市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

【安中タゴ51億円事件】群銀103年ローンに加えタゴに1万8526年ローンを許容中の安中市を提訴!

2020-11-29 23:55:00 | 土地開発公社51億円横領事件
■安中市土地開発公社を舞台に今から25年半前の1995年5月18日に安中市役所内部で密かに発覚した地方自治体では史上最大の巨額詐欺横領事件。警察の調べで総額51億円を超える犯罪にも拘らず単独犯とされた元職員タゴは1952年3月生まれで、今年68歳となり、現在高崎市内のT町に住んでいます。
 この前代未聞、空前絶後の巨額詐欺横領事件により、現在公社は、群馬銀行に対して債務となる総額24億5000万円のうち、和解と同時に支払った4億円を除く20億5000万円を毎年2000万円ずつクリスマスに群銀に103年かけて支払中です。今年12月25日にも次回の22回目の支払日が迫っています。このままでいくと、今年生まれた市民の赤ちゃんが、81歳になった時に、和解金が完済されることになります。安中市は公社のこの債務の連帯保証人になっています。
 一方、公社は、元職員タゴに対して損害賠償請求訴訟(事件番号:平成11年(ワ)第165号)を提起し、1999年(平成11年)5月31日付で22億2309万2000円の債権が確定しました。その結果、判決確定後、今年8月26日の約21年間で、タゴから1532万500円が返済されましたが、依然として22億771万1500円の債権元金が残っています。しかも、これには遅延損害金年利5分は含まれていません。


事件を初めて報じた1995年(平成7年)6月3日(土)の上毛新聞朝刊。「安中市で今春まで都市計画課に所属し市土地開発公社の業務を担当していた職員が、公社の事業費用を金融機関から借り受ける際、金銭借入書を改ざんし懲戒免職になっていたことが、二日明らかになった。」という記事を見て、安中市民は仰天!事件発覚後、県警は詐欺、公文書偽造、同行使の容疑で元安中市職員=当時(43)=を逮捕。元職員は公社の事業費用を金融機関から借り受ける際に公文書を偽造して金額を上乗せしていた。不正流用は総額51億円に上り、元職員には懲役14年の実刑判決が下った。事件から3年後、市と公社が銀行に24億5000万円を支払う和解が成立した。

 この遅延損害金について、先日、公社の連帯保証人の安中市で、公社の管理に携わっている企画課の田中課長に、現時点でいくらになるのか聞いてみました。すると、「安中市では計算したことがなく、公社の事務局である都市整備課の赤見課長(公社事務局長兼務)に計算を頼んだので、そちらに聞いてほしい」との返事でした。そのため、11月27日に赤見事務局長と面談して、事前に計算を依頼していた遅延損害金について尋ねたところ、「12月市議会定例会が迫っており、その対応に追われていて計算ができていない。年利5分で複利計算だと思うので、自分で計算してみてほしい」と言われました。

 群銀への債務履行についてはきちんと毎年支払いを続けているのに、タゴへの債権行使については、今年から口約束で毎月月末に1万円の振込をタゴにしてもらっているだけで、遅延損害金さえまともに計算をしたことがないというのが、現在の市・公社の実態です。

■筆者は、こうした市・公社の体たらくを懸念して、市・公社が2019年3月末に群馬銀行に対して、和解後20年目の対応として、今後さらに10年間、和解金の支払いを継続する旨を約した「証」の提出に関連して、公社でどのような協議が行われていたのかを債務保証人である安中市民納税者として確認すべく、昨年6月10日に安中市長に行政文書開示請求書を提出しました。

 ところが、多くの箇所が黒塗りにされた公社議事録が開示されたため、昨年8月6日付で行政不服審査法に基づく審査請求を行いました。しかし、安中市は2020年5月15日付で棄却通知をよこしました。

 その後も安中市に対して、群銀への債務履行ばかり重視している市・公社の姿勢を問題視して、なぜタゴへの債権行使をもっと厳しく行わないのか、もし市・公社だけでは腰が引けるのであれば、本件をライフワークとしている当会に委任状を発行してもらい、市民納税者として直接タゴおよびその関係者らに債務履行を求めたいと、申し入れてきました。

 ところが、安中市にいくら申し入れても、「委任状は弁護士でない者には出せない」などとして、一向に当会の提案に応じようとする気配はありません。

■そのため、やむやく審査請求結果の裁決通知を受け取った翌日から6ヶ月間が経過しようとする直線の2020年11月16日に、公社の連帯保証人である安中市に対して、タゴからの債権回収の本気度を確認するために不可欠な公社議事録の内容についての非開示部分の開示を求めて、前橋地裁に提訴しました。

 訴状の内容は次のとおりです。

*****訴状*****ZIP ⇒ 20201116i.zip
        訴    状

                         令和2年11月16日
前橋地方裁判所民事部 御中

                   原 告  小 川   賢

 〒379-0114 群馬県安中市野殿980(送達先)
        原      告   小  川    賢
         電 話 090-5302-8312
         FAX 027-381-0364

 〒370-0192 群馬県安中市安中1丁目23-1
        被告兼処分行政庁   安   中   市
        上 記 代 表 者    安中市長 茂木英子
         電 話 027-382-1111(代表)
         FAX 027-381-0503

行政文書不開示処分取消請求事件
 訴訟物の価額 金160万円(算定不能)
 貼用印紙額   金1万3000円

第1 請求の趣旨
 1 被告が原告に対し、令和元年8月6日付安企発第259号行政文書部分開示決定(以下「本決定」)において不開示とした箇所のうち、別紙に示す情報について不開示を取消せ。
 2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。

第2 請求の原因
 1 請求に至る経緯
 (1)原告は,安中市情報公開条例(以下「条例」)第5条の規定に基づき、被告に対し、令和元年6月10日付で、広報あんなか2019年6月1日号に掲載された記事「安中市土地開発公社不祥事件 和解20年後の対応について」に関連する次に掲げる情報の開示請求(以下「本件開示請求」)を行った。
   (1) 2018年7月以前を含め、これまでに安中市土地開発公社(以下「公社」)と群馬銀行(以下「群銀」)との間で重ねてきた経緯が分かる一切の情報(群銀との協議録のみならず,公社における理事会・評議会など内部の会議録を含む。)
   (2) 2019年3月に「公社が毎年12月25日に2,000万円を支払うことで合意した」ことを示す一切の情報
   (3) 「これまで20年間で合計8億円を支払ったが、この支払は公社の土地造成販売による利益の中から行われ、連帯保証人の安中市からの支払は発生していない」としているが、土地造成事業の利益の中からどのように支払ってきたのか、公社の財務諸表をもとに一般住民が理解できるような一切の情報
   (4) これまで20年間に合計8億円を支払ったというが、その公金を捻出するために公社が行ってきた土地造成等で金融機関から資金を借り入れる際に、安中市が債務保証をしてきたはずであり、それらの債務保証の履歴が一般市民にも分かるような一切の情報
   (5) 公社の事業と経営が順調に推移していることが一般市民にも分かるような一切の証拠
   (6) 今後とも公社には、群銀への返済資金が十分あるとすることが一般指印にも用紙に分かるような一切の根拠
   (7) 6月市議会定例会で本件に関する説明に使用する予定の情報
 (2)処分庁である被告は、本件開示請求の対象となる情報のうち、公社が保有しているものについて条例第24条第2項の規定に基づいて被告に提出するよう公社に求めたところ、「公社の経営に支障を及ぼすおそれのある情報」であることを理由に公社が定める安中市土地開発公社情報公開規程(以下「公社規程」)に基づいて内容の一部を黒塗りにした文書(以下「公社提出文書」)が公社から被告に提出された。
 (3)被告は、公社提出文書のうち、個人の氏名、地位及び印影については条例第7条第2号に規定される個人に関する情報、法人の印影及び口座番号については同条第3号に規定される法人その他の団体に関する情報に該当するものとして、それらの情報を被告として黒塗りにした上で本件処分を行い、その旨を令和元年8月6日付で行政文書部分開示決定通知書により原告に通知した。
 (4)原告は、公社提出部分及び被告がさらに黒塗りにした箇所が多いことを理由に本件処分の内容を不服とし、令和元年11月7日付で本件処分の取消しを求めるため、行政不服審査法第2条の規定に基づいて審査請求を行った。
 (5)原告は審査請求において、本件処分により黒塗りにされた部分について、条例第24条第2項において「実施機関は、法人の設立に当たり、市が2分の1以上を出資している法人の保有する情報であって、実施機関が保有していないものについて、当該情報の公開の申出があったときは、当該法人に対して当該情報を実施機関に提出するよう求めることができる」と規定されており、被告が資本金の全額を出資して設立された公社は同項に規定する法人に該当することから、処分庁である被告は、公社が保有する情報について、条例に基づく開示請求があった場合は、公社に対し、当該開示請求に該当する公社が保有する全ての情報を同項の規定に基づいて適切に提出するように指導すべきであり、被告が公社に対するその指導を怠ることにより納税者としての市民である原告に本件処分を行ったことは、原則開示という条例の趣旨に反する、と主張した。
 (6)また原告は、本件処分において、公社提出文書における公社が黒塗りにした理由が「公社の経営に支障を及ぼすおそれのある情報」と記されているのみで、「公社の経営に支障を及ぼすおそれ」に関する具体的な理由が記載されていないことは、条例に基づく情報公開制度の適切な運用に反している、と主張した。
 (7)上記のことから原告は、本件処分が条例第7条の規定による開示義務に反する処分であるため、本件処分の取消しをあらためて求めた。
 (8)だが、被告は、「公社に対して、条例第24条第2項の規定に基づく情報の提出の求めについては強制力がない」と主張し、さらに「公社が保有する情報は行政文書に含まれていないため、公社に任意に情報の提供を求めるほかない」とし、「公社自身が経営に支障を及ぼす恐れと判断し、黒塗りをした箇所を被告が条例の規定に基づき強制的に開示を行うことはできない」などと主張した。
 (9)加えて、被告は「公社は市と独立した別法人であるとの位置付けであるため、公社提出文書の作成は、公社の裁量権の範囲内である」として条例には抵触しないと主張した。
 (10)その結果、処分庁である被告は審査庁として令和2年裁決第1号で、原告の審査請求を棄却し、令和2年5月15日付安行発第259号で、採決結果を原告に配達証明郵便で送付し、被告は翌5月16日に裁決書を受け取った。
 (11)この「安中市土地開発公社不祥事件 和解20年後の対応について」にかかる公社における協議情報不開示処分は、法に照らして明らかに失当とみられるため、行政事件訴訟法第12条の規定に基づき、その取消を求める訴えを提起する。

 2 請求の前提となる事実
 (1)被告安中市が基本金500万円全額を出資する公社では、安中市都市計画課員を兼務していた元職員多胡邦夫が、1978年に公社設立以降、一貫して同一職場に配置され、1982年以降公金を着服するようになり、公社の契約書類を偽造するなどして1987年から1995年にかけて、群馬銀行から約48億円を騙し取ったほか、約3億4490万円の公金も横領しており、着服金の合計は約51億1250万円に上った。この事件について、被告は「安中市土地開発公社不祥事件」と呼ぶが、住民は「タゴ51億円事件」あるいは「タゴ事件」ないし「51億円事件」と呼ぶことが多い。ここでは「公社事件」という。
 (2)元職員が1995年4月に異動となり、同年5月18日の監査で、元職員の不正が発覚した。そして元職員は同年5月31日付で懲戒免職となり、同年6月7日に詐欺罪と有印公文書偽造同行使罪で逮捕された。
 (3)元職員は公印を無断で持ち出して開設しておいた「安中市土地開発公社特別会計」名義の裏口座に、逮捕時には約2億円しか残っておらず、元職員の預金残高や骨董品の売却で6億1267万8575円返したが、公社が既に群馬銀行に返済した約7億円を除いても、約35億円の損害が残った。
 (4)元職員は騙し取った金のうち、骨とう品購入に約4億6810万円(供述では約10億円)使ったほか、自宅や店舗の不動産やゴルフ会員権、海外リゾート会員権、外車、貴金属、背広・小物等の購入に約5億円、ギャンブルに約1億円、妻や愛人に約1.5億円など費やしていたが、警察の捜査の結果、確認できず仕舞いの使途不明金は14億3445万円に上る。
 (5)1995年10月13日には公社理事長を兼任する安中市長の小川勝寿が引責辞職をしたが、小川市長は元職員とはゴルフ仲間として知られていた。元職員は32億3000万円を騙し取ったとして詐欺罪で訴追され、1995年8月21日の初公判を皮切りに、計7回の公判が開かれ、検察は元職員に対して有印公文書偽造・同行使、有印公文書変造・同行使、詐欺罪の併合罪としては最高刑に当たる懲役15年を求刑し、1996年4月8日に前橋地裁は元職員に懲役14年の実刑判決を言い渡した。元職員は千葉刑務所に服役していたが、既に刑期を終え出所し、現在は高崎市T町で親族と同居している。
 (6)群銀は1995年10月19日に公社、および公社の債務保証をしている被告安中市を相手に、貸金の返済と保証債務の履行を求める民事訴訟を前橋地裁に起こした。群銀は被告と公社の使用者責任を主張して元金39億9886万1000円とこれに対する約定利息の支払いを求め、被告と公社は元職員が不正に借り入れたもので公社に支払い義務はないとして全面的に争っていた。その後、上記(3)による返済があり、最終的には元金が33億8618万2425円に縮減された、
 (7)1995年12月22日から被告と群銀との間で計21回の弁論が行われ(途中から非公開)、1998年12月9日に和解が成立。この中で群銀が9億3618万2425円および発生した利息損害金全額相当額の支払を免除し、最終的に群銀に対して主債務者を公社、連帯保証人を被告として、24億5000万円の債務が確定した。
 (8)公社は正当に借りていた金額を除く22億2309万2000円を詐欺事件による損害と算定し、公社はこの損害を元職員による不法行為によるものとして既に千葉刑務所に服役中の元職員を相手取って損害賠償を請求した。元職員は裁判で争わなかったため、公社の主張が全面的に認められて、1999年5月31日、前橋地裁は損害金全額を支払うように命じた。ところが、これまでに、元職員から公社に対して、現在に至るまでに約1500万円程度返済したのみで、今年1月から元職員は毎月1万円ずつ公社に返済しているものの、2020年8月26日現在の公社債権元金残額は、22億円777万1500円であり、この全額完済までには遅延損害金を除いてもあと1万8526年の歳月を要する。
 (9)公社と連帯保証人の被告は、群銀との和解条項に基づき、1998年12月25日に4億円、1999年12月25日から毎年12月25日に2000万円ずつ、公社が群銀に支払いを行った。そして和解条項第4項第3号に基づき和解10年後に当たる2008年12月25日までに、2009年から10年間の支払方法を協議し、2008年12月26日に公社と被告が群銀に「証」(合意書に沿った様式)を提出し、引き続き公社が10年間にわたり、毎年12月25日に群銀に2000万円を支払うことになった。
 (10)その後、和解20年後となる2018年12月25日までに、2018年から10年間の支払方法を協議することになり、2019年3月までに、公社と被告が群銀に「証」を提出し、引き続き公社が10年間にわたり、毎年12月25日に群銀に2000万円を支払うことになり、今年12月25日に、22回目の和解金支払い日が迫っており、この支払を終えても、このままの状況では、あと81年間支払い続けることになる。
 (11)被告は、このような現状にありながら、広報あんなか2019年6月1日号のページ9において「現在、公社の事業および経営は順調に推移しており、返済を続けていくための資金が十分ありますので、安中市が債務保証による弁済をする必要はありません。今後も市民の皆様にご迷惑をかけないよう努めて参ります」などと、依然として連帯保証人として公社の債務を保証し続けることを市民に表明している。他方で、前項(7)のように、元職員多胡邦夫に対する債権回収には極めて消極的であり、原告は被告安中市の住民および納税者として、公社の債務および債権に関する情報開示を受ける権利と義務がある。

 3 請求の理由
 (1)別紙に示す公社理事会会議録情報は,群銀との和解20年後の対応について協議された際に記録されたもので,この中には、被告が連帯保証人となっている公社が、群銀への債務履行について縷々協議をしているほか、当然ながら元職員多胡邦夫に対する債権回収についても協議されていることがうかがえる。よって、被告は、公社理事会の会議録情報をすべて保有していなければならない。であれば、当然に条例の対象となることは容易に理解し得る。
 (2)特に昨今、地方分権の進展に伴い地方公共団体の行政の自己決定権・自己責任が拡大されることに対応し、総力を挙げて行財政改革に取り組むだけでなく、行政手続の公正を確保するとともに透明性の向上を図り、適切に説明責任を果たしていくことが求められている。
 (3)とりわけ、近年一部の地方公共団体における不適切な支出が住民の厳しい批判を受ける中で、適正な財政運営に資するためにも、財政状況に関して的確にその実情を伝え、住民の理解と協力を得ることの重要性が高まっている。また、地方債の引受けや購入により資金を提供している住民や引受機関に対しても、財政状況の開示に係る透明性を確保することが求められている。
 (4)このような観点から、しかも、公社事件は、地方自治体では空前絶後、前代未聞の巨額詐欺横領事件であり、和解条項による群銀への返済はこのままでいくと2013年まで続き、他方、元職員からの債権回収は、遅延損害金を除外してもなお、あと1万8526年まで要するのであるから、公社は連帯保証人である被告に対して、債権・債務状況の透明化に努める義務を有する。
 (5)よって、原告を含む市民に対しても、群銀との和解20年後の対応について、どのような内容で債務・債権について協議したのか、きちんと説明責任を果たすことが求められる。
 (6)これまで、被告は公社の財政状況について、毎年予算・決算、活動実績・計画、財務諸表は開示しているが、公社事件については、簿外債務扱いとして、10年ごとの群銀への和解金支払い合意に関する「証」の差し入れの際に、広報あんなかで、1頁の半分にも満たない記事で、事後報告するのみである。これでは、公社の連帯保証人である被告の責任と義務は到底果たされているとは言えない。
 (7)被告は、公社及び被告自身が黒塗りした箇所について、条例第7条に規定する不開示情報のうち、同条第2号に規定する個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるもの(個人の氏名、地位及び印影)及び同条第3号に規定する法人その他の団体に関する情報であって、公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの(法人の印影及び口座番号)が記載されていたため、とした。だが、黒塗りの箇所は、そうした限定的な不開示情報とは到底思えないほど、広い範囲に及んでおり、これらが個人の氏名、地位及び印影や、法人の印影および口座番号だけとは極めて考えにくい。
 (8)公社が黒塗りした範囲は、明らかに被告が主張する理由ではカバーできないほど広範囲にわたっており、あきらかに被告は、条例の趣旨をはき違え、公社の親組織としての管理監督責任を怠り、公社の債権・債務について被告はあまりにも無関心すぎる。
 (9)公社事件は、公有地の拡大の推進に関する法律(通称「公拡法」)により被告が公社を設立手続きの段階から担当させてきた元職員を「真面目だ。有能だ」などと勝手に評価し、その業務の実態の管理監督責任を長年にわたり怠ってきたことから、前代未聞、空前絶後の巨額不祥事件を招いたものである。その当時の体質が現在でも続いていることは、第2の公社事件の温床となりうるため、被告の公社経営状況を把握し市民に公表しようとしない姿勢は、極めて許し難い。
 (10)にもかかわらず、被告は「別法人の公社のみが保有する情報を、条例に基づく開示請求により公社に提出させることには強制力がない」とか、「公社を条例上の実施機関として被告安中市と同列に扱うべきだとする考え方は、原告個人の独自の考え方である、採用できない」とか、「公社が黒塗りした箇所は、公社自身が経営に支障を及ぼすおそれがある情報だと判断したのだから、説明不足の感は否めないものの、別法人である公社の意向を尊重すべきだ」などとする被告の本件処分は失当というほかない。
 (11)原告が審査請求の過程で主張した「公社の連帯保証人である被告安中市の市長が指名することで就任した被告安中市の副市長が連帯保証先の公社の理事長に就任し、その人物との間で、事業に関連した取引(債務保証)を行っていることは利益相反行為に当たる」ことも、被告の本件処分、すなわち条例の不適切な運用の背景となっていることも指摘しておく。
 (12)おなじく原告が審査請求の過程で口頭意見陳述として被告に行った「元職員からの債権回収にかかる議事の箇所について」の質問に対して、「別紙1-1及び1-2として、僅か7行のみである」との被告の主張を受けて、「被告は公社が保有する原本を確認したうえで、開示非開示の判断をしたのか、それとも既に黒塗りされた文書を渡されてそれをもとに開示非開示の判断をしたのか、どちらなのか」を質問したところ、被告は「原本を基に公社から説明を受けたが、その際、公社側が部分的に隠しながら説明した。その際、見えている部分もあったので、そこの部分は開示するべきではないか、と公社側に問い質したが、結局公社側から最終的に提出されてきたのは黒塗りされた情報であった。したがって被告が公社から見せられたのは原本だが、まるまる全部そのまま見せられたという訳ではない」と言う回答を行った。そこで、原告は、元職員に対する債権回収にかかる起債は、上記の7行以外にも黒塗りされた箇所に含まれていると認識できると主張したが、「被告は公社の裁量権によるもので、条例に抵触しない」と一蹴したことは、公社事件の温床である「公社の伏魔殿化」を被告が自ら積極的に容認していることを示しており、被告が公社事件の真相に目をつぶり、責任の所在の明確化をしないまま、事件発覚から25年6ヶ月が経過した今、時間の経過による公社事件の風化に伴い、再発防止のタガがすっかり緩んでいることに、原告は市民納税者として戦慄を禁じ得ない。

第3 むすび
   以上のとおり、本決定のうち別紙に示す情報について不開示とした処分が違法であることは明らかであるから、すべて取消を求める。
以上

別紙 請求の趣旨
不開示処分取消請求箇所

 本件処分に係る原告請求の「(1)2018年7月以前を含め、これまでに安中市土地開発公社(以下「公社」)と群馬銀行(以下「群銀」)との間で重ねてきた経緯が分かる一切の情報(群銀との協議録のみならず,公社における理事会・評議会など内部の会議録を含む。)」における次の文書

・文書名:平成30年度第3回公社理事会会議録
・文書名:平成30年度第4回公社理事会会議録
・文書名:平成30年度第5回公社理事会会議録
・文書名:平成30年度第6回公社理事会会議録
・文書名:平成30年度第7回公社理事会会議録
・文書名:令和元年度第1回公社理事会会議録

以上の各文書の黒塗り箇所のうち、公社の債権・債務に関わる一切の記述。

以上


証拠方法

1 甲1号証 平成31年6月10日付行政文書開示請求書
2 甲2号証 令和元年8月6日付安企発第826号行政文書部分開示決定通知書
3 甲3号証 令和元年11月7日付審査請求書
4 甲4号証 令和2年5月15日付安行発第259号裁決書送り状及び裁決書
5 甲5号証 平成30年度第3回公社理事会会議録
6 甲6号証 平成30年度第4回公社理事会会議録
7 甲7号証 平成30年度第5回公社理事会会議録
8 甲8号証 平成30年度第6回公社理事会会議録
9 甲9号証 平成30年度第7回公社理事会会議録
10 甲10号証 令和元年度第1回公社理事会会議録

附属書類

 1 訴状副本     1通
 2 証拠説明書    1通
 3 甲号証写し   各1通

*****証拠説明書*****
ZIP ⇒ 20201116.zip

*****甲号証写し*****
甲1号証 平成31年6月10日付行政文書開示請求書
 ZIP ⇒ bp20190610ssjiqa20nj.zip
甲2号証 令和元年8月6日付安企発第826号行政文書部分開示決定通知書
 ZIP ⇒ bq20190820sxjm.zip
甲3号証 令和元年11月7日付審査請求書
 ZIP ⇒ br20191107riqa20nj.zip
甲4号証 令和2年5月15日付安行発第259号裁決書送り状及び裁決書
甲5号証 平成30年度第3回公社理事会会議録
甲6号証 平成30年度第4回公社理事会会議録

 ZIP ⇒ bsurh30resc.zip
甲7号証 平成30年度第5回公社理事会会議録
甲8号証 平成30年度第6回公社理事会会議録

 ZIP ⇒ bvewh30teuc.zip
甲9号証 平成30年度第7回公社理事会会議録
 ZIP ⇒ bx2019081415_30nx7c20190325.zip
甲10号証 令和元年度第1回公社理事会会議録
 ZIP ⇒ b102019081416_anx1c20190520.zip
**********

■その後、前橋地裁民事第1部から連絡があり「先日提出された訴状により事件番号が確定しました。ところで裁判資料のうち、甲2号証について正本と副本と比較したところ、副本で1枚不足しているので、副本差し替え用に甲2号証を正本と同じように出し直してほしい」との指示がありました。さっそく次の送り状を付けて提出し直しました。


2020年11月25日付地裁宛事務連絡。

 地裁では、「差し替え用の書類が届き次第、副本を安中市に送付する」と言っていたので、1月27日に安中市行政課を訪れて、大河原課長に「地裁から何か書類は届いていますか」と尋ねたところ「まだ何も」ということでしたので、上記訴状の写しを届けました。

■市が連帯保証人になっている公社の簿外債務約22億円余りの債務者である元職員タゴは1970年(昭和45年)6月(4月ではない)に安中市役所に人庁し、税務課、農政課を経て1979年(昭和54年)10月に建設部都市計画課に異動。安中市土地開発公社設立のための準備業務に携わり、翌1980年4月に安中市土地開発公社が設立されると、以来15年間、公社担当として同課に勤務し続け、公社の業務に携わっていました。

 タゴについては事件発覚当時、市役所内でも、勤務年数の長さをはじめ、高級な背広や職員らしからぬ私生活などを指摘する声が出て、「市役所の七不思議」と言われていました。しかし、誰もそのことを公然と指摘する者はおらず、むしろ公社の金庫番となったタゴを安中市幹部らは「有能」扱いし、留任させ続けていました。事件が発覚した前月の1995年4月の人事異動で市教委社会教育課係長に昇任させていたほどです。

 当時、タゴを知る人のあいだでは、都市計画課に16年間も同一配置させた結果「ベテラン」だと見なし「事務にたけていた」「センスがあった」と、仕事ぶりを高く評価する声が聞かれました。しかし、一方で数台の外車を乗り回すなど羽振りの良さも目立っていました。家族名義で市内に店を出すなど、サイドビジネスもしていたうえに、群銀から毎年盆暮れに、豪華なお歳暮が届き、地元町内会の新沿海には100万円もの最高級の大島紬の和装姿で顔を出していました。

 こうしたエピソードは、ズサンな公印管理や、変だと思っても声が挙げられない安中市役所の酷い内情を物語っていましたが、事件から25年が経過する今日、依然として市役所の内部の実態は当時に完全に戻っているかのような体たらくぶりです。

■安中市は連帯保証人として、公社が群馬銀行に対する103年ローンの債務保証をしているのに、公社がタゴから、事件発覚後25年を迎える今年になってようやく口約束で毎月1万円の返済の取付けをしましたが、このままだとタゴの返済完了まであと1万8526年を要することになります。

 しかも判決では遅延損害金に対して年5分の支払をタゴに義務付けていますから、公社はそれもきちんと認識してタゴに返済義務を課し、厳しく返済を求めなければなりません。それなのに、市・公社ともに遅延損害金が現在いくらになるのか、計算もしたことがないというのです。

 そこで、急遽、独自に試算をしてみました。その結果は次のとおりです。




遅延損害金試算表(2020年8月26日現在)
ZIP ⇒ i2020n826j.zip


 これによれば、遅延損害金は今年5月31日現在で、39億4864万9945円となります。タゴからは、それまでの21年間に1526万500円が返済されているので、公社にとって債権元金残高は22億783万1500円となり、遅延損害金と合わせたタゴに対する公社の債権総額は、61億5648万445円となります。

 タゴからこの債権を回収できれば、豪華な市役所の建て替えが十分可能です。安中市は、市役所建て替えのことより、まずは市民の負担を最小限にするため、タゴからの債権回収を最重要課題として取り組むべきではないでしょうか。

【11/30追記】
 11月27日付で前橋地裁から、今回の提訴に関して第1回口頭弁論期日の照会がありました。当会では令和3年1月27日(水)10時20分からの日時をお願いしました。
※2020年11月30日前橋地裁あて事務連絡回答書 ZIP ⇒ 20201130nai1_j2.zip

【市政をひらく安中市民の会情報部及び市民オンブズマン群馬事務局からの連絡】

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【スラグまみれの群馬県】有害スラグ不法投棄を巡り行政が公共事業を隠れ蓑に隠蔽を図る現場を緊急ルポ!④

2020-11-29 22:16:00 | スラグ不法投棄問題

■群馬県中にダンプトラックで不法投棄された有害スラグ問題は、未解決なまま今日まで至っています。スラグは廃棄物に認定されたからには、丁寧に場所を特定し、撤去の上、最終処分場に埋設処分しなければなりません。
 特に群馬県県土整備部の工事では、全く調査が行われていませんが、(株)佐藤建設工業や(有)岡田興業、(株)大野工業の試験成績表が提出されている現場は全て使用してはいけない有害廃棄物が入った場所と考えなければなりません。また(株)石井商事やクラフトガーデンにも注意が必要です。
 さて久しぶりに行われたリットン調査団のスラグ調査レポートも今回が最終回です。

国道17号上武道路の上武鳥取信号付近には、黒い怪しい大型土のう袋が積み上げられていた。

 今回の調査場所はこちらです。↓↓



https://goo.gl/maps/fnMwEJRRH3qVautr7

*****リットン調査団のスラグ調査レポート*****
 有害スラグ不法投棄特別調査チーム「リットン調査団」集合(^^)/。

団長A:さて久しぶりのスラグ調査もいよいよ最終回じゃ。
団員B:上武鳥取信号の大型土のう袋の周辺をもう少し調査しよう。


デジタルカメラでズームアップ!ものすごい大型土のう袋の数ですね。


せっかく盛り上げた盛り土を一体どこまで掘削するのか?悪徳建設資材業者の(株)佐藤建設工業が盛り土材にスラグを投棄しなければこんなことにはならなかったのに、迷惑な話じゃ。あれあれ~一段差下がったところが白くない?


本当だ。真っ白なところがあるぞい。


サビ浮き石発見!有害スラグじゃ。しかも生一本状態ではないか。大同特殊鋼(株)と(株)佐藤建設工業は、スラグと天然石を混ぜることが悪いことだと知らなかったということで、不法投棄の告発を免れたのだよね。これは、混ざって無い生一本スラグの残骸だ!しかも土壌とそのものである盛り土材の中だよ。これはまさに典型的な不法投棄事例じゃないか。国土交通省のみなさん!不法投棄で告発してください。お願いします!


オイオイ、いくらお願いしたって徘徊老人の言うことなんか聞いてくれないよ。我々はただ徘徊するのみじゃ。また調査にでかけよう!
*****調査レポート終わり*****

■群馬県内の国道や県道、市道にはアスファルトの下に大量の有害スラグが投棄されている道路があります。たとえば急いで4車線化された高崎渋川バイパスのアスファルト下には、大量の大同特殊鋼(株)由来のスラグや東邦亜鉛(株)由来のスラグがコラボ投棄されてると当会は疑っています。

 高崎渋川線バイパス4車線化についてはこちらをご覧ください。↓↓
URL ⇒ https://www.pref.gunma.jp/houdou/h35g_00013.html
**********
【11月26日】(主)高崎渋川線バイパス(2期工区)の一部区間が12月1日から順次4車線で供用します(道路整備課)
 (主)高崎渋川線バイパスの2期工区のうち、千代開(ちよかい)交差点から小倉中央(おぐらちゅうおう)交差点までの延長1,520メートルが4車線で供用します。
 今回の開通により、住民生活の利便性と安全性の向上が期待されます。
1 供用日
 令和2年12月1日(火)から順次
2  供用区間
 千代開交差点(吉岡町北下)から小倉中央交差点(吉岡町小倉)
 延長1,520メートル(2/4車線→4/4車線)
3 その他 
 式典等の開催はありません。
4 (主)高崎渋川線バイパス(2期工区)概要図

このページについてのお問い合わせ
県土整備部道路整備課
〒371-8570 前橋市大手町1-1-1
電話 027-226-3578
FAX 027-243-0250
E-mail douseibi@pref.gunma.lg.jp
**********

■なぜか高崎渋川線バイパス4車線化工事は急ピッチで進められましたが、それはスラグが大量に投棄されていて、リットン調査団に調査されるのが怖かったからかもしれません。

 しかしリットン調査団など怖がることはありません。なぜならスラグは撤去して最終処分場に埋設処分すれば良いからです。

 また、大同特殊鋼(株)や(株)佐藤建設工業、東邦亜鉛(株)や(株)岡田工務店・大野工業(株)にその撤去費用を請求すればよいのです。

 当会は、これからも有害スラグが撤去されるまで、活動を続けてまいります。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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【出張!オンブズマン】長野高専総務課長の今年7月末出張に旅費不正請求疑惑?…調査結果“問題なし”!

2020-11-26 23:36:00 | 【出張!オンブズマン】長野高専の闇
■緊急事態宣言中のコロナ規則破り疑惑が取り沙汰されている長野高専の岩佐総務課長について、同校関係者らから7月末から8月初頭にかけて相次いで情報提供が寄せられました。7月31日(金)昼、教職員宿舎の指定駐車場から岩佐氏の自家用車が消えていることが確認され、いつも通り東京の自宅に帰ったことは確実でした。一方で、その日の岩佐氏は東京への出張予定になっていたというのです。

 高専機構の出張規則では、距離200km以上の自家用車出張は禁止されているそうです。すると、新幹線扱いはもちろんのこと、自家用車のガソリンや高速代扱いにしてもアウトですから、出張に関する長野から東京への往復交通費分はどうやっても請求できないことになります。そのため、同校関係者らから「旅費を不正請求しているのではないか」という疑念が相次いで当会に寄せられたのです。そこで当会では、本件について検証をおこなうことにしました。

■まず、9月12日、高専機構監査室に以下の問い合わせ状を発出しました。

*****9/12機構監査室宛問合せ状*****ZIP ⇒ 202009127ovsfj.zip
                        令和2年9月12日
〒193-0834 東京都八王子市東浅川町701-2
独立行政法人国立高等専門学校機構 監査室 御中
TEL: 042-662-3243(監査室)/FAX: 042-662-3131(機構本部代表)

 〒371-0801 群馬県前橋市文京町1丁目15番10号
          市民オンブズマン群馬  代表  小川 賢
                 TEL: 027-224-8567(事務局・鈴木)/
                    090-5302-8312(代表・小川)
                 FAX: 027-224-6624

           長野高専職員の旅費不正受給疑惑に係る問合せ

拝啓 日々益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。
 弊団体は、行政およびその関連機関を外部から監視し、当該機関による権限の不当な行使ないしは不行使による一般国民への権利利益侵害、並びに税金を原資とした公的資金の濫費について、調査および救済の勧告を図る活動をしている民間団体です。なお、弊団体は群馬県を主な活動地域としていますが、事案によっては、適宜近隣の県への出張活動も行っております。

 さて、長野高専の岩佐達也総務課長が、今年7月31日に東京へ出張した際、前日に教職員宿舎から自家用車で東京に向かっていたとの情報が当会に寄せられました。こうした行動が事実であれば、自家用車での200km以上の出張を禁じる旨の貴法人規則に抵触するおそれがあります。また、公共交通機関で移動したという扱いで旅費を虚偽申請・不正受給していた疑惑が同校関係者の間から指摘されています。

 したがって、貴法人の会計監査を司る貴部署に対し、事実関係確認の調査と、そのご回答を求めます。なお、回答については、大変勝手ながら、書面で2020年9月28日(月)までに郵送あるいはFAXにて上記弊連絡先まで折り返し送達いただければ幸いです。
 なお、何らかの事情によりこの期限までの回答が不能である場合は、大変お手数ではありますが上記弊連絡先までお伝えいただきたく存じます。

                                 以上
**********


■同時に、監査室に完全に検証を委ねず、キチンと事実関係を当会担当者の目でも確認するため、高専機構本部に対して次の法人文書開示請求書を郵送で提出しました。

*****9/12開示請求書*****ZIP ⇒ 202009127ovsfj.zip
             法人文書開示請求書

                            令和2年9月12日

  独立行政法人国立高等専門学校機構
  理事長 殿

        氏名又は名称:(法人その他の団体にあってはその名称及び代表者の氏名)
         市民オンブズマン群馬   代表 小川 賢            
        住所又は居所:(法人その他の団体にあっては主たる事務所等の所在地)
         〒379-0114 群馬県安中市野殿980           
                        TEL 090(5302)8312 
        連  絡  先:(連絡先が上記の本人以外の場合は,連絡担当者の住所・氏名・電話番号)
         〒371-0801 群馬県前橋市文京町一丁目15-10    
                    市民オンブズマン群馬事務局長  鈴木 庸
                 TEL:027-224-8567


 独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律第4条第1項の規定に基づき,下記のとおり法人文書の開示を請求します。

                    記

1 請求する法人文書の名称等
(請求する法人文書が特定できるよう,法人文書の名称,請求する文書の内容等をできるだけ具体的に記載してください。)
長野高専の岩佐達也総務課長が、令和2年7月31日に東京に出張したことに関し、出張の経緯、出張目的、出張報告、旅費申請(交通機関等の領収書があればそれを含む)、および旅費支給に関する情報の一切(長野高専・高専機構本部を含めた高専機構全体として保有している文書の一切とする)。

【当会注:後略】
**********

■当会では、このように、問い合わせと文書開示請求の両輪から事実関係の検証を行っていくことにしました。

 まずは、高専機構監査室からの返答を待ちました。しかし、当会が指定した回答期限である9月28日になってもまったく音沙汰がなく、回答遅延に関する連絡すらもありません。たった一件の出張に関する事実確認にも関わらず、何を手こずっているのでしょう。

 そのまま高専機構監査室からの回答を待っていると、10月21日付けで、ようやく以下の回答が寄せられました。

*****10/21付高専機構監査室回答*****ZIP ⇒ isoj.zip
                        令和2年10月21日

市民オンブズマン群馬代表
    小 川  賢  殿

               独立行政法人国立高等専門学校機構
                           監査室長

     長野高専職員の旅費不正受給疑惑に係る問合せへの回答について

 令和2年9月12日付けで依頼のありました、長野高専職員の旅費不正受給疑惑に係る問合せについて、別紙のとおり回答いたします。よろしくお願いいたします。

                    〒193-0834
                    東京都八王子市東浅川町701-2
                    独立行政法人国立高等専門学校(ママ)
                              監査室

                     電話:042-662-3243
**********

*****回答別紙*****
    長野高専職員の旅費不正受給疑惑に係る問合せへの回答について

 【問合せ内容】
  長野高専の岩佐達也総務課長が、今年7月31日に東京へ出張した際、前日に教職員宿舎から自家用車で東京に向かっていたとの情報が当会に寄せられました。こうした行動が事実であれば、自家用車での200km以上の出張を禁じる旨の貴法人規則に抵触するおそれがあります。また、公共交通機関で移動したという扱いで旅費を虚偽申請・不正受給していた疑惑が同校関係者の間から指摘されています。

 したがって、貴法人の会計監査を司る貴部署に対し、事実関係確認の調査と、そのご回答を求めます。

【回答】
 事実関係を確認したところ、当該出張は、当機構規則等に則っておりますので、問題ないと考えます。
**********


■このように、40日近くかけて監査室から返ってきたのは、問題の存在を完全否定する一文回答でした。

 そうなると、最初から本当に問題などなかったのか、それとも実は問題があったものの隠蔽されてしまったのか、ということが気にかかります。そのため、7月末出張関連情報に関する情報開示請求の行方に注目が移りました。

 実は、上記の開示請求書を提出して間もなく、9月17日に機構本部総務課の橋本職員から以下のメールが寄せられていました。「機構本部では文書を保有していないので、長野高専に転送したい」とのこと。後述のとおり、このメールを発端に、各文書と開示実施の管轄をめぐって10日間ほどのメール応酬を重ねることになりました。

*****9/17機構⇒当会メール*****
From: 総務課
Date: 2020年9月17日(木) 10:41
Subject: 【高専機構:確認】R2.9.12付_法人文書開示請求について
To: masaru ogawa
Cc: 総務課総務係(高専機構)

市民オンブズマン群馬 小川様

いつもお世話になっております。
高専機構総務課の橋本でございます。

令和2年9月12日付け開示請求書につきまして、請求内容を確認しましたところ、当該東京出張は高専機構本部への用務ではなくこちらでは情報を保有しておりません。
開示請求書を長野高専へ送付させていただこうと思いますがいかがでしょうか。

なお、本部監査室宛ての質問状に関しては本部にてご回答させていただきますことを申し添えます。

【署名略】
**********

■高専関係者の話では、出張旅費の最終承認や振込みは各高専ではなく高専機構の名義で行われるといいます。そうなると当然、各高専としてでなく「高専機構」として作っている情報が無いわけはありません。そうした文書は機構本部で開示する扱いになるのが妥当なはずです。

 また、そもそも、長野高専に請求の担当が移されてしまうと、当然総務課のトップである岩佐本人が開示業務を掌握することになります。仮に疑惑が事実であれば、保身のために無理に文書を不開示にするなど、隠蔽劇をしでかされてもたまりません。そこで、当会からは以下のメールを返信しました。

*****9/18当会⇒機構メール*****
From: masaru ogawa
To: 総務課
日付: 2020/09/18 1:04
件名: Re: 【高専機構:確認】R2.9.12付_法人文書開示請求について

高専機構本部
総務課総務係
橋本様

毎々お世話になります。丁寧にご連絡を賜り恐縮です。
貴メールについて、以下のとおり回答と折り返しの質問をさせていただきます。

>請求内容を確認しましたところ、当該東京出張は高専機構本部への用務ではなくこちらでは情報を保有しておりません。

とのことですが、貴法人においては例えば出張経費を支給するにあたっての最終確認などは高専機構がおこなっているとの話もうかがっております。高専機構本部への用務ではない一般の出張についてでも、各種申請や報告等で高専機構として関わっている部分があればその情報を検索・開示いただきたいという趣旨ですが、その点の見解はいかがでしょうか。

>開示請求書を長野高専へ送付させていただこうと思いますがいかがでしょうか。

これまでも、たびたび高専機構本部を介して各高専保有文書の開示請求をおこなわせていただいており、問題なく開示実施されております。
すいませんが、転送を待つことなく迅速に開示業務を開始していただきたいため、本部から長野高専に対し該当保有文書の提出を命令し、そのまま本部において開示実施業務をおこなっていただきたく存じます。
また、開示の実施方法の面でも、仮に現地開示を受ける場合、現在の弊会担当者の個人的な事情から長野高専より機構本部の方が負担が小さいため、本件に関しては機構本部の受け持ちとしていただくことを希望します。

>なお、本部監査室宛ての質問状に関しては本部にてご回答させていただきますことを申し添えます。

とのことですが、本部のどの部署において回答をおこなうのでしょうか。
本件はまさに貴法人の予算使途や会計監査にかかる問題であり、監査室は担当部署として間違ってはいないはずです。さらに、監査室は建前上であっても監事直属の独立部署のはずですが、本部の別部署が質問を横取りして回答するのであれば、監査独立性の観点から問題があるのではないでしょうか。

以上、よろしくお願いします。

市民オンブズマン群馬
代表 小川賢
**********

■すると、当日中にまた橋本職員から返信がありました。「『承認』は画面上でのことなので開示できる文書はない」とのこと。

*****9/18機構⇒当会メール*****
From: 総務課
Date: 2020年9月18日(金) 17:47
Subject: Re: 【高専機構:確認】R2.9.12付_法人文書開示請求について
To: masaru ogawa
Cc: 総務課総務係(高専機構)

市民オンブズマン群馬 小川様

いつもお世話になっております。
高専機構総務課の橋本でございます。

ご確認ありがとうございます。

高専機構の旅費業務全体の流れを少し御説明させていただきます。
各高専で出張申請・承認から出張報告・承認までを行い、その後、本部にて専用システムの画面上で『旅費の計算結果データの確認』を行ったのちに、旅費の支払いへと流れていきます。

画面上での確認・承認であることから、既に全ての処理が完了している岩佐総務課長の当該出張分については、開示できる文書がございませんが、本部が旅費支給に関してどのようなデータを画面に表示させて、確認・承認をしているのか、他の教職員の出張をサンプルにして補正にてお示しできるかと思いますが、ご希望されますでしょうか。

取り急ぎ、この部分につきましてご回答させていただきます。

どうぞよろしくお願い申し上げます。

【署名略】
**********

■「画面上」の話だとしても、ただその「画面」をプリントアウトすれば済むはずです。また、旅費の振り込み元が高専機構である問題についても言及されていません。どうにも機構本部は妙に情報開示担当となるのを拒み、長野高専へと開示業務を移管したがっているようです。

 そこで当会からは、文書の管轄について白黒付けるべく、以下のメールを発出しました。

*****9/23当会⇒機構メール*****
From: masaru ogawa
To: 総務課
日付: 2020/09/23 8:44
件名: Re: 【高専機構:確認】R2.9.12付_法人文書開示請求について

高専機構本部
総務課総務係
橋本様

毎々お世話になります。
公務ご多用のところご対応下さり感謝申し上げます。
先週末(9/18)にいただいた高専機構の旅費業務に関する貴説明メールを拝読いたしました。

かかるメールを踏まえまして、以下3点ほど新たに質問が生じたため、下記します。

(1)旅費業務に際して画面上で確認を済ませているとしても、旅行命令簿や復命書その他の「画面」を開示対象情報としてプリントアウトすることは可能なはずですが、いかがでしょうか。
(なお、長野高専・高専機構本部で同様情報へのアクセスが可能であれば、それは高専機構の保有文書であるものとして、本部にて開示願います)

(2)また、旅費の振り込みについても、振込依頼人は仮に各高専だとしても、実際の振り込み自体は高専機構本部の財務課出納係によるもののはずであり、機構本部としてそれに関わる情報を保有していなければおかしいはずですが、いかがでしょうか。

以上、貴ご見解を賜りたく存じます。

市民オンブズマン群馬
代表 小川賢
**********

■するとようやく、素直に機構本部扱いの文書が含まれていることを認め、同時に機構本部が開示実施業務を担当できることを認めました。

*****9/25機構⇒当会メール*****
From: 総務課
Date: 2020年9月25日(金) 19:52
Subject: Re: 【高専機構:確認】R2.9.12付_法人文書開示請求について
To: masaru ogawa
Cc: 総務課総務係(高専機構)

市民オンブズマン群馬 小川様

いつもお世話になっております。
高専機構総務課の橋本でございます。

ご質問いただきました件につきまして、9/23に新たにいただいたものからお答えさせていただきます。

(1)につきましては、「画面」をプリントアウトしたもので開示文書としてお渡しさせていただきます。

(2)につきましては、本部出納係から岩佐課長への振込が行われたことが分かる文書との理解でよろしいでしょうか。
その場合は、振込日の翌月に振込実績として、振込先、金額等の明細が取引銀行から本部宛へ届きますので、そちらを開示対象文書と考えております。

また、9/18にいただいておりました質問につきましても、併せまして以下のとおりご回答させていただきます。

開示の実施を長野高専ではなく、高専機構本部でのご希望とのことでございますが、機構規則では『法人文書の開示は、当該文書を保有する各学校等の情報公開窓口において行うもの』とされております。
ただし、今回の開示請求のように長野高専、機構本部の複数にまたがって文書を保有している場合に限って、機構本部で取りまとめて開示の実施を今までもやっておりました。
9月12日付け法人文書開示請求書の開示の実施につきましては、本部での実施をご希望の旨、承知いたしました。

なお、本部監査室宛ての質問状は同監査室からご回答させていただきます。

どうぞよろしくお願いいたします。

【署名略】
**********

■ただし9月28日、開示実施は機構本部で行ってよいものの、手数料の請求は長野高専が行うという連絡がよこされました。どうにも管轄が複雑です。

*****9/28機構⇒当会メール*****
From: 総務課
Date: 2020年9月28日(月) 11:26
Subject: Re: 【高専機構:確認】R2.9.12付_法人文書開示請求について
To: masaru ogawa
Cc: 総務課総務係(高専機構)

市民オンブズマン群馬 小川様

いつもお世話になっております。
高専機構総務課の橋本でございます。

ご連絡ありがとうございます。
これにて開示の準備を進めてまいります。

また、本件は長野高専総務課長の出張にかかる開示請求ということで手数料の御案内等につきましては、長野高専からご連絡予定でございます。
開示の実施は機構本部にて行いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【署名略】
**********

■その後、長野高専の白木職員から、「長野高専保有分が1件、機構本部保有分が2件の計3件×300円=900円を長野高専の口座に振り込んでほしい」とメールで連絡がありました。

 指示通り手数料を振り込んで待っていると、以下の10月23日付開示決定通知書が、10月28日に長野高専から届きました。

*****岩佐7月末出張情報開示決定通知*****ZIP ⇒ 20201028ljmioj.zip
                        長野高専庶第42号
                        令和2年10月23日

               法人文書開示決定通知書

 市民オンブズマン群馬 小川 賢 様

                  独立行政法人国立高等専門学校機構

 令和2年9月12日付けで請求のありました法人文書の開示について,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律第9条第1項の規定に基づき,下記のとおり開示することとしましたので通知します。

                     記

1 開示する法人文書の名称
  長野高専の岩佐達也総務課長が、令和2年7月31日に東京に出張したことに関し、出張の経緯、出張目的、出張報告、旅費申請および旅費支給に関する情報の一切。

 【長野高専分】
 (1)令和2年度支払関係証拠書類
 【機構本部分】
 (2)旅費システムにおける本部確認承認画面
 (3)振込明細一覧表


2 不開示とした部分とその理由
   (1)令和2年度支払関係証拠書類
   不開示部分:個人に関する情報が記載されている部分
   理   由:法第5条第一号及び法第5条第四号柱書きに該当すると認められ、また、法第5条第一号ただし書きに該当するとは言えず、不開示とすることが相当
   不開示部分:口座情報
   理   由:法第5条第一号及び第二号イに該当すると認められ、また、法第5条第一号ただし書き及び第二号ただし書きに該当するとは言えず、不開示とすることが相当

   (2)旅費システムにおける本部確認承認画面
   不開示部分:個人に関する情報が記載されている部分
   理   由:法第5条第一号に該当すると認められ、また、法第5条第一号ただし書きに該当するとは言えず、不開示とすることが相当

   (3)振込明細一覧表
   不開示部分:振込に関する銀行情報
   理   由:法第5条第二号イに該当すると認められ、また、法第5条第二号ただし書きに該当するとは言えず、不開示とすることが相当
**********

 機構本部に開示通知を送り、開示実施も機構本部で可能という言質を得たものの、開示業務は完全に長野高専の取り扱いにされたようです。当会担当者の都合がつかなかったため、機構本部での現地開示は今回諦め、郵送での開示を希望した申出書と郵便切手を長野高専に返送しました。


■開示文書の行方を握る岩佐本人が無理やり全面黒塗りなどにしていないことを祈りながら開示を待っていると、11月5日付の送り状とともに、開示文書一式が当会に送られてきました。

●長野高専岩佐総務課長のR2年7月末出張関連情報一式 ZIP ⇒ 202011071tljp0107.zip
202011072tljp0813.zip

■さっそく文書を確認しました。どうやら出張目的は、長野高専名誉教授である山本行雄氏が教育功労で瑞宝小綬章を受章したため、代理で文科省まで受け取りに赴くことだったようです。

○参考:内閣府『令和2年春の叙勲長野県』
https://www8.cao.go.jp/shokun/hatsurei/r02haru/meibo_jokun/zuiho-20nagano.pdf

 そして、肝心の「支払決議書」や「支払伝票」を見ると、そこには1,410円の数字が記載されていました。「旅行計算書」を見ると、岩佐氏の自宅(八王子界隈)から文科省までの片道47km分のみ自家用車で往復した扱いにされており、その他の移動分については特に請求されていないことがわかります。となると、特にルールには違反していませんから、確かに問題にはなりません。


岩佐氏の7月末東京出張に係る旅行計算書

 他の線も検討してみましょう。例えば、岩佐氏が今回の出張について何かしら不正な請求をしていたものの、当会からの質問状を受けて、大慌てで請求補正をし、「なかったこと」にしたという可能性はないでしょうか。

 当会担当者は、すぐにその線も薄いことに気が付きました。「支払決議書」や「債務伝票」、「支払伝票」の左上にある出納予定日を見ると、9月10日になっています。当会が機構監査室への質問状や情報開示請求を送ったのは9月12日ですから、時系列からして、旅費が支払われる前に請求を補正することは不可能です。なお、高専関係者によれば、「もし旅費が支払われた後に補正をしようとすれば、最低でも返金手続きが必要であり、痕跡がまったく残らないことは考えにくい」とのこと。

■最後に気になる点は、なぜ八王子から霞が関までの往復で、公共交通機関でなくわざわざ自家用車を使ったのかという点です。今回の開示文書を読んだ高専関係者によれば、「岩佐氏は、高専機構の理事長裁定に従って、自家用車を業務使用するための指定車登録をしていることがわかる」とのこと。ただし、同裁定においては、指定車を使用できる基準のひとつとして「交通の便が良くないこと」があるようです。

 我が国でもひときわ高密度の線路・バス網を持つ東京内の移動がこれに当たるのであれば、日本全国は不毛の地です。この点は平時であれば著しく不自然であり、当会としても疑問に感じました。ただし、今の時勢を考慮すると、「三密&不特定多数との接触を回避するためあえて自家用車を使った」というある程度もっともらしい反論も想定されます。

■このように、取り沙汰された7月末の東京出張について、岩佐氏は『シロ』であったというのが当会の検証結果です。

 いくらコロナ規則破り疑惑でさんざん無法をはたらいている岩佐氏とはいっても、事実に基づかない濡れ衣を着せることは本意ではありません。したがって、「不正疑惑は杞憂に終わってくれた」という宣言をもって、当会としての結論とさせていただきます。

 ただしひとつ、興味深い情報提供もあったことを付記します。今回の当会による検証作業に関するものかは不明ですが、10月28日の午前、またもや土居校長と岩佐総務課長の間で「密談」が行われていたそうです。監査室が「問題なし」の回答をした後でなお、どのような内容の密談をしたのか、気になるところではあります。

■当会では、長野高専の抱える諸問題について、引き続き検証と追及を行ってまいります。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第一次訴訟98%敗訴・第二次訴訟全面敗訴のダブル不当判決に仰天!

2020-11-25 23:56:00 | 群馬高専アカハラ問題
■高専組織の情報隠蔽体質の是正のため、当会では2019年10月に第一次・第二次の二回にわたり高専機構を東京地裁に提訴し、「高専過剰不開示体質是正訴訟」プロジェクトとして法廷の闘いを行ってまいりました。新型コロナ禍による裁判所の機能停止や、被告高専機構とその訴訟代理人である銀座の弁護士による幾度もの卑怯な法廷戦術といった苦境に見舞われつつも、提訴から1年をかけてようやく両訴訟は結審し、同日同時刻に「ダブル判決」が設定されました。

 判決言渡当日となった11月24日、その聴取および二件の判決正本受領のため、当会担当者が東京地裁へと向かいました。

 ところが待っていたのは、第一次訴訟について原告当会のほぼ全面敗訴、第二次訴訟に至っては訴訟費用まで含め全面敗訴という、想像を絶する「ダブル不当判決」でした。



11月24日(火)午後1時15分、7階と4階の法廷でほぼ同時に不当判決が言い渡された東京地方・高等裁判所合同ビル。手前左側は法務省赤レンガビル。



■この高専過剰不開示体質是正訴訟の流れについては以下の記事をご覧ください。

【第一次訴訟の流れ】
○2019年10月19日:高専組織の情報隠蔽体質是正は成るか?オンブズが東京地裁に新たなる提訴!(その1)
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3055.html
○2019年10月19日:高専組織の情報隠蔽体質是正は成るか?オンブズが東京地裁に新たなる提訴!(その2)
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3056.html
○2019年12月30日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第一次提訴に対する高専機構からの答弁書と第一回口頭弁論の様子
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3101.html
○2020年3月5日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第一次訴訟での被告・原告の準備書面(1)と第二回口頭弁論の様子
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3129.html
○2020年4月7日:【お知らせ】新型コロナ緊急事態宣言のため高専過剰不開示体質是正訴訟の審理が一時中断
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3144.html
○2020年4月12日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】銀座弁護士の本気?第一次訴訟で被告高専機構が準備書面(2)を提出
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3148.html
○2020年6月3日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】コロナ中断の第一次訴訟に再開通知…第3回口頭弁論再日程は7月7日
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3170.html
○2020年7月9日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】七夕の第一次訴訟第3回弁論報告&第二次訴訟の再開通知到来!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3180.html
○2020年8月16日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第一次訴訟で当会が原告準備書面(2)提出…機構は準備書面無し!?
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3192.html
○2020年8月21日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】酷暑の中で行われた8.20ダブル口頭弁論の様子
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3194.html

【第二次訴訟の流れ】
○2019年10月20日:高専組織の情報隠蔽体質是正は成るか?オンブズが東京地裁に新たなる提訴!(その3)
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3057.html
○2020年3月5日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第二次提訴に対する高専機構からの答弁書と第一回口頭弁論の様子
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3128.html
○2020年4月7日:【お知らせ】新型コロナ緊急事態宣言のため高専過剰不開示体質是正訴訟の審理が一時中断
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3144.html
○2020年4月13日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】緊急事態宣言に揺れる東京で原告当会が第二次訴訟準備書面(1)提出!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3149.html
○2020年7月9日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】七夕の第一次訴訟第3回弁論報告&第二次訴訟の再開通知到来!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3180.html
○2020年8月14日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】コロナ凍結の第二次訴訟再開目前に届いた被告高専機構の準備書面(2)
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3190.html
○2020年8月21日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】酷暑の中で行われた8.20ダブル口頭弁論の様子
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3194.html
○2020年10月28日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】被告が敗勢悟り「訴訟オジャン作戦」発動!? 第2次訴訟の急展開な行方
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3231.html

■11月24日(火)、当会出廷者は高崎発の新幹線に乗り、11時ちょうどに東京駅に到着しました。この日は、永田町にある某団体を訪問する用事があったため、そちらを先に済ませることにしました。永田町で面会協議を終えた後、有楽町線に乗り、桜田門駅で降りました。地表に出ると、法務省の赤レンガ庁舎の奥に、目指す裁判所合同庁舎ビルが見えました。

 奇しくも3年前の同じ日は、群馬高専J科アカハラ情報不開示取消訴訟に関する地裁判決が言い渡された日でした。原告の3分の1程度部分勝訴と、かなり行政寄りなものでしたが、一応は最後の良識が作用したのか、原告の言い分の一部も辛うじて認めたものでした。被告高専機構はこれを不服として控訴し、結果的に西尾逃亡のための時間稼ぎに成功した形になったのでした。
○2017年11月24日:【速報】アカハラと寮生死亡事件に揺れる群馬高専…アカハラ情報不開示訴訟で東京地裁が原告一部勝訴判決!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2476.html

 裁判所の構内に入ると、大勢の職員が食事のためゾロゾロと庁舎玄関から出てきました。ちょうど昼休み時間になった様子でした。その様子を横目に見ながら、いつもどおり入口の消毒用アルコールで両手を殺菌し、手荷物検査と金属探知ゲートを通り、裁判所の1階ホールに入りました。

 初めに、正面の受付の左側にある法廷表の検索コーナーに行き、ダブル訴訟判決の法廷番号と時刻を確認しました。タッチパネルの画面を見ながら、第一次訴訟(事件番号:令和元年(行ウ)第515号)担当の「民事第2部」と第2次訴訟(事件番号:令和元年(行ウ)第549号)担当の「民事第51部」で検索をしたところ、前者では12件、後者では4件が該当し、その中で当会の関わる事件2つも予定どおり判決言渡されることが確認できました。

■開廷までにまだ1時間ほど時間があるため、地下にある食堂で腹ごしらえをしてから、第一次訴訟の判決言渡しが行われる7階の703号法廷に向かいました。法廷前の廊下に貼りだされている法廷表を見ると、13時15分から4件の行政事件の判決言渡しが行われることがわかりました。当会の第515号事件は4件の一番上に記載されていました。しばらく待合室で時間を過ごしていましたが、12時45分頃になり、第二次訴訟の判決言渡しが行われる4階の419号法廷の様子も見に行きました。こちらも、廊下に貼りだされている法廷表に当会の事件が明記してありました。

 再び7階に戻ると、控室は、スーツ姿の男女らで長椅子が埋められていました。廊下にも大勢の人が集まっていました。同時に4件の行政事件の判決言渡しがあるためか、こうして大勢が判決言渡を聞こうとしていることに驚きました。法廷表を指さして話しているグループの様子で、どうやら表の3件目に記載のあった年金事件に関する関係者が多いことがうかがえました。

■13時5分過ぎ、傍聴者入口のドアが内側から開かれたので、最初に入りました。正面中央にある机の上に出頭カードが並べてあり、その一番左側に当会の闘ってきた第一次訴訟のカードがあったので、原告欄に市民オンブズマン群馬と印刷されてある下に氏名を大きく書きました。

 男性書記官が「どうぞお入りください」と促したので、さっそく法廷内の原告席に着座しました。その後、開廷5分前になると、さきほど見掛けたスーツ姿の集団がぞろぞろ入ってきました。書記官が「法廷内に入って判決をお聞きになる方はここに署名してください」と出頭カードを示して促しましたが、結局当会出廷者以外は誰もカードに署名した人は現れませんでした。傍聴者の数を数えるとちょうど20名でした。

 定刻の13時15分きっかりに、法廷の右側から通路を歩いてくる足音が聞こえ、ドアが開かれて2名の裁判官が現れました。マスクで顔は隠れていましたが、それでも本件を担当してきた森裁判長の姿でないことはわかりました。どうやら代読のようです。

■男性書記官が事件番号「令和元年(行ウ)第515号」と事件番号を読み上げると、裁判官が紙を広げ読み始めました。

 「それでは判決の言渡しを行います。主文1:被告が平成31年4月16日付けで原告に対してした法人文書開示決定のうち、別紙1記載1の部分について、項目名および整理ナンバーに係る情報を不開示とした部分を取り消す。 2:原告のその余の請求を棄却する。 3:訴訟費用は、これを50分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担とする」

 主文が早口で読み上げられたため、にわかに内容を咀嚼できませんでした。いつもの「原告の訴えを棄却する」という判決主文ではなかったため、完全敗訴ではないことが分かりました。しかし、訴訟費用の負担割合について、被告側がわずか50分の1であることから、これは相当に厳しい判決結果らしいと直感しました。

■そして、裁判官に一礼をしてから、法廷を後にしました。傍聴人出口から廊下に出る際に、書記官が次の事件番号を読み上げる声が聞こえました。廊下に出ていると、中から数人のスーツ姿の傍聴人が出てくるのが見えました。その中に、マスクをしてはいましたが、確かに藍澤弁護士らしき姿もありました。せっかく来たのであれば、法廷内の被告席に着座すればよいのにと思いましたが、出頭カードにさえ署名していませんでした。

 もっとも、判決言渡しに出頭する義務はなく、あとで裁判所から判決文は郵送されてきます。それでも一刻も早く判決内容を知るためには、当日に傍聴する必要があります。高専機構側の訴訟代理人としては、第一次訴訟の判決結果について、やはりどのような判断を裁判所が下すのか、関心があったようです。

 また、第一次訴訟の判決言渡しが終わった後、傍聴人席から弁護士以外にも廊下に出てきた者が数名いたことから、機構本部からも判決内容を聞くために派遣されてきた職員がいたようです。

■筆者は、さっそく判決正本を受領するため、第一次訴訟を担当する民事第2部の窓口を訪れました。まだ、判決が言い渡されてから5分も経過しておらず、被告の高専機構側も判決文を取りに来ている風情もないので、2、3分、廊下に面した壁に並べてあるパイプ椅子で腰掛けて様子を見ていましたが、誰も来る気配はありませんでした。

 窓口に行き、「さきほど判決のあった第515号事件の判決正本を受け取りにきました」とビニールシート越しに告げると、中からファイルを手にした職員が出てきました。職員はファイルを開き、「原告(代表)の小川さんご本人ですね」と訊いてきました。「そうです」と答えると、受領票が差し出され、「ここに署名と押印をお願いします」と指示されたので、署名押印をし、全部で35頁の判決文を受け取りました。あわせて、使い残りの郵券も渡されました。

 続いて、エレベーターを挟んだ反対側の民事第51部に行き、同様に判決正本を受領しました。こちらは、僅か10頁です。

 とりあえず受け取ってから、パイプ椅子に腰かけてまず主文を読んだところ、「1:本件訴えを却下する。2:訴訟費用は原告の負担とする」という全面敗訴の文面が目に飛び込んできました。しかもよくある「棄却」でなく、「却下」となっていたので、さらに驚きました。そうなると、原告の申し立てた訴えの変更についてはどうなったのだろうと思い、4ページ目の「第3 当裁判所の判断」のところに目を通しました。

 すると、「裁判所の判断」として、「訴訟が終わりかけているときにこうした訴えの変更をするのは、裁判をいたずらに遅らせるので、行政事件訴訟法や民訴法に照らしても許されるものではない」、という趣旨のことが書かれています。そもそも訴えの変更をせざるを得ない状況を作ったのは被告高専機構のほうなのに、問答無用でその責任をすべて原告に押し付けてくることに唖然としました。我が国の裁判所とそのヒラメ裁判官(常に上目遣いでお上の意向を気にしている裁判官の例え)というのは、これほどまでに国の機関に対して忖度するものなのか、と改めて痛感しました。そして、暗たんたる気持ちで裁判所の玄関を出ました。

■ところで脇道話をすると、玄関を出たところで、右手の傍聴券交付受付のところに百人以上が待機している光景が目に入りました。当会出廷者も、佐野太事件の裁判の傍聴などに際して、公判傍聴抽選に何度か並んだことがあります。今日はいったいどんな事件の傍聴なのだろと興味を覚え、傍聴券交付受付のほうに歩いていきました。担当係の職員が「傍聴を希望されますか」と声をかけてきました。筆者は「どんな事件なのかちょっと確認させてください」と言い、掲示ボードを見ました。

 するとそこに、「東京地方裁判所民事第38部」として、「東京外環道大深度地下使用認可無効確認等 平成29年(行ウ)第572号」と記されていました。交付日時と場所が「令和2年11月24日午後1時40分 東京地方裁判所1番交付所」とありました。密集住宅街での地面陥没という驚愕の事態で全国ニュースを騒がせているトピックですから、注目の高さも合点がいきました。ちょうど筆者が通りがかった際は、締切時間ギリギリだったことから、係員も積極的に声掛けをしてきたようすでした。

 開廷時間は午後2時からとなっており、傍聴していると群馬に戻れるのが夕方になってしまうため、できれば傍聴にトライしてみたい気持ちもありましたが、後ろ髪をひかれる思いで「残念ですが時間がありません」と係員に告げ、裁判所を後にしました。閑話休題。

■それでは、実際に判決文を読んでみましょう。本ブログの文字数制限の問題から、双方の主張を要約してまとめた箇所や、添付の別紙・関係法令等は割愛します。判決全文の確認は掲載のファイルを各自ダウンロード・展開のうえお願いいたします。

●第一次訴訟(令和元年(行ウ)第515号)判決全文 ZIP ⇒ 202011241anisej515iij.zip
202011242anisej515iijlf.zip
●第二次訴訟(令和元年(行ウ)第549号)判決全文 ZIP ⇒ 20201124anisej549ipj.zip

■まずは、第一次訴訟の判決文です。

*****第一次訴訟(令和元年(行ウ)第515号)判決文*****
令和2年11月24日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和元年(行ウ)第515号 法人文書不開示処分取消請求事件
口頭弁論終結日 令和2年8月20日

              判       決

  前橋市文京町1丁目15-10
      原        告  市民オンブズマン群馬
      同 代 表 者 代 表    小  川    賢

  東京都八王子市東浅川町701番2
      被        告  独立行政法人国立高等専門学校機構
      同 代 表 者 理 事 長  谷  口     功
      同 訴訟代理人弁護士   木  村  美  隆
                  藍  澤  幸  弘
                  角  谷  千  佳

             主      文

1 被告が平成31年4月16日付けで原告に対してした法人文書開示決定のうち,別紙1記載1の部分について,項目名及び整理Noに係る情報を不開示とした部分を取り消す。
 2 原告のその余の請求を棄却する。
 3 訴訟費用は,これを50分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。


            事 実 及 び 理 由
第1 請求
   被告が平成31年4月16日付けで原告に対してした法人文書開示決定のうち,別紙1記載の各部分を不開示とした部分を取り消す。

第2 事案の概要
   本件は,原告が,被告に対し,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)に基づき,その保有する法人文書の開示を請求したところ,被告から,一部を開示し,その余を開示しない旨の決定(以下「本件決定」という。)を受けたことから,本件決定のうち,別紙1記載の各部分を不開示とした部分は違法であるとして,その取消しを求める事案である。

1 法の定め
  本件に関係する法の定めは,別紙2のとおりである。

2 前提事実(後掲の証拠等により認める。)
 (1) 当事者等
  ア 原告は,地方公共団体等の不正,不当な行為の監視と是正を目的とする権利能力なき社団である(弁論の全趣旨)。
  イ 被告は,独立行政法人国立高等専門学校機構法及び独立行政法人通則法の定めるところにより設立された同法2条1項所定の独立行政法人である(独立行政法人国立高等専門学校機構法2条)。群馬工業高等専門学校(以下「群馬高専」という。)及び長野工業高等専門学校(以下「長野高専」という。)は,被告が設置する国立高等専門学校である(同法12条1項1号,2項,別表)。

 (2) 本件決定に至る経緯
  ア 原告は,平成31年3月11日付けで,被告に対し,法4条1項に基づき,「(1)平成23年度以降の『国立高等専門学校候補者一覧』。(2)文部科学省から貴法人に出向し,群馬工業高等専門学校長に就いていた西尾典眞氏が,平成28年度末に当該職を辞し出向元に帰任した際,貴法人に提出した『辞職願』。(3)貴法人管轄の群馬工業高等専門学校の『校報』第129,130,131号の『人事関係』欄のうち,育児休業の項を除くすべて。(4)貴法人と本請求人との間で係争が行われた,平成28年(行ウ)第499号及びその控訴・附帯控訴事件において,貴法人が訴訟代理人弁護士に支払った報酬等一切に関しての『支払決議書』。(5)貴法人管轄の長野工業高等専門学校で2009年以降に発生した学生の自殺事件について,『事件・事故等発生状況報告書』,またはそれに類する文書。」の開示を請求した(甲1)。
  イ 被告は,上記アの請求に対し,平成31年4月16日付けで,同請求に係る文書のうち,別紙1記載の部分を含む部分を不開示とし,その余を開示する旨の決定(本件決定)をした(甲2)。

 (3) 本件訴えの提起
   原告は,令和元年10月7日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。

3 争点
  本件の争点は,本件決定の適法性の有無であり,具体的には,別紙1記載の各文書(以下,別紙1の記載番号ごとに「本件文書1」などという。)の不開示情報該当性が問題となる。

4 争点に関する当事者の主張
【当会注:本件経緯及び陳述書面・口頭弁論内における双方の主張の要約であるため、文字数の問題から割愛】

第3 当裁判所の判断
 1 本件文書1について
  (1) 本件各候補者一覧は,いずれも被告において各国立高等専門学校の校長を選考する際に用いている資料であり,学校長候補者の氏名,生年月日等候補者を特定する事項や,整理No,推薦機関,主な学歴,学位,専門分野,職歴及び現職(被告に所属する者の場合には現在の所属先)が,推薦機関ごとに一覧表にまとめて記載されているものと認められる(弁論の全趣旨)。
  (2)ア 本件各候補者一覧の項目については,被告が各推薦機関から提供された校長候補者の学歴,職歴等の全ての事項を記載したものではなく,提供された情報の中から校長の選考の考慮要素として主要と考えられる事項を整理して記載したものであり,本件各候補者一覧に記載された項目は,推薦機関ごとに若干の相違があるものと認められる(弁論の全趣旨)。そして,被告は,本件各候補者一覧に記載のある項目名の全てやその並び順を開示すれば,被告における校長選考において重視される事項やどの推薦機関の候補者をまとめた一覧表かを推測することが可能となり,これによって,被告内外からの校長の選考基準について容喙されるなど,被告における校長の選考に関する自由な議論が阻害され,推薦機関からの候補者の推薦に支障を来すおそれがある旨主張する。
     しかしながら,本件各候補者一覧の項目として記載されているものと考えられるのは,学校長候補者の氏名,生年月日,整理No,推薦機関,主な学歴,学位,専門分野,職歴,現職等であるところ,これらはいずれも学校長候補者の一覧表に通常記載され,校長の選考において考慮されるであろうと考えられる項目である。そして,本件各候補者一覧にどのような項目が記載されるかについては,推薦機関ごとに相違があるとはいっても,若干という程度にとどまるから,その項目名の全てやその並び順が開示されたとしても,被告における校長の選考において重視される事項やどの推薦機関の候補者をまとめた一覧表かを推測することが可能となるといえるか疑問がある。そうすると,これらの項目名が開示されたとしても,被告における校長の選考に関する自由な議論が阻害され,推薦機関からの候補者の推薦に支障を来すおそれがあるとはいえない。

   イ 次に,推薦機関が候補者を校長へ推薦するに当たっては,候補者の内諾を得ているものと考えられるが,候補者の生年月日,学歴,学位,専門分野,職歴,現職等の候補者を特定する手がかりとなる事項が開示されるとなると,自身が校長に登用されなかったことが明らかになることを嫌がり,推薦されることに難色を示し,推薦機関が当該候補者を校長に推薦しなくなることが考えられる。
     また,整理No,現職及び推薦機関又はその種別に係る情報のみが開示されたとしても,当該候補者を推薦した推薦機関や推薦機関別の候補者の多寡を判断することができ,現職に係る情報も併せ考慮し,実際に校長に就任した者の職歴を検討すると,校長に就任しなかった候補者の構成を推測することが可能となるものと認められる。そうすると,これらの情報が開示されると,推薦した者が校長に登用される可能性が低いことを危惧して,推薦機関が校長の候補者の推薦を躊躇するなどするおそれがある。これらの結果,推薦機関の推薦する校長候補者が減少するおそれがあることを否定することはできず,校長候補者が減少すると,多数の有為な人材から校長を選任するという被告の円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある。
     もっとも,整理Noに係る情報のみが開示された場合には,推薦機関別の候補者数は判明するものの,具体的な推薦機関までは判明しないから,当該情報と実際に校長に就任した者の職歴を比較しても,校長に就任しなかった候補者の構成を推測することが可能となるものとはいえず,推薦機関が校長の候補者の推薦を躊躇するなどし,被告の円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるとはいえない。本件各候補者一覧の項目名も併せて開示されたとしても,本件各候補者一覧に記載された項目は,推薦機関ごとに相違があるとはいっても,若干という程度にとどまり,候補者を推薦した具体的な推薦機関までは判明するとはいえないから,このことは異ならない。
   ウ 以上によれば,本件各候補者の一覧のうち項目名及び整理Noに係る情報を除く情報は,被告が行う事務又は事業に関する情報であって,公にすることにより,人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるものとして,法5条4号ヘの不開示情報に該当するが,項目名や整理Noに係る情報は,これらのみが明らかになったとしても,上記のおそれが生ずるとはいえないから,同号ヘの不開示情報に該当するとはいえない。
  (3) 原告は,本件各候補者一覧に記載のある者のうち,選考に合格し国立高等専門学校長に就任した者の生年月日,学位,学歴,専門分野,職歴等は,全て公開情報となっていることから,法5条1号ただし書イに該当する旨主張する。しかしながら,仮に,本件文書1に記録された情報が同号ただし書イに該当したとしても,同号の不開示情報に該当しないことになるだけであり,同条の他の規定による不開示情報に該当すれば,本件文書1は開示されないことになるところ,前記(2)ウのとおり,本件各候補者一覧の項目名及び整理Noに係る情報を除く本件文書1に記録された情報は,少なくとも同条4号ヘの不開示情報に該当するから,原告の主張は失当である。
  (4) 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件決定のうち,本件各候補者一覧の項目名及び整理Noに係る情報を不開示とした部分は違法であるが,本件文書1のその余の部分を不開示として部分は適法である。

 2 本件文書2について
  (1) 本件文書2は,西尾の辞職願のうち群馬高専を辞職する理由を記録した部分であって,その記録部分の長さから20字強の記載があり,相応の記載内容があることがうかがわれ(甲4),その記載内容から群馬高専内の者や群馬高専の関係者が辞職する個人を識別することが可能であるものと考えられることから,本件文書2に記録された情報は法5条1号本文の個人識別情報に該当するというべきである。
  (2) 原告は,本件文書2に記録された情報は,法5条1号ただし書ハに該当する旨主張する。
    しかしながら,法5条1号ただし書ハの「職務の遂行に係る情報」とは,当該個人が,独立行政法人等の役員及び職員等としてその担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報を意味するところ,辞職は,職を辞する行為にすぎず,職務の遂行には当たらない。このことは,当該辞職が群馬高専から出向元である文部科学省へ復帰するためのものであったとしても,異なるところはない。したがって,本件文書2に記録された情報は,同号ただし書ハには該当しない。
  (3) したがって,本件文書2に記録された情報は,法5条1号本文の不開示情報に該当するから,本件決定のうち,本件文書2を不開示とした部分は適法である。

 3 本件文書3について
  (1) 本件文書3の(1)について
   ア 本件文書3の(1)の不開示部分に係る被告の職員は,いずれも補助職員であるところ,群馬高専の補助職員には,各学科,総務課,庶務課等の部署に所属する者がいるが,いずれも1名又は若干名であることが認められる(弁論の全趣旨)。そうすると,本件文書3の(1)に記録された情報のうち,「氏名」が明らかになった場合はもちろん,その余の情報が明らかになった場合にも,群馬高専内の者や群馬高専と関係のある者において,当該情報に係る個人を容易に特定することが可能となる。したがって,本件文書3の(1)に記録された情報は,法5条1号本文の個人識別情報に該当する。

   イ(ア) 原告は,群馬高専の職員の採用,異動,退職等は,群馬高専内部の者にとっては既知の事実であり,本件文書3の(1)に記録された情報を開示したとしても,新たに個人が特定されるとはいえないから,同情報は法5条1号本文の個人識別情報には該当しない旨主張する。
       しかしながら,法5条1号本文の個人識別情報に該当するか否かは,当該情報により,又は当該情報と他の情報とを照合することにより,特定の個人を識別することができるか否かにより決せられるのであり,当該情報が内部の者にとって既知であるか否かにより決まるものではなく,原告の主張は失当である。また,原告の主張を本件文書3の(1)に記録された情報が同号ただし書イに該当する旨の主張と善解したとしても,少なくとも,後記(イ)のとおり,群馬高専外部の者には同情報が公表されていないのであるから,同情報は同号ただし書イには該当しない。
       また,原告は,「職名」は法5条1号本文の個人識別情報に該当しない旨主張するが,群馬高専において一時期に異動等する者の人数は限られることからすれば,「職名」に異動等の時期を併せることで,群馬高専内の者や群馬高専と関係のある者において当該情報に係る個人を特定することが可能になると考えられるから,「職名」は同号本文の個人識別情報に該当するというべきである。

    (イ)a 原告は,群馬高専の技術補佐員については,群馬高専のホームページ上で公開されている「教育研究支援センターメンバー構成」や「年報」において各年の技術補佐員の氏名が部署及び役職ごとに公表されており,また,採用や退職の挨拶という形でも氏名が公表されているから,各人の在籍状況及び職位に加え,採用,退職,異動,昇任状況等は容易に把握可能であるから,技術補佐員の氏名は,既に慣行として公にされている情報であり,法5条1号ただし書イに該当する旨主張する。
       そこで検討すると,証拠(甲10,11)及び弁論の全趣旨によれば,技術補佐員は補助職員に含まれるところ,技術補佐員の氏名が掲載された群馬高専教育研究支援センターの構成員の表である「教育研究支援センターメンバー構成」や,技術補佐員の退職挨拶が掲載された群馬高専教育研究支援センターの平成29年及び平成30年の「年報」がホームページ上で公開されていることが認められる。しかしながら,被告は,技術補佐員の退職挨拶が掲載されているのは,当該技術補佐員の勤務期間や担当職務等の個別事情を考慮したものであり,技術補佐員が退職する際に「年報」に挨拶を掲載するといった慣行はなく,「年報」以外でも移動や退職を群馬高専の外部に公開していない旨主張しているところ,少なくとも平成28年以降においては,被告の主張するような取扱いがされているものと認められ(甲30,弁論の全趣旨),本件文書3の(1)で不開示となっている技術補佐員の採用,異動及び退職に係る情報が群馬高専の外部に公開されている事実を認めることはできない。

      b さらに,原告は,ホームページや「年報」における職員氏名一覧の掲載状況を追跡することで,異動や退職といった人事状況を事実上公表されている情報として把握することができるから,技術補佐員の異動や退職について公表する慣行が存在している旨主張する。
       しかしながら,原告の主張する方法によっても,職員が当該部署に在籍するようになったり,在籍しなくなったりしたことが確認できるのみであり,異動,退職等の具体的な内容が明らかになるわけではないから,群馬高専において異動,退職等の人事情報を公表する慣行が存在しているとはいえない。

      c したがって,本件文書3の(1)に記録された情報は,法5条1号ただし書イに該当するとは認められない。

    (ウ) 原告は,「配置換」,「配置換(学内)」及び「兼務」に係る情報については,法5条1号ただし書ハに該当する旨主張する。
       しかしながら,法5条1号ただし書ハの「職務の遂行に係る情報」とは,当該個人が,独立行政法人等の役員及び職員等としてその担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報を意味するところ,人事異動そのものは担任する職務の遂行に当たらないから,「配置換」,「配置換(学内)」及び「兼務」に係る情報については,法5条1号ただし書ハに該当しない。

   ウ 以上によれば,本件文書3の(1)に記録された情報は,法5条1号本文の不開示情報に該当するから,本件決定のうち,本件文書3の(1)を不開示とした部分は違法である。

  (2) 本件文書3の(2)について
   ア 本件文書3の(2)に記録された情報は,群馬高専の常勤教職員の退職理由に関する情報であるところ,時期を同じくして退職する群馬高専の常勤教職員は限られているから,退職理由が開示された場合,退職時期等に係る情報と相まって,群馬高専内の者や群馬高専の関係者が当該情報に係る個人を特定することが容易となる。したがって,本件文書3の(2)に記録された情報は,法5条1号本文の個人識別情報に該当する。

   イ 原告は,群馬高専とは別の被告が設置及び運営する複数の学校について,本件文書3の(2)に記録された情報と同様の情報が慣行として公にされていることから,本件文書3の(2)に記録された情報は,法5条1号ただし書イに該当する旨主張する。
     確かに,証拠(甲14~16)及び弁論の全趣旨によれば,原告が群馬高専と別の被告が設置及び運営する複数の学校について,「校報」の開示請求をしたところ,本件文書3の(2)に記録された情報と同種の情報が開示されたことが認められる。しかしながら,上記本件文書3の(2)に記録された情報と同種の情報が開示された学校については,人事事項を含めて「校報」がホームページで公開されているが,群馬高専については,そのような情報がホームページで公開されていないものと認められる(甲30,弁論の全趣旨)。そして,他に証拠等を検討しても,群馬高専の常勤教職員の退職理由が慣行として公にされていることを認めることはできない。したがって,本件文書3の(2)に記録された情報は,法5条1号ただし書イに該当するとはいえない。

   ウ 以上によれば,本件文書3の(2)に記録された情報は,法5条1号本文の不開示情報に該当するから,本件決定のうち,同情報に係る部分は適法である。

4 本件文書4について
  (1) 証拠(甲6)及び弁論の全趣旨によれば,本件文書4のうち,①平成28年度支払決議書に係る部分は,被告の訴訟代理人である木村美隆弁護士(以下「木村弁護士」という。)に対する訴訟関係の着手金の支払額及び当該着手金に係る源泉徴収税の八王子税務署への支払額の合計額を記載した「合計金額」欄並びに当該着手金の支払及び当該八王子税務署への支払に係る各「支払金額」欄,「うち消費税額」欄及び「配分金額」欄から成ること,②平成29年度支払決議書に係る部分は,木村弁護士に対する訴訟関係の着手金は申立実費の支払額及び当該着手金に係る源泉徴収税の八王子税務署への支払額の合計額を記載した「合計金額」欄並びに当該着手金や申立実費の支払及び八王子税務署への支払に係る各「支払金額」欄,「うち消費税額」欄及び「配分金額」欄から成ること,③平成30年度支払決議書に係る部分は,木村弁護士に対する訴訟関係の報酬金の支払額及び当該報酬金に係る源泉徴収税の八王子税務署への支払額の合計額を記載した「合計金額」欄並びに当該報酬金の支払及び八王子税務署への支払に係る各「支払金額」欄,「うち消費税額」欄及び「配分金額」欄から成ることが認められる。

  (2) 弁護士費用に係る情報は,事業を営む個人である木村弁護士の弁護士事業に関する情報に該当する。
    また,本件文書4のうち,弁護士費用に係る「支払金額」欄,「うち消費税額」欄及び「配分金額」欄が開示されると,弁護士費用の額が明らかとなる。
    そして,弁護士は,報酬の算定方法や金額等を依頼者との合意によって自由に定めることができるところ,弁護士費用の額が明らかになると,これを認識した競合する弁護士や弁護士法人が,上記の額を踏まえて,より有利な弁護士費用の額を提示して競争上優位な立場に立つ可能性があり,木村弁護士の競争上の地位に影響を与えるおそれがある。したがって,平成28年度から平成30年度までの各支払決議書の弁護士費用に係る「支払金額」欄,「うち消費税額」及び「配分金額」欄に記載された情報は,法5条2号イの不開示情報に該当する。
    加えて,本件文書4のうち,平成28年度から平成30年度までの各支払決議書の各「合計金額」欄は,弁護士費用の支払額及びその源泉徴収税の支払である八王子税務署への支払額の合計額が記載されている。そうすると,その金額が明らかになると,弁護士費用の額を計算することが可能となるから,上記と同様の理由により,木村弁護士の競争上の地位に影響を与えるおそれがある。したがって,上記各「合計金額」欄に記載された情報は,法5条2号イの不開示情報に該当する。

  (3) 以上によれば,本件文書4に係る情報は,法5条2号イの不開示情報に該当するから,本件決定のうち,本件文書4に係る部分は適法である。

 5 本件文書5について
  (1) 本件文書5に係る情報は,本件報告書の年月日や時刻に係る情報であるところ,証拠(甲7)によれば,これらの情報は,学生が死亡したという事件・事故に対する対応経過と併せて記録されており,その対応経過は一定程度開示されていることが認められる。そうすると,年月日等に係る情報が開示されると,本件報告書に記載されている事件・事故をより具体的に特定できるようになり,その結果,長野高専内の者や長野高専の関係者において,死亡した学生を特定することが容易となる。したがって,本件文書5に係る情報は,法5条1号本文の個人識別情報に該当する。

  (2) これに対し,原告は,開示された文書に記載のある学生課長の在籍時期や,事件・事故を受けた全校集会の開催並びにカウンセラー等による講習会及び後援会の開催の事実から,本件報告書に記載された年や月は容易に推定可能であると主張するところ,これは,本件報告書の年月に係る情報について,法5条1号本文の個人識別情報に該当しない旨主張するものとも解される。
     しかしながら,原告の挙げる情報からは,本件報告書に記載されている事件・事故の発生した時期等を絞り込めるにとどまるのに対し,本件報告書に記載のある年月が開示されると,当該事件・事故の発生した時期を具体的に特定することができ,それにより当該事件・事故により死亡した学生を特定することが格段に容易となるから,原告の主張をもって,本件報告書の年月に係る情報が法5条1号本文の個人識別情報に該当することを否定することはできない。
     また,原告の上記主張を,本件報告書の年月に係る情報が法5条1号ただし書イに該当する旨の主張と解したとしても,学生課長の在籍時期は一定の機関にわたり,これのみで本件報告書の年月に係る情報を具体的に絞り込めるものではないと考えられる上,事件・事故を受けた全校集会の開催並びにカウンセラー等による講習会及び講演会の開催が公表されていることを認めるに足りる証拠はない。したがって,原告の上記主張をもって,本件報告書の年月に係る情報が法5条1号ただし書イに該当するとはいえない。

  (3) 原告は,開示請求の対象文書の作成時期を個別に区切ることにより,開示される文書に違いが生じることを指摘して,本件報告書の年月日等に係る情報は公衆が知り得る状態に置かれているものとして,法5条1号ただし書イに該当する旨主張する。
    しかしながら,原告の指摘する開示請求の方法によって本件報告書の年月日等に係る情報を推知することができる場合があるとしても,それは,開示請求の対照(ママ)文書の作成時期の区切り方という偶然に左右されるものといわざるを得ない。したがって,原告の指摘する開示請求の方法によって,本件報告書の年月日等に係る情報を推知することができる場合があることをもって,当該情報が法5条1号ただし書イに該当するとはいえない。

  (4) 以上によれば,本件文書5に記録された情報は,法5条1号本文の不開示情報に該当するから,その余の点について判断するまでもなく,本件決定のうち,本件文書5に係る部分は適法である。

 6 結論
   以上の次第で,原告の請求は,本件決定のうち,本件文書1のうち項目名及び整理Noに係る情報を不開示とした部分の取消しを求める部分については理由があるから,これを認容することとし,原告のその余の請求は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する(なお,原告は,本件文書1及び3の(1)に係る請求については,請求の認容度合いにかかわらず,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法64条に基づき,訴訟費用は全て被告の負担とすべきである旨主張するが,本件の経緯,主張内容等に鑑みると,上記各条を適用すべきであるとは認められない。)。

   東京地方裁判所民事第2部
        裁判長裁判官  森 英明
           裁判官  小川 弘持
           裁判官  三貫納 有子
**********

■続いて、第二次訴訟の判決文です。

*****第二次訴訟(令和元年(行ウ)第549号)判決文*****
令和2年11月24日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和元年(行ウ)第549号 法人文書不開示処分取消請求事件
口頭弁論終結日 令和2年10月16日

              判       決

  前橋市文京町1丁目15-10
      原        告  市民オンブズマン群馬
      同 代 表 者 代 表    小  川    賢

  東京都八王子市東浅川町701番2
      被        告  独立行政法人
国立高等専門学校機構
      同 代 表 者 理 事 長  谷  口      功
      同 訴訟代理人弁護士   木  村  美  隆
      同           藍  澤  幸  弘
      同           角  谷  千  佳

             主      文

 1 本件訴えを却下する。
 2 訴訟費用は原告の負担とする。


             事 実 及 び 理 由
第1 請求
  被告が原告に対し令和元年9月17日付けでした法人文書一部開示決定のうち,次の各部分を不開示とした部分を取り消す。
 (1) 被告理事長が平成30年10月10日付けで群馬工業高等専門学校長及び沼津工業高等専門学校長に宛てて発出した「平成31年度高専・両技科大間教員交流制度派遣推薦者の派遣決定について(通知)」(30高機人第72号)のうち,「交流期間」欄の記載部分
 (2) 被告理事長が平成30年10月10日付けで各国立高等専門学校長,長岡技術科学大学長及び豊橋技術科学大学長に宛てて発出した「平成31年度高専・両技科大間教員交流制度派遣者の決定について(通知)」(30高機人第72号)のうち,別添「平成31年度高専・技科大間教員交流制度」の「派遣期間」欄のうち雑賀洋平に係る部分

第2 事案の概要
 1 本件は,原告が,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「」という。)4条に基づき被告の保有する法人文書の開示を請求したところ,被告(処分行政庁)から,その一部について不開示とする決定(以下「本件一部不開示決定」という。)を受けたことから,その不開示とされた部分の一部を不服として,被告を相手に,本件一部不開示決定のうち上記不服に係る部分の取消しを求める事案である(なお,原告は,後記3(6)のとおり,訴えの交換的変更を申し立てているが,当裁判所は,後記第3の1のとおり,これを許さないこととするものである。)。

 2 関係法令の定め
   本件に関連する法令の定めは,別紙1記載のとおりである。

 3 前提事実
【当会注:本件経緯及び陳述書面・口頭弁論内における双方の主張の要約であるため、文字数の問題から割愛】

 4 争点及び当事者の主張
   本件の争点は,①本件訴えの適法性及び②本件一部不開示決定のうち本件各不開示部分に係る部分の適法性であり,争点に関する当事者の主張の要旨は,別紙2記載のとおりである。

第3 当裁判所の判断
 1 本件訴えの変更申立てについて
   前記前提事実のとおり,原告は,令和2年10月9日に至り,本件訴えの変更申立てをしたものである。しかし,後記2において説示するところによれば,本件訴えの変更申立ての時点において,訴えの変更前の本訴請求に係る訴えが不適法であり却下されるべきものであることは明らかであって,令和2年10月16日の本件口頭弁論期日の時点において,本件訴訟の全部が裁判をするのに熟していたものである。他方,同申立てに係る訴えの変更を許した場合には,本件新請求1に係る訴えの適法性のほか,本件新請求2について,原告が同請求の請求原因事実として主張する事実の有無及びこれが国家賠償法上または不法行為法上違法と評価されるか否か並びに損害の有無等について改めて審理することを要し,そのためになお相当の期間を要することとなることは明らかである。そうすると,本件訴えの変更申立ては,これを許した場合には,これにより著しく訴訟手続を遅滞させることとなるものと認められる。
   よって,本件訴えの変更申立てについては,行政事件訴訟法7条,民訴法143条1項ただし書,同条4項により,これを許さないこととする。

 2 争点①(本件訴えの適法性)について
   原告は,本件訴訟において,本件一部不開示決定のうち本件各不開示部分に係る部分の取消しを求めているところ,前期前提事実によれば,被告は,令和2年10月2日付けで,原告に対し,本件一部不開示決定のうち本件各不開示部分に係る部分を取り消し,本件各法人文書のうち本件各不開示部分を開示する旨の決定をしたことが認められる(本件再決定)。
   そうすると,原告は,現時点においては,もはや本件一部不開示決定のうち本件各不開示部分に係る部分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有しないものというほかなく,その取消しを求める訴えの利益は失われたものというべきである。

 3 結論
   よって,本件訴えは不適法であるからこれを却下することとして,主文のとおり判決する。

   東京地方裁判所民事第51部
        裁判長裁判官  清水知恵子
           裁判官  川山泰弘
           裁判官  釜村健太
**********

■以上のように、第一次訴訟・第二次訴訟の判決は両方とも、被告高専機構側の杜撰な言い分や姑息な法廷戦術をそのままガバガバで素通し状態の代物です。

 見てお分かりのとおり、「両方の主張を見て、ひとつひとつの論点について公平に判断をしていく」というあり方からは程遠く、「被告勝訴をスタートラインに、原告の主張をいかに工夫して潰していくか」という思考方式で作られています。これが、当会が活動開始以来幾度となく直面してきた、限りなく行政寄りに立つ我が国司法の現実です。

 第一次訴訟については、開示を求めた五大文書のうち、「①高専校長選考の候補者名簿」のごくごく一部(項目名と整理No)のみ開示が許され、①のその他の箇所(特に推薦機関)と、「②西尾典眞・群馬高専前校長の辞職理由」「③群馬高専『校報』人事情報」「④高専機構が御用達の弁護士に支払っている費用」「⑤長野高専学生自殺事件報告書の記載年月日」は全てことごとく開示を阻まれてしまいました。

 特に⑤については、長野高専連続自殺事件という悲劇の経緯解明と真相究明をしてほしいと切に願う当時の学友らの方々の想いに応えることができず、忸怩たる思いです。

■ただ、判決全文に目を通した時点での率直な感想は、第一次訴訟について森裁判長が下した判決よりも、第二次訴訟について清水裁判長が下した判決の方が、より悪質極まりないものであるというものです。

 第一次訴訟についての判決文は、「しかしながら」を10回も連発したうえ、「原告の主張を~という旨に(善)解したとしても」という形の上での断りが何か所か差し挟まれています。すなわち、「最終的に原告敗訴」の結論ありきで判決が作られたにせよ、原告の主張についても一応はちゃんと検討しましたよ、というポーズは辛うじて見せています。

 ところが第二次訴訟の判決は、被告の仕掛けた「訴訟オジャン作戦」を丸々素通しするものであり、まさに問答無用です。被告高専機構の不意打ちに応じて、原告当会はやむを得ず訴え変更という措置を取らざるを得なくなったにも関わらず、なぜ被告高専機構の行動と主張は一切不問にされ、原告の対応だけが「訴訟進行を著しく遅滞させるもの」などと一方的に扱われて却下されなければならないのでしょう。

 そうして全面敗訴に追い込まれたばかりか、挙句の果てには、なぜか訴訟費用までが全額、原告当会の負担にされています。偏った判断というレベルですらなく、原告当会をとにかく意図的に貶めようとするもので、率直に意味不明と評するしかありません。

 勝ち確定だったはずの訴訟ですら、あれよあれよという間に全面敗訴に持っていく清水裁判長の腕前は、まさに「法廷マジック」と評すべきものです。しかし、法律があってないような未開の独裁国家紛いのこんな手法が、現代日本で通用していいわけがありません。だいいち、こんな手法を横行させてしまえば、情報公開法に関する行政訴訟で市民側が勝つことが原理的に不可能になり、行政の不開示体質には歯止めが効かなくなってしまいます。

■当会では、今回の2つの不当判決の内容を精査し、その両方あるいはどちらか一方について、控訴するかどうかを早急に決定していく所存です。控訴する場合、判決言渡の翌日から2週間以内、すなわち12月8日(火)までに東京地裁に控訴状を提出することになります。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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栃木市土地開発公社が債権放棄でついに解散へ…安中市土地開発公社の解散はあと82年後?

2020-11-23 23:52:00 | 土地開発公社51億円横領事件
■東京新聞は2020年4月1日から群馬県と栃木県の地方版ページが統合されました。そのため、栃木県のニュースも見られるようになりました。そうした中で、11月18日(水)の群馬栃木統合版に栃木市土地開発公社が解散手続きを進めているという記事が掲載されました。読んでみると、栃木市が公社に貸し付けた約1億7千万円の債権を放棄するとあり、どのような経緯を辿って、解散に漕ぎつけようとしているのか調べてみました。


2020年4月1日の東京新聞の初の群馬栃木統合版ページ

 まずは、掲載された記事を読んでみましょう。
**********東京新聞2020年11月18日
栃木市 土地開発公社解散へ
12月議会に市、関連議案 債権放棄の方針

 約三億六千万円の未回収債権を抱える栃木市土地開発公社が解散の手続きを進めていることが分かった。既に理事会は解散に合意しており、栃木市は解散関連議案を十二月市議会に提出する方針。市は公社に貸し付けた約一億寧々千万円の債権を放棄する。
 合併前に旧栃木市だった二〇〇九年、同公社が約二億円で同市薗部町の土地(約二ヘクタール)を取得したが翌年、土壌汚染が発覚。公社は一二年、当時の公社理事長(旧栃木氏副市長)と土地を売った会社を相手取り、損害賠償請求訴訟を提訴。一八年、元理事長らに約二億五千万円の賠償を命じた判決が最高裁で確定した。
 判決を受けて元理事長の財産差し押さえなどで約百八十万円を回収したが、会社は清算法人になっており、回収が困難となっている。
 市総合政策部の幹部は「法的強制力のある回収手続きはすべて行った。土地の先行取得業務もなくなり解散の判断をした」と話した。利息を加えた公社の債権約三億六千万円は市が引き継ぎ、回収業務を継続する。
(梅村武史)
**********

■公社が11年前の2009年に約2億円で購入した約2ヘクタールの土地が土壌汚染されていたということで、何やら安中市のスマイルパーク問題を彷彿とさせます。そのほかにもいろいろ曰く因縁がありそうなので、キーワード「栃木市土地開発公社 土壌汚染」で検索してみました。すると、次の記事が出てきました。

**********下野新聞2019年8月24日
損賠訴訟の土地、競売へ 開発公社、9月末入札 栃木
 2009年に栃木市土地開発公社が購入した同市薗部町4丁目のオリン晃電社(現オーケー工業)工場跡地の土地取引を巡り、公社に対する同社と契約時の公社理事長である石橋勝夫(いしばしかつお)旧栃木市副市長の計2億5440万円の損害賠償が確定した問題で、市は公社が9~10月に同所の強制競売を行うことを23日の市議会議員研究会で明らかにした。
 訴訟は公社が土地購入後に発覚した土壌汚染の責任などが争点。二審東京高裁は公社側の請求を退けた一審判決を変更し元副市長の責任を認め、最高裁が18年3月に元副市長側の上告を棄却したため支払いを命じた判決が確定していた。
**********

■さらに調べると、次の報道記事が見つかりました。

**********朝日新聞2010年11月11日
栃木市土地開発公社の用地先行取得問題
 市農林課の依頼を受けた市土地開発公社が昨年6月、同市薗部町4丁目の工場跡地約1・9ヘクタールを2億100万円で取得。国の補助事業を利用し、民間運営による野菜生産工場や直売所、レストランなどを整備しようとしたが、民間の事業主体から今年10月中旬、計画中止の申し入れがあり、工場跡地は売れないまま不良資産となる可能性が出ている。

**********朝日新聞2010年12月24日
栃木市土地開発公社の工場跡地取得問題
 昨年6月、市土地開発公社が同市薗部町4丁目の猟銃工場跡地約1・9ヘクタールを2億100万円で取得。国の補助事業を利用し、民間の運営による野菜生産工場や農産物直売所、レストランなどを整備する計画とされた。計画案は昨年5月に市農林課がまとめ、用地の取得を土地開発公社に委託。だが、今年10月に民間の事業主体が事業の辞退を表明。工場跡地は不良資産の恐れが出ている。
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■さらにネットで調べてみると、この猟銃工場跡地というのは、かつて、西部劇で有名なライフル銃やショットガンを製造していたウインチェスター社が、1960年代にライバル社との価格競争と、米国内の製造工場の人件費の高騰やストライキによる低迷状態を打開しようと、人件費が安く技術力の素地がある世界各国の銃器メーカーにライセンス生産を委託する事で生き残りを模索し始めました。

 そのため、極東地域では1961年に日本国内でニッコーブランドを展開していた晃電社(ニッコーアームズ)と、ウインチェスター社の子会社で弾薬・商標権管理を担当していたオリン・コーポレーションがそれぞれ50%ずつ出資し、ウインチェスターブランドの元折散弾銃をOEM製造するオリン晃電社を設立しました。

 しかし、1963年から1964年に掛けて殆どの製品ラインナップで大規模なモデルチェンジを断行したものの、構造面でも最終仕上げでも全体的に品質が軽視されたため、ユーザーの不評を買い、1980年代に入り、さらに人件費が経営を圧迫したため、1981年に米国内のウインチェスター直営工場は子会社のU.S.リピーティング・アームズへ売却されてしまいました。

 オリン・コーポレーションはこの間も一貫してウインチェスターブランドの商標権を保持し続けていましたが、日本での合弁会社のオリン晃電社は1979年の銃刀法規制強化に伴う日本国内における銃器販売数半減の影響で、親会社の晃電社が1981年に整理会社となり、その後は1985年に商号をオーケー工業に変更しました。

 オーケー工業の経営権はこの時、米国のオリン社の手から離れ、旧晃電社時代の経営陣に買い戻される形で存続した。そして引き続きクラシック・ダブルス及び国内向けに細々と出荷を続けていたが、結局、1991年(平成3年)に操業停止に追い込まれ、栃木工場は閉鎖された。2010年(平成22年)、旧オーケー工業は清算を完了しましたが、その広大な跡地利用を巡る問題が、その後も「旧オリン晃電社跡地購入問題」として尾を引き、当時の栃木市長だった日向野義幸による栃木市の市政に暗い影を落とす事になったのでした。

■この問題は2011年7月に栃木市内全戸に配布された『市議会だより』に掲載されました。


ZIP ⇒ 201107301sc6.zip
201107302sc6.zip
2011073034sc6.zip  

 そしてオリン晃電者工場跡地問題を巡り4つの裁判が提起されました。1番目は宇都宮地裁での住民訴訟で、第1回弁論は2011年5月26日からスタートし、2015年までに14回の弁論が開かれました。2番目は、原告の栃木市土地開発公社が、被告のオーケー工業と石橋副市長を相手取り損害賠償請求の民事訴訟が栃木市旭町裁判所で定期されました。3番目が、百条委員会での石橋元副市長の偽証罪を告発したもので、4番目が、石橋元副市長を背任罪で刑事告発したものです。

 このように当時、栃木市を揺るがした大きな事件であったことがうかがえます。このことも、安中市土地開発公社を舞台にしたタゴ事件と類似性を感じさせます。ただし、栃木市土地開発公社の事件の場合は約2億円余りですが、安中市土地開発公社の横領事件では約51億円もの途方もない巨額事件となっており、足元にも及びません。

 当時の市議会でのこの事件に関連する質問がYouTubeで視聴できます。

○オリン晃電社工場跡地_土地購入に関する質問2/2
平成22年7月早乙女利夫・栃木市議会議員

https://www.youtube.com/watch?v=F3TTk6NBWuc
2010/10/25

○オリン晃電社工場跡地_土地購入に関する質問_内海議員2/3
平成22年7月内海成和・栃木市議会議員

https://www.youtube.com/watch?v=7ehnM25ZDTQ
2010/10/25

○栃木市議会一般質問 白石幹男市議3

https://www.youtube.com/watch?v=R8vqpxBQ9Qo
2011/06/15
東北地方太平洋沖地震に対する対応について
福島第1原発事故に対する対応について
オリン晃電社工場跡地購入問題について(6:50~13:38)
国民健康保険税の調整について

■当時、栃木市長だった日向野 義幸(ひがの よしゆき)は、2003年から2010年まで旧栃木市長を務めましたが、2010年3月29日に(旧)栃木市が下都賀郡大平町、藤岡町、都賀町と新設合併し現在の栃木市が発足したことに伴い市長を失職しました。合併前の最後の市議会定例会では市の「太平山麓における活性化整備事業計画」に基づく市土地開発公社による工場跡地購入が問題となりました。

 2010年4月25日に新市発足に伴う市長選挙と市議会議員選挙が実施され、市長選挙は日向野と合併前の大平町長の鈴木俊美との一騎討ちとなったものの、日向野は鈴木に約1万4000票差をつけられ敗れました。なお、日向野はその後、栃木県議会議員に鞍替えし、連続3期当選し現在に至っています。

■さて、栃木市土地開発公社による工場跡地購入問題については、この日向野のWikipediaに割合詳しく記されています。

 それによれば、2009年(平成21年)6月に旧栃木市の土地開発公社がレストランや野菜直売所などを整備する目的で工場跡地約1.9ヘクタールを約2億円で購入しましたが、この事業に参加する予定であった業者は2010年10月に撤退を表明しました。購入の経緯や価格について旧市の市議会の平成22年3月定例会で問題となり、調査特別委員会(百条委員会)の設置を求める動議が提出されました。しかし、この時の動議は、賛成9人、反対10人で否決されました。

 その後、新市発足に伴う市長選・市議選を経て、市議会の平成22年6月定例会において再び百条委員会の設置を求める動議が提出され、今度は全会一致で可決されました。

 跡地購入当時の市長であった日向野は2011年(平成23年)3月31日に百条委員会に出席して証言しました。この工場跡地については土壌が汚染されている可能性があったものの、土地の鑑定評価をした不動産鑑定士は「土地開発公社から汚染のないことを前提に土地を鑑定評価するよう求められた」と百条委員会で証言していました。

 また、百条委員会が別の不動産鑑定士に土地の鑑定評価を依頼したところ、汚染のないことを前提としても9,300万円の評価額であることが判明しており、さらに2011年6月には工場跡地の一部から環境基準を超える鉛などや跡地の地下水から環境基準を超えるトリクロロエチレンが検出されたことを土地開発公社が公表しています。

 2011年3月2日には市民161人が日向野ら工場跡地購入の関係者に対して跡地購入費用の弁済や計画策定費用の返還を求める住民監査請求を行ないましたが、同年5月に市の監査委員が請求の一部を認め市に対して計画策定費用計98万7千円を関係職員に返還させることを勧告しました。

 この時、跡地購入費用の弁済の請求については認められなかったため、住民訴訟となり、2011年7月20日に宇都宮地方裁判所で第1回口頭弁論が行われました。原告側は跡地購入費用と適正価格との差額1億800万円を日向野ら当時の関係者に請求することを鈴木俊美市長に求めており被告側は争う意向を明らかにしていました。

 なお、2011年6月20日に百条委員会が決定した報告書では、工場跡地購入当時の副市長(土地開発公社理事長)の背任罪での刑事責任追及、日向野ら当時の関係者に対しての損害賠償請求などを鈴木市長に求めていました。また、2012年(平成24年)1月31日には土地開発公社が元副市長と土地の売主業者に損害賠償を求めて宇都宮地方裁判所に提訴しました。

 2015年(平成27年)1月27日、住民訴訟の原告団が記者会見し、工場跡地の徴税事務を担当した職員2人が100万円ずつ市に寄付することで被告側と和解し、同月9日付で訴訟を取り下げたことを発表しました。市税の滞納で差し押さえられていた工場跡地を職員が担保を取らずに差し押さえを解除したためにその売買代金を確保できなかったとされています。

 訴訟の取り下げは職員側からの申し出で、裁判で明らかにされた問題に真摯に市が対応することを条件に原告側は申し出を受諾しました。市も訴訟の取り下げに同意し、鈴木市長は徴税事務に不適切な処理があったことに対する遺憾の意と再発防止を表明しました。

 2015年9月17日、土地開発公社が元副市長と土地の売主業者に損害賠償を求めた訴訟で、宇都宮地方裁判所は土地開発公社の請求を棄却しました。すると同月29日、土地開発公社は判決を不服として東京高等裁判所に控訴しました。

 2017年(平成29年)3月29日、東京高等裁判所は地裁判決を変更し土地開発公社の請求を認める判決を言い渡しました。同年4月12日、元副市長と土地の売主業者は判決を不服として最高裁判所に上告しましたが、2018年(平成30年)3月16日、最高裁判所は元副市長と土地の売主業者の上告を棄却しました。

 こうして、元副市長(元公社理事長)らに約2億5千万円の賠償を命じた犯稀有が最高裁で確定したことを受けて、冒頭の東京新聞の記事のとおり、栃木市土地開発公社は元副市長(元公社理事長)の財産差し押さえで約180万円を回収しましたが、会社は清算法人になっていて、債権回収が困難になってしまっています。

■こうしてみると、土地開発公社を巡り利権目当ての様々な動きが水面下で蠢くことが、各地の自治体で頻繁に起きていることがよくわかります。それでも、栃木市土地開発公社の不祥事件の場合は、元理事長やその関係企業の責任を栃木市と同土地開発公社が曲がりなりにも法廷で追及しています。

 ところが、安中市の場合は、市や公社の事件関係者は、この前代未聞、空前絶後の巨額横領事件であるにもかかわず、単独犯とされた元職員のタゴの他には誰も何も責任を取らずに現在に至っています。その元職員タゴでさえも、毎月1万円ずつ返済ということで、昨年12月に公社の専務理事がタゴと口頭で交わした口約束に基づき、タゴが毎月下旬に公社の取引金融機関である群馬県信用組合の指定口座に振り込ませているだけで、それ以上の取り立ては安中市からも公社からも求められていません。

 このような異常な事態があと82年間も続くと思うと、いたたまれません。安中市民・納税者として黙ってこの状態を見過ごしていてよいはずがありません。

【ひらく会情報部】

コメント (2)
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