市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

【選挙無法特区】政治とカネで今度は太田市長を不起訴にした前橋地検・・・もはや「何でもあり」!?

2023-12-19 00:34:27 | 政治とカネ

国家戦略特区の指定区域

■我が国では、全国からの提案募集を通じ、現場から寄せられた規制改革のニーズを実現するため、これまで構造改革特区、総合特区、国家戦略特区の3つの特区制度を措置してきました。構造改革特区は、特例として措置された規制改革事項であれば、全国どの地域でも活用できる制度です。総合特区は、地域の特定テーマの包括的な取組を、規制の特例措置に加え、財政支援も含め総合的に支援する制度です。国家戦略特区は、活用できる地域を厳格に限定し、国の成長戦略に資する岩盤規制改革に突破口を開くことを目指した制度です。3つの特区は、それぞれ異なる特徴がありますが、国家戦略特区と構造改革特区との提案を一体で受け付けるなど、連携して運用を行っています。

 このうち国家戦略特区制度は、成長戦略の実現に必要な、大胆な規制・制度改革を実行し、「世界で一番ビジネスがしやすい環境」を創出することを目的に創設されました。内閣府地方創生推進事務局によれば、経済社会情勢の変化の中で、自治体や事業者が創意工夫を生かした取組を行う上で障害となってきているにもかかわらず、長年にわたり改革ができていない「岩盤規制」について、規制の特例措置の整備や関連する諸制度の改革等を、総合的かつ集中的に実施するものとされています。

 この国家戦略特区の指定区域に群馬県は入っていませんが、群馬県ではもっとすごい「特区」が既に実現しています。それは「選挙無法特区」として、公選法や政治資金規正法に違反しても、決して罰せられないという、まさに群馬県以外の政治家にとって、夢のような特区なのです。

■今回、選挙無法特区群馬県を改めて証明する形となったのは、次の記事です。

**********上毛新聞2023年12月5日17:30
清水市長を不起訴 群馬・太田市長選直前に授受された現金巡り 地検太田支部

 2021年の太田市長選の直前に授受された現金を巡り、市内の男性2人に公選法違反容疑で告発された清水聖義市長について、前橋地検太田支部は4日、不起訴処分とした。
 これまでに、告示前日に現金300万円の授受があったことは双方認めている。男性側は選挙運動のために寄付したのに選挙運動費用収支報告書に記載されていないと指摘。清水氏は受け取った直後に返金の意思を示し、拒否されたため供託したと説明していた。
 県警太田署が告発を受け、捜査結果の書類を10月に同支部に送った。
**********

 清水聖義・太田市長の公選法違反に係る告発については、これまでも当会のブログ記事で経過を紹介してきました。

〇2023年4月27日:【速報】太田市長の政治資金規正法違反?・・・300万円の献金を巡る疑惑で市民らが清水聖義市長を告発!
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/e/97266e9779a8fd98ec2d11d599895ac3
〇2022年12月30日:太田市長に政治資金規正法違反の疑惑?・・・寄付金の記載の有無に関する質問状に答えを濁す市長
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/e/35725dd13e2f948d59ad2fde4c925a35
〇2023年10月27日:太田市の清水市長が公選法違反容疑で書類送検・・・選挙無法特区の群馬で注目される地検の対応
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/e/f28a8cecfedd2711952e06c437d0c464

 上記10月27日の当会ブログ記事の中で、「太田署の捜査関係者が「起訴を求める意見を付けなかった」と言っているとなると、②相当処分(起訴・不起訴どっちでもいい)、③寛大処分(起訴猶予、つまり不起訴にしてやってくれ)、④しかるべき処分(起訴できないと考えている)のどれか、ということになります。そうすると、地検における清水聖義・太田市長に対する処分の判断がおのずと見えてくる気もします。」と当会の見解を示しておきましたが、まさに書類送検をしてから僅か38日後に、前橋地検太田支部は、不起訴処分を公表したことになります。

■その後、当会は、本告発事件の関係者のかたがたと面談し、これまでの告発に至る事情について、さらに詳しく取材する機会を得ました。取材を通じて、告発の内容が明らかになりました。

*****4/26告発状*****
              告 発 状
                        令和5年4月26日

太田警察署長殿

                   告発人 齋藤 勇
                   告発人 横山信夫

    告発人  住 所  群馬県太田市熊野町38-47
         氏 名  齋   藤       勇
         電 話  0276-60-4508

    告発人  住 所  群馬県太田市宝町29番
         氏 名  横   山   信   夫
         電 話  0276-31-1301

    被告発人 住 所  群馬県太田市飯田町753
         (執務先 群馬県太田市浜町2番35号 太田市役所内)
         氏 名  清   水   聖   義   

第1 告発の趣旨
   被告発人の以下の所為(「第2 告発事実」記載の行為)は、公職選挙法第186条2項に違反すると考えるので、被告発人に対して同法第246条第3号に従って厳重に処罰して頂きたく、告発する次第である。

第2 告発事実
   被告発人は、令和3年4月4日告示の太田市長選挙に被告発人が立候補するに先立って、同年4月3日午後3時頃、告発人横山信夫(以下「告発人横山」という。)が経営する横山建設株式会社(群馬県太田市宝町29番所在)(以下「横山建設」という。)の社長室内において、告発人横山が告発人齋藤勇から託された上記選挙に関する選挙運動資金300万円を受領した。被告発人は出納責任者以外のもので公職責任者のために選挙運動に関する寄付を受けたものであるから、公職選挙法第186条第2項によれば当該候補者が候補者の届出がされる前に受けたものについては、候補者の届出がされた後直ちに出納責任者にその明細書を提出しなければならないと規定されているところ、明細書を提出しなかった。被告発人の係る行為は同条項違反であり、同法第246条第3号に該当するものである。

第3 告発に至る経緯
 1 告発人横山は告発人齋藤勇(以下「告発人齋藤」という。)から、令和3年4月2日午後3時頃、令和3年4月4日告示の太田市長選挙に立候補する被告発人の選挙運動資金として300万円を被告発人に手渡すよう託された。
 2 4月3日午後0時頃、告発人横山は被告発人に対して横山建設に来てもらいたい旨を電話で伝えたところ、被告発人は同日午後3時頃に行く旨回答した。
 3 被告発人は上記電話での回答通り、午後3時頃、横山建設㈱を訪ねてきた。告発人横山は被告発人を横山建設社長室に招き入れ、告発人齋藤より託された上記選挙運動資金300万円(以下「本件寄附金」という。)を被告発人に手渡した。被告発人は本件寄附金を受領すると、直ぐに横山建設を出ていった。
 4 告発人横山は、本件寄附金は令和3年4月4日告示の太田市長選挙に立候補する被告発人の選挙運動に関する寄付金として渡したものであることから、令和5年1月31日、公職選挙法が定める「選挙運動費用収支報告書」に記載されているかを確認するために太田市選挙管理委員会に対して上記文書に関して公文書開示請求を行った(添付資料1)。同委員会から2月13日付けで公開された「選挙運動費用収支報告書」を見たところ、本件寄附金についての記載がされていないことが判明した(添付資料2)。
   そのため、告発人横山は上記報告書に関する出納責任者である野村昭雄(住所 太田市南矢島町463番地3)に対して「選挙運動費用収支報告書」に本件寄附金が記載されていないこと、および本件寄附金の取扱について確認するために、藤代浩則弁護士に依頼して2月24日付け文書にて質問をした。そうしたところ、野村昭雄からは本件寄附金に関する事実は一切把握していない旨の回答があった(添付資料3)。
 5 告発人らとしては、本件寄附金を被告発人が受領したことは事実であり、受領したのであれば公職選挙法に従って出納責任者である野村昭雄にその明細書を直ちに提出しなければならないところ、野村昭雄は本件寄附金に関する事実を一切把握していなかったのであるから、被告発人は出納責任者である野村昭雄に明細書を直ちに提出していなかった事実をこの野村昭雄の回答によって知るに至った。
 6 以上の事実からすれば、被告発人は長年太田市長として公職に就き、市民に対して範を垂れなければならない立場にあるにも関わらず、公職に就く者として当然遵守すべき公職選挙法を遵守することなく公職選挙法第186条2項違反という公正な選挙を害する到底許されざる重大な違反行為をしたことは、明白なことである。
   よって、告発人らは、被告発人を公職選挙法第246条3号に従って厳重に処罰して頂きたく、本告発に及んだ次第である。
                 (以上全体について、添付資料4)
                                以上

       添付資料(告発事実を立証するための資料)
1 「公文書の送付について」と題する書面(写し)
2 選挙運動費用収支報告書(写し)
3 回答書(写し)
4 陳述書(告発人横山信夫)

*****添付書類4*****
                陳述書

太田警察署長殿

拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
                                私こと。この度、齋藤勇さんと一緒に清水聖義氏を公職選挙法違反の疑いで告発致しました横山信夫を申します。私たちが清水氏を告発するに至った事情について簡単ではありますが、本書麺をもって申し述べます。説明が不十分な点、あるいはより詳細な事実関係をお知りになりたいようであれば、貴署における捜査に全面的にご協力するためにもお時間をいただければ包み隠すことなく全てお話いたしますので、遠慮なくお申し出ください。
 さて、私、横山信夫は、令和3年4月2日午後3時頃、齋藤勇さんから現金300万円を太田市長選挙に立候補する清水聖義氏の選挙運動資金として清水氏に直接手渡すよう頼まれました。私は齋藤さんと共にこれまでも市長選挙のたびに清水氏を応援していましたので、今回も清水氏を応援する立場から齋藤さんから預かった現金300万円を清水氏に渡すこととしました。
 私は翌日3日のお昼頃に清水氏に横山建設に来てもらいたいと電話したところ、清水氏から午後3時頃に郁人の返事がありました。
 清水氏は約束通りの午後3時頃、私の会社(横山建設)に来ました。清水氏はいつも通りに会社の奥にある私がいる社長室に来ました。社長室に入ってきた清水氏に対して私は選挙運動資金として齋藤さんから預かった現金300万円を袋に入れたまま渡したところ、清水氏はそのまま現金を受け取って帰って行きました。
 この300万円については、後日、清水氏の秘書を通じて私に「選挙期間中お金がたくさん集まったので返したい」と言ってきました。私は齋藤さんから託されて清水氏に選挙運動資金として渡したものであり、清水氏もその場で躊躇うことなく受け取っていて、いまさら返してもらう立場にもないことから断りました。しかし、それでも清水氏は私に秘書(富岡由香氏)に300万円を銀行から下ろさせて事務所においてあるので取りに来るようにと電話で言ってきました。私は受け取る理由がないので断りました。このように私は受け取りを断ったのですが、それにもかかわらず清水氏は何度も電話を掛けてきては受け取るようにと言ってきました。私も電話がある都度断っていました。他方で、私と齋藤さんとで、清水氏に対して3人で直接会って話し合いをしないかと持ち掛けてみたのですが、清水氏はこれに応じてくれませんでした。
 このように私たちと清水氏との間でおなじようなやり取りを何度もしていたのですが、突然、清水氏の後援会「おおた21・政経クラブ」から300万円を法務局に供託したとの通知が1月下旬に届きました(供託通知書のコピーを添付致します)。その供託通知書の「供託の原因たる事実」欄に供託した理由が書かれていますが、私は清水氏の甲年会にこの300万円をわたしたのではなく、市長選挙の選挙運動資金として清水氏本人に対して私、清水氏もその場で自ら受け取ったのであって、後援会が受け取ったとの記載は全くの嘘です。
 この選挙運動資金に対する清水氏のこれまでの対応と供託手続きについて不審に思い、私が渡した300万円について間違いなく「選挙運動費用収支報告書」に記載されているのかを確認するために、今年の1月31日に太田市選挙管理委員会を訪ねました。該当する千九予運動費用収支報告書を閲覧したところ、この300万円に関するきさいは一切なく、寄附金者欄にも私のことも齋藤さんのことも書かれていませんでした。また、選挙期間中にたくさん寄附が集まったという割には報告書に記載されている寄附金額は518万5000円であり、その他の収入を含めても768万5000円と選挙運動資金としては低い金額です。閲覧した報告書はその場では閲覧のみでコピーもできないために公文書開示請求を行って取り寄せました。選挙管理委員会からは2月13日付けで報告書の写しが私宛に送られてきました。
 報告書の出納責任者欄には「野村昭雄」との記載があり、住所も書かれていたことから、藤代浩則弁護士に依頼して野村氏宛に私が清水氏に渡した選挙運動資金300万円がきさいされていないことと、記載していない理由について、2月24日付通知書にて質問をしました。そうしたところ野村氏からは、3月9日付け回答書において300万円授受の事実自体一切把握していないとの回答がありました。出納責任者であるにも関わらず候補者が届け出前に受領した選挙資金の存在を把握していなとの回答には驚きを通り越してア然とするしかありません。
 私としては齋藤さんから預かった現金300万円を令和3年4月3日に清水氏に市長選挙における選挙運動資金として私、清水氏はその場で受け取ったにも関わらず、選挙運動費用収支報告書に記載されていないばかりか、出納責任者の野村氏も一切知らないと回答してきたことに対して非常に不審に思っただけでなく、市民から手渡された選挙運動資金を法律に従って報告もしていない清水氏は、市長として失格であり、法律に従って厳重に処罰されるべきであると思うようになりました。また、後援会として受け取ったが返すという訳の分からない理由を書いて供託してきた行為に対しても、選挙運動費用収支報告書に記載しなかったことを隠すため、つまり選挙違反を免れるために行ったのではないかという疑いを強く持つようになりました。また、この報告書に記載されている収入金額も選挙運動資金としては低い金額であり、正直に報告していない疑いがあります。
 この300万円をしみずしにわたすよう依頼してきた齋藤さんとも相談をし、今後の対応について話し合いました。齋藤さんも渡した300万円に関するきさいがなく、出納責任者も知らないのはおかしいし、し、供託などということをなぜするのか全く分からない、選挙違反を隠すためにではないかと私と全く同じ思いでした。また、私と斉藤さんとで清水氏に話し合いを持ちかけましたが、全て拒絶されています。話し合いにも応じない清水氏の態度から察するに、私たちには話せない何かを隠している疑いがあります。
 このような清水氏の行為は市長として相応しくなく、厳重に処罰されるべきであるとの考えを齋藤さんも持っていたことから、この度、孤発を決意するに至りました。
 この件に関する詳細はb子の陳述書だけではb書き尽くせませんし、これまでの清水氏と私たちとの関係についても警察にはお話ししたいことがたくさんありますので、お時間と機会を頂ければ全てお話し致します。貴署の捜査には許力を惜しみませんので、遠慮なくお申し出ください。
 私たちが暮らす太田市政をこれ以上清水氏に委ねることはでいませんので、厳重な処罰が下されますよう厳しく捜査をしていただきたくお願い申し上げます。
                            敬具
                  2023年4月26日
                       陳述人 横山信夫 印

*****供託通知書*****


■清水市長は、おっとり刀で支援者のもとに駆け付け、選挙運動資金300万円をいつもの選挙の時のように、阿吽の呼吸で受け取ったのに、なぜ会計責任者に明細書を提出せず、したがって収支報告書に記載もしないで、挙句の果てに「寄附が集まりすぎたから」と支援者に返そうとしたのでしょうか。当会として、いくつかの可能性を想定してみました。

 実は、選挙に使って良い費用には上限金額が定められていて、これを「法定選挙運動費用」と呼びます。これは選挙運動にかかる支出の最高限度額(上限額)のことで、人件費・家屋費・通信費・交通費・印刷費・広告費・文具費・食糧費・休泊費・雑費の合計が、この最高限度額を上回ってはいけないとされています。

 この「法定選挙運動費用」の上限を超えて支出をした場合、公職選挙法違反となります。違反した場合には、出納責任者に罰則が適用されるとともに、出納責任者の違反であることから、連座制により候補者の当選も無効となります。

 法定選挙運動費用の具体的な金額は、当該選挙の告示日における選挙人名簿登録数に依存します。その為、告示日には必ず「選挙人名簿登録者数」が発表されますから、法定選挙運動費用のギリギリまで予算をかける予定の候補者は、この金額の推定をした上で選挙戦の準備を行う必要があるのです。

<都道府県知事>
 告示日における選挙人名簿登録者数×7+2420万円

<都道府県議会議員>
 告示日における選挙区内の選挙人名簿登録者数÷その選挙区内の議員定数×83+390万円

<指定都市の市長>
 告示日における選挙人名簿登録者数×7+1450万円

<指定都市の市議会議員>
 告示日における選挙区内の選挙人名簿登録者数÷その選挙区内の議員定数×149+370万円

<指定都市以外の市長>
 告示日における選挙人名簿登録者数×81+310万円


<指定都市以外の市議会議員>
 告示日における選挙区内の選挙人名簿登録者数÷その選挙区内の議員定数×501+220万円

<町村長>
 告示日における選挙人名簿登録者数×110+130万円

<町村議会の町村議会議員>
 告示日における選挙区内の選挙人名簿登録者数÷その選挙区内の議員定数×1120+90万円

■2021年4月4日に告示された任期満了に伴う太田市長選には、NHK党の新人で自営業の町田紀光氏(41)、5選を目指す無所属現職の清水聖義氏(79)、無所属の新人で契約社員の東外喜夫氏(71)の3人が立候補しました。そして、同年4月3日現在の選挙人名簿登録者数は17万7475人(太田市選挙管理委員会調べ)でした。

 単純に計算すれば、太田市長選の法定選挙運動費用の上限は1747万5475円となります。筆者は安中市長選挙に4回出馬しましたが、4回目出馬時の安中市と松井田町との合併市長選が執行された平成18年4月15日の時点で男25,671人、女性27,410名の合計53,081人でしたから、太田市の3分の1以下です。計算すると739万9561円となります。

 選挙運動収支報告書は、本来、正確に収支を申告し、収入については明細書を、支出については領収書を添付する必要があります。

 2021年4月の太田市長選では、上記の通り法定選挙運動費用の上限は1747万円余りですから、清水候補は支援者からの300万円を収支報告書に記載しても何ら問題なく、しかも支援者が指摘するように、実際の選挙運動費用のうち寄附金は518万5000円であり、その他の収入を含めても768万5000円だったので、清水候補の秘書が支援者に「選挙期間中お金がたくさん集まったので返したい」と言ってきたこと自体、理由になっていません。

 「選挙期間中に寄附金が集まりすぎた」というのは、支出金額に対して、寄附収入が過大となったという意味なのか、それとも、本当に法定選挙運動費用の上限である1747万円以上集まってしまい、本来、収入は上限を超えても、使わなければよいわけですが、何か別の理由があり「これはまずい」と考えて、大口の寄附金を返そうとしたことも想定されます。

 あるいは、選挙運動収支報告書を太田市選管に提出したところ、法定選挙運動費用が上限を超えていたため、市選管から訂正するよう指摘を受けて、収支の金額を低めに抑えた形にする必要が生じ、収支のバランスを低く設定し、余った寄附金は記載せずに、いわゆる簿外処理(つまり裏金)し、支出も実際より低く申告して、実際に受け取った領収書の一部を処分することで調整した可能性もあります。

 つまり、選挙運動費用を低めに申告して、裏金づくりや、それを原資として領収書が取りにくい支出(たとえば買収工作など)に回すことなど、表には出せない何か事情があった可能性があります。

■警察は、告発した関係者らから、こうした事情について聴取しているはずですから、しっかりと清水候補本人や秘書、それに会計責任者らから、しっかりとこのあたりの事情の裏付けを捜査したはずです。その結果、太田署から地検太田支部への書類送検の際に、起訴を求める意見を付けず、地検も、それにこたえるかのように僅か38日目に不起訴処分を出したのですから、やはり、群馬県は「選挙違法特区」同然と言えるのではないでしょうか。

 当会は、告発者のかたがたが地検太田支部に対して、不期初処分理由の告知を求めることにより、今回の不起訴処分が「起訴猶予」なのか、それとも「嫌疑不十分」なのか、あるいは「嫌疑なし」なのかを確認することを願っています。

 そして、その結果を踏まえて、検察審査会に対して「審査申立」をする必要があると考えており、告発者のかたがたもその方向で検討しておられる様子です。

■当会は、今回の収支報告書への寄附金の記載について、当初は政治資金規正法の観点から考察していました。この度、告発状の内容を確認して、選挙運動収支報告書に関する公選法に基づく違法行為であることを確認しました。

 折から、パーティー券を巡る裏金問題が日本の政界を揺るがしています。この「パー券問題」では、すでに現役の閣僚として、松野博一官房長官や西村康稔経済産業大臣、鈴木淳司総務大臣、宮下一郎農林水産大臣の4人が辞任し、さらに、世耕弘成参議院幹事長も辞任し、与党の自民党でも、萩生田光一政務調査会長と、高木毅国会対策委員長が辞任することになり、このスキャンダルはまだまだ拡大していく可能性を孕んでいます。

 過大な期待は禁物ですが、東京地検特捜部がいちおう50人体制で捜査を進めており、強制捜査にも乗り出すと見る向きもあります。

 こうした中、群馬県における政治とカネの問題に取り組んできた当会としては、行政サイドの政治家への忖度に加えて、警察や検察、そして裁判所ですら、こと群馬県内の政治家に関して、他の都道府県では考えられないほど、公選法や政治資金規正法の違反行為に対する姿勢の甘さに、何度も煮え湯を飲まされてきました。そして今回の太田市長選を巡る公選法違反事件も、案の定、不起訴処分という結果を見せつけられました。

 選良として手本を示すべき政治家が、選挙運動や政治資金の収支報告書に適切に記載することが義務になっている寄附金やパーティー券の儲けを、記載せず、あるいは少なく記載していた疑いを有権者にもたれること自体、恥ずべきことなのに、さらにその儲けの一部を議員がキックバックとして懐に入れているのです。本来、こういうことのないように、血税から巨額の政党助成金が支出されているのですから、議員のモラルハザードはもはや絶望的なレベルまで落ち込んでいます。

 総務省によると、政党助成金の制度が始まった1995年以来、2021年までの27年間の交付額は計約8539億6300万円にのぼります。27年間で最も多く受け取ったのは自民党で、計約4088億7800万円です。この政党助成金は、国民1人あたり250円の税金を各党に割り当てる制度です。それぞれの政党の議席数に応じて配分される金額が決まります。

 テレビ朝日の試算によれば、2023年度の予算成立後に決まる2023年分の政党交付金は315億3600万円となります。最も多いのは自民党で、159億1000万円が交付される予定です。そのほか、立憲民主党に68億3200万円、日本維新の会に33億5100万円、公明党に28億6900万円、国民民主党に11億7300万円、れいわ新選組に6億1900万円、NHK党に3億3400万円、社民党に2億6000万円、参政党に1億8400万円となっています。

 そろそろ政治とカネの問題に本腰を入れて訣別すべき時ですが、残念ながら群馬県は今後とも選挙無法特区として名を馳せることになる予感を払しょくできません。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※参考情報「公選法第186条」
*****(明細書の提出)*****
第百八十六条 出納責任者以外の者で公職の候補者のために選挙運動に関する寄附を受けたものは、寄附を受けた日から七日以内に、寄附をした者の氏名、住所及び職業並びに寄附の金額及び年月日を記載した明細書を出納責任者に提出しなければならない。但し、出納責任者の請求があるときは、直ちに提出しなければならない。
2 前項の寄附で当該候補者が候補者の届出(参議院比例代表選出議員の選挙にあつては、参議院名簿の届出又は参議院名簿登載者の補充の届出。以下この項において同じ。)がされる前に受けたものについては、候補者の届出がされた後直ちに出納責任者にその明細書を提出しなければならない。

※参考情報「公選法第246条」
*****(選挙運動に関する収入及び支出の規制違反)*****
第二百四十六条 次の各号に掲げる行為をした者は、三年以下の禁錮こ又は五十万円以下の罰金に処する。
一 第百八十四条の規定に違反して寄附を受け又は支出をしたとき。
二 第百八十五条の規定に違反して会計帳簿を備えず又は会計帳簿に記載をせず若しくはこれに虚偽の記入をしたとき。
三 第百八十六条の規定に違反して明細書の提出をせず、又はこれに虚偽の記入をしたとき。
四 第百八十七条第一項の規定に違反して支出をしたとき。
五 第百八十八条の規定に違反して領収書その他の支出を証すべき書面を徴せず若しくはこれを送付せず又はこれに虚偽の記入をしたとき。
五の二 第百八十九条第一項の規定に違反して報告書若しくはこれに添付すべき書面の提出をせず又はこれらに虚偽の記入をしたとき。
六 第百九十条の規定による引継ぎをしないとき。
七 第百九十一条第一項の規定に違反して会計帳簿、明細書又は領収書その他の支出を証すべき書面を保存しないとき。
八 第百九十一条第一項の規定により保存すべき会計帳簿、明細書又は領収書その他の支出を証すべき書面に虚偽の記入をしたとき。
九 第百九十三条の規定による報告若しくは資料の提出を拒み又は虚偽の報告若しくは資料を提出したとき。
**********

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