市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

アカハラ犯雑賀洋平の沼津高専逃亡騒動を振り返る…逃亡中の労働実態不明問題を会計検査院に告発!

2021-11-29 23:49:00 | 群馬高専アカハラ問題

■群馬高専電子情報工学科で甚大な被害を出した雑賀洋平教授による大規模アカデミックハラスメント事件。まったく未解決のまま膠着状態が続いていたところ、2019年度に入り突然、雑賀洋平は沼津高専に「人事交流」で避難していきました。背景には、和歌山高専時代の元同僚である沼津高専・藤本晶校長(当時)によるパワハラ同然の強引なバックアップがありました。

○2019年7月25日:【緊急報告】沼津高専によるアカハラ犯雑賀氏受入れの内幕が明らかに…同校に響き渡った藤本校長の怒声!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2988.html
○2019年8月5日:沼津高専からも公開質問状への回答到来…「雑賀専用シェルター」の本領発揮!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2998.html
○2019年11月8日:19秋・潜入調査記in沼津高専…アカハラ犯・雑賀洋平の「今」とその狙いを探る(1)
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3069.html

 その一年後、雑賀洋平は何事も無かったかのようにJ科3年クラスの正担任として群馬高専に凱旋帰還し、同時に藤本晶氏も沼津高専校長を「任期満了」で退任して、静岡の地に突如巻き起こった大騒動は過去の話になりつつあります。

 そして未だに、この雑賀洋平の沼津逃亡の目的・経緯や実態は闇のベールに包まれています。特に、雑賀洋平が藤本校長の手厚い庇護のもと、教員室はもぬけの殻で授業も研究も受け持たずに高給だけせしめる「高専内ニート」と化していた驚愕の実態については、遺憾にも何らメスが入れられていない状態となっています。

■その折、長野高専岩佐(前)総務課長による常習巨額の出張旅費着服問題について会計検査院に告発を行うはこびになったため、同じく納税者として看過できない雑賀洋平の沼津逃亡時労働実態不明問題についてもあわせて同院に告発することにしました。

○2021年11月27日:長野高専岩佐(前)総務課長による常習巨額の旅費着服問題…その悪質な実態を会計検査院へ告発!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3387.html

 なお、2019年11月2日に当会担当者が沼津高専を訪問してモヌケの殻の雑賀教員室を確認した様子、および2020年12月14日に当会担当者が会計検査院を訪れて高専関連の会計問題に関する告発を行った様子については、上記リンクの各記事をご覧ください。

■今世紀に入り、日本における高等教育・学術研究の著しい衰退と苦境が叫ばれて久しい状況にあります。慢性的に続く不況の中で国の教育研究予算は減額に減額を重ね、地方の国立大などでは、研究もマトモに遂行できないどころか施設修繕すらままならない状況に陥っています。アカデミックポストの不足問題も深刻です。

 特に、若手研究者の待遇や研究環境は劣悪を極めており、海外への人材・知的財産の流出も深刻です。研究者志望の優秀な若者が、あまりの激務薄給ぶりに研究の道を諦めたり、将来に絶望して自ら命を絶つ事例は枚挙にいとまがありません。

 このように、我が国全体で教育研究が困窮にあえぐ最中、よりにもよって幾多の若手研究者や学生の人生を凄惨なアカハラで歪めた張本人に対して、労働実態一切不明の状態にも関わらず学校長の庇護のもと高給が支払われていたのですから、怒りを通り越して呆れるというほかありません。国民が額に汗して納めた血税と高専学生のご家庭が納めた授業料が、凶悪アカハラ犯の身勝手な「沼津バカンス」に湯水の如く投入されていた驚愕の実態には、率直に「許しがたい」という感想しか湧いてきません。

■当会では、この雑賀洋平の沼津逃亡時労働実態不明問題に関して、以下の会計検査院宛て報告書を作成し、訪問時にあわせて調査を要請することにしました。

*****雑賀沼津バカンス問題報告書送り状*****ZIP ⇒ vgojx.zip
                            令和2年12月14日
〒100-8941 東京都千代田区霞が関3-2-2
会計検査院 渉外広報室 御中
TEL: 03-3581-3251

 〒371-0801 群馬県前橋市文京町1丁目15番10号
          市民オンブズマン群馬  代表  小川 賢
                 TEL: 027-224-8567(事務局・鈴木)/
                    090-5302-8312(代表・小川)
                 FAX: 027-224-6624

            特定高専教員の労働実態不明問題に係る報告

拝啓 日々益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。
 弊会は、行政およびその関連機関を外部から監視し、当該機関による権限の不当な行使ないしは不行使による一般国民への権利利益侵害、並びに税金を原資とした公的資金の濫費について、調査および救済の勧告を図る活動をしている民間団体です。なお、弊団体は群馬県を主な活動地域としていますが、事案によっては、適宜近隣の県への出張活動も行っております。

 さて、独立行政法人国立高等専門学校機構(以下「高専機構」)が設置する群馬工業高等専門学校(以下「群馬高専」)の雑賀洋平教授(以下「雑賀洋平氏」)が、2019年度の1年間にわたり、沼津工業高等専門学校(以下「沼津高専」)へと高専機構の人事交流制度(以下「高専間人事交流制度」)を使って派遣異動していました。しかし、この派遣異動期間における雑賀洋平氏の労働実態がまったくの不明であったという事態が発生しています。高専教授の平均年間給与額は年に約890万円であり、これに広域異動手当を含めると920万円に及びます。労働実態が一切不明の人物に対し、年1千万円近い給与が国庫から支払われていたという事態は、納税者たる国民として看過することはできません。

 したがって、弊会として把握しております本件経緯のご説明及び独自調査結果を記載した報告書、ならびに本件関連資料を本状に添付して貴院へのご報告とさせていただきます。あわせて貴院に対し、高専機構及び沼津高専への本件に関する迅速な会計検査の実施を要請させていただきます。

                                 敬具
**********


*****会計検査院宛て報告書*****ZIP ⇒ 20201214gjs.zip
         特定高専教員の労働実態不明問題に係る報告書
                              令和2年12月14日
                          作成者:市民オンブズマン群馬

1.本件の前提となる事実関係
(1)国立高専教員の労働賃金体系と高専間人事交流制度について

  沼津高専と群馬高専は、ともに高専機構が設置する国立高専であり、その教員はすべて高専機構という独立行政法人の職員という扱いになっています。国立高専教員は、大学教員と同じく高等教育機関の研究職としての側面がありますが、大学教員と違って専門業務型裁量労働制の対象にはなっておらず、変形労働時間制になっています。これは、授業や実験の担当といった学生教育や、クラス担任といった学生指導の時間の比率が大きいためです。所定労働時間は、1日当たり7時間45分、1週間当たり38時間45分と定められています(資料1、3条及び14条)。
  高専間人事交流制度は、高専機構の「高専・両技科大間教員交流制度実施要項」(資料2)に沿って実施されている制度であり、その目的は、同要項1項によれば「教員を他校に一定期間派遣し、教育研究活動に従事させることにより、教員の力量を高め、教育及び研究の向上を図る」ためとされています。
  この制度により高専間の人事交流を行う場合、派遣元・派遣先高専双方の学校長の合意の下、1年間~3年間の期間を設定して教員を配置換できることとなっています(同要項4項及び8項(1))。その際、派遣中及び派遣後3年間にわたり、派遣教員には広域移動手当が支給されます(同要項8項(3))。その額については、高専機構の教職員給与規則によって、異動距離が60~300kmで月給の4%、300km~で8%と定められています(資料3、25条2項)。例えば群馬高専から沼津高専に移動した場合、群馬高専最寄りの新前橋駅から沼津高専最寄りの下土狩駅までの距離は243.1kmなので、月給の4%です。
  平成29年度における国立高専教授の年間給与額の平均は889万1千円となっています(資料4、P12)。これは全ての査定が平均的とすれば、賞与を抜いた純粋な月給に換算して約63万5千円に相当します。これを上記の例に当てはめて広域異動手当の額を計算すると、63万5千×4%で月2万5千4百円、つまり年に約30万4千8百円となります。すると年間の給与等の額の合計は、上記の年間給与額平均と合わせて約920万円になります。

(2)群馬高専の雑賀洋平教授の沼津高専への人事交流派遣について
  群馬高専電子情報工学科の教授である雑賀洋平氏は、高専間人事交流制度によって、平成31年(2019年)4月1日から令和2年(2020年)3月31日までの1年間、沼津高専に異動していました。この人事交流派遣は、平成30年(2018年)10月10日に決定されました(資料5)。沼津高専における雑賀洋平氏の配属先については、同校の学科所属ではなく、同校では唯一の「専攻科直属」となりました(資料6)。同校では、専攻科の課程は学科所属の教員が担当するもので、専攻科に教員が直接配属されることは極めて異例です。雑賀洋平氏には、沼津高専への着任に際して、同校電気電子工学科棟3階の廊下東側突き当たりの部屋が教員室として割り当てられました(資料7、『2811 プロジェクト』となっている部屋)。


2.雑賀洋平氏の沼津高専派遣時労働実態不明問題の内容について
 上記の経緯によって、2019年4月、雑賀洋平氏の沼津高専への人事交流派遣が開始されました。しかし派遣開始後、同校内部関係者らから弊会に「年度初めからずっと雑賀洋平氏の教員室が空っぽで、何をやっているのか皆目わからない」「授業の担当もろくになく、卒研指導も他教員との関わりもなく、業務実態がまるで不明」といった疑問の声が次々寄せられました。

 そこでまず、弊会において、2019年度の同校における雑賀洋平氏の担当授業科目の確認をシラバス上で行いました。すると、学科担当科目が年間を通じてゼロであるばかりか、所属しているはずの専攻科ですら、前期(4月~9月)では『画像処理工学』(専攻科共通・選択科目、2単位)の担当しかなく、そして後期(10月~翌2月)に至っては担当科目がひとつも存在しませんでした(資料8)。

 さらに、2019年11月2日、直接事実確認を行うため弊会担当者が同校を現地訪問しました。雑賀洋平氏の教員室の内部をガラス越しに確認したところ、がらんどうで空っぽの部屋に、空のスチール棚やほこりをかぶった机が1つ2つ無造作に置かれているだけの状態でした。机の上にほこりの被ったデスクトップモニタが置かれていましたが、そのケーブルは無接続で、宙ぶらりんの状態になっていました。本や書類、事務用品、身の回り品の類も一切見当たらず、教育・研究活動はおろか、沼津高専教員としての最低限の業務に従事している痕跡すらもまったく見受けられませんでした(資料9)。

 また、沼津高専に所属する教員は部活動の顧問を担当することになっており、雑賀洋平氏は同校野球部に割り当てられていたようです(資料10)。しかし、同校野球部には既に監督・コーチが各一名と顧問教員が3名いた中で、雑賀洋平氏は顧問教員らの末席に名前を載せらせただけの状態であり、実際に部活動顧問としての実質的役割を果たしていたことを示すわけではありません。

 高専教員は研究職でもあり、授業や学生指導等の業務を除く業務時間は研究にあてられます。研究内容は教員の裁量に任され、上司から監督されたり内容を指示されることはありません。すると、このケースのように受け持ち業務が極端に少なく、他教員や学生との関わりもない場合、出勤簿に判子だけ押して他の時間は帰宅していてもわからないという状態になってしまいます。この場合、所定労働時間にわたり懈怠なく働いたという業務実態が一切ないにも関わらず、給与及び各種手当だけは全額支払われてしまいます。そして、各種の証言と証拠は、現実にこうした異常事態が発生していたことを物語っています。

 特に2019年度後期にかけて、雑賀洋平氏は、一切の講義も受け持っておらず、あわせて教員室において研究活動に従事していた実態も認められないわけですから、高専教員としての職責を果たしていなかったことは明らかです。この惨状では、上記の「教育研究活動に従事させることにより、教員の力量を高め、教育及び研究の向上を図る」とする高専間人事交流制度の目的も一切果たせていないことは明らかです。

 前年度(令和元年度)末に、雑賀洋平氏の沼津高専への人事交流派遣は完了し、今年度(令和2年度)明けから同氏は群馬高専の教員として復帰しました。しかし本報告書提出時点に至っても、同氏が1年間にわたり業務実態が一切不明の状態で1千万円近いとみられる給与及び諸手当を受け取っていた問題について、何ら解決はなされていないままです。

 本件に関しては、迅速に雑賀洋平氏の当時の沼津高専における業務実態に関する調査を行い、1千万円近い給与及び諸手当を満額支払うに値する業務が行われていたと認められない場合は、その期間の給与等を遡って減額とし、受け取った給与等の一部または全部を返納させるべきであると結論されます。

                                      以上


3.本報告書添付資料一覧
○資料番号:1
・資料名:独立行政法人国立高等専門学校機構教職員の労働時間,休暇等に関する規則
・備考:関連箇所につき一部抜粋
ZIP ⇒ ejcxk.zip

○資料番号:2
・資料名:高専・両技科大間教員交流制度実施要項
ZIP ⇒ 2ezxv.zip

○資料番号:3
・資料名:独立行政法人国立高等専門学校機構教職員給与規則
・備考:関連箇所につき一部抜粋
ZIP ⇒ ek.zip

○資料番号:4
・資料名:役員の報酬及び退職手当並びに教職員の給与の水準(平成29年度)
・備考:関連箇所につき一部抜粋
ZIP ⇒ 4vyee29nxa.zip

○資料番号:5
・資料名:雑賀洋平氏の派遣決定通知
ZIP ⇒ 5h31nxezxhehimj.zip

○資料番号:6
・資料名:沼津高専概要2019『専攻科』ページ
・備考:関連個所につき一部抜粋
ZIP ⇒ 6tv2019wuxyw.zip

○資料番号:7
・資料名:沼津高専主要棟部屋配置図
・備考:平成30年度の配置図
ZIP ⇒ 7vzuia2nxwj.zip

○資料番号:8
・資料名:沼津高専専攻科の2019年度分シラバス
ZIP ⇒ 8u2019vox.zip

○資料番号:9
・資料名:沼津高専への派遣実施中における同校内の雑賀洋平教員室の様子
・備考:令和元年(2019年)11月2日撮影
ZIP ⇒ 9hzgmlq.zip

○資料番号:10
・資料名:沼津高専野球部HPのログ
・備考:令和元年(2019年)12月25日取得
ZIP ⇒ 10hpo2019.12.25.zip

                                以上
**********

■そして2020年12月14日、当会担当者が会計検査院を訪れ、適宜事件に関する説明を加えつつこの報告書一式を同院担当者に提出しました。

 先方の清水担当者は、「本当に勤務実態がなかったりデタラメだったならば問題になるが、一応勤務実態がありますなどということを示されてしまうと難しいかもしれない」と見通しを示しました。その上で、「でも情報提供としては、当然この話はお受けします」と報告書を受領してくれました。後ほど会計検査院内部で当会の報告書内容を精査し、取り上げるかどうかを検討していくという意向を感じ取りました。こうして、本件に関する告発も終えました。

 会計検査院は、たとえ情報提供者本人に対してであっても、個別の会計検査の進捗を教えることはしてくれません。したがって、その後に調査がどう進んでいるのかはもちろん、そもそも調査に踏み切ってくれたのかどうかについても、当会にはわかりません。当事者高専である群馬・沼津の両高専と高専機構、そして会計検査院のみぞ知る事項となります。

 当会としては、アカハラ被害者たちはもちろんのこと、日本の教育研究の苦境の中で窮乏にあえぐ研究者たちをも嘲笑うかのような雑賀洋平の沼津バカンス劇に対して、血税の使途チェックを最上の使命とする会計検査院がしっかりと鉄槌を下したことを祈るばかりです。

■ところで、国立高専組織では現在、労働基準法違反の残業代未払いが横行しているようです。労働時間をタイムカードなどで管理しなければならないと法律で定められているにも関わらず、ほとんどの高専においてロクに労働時間を管理しない違法状態と「サービス残業強要」「残業申請拒否」が常態化しているとのこと。

 このように、「労働実態を把握しない」高専組織の欠陥による労働基準法違反の過重労働横行もまったく深刻です。しかし一方で、こうした「労働実態を把握しない」高専組織の欠陥を逆手に取って、かの沼津バカンスが成立してしまった実態もあります。労働法違反でコキ使われる若手教職員への奴隷待遇と、幹部の庇護を得てアンタッチャブルと化した教職員の貴族待遇の間にある天と地ほどの差には、唸るしかありません。

 労働基準法完全無視のブラック体質に苦しむ高専教職員の皆様方におかれましては、ぜひ第一に労働基準監督署に駆け込み、労働問題を専門とする弁護士への相談を開始してください。そして第二に、「労働実態をきちんと把握しないなら、逆手に取って『バカンス』を満喫してもいい前例が沼津高専にあるぞ」と雑賀洋平の事例を示し、出勤簿にハンコだけ押してさっさと帰宅されることを推奨いたします。「雑賀洋平の前例」を争点にされたくない高専機構側も、強くは出られないことでしょう。


【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

コメント (4)
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選挙のたびに繰り返されるカネまみれ違法行為…ところで今年3月に群馬県議告発のその後は?

2021-11-28 23:28:00 | 政治とカネ
■現在発売中の週刊文春12月2日号のトップは「岸田首相お膝元でも有権者買収疑惑」と題する記事です。同誌は11月18日号でも「『何としても勝ち抜かせてほしい』の裏で岸田<首相>衆院選応援で違法『集団買収』<領収証><案内状>入手」として、河井元法相による買収事件を「説明が必要」と批判してきた岸田首相について、衆院選では、茨城県で激戦区の岸田派女性議員の応援に入ったが、その遊説に選挙区民が参加すると「日当5000円」が支払われたとするスクープ記事を掲載しました。このように、同じようなことが全国各地で行われていたことがうかがえます。

 こうなると、最近まであれほど世間を騒がせていた広島県選挙区における河合元法相とその妻による大規模な買収工作事件はいったいなんだったのでしょうか。奇しくも今年2月7日に投開票された前橋市議選に立候補した複数の陣営に、同市区選出の県議から「陣中見舞い」と称して現金入りの封筒が渡されるというカネまみれの違法行為が明らかになりました。そのため、当会は本年3月1日に、渦中の群馬県議を前橋地検に告発しました。

 そのあと5月25日に地検から呼ばれたので訪問し、担当検事と面談したところ、内容に修正が必要だと説明を受け、それに基づき最初の告発状が5月31日に返戻しされました。そして修正した告発状を6月15日にあらためて地検に直接提出しました。それから早くも5カ月余りが経過しますが、未だに関係者の間に動きがみられません。この事件を風化させないためにも、これまでの経緯について見てみましょう。
○2021年3月2日:保守王国群馬県でまん延する選挙絡みの「陣中見舞い」の撲滅を目指して、狩野浩志県議を地検に告発!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3282.html

2021年8月21日群馬県議会会派/自由民主党「新型コロナウイルス・豚熱(CSF)対策本部だより」新聞折込チラシに登場した狩野浩志県議。Xデーは果たしていつになるか。
ZIP ⇒ 20210822cviria_uj.zip

■ちなみに岸田首相のお膝元の広島県では、自民党と連立を組む公明党出身の国交大臣が開いた応援演説会で、参加者に約4千円の現金が旅費の名目で支払われたという事件も報じられています。

**********TBS NEWS 2021年11月24日(水)23:58
斉藤国交相の演説会 参加者に旅費支給か

https://www.youtube.com/watch?v=gV-v2lGgbek
 斉藤鉄夫国交大臣が地元・広島で開いた演説会で、参加者に旅費名目で現金が支払われた疑いが浮上しています。
 この問題は、公明党の斉藤国交大臣が衆院選に際し広島市で開いた演説会の参加者に対し、「広島県トラック協会」の関連団体が旅費名目で現金を支払っていたと報道されたものです。斉藤事務所が出した案内状には、手書きで「当日受付近くで旅費をお渡しします」などと添え書きが記されています。
斉藤鉄夫国交相
 「手書きのメモ、それから旅費ということについては一切こちらは承知してないということです。我々が支払ったとか、こちらが旅費を出したとか、そういうことは一切ございません」
 24日夜、取材に応じた斉藤大臣は、手書きの部分はトラック協会の関連団体側が記したものとの認識を示し、そのうえで、「大臣の職責を続けていく」とも語りました。
 一方、トラック協会側は、「団体の規約に基づいて支払っている。選挙活動で支払ったものではない」とコメントしています。(24日22:25)

**********TBS NEWS 2021年11月26日(金)14:20
斉藤国交相 演説会参加者に旅費支払いで関与改めて否定

https://www.youtube.com/watch?v=PcDFNluXRL4
 公明党の斉藤国交大臣が、先月、広島市で行った衆院選の演説会で、トラック関連の業界団体が、参加者に対し旅費名目の現金を支払っていた問題で、斉藤大臣は改めて自身や事務所の関与を否定しました。
斉藤鉄夫国土交通相
 「私の事務所から、当該任意団体、および広島県トラック協会への金銭の支払い等は一切ありません。従って報道にある事案について、私や私の事務所は一切関与しておらず、関知もしておりません。数あるいろいろな協会や団体とのおつきあい(であり)、特に深かったということはございません」
 斉藤大臣は、先月行われた個人演説会で自身の事務所からトラック協会に案内状を出したことは事実としながらも、参加者への旅費の支払いなどについては「全く承知していない」として、改めて自身や事務所の関与を否定しました。その上で、「選挙期間中の金銭のやりとりは適切ではなく遺憾」としています。
 トラック協会との関係については、「一般議員として付き合ってきただけで、特に深かったわけではない」と説明。トラック業界などの運輸行政を担当する大臣として説明をする考えがあるか問われると、「丁寧な説明をする姿勢を徹底していきたい」と述べました。

**********東京新聞2021年11月28日
国交相演説会10人に4000円 広島県トラック協会が説明
 衆院選広島3区で当選した斉藤鉄夫国土交通省が選挙期間中に広島市で開いた演説会の出席者に、広島県トラック協会の関連団体が現金を渡していた問題で、協会は二十六日、会員十人に日当と交通費計四千百六十円ずつを支給したと説明した。「投票依頼はしていない。法律上問題ないと考えている」と述べた。
 広島市内で記者会見した折井茂人専務理事によると、斉藤事務所から広島市のホテルで十月二十二日に開く演説会の案内を受け、協会員が加盟する「広ト協政策研究会」として出席を呼び掛けた。
 出席した協会員二十人のうち十人は、協会の「広島北支部」に所属。支部外での活動となったため協会の規定で旅費として日当三千五百円、交通費六百六十円を支給した。斉藤事務所からの指示はなかったという。
 支部の十人には広島3区の有権者も含まれていた。協会は選挙に関する旅費の支給は今回が初めてだったと説明。今後も同じように支給するかについては「検討する」と述べた。
 問題を受け広島市安佐南久野自営業渡辺俊幸さん(五八)は二十六日、斉藤氏に対する公選法違反容疑の告発状を広閉め県警に郵送したと明かした。「事実をしっかりと調査してほしい」と訴えた。
**********

■当会の事務局長が最初に地元県議らの告発状を前橋地検に提出したのは本年3月1日でした。

 その後5月25日に地検の担当検事に呼ばれて、告発の内容について修正が必要だと説明を受けました。それに基づき前橋地検から、5月31日付で初回告発状が返戻しされてきました。
※地検から返戻しされた初回告発状
ZIP ⇒ 20210601.zip

 修正版の告発状を作成し、6月15日に前橋地検にあらためて提出した出し直し告発状の内容は次のとおりです。

*****6/15出し直しの告発状(公選法違反容疑)*****ZIP ⇒ 20210615_uiopj.zip
            告 発 状
                      令和3年6月15日
前橋地方検察庁 御中

1 告発人
  別紙告発人目録記載のとおり

2 被告発人
  狩野浩志
  〒371-0018 群馬県前橋市三俣町2-20-7
  群馬県議会議員
  027-232-9635

3 告発の趣旨
  現に公職にある被告発人の行為は、【告発事実】に書いたように、公職選挙法が禁止する寄付行為」に該当する(公職選挙法第199条の2、第249条の2に違反)と思料するので、被告発人について刑事上の処罰を求めるため、ここに告発する。

【告発事実】
 被告発人は、群馬県議会議員の公職である者であるが、法定の除外事由がないのに、令和3年1月31日から2月6日ごろ、選挙事務所などにおいて、別紙記載のとおり、同議員選挙の行われる区域内にある5人に対し、封筒に入れた現金を供与し、もって当該選挙に関し寄付をしたものである。
 この行為は、公職選挙法第179条第2項に定める、「金銭の交付」にあたり、公職選挙法違反の寄付行為となる。
 国政では、河井元法務大臣とその妻前参議院議員である河井案里が、選挙区内の地方議員に「陣中見舞い」と称して多額の現金を配布した事件があったばかりである。
 そのうえ、群馬県内では、2019年には、自民党群馬県連の重鎮であった元県会議員の南波和憲の妻南波久美子が、運動員9人に、一箱6,000円相当の羊羹を配ったり、配ろうとし、その内の、8人には、現金合計80万円を渡そうとして、買収で違捕起訴されて、前橋地裁は、同年9月に懲役1年執行猶予4年の判決を言い渡している。
 被告発人は、これらの事件をしらないはずがない。
 また、「寄付行為」をめぐっては、1999年には、自民党の小野寺五典元防衛大臣が、選挙区内に名前入りに香典を配布して書類送検され、翌年に議員辞職している。小野寺氏は、罰金と公民権停止3年の略式命令を受けている。

4 罪名及び罰条寄付行為
  公職選挙法第199条の2 第1項、第2項 第 249条の2

5 告発の経過
 被告発人狩野浩志は、昭和58年から、参議院議員山本富雄の私設秘書として勤め、平成9年には、前橋市議会議員に初当選し、平成15年4月には、 前橋市選出の県議会議員に初当選し、これまでに、県議会副議長を歴任するなど、現在5期目の実力派議員である。
 直近の選挙は、平成31年4月に行われた統一地方選挙であり、そこで被告発人狩野浩志は、開票の結果、14,070票を獲得、第3位で群馬県議会議員に当選したものである。
 国政では、河井前法務大臣とその妻の前参諭院議員である河井案里が、選挙区内の地方議員に「陣中見舞い」と称して多額の現金を配布した事件があったばかりである。
 その結果、法務大臣を辞職、妻の案里議員は、参議院議員を辞職することで控訴を免れたと、報道されている。
 被告発人は、県政与党のベテラン政治家として、この事件をしらないはずがない。
 被告発人のようなベテラン議員が、自分の選挙区の有権者に、現金配布を行った事実は、きわめて違法性が高いと言わざるを得ないと思料する。

【推測される狩野県議の行為の意図と目的~背景】
 1)次の選挙は、令和5年4月に予定されているが、自分の系列下の市識会議員を抱えることは、国会議員が選挙区内の地方議員をかかえて、選挙で動いてもらうためにあれこれと支援や援助をするのとなんらかわらない。むしろ県会議員のほうが、一人を選ぶ小選挙区である衆議院議員と違い、複数が選ばれる大選挙区であって、対抗馬が同じ自民党内に複数いることから、その得票における順位争いは熾烈である。得票が多く順位が上の与党議員は、期数とともに、県庁から丁重に取り扱いを受け影響力があることは、現実の政治力学の常識である。だから、誰しもが、できれば選挙で1 位を取りたいと考える。だから、事前運動や金をばらまく腐敗がおきるので、公職選挙法が必要となる。
   そういうことから、県議会議員が自分の選挙の時に動いてくれる系列市議を獲得することは非常に大切だ。それが自分の得票数に直結するからである。
   ましてや従来いつも1位であった岩上憲司県議会議員(当時)が市長選に転出したことから、自民党で2 位の得票を獲得していた被告発人が、選挙で1位になる可能性が現実味 を帯びてきた。
   被告発人のトップ当選への期待は小さくなかったのかもしれない。
 2)県政対立構図
   狩野氏は、山本一太群馬県知事と対立している。
   他方で、山本龍前橋市長とも対立している。
   狩野県議は、山本一太群馬県知事に大沢前知事時代に持っていた県政の利権を奪われ排除された。そこで、今度は、自分の手下の県庁職員を前橋市の副市長として送り込んだが、それも山本龍前橋市長に排除された。
   *山本一太県知事は、そのプログの中で、次のように書いている。
    「山本一太知事を2年で辞めさせてやる!」と言われて黙ってやられるわけにはいかないですよね?彼らは、最後の最後まで足を引っ張ろうとするだろう。山本県政誕生で、何かの既得権益を骨かされているか、さもなければ、「何か後ろめたいこと」(表に出ると困 ること)があるからだ。

 狩野氏は、元県議であった前知事大沢が退任した後、クリーン山本一太知事により県政をめぐる利権から排除されたので、今度は前橋市に食い込んでやると山本市長に対抗馬岩上憲司氏をぶつけてきたが、敗れた。
 そこで、今度は、子飼いの市議会議員が欲しくて、現金を市議選当時に多数の候補者に配布したと考えられている。
 狩野県議は、利権が欲しい、利権を守るために県議をしていると思われている。
 ちなみに、前知事大沢は、愛人を知事公舎に入れていたことが週刊文春で報じられ、狩野県議は、前橋駅南にある子供もいる愛人宅マンションに住んでいる。
 上述したような事情のある中で、被告発人としては、次の県議会選挙においてトップ当選をするためには、「なりふりかまわない系列市議会議員の獲得を図る必要」があったものと推測されることから、複数の市前橋市議会議員候補者に多額の現金を「本人自ら」、議員候補者の選挙事務所を訪れて、候補者本人もしくは、事務所の人に預けていった。
 前橋市議会選挙の時期をとらえて配布することは、自分の選挙にも有効な手段として必要性が高かったと思われる。
 5人以外の何人に配布されたかはわからないが、趣旨のわからない現金を受け取るのは危険と感じた議員は、返却、弁護士に相談し返却、弁護士が保管するなど対策をとった。
 言うまでもなく、憲法が定める民主政治は、公正な選挙が確保されることで実現するものであり、公正な選挙なくして健全な民主政治はありえない。そして公職選挙法は、選挙の公正を確保することで、健全な民主政治を維持するために、「寄付行為」を禁止している。
 関係箇所を捜索差押、関係者を取り調べて、5人以外にも現金を渡された市議会議員がいないのか、を含めて捜査、逮捕、起訴されたくお願い申し上げ、告発事実に関して被告発人の厳正な処罰を求めるものである。

6 立証方法
 1 現金を配布された5人の前橋市議会議員の氏名(別紙1)
 2 封筒の写真(別紙2)

7 添付資料
 前記証拠1(別紙1)、及び2(別紙2)
 告発人目録
 狩野浩史の経歴紹介(自民党群馬県連のホームページ)
 直近県議会選挙の得票状況(群馬県選挙管理委員会)
 狩野県識が現金配布という新聞記事(読売新聞、朝日新聞)
 ZIP ⇒ 20210828yti_uj.zip
                            以 上

=====告発人目録=====

告発人
 氏  名  鈴木庸
 住  所  前橋市文京町1-15-10
 携帯電話  090-9134-2942
 職  業  学習塾経営

                           以 上
**********

 なお、地検の指示に基づき6月15日に県警本部にも告発状を提出しようとしましたが、一部訂正が必要となったため、6月21日に訂正版を提出しました。

■公選法違反容疑での告発状に加えて、当会では政治資金規正法違反容疑でも告発状を準備し、5月25日に前橋地検に提出しました。さらに6月15日には追加証拠を添えて地検の検事に上申書を提出しました。5月25日に前橋地検に提出した告発状は以下のとおりです。なお、県警にも写しを提出しました。

*****5/25告発状(政治資金規正法違反容疑)*****ZIP ⇒ 20210525r3_ucikej.zip
                告 発 状
                            令和3年5月25日
前橋地方検察庁 御中

  告発人
     住所  〒371-0801 群馬県前橋市文京町1丁目15番10号
     職業  学習塾経営(市民オンブズマン群馬 事務局長)
     氏名  鈴木庸(昭和26年9月10日生) 印
     電話  090-9134-2942

  被告発人
     住所  〒371-0018 群馬県前橋市三俣町2丁目25番18号
     職業  狩野浩志後援会会計責任者、狩野浩志政治経済研究会会計責任者
     氏名  内田康雄
     電話  027-231-1476

     住所  〒371-0048 群馬県前橋市田口町311-1
     職業  自由民主党群馬県前橋市第11支部会計責任者
     氏名  吉野貴幸
     電話  不詳

     住所  〒371-0018 群馬県前橋市三俣町2丁目20番7号
     職業  群馬県議会識員
     氏名  狩野浩志
     電話  027-232-9635

第一 告発の趣旨
 被告発人らの以下の所為は、それぞれ政治資金規正法第25条(不記載、虚偽記載)に該当すると考えるので、被告発人らを厳罰に処することを求め告発する。

第二 告発事実並びに罰条
1 被告発人内田康雄と吉野貴幸について
 (1) 被告発人狩野浩志については、「狩野浩志後援会」「狩野浩志政治経済研究会」「自由民主党群馬県前橋市第11支部」の3つの政治団体が選挙管理委員会に届けられている。
 (2) 被告発人である内田康雄は、狩野浩志後援会と狩野浩志政治経済研究会の会計責任者である。同じく、被告発人である吉野貴幸は、自由民主党群馬県前橋市第1 1 支部の会計責任者である。
 (3) 被告発人の内田康雄、吉野貴幸の両名は、政治資金規正法第29条に基づいて、報告書の真実性につき誓約書を出し、各年の政治資金収支報告書を作成して、群馬県選挙管理委員会に提出すべき義務を負うところ、狩野浩志群馬県会議員への寄付金(収入)があったにもかかわらず、それを未記載として、収入を0とする虚偽の政治資金収支報告書を提出した。
 (4) また、令和元年の収支報告書において、会社経営者Aが「狩野浩志政治経済研究会」に個人として寄付を行っているにもかかわらず、「自由民主党群馬県前橋市第11支部」への会社からの寄付として記載されていることも確認された(添付資料6)。領収書が寄付者Aへ渡されておらず、収支報告書を閲覧するまで寄付者Aはその事実を知らず、Aの会社も出金処理を行わずにいた。
 (5) 被告発人内田康雄、吉野貴幸の両名の行為は、政治資金規正法第12条第1項1号のロに該当する罪に当たる。そして、これは政治資金規正法第25条第1項に基づき5年以上の禁錮または100万円以下の罰金を法定刑とする罪に当たる。
2 被告人狩野浩志について
 (1) 被告発人狩野浩志は、前項1(1)のとおり「狩野浩志後援会」「狩野浩志政治経済研究会」「自由民主党群馬県前橋市第11支部」の3つの政治団体の代表であり、同団体の会計責任者の適正な専任と監督をなすべき注意義務を負うものであるところ、告発事実並びに罰条の1に示したとおり、会計責任者である被告発人の内田康雄、吉野貴幸の両名の選任及び監督について相当の注意を怠った。
 (2) よって、被告発人狩野浩志の行為は、政治資金法第25条第2項に基づき、50万円以下の罰金を法定刑とする罪に当たる。
3 未記載事項一覧
 (1) 添付資料1に、会社経営者Aから報告のあった平成29年~31年における「狩野浩志政治経済研究会」宛の寄付金にかかる「未記載の一覧」を示す。添付資料2に「狩野浩志政治経済研究会」の平成29年~31年(令和元年)における政治資金収支報告書(いずれも「収入」が0となっている)を示す。
 (2) 複数の寄付金(収入)があったにもかかわらず、その事実が「狩野浩志政治経済研究会」の政治資金収支報告書に記載されていないことがわかる。
 (3) また、「狩野浩志政治経済研究会」では2019年2月21日に前橋市内のホテルでパーティを開催しているが、この収入、支出についても何ら記載がない。(添付資料3)
 (4) ほかにも、領収書を後日送付すると約束しておきながら、領収書を送っていない寄付(収入)が多数あった。なお、会社経営者Aから報告のあった「未記載の一覧」は、それぞれの寄付者が「領収書」「振込伝票」などを保管している。本告発状には添付していないものの、捜査の際には協力を惜しまない旨、確約を得ている。
 (5) その他の政治団体である「狩野浩志後援会」と「狩野浩志政治経済研究会」は毎年、狩野浩志後援会主催で忘年会、狩野浩志政治経済研究会主催で懇親会を開催している。いずれも出入金について、少なくとも平成26年~令和元年迄のそれぞれの収支報告書には記載がない。これは政治資金規正法第25条の記載義務に抵触する。
(6) このうち平成29年~令和元年分収支報告書が、寄付(収入)・支出ともゼロであるが、政党の団体である「自由民主党群馬県前橋市第11支部」の平成29年~令和元年分収支報告書には、寄付者や支出先の記載と金額が記されている。
 (7) 寄せられた情報によれば、狩野浩志政治経済研究会の懇親会に参加した各寄付者は、「狩野浩志(もしくは「狩野ひろし」)政治経済研究会」という受取人の領収書を受け取っていないという。提供情報によれば、このことについて、寄付をした各企業は出金の処理に困り、狩野県議に確認すると「狩野ひろし政治経済研究会で」と言われるため、各社は出金先をそのように記載しているという。
 (8) 狩野ひろし政治経済研究会の総会及び懇親会のご案内(添付資料3)の下段に記載のある年会費振込先が「自由民主党群馬県前橋市第11支部」になっている。このことから、被告発人らは、「自由民主党群馬県前橋市第11支部」に寄付金をプールさせて、そこから狩野浩志後援会に700万円、狩野浩志選挙事務所に200万円を寄付として支出していることが、自由民主党群馬県前橋市第11支部の令和元年分収支報告書(添付資料6)の「その15」に記されている。このように、被告発人らは、実際にはその他の政治団体である「狩野浩志政治経済研究会」名義で寄付を募り、それらを実際には政党の団体である「自由民主党群馬県前橋市第11支部」に移し替えて、寄付金の流れをうやむやにする手法を採っていることがわかる。
 (9) このことについて、告発人は、「寄付を募った政治団体が狩野浩志政治経済研究会なのに、自由民主党群馬県前橋市第11支部に収支報告として記載するのは違反ではないのか」と考えて、群馬県選挙管理委員会に質したところ、同委員会が言うには「どこにでも記載さえされていれば違反とは言えない」という見解であった。
 (10) しかし、寄付者側としては、政治団体としてその他の団体に寄付したのに、全く別の政党の団体に寄付したことにされ、それが、狩野浩志後援会や狩野浩志選挙事務所に寄付のかたちで支出されていることを、事前に承知しているわけではない。まして、こうした寄付金が、狩野浩志選挙事務所や裏金として、先日の前橋市議会選挙における現金配布の原資として使われたとなれば、有権者の狩野浩志県議会議員に対する政治不信は払拭できないであろう。
 (11) さらに被告発人狩野浩志は、寄付者に寄付の強要もしている。前橋市内のB社社長によると、平成30年1月6日に50万円の寄付を強要されたという(添付資料7-2の50万円の領収書参照)。
 (12) また、同一企業であっても、会合の参加者が1人の場合、複数の会費を納めさせられる。平成31年(令和元年)の1年間に、65,000円の入金が自民党群馬県前橋第11支部名義で領収されている(添付資料8)。しかし、これは同支部の収支報告書に記載されていない。
 (13) この他にも、政党の支部である「自民党群馬県前橋市第11支部」名義で領収書を発行し、但書には政治活動と無関係な、しかも他の団体が行っている文化歴史行事との使途目的が書かれているものもある(添付資料9)。日付が無記名のこの領収書の但書には「上泉伊勢守コミック制作協賛金として」と書かれている。これは前橋市内の企業が狩野県議本人から平成26年頃受け取った領収証で、日付がないことと「自民党群馬県前橋市第11支部」とあることに疑問を感じたという。その後、その企業は「自民党では協賛金などには一切かかわっていない」ということを聞かされている。  
 (14) 被告発人狩野浩志にはかねてから、「どこからそのお金が…」と思う疑問が、地元の少なくない人達の間にくすぶっている。前橋市上泉町で起きた事例がその一例である。
   10年ほど前、上泉町で誕生した「剣聖上泉伊勢守綱信」の生誕500年誌を作るための協賛金が集められ、平成20年5月10日の生誕五百年記念式典に合わせて立派な記念誌が完成し(添付資料13)、関係者に3000部が配布された。その後、前橋市がふるさと納税でドラマ化の費用を集めて2時間のドラマもでき(添付資料12)、市民にもその存在が知られるようになった。
   これに先立ち平成17年(2005年)、上泉伊勢守綱信顕彰会が設立され、多くの地元の人が会員として名を連ね、記念誌発行のころは、協賛金納入者、納入先は明確で、顕彰会の領収書も存在していた。
   しかしその後、遅くとも平成28年度に、上泉伊勢守まつり実行委員会が上泉三学会に組織改編されてから、それまで会長だった渡辺善衛自治会長から被告発人狩野浩志が会長となっており(添付資料10。狩野浩志県議のホームページより。上泉伊勢守顕彰会会長と記載)、事務局のメンバーもいつの間にか狩野県議の支援の市議や後援会員らが占めており(添付資料11。顕彰会総会の写真あり。現在の顕彰会は、元の顕彰会の会員のうち狩野県議の後援会役員のみが継続参加)して、それまで事務局で主に活動していた村田善則役員らは、辞めたことになっていた。しばらくして、「狩野県議に顕彰会の寄付をしたが、領収書が自民党になっている」や「領収書が来ない」などの声が聞かれるようになった。
   そもそも顕彰会は公式には、寄付金集めはしないこととされていたが、もし、本当に必要な寄付金集めが行われたのであれば、会計報告書があるはずであり、地元住民の会員らは、自治会長ら地元幹部らに「きちんと調べてほしい」と言ったが、地元幹部らは「相手が県議なので怖い」という理由で結局動けずにいた。
 (15) 2017年に前橋市役所が集めた「上泉伊勢守ドラマ化ふるさと納税」も実際の窓口が狩野県議と、当時の倉嶋元副市長(2018年12月31日解職。現在は狩野県議の最大のスポンサーである関東建設工業㈱執行役員(事業推進本部長兼本社営業本部副本部長)取締役)となっていた。前橋市役所のホームページに 1億200万円の寄付が集まったとあるので、本当に適正に使われていたか、前橋市から制作会社のスイート・ベイジル㈱(東京都目黒区)へ確認する必要がある。なお、同制作会社は倉嶋敬明・前橋市副市長(当時)と狩野浩志県議の紹介によるもので、協賛会社でもある。ドラマの制作中、地元で狩野浩志後援会幹部を呼んで派手な飲食や東京出張などをアレンジしており、同制作会社が協賛金から提供していたのではないかと疑問視する声が当時関係者の間で上がっていた。なお、被告発人狩野浩志は、上泉伊勢野守ドラマ化の第二弾を考えているという情報もある。どのように協賛金を集めるのか、地元では注目されている。
 (16) 以上のとおり、もし平成26年に自由民主党群馬県前橋市第11支部で協賛金を集めたのであれば、収入と、顕彰会への支出の記録が収支報告書にはあるはずであるが確認できない(添付資料6-1~6-6)。不記載が強く疑われる。

4 補足意見
 (1) 一般的な有権者の社会通念として、県会議員5期目となる経験豊富な議員は、政治資金規正法の規定を承知していると考える。よって、本件では、故意もしくは故意と同視できる重過失で寄付金を不適切に処理し、会計責任者の監督義務も怠っていると思われる。
 (2) なお、政治資金収支報告書の不記載をめぐっては、2019年3月1日付の共同通信の報道によれば、大阪府堺市の竹山修身市長の後援会で政治資金収支報告書に複数の未記載があった間題で、堺市の男性が、政治資金規正法違反の疑いで、同年2月28日に市長らを大阪地検特捜部に告発している。(添付資料4)。

第三 告発に至る経過
1 人物
 被告発人狩野浩志は、昭和58年から、国会議員の私設秘書として勤め、平成9年には、前橋市議会議員に初当選し、平成15年4月には、前橋市選出の県議会議員に初当選し、これまでに、県議会副議長を歴任するなど、現在5期目の議員である。それにもかかわらず、今年2月の前橋市議会議員選挙のさなかに、複数の市議会議員候補者に現金を自ら配り、公職選挙法違反の容疑を問われており、告発人は、前橋地方検察庁に告発状を提出した経緯がある。(添付資料5)

2 本件不記載の事実が明らかになった経緯
 (1) 狩野浩志県会議員が、令和3年2月に執行された前橋市議会議員選挙において、現金を配った事実が新聞で報道された。
 (2) すると、狩野議員に寄付をしていた会社関係者や個人が、「自分の寄付金は法律上適正に処理されているのだろうか?」と疑問を抱き、収支報告書への不実記載の事実関係を明らかにするための必要性を痛感するに至った。
 (3) すなわち、狩野議員に寄付をしていた関係者らは、手元にある領収書や出金伝票(領収書が貰えない場合)により会計処理している。しかし出金先である狩野浩志県会議員の政治団体に記載がない場合、狩野議員への寄付行為自体が虚偽と疑われることになる。そのような事情から、群馬県選挙管理委員会に報告されている狩野浩志氏の報告書を調べると、前述のとおり、その不適切な処理の実態の一部が明らかとなった。
 (4) そして告発者が事務局長を務める市民オンブズマン群馬への情報提供が行われたものである。

3 告発人意見
 市民団体である市民オンブズマン群馬の事務局長を務める告発人が、狩野浩志議員による公職選挙法違反にかかる告発状を、令和3年3月1日付で御庁に提出して以来、多数の企業などから市民オンブズマン群馬に対して問い合わせが寄せられている。「わが社が狩野氏へ寄付した際の領収書があるが、寄付は適正に処理されているか」との不安の声に告発人は「狩野浩志後援会」「狩野浩志政治経済研究会」「自民党群馬県前橋市第十一支部」への収支をあらためて調査し、領収書や出金記録を確認し、狩野浩志氏の収支報告書と照らし合わせた結果、幾つかの疑惑を発見するに至った。
 市民オンブズマン群馬に寄せられた情報によれば、2014年~2019年の期間に寄附をした各企業に対して、狩野浩志県議のそれぞれの政治団体が発行した領収書が存在するが、それらが収支報告書に記載されていないものが多く存在するという。5万円以上の寄付の場合は、記載義務があり、これを怠っていることになるので、収支報告書記載義務違反に問われてしかるべきである。
 それらの多くの領収書が、政党等寄付金特別税額控除を受けられない「その他の政治団体(資金管理団体を含む)」である「狩野浩志政治経済研究会」名義となっており、また、「狩野浩志政治経済研究会」の収支報告には、法人その他の団体や個人からの寄附の記載もなく、入金の確認が不明となっており、問題だらけである。そもそも「狩野浩志政治経済研究会」の収支報告書は、少なくとも平成26年分以降各年度とも入金はゼロと報告されている。しかも、パーティ開催の事実があるにもかかわらず、収支ゼロとなっており、虚偽記載は歴然としている。
 以上、本件に係る被告発人らの違法行為は、ベテラン議員が日常的に継続して行ってきたものであり、このような実態が見過されてしまえば、有権者による政治への信頼を著しく失墜させるものと考える。
 よって、告発事実に関して、被告発人らへの捜査、逮捕、起訴を見据えた厳正な対処としかるべき処罰を求めるものである。

第四 立証方法
1 添付資料1 関係者からの聞き取り結果(収支報告に未記載の寄附一覧)
  ZIP ⇒ ytp.zip
2 添付資料2 3か年分の狩野浩志政治経済研究会の収支報告書(抜粋)
  ZIP ⇒ ytq_uoi29nanj.zip
3 添付資料3-1 狩野浩志政治経済研究会による平成31年2月21日総会開催に係る証明書(群馬ロイヤルホテル発行)
  ZIP ⇒ ytr1_uoe.zip
4 添付資料3-2 狩野浩志政治経済研究会による平成31年2月21日総会開催案内
  ZIP ⇒ ytr2_uojiqnczej.zip
5 添付資料3-3 狩野ひろし政治経済研究会配置表(平成28年2月2日群馬ロイヤルホテル4階)
  ZIP ⇒ isj.zip
6 添付資料3-4 狩野ひろし政治経済研究会配置表(開催時期不詳)
  ZIP ⇒ ih28.2.2czesfj.zip
7 添付資料4 堺市長への告発状に係る報道記事
  ZIP ⇒ ytssl.zip
8 添付資料5 狩野県議による現金配布事件を報じた新聞記事
  ZIP ⇒ yttczzvl.zip
9 添付資料6 自由民主党群馬県前橋市第11支部収支報告書(令和元年分)
  ZIP ⇒ ytu1os11xi26nxj.zip
10 添付資料7 前橋市内業者より提供された自民党群馬県前橋市第十一支部支部長狩野浩志名義の領収証7件
  ZIP ⇒ ytv1sqnos11xih26.8.19j1.zip
ytv2sqnos11xih30r02j6.zip
11 添付資料8 令和元年に某企業あての自民党前橋市第11支部の領収証(計6万5千円)
  ZIP ⇒ ytwanos11xiv65j.zip
12 添付資料9 日付無記名領収書(自民党前橋市第11支部が5万円を上泉伊勢守コミック制作協賛金として)
  ZIP ⇒ ytxtlios11x5rbnj.zip
13 添付資料10 狩野ひろしブログ(役職)
  ZIP ⇒ yt10uoiej164527.zip
14 添付資料11 狩野ひろしブログ(2019年5月12日上泉伊勢守顕彰会総会等記事)
  ZIP ⇒ yt112019.05.12hco2029.05.14.zip
15 添付資料12 上泉伊勢守信綱BS朝日ドラマPRポスター
  ZIP ⇒ yt12mjbshprx.zip
16 添付資料13 剣聖上泉伊勢守生誕五百年記念誌顕彰会名簿
  ZIP ⇒ yt13asnlo.zip
                               以上
**********

■以上のとおり、当会では前橋市区選出の地元県議らについて2件(公選法違反、政治資金規正法違反)の告発状を司直に提出しており、現在もなお、必要な捜査が続けられているとみられます。しかし既に最初の公選法違反の告発からまもなく9か月が経過しようとしており、出し直しの公選法違反の告発および最初の政治資金規正法違反の告発からも5か月余りが過ぎており、このままだと、年を越しかねません。司直の一層の奮起を期待したいものです。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※参考情報1「茨城県での集団買収疑惑」
**********週刊文春(2012年11月18日号)2021年11月10日
領収証入手 岸田首相の応援演説で 国光文乃議員陣営が有権者「集団買収」
 10月31日投開票の衆院選で、茨城6区から当選した自民党の国光文乃衆院議員(42)の支援団体が選挙活動で現金を配布するなどして、公職選挙法違反(有権者買収)の疑いが強いことが「週刊文春」の取材でわかった。案内状や領収証を入手し調査したところ、複数の有権者が現金授受を認めた。
 国光氏は元厚労省の医系技官で、保健局医療課課長補佐などを歴任。退官後、2017年の衆院選で初当選を果たした。
「丹羽雄哉元厚生相の地盤を継ぎ、落下傘候補ながら初陣を飾りました。2018年から岸田派に所属しています。医師免許を持ち、地元でワクチン接種を自ら行うなど、“コロナの専門家”をアピールしてきました」(政治部記者)
 ただ、今回の衆院選では、野党が候補者を一本化。保守王国・茨城にあって、激戦区の一つと見られていた。
 そこで、応援演説に現れたのが、岸田文雄首相や安倍晋三元首相だった。

現職首相が駆け付けた(国光氏のツイッターより)
「岸田首相は10月26日、茨城6区に入り、『6区は大激戦区ですが、何としても国光文乃を勝ち抜かせて下さい!』などと訴えていました。安倍氏も翌27日に応援に入った。結果、国光氏が野党候補に約1万2000票差をつけ、2回目の当選を果たしたのです」(同前)
 この岸田首相の応援演説を巡っては、「茨城県運輸政策研究会」が専務理事名で、〈自民党総裁 岸田文雄氏 遊説への参加協力につきまして〉と題した案内状を、運輸政策研究会傘下の石岡、土浦、常総の関係支部長に送付していた。
「茨城県運輸政策研究会は、県内約1600社の運輸事業者が加盟する一般社団法人『茨城県トラック協会』が1998年に設立した団体です。県内に13の支部がある。茨城6区の場合、石岡支部に石岡市と小美玉市、常総支部につくば市とつくばみらい市、土浦支部に土浦市とかすみがうら市が所属しています。茨城県連に献金するなど、自民党の支援団体です」(協会関係者)

元首相も駆け付けた(国光氏のツイッターより)
 案内状には、岸田氏の応援演説の日時と場所に加え、以下のような文言が綴られていた。
〈首題の件につきまして、推薦者である衆議院議員 国光あやの氏より別添のとおり案内が送付されております。(略)要請人員につきましては、問いませんが最大で5名以内とし、ご協力いただける範囲でご協力をお願い致します〉
 国光氏から送付されたとする〈別添〉の文書には、右肩に小さく〈事務連絡〉の文字。そして〈岸田文雄/自民党総裁 来たる!!〉と大文字で強調され、演説の日時と場所が記されていた。

国光事務所から送られた「来たる!!」文書
★「岸田首相の応援演説に行けば、5000円もらえる」★
 さらに、案内状の文面はこう続く。
〈参加者に対しまして、日当5,000円/人をお支払いさせていただきますので、別添の名簿にてご報告を頂きたく、よろしくお願い致します〉

選挙区の企業に配布された案内状
 公職選挙法では、選挙運動で金銭を支払うことができるのは、事前に登録したウグイス嬢など例外的な一部の選挙運動員に限ると厳格に定められている。
 総務省選挙課の担当者が補足する。
「逆に言えば、例外的な一部を除き、有権者・運動員ともに原則金銭を配ってはいけない。それが公職選挙法の趣旨です」
 だが、茨城県南部に拠点を置く運送業者の従業員・A氏はこう証言する。
「『こんなファックスが会社に届いたぞ。岸田首相の応援演説に行けば、5000円もらえるんだって』と知人から誘われたんです。遊説に参加してみると、1000人近くの人が集まっていて盛り上がっていた。その日、5000円をもらうことはなかったのですが、演説の数日後、実際に現金書留で5000円が届きました。ただ、私もこの選挙区の有権者です。『本当にお金をもらっていいのか……』と疑問を抱きながらも、受け取ってしまった。領収書にサインを書いて印鑑も押しました」

国光氏は岸田派所属(国光氏のツイッターより)
 さらに、土浦市在住のE社長も以下のように認めた。
「(演説には)俺は一人で行った。(5000円は支払われた?)うん。……日当っていうか、旅費的な。領収書も書いた」
――「よろしく」など、投票呼びかけはあった?
「だいたい、『来てくれ』っていうことは、そういうことを意味してるってのは、誰でも理解できるだろう? でなくたって、協会として与党を応援するのは当然のことでしょうよ」
 日当5000円が支払われていたのは、岸田氏の演説だけではない。安倍氏の演説でも支払われていた。「週刊文春」が入手した〈茨城県運輸政策研究会長殿〉宛の領収証には、〈領収証/金 5,000円也〉〈10月27日 国光あやの衆議院議員街頭演説日当 於:石岡市 国光あやの事務所〉などと記されている。

宛名、日付、報酬が記された領収証
 領収証を記録として残していた、つくば市で運輸業を営むH氏が言う。
「岸田さんだけでなく、安倍さんの応援演説についても案内があって、5000円の現金を受け取りました。私も選挙区の有権者なので、マズいなとは思っていたのですが……」
 案内文の送り主、茨城県運輸政策研究会の専務理事に話を聞いた。
★「タダというわけにはいかない」★
――日当5000円について。
「動員がかかれば交通費や日当で。タダというわけにはいかないので」
――実質的な投票依頼と受け止めた人もいる。
「そういう人もいるかもしれませんが、買収したわけではありません」
――有権者買収に当たる。
「そう言われれば、杜撰なやり方だったなと思います。『買収だから』と、お巡りさんから言われれば『そうですか、すみません』と捕まるほかないけど」
 茨城県トラック協会に国光氏の依頼で買収を行ったかなどについて、改めて書面で確認を求めたところ、
「回答は差し控えます」
 と口頭で回答した。

261議席を確保した自民党 ©共同通信社
 国光事務所にも、自身の関与や買収行為に対する見解などを尋ねたが、いずれの質問に対しても、
「全く承知していないので、コメントは差し控えます」
 などと回答したのだった。
 公職選挙法に詳しい神戸学院大学の上脇博之教授が指摘する。
「河井克行・案里夫妻の事件では、厳しい選挙情勢に加えて選挙直前という時期、金銭を渡した規模や範囲などが総合的に勘案されて有罪判決が下りました。今回は、案内状で国光氏を〈推薦者〉と明示した上で〈協力〉を依頼しただけでなく、動員要請自体を『実質的な投票依頼』と受け止めた参加者もいる。しかも、選挙期間の真っ只中に不特定多数に呼び掛け、実際に金銭を支払っているわけですから、有権者買収に当たる疑いが非常に強いと言えます。今回のケースで『私は知りません』という言い分は通用しない。国光氏が『別添の案内』に詳細を記さなくても、協会が動員をかけてくれるという親密な関係性も窺えます。公選法上の直接の買収者は県研究会ですが、今後、捜査が行われれば、国光事務所の関与が明らかになる可能性が高いでしょう」

実刑が確定した河井元法相と妻・案里氏 ©共同通信社
 公職選挙法が極めて厳格に定められているのは、民主主義の根幹だからだ。今回の衆院選でも、日本維新の会から当選した候補者の運動員が、ビラ配布の報酬として日当1万3000円を渡す約束をしたとして公選法違反の容疑で逮捕されている。
 岸田首相は、河井氏の買収事件について「透明性のある説明」を繰り返し求めてきた。それだけに、自らの応援演説で起きた岸田派議員の「集団買収」について、透明性のある説明が求められる。
 11月10日(水)16時配信の「週刊文春 電子版」および11月11日(木)発売の「週刊文春」では、岸田首相と国光氏の関係、国光氏の経歴や人物像、県運輸政策研究会から自民党への献金、案内状や現金を受け取った複数の有権者の証言、県運輸政策研究会の専務理事との一問一答、国光氏への直撃取材など、「岸田首相 衆院選応援で違法『集団買収』」と題して5ページにわたって詳報している。
**********

※参考情報2「広島県での有権者買収疑惑」
**********週刊文春(2012年12月2日号)2021年11月24日16:00
ZIP ⇒ 20211128tt122p2225.zip
【案内状入手】岸田首相お膝元でも有権者買収疑惑――公明党現職閣僚の選挙でカネが、茨城と同じ手法
 ウグイス嬢、県議・市議など100人を買収し逮捕・辞職した河井元法相。その選挙区を自民党は公明党の斉藤鉄夫国交相に譲り、岸田首相も自ら応援に入って与党は死守する。だが、ここでも演説会に出席すると――。
「茨城六区の買収疑惑を報じた週刊文春の記事を読んで、『これは広島も一緒じゃ』と。ホテルグランヴィアの演説会に社長が参加した際、トラッ ク協会の支部から旅費名目で約五千円をもらっ たそうです。 社長は『斉藤さんが好きで参加するならいいけど、お金をもらうのはどうなんかなぁ 』とこ ぽしていました」
 小誌の取材に匿名を条件にそう明かすのは、広島市安佐北区に拠点を置く運送会社の関係者である。
 ◇
 小誌は十一月十一日発売号で、 岸田首相の応援演説を巡る「集団買収」を報じた。茨城六区の国光文乃議員を支援する「茨城県トラック協会」が設立した任意団体「茨城県運輸政策研究会」が、岸田氏の演説に参加した有権者に日当五千円を支払っていたのだ。報道後、政策研究会側は、合計二十一人に日当五千円を支払ったことを認めている。
「国光氏は岸田派の二回生議員。十一月十八日、東京地検特捜部に有権者買収の疑いで刑事告発されましたが、この日開かれた岸田派の総会は欠席していた。本人は周囲に『私は全く知らなかった』などと羅らしています。 ただ、 国光事務所が作成した文書も動員に使われており、『全く知らない』との言い訳は通用しません」( 政治部デスク)
 そして、 茨城と同じ手法が、 岸田文雄首相のお膝元・広島でも使われていたと証言するのが、 冒頭の運送会社の関係者だ。
「しかも、うちは広島三区ですから。夫妻で買収事件を起こした河井さんの選挙区です。これはまずい話じゃなぁ、と……」
 先日、公職選挙法違反での実刑判決が確定した河井克行元法相。公明党が「支持者が事件に嫌気が差している」と広島三区に擁立したのが、 比例中国ブロックで当選していた斉藤氏だ。
「河井氏は妻・案里氏の参院広島選挙区で、ウグイス嬢に法定上限の二倍となる日当三万円を支払ったほか、地元県議や市議ら百人に現金約二千八百万円を配りました。岸田氏も昨年の総裁選では『言語道断の買収劇だ。強い怒りを覚える』と厳しく批判していた。そこで今回の衆院選では、自民党は候補者を擁立せず、 斉藤氏を支援することになっ たのです」( 同前)
 その斉藤氏は一体、 どんな人物なのか。 広島県・修道高校を卒業後、東工大の大学院で博士号を取得。清水建設に入社した。
「同社に在籍しながら、米プリンストン大学で客員研究員を務めたインテリです。普段は人を褒めない麻生太郎副総裁が『IQが二百もあるし、能力が高い 』と言うほど。初当選は中選挙区時代の九三年、 旧広島一区からで、 岸田氏とは同じ選挙区での当選同期にあたります。その後、環境相や党幹事長などを歴任してきました」(自民党幹部)
 だが、広島三区での戦いは決して楽ではなかった。八月の自民党調査でも、立憲民主党の候補にリードを許すなど苦戦。そこで、岸田氏と公明党は〝異例の人事〟に打って出た。
「公明党の人事は二年に一回行われ、本来なら来年に当たります。赤羽一嘉前国交相の留任が既定路線でしたが、比例区から鞍替えした斉藤氏を入閣させ、ゲタを履かせたのです」(同前)
★〈旅費をお渡ししますので 〉★
 衆院選公示直前の十月十七日、斉藤氏を直撃すると、こう答えていた。
「特に(山村地帯の)郡部で、保守系の方で『選挙に行かん』という人もいます。都会部でも、かなり冷たい視線を感じることもある。『もう与党は信用せん』と。(被買収人の県議や市議には)一切近寄っていない。事件と関係のない人にしか応援してもらってないので、そこが弱いところ。(岸田首相は)『応援に行く』と言っていますから、そこは非常に期待しています」
 事実、岸田首相は十月二十日、広島三区に入り、こう応援演説を行った。
「クリーンでまっすぐで、皆さんの期待に応えてくれる政治家が斉藤鉄夫さんだ」
 さらに、 投開票日を九日後に控えた十月二十二日夕刻。広島駅直結のホテルグランヴィ ア広島で開催されたのが、 斉藤氏の個人演説会だった。
「大逆転させて下さい! 」
 千二百人まで収容できる県内最大規模の宴会場「悠久」で、そう声を張り上げた斉藤氏。 会場には、斉藤氏と当選同期にあたる茂木敏充外相(当時)も姿を見せ、こう訴えていた。
「自公協力の最も象徴的な選挙区であります」
 結果、斉藤氏は小選挙区での勝利を果たし、十回目の当選を決めたのだった。
 しかし――。
 小誌の手元に、一枚の案内状がある(二十三頁写真参照)。名義は〈斉藤てつお事務所〉。本文には以下のように記されている。
〈このほど下記の通り、「個人演説会」を開催する運びとなりました。時節柄、ご多用中とは存じますが、万障お繰り合わせの上、何卒ご出席を賜りますようご案内申し上げます 〉
 十月二十二日、ホテルグランヴィア広島。茂木氏らが登壇した個人演説会だ。これだけなら一般的な案 内文だ。 しかし重大な問題を孕(はら)むのは、〈ご案内〉の末尾に達筆に手書きされた次の一文である。
〈各位 当日受付近くで広島北支部のA(注・原文では実名)が旅費をお渡ししますので受付前に対面できる様ご配慮願います。〉
 この手書きメモの右下には〈広島北支部事務局〉と明記されている。すなわち、斉藤氏の個人演説会に傘下すれば、〈広島北支部事務局〉なる組織が旅費を手渡すことを意味する。
★人集めに苦労していた斉藤氏★
 公職選挙法に詳しい神戸学院大学の上脇博之教授が解説する。
「民主主義の健全な発達を目的にした公選法では、選挙運動で金銭を支払うことができるのは、事前に登録したウグイス嬢など一部の選挙運動員に限ると厳格に定められています。つまり、例外を除き、有権者・運動員ともに原則金銭を配ってはいけない。当選させる目的で金銭を支払っていれば、有権者買収に当たります」
 国光氏の例では、 茨城県運輸政策研究会が岸田首相の応援演説に参加した有権者に日当五千円を支払っ たとして、有権者買収の疑いで刑事告発されている。
 果たして、 斉藤氏のケースはどうなのか。
 内情を知る広島県トラック協会関係者が言う。
「国光氏の選挙では、茨城県トラッ ク協会が設立した『運輸政策研究会』が参加者に〈日当〉を支払っていたようですが、斉藤氏の選挙でも、広島県トラッ ク協会が設立した任意団体『広ト協政策研究会』が〈旅費〉を支払うことを約束していました。茨城の例と同じく、研究会は、与党議員に対し、高速道路料金値下げなどの陳情を行う協会の政治部門で、会長や所在地は協会と同一です」
 問題の案内状には、〈広島北支部事務局〉〈北支部のA〉と記されていたが、「研究会は県内に十の支部があり、広島三区の場合、主に『広島北支部』に広島市安佐北区と安佐南区、山県郡、『北備支部 』に安芸高田市が所属している。Aさんは長年、北支部に勤める女性職員で、実務を取り仕切っ ています」(同前)
 県トラック協会会長を務めるのは、大手運送会社・福山通運の小丸成洋社長だ。
「小丸氏の父、故・法之元社長は、首相の親族で最側近の宮沢洋一参院議員の後援会長を務めました。法之氏は一七年、岸田首相にも三十万円の個人献金を行っています」(県連関係者)
 協会本部の所在地には、広島県選管に登録された政治団体「広島県トラッ ク経営研究会」に加え、「自民党広島県トラック支部」も事務所を置き、いずれも小丸氏が会長を務める。
 収支報告書を確認すると、 経営研究会が一七年に岸田氏の小選挙区支部に二十万円の献金を行っているほか、トラック支部なども含めると、 自民党議員や広島県連に対し、一七年からの三年間で四百八十万円を超える献金を行っ ている。
 つまり、広島県トラック協会や関連団体は、自民党と極めて近い組織。しかも、斉藤氏が大臣を務める国交省は運送事業を所管しているのだ。
 では、実際に旅費は支払われたのか。 県トラック協会の会員は今年三月末時点で千七百社を超える。そのうち、北支部に所属する会員は百七十二社だ。小誌はその大半にアプローチを試みた。だが、茨城六区の事例を有権者買収として報じた直後だけあって、会員らは一様に口が重い。
 それでも――。
 冒頭のように、運送会社の関係者が「社長が約五千円を受け取った」ことを語るのだった。
 さらに、選挙区内の別の運送会社関係者も次のように証言する。
「実際、グランヴィアの演説会に参加した人は、宴会場の前に到着すると、飲食店の〝順番待ち〟の際に書くような紙に記帳をした上で、四千数百円の旅費を受け取ったそうです」
 なぜ、斉藤氏の個人演説会では旅費を支払おうとしたのか。
「河井さんのイメージが悪いこともあって、斉藤さんは選挙戦に必死だった。トラック協会に所属する小さな企業まで頻繁に訪ね、『よろしくお願いします』と頭を下げていました。それでも、演説会の人集めには苦労していたようです」
 そう明かすのは、 安芸高田市の運送会社役員だ。
「グランヴィアでの演説会の前日、安芸高田市で演説会を行いましたが、動員をかけたにもかかわらず、聴衆は五十人ほどしか集まらなかったのです。ところが、グランヴィアの演説会では旅費ももらえると書いてあっ た。そうしたこともあっ て、多くの参加者が集まったのでしょう」(同前)
 河井氏の汚職事件の舞台となった広島三区。現職閣僚が出馬したその地で、再び有権者買収が行われていた疑いが浮上したのである。
 ◇
 当事者はどう答えるのか。十一月十五日、県トラック協会本部を訪ねると、専務理事と常務理事、事務局長の三名が取材に応じた。
――グランヴィアでの演説会で旅費を支払っていた。
「内部のことなのでノーコメントとさせて頂きたい」
 当初はこう語った専務理事だが、入手した案内状を見せると対応が一変した。
「あぁ、そうですか……。元々の文書が『案内文』でしたっけ?それにメモが入っている、 と」
 専務理事はこう語ると手元の文章を読み上げ始めた。
★全国的に行われていなかったか★
「広卜協政策研究会の規約に基づいて旅費を支払ったもので、選挙活動として特別に支払ったものではございません。法に基づき対応していると考えておりますので、これ以上の説明の必要はないのかな、と」
 旅費を支払ったことを明確に認めたのだ。
――当日支払った?
「そこはよく分からないんですけども、支払ったとは聞いておりますね」
――斉藤事務所から旅費を出して動員をかけるようにと依頼があった?
「ええ?そんなこと言う?フフ。ええ、ない」
――演説会の参加者には有権者を含みますよね?
「はい」
――そこに旅費を支払った。
「ええ、だから……」
 と語り、「これ以上説明の必要はないと考えています」と繰り返すのだった。
 十一月二十二日、改めて県トラック協会に事実関係の確認を求める質問を送付したが、専務理事が電話で、
「回答は差し控えさせていただきたい」
 と語るのみだった。
 一方の斉藤氏はどう答えるか。携帯電話にかけた。
――グランヴィアでの演説会で県トラック協会が旅費を支払って動員をかけた。有権者買収に当たるが。
「ああ、そうですか。私いま、初めて聞きましたけども。また後で、ちょっとお電話いたします。三十分以内に電話します」
 だが、斉藤氏本人から折り返しが来ることはなかった。事務所に書面で尋ねると、次のように答えた。
「広島県トラッ ク協会に個人演説会のご案内を致しました。手書きのメモについては承知しておりません。旅費についても承知しておりません。当方より参加者に対し旅費等の支払いは一切行っておりません」
 今回の広島三区の選挙では、警察も厳戒態勢で臨んでいたという。
 選挙区内の運送会社の社長が声を潜めて語る。
「公示の一カ月ほど前、会社に警察がやって来ました。『河井さんのことがあった。また違反があってはまずいから』と。ウチの受付に、斉藤氏の秘書が持ってきた『後援会に入ってくれ』という案内のチラシが置いてあったので、警察はその内容をメモしていきました。演説会の件も捜査対象になるのではないか……」
 前出の上脇氏が指摘する。
「今回は、斉藤氏の事務所が出した文書に対して手書きのメモが付けられています。茨城六区の場合、案内文の出し手は運輸政策研究会でしたが、広島三区の場合、受け取った側からすれば強く斉藤事務所の関与が感じられる内容です。公選法上の直接の買収者は広ト協政策研究会ですが、今後、捜査が行われれば、斉藤事務所の関与の有無も対象になることでしょう。
 茨城、そして岸田首相のお膝元、広島でも明らかになった有権者買収疑惑。県トラック協会が関与したその手法は酷似している。激戦区が急増した今回の衆院選で、全国的には同様の買収行為が行われていなかったか 。クリーンな政治を掲げる首相と公明党には、徹底した調査が求められる。
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