公園や本件公園用地の財産的価値に着目し、その価値の維持保全を図る財務的処理を直接の目的とする行為ということはできないから、上記ア①の内容の契約を締結しないことの違法を確認する訴えは、住民訴訟の類型に該当しない訴えとして、不適法であるというべきである。
   ウ 上記ア②を内容とする契約を締結しないことについて
     原告は、前橋市において、前橋東照宮との間で、本件公園用地内に存在する本件鳥居を本件境内地内に移築することを内容とする契約を締結すべきである旨の主張をする。しかし、弁論の全趣旨(第3回同弁論準備手続調書参照)によれば、本件公園用地内に存在した本件烏居は既に撤去されていることが認められ、もはや違法確認の対象である怠る事実が存在しないから、上記ア②の内容の契約を締結しないことの違法を確認する訴えは、住民訴訟の類型に該当しない訴えとして、不適法であるというべきである。
   エ 上記ア③を内容とする契約を締結しないことについて
     原告は、前橋市において、前橋東照宮との間で、本件境内地内に園路(本件境内地と前橋公園とを行き来するための通路)があることを表示することを内容とする契約を締結すべきである旨の主張をする。しかし、上記イで判断をしたとおり、仮に本件境内地内に原告が主張するような園路が存在するとした場合であっても、その園路に係る表示は、前橋公園の利用者等の便宜を図ることを目的とした公園行政担当者としての行為ないし判断を前提とするものであって、その行為ないし判断に係る契約が、前橋公園や本件公園用地の財産的価値に着目し、その価値の維持・保全を図る財務的処置を直接の目的とする行為であるということはできないから、上記ア③を内容とする契約を締結しないことの違法を確認する訴えは、住民訴訟の類型に該当しない訴えとして、不適法であるというべきである。
  (4) 本件訴え④について
    原告は、前橋市において、本件境内地内にその北側にある道路(主要地方道前橋・安中・富岡線)から車両が進人可能な園路があること及び本件公園用地内の駐車場も利用可能であることを表示する看板を設置すべきである旨の主張をする。しかし、上記(3)イ及びエで認定及び判断をしたところと同様に、上記のような看板の設置は、前橋公園や本件公園用地又は上記の道路の財産的価値に着目し、その価値の維持・保全を図る財務的処理を直接の目的とする行為ということはできないから、本件訴え④は、住民訴訟の類型に該当しない訴えとして、不適法であるというべきである。
 2 以上によれば、本件訴えは、不適法であるから、これを却下することとして、主文のとおり判決する。
    前橋地方裁判所民事第2部

      裁判長裁判官  杉山順一
         裁判官  兼田由貴
         裁判官  竹内 峻
**********

■やはり、原告住民が予想していた通りの判決内容です。そして当会として気になったのは、判決文の「第1 請求の趣旨及び原因」のところで、原告住民の請求が次の4分割になっていることでした。

被告が、前橋市が前橋東照宮に対して本件公園用地の一部を賃貸する旨の契約に係る契約書及び前橋東照宮が前橋市から令和7年3月31日を期限として上記の一部の士地を買い取る旨の合意に係る覚書の原告に対する開示を違法に怠っていると主張して、地方自治法242条の2第1項3号の規定に基づき、当該怠る事実が違法であることの確認を求めること
前橋市が前橋東照宮との間で本件賃貸借契約及び本件合意を締結することは政教分離原則に違反し違法であると主張して、同項1号の規定に基づき、本件賃貸借契約及び本件合意の締結の差止めを求めること
前橋市が前橋東照宮との間で本件公園用地と本件境内地との境界と管理に閲する契約の締結を違法に怠っていると主張して、同項3号の規定に基づき、当該怠る事実が違法であることの確認を求めること
前橋市が本件境内地内に前橋公園を利用する者が車両で進入可能な園路があること及び前橋公園内の駐車場も利用可能であることを表示する看板の設置を違法に怠っていると主張して、同項3号の規定に基づき、当該怠る事実が違法であることの確認を求めること

 住民訴訟の原則は、行政に代理して税金の無駄遣いや行政の不当な権限の行使の是正に対して、自らの利益にならないことから、一律、「算定不能」として訴額160万円として収入印紙1万3000円の手数料で済むはずです。ところが、前橋地裁では、最近の傾向として、請求の趣旨をはき違えて、原告の請求内容を子細に区分し、なるべく小分けにして件数を増やそうとする傾向にあります。

 このことから、この事件でも、4件分として原告住民に5万2000円の手数料納付を命じたのではないか、と気にかかり、原告住民のかたに確認してみました。すると、やはり「訴額ですが、住民訴訟では一律160万円と聞いておりましたが、160万円×4件ということで、手数料も1万3000円+3万9000円+郵券代6000円を納めるよう事務連絡をしてきました。そのため指示に従い、納入しました」とのことでした。

 原告住民の方はさらに、「訴状で、訴訟費用は被告の負担とするとしたのですが、原告の負担との判決でした。しかし被告側の費用は、税金で負担しているので、支払わないつもりです」とおっしゃっていました。そのため、当会からは、「住民訴訟でたとえ敗訴しても、被告行政側から訴訟費用を請求されることは絶対にありません。また訴訟費用には、相手方の弁護士費用は含まれず、交通費と通信代のみ対象となるだけです」とコメントを差し上げました。

■こうして、この事件でも、裁判長からの指揮で、本来、自らの直接的利益とならない算定不能なはずの住民訴訟の訴額160万円がこのような形で、水増しさせられて、行政の不正を追及するという納税者住民の崇高な精神を軽視する裁判所の姿勢は、つくづく民主主義に背くものだと痛感させられます。当市民オンブズマン群馬としても、この問題は法務省に対して迅速な是正措置の必要性をアピールしてまいります。

 このように、一般市民のなかにも、行政を相手取って、本人訴訟でしっかりと訴訟を通じて、行政の不正行為の是正に取り組んでいるかたがいらっしゃることに、当会としても意を強くした次第です。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※参考資料
*****住民監査請求の監査結果*****
                    内 監
                    令和2年12月18日
前橋市長 山本 龍様
                   前橋市監査委員 (略)

   前橋市職員措置請求(住民監査請求)に係る措置について(勧告)

 令和2年10月21日に提出のあった前橋市職員措置請求書について・・・(略)・・・別紙監査結果のとおり勧告します。
 つきましては、・・・(略)・・・、令和3年3月19日(金)までに、勧告に基づき講じた措置を通知してください。

==========
          前橋市職員措置請求監査結果

第1 請求の受付
 1 請求人
   住所・氏名 (略)

 2 請求書の収受日
   令和2年10月21日

 3 補正書面の収受日
   令和2年10月26日

 4 請求の内容
   請求・・・(略)・・・の要旨は次のとおりである。
  (1) 請求の要旨
    前橋市(公園管理事務所)が前橋公園用地の北側部分の土地の境界を明確化せず、隣接する前橋東照宮に対し不当に前橋公園用地を使用させていることは、公有財産の適正な管理を怠る事実に当たる。
    また、前橋市の土地を50年近くも無償で使用できるとは社会通念上ありえない。正規の賃貸契約又は売買契約のもと、正当な対価を支払うべきである。
    更に、前橋公園と前橋東照宮の境界が前橋市民にとって不明瞭であるため、散歩などで立ち入れなかったり、時々通行禁止となるなど不便である。
  (2) 請求する措置の内容
    前橋市は、前橋東照宮と正規の賃貸契約又は売買契約を結び、前橋東照宮に対して正当な対価の支払いを求めるとともに、前橋公園用地の財産管理を徹底して境界を明確化するべきである。
    大手町三丁目600番1に建つ建物の違法行為を明確にし、罰金科料するべきである。

 5 請求書の要件審査
   本件措置請求について、・・・(略)・・・、これを受理した。

第2 監査の実施
 1 監査対象項目
  (1) 怠る事実の確認
    前橋公園用地の北側部分の土地の境界が不明瞭で、市が隣接する前橋東照宮に前橋公園用地を使用させていることは、違法若しくは不当に公有財産の管理を怠る事実に当たるか。
  (2) 損害の有無の確認
    上記について、当該土地の対価である使用料を徴収しなかったことにより、市に損害が生じているか、又は生じる恐れがあるか。
  (3) 求められた措置への対応
  請求人から求められた措置を行う必要があるか。
    なお、大手町三丁目600番1に建つ建物の違法行為を明確にして罰金科料を科すことを求める請求は、・・・(略)・・・必要な措置を講ずべきことに当てはまらないため、監査の対象外とした。
 2 監査対象部局
   建設部公園管理事務所

 3 請求人の証拠の提出及び陳述
   請求人に対し、・・・(略)・・・、新たに証拠となる資料の提出はなかった。請求人は政教分離の徹底を求めるとともに、請求事項のうち主として士地の境界を正確に設定することを求める陳述を行った。陳述には、建設部公園管理事務所(以下「公園管理事務所」という。)の職員が立ち会った。

 4 監査対象部局の書類の提出及び関係職員の陳述等
   公園管理事務所に、監査対象項目に関する資料の提出を求め書類審査を行うとともに、令和2年11月20日に関係職員である公園管理事務所長、同所所長補佐、同所副主幹に対する陳述の聴取を行った。・・・(略)・・・。陳述には請求人が立ち会った。

3 事実関係の確認
 1 書類審査等による事実確認
  (1) 前橋東照宮(以下「東照宮」という。)による公園用地の使用を前橋市が認めるに当たり、都市公園法に基づく占用手続を省略して覚書による使用承認に至った理由、経過及び使用条件に関して次のとおり確認した。
  【事実の発生】
   ア 昭和44年7月23日付け市長決裁の起案「東照宮社務所建築に伴う公園用地使用の取扱について(伺)」において、東照宮宮司及び氏子総代名で提出された嘆願書及び東照宮との協議に基づき、覚書を取り交わし無償で東照宮の公園用地使用を認めた。なお、嘆願書の内容は、・・・(略)・・・公園用地の一部の使用を認めてもらいたいとするものであった。
   イ 覚書を取り交わした理由は、中央大橋架橋に伴う街路事業に積極的に協力してもらうためであった。
   ウ 覚書の内容は以下のとおりである。(本件措置請求に関わる部分を抜粋)
   ・覚書締結日 昭和44年7月24日
   ・街路事業の執行に伴い、東照宮は前橋市に協力し土地の買収に応じ、前橋市は東照宮が建築する社務所の一部が前橋市が管理する公園用地の一部を占用することを承認する。占用面積は52.78㎡。
   ・占用料は無料とし、・・・(略)・・・境界線は両者立会いのうえ確認する。
   ・管理上の新境界について東照喜は・・・(略)・・・園地の保全に努力するものとする。
   ・本覚書による施策のため必要な費用は全て東照宮の負担とする。
   ・本覚書により、都市公園法による占用の取扱いは省略するものとし、占用の期間は覚書の有効期間とする。
  【経過1 使用許可面積の拡大及び専用使用の承認】
   ア 昭和46年3月9日付け市長決裁の起案「中央大橋架橋にかかる東照宮からの陳情の処置について(伺)」において、東照宮から提出された陳情書の内容を受け入れ、・・・(略)・・・東照宮の専用使用を認めた。なお、陳情書の内容は、・・・(略)・・・4m程度の車路を設置してほしいというものであった。
   イ 覚書再締結の理由は、・・・(略)・・・、陳情を受け入れざるを得ないものと判断したためである。
   ウ 覚書締結に当たり、現地を実測した結果、東照宮は昭和44年に取り交わした覚書で認めた利用境界を越境して89.28㎡の公園用地を使用していたことが判明した。
     ただし、これらは結婚式場及びこれに引き続き建築された写真館等の建設により生じたものであり、越境部からの原状回復は極めて困難であった。
   エ 覚書の内容は以下のとおりである。(本件措置請求に関わる部分を抜粋)
   ・覚書締結日 昭和46年3月20日
   ・前橋市及び東照宮は、街路事業の円滑な完遂を図るため、相互に協力を行うものとする。
   ・・・(略)・・・
   ・本覚書により、都市公園法による占用の取扱いは省略するものとし、占用の期間は5か年とする。
  【経過2 東照宮の専用使用を廃止して一般市民も利用できるように変更】
   ア 昭和56年11月16日付け市長決裁の起案「東照宮結婚式場改築による公園地の使用陳情の扱いについて(伺)」において、昭和46年覚書締結後の状況変化を勘案しつつ、東照宮から提出された陳情書及び願書の内容を受け入れて、覚書を更新した。・・・(略)・・・。
   イ 覚書を取り交わした理由は、次の3点である。
   ・東照宮は、・・・(略)・・・市行政に協力していること。
   ・公園用地と東照宮境内は昔から一体的に扱われ、・・・(略)・・・境内地と公園の両者にまたがる利用も多く、事情やむを得ないと思われること。
   ・昭和44年7月24日付けで容認した区域内での結婚式場改築であり、市の犠牲を最小限にとどめられること。
   ・なお、市の犠牲とは東照宮による占用面積を最小限に抑えることができるという意味であると思われる。ちなみに起案に記載されていた結婚式場改築に伴う公園用地への越境面積は、1階部分8.65㎡、2階部分29.72㎡の計38.37㎡である。
   ウ 覚書の内容は以下のとおりである。(本件措置請求に関わる部分を抜粋)
   ・覚書締結日 昭和56年12月4日
   ・この覚書は、東照宮の建築物の改築にあたり中央大橋架橋に伴う街路事業の執行に際しての覚書(昭和46年3月20日付け交換)を尊重しながら現状に即したものとして改めたものとする。
   ・東照宮が利用できる建築敷地は前回の覚書により前橋市が承認している区域を超えないものとする。
   ・境内への地元車両出入りの利便のための通路については、東照宮の専用とせず一般市民の利用できる園路として共用するものとし、その管理上必要な柵等の設置は東照宮が行うものとする。
   ・東照宮は建築敷地と通路の境界を生垣などにより施工し、園地の保全と修景に特に配慮し、日常の管理を行うこと。
   ・本覚書により、都市公園法による占用の取扱いは省略するものとし、占用の期間は5か年とする。
  【経過3 昭和56年12月4日付け覚書の更新 】
   ア その後も覚書は更新され続け、現行の公園用地使用許可期間は令和2年4月1日から令和7年3月31日までである。なお、覚書は5年ごとに更新されているが、更新手続の末了を2回確認した。
   イ 起案に添付されていた求積図において、東照宮の使用を認めている土地の範囲は、昭和46年3月20日付け覚書から現在に至るまで変更されていないが、許可面積については測量に基づき187.77㎡(以下「覚書締結部分」という。)であることを確認した。
  【法令上の適合性に対する認識について】
   ア 市長決裁を受けた起案3件のうち2件において市側には、東照宮と覚書を取り交わして公園用地の使用を認めることは、都市公園法上望ましくないとの認識があったことを確認した。
   ・昭和44年7月23日付け市長決裁起案
   「東照宮社務所建築に伴う公園用地使用の取扱について(伺)」
   ・昭和56年11月16日付け市長決裁起案
   「東照宮結婚式場改築による公園地の使用陳情の扱いについて(伺)」
    ・・・(略)・・・
  (2) 公園用地の財産管理及び境界の状況を明らかにするため、請求人が事実証明書において示した「東照宮が使用している市有地の範囲」(以下「請求対象区域」という。)の土地に関して次の事項を確認した。
   ア (略)
   イ (略)
   ウ (略)
   エ 請求対象区域は、東照宮からの申請に基づき、平成13年122月、平成14年3月及び令和2年3月の三度にわたる境界確認を経て、市と東照宮の敷地の境界確定が完了していること。
   オ (略)
   力 (略)
   キ (略)
   ク (略)
   ケ (略)

 2 公園管理事務所の陳述における事実確認
  (1) 東照宮に対して公園用地の使用を認めた理由と経緯
   ア 東照宮社務所については、昭和44年に東照宮が社務所新館を神社北側へ建築しようとしたところ、中央大橋線の街路事業により断念し、やむなく公園北側へ建築することとなり、その一部が前橋公園用地にかかることになったものである。当該用地はもともと東照宮所有地であったが、昭和24年に前橋公園野球場として、前橋市及び市議会からの強い要望により、やむなく譲渡したが、野球場が廃止されたこと、公園及び中央大橋道路建設のため、大幅な土地を失うこととなり、神社に必要な建物を建築することに支障になっている状況に対し、譲渡した土地の返還若しくは社務所建築に当たる土地の使用を認めることを、東照宮宮司及び氏子総代7名から嘆願書が提出されたことにより、市での検討及び東照宮との協議を経て、終局的には中央大橋街路事業への協力を受けることもあり、公園用地の使用を無償にて認め、市と東照宮の間で覚書の交換に至ったものである。
   イ その後、昭和46年には車両通路設置要望の陳情書を受け、社務所建築と同様に承諾することを認め、覚書を再交換したが、後に、車両通路に関しては、東照宮専用通路としてではなく、一般市民の利用にも供するものとして覚書に記されている。
  (2) 東照宮との覚書について
   ア 覚書の交換は現在まで継続的に行われており、対象範囲は大手町三丁目600番1の土地の一部である。
   イ 本件のような形態で公園用地の継続的な占用を認めた事例は他には無く、原則的には許可事項とならないことと認識している。
   ウ 一般的には都市公園法に基づき審査を行った後、認められるものについて許可を出している。
   エ 昭和44年に市と東照宮の間で覚書について協議がされているが、当時の起案からは、都市公園法に基づいた審査が行われていたことを示す記載を確認することはできない。 
   オ これまでの間、覚書を継続していく中で、使用範囲の見直しや使用料の導入を検討したという記録はなかった。
  (3) 覚書により無料での公園用地使用を認めた理由について
   ア 公園用地内における公園施設の設置や工事用施設等の設置については、都市公園法に基づいて許可を出しており、料金体系については、前橋市公園条例に基づき、基本的には使用料を徴収している。
   イ 本件に関しては、東照宮が社務所を南側に建築せざるを得なかった状況等を市が重々理解したうえで交渉しており、それは現行の前橋市公園条例の規定から考察すると、公園の占用に関わる使用料については、市長において特に必要があると認めた場合は使用料を免除する旨の規定があり、昭和44年当時の状況を鑑みて無料とすることを市長決裁において決定したものだと考えている。
  (4) 前橋公園の範囲及び覚書締結部分の公園用地について
   ア  大手町三丁目600番1は、都市公園として都市計画決定をされている範囲の地番である。
   イ 都市公園法に基づく公園としての開設範囲は、大きな図面ではあるが、社務所を含めた形ではなく、この一部は公園の開設範囲からは除外されているものと考えている。すなわち、都市公園の開設範囲は大手町三丁目600番1全てではなく一部である。
   ウ 大手町三丁目600番1の土地は行政財産である。社務所が建っている部分を都市計画決定されている範囲から除く処理ができるのであれば、今後普通財産として扱うことも可能かと思われる。現時点でははっきりしないが、将来的には可能性があるという意味である。
  (5) 覚書締結部分の管理について
   ア これまで、東照宮が利用している土地の範囲や利用方法が覚書のとおりであるのかどうか、定期的に現地の確認をしていたという記録はない。日常的に施設の状況を確認しているということはなく、覚書更新の際に、その内容についての精査がされていたのではないかと思う。
   イ 当初に覚書が交換されたのが昭和44年で、その後45年に通路の要望を受け、覚書が再交換され、その後5年というスパンで覚書の期間を更新し現在まで至っている。その都度、覚書を再交換する際に確認をしているものと思うが、その間には境界確認もされており、現地の確認はしていたものと思う。
  (6) 覚書未締結部分の管理について
   ア 覚書未締結部分の公園用地について、通路の整備や詳細な管理を東照宮にしてもらっていたと認識している。そのことについて東照宮と市で協議されてきたといったような記録は見当たらない。
   イ この度の措置請求により、東照宮境内地との境界付近の覚書未締結部分に工事現場事務所と仮設トイレが設置されていることを確認したため、都市公園法に基づき、令和2年11月18日付けで占用を許可した。
   ウ 工事現場事務所及び仮設トイレの占用許可範囲は、確実に占用する部分である。工事車両も通過する部分は、一般の公園利用者も通行することができ、完全に占用していると考えられないので、実際に仮設物が置いてある面積について許可をしている。
   エ 請求対象区域の駐車場は、平成22年度末に解体された県消防警察慰霊碑の跡地に隣接しており、公園の駐車場として供しているものである。
   オ 東照宮境内地の西側に位置する彰忠碑、さちの池方面、前橋城土塁の上の桜並木には、市有地を通って回遊や散策をすることができる。
   カ 上記に関して、東照宮境内地と公園用地との境に柵等は設けていないが、公園用地としてはつながっている状況である。
  (7) 土地の境界確定の状況について
   ア 前橋公園と東照宮の境界は、平成13年度から令和元年度にわたり三度の境界立会いが行われ、双方の境界確定は完了したところである。
  (8) 東照宮境内地北側の土地について
   ア 東照宮の北側は県有地であり、道路用地と認識している。
  (9) 請求人の主張である「前橋東照宮が、勝手に前橋公園用地北側部分を使っている」という点について
   ア 措置請求では「東照宮が市有地を使用している」とあるが、公園管理事務所としては、覚書締結部分以外の公園用地を東照宮が使用しているという認識はなかった。
   イ 前橋公園用地は覚書で使用を認めている東照宮社務所の建築部分を除き、一般市民の利用に供している。前橋公園と東照宮境内は昔から一体的に利用され、両者にまたがる利用も多く、公園利用について支障があるとは考えていない。
   ウ 公園の駐車場は、東照宮に参拝する方が利用しても公園使用について特段の支障がない。参拝者が公園を利用することもあり、どちらの利用者であっても自由に使えるものと考えている。
   エ 今回の陳述で質間を受け、また、境界も令和元年度に全て確定したということもあり、これを契機に使用料について今後どうしていくかということを市の内部で協議していきたいと考えている。

第4 監査委員の判断
 1 まとめ
  (1) 本件措置請求において、請求対象区域のうち東照宮社務所が公園用地に越境している面積分については請求に理由があると認められるため、地方自治法第242条第5項の規定により前橋市長に対して第5に記載のとおり勧告する。
  (2) 市民の利用を目的に設置される市有施設の管理に当たり最も大切な視点は、当該施設を市民が快適に利用できるよう、施設の設置目的に即して日常的な維持、管理が適切に行われているかどうかという点である。
    この点において、園路や駐車場として市民と共用されている上記(1)以外の請求対象区域は、覚書の締結若しくは長年にわたる運用により東照宮の協力のもと、往来や駐車が可能な状態に保たれている。また、東照宮境内地との境界確定も完了しており、結果として、公園の設置目的及び公園利用者の便益のいずれも損なうことなく管理されている状態にある。したがって、本件措置請求事項である市が違法若しくは不当に財産の管理を怠る事実に相当すると認めるまでには至らないため棄却する。
    しかしながら、当該区域は一般の利用者にとっては東照宮境内地との区別がつきにくいことに加え、日常的な管理は東照宮が担っていることから、一般利用者の多くは東照宮の敷地として認識するであろうことが推察される。
    更に、公園用地と宗教施設の敷地が実質上一体的に使用されていることは、憲法第89条及び第20条第1項後段の政教分離の原則からみて望ましい状態であるのかどうか懸念されるところである。
    したがって、社務所の越境部分の解決策を講じる際に、利用実態に即して公園予定区域のあり方についても再検証するよう勧告に盛り込むこととする。

 2 判断の理由
  (1) 請求対象区域のうち覚書締結部分について
    東照宮社務所の一部が公園用地にはみ出し、前橋公園用地を占用することから覚書締結に至ったが、前橋公園は都市公園法第2条に規定される都市公園であり、請求対象区域についても同法第33条第4項の準用規定が適用されるため、本来であれば同法第6条に基づき社務所の占用許可手続を行うべきである。しかしながら、社務所は同法第7条第1項に列記する許可対象施設には該当しない。
    覚書締結に至った経緯が公共的な見地からやむを得ないものであり、公園用地にはみ出している面積も僅かであるとはいえ、都市公園法上問題があることを認識して根本的な解決策を図ることとしていたにもかかわらず、何の検討もされないまま 50年余りにわたり使用を認めてきたことは、市に財産管理上の過失があるものと言わざるを得ない。
    一方、上記以外の区域については東照宮の専用ではなく、公園利用者の自由な往来が確保されている。よって、前橋公園の設置目的及び利用に際しての便益のいずれも損なうことなく、覚書に基づいて東照宮により日常的に維持、管理されていると認められることから、東照宮に対する使用許可が市に財産管理上の損害を発生させていたとは断定できない。
  (2) 請求対象区域のうち覚書末締結部分について
    覚書未締結部分である東照宮社殿の西側及び南側は、公園用地と東照宮境内地との境界確定が完了しているものの、利用者の便益に配慮して区画を分ける表示等はされておらず、双方の利用者から一体的に使用されている。
    なお、東照宮参拝車両の経路は、社殿北側の入口から入り、社殿の西側を回り込んで南に向かい、覚書締結部分の公園用地へ抜ける一方通行となっている。参拝車両の安全走行に配慮した動線として理にかなっている運用であるが、この運用により、市が整備した公園駐車場へは、参拝者と同じ入口を利用することになるため、前橋公園の駐車場であることが認識できにくい状況である。
    公園を利用する市民にとっては駐車場の場所が分かりにくく、望ましい状態とは言い難いが、公園利用者が自由に駐車場を使用できる状態が常に保たれていることから、市が管理を怠り東照宮による占用を不当に認めていたと断定することはできない。
    同様に、園路についても両者の敷地の境界は明示されていないものの、公園用地のみを通って前橋公園内の桜並木や彰忠碑への散策が可能であり、公園利用者の通行を制限することなく園路を使用できるため、市が管理を怠り東照宮による占用を認めていたとは断定できない。したがって、違法若しくは不当に市が財産の管理を怠る事実があるとまでは認められないと判断する。
    なお、請求対象区域内に設置されている工事現場事務所及び仮設トイレについては、本件監査期間中に都市公園法第6条に基づく占用許可手続が完了したため、違法状態が解消されている。

第5 勧告
  地方自治法第242条第5項の規定に基づき、次のとおり前橋市長に勧告する。
 1 前橋東照宮と隣接している公園用地について、東照宮社務所の越境部分の適切な財産管理に資する措置を講じること。併せて、請求対象区域の利用実態に鑑み、前橋公園予定区域として市が確保し続ける必要性について検証し直すこと。
 2 検証に基づき、前橋公園用地のあり方や活用についての方針を定め、必要に応じて公園用地の一部の売却若しくは有償貸付を検討するなど、長年にわたる懸案事項の解消に努めること。

  なお、地方自治法第242条第9項の規定に基づき、令和3年3月1 9日(金)までに講じた措置について通知することを求める。

第6 意見
  監査の結果については以上のとおりであるが、請求対象区域については、一見すると東照宮の敷地と認識されても仕方がない状況となっているため、勧告に基づく措置を講じる際には、この点にも留意され公園利用者の便益性向上を図られたい。
  また、覚書未締結部分の公園用地については、長年にわたり東照宮が自主的に日常の維持管理を行い、それに要する費用も負担していると考える。公園用地の一体的利用を踏まえ、その見直しが行われるまでの間、市は公園用地の管理者として園路等の維持管理及び費用の負担を検討されたい。

*****住民監査請求の措置通知*****
                    内 公 管
                    令和3年3月17日
前橋市監査委員 様
                   前橋市長 山 本   龍

前橋市職員措置請求(住民監査請求)に係る監査の結果に対する措置について(通知)

 令和2令和2年10月21日に提出のあった前橋市職員措置請求(住民監査請求)に係る監査の結果において、・・・(略)・・・同法第242条第9項の規定により下記のとおり措置を講じたので、通知します。

                  記

1 前橋東照宮と隣接している公園用地において、同社務所の建物の一部が公園用地に越境しているが、その部分を含めた最小限の土地を普通財産に変更した後、前橋東照宮に対して有償で貸付けを行うことを内容とする契約を令和3年3月15日付けで市と前橋東照宮の間で締結した。
  なお、貸付けの対象となる土地については、令和7年3月31日を期限として、前橋市東照宮が買取りを行うことを内容とする覚書を令和3年3月15日付けで市と前橋東照宮との間で締結した。
**********
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【前橋市の財政検証】政策部長のニューヨーク公費豪遊旅行の責任明確化の住民監査を監査委員が迅速却下!

2021-04-28 21:32:00 | 前橋市の行政問題
■4月15日の東京新聞が地方版で報じた前橋市政策部長による2018年10月のニューヨーク出張が実は公費64万2800円を掛けた豪遊旅行同然だったという報道記事について、当会では4月17日の定例会で話題となり、参加した会員の皆様から「県都前橋の恥だ。このまま放置できないので、当会として何らかの行動を起こし、広く前橋市民、群馬県民に事実関係を公表すべきだ」との意見が相次ぎました。その結果、直ちに住民監査請求を行うことが決まり、さっそく4月19日付で前橋市監査委員に本件に係る住民監査請求書を提出したところ、わずか1週間で却下通知が届きました。さっそく監査結果の通知内容を見てみましょう。

 なお、この事件については次のブログ記事も参照ください。
○2021年4月19日:【前橋市の財政検証】政策部長のニューヨーク公費豪遊旅行の責任明確化のため住民監査請求!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3303.html

4月28日に届いた前橋市監査委員からの却下通知が同封された封筒
*****4/27監査請求結果通知*****ZIP ⇒ 20210427osp.zip
                             前監第2号
                          令和3年4月27日
鈴 木   庸 様
                      前橋市監査委員  根 岸 隆 士
                         同     田 村 盛 好
                         同     中 林   章
                         同     小曽根 英 明

   前橋市職員措置請求について(通知)

 このことについて、令和3年4月19日付前監第1号で収受いたしました地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)第242条第1項の規定による前橋市職員措置請求については、下記のとおり決定したので通知します。

                 記

1 請求に対する判断
  本件請求は、法第2 4 2 条に規定する住民監査請求として、必要な要件を満たしていないものと判断し、これを却下す。る

2 請求の要旨
  本件請求の要旨を次のように解した。
  平成30年当時の前橋市政策部長(以下「元部長」という。)が、前橋商工会議所議員視察研修会(平成30年10月24日~同月28日)に同行した際に公金が支出されているが、旅費に関する法令の規定額に比べて高額な宿泊費などの多額な旅費に見合う報告書が提出されていないこと、また、公務をないがしろにして旅行に費やした不在期間の給与が支払われたことなどにより市に損害が生じている。
  このため、市が支出した当該研修会に係る経費及び元部長の研修期間に相当する分の給与について、市長が元部長に対して市に返還するよう監査委員による勧告を求めるもの。

3 法第242条の要件に係る判断
  法第242条第2項は、普通地方公共団体の執行機関又は職員の財務会計上の行為に係る住民監査請求について、「当該行為のあった日又は 終わった日から 1 年を経過したときは、これをすることができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。」と規定している。
  この 「当該行為」については、同条第1項に規定されている行為(違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務 その他の義務の負担)を指し、本件請求で措置を請求された前橋商工会議所議員視察研 修会に元部長が同行した際の経費の支出及び研修期間に相当する分の給与の支出は「公金の支出」に該当する。
  また、「当該行為のあった日」は、最高裁判例(平成14年10月15日判決)によると財務会計上の一時的行為のあった日を指し、更に、最高裁判例(平成14年7月16日判決)によると「公金の支出」の一時的行為は、「支出負担行為」、「支出命令」、「公金の支払」のいずれかの行為とされている。
  本研修会に係る経費の支払は平成30年12月17日、元部長の研修期間を含む月分の給与は平成30年10月19日にそれぞれ支払されている。
  したがって、本件請求は、当該支払日より2年以上経過してから提出されたものであるため、法第242条第2項本文に規定する要件を満たしていないものと判断する。

  次に、本件請求が、法第242条第2項ただし書の規定に該当するか否かについてであるが、本件請求の行為については、秘密裡に行われたものではなく、公文書の閲覧等 によっても知りえないような特別な事情もうかがえないことから、1年を経過することなく監査請求できたものと考える。
  したがって、本件請求については、法第242条第2項ただし書の規定には該当しないものと判断する。
**********

■監査結果はご覧のとおり、財務会計上の行為から1年以内の期限を徒過しているという、いつもの理由で、門前払い=却下とする判断が為されました。これでは、役所内で悪事を働いても、市民にバレずに1年が経過すれば、無罪放免ということです。道理で役所内での犯罪が減らない所以です。

 とりわけ、ストーカー殺人職員や、強制わいせつ管理職員、そして最近では官製談合職員を排出した前橋市役所ならではのスピード判断です。監査委員がこの体たらくでは無理もありません。自浄作用に期待する術のないことが、実によく分かります。

 当会では、明日から30日以内に、つまり5月28日(金)までに住民訴訟を提起するかどうか、会員の方々に諮ったうえで判断してまいります。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【前橋市の財政検証】政策部長のニューヨーク公費豪遊旅行の責任明確化のため住民監査請求!

2021-04-19 22:24:00 | 前橋市の行政問題
■4月15日の東京新聞が地方版で報じた前橋市政策部長による2018年10月のニューヨーク出張が実は公費64万2800円を掛けた豪遊旅行同然だったという報道記事について、当会では4月17日の定例会で話題となり、参加した会員の皆様から「県都前橋の恥だ。このまま放置できないので、当会として何らかの行動を起こし、広く前橋市民、群馬県民に事実関係を公表すべきだ」との意見が相次ぎました。その結果、直ちに住民監査請求を行うことが決まり、さっそく4月19日付で前橋市長に本件に係る住民監査請求書を提出しました。

 まずは4月15日の報道記事を見てみましょう。


**********東京新聞2021年4月15日 08:02
ZIP ⇒ 20210415liossoj.zip
<財政検証>元前橋市部長 1泊4万円のホテル3泊 公費で計64万2800円 18年、米国視察で

前橋市が情報公開した文書。中央の文書の最下段「所感」は8行にとどまる。左上は64万円の請求書
 前橋市の元部長が二〇一八年の在任時に公費で前橋商工会議所役員らの米国視察に同行し、一泊四万円の高級ホテルに三泊した上、各所で酒類を含む高級料理も飲食し、交通費などを含め総額六十四万二千八百円の旅費が支出された実態が分かった。本紙が市に情報公開請求した文書で判明。元部長の出張報告は約二百四十字にとどまり、一九年度包括外部監査報告書が「内容が不十分。支出目的に合致しないなら支出の要否を検討すべき」と指摘している。(菅原洋)
 元部長は取材に「(報告が不十分との指摘に)反省している」と述べた。文書の写しと元部長によると、視察は商工会議所が市に同行者を出すように依頼し、元部長が選ばれた。
 日程は一八年十月二十四〜二十八日で、ニューヨークに四日間滞在。繁華街のマンハッタン中心部にある大型ホテルに泊まり、一人でツインルームを使った。
 日程表では、初日はチャイナタウンでランチを食べ、高層の「エンパイアステートビル」の展望台へ。夕食はステーキだった。
 二日目は現地駐在の複数の経済人から講義を受け、ランチは日本食。夜は経済人らとの懇親会が開かれ、すしなどが出たという。
 三日目は再開発などの様子を視察し、ランチはイタリア料理。夜はハドソン川をフェリーで渡り、マンハッタンの夜景を楽しみながら洋食を食べた。
 帰国後に元部長が提出した出張報告の復命書には、ニューヨークに歴史的な建造物が多い点に触れ「(前橋市で)区画整理が未実施の古い町並みも見方を変えれば歴史的な雰囲気を味わえる」などと記した。
 ただ、出張報告は八行にとどまり、包括外部監査報告書は「今後の施策を検討するに資するよう詳細な記載や提案が求められる。六十四万三千円の費用をかけた結果としては不十分」と指摘している。
 元部長は「(帰国後)忙しくて時間がなく、いいかげんさが出てしまった。監査の指摘はもっともで、長文の報告を添付するべきだった。今後はこの経験を生かしたい」と説明した。
 一方、市職員等の旅費に関する条例では、部長職が国内出張した場合の宿泊料の上限は一泊一万二千五百円で、海外の場合は国家公務員などの旅費を基準にする。ただ、元部長によると、条例は市の公務で出張する場合に適用し、今回のように外部から誘われた出張は上限の規定はない。
 元部長は「一泊四万円は条例などに違反はしていないが、規定に比べれば高い」と語った。
**********

■政務部長の出張復命書には所感として次の記載があります。

**********
 ニューヨークという世界経済の中心として新しい高層ビルが立ち並ぶイメージがあったが、20世紀初頭に建てられた歴史的な建造物も多く、そうした建物をリノベーションした商業施設が大いに賑わっていた。
 本市においては歴史的な建物は数少なくなってしまったが、三中地区のような区画整理が未実施の古い町並みも、見方を変えれば歴史的な雰囲気を味わえる地区としてスポットを浴びる可能性もあるのではないかと感じた。
 余談ではあるが、激しい渋滞と交通ルールを守らないドライバーが多いニューヨークの交通事情を見ると、自動運転車の普及は程遠いのではないかと感じた。

**********

 僅か8行のこの所感が、64万8000円の公費を使った視察出張の成果品として、前橋市役所では通用するのですから、呆れ果ててしまいます。新聞記事にもあるとおり、報告が「不十分」であることは明らかで、この程度の報告であれば、ネットでニューヨークについて5分間程度調べれば、すぐにでも書けるでしょう。前橋市の政策部長が自ら現地視察調査に赴いたのであって、子どもの使いではないのですから、しかるべき鋭い視点で職位に相応しい報告が為されてしかるべきです。それができなかったのであれば、自らの負担とすべきなのは当然のことです。



NYへの豪遊旅行が取りざたされている2018年度当時の政策部長

■というわけで、公費を使ってニューヨーク3泊5日の豪遊旅行をした当時の政策部長には、きちんと費用を返還していただかねばなりません。さっそく、4月19日に次の内容で住民監査請求書を前橋市長あてに提出し、受理されました。

*****4/19住民監査請求書*****ZIP ⇒ os1.zip
           前橋市職員措置請求書

前橋市長に関する措置請求の要旨

1 請求の要旨
 (1) 誰が(請求の対象となる執行機関又は職員)
   2018年当時の前橋市政策部長(以下「元部長」という)
 (2) いつ、どのような財務会計上の行為をしたか
  ア 元部長は、2012年4月15日付け東京新聞朝刊の群馬・栃木版(事実証明書1)によれば、2018年10月24日~28日の5日間にわたり、前橋商工会議所が企画した「前橋商工会議所議員視察研修会」に前橋市役所から同行し、公費合計64万2800円を費消したと報じられた。
  イ 19年度包括外部監査報告書によれば、この事業の担当部課は「政策推進課」で、負担金等の名称は「政策部長の管外出張に係る他団体負担金」とあり、事業 内容は「前橋市のまちづくりに関する視察」で、研修の目的・期待される効果は「市民、企業・団体、行政と連携した今後のまちづくりの実現に向けて、米国在住の群馬・前橋にゆかりのある方々との意見交換や再開発に関する先進市視察を行うもの」とされていた。
 (3) それはどのような理由で違法又は不当であるのか
  ア この事業の概要は、前橋商工会議所が企画した前橋商工会議所議員視察研修会に前橋市の政策部長が同行することで、市民、企業・団体、行政と連携した今後のまちづくりの実現に向けて、米国在住の群馬や前橋にゆかりのある方々との意見交換を行うとともに、再開発に関する先進市視察を行う事業であるはずなのに、参加した政策部長の復命書によると、240文字程度に視察結果がまとめられている程度であること。
  イ 特に視察目的の「現地有識者との意見交換」については、関係資料が添付されているが、結果については触れられていないこと。
  ウ この負担金は、今後の前橋市のまちづくりの一助とすべく支出したものであることから、前橋市民納税者である請求者としては、その復命書には前橋市の今後の施策を検討するに資するよう詳細な記載や提案が求められるものと考えるが、しかしながら5日間で64万2800円の費用をかけて視察に行った結果の復命書としては、1字あたり2700円に相当し、あまりにも公費の無駄遣いが著しいこと。
  エ 報道記事によれば、「(開示された)文書の写しと元部長によると、視察は商工会議所が市に同公社を出すように依頼し、元部長が選ばれた」としており、元部長が統括する政策推進課をして、政策部長である自分本人を選出するように誘導させたことがうかがえ、公正、公平、透明な人選手続きとは見なせないこと。
  オ 元部長はニューヨークに4日間滞在中、繁華街のマンハッタン中心部にある大型ホテルに泊まり、一人でツインルームを使い、1泊4万円を支出するなどしたが、これについて、元部長は「1泊4万円は条例などに違反はしていないが、規定に比べれば高い」と報道記事において、記者の取材に答えており、規定額を超過していることを認めていること。
  カ 前橋市職員等の旅費に関する条例では、部長職が国内出張した場合の宿泊料の上限は1泊1万2500円で、海外旅行の旅費の場合は、条例第19条で「職員が外国旅行をした場合の旅費については、国家公務員等の旅費に関する法律の規定を基準として市長がそのつど定める」として、国家公務員などの旅費を基準にするとあるが、元部長は報道記事の中で「条例は市の公務で出張する場合に適用し、今回のように外部から誘われた出張は上限の規定はない」と説明している。しかし、今回の旅行は、外部から誘われたこととは関係なく、市の公務であることは明らかであること。仮に元部長の主張のとおり、公務出張の適用外であれば、有給休暇を取得して参加すればよいこと。
  キ 国家公務員等の旅費に関する法律では、ニューヨークのような指定都市における宿泊料1泊4万200円は内閣総理大臣および最高裁判所長官に対して支給される金額であり、指定職の職務にある者でさえ1泊2泊5700円であり、二級以下の職務にある者では1泊1万6100円であること。よって、1泊4万円のホテル代の全額支給は不当であること。
  ク なお「外国旅行の旅費は、最終的には市長がそのつど定める」としているが、市長が1泊4万円もの高額ホテル代を認めるはずがないこと。
 (4) その結果、前橋市にどのような損害が生じたのか
  ア 公務多忙な部長が5日間にわたり高額な旅費を支給され、高級ホテルに宿泊して、「前橋市のまちづくりに関する視察」を行ったのであるから、それに見合うだけの、少なくとも50ページを超える報告書の提出がしかるべきところ、僅か240文字の、しかも内容の乏しい復命書しか提出しておらず、ただの物見遊山で貴重な前橋市の公務をおろそかにしたことにより、本件に係る費用64万2800円の公費が無駄に支出されたことによる損害。
  イ 本来であれば、このような公務ではない物見遊山の旅行は、有給休暇を使うべきところ、部長職でありながら自らを出張者として選任し、公務だとして有給休暇を取得せずに5日間も無意味な旅行を行ったことによるアブセンスフィー(派遣職員の不在補償料)、すなわち、5日間も公務をないがしろにして無意味な旅行に費やした不在期間の給与を前橋市民納税者から徴収した血税を原資にした公金から支出したことによる損害。なお、金額は「元部長の月額給与×0.25(5日間/20日間)」で算出できる。
 (5) 監査委員にどのような措置を講じることを求めるのか
   市長が、元部長に前項(4)のア、イに示す金額を前橋市に返還させるよう、監査委員は市長に勧告してください。

2 請求者
  ・ 住所  群馬県前橋市文京町一丁目15番10号
  ・ 氏名  鈴木 庸 (自署・押印)
 (・ 連絡先(電話番号等)) 090-9134-2942

 地方自治法第242条第1項の規定により、別紙事実証明書を添えて、必要な措置を請求します。

                         令和3年4月19日

 前橋市監査委員(あて)


別紙:事実証明書
1 2021年4月15日付新聞報道記事
  ZIP ⇒ 20210415liossoj.zip
2 前橋市職員等の旅費に関する条例
  ZIP ⇒ ose.zip
3 国家公務員等の旅費に関する法律
  ZIP ⇒ kokkakoumuintou_no_ryohini_kansuru_houritu.zip
4 国家公務員等の旅費支給規程
  ZIP ⇒ kokkakoumuintou_no_ryohi_sikyuu_kitei.zip
                             以上
**********

■今後の本件の進展状況について、都度ご報告してまいる所存です。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

【4月20日追記】
 前橋市政策部長が物見遊山で参加した前橋商工会議所主催の視察報告書を入手しました。参加した民間の経済人の方々はそれぞれの視点と立場で参加されたのでしょうが、前橋市政策部長に限っては、この報告書に投稿した一文を見ても、明らかに観光旅行であったことが容易に想像できます。
 ここで「視察」と「見学」の違いを考えてみました。
 視察とは「現地、現場に行き、その実際の様子を見極めること。」を意味します。「見極める」には「物事を深く知る・判定する」などの意味があります。すなわち、「視察」は、見る側の人間が見極めて判定しなければなりません。
 そうしますと、前橋市政策部長が多額の公費を使って参加しましたが、政策部長にとっての関心事は、自由の女神と移民の人たちだったわけで、本来の訪米目的のはずの「前橋市のまちづくりに関する視察」に資する成果はまったく挙げられなかったことは明らかで、これはまさに「見学」としか言いようがありません。なので、今回、返還請求をすべきであると判断しました。
 なお、驚くべきことに、商工会関係筋によれば、元前橋市政策部長だった稲田氏は現在、前橋商工会議所の役員におさまっているとのことです。
*****前橋商工会議所の視察報告書*****ZIP ⇒ 2019.0111ohcs_ny.zip
   ニューヨークの経済情勢と再開発の現状
      前橋商工会議所議員視察報告

参加企業一覧(敬称略・順不同)
・中屋商事㈱
・カネコ種苗㈱
・池下工業㈱
・小林工業㈱
・平方木材㈱
・シャープドキュメント富士㈱
・群馬ビル㈱
・㈱ジンズ
・河本工業㈱
・ぐんぎんリース㈱
・しののめ信用金庫㈱
・朝日印刷工業㈱
・前橋市
・事務局

 リーマンショックから10年、アメリカ経済は一時の厳しい状況を脱し、実質経済成長率が堅調に伸び、失業率は一時の厳しい状況を脱し、実質経済成長率が堅調に伸び、失業率は1969年以来、最低の水準で推移するなど、力強い回復を見せています。
 前橋商工会議所では、世界経済の中心であるニューヨークの最近の動きを実施に視察するとともに、同地の第一線で活躍されている方々と意見交換し、今後の地方における経済政策のあり方を考えるべく平成30年10月24日から30日にかけて22名の参加をいただき議員視察をおこないました。

◆個人的には2年ぶりのニューヨークだったのですが、のっけからマンハッタンの風物詩でもあったタクシーのイエローキャプがウーバーの台頭で姿を消えつつあるのを見、また、(おそらくアマゾンの進出によると思われますが)近々百貨店が閉店するといった情報を聞くに及んで、最先端の経済状況が目まぐるしく変化していることを実感させられました。日本総領事館を始め、8名の方からニューヨーク経済の近況、トランプ政権に対する評価などを終日かけて講演いただきましたが、世界が変わっていく、という思いを新たにした、ニューヨークの今、を実感できる意義ある視察でした。
  団長 組織運営委員会委員長 小島 秀薫


<2日目>NY経済事情講義
・ノムラ・リサーチ・インスティチュート・アメリカ社長 山口隆夫氏
・日本貿易振興機構ニューヨーク事務所長 畠山一成氏
・日本政府観光局ニューヨーク事務所長 伊勢尚史氏
・プライスウォーターハウスクーパース 中島孝明氏
・日本銀行米州統括役 神山一成氏
公式訪問
・在ニューヨーク日本国総領事館
・東京海上日動アメリカ
・群馬銀行ニューヨーク支店


群馬銀行ニューヨーク支店にて
群馬銀行のニューヨーク支店の出店経緯や現地において果たしている役割についてお話を伺った。


経済事情講義風景(日本クラブにて)
現地で活躍されている方々からアメリカ国内外の経済情勢についてそれぞれの立場からお話をいただいた。

◆様々なメディアを通し、ニューヨークの情報には触れていましたが、実際に行ってみるとやはり感じるものが違います。世界中から多種多様な人々が集まっており、街行く人々は目を輝かせ、歩くスピードが速い。とにかく活気があり、24時間動き続けている街だと感じました。
 視察のなかで特に印象に残ったのは「911メモリアルミュージアム」です。二度とあってはならないこの出来事を鋼製に伝えるという強い意志を感じるとともに、それでも前に進むというアメリカ国民の力強さを感じました。今も進化し続けているニューヨークマンハッタンのパワーを感じ、帰国の途についた視察研修でした。
  ぐんぎんリース㈱代表取締役社長 南 繁芳


<3日目>主な行程
マンハッタン・チェルシー地区等再開発事情視察
・グランドセントラル駅
・ハドソンヤード再開発プロジェクト
・ハイライン~チェルシー周辺
・ブルックリン地区等再開発事情視察
・911メモリアルミュージアム視察


グランド セントラル ターミナル
地下に29面のホームと、46の発着番線を持つターミナル駅。マンハッタンを代表する歴史的建造物である。床面は大理石が使われ、天井には星座が描かれている。


ハドソンヤード再開発地区


チェルシーマーケット


↑911メモリアルミュージアム↑
残された鉄骨

<4日目>自由行動
<5日目>主な行程
・セントラルパーク散策
・メトロポリタン美術館
・食品スーパー「トレーダージョーズ」視察


メトロポリタン美術館


食品スーパー「トレーダージョーズ」

◆私の好きな映画の一つに「ゴッド ・ファーザー」があリます。
 PARTⅡの冒頭、9歳のピトーが故郷シチリアを追われ、一人移民船に乗り込み、アメリカに到着して初めて目にしたのが「自由の女神」でした。
 多くの移民の人たちが自由の女神を見て、希望を持ったのだと思います。
 実際に目にしたニューヨークでは、様々な人種の人たちが、様々な生活をしている様子に触れることができました。
 アメリカの繁栄は移民によってもたらされたものですが、当然、影の部分もあります。アメリカが移民政策をどうするのか。アメリカのみならず、世界経済にも影響を与えることなので、今後とも見守っていきたいと思います。
      前橋市政策部長 稲田 貴宣


 トランプ大統領の政治手腕には様々な意見もあり、保護主義的経済政策が悪影響を及ぼすとの見方もされていますが、ニューヨークの街や人々の様子から、現況のアメリカ経済は、極めて好調であると感じました。
 また、様々な分野の第一線でご活躍されている方々から実体験のお話を伺うことができ、貴重な体験の5日間の視察でした。多くの関係者の皆様に心から感謝申し上げ報告といたします。
**********

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする