市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

12月22日に迫ったタゴお宝絵画等6点の絵柄不公開控訴審判決に向けて当会が準備書面を提出

2011-12-14 12:44:00 | 土地開発公社51億円横領事件
■安中市の岡田義弘市長が兼務する安中市土地開発公社には、昨年5月に元職員の妻から寄贈されたタゴお宝絵画等6点があることになっていますが、その絵画等6点のビジュアル情報、つまり絵柄情報を開示して真贋を確認しようとした当会に対して、岡田義弘市長は開示の判断を、岡田義弘公社理事長に委ねました。

 その結果、岡田義弘理事長から、「市民に絵柄情報を公開すると、換価処分の際に、犯罪に関係した絵画という印象を与える為、価格の決定に悪影響を与えるので、ひいては公社の経営に支障をきたすから、開示を拒否する」という回答が、岡田義弘安中市長に出されました。

 安中市長はその言葉を額面どおりに受け止めるとともに、タゴのお宝の絵画等6点は、岡田義弘市長が理事長をしている安中市土地開発公社が保有しているものの、公社を監理する安中市企画課では、絵画等6点を保有していない為、不存在であるから、絵柄を市民に公開することはできない、として、タゴお宝の開示を拒んでいます。


■安中市役所を16年前に震撼させた、安中市民がタゴ51億円事件と呼ぶ、前代未聞の巨額横領事件の使途不明金の行方を占う重要な絵画等6点の図柄について、なんとしても市民、とりわけ当会に対して開示しようとしない岡田義弘理事長ですが、その岡田理事長の言い分を100%認めるだけで、自らも公社の運営に理事・監事として関与したことのある岡田義弘安中市長が、現在、東京高裁で当会の追及に対して、チンプンカンプンな論理を繰り広げています。

その矛盾に満ちた論理を検証する為、先日、埼玉県の川越市役所、東京都霞ヶ関の総務省、そして前橋市の群馬県庁を訪れて、土地開発公社の理事長を、それを管理する自治体の首長が兼務している実態を調査しました。その様子は昨日の当会のブログにも紹介済みです。

■そして、一昨日、12月20日の判決日の1週間前ではありますが、当会としても、安中市の主張に対して、一矢報いておかなければならないと感じた為、控訴人として次の準備書面(2)を東京高裁の民事第4部宛てに、書留で郵送しておきました。

 おそらく昨日に東京高裁に届いたはずですから、早ければ本日、遅くとも明日までには被控訴人である安中市にも届くと見られます。

 この準備書面(2)は、本件の控訴審が11月8日(火)に開かれた第1回口頭弁論で即日結審したため、法廷で陳述はされませんが、裁判所の裁判官が安中市の主張のなかの疑問点について追加説明を求めた為、安中市の追加説明に対して、当会も追加コメントをこの準備書面(2)で出したものです。

■それでは、当会が12月12日付で、東京高裁と、被控訴人の岡田市長に出した準備書面(2)を次に紹介します。

**********
平成23年(行コ)第306号公文書不公開処分取消請求控訴事件
控 訴 人  小 川 賢
被控訴人  安 中 市
準 備 書 面 (2)

                  平成23年12月12日
東京高等裁判所第4民事部 御中
    〒379-0114 群馬県安中市野殿980番地
              控訴人 小 川 賢

 本件裁判は11月8日の第1回口頭弁論をもって結審したが、裁判長の指揮により、(1)安中市が公社に対して積極的にビジュアル情報の開示を求めないのはどうしてか、(2)公社が開示を拒否する理由が曖昧なのはどうしてか、2点についてもう少し被告側の説明が必要となり、裁判長から、被告に対して、このことについて検討し必要な範囲で書面を提出するのであれば11月末までに提出するよう求めたところ、11月29日付で、被控訴人から準備書面(2)が提出された。控訴人としては、既に主張は尽したと感じていたところ、被控訴人からの準備書面(2)が12月1日に届いたため、内容を一読したところ、いつくか言っておきたいことがあるため、次のとおり陳述する。

第1 被控訴人の準備書面(2)についての感想等

1. 「第1 安中市土地開発公社(以下「公社」という)が、ビジュアル情報の開示を拒否した理由について」に関して

 被控訴人の主張によれば、公社の説明として「インターネット上でのオークションにかけることを検討していた」とあるが、これは到底信用できない。なぜなら、控訴人は、広報あんなか平成23年3月1日号に、同5月22日にテレビ東京の「出張!なんでも鑑定団」が安中市内で公開録画されるため、鑑定をしてもらいたい品物があれば、3月15日までに申し込めることを知った。そのため、絵画等6点の真贋を確かめてほしいと思い、平成23年3月10日に、安中市土地開発公社理事長岡田義弘宛に、次の内容で絵画等6点にかかる鑑定要請を書面で提出したが、一切無視された。

平成23年3月10日
〒379-0192 安中市安中1-23-13
安中市土地開発公社 理事長 岡田義弘 様
写し:安中市長 岡田義弘 様
住所:〒379-0114安中市野殿980番地
氏名:小川 賢 (59歳)
TEL:027-382-0468

「出張!なんでも鑑定団in安中」における公社所有の絵画等6点の鑑定要請

前略、このたび広報あんなか平成23年3月1日号を拝見しました。鑑定をしてもらいたい品物があれば、3月15日までに申し込むと、5月22日(日)午後1時から安中市松井田文化会館大ホールで公開録画されるTV番組で鑑定してもらえます。ぜひ、この機会に、次のとおり、安中市土地開発公社が保有している「お宝」である絵画等6点を鑑定して、真贋を確かめていただきたく、ここにお願い申し上げます。
 ご承知のとおり、安中市土地開発公社では、平成7年5月18日に、総額51億円余りの史上空前の巨額横領事件が発覚しました。それまで15年にわたり、同一職場に配置されていた元職員が、公社の理事長印を勝手に使い、公共事業の名目で銀行から巨額の融資を引き出し、地元の銀行支店に開設した公社の特別会計と称する預金口座に振り込ませ、巨額の公金を横領していたものです。
 警察の懸命な捜査にもかかわらず、使途不明金が14億円以上残るとともに、安中市長印や公社理事長印が押印された金銭貸借契約証書にもとづき横領金を融資した地元の銀行は、返済をもとめて安中市と公社を提訴し、約3年後に和解判決がくだり、公社は安中市の連帯保証により地元銀行に対して、103年間にわたり、毎年クリスマスの日に2000万円ずつ支払っています。これからまだ92年残っており、安中市民は子々孫々にわたり、元職員の豪遊のツケを払わされているという悲惨な状況にあります。
 こうした最中、平成22年6月22日付で地元の新聞にひとつの記事が掲載されました。“安中・巨額詐欺事件「債務履行の一部に」 元職員の妻 絵6点、公社に提出”と題する記事です。
 ところが、これらの絵画等6点は、真贋が不明だというのです。そこで、私は情報公開請求で、どのような絵画等なのか、確認しようとしましたが、公社の理事長を兼務する安中市長である貴殿は開示を拒否しました。私は、さっそく異議申立てを行い、真贋を確かめるためには、積極的に公表して、鑑定をしてもらうのが最善の策であると主張しました。
 しかし、残念ながら、安中市の情報開示審査会は私の主張を棄却し、いまでも絵画等6点は公社に保管されたまま、日の目を見ない状態になっていると想像されます。
 今回、安中市に「出張!なんでも鑑定団」が来ることはまさに天恵です。この絶好の機会にぜひ、安中市土地開発公社に、絵画等6点を出品してもらい、専門家に鑑定してもらえれば、安中市の置かれている状況をひろく全国に知ってもらうことができます。安中市民のためにも、絵画等6点の真贋と鑑定額を、公の場で確かめていただきたいと思います。
<絵画等6点の内訳>
番号 種類 補足説明事項               備考
1 絵画 作者:立川 広己 作品名:薔薇の中で 価格約1億円
2 絵画 作者:浅井 忠  作品名:山間の部落 価格約1億円
3 絵画 作者:萬 鉄五郎 ※サイン有り、その他黒字有り 価格約1億円
4 絵画 作者:高橋 由一 作品名:風景    価格約1億円
5 絵画 作者:林 武※日動画廊社長サイン有り 価格約1億円
6 版画 作者:東洲斉写楽        `   価格約1億円

 こうして、公社は、絵画等6点の真贋を確かめる絶好の機会を見逃したのである。3月10日の時点で既に、元職員から絵画等6点を寄贈されてから、約10ヶ月が経過していた。現在では、既に1年7ヶ月が経過している。それにもかかわらず、まだ公社は真贋を確かめようとしない。
 安中市は、今年はじめに、市民税の滞納者から差し押さえた絵画を複数、インターネットオークションにかけたようだが、なぜか、公社が保有している絵画等6点については、公社が別法人というわけか、積極的に公社に対して、インターネットオークションに向けた準備を促している風情も感じられない。
 ところが、あろうことか、被控訴人は、そのような公社の開示に向けた消極的な姿勢を遺憾に思うどころか、控訴人がインターネットでブログを通じて、地方自治体としては史上最大級の巨額詐欺横領事件(以下「タゴ51億円事件」という。)の真相解明と責任所在明確化、そして再発防止を祈念して、積極的に市民に情報発信していることを不服として、「巨額詐欺事件についても、大きく虚実を交え記事にしている」と中傷めいた言葉を発した。
 被控訴人は、来る12月25日にも都合12回目となる群馬銀行への和解金2000万円を、公社を通じて公金を支出しようとしている。元職員の豪遊の尻拭いともいえるこの和解金名目の公金支出は、本来であれば市民の為に使われるべきものであるはずだ。それなのに、謙虚に反省するどころか、控訴人がインターネットを通じてブログで、タゴ51億円事件の真実をひとりでも多くの住民に知ってもらうため日夜尽力している行為をなじろうとするのは、タゴ51億円事件について、被控訴人が未だに真に悔い改めていないことを如実に表している。
 理論的にはあと91年間も群馬銀行に公金を支払い続けることになりかねないタゴ51億円事件の負の遺産のことを、ひろく世間に伝え、後の世代に伝えることは控訴人、被控訴人を問わず、今を生きる我々の使命である。
 さらに驚かされたのは、被控訴人が、公社が控訴人に絵画等6点のビジュアル情報を開示すると、「インターネット上でそれらの画像を全国的に広く流布される可能性があった」と断定していることである。
 というと、公社の岡田義弘理事長がそのような見解を抱いていることになる。岡田義弘理事長は、かつて理事として元職員と一緒に公社の運営に携わり、一時は監事として公社の決算承認をしたことがあり、元職員とは業務を通じて親しい関係にある。そのような立場の理事長が、公社とは別組織の安中市のトップにいるのだから、どうみても、公正、公平な見解とは思えない。
 というのは、岡田義弘市長は、控訴人がかつて、公社の理事監事ら24名を相手取り、損害賠償請求訴訟を提起したとき、ただひとり反省もせず、自分は正しいと主張し続け、前橋地裁を動かして、控訴人の訴えを退けさせたことがある人物であるからだ。
 控訴人としては、もし絵画等6点のビジュアル情報の開示を受けた場合、それを携えて、元職員がこれらの絵画等6点を16年間も預けていたという富岡市在住の元金融マンを訪ねる予定である。そして、そのビジュアル画像を見せて、いつ、どの骨董商から、いくらで購入したのかヒヤリングする予定である。
 なぜなら、その人物が自ら元職員の変わりに絵画等6点を買い付けたのであるから、当然、真贋についても、確かめていたはずである。その人物は平成7年5月当時、金融マンでありながら古物商の免許をもっており、本物かどうかを確認したうえで、これらの絵画等6点を購入したはずだからだ。
 こうしたことは、当然公社が自発的に行うべきものであるが、なぜか公社はその人物に真贋を確認しようとしない。いや、本当は真贋を確かめたのかもしれないが、それを市民に知られると、その人物の存在や関係を疑われかねないため、表向きは真贋が分からないというふうに市民に言っているだけなのかもしれない。公社が、その人物に確認することをはばかるのであれば、控訴人がその役目を果たすしかない。
 そうした控訴人の心情を汲み取ることなく、公社は、控訴人にビジュアル情報を開示したら、ただちに全国的にインターネットで流布するに違いないと決め付けている。
 控訴人は、絵画等6点のビジュアル情報の開示を受けたら、まず真贋を確かめるために、上記のように美術商や鑑定士、あるいはそれぞれの作者の作品を集めているコレクターや美術館を訪ね、真贋の確認のために必要な情報収集に努める所存である。
 もちろん、公社の岡田義弘理事長には、逐次情報を共有化して、とくに元職員の関係者へのヒヤリングでは、積極的な支援を要請するつもりである。
 こう言うと、被控訴人は、控訴人一人に開示したら他の誰からの請求に対しても同様に開示しなければならない義務があるから、とにかく開示ができないのだ、と反論するかもしれない。しかし、ビジュアル情報を不特定多数の人に開示した場合、どんな不都合があるというのだろうか。
 確かに、もしかしたら絵画等6点は犯罪に絡んだ「盗品」であるかもしれない。それならそれで、一般に広く公開したほうが、情報は集まりやすいはずだ。絵画や版画は、そのビジュアル情報を公開してこそ、その価値の判断材料となる情報を得易くなることは自明の理である。
 逆に言えば、ビジュアル情報なくして、そのものの価値判断は不可能である。ピカソの「ゲルニカ」のような、世界的に有名な絵画であれば、名前を聞いただけで画像がイメージできるが、通常の絵画の場合、例えば絵画の通販で、もしビジュアル情報以外の絵画に関する情報を与えられても、一般消費者が商品の価値判断が正確にできて、購入したがるなどと、被控訴人として思っているのだろうか。

2. 「第2 安中市がビジュアル情報の開示を公社に積極的に求めなかったことについて」に関して

 被控訴人は、裁判長から言われた「なぜ市はビジュアル情報の開示を公社に積極的に求めなかったのか」という問いに対して、明確に答えていない。
 被控訴人は、ここでも「ビジュアル情報が公開されると“犯罪に関係のある絵画”という印象を世間一般に与えるため、結果として取引が敬遠され、売却価格の低下を招き、売却金を巨額詐欺事件の損害賠償に少しでも多く充当することができなくなり、公社が本来得られるべき利益を失い、大きな損失が生じる」という論理を展開している。これは、すならち、公社の岡田義弘理事長の見解だと思われる。
 安中市と公社が別法人であれば、当然、安中市は公社に対してビジュアル情報の開示を積極的に働きかけなければならない。なぜなら、前述のように安中市はインターネットで市税滞納者から差し押さえた絵画をオークションにかけた実績があるためだ。したがって、安中市の経営に支障を及ぼしている公社の負債を軽減する為に、当然、ビジュアル情報を自ら公社に求めて、真贋の確認作業やインターネットオークションの実施に向けた準備を積極的に行うはずだ。しかし、そのような決意や方針について、被控訴人は準備書面(2)で全く言及していない。
 むしろ、公社が主張する“犯罪に関係のある絵画”という点について、被控訴人は神経質なほど非常に理解を示しているようだ。岡田理事長が、前述の通り、「なんでも鑑定団」の安中市での公開録画に絵画等6点を出品する絶好の機会をみすみす看過したことからも、岡田理事長が、この絵画等6点が犯罪に関係のある絵画であることを非常に気にしていることがうかがえるし、被控訴人もそれを容認しているようだ。
 たしかに、この絵画等6点の購入資金の出所は不明だが、タゴ51億円事件で使途不明金とされている14億円あまりから支出された可能性はある。だが、本当にそうなのかどうか、確かめもしないうちに、犯罪に関係のある絵画だと見なすことは性急すぎる。この絵画等6点を元職員から預かった元金融マンの古物商の親しい友人に、この絵画等6点の由来をきちんと質して、本当に犯罪に関係するのかどうかを確認することが最も重要である。しかし不思議なことに、公社の岡田理事長に、そのような事実確認を行ったような風情は見られない。
 一方、安中市の岡田市長は、「安中市と公社は別法人である」として、ビジュアル情報の開示について、岡田市長から岡田理事長に対して、情報開示を書面で促したと主張している。別法人だが、同一人物同士で、互いの判断を求めているという変な格好になっている。民法でいえば、双方代理ということになり、このような形はコンプライアンス違反である。
 タゴ51億円事件が起きた後、群馬県地方課(現在の市町村課)は再発防止のため、公社の理事長を設立母体の自治体の首長が兼務することは好ましくないという指導をしていた。なぜなら、タゴ51億円の発覚当時、ゴルフのシングルプレーヤーだった元職員は、当時の安中市長であり公社理事長を兼務していた小川勝寿(故人)がゴルフ好きなこともあり、しょっちゅう市内にある太平洋ゴルフ場高崎コースでプレーし、その帰りに国道沿いの洋食屋で一緒に食事をとっていた姿を市民に目撃されていた。元職員は小川勝寿のことを「おやじ」と呼び、市長に気軽に声をかけられる立場を利用して、市役所内で一目置かれるようになったのである。したがって、公社においても、理事長である小川勝寿との親しい関係については、上司や同僚も当然知っており、数十万円の高級スーツを着て、高価そうな古伊万里の湯飲み茶碗を見せびらかす元職員にことを「市役所の七不思議」と噂する程度で、誰も忠告できるものがおらず、元職員の犯行についても、周囲の目が遠慮していた為、犯行はやりたい放題だった。
 被控訴人は、公社にビジュアル情報の開示を積極的に迫らない理由に事欠いて、公社の理事長を設立母体の自治体の首長が兼務することが、珍しくないことを強調する為に、川越市土地開発公社の定款を例に挙げて、兼務の正当性を主張する有様だ。
 控訴人は、12月5日(月)午前11時半に実施に川越市役所の4階の総務部管財課を訪れて、川越市土地開発公社事務局を兼務する管財課の主任と、副主任にヒヤリングをした。
 その結果、確かに定款どおり市長が公社理事長を兼務しており、副理事長1名は副市長が兼務していて、その他9名の理事は全員市議から構成されているという。理事の市議らは各会派から満遍なく構成されており、互いに牽制しあうことで、合計11名の理事会では、いつも熱心な論議が尽されるという。また、職員が理事長に「おい、おやじ」などと声をかけるという場面はおよそありえず、直接1対1で会うことさえはばかれるという。
 職員らの説明によると、「昔のことではっきりとは分からないが、こうした定款の条項は、昭和49年に公社を設立した際、前身となる組織の慣例が定款に反映されたため、そのまま現在に至ったものだと思う。たまたま例として安中市に引用されたようだ」と感想を漏らした。
 控訴人は、タゴ51億円事件のことを説明したが、耳を傾けていた川越市の公社職員らは、「当方ではクロスチェックが厳しいので、絶対にそのようなことは起こりえない」と断言した。さらに、「安中の事件は市民の財産を奪ったのも同然ですから犯罪ですよね。これはだから、個人が、元職員が悪いということにとどまらず、組織的に市長も含めて幹部も責任を取るべきですね。これがもし本当であったらね」と率直な感想を控訴人に述べた。
 また、公社の理事長職と、設立母体の自治体の首長が、それぞれの組織の代表者として同一人物であることについて、やはり同日午後2時に総務省地域力創造グループ地域振興室を訪れて、課長補佐に総務省の見解を聴取した。
 その結果、「全国の自治体の公社について代表者が首長と同一人物かどうか、数字としては把握はしていないが、併任されている公社が時々見られる、ということは、感触としては理解している。川越市の公社のように、割合古い時代にできた公社は割りと併任しているところが残っていたりする。公社への通知ということでは、民法上の双方代理の禁止という規定があり、契約の当事者に同一人物がなることはできない場合がある。それに明らかに抵触するというわけではないが、問題となる可能性はある。だから、“是正に努められたい”というような通達は出している。」とのコメントが得られた。
 最後に、同日午後5時に群馬県庁の9階を訪れ、市町村課の係長と面談し、群馬県内にある23の自治体の土地開発公社における首長と公社理事長職の併任の実態についてヒヤリングした。その結果、群馬県では、安中市の公社を含め14の公社が依然として併任していることが判明した。すなわち、平成23年3月31日時点で、設立団体の長以外が理事長に就任している群馬県内の公社としては、前橋市土地開発公社、高崎市土地開発公社、太田市土地開発公社、沼田市土地開発公社、川場村土地開発公社、東吾妻町土地開発公社、玉村町土地開発公社、みなかみ町土地開発公社、昭和村土地開発公社の9団体。設立団体の長が理事長に就任している群馬県内の公社としては、明和町土地開発公社、伊勢崎市土地開発公社、桐生市土地開発公社、渋川市土地開発公社、館林市土地開発公社、富岡市土地開発公社、吉岡町土地開発公社、板倉町土地開発公社、安中市土地開発公社、藤岡市土地開発公社、中之条町土地開発公社、榛東村土地開発公社、西邑楽土地開発公社、甘楽郡土地開発公社の14団体となっている。
 やはり、総務省からは、双方代理の禁止の観点でできるだけ併任状態の解消を指導されているという。なお、驚いたことに、係長は、タゴ51億円事件が発覚した当時、地方課に所属しており、当時の事件のことは記憶に残っているという。
 以上のように、実際に定款に首長が公社理事長職にあたる、と明記しているのは、これまでのところ、川越市の公社しか見当たらないが、設立母体の自治体の首長が公社理事長を併任しているケースはかなり多いようであり、とりわけ群馬県では半数以上の6割近い公社で依然として双方代理の状態にあることが分かった。
 ただし、川越市の公社職員からのヒヤリング結果のように、たとえ併任していても、タゴ51億円事件のようなとんでもない不祥事を起こす可能性は到底考えられないという。いかに、安中市の公社でおきたタゴ51億円事件が異常であるかを痛感させられた次第である。
 そのことは、被控訴人が「代表者が同一人物であっても、公社と市は意思決定の方法も全く異なり、また公社においてはその利益を優先するのは当然であって、公社が上記理由により『経営に支障を及ぼすおそれがある』すなわち『損失を与える可能性もある』と理事会等で意思決定したことについては、公社の窓口機関となっている安中市企画課としても、公社との協議のなかで、その判断はやむをえないと考えたものである。したがって、使途公社の代表者が同一であること事態が本件開示請求の決定に与えた影響は全くない」などと平然と言いのけていることからも明らかである。
 安中市の場合、市と公社は別法人といいながら、実は同じ人物がトップで意思決定をしている。川越市などでは、首長が公社の理事長を併任しても、理事会などで意思決定がきちんと行われているというから、独断と偏見で物事が実質的な論議を経ずに決定されるという懸念はないようだが、安中市の場合、元職員と一緒に公社の運営に携わった経験のある岡田義弘市長兼公社理事長が権勢を奮っており、副市長も助役もおかず、公務中に自分で自家用車を運転して法人や個人を訪問してまわるほどワンマンぶりを発揮していることから、16年前の公社の状態を髣髴とさせるため、タゴ51億円事件の再発を懸念する声は市民の中にも根強い。

3. 「第3 ビジュアル情報を開示することに伴う公社の不利益について」に関して

 被控訴人は、公社の見解として、ここでも「犯罪にかかわった絵画」という表現で、絵画等6点の公開に神経質なほど拒否反応を起こしていることを強調している。ということは、この表現が、公社の岡田義弘理事長の見解であることが分かる。また「巨額詐欺事件の損害賠償請求権に基づく残債務の一部に充当する金額も目減りしてしまう」などともっともらしいことを主張しているが、噴飯ものである。
 事件後、16年もの間、元職員が絵画等6点を警察の捜査をかいくぐり、親しい友人に預けていたこと自体、悪質であり、タゴ51億円事件が、元職員ひとりの単独犯行として幕引きが測られてしまい、事件の真相究明が途中でたち切られてしまったことが、こうした異常な事態を事件発覚後16年してから招くことになった。これは、警察が途中で中途半端に捜査を打ち切ったためであり、使途不明金が依然として14億円余りも残されたという事実の重みを証明していると言える。
 控訴人は、絵画等6点の真贋を確かめるために情報開示を行ったのに、それが公社の不利益に繋がると、短絡的に判断したがる岡田市長兼公社理事長の本音は、おそらく控訴人にこれ以上、タゴ51億円事件に関係して情報を提供して痛い腹を探られたくないという強い気持ちが底辺にあるためであろう。さもなければ、絵画等6点のビジュアル情報を入手して、真贋を確かめたいという控訴人の真意を確認することもなく、頑なに開示を拒否しようとした公社の姿勢の説明がつかない。
 タゴ51億円事件関連というレッテルを貼られたところで、絵画等6点は盗品ではない。真贋を確かめたのちは、事件に関係した絵画であることは話題にはなることはあっても、換価処分時に適正価格に悪影響を与える要素にはならない。公社は、ビジュアル情報を悪影響になると、なぜ、思い込むのか、依然として判然としない。
 既述のとおり、絵画等のビジュアル情報を不特定多数の人に開示した場合、どのような不都合があるのだろうか。確かに、著作権の問題があるかもしれないが、別に写真に撮ったりスケッチしたりしても問題はないはずだ。複製をつくって販売するわけでもない。あるいは、もしかしたら絵画等6点は犯罪に絡んだ「盗品」かもしれない。それならそれで、一般に広く公開したほうが、情報は集まりやすいはずだ。絵画や版画は、そのビジュアル情報を公開してこそ、その価値の判断材料となる情報を得易くなることは自明の理である。
 こうしてみると、もしかしたら、被控訴人や、公社の理事長は、今回のビジュアル情報が、控訴人以外の住民からの開示請求であったら、開示しても構わないと判断するのかもしれない。なぜなら、控訴人のことを、被控訴人は準備書面82)のページ1の下段部分で、「インターネット上でブログを公表しており、巨額詐欺事件についても、大きく虚実を交えて記事にしている」と色眼鏡で見ているかのごとく人格を歪めて強調しているからである。もし、そのようなことをしそうもない住民からビジュアル情報の開示を求められた場合には、全国に広く絵画等6点の画像を流布される心配がない、と見なして開示するのだろうか。ぜひ、被控訴人の判断基準について教えを請いたいが、本件裁判ではもう陳述の機会がなくなってしまい、12月20日の判決日まで本日を除いてもあと1週間しか残っていない。まことに残念と言うほかはない。

以上
**********

■こうして、タゴお宝絵画等6点のビジュアル情報(=絵柄情報)の公開をめぐる司法の判断は、いよいよ来週の12月22日(木)午後1時20分に下される判決を待つのみとなりました。(上記の控訴人の準備書面(2)では判決日が12月20日とありますが、これは12月22日の誤りです)

【ひらく会事務局】

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

タゴお宝6点の絵柄不公開を巡る控訴審で公社理事長の岡田市長が主張する併任の正当性にレッドカード

2011-12-13 23:36:00 | 土地開発公社51億円横領事件
■タゴ51億円事件で群馬県警刑事二課の総力を挙げた捜査にもかかわらず、平成7年6月初めにタゴが警察に出頭する直前に、富岡市在住の元金融マンで古物商の免許を持っていた親友に、絵画等6点を預けていた件で、昨年5月、安中市土地開発公社の岡田義弘理事長は、タゴの妻から、「夫の親友から返還されたので公社の損害に充当してほしい。しかし本物かどうかは定かでない」とタゴお宝絵画等6点の寄贈の申し入れを受理しました。

 そのため当会は、いったいどのような絵画等6点をタゴが隠していたのか確認すべく、情報開示請求を安中市の岡田義弘市長に行ったところ、肝心の図柄が開示されなかった為、異議申立てをしましたが、棄却されたので、前橋地裁に提訴したところ、これも棄却された為、現在、東京高裁で開示を求めて控訴中です。


安中市長が正当性を主張するために引用した、市長が理事長を併任することを定めた定款を持つ川越市土地開発公社のある川越市役所の全景。

■11月8日に東京高裁で行われた第1回口頭弁論で、早くも結審し、12月20日に判決予定ですが、裁判長が安中市に対して、①安中市が安中市土地開発公社に対して積極的に絵柄情報の開示を求めないのはなぜか、②公社が開示を拒否する理由が曖昧なのはどうしてか、の2点についてもっと説明が必要だと訴訟指揮をしました。

 その結果、安中市の岡田市長は、11月29日付の準備書面(2)で、上記の2点に加えて、絵柄情報を開示することに伴う公社の不利益について、説明してきました。

 ところが、それをみると、安中市長が安中市土地開発公社の理事長を兼務、或いは併任することは、他の自治体の土地開発公社の例からも、決して異常ではない、という主張を展開しているので驚かされました。まったく安中市は、あの16年前に安中市を揺るがしたタゴ51億円事件について反省をしていないからです。

■安中市では、安中市土地開発公社を安中市長が兼務していることの正当性を示そうと、ネットで調べたとして、川越市のホームページから、川越市土地開発公社の定款を引っ張り出してきて、そこに、第8条第2項に「理事長は、川越市長の職にある者をもってあてる」とあることから、それを乙3号証として、「他市町村でも安中市同様に市長が理事長職を兼ねている自治体もある」と主張しました。

 そこで、先日、実際に川越市土地開発公社を訪問してきました。また、土地開発公社の関係を管轄する国の総務省地域力創造グループ地域振興室を訪れて、首長が土地開発公社の理事長を兼ねている割合と、その問題点の有無について見解を聴取してきました。さらに、群馬県市町村課で、群馬県内の土地開発公社の理事長を併任する割合について調べてもらいました。

■最初に川越市土地開発公社を訪れました。高崎から新幹線で25分で大宮駅に着き、そこから川越線に乗り換えてJR川越駅まで20分ほどで着きます。


JR川越駅。

JR川越駅前の様子。手前のバスターミナルから川越市役所行きのバスが出る。

 川越市役所はJR川越駅からかなり距離があります。歩くと小一時間かかります。さっそく市役所1階の受付に聞いたところ、都市計画課は5階にあるとの事なので、エレベータで5階にあがりました。5階の南側にある都市計画課を訪れて、川越市土地開発公社のことを尋ねたところ、担当者は「こちらでは土地開発公社を管轄しているのは4階の管財課というところになります」と言いました。そこで、4階に移動して、やはり南側に面した管財課をたずねました。

 「安中市から来た者ですが、こちらの土地開発公社の組織的なところなど2、3、質問したいのですが」とお願いしたところ、窓口の係員は当会の名刺を受取り、「それでは担当者をお呼びします」と奥でなにやら実務担当者らと話しをしたあと、「どうぞこちらへ」と案内されました。テーブルに着き、名刺を頂戴した後、当会からおもむろに話を切り出しました。

 初めに、平成7年5月18日に安中市土地開発公社の事務局内で発覚した巨額詐欺横領事件のタゴ51億円事件のあらましを同公社事務局の担当者らに説明しました。

「安中市から来た者ですが、安中市の土地開発公社のことはお聞き及びか知りませんが、16年前に51億円という巨額横領事件がありました。元職員が、群馬銀行に対して、市長印と理事長印を勝手に押印して借入書類等を作成し、新幹線安中榛名駅周辺の駐車場などの開発業務をでっち上げて、多額のカネを銀行から騙し取った前代未聞の事件です」と説明を始めたところ、興味深そうにメモをとっていました。

「当時は安中市の市長が公社の理事長をやっていて、副理事長が助役。あと常務理事を財務部長がやっていました。それをナアナアでやっていたため、元職員の不正を見抜けませんでした。市長印を押印する秘書課の責任者も、元職員が市長のゴルフ友達ということで偽造書類にメクラ判を押していました。しかも元職員は15年間同一職場に配置されていました。安中市では土地開発公社は昭和54年に設立されましたが、その後平成7年に不正が発覚するまで15年間ずっと同一職場に配置して、公社の金庫番をさせていました。そのため、市役所の職員やOBやら市会議員らが大勢その周りにたかっていました。それにもかかわらず、この史上空前の巨額横領事件が、元職員の単独犯行ということにされてしまい、本人は14年の実刑をくらって千葉刑務所に服役し、一昨年の9月に出てきたことになっています。そしたら、昨年5月、突然、元職員の妻から公社に対して、『夫が絵画等を6点友達に預けていたのを友達から返してもらったので土地開発公社の損害賠償に充当してほしい』と寄贈を申し入れてきました。当時、当方が警察に聞いたところよれば、元職員が12億円使って購入したと自称する延べ800数十点の骨董品や古美術品、絵画とか版画とか、伊万里焼などが元職員が建てた骨董倉庫の中や自宅の居間、そして妻が経営していた喫茶店の陳列棚などから見つかりましたが、その中にその6点が入っていませんでした。一説によると6点のなかにはかなり高いのが含まれているといわれています。その6点の作者や作品名は分かっています。江戸末期から昭和にかけての作品。そのため、当方から絵柄を見せてほしいと言って、安中市に情報公開請求をしたところ、安中市から「みせられない」ということで、開示を拒否されたのです。異議申立てをしても拒否されたので、しかたなく裁判に踏み切ったのですが、前橋地裁で敗訴させられました。現在東京高裁で控訴審をやっています。そのなかで安中市から出てきた準備書面で、川越市の土地開発公社は、いまだに市長が理事長だとして、川越市のホームページからダウンロードして印刷した公社定款を証拠として出してきたのです」

 すると、川越市土地開発公社事務局を兼務している管財課の職員らは、「うちのことが出たんですか」と驚いていました。そして、「実態としては市長になっている場合もあるだろうし、副市長の場合もあるし、また違う方の場合もあるだろうし、それぞれの自治体でことなりますね」と言いました。

■そこで、当会から、安中市土地開発公社についてさらに詳しく説明しました。

「この準備書面で安中市の言い分は、副市長を安中市が設置していないので、安中市長がやむをえずに就任していると主張しています。ところが実際には、安中市長は、副市長も助役も置こうとせず、市の公用車も廃止しました。その代わりに、自分の自家用車を自分で運転して、公務時間内であろうとなかろうと、市内あちこちの法人や個人を訪れて勝手に自己PRをしています。それはともなく、お聞きしたいのは、もちろん川越市では安中市のような不祥事は起きていないと思いますが、当会がずっと問題だと思っていたのは、市長と公社の理事長を兼務した場合、いろいろと癒着が生じてくることです。安中市の場合は元職員を15年も同一職場に配置していたうえに、元職員と市長兼理事長がゴルフ友達だったことです。元職員は土地開発公社の主査でしたが、ゴルフはシングルプレーヤーで鳴らしていたため、しょっちゅう、勤務時間であってもなくても、市長に誘われて、或いは市長を誘って、安中市内の太平洋ゴルフ場などでプレーしていました。そのため、元職員は「おやじ」という言い方で市長を呼んだりして非常に緊密でした。当会は、公社のズサンな対応を正すために訴訟を何度も提起しましたが、その都度、裁判所は、土地開発公社というのは特別法人扱いであり、市とは別組織だという安中市の主張だけを斟酌し、しかもこれは最高裁の判例であると主張したため、これまでずっと当会は裁判で敗訴してきました。裁判所は、『土地開発公社内でおこった横領による損害は、市民には及ばないし、公社は別法人だから、市民は安中市は訴えてもいいが、土地開発公社を訴える権利がない』と言って、いままでずっと棄却され続けて来ました。それはともかく、お聞きしたいのは、市長が理事長という定款を掲げるユニークなところは他に見当たらないが、この定款に、ここまでうたってある経緯というのは何かあるのでしょうか」

 すると川越市土地開発公社事務局を兼務する担当者らは「うーん」と首をひねりました。そして「うちは昭和49年に公社は設立されていますから、おそらくその時に定款も作られたのだと思います。しかも条例もその当時作成されたので、それ以降、多分改正されていないと思います。変わっていないことから。当時の定款ではこれが一般的だったのかもしれません。表現方法が他の自治体の土地開発公社定款では違うのかもしれませんけど」と若手職員らは、当時の経緯を知らない様子でした。

■そこで、当会から「もしご存知でしたら、埼玉県内でこのように川越市土地開発公社のように定款にこのように明文化してある自治体は、他にご存知でしょうか」と質問したところ、「ちょっと分かりませんが、いわゆるあて職という形で理事長や副理事長を任命しているところが多いのではないかと思います。とはいっても、そんなに無茶苦茶多いというわけではないと思います」とコメントがありました。

 当会は「これから総務省にも行って、全国的な公社の理事長と首長の兼務の趨勢は聞くつもりですが、安中市の場合、公社を舞台にとんでもない不祥事が起きたわけで、しかも当時の公社の理事や監事をやっていたことがあり、元職員とも親密だったという人物が現在安中市長になっていて、状況は16年前の、もとの木阿弥状態になりつつあります。だからこんな内容の準備書面を書いてくる始末なのですがが、川越市土地開発公社の場合には、理事会も定期的にきちんとやっていると思います。ところで、現在の公社の構成員としては、当て食ということで理事長は市長が併任しているが、あとはどのような構成なのですか」と質問しました。

 すると、川越市土地開発公社事務局の担当職員の皆さんは「副理事長が1人で副市長。常務理事はおらず、あとは理事だけです。市長も副市長も理事だから全部で11人。あと監事が2人います」と答えてくれました。当会から「では、この辺の経緯は当時からこのままだということなのですね」とさらに念を押すと、「すいません。この設立当時やそれ以前のことについては、余り詳しくないので。たぶん改訂していないので、たぶん当時のままだと思います」とのことでした。

■次に当会は、土地開発公社の保有土地の塩漬け状態について、質問をぶつけてみました。「総務省が発表している公社の塩漬け土地の関係を見ると、結構、川越市も多いようですね」と聞いてみたところ、川越市の職員らは、「確かに少なくはありません。ただし、塩漬けの定義が判然としませんが、長期に土地を保管と言う意味で言えば、そのとおりです。でも土地保有に目的がないわけではないので、きちんと目的があって保有土地を持っているということです。どうしてもその時々の都合で、市の方で公社が購入した土地を受け取る時期が遅くなっているものもあります。その意味で5年を超えて持っている保有土地があり、いわゆるゼロではありません」と教えてくれました。

 当会はさらに、公社の存在意義について質問してみました。

「長期保有土地を早期に減らすとか、総務省がいろいろ通達を出しているようです。安中市のとなりの高崎市などは行動計画を立てて、近い将来、土地開発公社を解散するというビジョンを描いているようです。国からいろいろ指導を受けながら公社の清算を図る自治体も増えていると思います。ところが、安中市の場合は、まったくそのような機運がみられません。なぜかというと、51億円あまりの横領事件が発生し、この横領のうち、自転車操業で回した分を除くと、およそ39億円が実損失となります。群馬銀行が返還請求訴訟の裁判を起こして、このうち6億円が元職員が群馬銀行に預けた裏金預金や、骨董品をオークションで売り飛ばした得た金額などを充当して公社の損害に充当しまたが、まだ33億円が残ってしまいました。裁判は3年間続きましたが、このうち9億円を群銀が棒引きして、残りの24.5億円を103年間で返すという長期ローンが和解金として裁判所から銀行と安中市に提示されました」

 これについて、川越市の職員らの感想は「どうにもならないからそうしたのでしょう」とのことでした。


観光客でにぎわう土蔵の並ぶ通りの風景。

■当会は、安中市土地開発公社の異常性をさらに説明しました。

「安中市と土地開発公社を相手取って訴訟を起こした群馬銀行にいわせると、『全部とってもいいが、そうすると安中市がつぶれるからこういう和解方法を採った』などと豪語しましたが、和解案として提示された返済は103年間掛けて返済するという、いわゆる103年ローン方式でした。そのため、10年ごとに更改しなければなりません。昨年最初の10年目の更改をして、今年は2順目の2年目で来る12月25日に、群馬銀行への12回目の支払いが迫っています。初回は公社から4億円をまとめて群銀に払いました。その後は、20.5億円の残高に対して、毎年2000万円ずつ支払い続けるというので、計算上は103年かかることになります。最後の年は1000万円になる。要するに安中市の場合、土地開発公社は、群銀への和解金の支払機関になりさがってしまいました。だから、総務省がいくら解散するようにと指導しても、解散できない状況に陥っています。かつて公社にいた元職員も、土地ころがしで、安中市の土地情報を一手に握っていたため、たとえば、群馬県の住宅開発で団地を造成したら、その山土を造園業者などに園芸用の表土として高く売り飛ばし、裏金を作って政治家やOBにばら撒いたというのが市民の見方で、そういう市民情報も全部捜査関係者に提供しましたが、結局元職員は単独犯とされ、14年の実刑を受けました。実際には5年程度で仮出所になったという話もあります。そういうことで、公社の理事長を市長が兼ねていると、周囲が遠慮して不正が発覚しにくくなるという弊害があります。だから、市長が公社理事長を兼ねるのは問題だと思っているのですが、なぜか安中市はその状態を擁護する為に、このような証拠を出してきました」

 すると川越市の職員らは「たまたま川越市がこうなっているから、例に出されちゃったようですね。市長や首長さんが(公社の)理事長さんをやっている自治体も、実態としてはうちと同じわけだ。明文化してあるのはうちくらいかもしれませんが。ただ一例になっているだけではないか、ということしかちょっとわかりません」

 当会は更に続けて安中市の公社の実態と巨額横領事件の背景を説明しました。

「民間だと、民間でも子会社の会社を兼務することはあるかもしれませんが、不祥事件さえ起きなければ良いのですが、一旦不祥事が起きると“コンプライアンス上問題があるのではないか”と追及されます。安中市が言うには“完全な別法人だから”と。独立採算とまでいわないが、きちんと方針を立てて運営しているというだけです。だからそこに、元犯人の奥さんが、もう元職員の夫と藤岡市で同居していますが、その友人というのが事件当時、安中市役所の前にある地元金融機関支店にいて、その金融マンが古物商の免許を持っていて、それが元職員のかわりに、栃木県の足利市にある骨董品とか、高崎とか、館林や、前橋にある骨董商から古美術や骨董品を買いまくりました。元職員は12億円くらい買ったといっているが、警察の捜査では、その半分しか把握されていません。残りの数億円が行方不明とされているのです。今回たまたま絵画等6点が公社に返還されたということですが、これは明らかに警察の手入れの直前に、元職員に代わり買い付けを一手に引き受けていた古物商の免許を持つ金融マンと、元職員が相談して、一番目ぼしいやつを選んで、その金融マンの自宅に保管していた可能性があります。市民として警察には、この事件について入手したあらゆる情報を提供し、共犯が沢山いるようだと伝えていましたが、結局警察の捜査担当者からは、“元職員の単独事件だった”と最後に言われました。今回の絵画等6点は1点当たり1億円もするなどという巷の噂もありますが、17年前の800数十点のオークションでは、中島誠之助が主催する笹塚会で大量の骨董品を一度に捌いたため、単価が下がって、安く買い叩かれたようです。また、横山大観作と称した偽モノもかなり混じっていたといわれています。当時はバブルもはじけたため、骨董品の値段が安くなったという見方もあります。この前代未聞の巨額事件では、捜査の過程でつじつまが合わないことはいっぱいあったようで、担当した警察官らは、関係者のいうことはうそだらけだったと言っていました。その挙句が、警察が調べた結果なんと14億数千万円が使途不明金として残ったことでした」

 こうした事件の背景を聞いて、川越市の担当者らは、驚きの余り目を見開いていました。とくに、市長兼公社理事長と、実務担当の職員との癒着については「癒着などありえません。(一介の職員が市長に)会うのもはばかれる雰囲気です。絶対ありえません」と力強く否定しました。さらに「うちはちゃんと理事会が機能しているし、理事は市長と副市長を除く9名が全員市議会議員から構成されているので、いろいろな会派の人が入っているので互いに内部牽制ができています」とはっきりと述べました。

 理事全員が議員などというのは、安中市ではおよそ想像も付かないことです。もし、安中市土地開発公社の理事会で、理事が全部市会議員だったら、内部の不正行為は外部に漏れなくなり、たちまち第二のタゴ事件が発生しかねないし、発生しても誰も気付かないので、そのうちに取り返しがつかない状況になると思われます。安中市土地開発公社の場合は、理事全員が市役所の各部署の部長クラスで構成されています。これまた、安中市の場合は市長のイエスマンなので、理事全員が議員の場合よりさらに始末が負えません。安中市の場合はどっちにしても、市民のなかから理事を入れない限り、公社が利権の道具として使われる体質にあるため、早急に公社を解体すべきなのです。

 当会は最後に裁判の現状について説明しました。

「この判決は12月20日予定ですが、11月8日に東京高裁の第1回口頭弁論でこちらが出した準備書面、むこうが出した準備書面で裁判をやりました。その時、裁判長は絵の作者も作品名も分かっているのになぜ積極的に絵柄を求めようとしないのかと、この点についてもう少し聞かせてほしいと安中市に命じました。また、絵を市民に開示することで公社にどんな不利益があるのか、ということ。この2点を説明するようにという指示が安中市に出されました。たぶんこの裁判の判決は、新聞にもなにも載らないと思いますが、こういう公社を抱えている自治体もあるということを記憶にとどめておいて頂ければ幸いです」

すると、川越市の担当者らは、「これは市民の財産を奪ったのも同然ですから犯罪ですよね。これはだから、個人が、あるいは元職員が悪いということにとどまらず、組織的に市長も含めて幹部も責任を取るべきだと思います。これがもし本当であったとしたらですけどね」と感想を述べてくれました。やはり、タゴ51億円事件のような異常な犯罪が自治体で起きうること事態、想定外のようです。無理もありません。


小江戸川越を象徴付ける火の見やぐらのある通りの風景。

■当会は次のように総括をしました。

「事件発覚直後には、それでも、市役所からの内部告発もありましたし、いろいろな関係者からいろいろな情報が入りました。それらを振り返ってみると、この巨額横領事件は、恐るべき事件でした。警察は我々市民団体の動きを注視していて、よく当会にやって来た専任の刑事には、できる限りの情報提供をしました。事件発覚後、2年ほど経過してから、その刑事に会ったとき、いろいろ話をしました。“市民から情報をあれほど提供したのだから、その見返りを捜査結果を聞かせてほしい”とお願いしたところ、“それをやったら、こうなる”とクビをきるまねをされました。“木の幹だけを切るのが精一杯で、木の枝はまで切る時間がなかった”という言い方もされていました。一方、元職員のほうは、事件発覚直後に奥さんが県内でも有名な警察に顔のきく高崎市内の弁護士のところに駆け込みました。そのことひとつをみても、この事件の奥深さがわかります。群馬県という保守的な土地の関係で、いろいろな分野の人物が絡んでいる事件です。だから裁判を5回もやって最高裁まで争いましたが、全て敗訴しました。犯罪所得に対して課税を怠ったこと、団地造成後の土地の販売で購入者の名義を語り、隣接地もその人にしていたこと、そのため、固定資産税の課税台帳も改ざんしていたこと。通常は一般市民が土地登記手続きをする場合には契約書やらいろいろ書類を出さなければなりませんが、公社がやるばあいには、嘱託登記といって、非常に手続が簡単に行えることを悪用して、土地ころがしはやりたい放題だったのです」

 すると、川越市の担当者は「嘱託登記はうちでもよくやっています。それにしても、すごいですね。うちではそんなこと、絶対やれないです。相互監視が厳しいですから。うちでは全く考えられないことです」と、驚いていました。


川越市役所前の植え込みに立つ太田道灌の銅像。江戸城構築で名高いが川越城の建造も手がけたため、ここにも銅像がある。

■そこで当会から、元職員を自由にのさばらせていた安中市役所の様子を少し説明しました。

「安中市役所では、元職員が数十万円もするスーツを着て勤務したり、骨董品の鍋島や古伊万里の湯飲み茶碗を同僚や上司に見せびらかしたりして、役所の七不思議といわれていましたが、誰一人として、そのような異常な事情を追求する者は居ませんでした。又、元職員の上司として平成2年から経理に詳しいと自称する人物が異動してきましたが、不思議なことに自分では全く通帳をチェックすることもなく、そのため、その後も、横領額がどんどん膨らんだという経緯があります」

「安中市が公社の事業の為に支払った先の公社の口座から、元職員が、直接横領していたケースも3億円余りに達していました。しかし、市や公社がやとった弁護士は、これは横領事件ではなく、詐欺事件だと決め付けて、市民を目をくらませたのでした。群馬銀行も、元職員に盆暮れの付け届けをしたり、ゴルフ会員権の斡旋時に、群銀の子会社のクレジット会社を通じてローンを提供してやっていました。元職員は毎週1千万円単位で横領金を群銀から引き出していて、会員権など即金で支払えるほどカネをもっていたのに、さらに群銀はローンまで組んでやっていたのでした」

 川越市の職員のかたがたは、このような話に熱心に耳を傾けてくださり、さかんに「すごいですね。不思議ですね」を連発していました。お二人とも、安中市のことは知っており、「結構、行ってみるといいところだなと思いますよ」と言ってくれました。

 最後に当会から、「詳しい内容は、当会のブログに掲載されていますので、この後、昼休みの時間にでもよくチェックしておいてください。多忙中のところお時間をとっていただきありがとうございます。これから総務省に行きます。ではこれで」とお礼の言葉を差し上げつつ、財政課を退出しました。


川越市役所の玄関。

■再び川越線に乗り、大宮駅から埼京線で新宿まで出てから、地下鉄の丸の内線に乗り、霞ヶ関まで行きました。そして総務省の検問を通過して、エレベーターで4階の地域力創造グループ地域振興室を訪ねました。

総務省4階の案内図。中央に大きな吹き抜けスペースがある。

 アポイント無しでしたが、応対していただいた女性の総務事務官は非常に丁寧に担当者に取り次いでくれました。入口脇のテーブルと椅子の在る狭いスペースでしたが、そこに案内され、お茶までだしていただきました。まもなく担当者の課長補佐の方が来ました。

 簡単な挨拶と自己紹介の後、当会から用件を切り出しました。

「手短に話します。群馬県の安中市土地開発公社のことについて聞きたいことがあってきました。この公社では、平成7年5月18日に51億4千面円の横領事件が発生しました。当会はその真相究明をやってきた市民団体です。実行犯とされた元職員が詐欺罪と公文書偽造罪の複合罪で懲役14年の刑を終えて一昨年9月に出所しました。昨年4月になって、元職員の奥さんが、夫が警察に捕まる直前に古美術品を6点、親しい知り合いに預けておいていたところ、その知人から“これはお宅の主人のものだから返したい”と申し出があったそうです。それは絵画等6点ですが、それを奥さんのほうから安中市土地開発公社に対して、現在まだ19億円あまりの簿外財務というか、群馬銀行と和解した結果、毎年12月25日のクリスマスに2000万円ずつ支払って、まだ19億円余りありあと90年余りかかるという状況にありますが、元職員の夫人から“その損害賠償の足しにしてほしい”と申し入れがありました。“その絵画を公社に寄付するので、それを換価して、公社の損害金の弁済の足しにしてほしい”という申し入れがあったのです。当会はこの事件をずっと追及してきていますが、使途不明金が14億5千万円もあります。その絵画等6点も使途不明金に関係している可能性があります。とにかく情報公開でどんな絵柄の絵画等6点を返却しようとしているのか、安中市に開示請求しました。安中市は当然そのような情報を持っていなければならないはずだからです。連帯責任者として公社の和解金支払のバックアップをしている立場だからです。どんなものが絵画等6点なのか、奥さんが夫の知人からもらったときに“これは本物かどうかわからない”といわれたため、“真贋は分からないがとにかく返済して損害舞賞の足しにしてほしい”と申し入れたのでした。当会で情報開示を請求したところ、作者と作品名は公開してもらえましたが、結局、肝心の絵柄については開示されませんでした。そのため、異議申立てをしました。それでも安中市情報開示審査会は弁護士が会長をしていますが、その会長は“安中市が持っていないと主張するのであるから、公社がもっていても安中市はもっていない”のは理解できるとして、絵柄を見せたくでも不存在だから仕方がない、という答申を安中市にしたのでした。公社の理事長を市長が兼務して、理事長に対して市長が“市民からこういう請求があったので開示してほしい”と依頼の手紙を送ったところ、公社理事長は“それを開示すると公社の経営に重大な支障がある”として、同じ人が同じ人に対してやり取りしています。それは当事者の最高責任者がそう言っているならそれはしかたがありませんだ、作者も作品名も開示したのに、絵柄だけ開示しない、ということはなにか支障になるのか疑問であるというコメント付きでありながらも、当会の申し立てを棄却してしまいました。それで当会は前橋地裁に訴えましたが棄却され、現在東京高裁で11月8日に第1回口頭弁論があり、即日結審して12月20日に判決が出る予定です。裁判長は第1回口頭弁論で、安中市に対して、“市がなぜ公社に絵柄の開示を積極的に求めないのか”、“それが今までのやり取りでもよくわからない”として、“その絵柄を市民に開示することで公社が不利益をこうむると言っているがいったいどんな不利益を被るのか”“これについてもう少し詳しく聞きたい”と言いました。そして、裁判長は、“それは法廷では陳述しなくてよいが、12月20日までに判決を出すときに参考にしたいので、11月末までに陳述するように”と指示したのでした。当方に対して裁判長は、“それを見て何か言いたいことがあれば提出するように”と言ってきました。市のこれ(準備書面)をみるとばかばかしくて反論するのもあれですが、公社の理事長と市長が兼務していることについて、当時巨額横領事件の発生時にも、やはり市長が理事長を兼務していたことから、しかも、元職員がシングルプレーヤーだったことから、元職員と市長は仲が非常に良かったのです。“おい親父”と市長を呼ぶ間柄で、理事長印や市長印が偽造書類に暴印されて、巨額の金がだましとられました。そのため事件発覚後は、事件の反省からずっと市長と理事長は別々の人がやっていました。ところが安中市が5年前に隣接の町と合併した時に、市長選で、元公社の理事監事をやっていた人物が当選して、現在2期目です。当会がこの事件をずっと追及してきたことから、“何が何でも当会には絶対に見せたくない”という気持ちが根底にあると思います。しかし、安中市はあろうことか、市長と理事長が実際に兼務している例として、川越市の土地開発公社の定款をインターネットで検索し引っ張り出して「乙3号証」として当会に送りつけてきました。確かに第8条の第2項に“理事長は市長をもってあてる”と書いてあります。ところが群馬県のネットに掲載されている各自治体の定款には、もちろん安中市も含めて、こうは書いてありません。つまり、“理事は市長が任命するが理事長は理事の互選で選ぶ”と書いてあります。実はここへ来る前に川越市役所に立ちよって、どういう経緯でこういう条項になったのか、他の自治体ではそうなっていないのに、なぜかときいてきました。そしたら、昭和49年に公社を設立したが、おそらくその時、それ以前の前身だった組織の定款を参考に作ったのではないかということでした。普通は川越市の近辺でも副市長が理事長をやることが多いそうで、市長が理事長を兼務する場合、いわゆる組織が別だということを第3者に示すのに、問題はないか、と聞いたところ、“全然ありません”と言いました。安中市では事件当時も市長が理事長を兼務していたため、ノーチェックでとんでもない犯罪が起きてしまったが、川越市では、“いや、うちはクロスチェックが厳しいので、そのようなことは絶対に起こりえない。一職員が市長と親しく口をきくことはないし、そのようなコンプライアンスに違反することはない”と言っていました。そこでお聞きしたいのは、市長が兼務するのはこのご時世、民間ではコンプライアンス上、好ましくないと思います。一方、当会が公社の問題について裁判所に訴えた時には、最高裁の“公社は特別法人で市とは別法人だ”とする判例を楯に、みな敗訴になってしまいました。だから、51億円横領事件で公社が損害を受けても、市民には損害がない、したがって訴える利益がない、などとして敗訴させられました。市は訴えられるけど、市には損害がない。住民監査請求をしても訴えの資格がない、ということで全部敗訴しました。“市には損害がない”と言っても連帯責任があり、事務費として事業費の5%を払っています。一つお聞きしたいのは、実態として、市長が兼務している公社の割合が全国でどの程度あるのか、それと“市長が兼務していることについて、そのことは良くない”という趣旨の通達を出した経緯があるのかどうか、この2点をお聞きしておきたい。川越市役所できいたのは、外形的にはこのように“市長が兼務する”と定款に書いてありますが、実際の中の組織の運用面できちんとコンプライアンスは遵守されるので心配ない、と彼らは言っています。安中市の場合には、事件をおこしてからもなお、実質的に市長が公社の理事長を兼務しているのです。今の前任の市長は、理事長を別の人にしていましたが、今は昔に戻ってしまいました。そのため、“川越市長だってこうして兼務を定款に明示しているから直ちに問題にはならない”と反論してきました。もし総務省のほうで何か有益なデータベースがあれば大変参考になります」

 これに対して総務省では「データはないと思いますが、その毎年公社のヒヤリングをやっております。ただ、うちは都道府県と政令都市しかしません。市町村の公社の監督権限は県が持っているということになります」と答えました。そして「数字としては把握はしていないが、その併任されているところは、時々見られるということは、感触としてはわかります。先ほどのように古い時代にできた公社については、わりとそういうところが残っていたりします。あとは、総務省からの公社に対する通知ということについては、その、民法上の“双方代理の禁止”という規定があり、要は契約の当事者に同じ人がなれないという場合があり、それに明らかに抵触するというわけではないが、問題となる可能性はある、と認識しています。ですから、“是正に努められたい”というようなものは(通達で)出しています」とコメントがありました。

 当会では思わず「まあ当然ですよね」と相槌をうちました。すると、総務省の課長補佐は「ただ、それも明らかに違法かといえば直ちにそうともいえません。ただ、おっしゃったように、誤解を招くというか、そういうこともあるので、“事務の適正化”というなかで、できるだけ双方の併任という形の解消に進んでほしい、ということは言っています」と述べました。

■それを受けて当会から安中市の公社の体質について説明しました。

「わかりました。その2点ということに関連してですが、隣の高崎市は総務省の出している公社の解散に向けた指針にもとづき、もう先行取得の時代ではなく、そうでなくてもこういう年月の長い土地の保有が膨大な額になっているので、高崎市はそれらの観点から、公社はいらないということで総務所の示したガイドラインに沿って動き始めているとききます。群馬県については他にもそうした動きがある自治体があるようです。しかし安中市にはそういうことをする気概が全くありません。いわば、総務省の通達など無視しているといった状況にあります。なぜならあと91年間も巨額横領事件の和解金としての返済義務が公社と連帯保証人の安中市に残っているので、組織として存続させないと、群馬銀行から蒸し返されて市民が騒ぎ出すということで、単なる巨額横領事件の和解金支払の為の組織として温存していることは明らかです。もっとも、10年ごとに民法上の問題で、支払い義務について確認の為の“証”を更新しなければなりません。一般の場合、借金の返済義務は、何も督促しなければ3年間経過すると請求権が抹消してしまいますが、文書で取り決めると10年間有効となります。群馬銀行は、巨額横領事件のその後も相変わらず安中市の指定金融機関として地方債などで市から恩恵を受けていることから、いい加減に勘弁してくれと、議会などは群銀に求める声もありました。結局、今の市長がフライングで、さっさと早期に群馬銀行の頭取を訪れて、支払う姿勢を見せてしまったため、結局またあと10年間、安中しは元職員の残した負の遺産を償わせられることになったのです。このようなどうしようもない安中市土地開発公社はもとより、全国の土地開発公社の間には、総務省の通達に基づき精算整理をして解散する動きが加速しているという報道もあるようです。このまま公社を存続しようとすると、ますます、長期塩漬け土地を抱え、利率の高い借金が雪ダルマ式に益々膨れ上がるので、公社を存続して潤うのは金融機関だけなので、早く土地開発公社を整理するような動きがあると思います」

 すると総務省の担当者は、「一概には在るとは言えません。そこはやはり、地域によって実情が違っていたりするからです。今後も事業をやって行くというところもあります。あるいは今おっしゃったように、土地の先行取得の役割を終えたということで、解散されるところもあります。必ずしも、総務省としては解散を推し進めているわけではありませんが、ただ長期保有土地問題については、この際、そこの債務を整理して、公社も整理して、解散していただけるような手続については、用意はしています」と述べました。

■当会は再び巨額横領事件を起こした我らが安中市の土地開発公社について鋭く批判しました。

「その点から言えば、川越市などは公社の運営に自信を持っている様子がうかがえましたが、安中市の場合にはコンプライアンスもへったくれもありません。安中市は巨額横領事件から16年経過しましたが、未だに自分たちの非を認めず、市民がこの事件について批判すると、言いたい放題反論してきます。当会のことについても“いろんなことをブログに書いているが、虚実が混じっており、けしからん”などとして、イメージダウンを図ろうとするのです。もし、今回の裁判で勝訴し、当会が、元職員が隠してきた絵画等6点が本物かどうか確定する為に、それを売買した古物商らに当ってみようと思います。」

すると、総務省の担当者は、「これにはまあ、事件が絡んでいるものなので、かなり、なんというか、イレギュラーな事案ではあると思われます。」と感想を吐露しました。そして「団体によっては、その団体の用地業務と統合されるところもあります。いろいろな動きがあるけれども、工夫して、そういう使い方をされることもありますが、本来、公社としての設立目的がなくなったのであれば、解散して頂くというのが筋かなと思います」

■終わりに当たり、当会からもう一度「公社の理事長職にある人物と、設立母体の首長が一体化している市町村の割合はどのくらいあるでしょうか?」と質問したところ、総務省の担当者は「具体的なパーセンテージは把握していません。ぜひ、群馬県のことなら群馬県市町村課で聞くとよいと思います。」とのことでした。

 そして最後に当会から「もし総務省で近々、アンケート等で実態調査を行うのであれば、ネットで総務省のホームページを見ていますので、ぜひ総務省のほうでそういう提案を、あるいはどこからオその部署から提案が出たらそれは面白い事だからと一押していただけませんか」と要請しました。「当会のこの公社に関する裁判の12月20日の判決については、新聞やニュースでは報道されないと思いますが、安中市民として、やるべきことはやっておきたいと思います。なにしろ、ひ孫の代までツケが回らないようにしたいものですから。」そういい残して、総務省をあとにしました。

■最後に、群馬県庁の9階を訪れ、市町村課の担当係長と面談しました。その結果、群馬県内にある23の自治体の土地開発公社における首長と公社理事長職の併任の実態について聴取しました。

群馬県では、安中市の公社を含め14の公社が依然として併任状態にあるそうです。つまり、平成23年3月31日時点で、設立団体の長以外が理事長に就任している県内の土地開発公社としては、前橋市土地開発公社、高崎市土地開発公社、太田市土地開発公社、沼田市土地開発公社、川場村土地開発公社、東吾妻町土地開発公社、玉村町土地開発公社、みなかみ町土地開発公社、昭和村土地開発公社の9団体となっています。

一方、設立団体の長が理事長に就任している県内の公社としましては、明和町土地開発公社、伊勢崎市土地開発公社、桐生市土地開発公社、渋川市土地開発公社、館林市土地開発公社、富岡市土地開発公社、吉岡町土地開発公社、板倉町土地開発公社、安中市土地開発公社、藤岡市土地開発公社、中之条町土地開発公社、榛東村土地開発公社、西邑楽土地開発公社、甘楽郡土地開発公社の14団体となっています。

 また、市町村課によると、総務省からは、双方代理の禁止の観点でできるだけ併任状態の解消を図るように指導されているということです。

なお、驚いたことに、担当の係長は、タゴ51億円事件が発覚した当時、県庁に入ったばかりで、たまたま地方課に所属しており、当時の事件のことは記憶に残っているとのことでした。そのため、現在でもなお、タゴ51億円事件の負の遺産を引きずっている安中市の公社の実態について、当会の説明にじっと耳を傾けていました。

■当会では、以上の関係先でのヒヤリング結果をもとに、控訴人として、さっそく東京高裁に準備書面(2)を提出する予定です。

【ひらく会事務局】

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

タゴ事件の責任を棚に上げ期限ギリギリで反論してきた安中市岡田義弘市長の居直り

2011-12-04 23:55:00 | 土地開発公社51億円横領事件

■11月8日(水)午前11時から東京高裁で行われたタゴお宝絵画等6点の絵柄不公開問題の第一回口頭弁論で、裁判長から被告安中市に対して「これにて弁論を終結するが、公社が開示を拒否する理由が曖昧であることと、市が公社に対して積極的に開示を求めようとしないのはどうしてなのか。このあたりをもう少し陳述する必要がある」との訴訟指揮が行われました。それに基づくと思われる安中市の主張が、被告準備書面(2)として11月29日に安中市顧問弁護士から11月30日の消印のある普通郵便で、12月1日に送られてきました。

 内容は次の通りです。

**********
平成23年(行コ)第306号公文書不公開処分取消請求控訴事件
控訴人 小 川 賢
被控訴人  安 中 市
        準 備 書 面(2)
                       平成23年11月29日
東京高等裁判所第4民事部 御中
             被控訴人訴訟代理人弁護士 渡 辺 明 男
 平成23年11月8日第1回口頭弁論にて裁判長より確認を求められた件についての答弁

第1 安中市土地開発公社(以下「公社」という)が、ビジュアル情報の開示を拒否した理由について
 安中市情報公開条例(以下「条例」という)第24条に基づく安中市への情報提出を拒否した理由について、公社からの説明によると、次のとおりである。
 公社が安中市元職員の妻から提供を受けた絵画等6点は、公社が保有しており、公社としてはできるだけ高く換価処分を行い、巨額詐欺事件の損害賠償請求権に基づく残債務の一部に充当する方針で、その際はインターネット上でのオークションにかけることも検討していた。控訴人は、インターネット上で「市政をひらく安中市民の会」の代表として、ブログを公表しており、巨額詐欺事件についても、大きく虚実を交え記事にしている。これまでも、情報公開請求で得られた情報の多くをインターネット上に公開しており、本件ビジュアル情報を開示した場合、インターネット上で絵画等6点の画像を全国的に広く流布される可能性があった。そうなると、当該絵画等6点が巨額詐欺事件に関わりがあったか否かは別にして、真贋が明らかになる前に、インターネット上のプログ等で具体的な画像が公にされることで「犯罪に関係のある絵画」という印象を多くの者に与え、結果として売却価格が下がり、売却金を巨額詐欺事件の損害賠償に1円でも多く充当したいと考えている公社に、多くの損失を与える可能性があると判断したためである。なお、インターネットオークションに参加する者は、入札を予定している物品について、少なくともインターネットで検索を行い、情報収集をしていることは常識である。

第2 安中市がビジュアル情報の開示を積極的に求めなかったことについて
 安中市と公社は別法人であり、安中市が保有する情報については条例に則り、また公社が保有する情報については「安中市土地開発公社情報公開規程」に則って、それぞれ情報の開示決定を行っている。ビジュアル情報の開示については、控訴人より、平成22年7月28日付けで情報開示請求に対する異議申立てがあり、同年8月5日付けで公社に対して七記絵画等6点に関するビジュアル情報の提供について依頼を行った。しかし、同年8月12日付けで公社から「安中市土地開発公社情報公開規程に基づき公社の経営に支障を及ぼすおそれのある情報である」との理由で提出できない旨の回答がなされた。その理由は、上記第1でも述べたように、ビジュアル情報が公開されることにより「犯罪に関係のある絵画」という印象を多くの者に与え、結果として取引が敬遠され、仮に売却できたとしても廉価で買いたたかれてしまえば、公社が本来得られる利益を逸し、大きな損失を生じてしまう。また、公社と安中市の代表者が同一である理由であるが、他市町村においては公社の理事長に副市長が就任しているケースが多いものの、安中市は副市長を設置しておらず、安中市長がやむを得ず就任しているためである。他市町村でも安中市同様に市長が理事長職を兼ねている自治体もあり(乙3号証)、代表者が同一人物であっても、公社と市は意思決定の方法も全く異なり、また公社においてはその利益を優先するのは当然であって、公社が上記理由により「経営に支障を及ぼすおそれがある」すなわち「損失を与える可能性もある」と理事会等で意思決定したことについては、公社の窓口機関となっている安中市企画課としても、公社との協議のなかで、その判断はやむを得ないと考えたものである。したがって、市と公社の代表者が同一であること自体が本件開示請求の決定に与えた影響は全くない。なお安中市は現にビジュアル情報を保有しておらず、不存在であり、開示することは不能である。

第3 ビジュアル情報を開示することに伴う公社の不利益について
 上述したとおり当該絵画等6点の換価処分が行われる前に、ビジュアル情報などの情報が公にされることにより、「巨額詐欺事件にかかわった絵画…」などと風説が流されるおそれがある。美術品等は取引される市場も限定されており、詐欺事件のレッテルが貼られた状況では、市場での取引価格に悪影響を及ばすことは避けられない。公社では絵画等について、真贋の鑑定終了後、6点の絵画等が各別に高値で売却処分できる時期を見計らい、換価処分を行なう方針である。公社としては、当該絵画等6点の換価処分について適正な価格での取引を望むものであり、それが行われなければ巨額詐欺事件の損害賠償請求権に基づく残債務の一部に充当する金額も目減りしてしまい、公社の被る不利益を考慮した場合、ビジュアル情報は開示ができない情報である。

【証拠説明書】
平成23年(行コ)第306号 公文書不公開処分取消請求控訴事件
控 訴 人  小 川 賢
被控訴人  安 中 市
           証 拠 説 明 書
                       平成23年11月29日
東京高等裁判所第4民事部 御中
            被控訴人訴訟代理人弁護士 渡 辺 明 男
号証/標目/作成者/立証趣旨
乙3/川越市土地開発公社定款(インターネットから印刷)・写し/埼玉県川越市/市長が土地開発公社理事長を兼務している自治体の例(第8条第2項)。

【乙第3号証】
川越市土地開発公社定款       昭和四十九年八月二十二日 指令地第六百三十一号
○川越市土地開発公社定款
・・・(第七条まで省略)・・・
 (役員の任命)
第八条 理事及び監事は、川越市長が任命する。
2 理事長は、川越市長の職にある者をもってあてる。
3 副理事長、常務理事は、理事のうちから理事長が任命する。
・・・(以下省略)・・・・
**********

■我が国の地方自治体における公金横領事件では史上最大級の規模であり、市民に大きな衝撃と負担を与え続けているにもかかわらず、事件から16年も経過すると、かくも居直れるものでしょうか。あいた口が塞がらりません。

 呆れてものが言えないとはこのことですが、去る11月8日の東京高裁での第一回口頭弁論で、裁判長は、前述の通り安中市側にさらなる書面陳述を求めたあと、それに付け加えて、「控訴人のほうでも何かあれば、それはそれで受け付ける」と述べました。

 そこで、納税者として、また市民として、このまま黙っていると、ますます行政が増長するかもしれないので、近日中に反論を提出する予定です

■週末に、安中市長の被告準備書面(2)をざっと一覧したところ、次の事項について被告のタゴ事件に対する本質や本音が感じ取れました。

 まず「第1 安中市土地開発公社(以下「公社」という)が、ビジュアル情報の開示を拒否した理由について」として、被告安中市は、「公社からの説明」と前置きして、「インターネット上でのオークションにかけることも検討していた」などと、心にも無いことを言っています。

 昨年の平成22年6月11日付で、公社の岡田善弘理事長から安中市の岡田義弘市長への「安中市土地開発公社への損害賠償債務履行用資産(絵画等)の提出について(報告)」と題する書面には、「今後の課題」として、別紙に「また、預かった絵画等については、本物かどうかが不明であることから、絵画等の鑑定評価が必要となってくると思われるが、その方法について、今後、研究・検討を十分に重ねてから、その対応について決めていくこととしたい」と記載されています。

 いつ、インターネットのオークションにかけることが検討されたのか、この時の公社の報告では読み取ることができません。

 これに関連して、被告安中市は、市税滞納で市民から差し押さえで入手した美術品を、今年6月17日にインターネットオークションで入札にかけたことがあります。この件について、「おしらせ版あんなか」平成23年5月21日号No.119の2ページ目に次の記述があります。

**********
インターネットオークションを実施します
 市は、市税の滞納処分のため、差し押さえた物品をインターネットオークションで公売にかけます。
 これはYahooリAPANが運営する「官公庁オークション」を利用して実施するものです。
 オークションヘの参加方法や出品物の画像など、詳細については安中市ホームページをご覧ください。
 「Yahoo!オークション」上の閲覧は5月26日(木)より可能です。
【申込み】5月26日(木)午後1時~6月10日(金)午後11時
【入 札】6月17日(金)午後1時~6月19日(日)午後11時
【出品物下見会】市がオークションに出品した現物を見ることができる下見会にはどなたでも参加することができます。お越しの際は本庁収納課で受け付けをしてください。
【日 時】6月2日(木)午前10時~午後4時
【場 所】市役所本庁2階第一相談室
【オークション出品物】
  種別   物品名   最低公売価格  公売保証金
  美術品  油彩画   100,000円   10,000円
  美術品  油彩画    65,000円    6,500円
**********

 しかしこれは、安中市自身が行ったものであり、安中市が別法人だと主張する公社が行ったものではありません。さらにこのインターネットオークションでは最低公売価格が示されていることから、あらかじめ鑑定を行っていたと思われます。

■元職員タゴの妻から提供を受けたタゴお宝絵画等6点は、当会が従前より主張している通り、古物商の免許を持つ甘楽信用金庫(現・しののめ信用金庫)の安中支店に勤務していたタゴの親友と言われた人物が、タゴの代わりに地元高崎や前橋、それに隣の栃木県足利市の古美術商・骨董店などから買い付けたものであり、当然、真贋については分かっていたはずです。

 タゴの妻は、「本物かどうか不明だが」として、平成22年4月27日(火)、公社に寄贈を申し入れたのですが、土地開発公社の岡田理事長ら3役と事務局は、これらの絵画等6点を同日、スンナリと受け取ることを決定しました。そして、平成22年5月7日(金)に、安中市の幹部らがタゴ宅を訪問し、預り書などの書類にタゴとその妻の署名押印を依頼し、同11日(火)にタゴの妻から「書類ができた」と連絡があり、同14日(金)に絵画等6点を引き取り、同21日(金)の公社理事会でその旨報告されたのでした。

 この経緯の中で、当然、岡田市長は、タゴがこれらの絵画等6点を警察に押収される前に預けていた元甘楽信金職員だったタゴの親友にも、タゴの妻を通じて本物かどうか、確かめたはずです。常識的にみれば、少しでも偽物の可能性のあるものを、公社のような特別法人が受け取るわけがありません。

■しかし、岡田市長は平成22年5月14日にタゴお宝絵画等6点を引き取ったにもかかわらず、今年に入っても一向に鑑定もせず、死蔵させてきました。

 ちょうどそのころ、安中市の広報誌平成23年3月1日号で、「開運!なんでも鑑定団」が安中市松井田で5月22日に公開録画が行われると言う情報が市民に伝えられました。そこで、当会は、この絶好の機会に、タゴ絵画等6点を岡田市長兼公社理事長自らが出品して、専門家の鑑定を受け、タゴ事件で被害を被った安中市や安中市民に対して、少しでも多く損害賠償に充当されることを期待し、さっそく直訴状をしたためました。また、4月30日(土)の市長対話の日にも、このことについて岡田市長に直訴しました。

 すると、驚いたことに岡田市長は、なんでも鑑定団に鑑定を依頼することに関心がなく、「いずれ時機が来たら公社で鑑定先を見つけて鑑定をする」という回答に終始しました。

 安中市内の巷間の噂や期待では、もし、タゴが知人に預けていた「お宝」の絵画等6点が本物だとすると、約6億円の価値があるかもしれないということでした。だから、当会は、松井田文化会館大ホールで公開録画される「出張!なんでも鑑定団」に、所有者の安中市土地開発公社の岡田理事長名義で出品し、全国の視聴者に安中市をアピールするとともに、「お宝」の真贋を確定させて、タゴ事件の尻拭いをさせられている安中市民の苦難を少しでも軽減する措置をとるように申し入れたのでしたが、岡田市長・公社理事長はことごとく拒否しました。

 それにもかかわらず、岡田市長兼公社理事長は「インターネット上でのオークションにかけることも検討していた」などと平然と言いのけたのです。

■被告準備書面(2)では、そのあとに「控訴人はインターネット上でブログを公表しており、巨額詐欺事件についても、大きく虚実を交え記事にしている」と、当会のブログについて誤った見解を披露しています。「大きく虚実を交え」というからには、どこが「虚」でどの部分が「実」なのか、きちんと指摘しなければならないはずですが、被告安中市はそれをせずに、単に当会のブログにケチを付けるだけです。

 さらに、当会のブログについて「これまでも、情報公開請求で得られた情報の多くをインターネット上に公開しており、本件ビジュアル情報を開示した場合、インターネット上で絵画等6点の画像を全国的に広く流布させる可能性があった」などとケチを付けています。安中市は、原告=控訴人に対して、開示しようとしないくせに、開示した場合の当会の行動を、「全国的に広く流布させる可能性があった」と決めつけています。

 当会の関心は、本件ビジュアル情報の開示を受けた場合、それが本物かどうかを、直接タゴから預かっていたタゴの友人で古物商だった富岡市在住の人物に確かめたり、あるいは、直接、タゴの友人の古物商に大量の古美術品を販売した3名の古美術商や骨董屋に、真贋を確かめたり、タゴのお宝である絵画等6点のそれぞれの作者について詳しい関係者にビジュアル情報を見せて、真贋をチェックしようと考えていました。また、当時、この史上最大級の横領事件の捜査に携わった関係者らにも、このビジュアル情報を見せて、当時のいきさつについてインタビューしようと考えていました。

 どうやら、岡田市長兼公社理事長は、そうした当会の方針を察知して、なんとしても、このビジュアル情報は不公開にしなければならないと、決意したようです。そして、それには、「開示することにより公社の経営に支障、つまり不利益をもたらす」という勝手な理屈をでっちあげて、不公開を正当化しようとしたのでした。

■さらに被告安中市は被告準備書面(2)の第1で「真贋が明らかになる前に、インターネット上のブログ等で具体的な画像が公にされることで『犯罪に関係のある絵画』という印象を多くの者に与え、結果として売却価格が下がり、売却金を巨額詐欺事件の損害賠償に1円でも多く充当したいと考えている公社に、多くの損失を与える可能性があると判断した」と述べています。

 しかし、当会の異議申立てに対して、絵画等6点について実施機関の「不存在である」とする主張を認めた安中市情報公開・個人情報保護審査会(当時の会長・采女英幸)は、岡田市長からの諮問に対する答申の最後の部分で、次のように述べている。

「確かに、インターネット等で絵画等の画像が公開されたり、犯罪に関係のある作品であることが流布されれば、競売等を実施するにあたって、少なからず影響が出る可能性は否定できないが、絵画等6点の作品名及び作者が既に明らかにされている以上、今さら写真等情報が公になったところで、その換価処分に影響が生じるとは考えづらい。
 また、異議申立人に写しの交付までは認めなくとも、仮りに閲覧させるだけに留めれば、換価処分においても何ら問題は生じないと思われるため、実施機関が公社との協議で写真等情報を提出しないことを認めたのは、市の保有する情報の一層の公開を図り、市政に対する理解と信頼を深めるとした条例の趣旨から、適切な対応であったとは言い難い。」

■いつも行政寄りの答申をしたがる審査会でさえも、安中市が必死に主張する「真贋が明らかでない」→「具体的な画像がネットで公表」→「「犯罪に関係のある絵画」→「売却価格の低下」という理屈に対して疑問を発しているのです。これは「犯罪に関係のある絵画」ということを強調し、「真贋が明らかでない」から「盗品」というイメージを植え付けようとする姑息な手段です。

 当会では、まず「真贋を明らかにすることが先決」であり、そのためにも「作者や作品名が明らかになっている」ことから、ネットで詳しい情報をオークション参加者に与えておいたほうが、真贋を明らかにするためにも有効だと、当初考えていました。しかし、その後、安中市で5月22日に公開録画を行った「開運!なんでも鑑定団」のような有名が番組に出品して鑑定してもらえれば、オークションに不可欠な「最低公売価格」を決めるための必要情報が直ちに入手できると、その全国放送番組による広報メリットを安中市長にアピールしたのでした。

 にもかかわらず、当会のこうした申し入れを安中市長は全て拒否しました。

■「犯罪に関係のある絵画という印象を与える」という被告安中市の勝手な決め付けは、安中市がこの「犯罪」、つまり、地方自治体では史上最大級のタゴ51億円事件について、いまだにアレルギーを持ち続けていることを如実に表していると言えます。無理もありません。元職員のタゴと一緒に、かつて公社の事務事業に携わったことのある御仁が、安中市のトップだからです。

 タゴお宝絵画等6点が犯罪に関係しようがしまいが、本物かニセモノかが重要であり、もしニセモノであれば、なぜタゴが友人に、警察に押収される直前に、わざわざそれらを預けたのでしょうか。また、これらの絵画等6点が本物であれば、本来この絵をタゴの代わりに買い付けた富岡在住の元金融関係者で古物商だった御仁に、誰からいくらで買ったのかを聞けば、「最低公売価格」はただちに決定するわけで、なぜ、岡田市長は、そうした行動をとることに対して、なぜ、こんなにも躊躇しなければならないのか、はなはだ不思議です。

 いずれインターネットオークションで、ビジュアル情報はネット上で公表されるわけですから、作者と作品名が判明している現状では、一刻も早く多くの関係者に見てもらい、まずは「最低公売価格」を決める情報、つまり本物かニセモノかはもとより、製作年代や作風、どのようなルートで、これまでにどのくらいの価格レベルで売買されてきたか、など重要な要素について確認しようとする姿勢が大切です。

■被告準備書面(2)の「第2 安中市がビジュアル情報の開示を積極的に求めなかったことについて」で、安中市は、絵画等6点が「公社の経営に支障を及ぼすおそれがある情報」だとしているが、そもそも、絵画等6点のビジュアル情報は公社の経営に必要不可欠な情報のはずです。

 にもかかわらず「公社の経営に支障を及ぼす情報」の不公開を決断した岡田公社理事長を庇うためか、公社では市長が公社理事長を兼務する例がある、という問題にすり替えようとしています。

 そのため、ネットで調べた情報として、川越市土地開発公社の定款を例示して、市長が公社理事長を兼務することについて正当化しようとしています。屁理屈もここまで平然と示されると、呆れてしまい、このような自治体に税金を支払っているかと思うと、暗澹たる気持ちになることを禁じえません。

■さらに、「公社と安中市の代表者が同一である理由について、他自治体では、公社の理事長に副市長が就任しているケースが多いが、安中市は副市長を設置しておらず、安中市長がやむを得ず就任している」という主張に至っては、噴飯ものです。

 この呆れた安中市長の主張こそが、岡田市長がビジュアル情報の開示を、岡田理事長に積極的に求めなかった理由を端的に物語っています。岡田市長にとって、ビジュアル情報を当会に開示することが、個人的にも公人的にも都合が悪いからだということが必然的たったからではないか、と勘ぐらざるを得ません。

 当会では、今週末の12月9日ごろをメドに、安中市への反論のための準備書面を提出する所存です。

【ひらく会情報部】

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする