市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

エロ動画編集で職務専念義務違反でも停職=無休休職だけで給料を減額させない公務員天国の群馬県

2015-07-26 23:04:00 | 県内の税金無駄使い実態
■2015年3月10日、群馬県は、職務時間中に行政事務用に貸与したパソコンを使って自宅から持ち込んだアダルト動画のファイル名などを編集する操作を長期間にわたって行い、職務専念義務に違反したとして、会計局の補佐兼係長の50代男性を同日付で停職15日の懲戒処分にした、と発表しました。この事件に関連して、当会には「この公務員の時給分のカネを我々の税金から奪ったわけだから、カネを返させてください」 という県民の皆様からの声が寄せられました。そのため、市民オンブズマン群馬では、この事実関係を確認し、 暇を持て余している地方公務員の実態を解明すべく、住民監査請求をおこないましたが、本人が自主的に50万円を返還したとして、監査請求の根拠がないという理由で棄却されました。しかし、職務専念義務に違反していた事実から、その分の給料は減額されるべきであり、過不足ない減額措置がなぜ取れなかったのか、7月16日に公開質問状を群馬県知事に提出しました。その回答が7月24日に県知事から市民オンブズマン事務局に送られてきました。
○2015年3月23日;住民監査結果↓
http://www.pref.gunma.jp/contents/000331296.pdf
https://www.pref.gunma.jp/houdou/v0200007.html
*****【FAX送り状】*****

2015 07/24 16:32 FAX 001

     F A X 送 信 表
               平成27年7月24日
あて先 市民オンブズマン群馬 事務局長 鈴木庸 様
    TEL. 027-224-8567
FAX. 027-224-6624
文書名 公開質問状への回答について
用紙  A4版2枚・B4版 枚・ 版 枚
    (本通信表は枚数に含みません。)
送付者 所属 〒371-8570 群馬県前橋市大手町1-1-1
             群馬県総務部人事課 人事係
    氏名 佐藤 和行 電 話 027-227-2072
             FAX 027-221-2209
通信欄 平成27年7月16日付の公開質問状について、回答をお送りします。どうぞよろしくお願いいたします。

*****【回答内容】*****(それぞれの質問事項を太字で追記しています)


2015 07/24 16:32 FAX 002/003
                    人第157-21号
                    平成27年7月24日
市民オンブズマン群馬
 代表 小川 賢 様
               群馬県知事 大澤 正明
                ( 人 事 課 )
          公開質問状への回答について
 平成27年7月16日付け公開質問状について、下記のとおり回答します。
             記
質問1
 本件監査請求結果によると、人事課は、本件不適正使用について、地公法第35条に規定する職務専念義務に違反する行為であると認められるとしながら、「自席においてパソコンを不適正に使用していたものであり、上司の指揮命令下から離れるなどの事実あったものではない」として、課長補佐が本件不適正使用をしていた期間における当該時間分相当の給料額を減額せず、又は返還を請求しなかったそうです。これは、あきらかに群馬県職員の給与に関する条例(以下「給与条例」という)に照らして違反行為だと思われますが、なぜ給料額の減額又は返還を求めなかったのでしょうか?根拠を含めてご回答ください。


質問1への回答
・群馬県職員の給与に関する条例第10条において、「職員が勤務しないときは、(中略)勤務しない時間一時間につき、給料の月額及びこれに対する地域手当の月額の合計額に十二を乗じ、その額を一週間当たりの勤務時間に五十二を乗じて得た数で除していた額を減額して給与を支給する。」と規定されています。
・職員に対する給与支給の対象となる勤務時間については、労働基準法第32条にいう労働時間と同様に解されており、同条の労働時間については、「労働基準法第32条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるもの(中略)と解するのが相当である。」(平成12年3月9日最高裁判所判決)という判例があります。
・本件職員の行政事務用パソコンの不適正使用については、職務専念義務に違反する行為であると認められるものの、事前の承認手続きを欠く遅刻や欠勤等とは異なり、自らの席において行政事務用パソコンを不適正に使用していたものであり、上司の指揮命令下から離れるなどの事実があったものではないため、給料の減額や返還については、いずれも実施していません

質問2
 本件不適正使用と類似の出来事を、3年前に企業局次長が起こしています。今後も、類似の不祥事が発生する可能性が非常に高いと思われますが、群馬県は本件不適正使用のような不祥事が発生した場合に備えて、職員の懲戒処分等の指針や公表基準を定めていますか?今回の懲戒処分である停職15日の根拠も含めてご回答ください


質問2への回答
・本件においては、懲戒処分の公平性・透明性を確保し、職員による信用失墜行為や全体の奉仕者としてふさわしくない非行の未然防止、綱紀粛正を図るため、代表的に非違行為を選び、標準的な懲戒処分の量定を明示した「懲戒処分の指針」を定めています。また、懲戒処分を行った際の公表基準として「群馬県職員の懲戒処分に関する公表基準」を定めています。
・本件事案に関しては、懲戒処分の指針を踏まえ、原因、動機、態様、結果や、本件における前例等を総合的に勘案し、「停職15日」が相当であると判断したものです。←(当会注:判断基準が公開されていない為、県民には確認できません)

質問3
 給与条例第三条は、「給料は群馬県職員の勤務時間、休暇等に関する条例(平成六年群馬県条例第三十五号)第八条に規定する正規の勤務時間による勤務に対する報酬であると定めています。本件不適正使用は職務専念義務違反行為であるから、この条項により給料は減額されるべきではありませんか?


質問3への回答
・質問1において回答したとおりです。

質問4
 本件不適正使用にかかる給与の減額基準は、給与条例第十条に定める給与の減額に基づいて行われるべきものではありませんか?


質問4への回答
・質問1において回答したとおりです。

質問5
 今回の本件不適正使用による不祥事では、減額をせずに停職15日の懲戒処分だけが行われました。この懲戒処分の根拠が未だに不明ですが、停職の場合は、本人に停職期間中給与が支払われないだけであり、いわゆる無給休暇としての懲罰効果しか期待できないと思われます。事実、今回の不祥事でも、課長補佐は「15日間の春休み休暇」で、一件落着という意識でしかなかったように思われます。したがって、停職は職務専念義務違反行為に対するものであり、職務専念義務違反行為の期間中、いわゆる欠勤に相当する時間分の給与等の減額は、給与条例に基づき厳正に行われなければならないのではありませんか?


質問5への回答
・停職処分については、地方公務員法に定められた懲戒処分のなかで、免職に次いで重い処分となっています。停職期間中は給料が当然支給されませんが、期末・勤勉手当や昇給など将来にも影響を与えるものです。←(当会注:これらの情報は開示されない為、県民には事実関係が確認できません)
・また、給料の減額については、質問1において回答したとおりです。

質問6
 本件不適正使用による今回の不祥事では、当該職員が職務専念義務違反の期間における当該時間分の給与相当額として現金50万円を主事的に返還することで、我々が主張する損害は十分補填されたとして、一方的に幕引きをされてしまいました。これでは我々県民、納税者として、とうてい正当な懲戒処分というふうに理解できません。したがって、あらためて、今回の職務専念義務違反の不祥事を精査して、過不足なく原因者職員に正当な懲戒処分が行われるようなルールづくりに直ちに取りかからなければならないのではありませんか?


質問6への回答
・本件懲戒処分については、把握した事実関係をもとに検討を行い、判断したものです。
・給料を減額すべき事案が発生した場合は、給与条例第10条に基づき減額をおこなうことになります。
・なお、給料の自主的な返還については、職員本人の自由意思に基づくものであるため、県が組織として基準を定める性質のものではないと考えます。
**********

■「懲戒処分」は、労働者が問題行動を起こした時に、所属先の会社が当人に罰を与える事ですが、その内容にはいくつかの段階があります。軽い順番から並べると、次の種類があります。

●「戒告・けん責」:戒告(かいこく)と譴責(けんせき)はほぼ同じで、懲戒処分の中では最も軽い部類に入る。「つよく戒める」「厳しくしかる」という感じで、将来的に問題行動を起こさないように厳重に注意すること。
●「減給」:読んで字のごとく、給料を減らされること。ただし労働基準法によって、好き勝手に減給額を決められず、1回の減給額は1日の賃金(平均賃金)の半額、月給制であれば1か月の減給額は10%までの上限あり
●「出勤停止・停職」:罰として所属先に来ることを禁止するため、休み中の給料は支払われない。減給処分のように「減給額は給料総額の10%まで」という制限はない。但し、労働協約は、締結されたままなので、機密保持義務や、社会保険等の権利は継続される。
●「降格」:労働者のランク(職位)を下げること。ランクが高くなると給料が上がる場合が多いので、降格は事実上の減給処分になることもある。但し、場合によっては職位が下がっても減給にならないこともある。
●「諭旨退職」:所属先から労働者に対して自分から退職するように告げること。これに従わないと懲戒免職になるため、実質的には懲戒免職と殆ど同じです。但し、「自分から辞めた」という形なので、経歴につく傷は小さくなる。
●「懲戒免職」:労働者をクビにするという最も重い処分。通常の解雇と違って事前に予告したり解雇予告手当てを支払う必要が無く、多くの場合は退職金が支払われなかったり、減額されたりする。但し、処分の内容が厳しいだけに、よほどの理由がないと法的に正当とみなされない。

■公務員の懲戒処分については、民間の場合と少しことなり、免職、停職、減給、戒告の4種類です。
●免職は、公務員の職を失わせる処分のことで、懲戒処分によって行われたものを特に懲戒免職という。
●停職は、職員としての身分を保有させながら一定の期間その職務に従事させない処分で停職者は原則としてその期間中給与を受けることができない。
●減給は、文字通り公務員の俸給の支給額を減ずる処分のこと。
●戒告は、本人の将来を戒める旨の申し渡しをする処分のこと。
 以上は法律上の処分ですが、実務上はこのほかに訓告、厳重注意などがあります。訓告は公務員部内において監督の地位にある者が、職員の義務違反に対してその責任を確認し、将来を戒めるために行う行為で、法律上の処分である戒告よりも軽い処分とされています。厳重注意は戒告よりもさらに軽い処分といえます。

■群馬県人事課の質問2への回答の中で触れられていた群馬県の「懲戒処分の指針」と、懲戒処分を行った際の公表基準である「群馬県職員の懲戒処分に関する公表基準」について、さっそく検索してみました。

 ところが、「懲戒処分の指針」「群馬県職員の懲戒処分に関する公表基準」について、群馬県のHPにある「群馬県法規集(平成27年5月31日)」を検索して見ましたが、どこにも見当たりませんでした。
http://www3.e-reikinet.jp/cgi-bin/gunma-pref/D1W_login.exe

 有るとすれば、これらは、この法規集の「第1編 総規」「第5章 公務員」「第7節 分限及び懲戒」に掲載されていなければならない筈ですが、見つかったのは次の条例だけでした。
○群馬県職員の懲戒の手続及び効果に関する条例
http://www3.e-reikinet.jp/cgi-bin/gunma-pref/D1W_resdata.exe?PROCID=732727000&CALLTYPE=1&RESNO=330&UKEY=1438042254625

■そこで、群馬県のHPを検索するのをあきらめて、一般の検索を試みました。すると、「懲戒処分の指針」については、次の新聞記事に掲載されていました。

**********上毛新聞2007年5月29日
群馬県と県教委が懲戒処分の指針、免職は氏名公表
http://www.raijin.com/news/a/29/news01.htm
 群馬県と群馬県教育委員会は28日、それぞれ懲戒処分の指針を策定するとともに、免職については職員の氏名や所属先を原則として公表するとした基準を発表した。
<主な標準例と処分>
【知事部局、教育委員会】
○一般服務
 ●勤務時間中に職場を離れ、職務を怠る   → ――・――・減給・戒告
 ●他の職員に暴言             → ――・――・減給・戒告
 ●虚偽の報告            → ――・――・減給・戒告
 ●秘密の漏えい              → 免職・停職・――・――
 ●セクハラやストーカー行為        → 免職・停職・減給・――
○公金関係
 ●諸給与の不正支給・受給         → ――・――・減給・戒告
 ●虚偽の公文書作成            → 免職・停職・――・――
○倫理関係
 ●職務に関する利害関係者から金銭・物品受領→ 免職・停職・減給・戒告
○公務外
 ●賭博                  → ――・――・減給・戒告
 ●淫行・痴漢               → 免職・停職・減給・――
○交通関係
 ●酒気帯び運転              → 免職・停職・――・――
 ●酒気帯び運転で事故を起こし、必要な措置をしない
                      → 免職・――・――・――
○監督責任
 ●非行の隠ぺい・黙秘           → ――・停職・減給・――
【教育委員会】
○一般職務
 ●児童生徒にかかわる重要な個人情報を紛失したり、盗まれる
                      → ――・――・減給・戒告
○公務外
 ●淫行                  → 免職・――・――・――
 ●痴漢、のぞき、盗撮など         → 免職・停職・――・――
○児童生徒に対する非行・違反行為
 ●体罰で重傷を負わせた上、体罰を常習的に行っていた場合
                      → 免職・停職・――・――
 ●屈辱的な言動で児童生徒に著しい精神的苦痛を負わせる
                      → 免職・停職・減給・戒告
 ●児童生徒にわいせつ行為         → 免職・――・――・――
 ●児童生徒にわいせつな言動を行う     → 免職・停職・減給・戒告
**********

■また、「群馬県職員の懲戒処分に関する公表基準」については、ネット検索しても見つかりませんでした。かわりに、次に示す「群馬県教育委員会の懲戒処分に関する公表基準」が見つかりました。

**********
群馬県教育委員会の懲戒処分に関する公表基準
https://www.pref.gunma.jp/03/x0110051.html
平成17年5月25日制定
平成20年7月1日改正
教育委員会が教職員に対して地方公務員法に基づく懲戒処分を行ったときは、下記の基準により公表する。
     記
1 公表する懲戒処分
 地方公務員法に基づく全ての懲戒処分(免職、停職、減給又は戒告)
2 公表する内容
(1)公表する内容は、原則として次に掲げる事項とする。
ア 免職処分事案
(ア)対象教職員の所属名
(イ)対象教職員の職
(ウ)対象教職員の氏名
(エ)対象教職員の年齢
(オ)処分事由
(カ)処分内容
(キ)処分年月日
イ 停職、減給又は戒告事案
(ア)対象教職員の学校種等
(イ)対象教職員の職種又は職位
(ウ)対象教職員の年齢
(エ)処分事由
(オ)処分内容
(カ)処分年月日
(2)(1)の規定にかかわらず、被害を受けた児童・生徒が特定されるなどの場合において、被害者等の権利利益の保護等を総合的に勘案し、一部について公表しないことができる。
3 公表の時期
処分を行った後すみやかに公表する。
被害者等の権利利益の保護等の観点から処分後直ちに公表できない場合についても、できうる限りすみやかな公表に努めるものとする。
**********

■この事件は、群馬県人事課によると、男性職員は昨年4月末から12月10日にかけて、前橋市の県庁内で勤務中、USBメモリーなどにダウンロードした動画ファイルのファイル名を編集したり、再生時間や映像の解析度などの情報を書き込んだりしていた。パソコンの操作履歴から、1日当たり30分程度、こうしたファイル整理の作業をしていたことが判明したというものです。

 この事件について、群馬県人事課は回答1の中で「職員に対する給与支給の対象となる勤務時間」についての根拠として示されていた平成12年3月9日の最高裁判決では、確かに「労働基準法第32条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるもの(中略)と解するのが相当である。」(平成12年3月9日最高裁判所判決)となっています。

この解釈について、県人事課は「本件職員の行政事務用パソコンの不適正使用については、職務専念義務に違反する行為であると認められるものの、事前の承認手続きを欠く遅刻や欠勤等とは異なり、自らの席において行政事務用パソコンを不適正に使用していたものであり、上司の指揮命令下から離れるなどの事実があったものではないため、給料の減額や返還については、いずれも実施していません」としています。

 しかし、これをよく読むと、理屈が合わない感じがします。労働時間に該当するかどうかの判断基準として最高裁の判例では「労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるかどうか客観的に定まるもの」とありますが、群馬県の都合のよい解釈では「勤務時間中に自席にいればよい」ということなので、例えばネットで株取引やエロ画像編集をしていても、減給されないことになります。ただでさえ高給取りの公務員なのに、さらに暇な勤務時間を利活用して、趣味やアルバイトにせっせと精を出せることになります。

 今回の場合、当該職員が事前の承認手続きを得てエロ画像編集作業をしていれば、問題なかったことになるのでしょうか?おそらく当該職員はそのような承認手続きをとっていなかったものと思われます。であれば、当該職員の後ろ側(窓際側)には、次長や課長ら上司の席があって、パソコン画面が上司らの目に触れていたはずなので、事実上の承認を得ていた(黙認されていた)と群馬県では、仲間である当該職員の都合に合わせて解釈したことになります。


■当会では職務専念義務違反であることから、その期間中の給料は、懲戒処分とは関係なく減額されるべきだと考えて、住民監査請求をしたのですが、本人が自主的に50万円を県に返還したとして、群馬県監査委員は、結果的に給料減額だとして請求の意味がないと判断してしまいました。

 この結果、もし当会が住民監査請求を行わなかったら、給料減額は行われないことになります。

 となると公務員の場合、職務専念義務違反をしても、それが公表されずに、また、オンブズマンのような納税者の個人や団体が、手間のかかる住民監査請求に踏み切らない限り、給料減額は免れることになります。言い換えれば、オンブズマンらから住民監査請求を提起された場合は、今後、不運な前例として、自主的に30万円とか50万円を群馬県に返還せざるを得ないということになり、類似の違反行為をしても、運不運によって、不公平な事態が起こり得ることになります。

 職務専念義務違反による懲戒処分としての停職処分と、物理的に勤務時間中にエロ画像編集をしたことによる給料減額とは切り離して、考える必要があると思いますが、公務員の人事は、そうした民間の常識とは別次元のようです。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

○参考資料:
【最高裁判例】
出典:裁判所のHP↓
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52572
事件番号:平成7(オ)2029
事件名:賃金請求事件
裁判年月日:平成12年3月9日
法廷名:最高裁判所第一小法廷
裁判種別:判決
結果:棄却
判例集等巻・号・頁:民集 第54巻3号801頁
原審裁判所名:福岡高等裁判所
原審事件番号:平成1(ネ)193
原審裁判年月日:平成7年4月20日
<判示事項>
一 労働基準法上の労働時間の意義
二 労働者が就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ又はこれを余儀なくされた場合における当該行為に要した時間と労働基準法上の労働時間
三 労働者が始業時刻前及び終業時刻後の作業服及び保護具等の着脱等並びに始業時刻前の副資材等の受出し及び散水に要した時間が労働基準法上の労働時間に該当するとされた事例
<裁判要旨>
一 労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)三二条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるものではない。
二 労働者が、終業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、当該行為に要した時間は、それが社会通念上必要と認められるものである限り、労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)三二条の労働時間に該当する。
三 就業規則により、始業に間に合うよう更衣等を完了して作業場に到着し、所定の始業時刻に作業場において実作業を開始し、所定の終業時刻に実作業を終了し、終業後に更衣等を行うものと定め、また、始終業の勤怠は更衣を済ませ始業時に準備体操場にいるか否か、終業時に作業場にいるか否かを基準として判断する旨定めていた造船所において、労働者が、始業時刻前に更衣所等において作業服及び保護具等を装着して準備体操場まで移動し、副資材等の受出しをし、散水を行い、終業時刻後に作業場等から更衣所等まで移動して作業服及び保護具等の脱離等を行った場合、右労働者が、使用者から、実作業に当たり、作業服及び保護具等の装着を義務付けられ、右装着を事業所内の所定の更衣所等において行うものとされ、副資材等の受出し及び散水を始業時刻前に行うことを義務付けられていたなど判示の事実関係の下においては、右装着及び準備体操場までの移動、右副資材等の受出し及び散水並びに右更衣所等までの移動及び脱離等は、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、労働者が右各行為に要した社会通念上必要と認められる時間は、労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)三二条の労働時間に該当する。
<参照法条>
労働基準法(昭和62年法律第99号による改正前のもの)32条
<全文>
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/572/052572_hanrei.pdf
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