市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

【高専過剰不開示体質是正訴訟】6/16第一次訴訟控訴審判決…またも機構の杜撰主張全部素通しで全面敗訴

2021-06-30 23:49:00 | 群馬高専アカハラ問題

6月16日昼過ぎに高専機構を相手取った第一次訴訟控訴審判決言渡しのあった東京高裁のある裁判所合同ビル。

■高専組織が執拗に黒塗りにこだわる「都合の悪い」情報の数々について、悪質な不開示処分の取消しを求めて高専機構を2019年10月に提訴した第一次訴訟。卑怯な法廷戦術の嵐やコロナ禍での長期中断を乗り越えて辿り着いた東京地裁の第一審判決は、ありとあらゆる理屈を総動員して被告高専機構の杜撰極まる言い分を片端から素通ししたあからさまな不当判決でした。高専関係者らの憤りとエールに押され、当会が本件を東京高裁に控訴すると、高専機構は相変わらず強弁まみれの杜撰な控訴答弁書を寄こしてきました。

 3月17日に開かれた初回口頭弁論では、同高裁の裁判官らが機構側の藍澤弁護士を始終質問責めで突っつき回し、異例の審理継続となりました。裁判の公平性が疑われるレベルで妙に至れり尽くせりの「アドバイス」を経て、機構側はまたも杜撰な補充書面を出してきました。そこで、当会から詳細に証拠資料を提示しつつ主張の穴を突いた反論書面を提出して第二回期日に臨もうとしていたところ、機構側はなんと期日2日前になって誤字まみれの杜撰書面を投げ込んできて、滅茶苦茶な主張を言い立ててきました。4月14日の第二回口頭弁論では、高裁側の裁判官は特にこうしたマナー違反や論理破綻を咎める様子も無く、「とりあえず言うだけ言ってもらった」というムードで結審しました。

○2020年11月25日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第一次訴訟98%敗訴・第二次訴訟全面敗訴のダブル不当判決に仰天!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3244.html
○2020年12月10日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】隠蔽体質追認のダブル不当判決に抗うべく東京高裁に両件控訴!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3252.html
○2021年1月31日:【高専過剰不開示体質是正訴訟】第一次訴訟控訴審の弁論日が3/17に決定&控訴人当会が控訴理由書提出
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3274.html
○2021年3月24日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・第一次訴訟控訴審】機構側控訴答弁書と3/17初回弁論(審理継続)の様子
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3290.html
○2021年4月21日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・第一次訴訟控訴審】反撃試みる機構と書面応酬の末、4/14第2回弁論で結審!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3304.html

 そして、第一次訴訟控訴審の判決言渡し日である6月16日を迎え、当会担当者が東京高裁に向かいました。

■2021年6月16日、当会担当者は午前10時50分に自宅を出発し、25分で高崎駅に着きました。少し待って、11時36分発の上越新幹線Maxとき316号に乗車することにしました。平日の昼下がりでしたが、緊急事態宣言が効いているのか、車内はガラガラでした。群馬出発時は晴れ間も見えていましたが、東京に近づくと雲が厚くなっていました。



Maxの2階席。

鴻巣市付近の水田。田植えの真っ最中。

 当会担当者の乗ったMaxとき316号は東京駅21番ホームに12時28分定刻通り到着しました。幸い雨は降っていませんでした。








 ちなみに、E4系と呼ばれる2階建て車両のMax号は、今年秋ごろ引退する予定になっており、ラストラン企画のキャッチフレーズのロゴが車体にラッピングされています。筆者は1994年の初代2階建て車両として登場したE1系や、その後1997年にデビューしたE4系には東京への通勤でこれまで何千回もお世話になっています。そのため、2階席から眺める車窓風景は頭に染みついており、居眠りをしていても、目を開ければ瞬時にどこを走行しているか把握できるほどです。







 東京駅の丸の内中央口の地下改札口を経由して、徒歩で地下鉄東京駅に移動し、12時41分発の荻窪行に乗車して、2駅目の霞ヶ関で下車をしました。地上に出ると、歩道は濡れていましたが、雨は降っておらず傘を取り出す必要はありませんでした。




■裁判所の前の歩道では、何名かの若者がチラシを配布していました。受け取ったところ、共同親権制度の実現をアピールする内容でした。「日本では毎年約21万人の子どもたちが、親の離婚を経験しています」というロゴは衝撃でした。我が国社会において、配偶者によるDVやモラハラ、親による虐待といった家庭内人権侵害の問題は深刻であり、被害者の迅速な保護と救済が図られなければなりません。他方において、一方的な子の連れ去りと親権剥奪、一方的な離婚宣告と銭ゲバな財産処理・養育費請求による泥沼のトラブル、そしてこれらをビジネスチャンスと捉えたハイエナ弁護士達もまた社会問題化しており、離婚当事者らとその子供にとってベストな着地点を探れるような社会的枠組みの構築は急務です。
※裁判所前で配布されていたチラシ ZIP ⇒ 20210616ozzv.zip

 12時50分、いつものとおり裁判所の玄関のアルコール消毒液で手指を清めて、手荷物検査のためカバンを預けました。そして身体検査のため金属探知ゲートを通り抜けようとしたところ、赤色ランプが点滅して警報ブザーが鳴り響きました。当会担当者の前に並ぶ方も同様にひっかかっていましたが、まさか自分もという気持ちになりました。なぜならこの場所で、これまで一度もブザーを鳴らした経験がないためです。

 係員が手持ちの金属探知機を当会担当者の体中に添わせてチェックをしました。どうやらベルトのバックルの金属に反応したようです。しかし、同じベルトを付けてきてても、これまで一度も金属探知ゲートが反応したことはありません。そこで係員に「今回初めてランプが付きましたが、感度を上げたのではないのですか?」と尋ねてみましたが、無言で返されました。

■手荷物検査担当者から荷物を受け取ると、さっそくエレベーターで8階に上り、812号法廷の開廷表をチェックしました。

*****6/16・東京高裁812号法廷開廷表*****
812号法廷(8階)開廷表
令和3年6月16日 木曜日

●開始/終了/予定:10:00/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和3年(ネ)第1050号/受信料請求控訴事件
○当事者:立花孝志/日本放送協会

●開始/終了/予定:10:30/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和3年(ネ)第1030号/建物明渡等請求控訴事件
○当事者:高沢芙二子/梅島昭夫

●開始/終了/予定:11:00/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和3年(ネ)第853号/損害賠償請求控訴事件
○当事者:株式会社明成建設/セイエドネシャド・メディ

●開始/終了/予定:11:30/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第4497号/所有権移転仮登記の本登記手続等請求控訴事件
○当事者:株式会社マドカホーム/株式会社土門 外

●開始/終了/予定:13:10/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第3346号/敷金返還、損害賠償等反訴請求控訴事件
○当事者:有限会社カンギン/株式会社ローソン

●開始/終了/予定:13:10/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第3728号/資料等請求控訴事件
○当事者:中谷明/旭化成ホームズ株式会社

●開始/終了/予定:13:10/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第3892号/損害賠償等請求控訴事件
○当事者:竹花龍 外/依田善永 外

●開始/終了/予定:13:10/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第4059号/損害賠償(交通事故),求償金請求控訴事件
○当事者:須田玲子 外/中島運輸株式会社 外

●開始/終了/予定:13:10/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第4099号/建物明渡等、修繕費用等反訴請求控訴事件
○当事者:佐藤正俊/山田繁行

●開始/終了/予定:13:10/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(行コ)第169号/裁決取消請求控訴事件
○当事者:有限会社東亜電機/国/立花竜一

●開始/終了/予定:13:10/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(行コ)第251号/法人文書不開示処分取消請求控訴事件
○当事者:市民オンブズマン群馬/独立行政法人国立高等専門学校機構


●開始/終了/予定:14:00/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和3年(ネ)第471号/損害賠償請求控訴事件
○当事者:井田正彦/寺尾基

●開始/終了/予定:14:30/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第827号/損害確定請求控訴事件
○当事者:森田産業株式会社/高橋誠

●開始/終了/予定:15:30/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第675号/建物明渡等請求控訴事件
○当事者:株式会社フードジャパン/株式会社エヌ・コーポレーション

●開始/終了/予定:16:00/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第575号/預け金返還等請求控訴事件
○当事者:友山晶子/寒川国見
**********

 開廷表の右側には担当裁判官らの名札が掛けてありました。
*****本日の事件*****
東京高等裁判所第17民事部
裁判長裁判官 矢 尾   渉
   裁判官 橋 本 英 史
   裁判官 三 浦 隆 志
   裁判官 今 井 和佳子
   裁判官 田 中 一 隆
裁判所書記官 石 橋 一 郎
**********

 上記開廷表のとおり、13時10分から7件の控訴事件について判決言渡しが行われることになっていました。当会の事案は言渡しの順番では一番後となっています。実はその時、当会担当者は13時10分からの判決言渡しの事件数を6件だと数え間違いをしており、当会の控訴事件の判決は最後の6件目だとその時思いこんでしまいました。そのため、あとでちょっとしたハプニングが起きることになりました。

■開廷までにまだ15分程時間があったので、窓側の左手奥にある待合室に入ると、すでに男性が一人待機していました。13時あたりに812号法廷の傍聴席の入口のカギが開けられるかと思い、時計の長針が0を指した頃合で法廷の覗き窓に目をやりましたが、まだ中は真っ暗でした。

 再び待合室に戻り、また10分ほど待機していると、待合室にいた男性が開廷5分前になって腰を上げました。そこで当会担当者も再び812号法廷に行ってみると、数名の男女が前の廊下で待機していました。まもなく中から鍵が開けられたので、当会担当者が真っ先に傍聴席に入りました。いちおう出頭簿に署名をしようとしましたが、どこにも見当たりませんでした。

 開廷するころには、傍聴席には10名ほどの傍聴人が座り、判決の言渡しを待っていました。

■定刻の午後1時ちょうどに矢尾渉裁判長と陪席裁判官2名(向かって右側は女性)が正面の扉から入って着席し、さっそく判決言渡しが始まりました。

 男性の書記官が事件番号を坦々と読み上げ、矢尾裁判長が次々に判決文を読み上げます。

「令和2年(ネ)第3346号」
「控訴人、有限会社カンギン、被控訴人、株式会社ローソン。主文、本件控訴を棄却する。控訴人の当審における拡張請求を棄却する。当審における訴訟費用をすべて控訴人の負担とする。以上です」
「令和2年(ネ)第3728号」
「控訴人、えー、中谷明、被控訴人、旭化成ホームズ株式会社。主文、本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。以上です」
「令和2年(ネ)第3892号」
「えー、控訴人兼被控訴人(当会注:お互いに控訴し合っている場合はこのように呼びます)、竹花龍、被控訴人……、ああ、外(ほか)、被控訴人、えー、依田、あー、善永、外。主文、本件各控訴を棄却する。2、控訴費用は一審原告龍、えー、一審原告ミサトおよび一審被告善永、に生じた費用を、一審原告龍および一審原告ミサトの負担とし、一審原告モトナリに生じた費用を、同一審被告の負担とする。以上です」
「令和2年(ネ)第4059号」
「控訴人、須田玲子、外、えー、被控訴人、中島運輸株式会社、外。主文、本件控訴をいずれも棄却する。控訴人アクサの当審における拡張請求を棄却する。当審における訴訟費用はすべて控訴人らの負担とする。以上です」
「令和2年(ネ)第4099号」
「控訴人、佐藤正俊、被控訴人、山田繁行。主文、本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。以上です」
「令和2年(行コ)第169号……」

 と、ここで、裁判の進行事件数を数えていた当会担当者が、「行コ」の言葉を聞くないなや、最後の6件目に本件の晩が来たと信じ込んで、傍聴席から、条件反射的に「すいません。判決を法廷内で謹んで拝聴してもよろしいでしょうか? オンブズマンとして、群馬県からこのためにやってきたので、ちょっと法廷の中に入って謹んで拝聴したいのですが」と傍聴席から手を挙げて発言しました。

 すると、男性書記官が反射的に当会担当者を制しようとする仕草を見せました。裁判所では、秩序重視という観点から、傍聴席からの発言にはかなり敏感なためです。裁判長は落ち着いた様子で「当事者ですか」と尋ねてきました。当会担当者が「はいそうです」と返事すると、裁判長は「それではどうぞ」と法廷内に入ることを許可しました。やりとりを聞いていた男性書記官が、「行コの事件番号が251号の当事者です」と裁判長に伝えました。

 裁判長が「あなたの事件はこの次です」と告げてきたので、当会担当者はようやくフライングだったことに気付きました。当会担当者が「すいません。どうぞ続けてください」というと、裁判長は直ちに判決文の読み上げを再開しました。

「控訴人、有限会社東亜電機、被控訴人、国。主文、本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。以上です」

■そして次に、当会が出訴した控訴事件の判決言渡しの順番となりました。事務官が「はい、どうぞ」と当会担当者を促しました。当会担当者は、傍聴席と法廷を区切る木製格子の左端にある開閉板を押して、法廷内の控訴人席に着座しました。

 事務官が「令和2年(行コ)第251号」と告げたので、当会担当者は「では、どうぞお願いします」と裁判長に声を掛けました。

 矢尾裁判長は、「控訴人・市民オンブズマン群馬、被控訴人・独立行政法人国立高等専門学校機構。主文、本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。以上です」と当会全面敗訴の判決を読み上げました。

 行政側勝訴ありきの負かされ判決は実に聞き慣れたものとはいえ、1年8か月に及ぶ果てしない奮闘の末にこうもあっさり斬り捨てられると、やはり相当な落胆と脱力感を伴います。

 当会担当者が一応、「はい、ありがとうございました」と丁重に礼を言うと、矢尾裁判長はそれに対しては何も反応を見せずに、陪席裁判官と共にそそくさと席を立って奥に引っ込んでいきました。

 当会担当者が、男性書記官に向かって「では、出頭カードに署名します」と告げると、書記官はようやく出頭カードを出してきました。当事者が法廷内で判決言渡しを聞くことなどないだろうと最初から思い込み、形式的にすら出頭カードを事前提示していなかったわけです。高裁での控訴審の判決言渡しが、いかにべルトコンベアのような流れ作業であるかを示す象徴的な対応のように感じられました。当会担当者は、控訴人氏名欄の印刷した氏名に○を付けるのではなく、いつものとおり、大きな字で氏名を自署しました。

■すると、書記官は気を利かせて「判決正本は上の方で受け取れます」と伝えてきました。「14階でしたっけ?」と訊くと、「16階の北側です」と教えてくれました。

 ということで、僅か4分余りの判決言渡しが終わり、16階北側にある第17民事部に判決文を取りにいくため、人が一斉にエレベーターの方へ歩いていきました。傍聴者は、一気に7件の判決、それもおしなべて控訴棄却の判決を聞かされたことになります。当会担当者が流れを止めなければ、確実に3分以内で終わっていたベルトコンベア言渡しぶりでした。このとき、13時14分を少し回ったところでした。

 当会担当者は、どうせ窓口が混むだろうと思い、待合室で少し休み、トイレを済ませてから16階に上がりました。第16民事と第17民事部の窓口はいずれも並んでいました。第16民事部の方から声を掛けると、すぐ隣の第17民事部の事務担当の渡邊職員がすぐに当会担当者に気付き、既に用意してあった判決正本を持ってきました。

 そして受領証に押印をし、予納切手6000円のうち、500円切手8枚中2枚使用、100円切手10枚中2枚使用、84円切手5枚中0枚使用、50円切手4枚中1枚使用、20円切手10枚中0枚使用、10円切手10枚中0枚使用、5円切手10枚中1枚使用、2円切手10枚中0枚使用、1円切手10枚中0枚使用ということで、1255円を差し引いた4745円分の切手が戻されました。

■こうして判決正本と余った予納郵券を受け取り、渡邉書記官には「またお世話になります」と挨拶をして、裁判所をあとにしました。







以前から裁判所合同ビル内のアスベスト除去工事が断片的に施工されてきているが、今回、裁判所の1階ロビーの壁や天井にかけて、広い範囲が白い遮蔽板やシートで覆われている。どうやら天井のアスベスト除去を鹿島建設が請け負って今年10月末まで施工する予定であることが、裁判所前の標識から解る。

 外に出ると、幸いまだ雨が降り出してはいませんでした。裁判所のまえには相変わらず、不当判決に抗議する看板を立てかけたハイエースが駐車してありました。そして、上の方ばかりみるヒラメ裁判官による不当判決への批判が大書きしてありました。当会担当者が先程言い渡された不当判決についても、ぜひ並べて掲載していただきたいと思いましたが、いつものように掲示している方の姿は見当たりませんでした。






 その後、地下鉄丸ノ内線に乗って東京駅に戻りました。帰りは急ぐ必要もなかったため、東京上野ラインの高崎行に乗車し、ゆったり鈍行に揺られて16時18分に高崎駅に着きました。



もうすぐ高崎駅。空模様が怪しい。

■2021年6月16日に東京高裁で言い渡された第一次訴訟控訴審(令和2年(行コ)第251号)の全面棄却判決の内容は以下のとおりです。

*****6/16第一次訴訟控訴審判決*****ZIP ⇒ 1ij.zip
令和3年6月16日判決言渡 同日判決原本領収 裁判所書記官 渡邊万倫子
令和2年(行コ)第251号 法人文書不開示処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所令和元年(行ウ)第515号)
口頭弁論終結日 令和3年4月14日

              判       決

  前橋市文京町一丁目15-10
       控  訴  人    市民オンブズマン群馬
       同 代 表 者 代 表    小  川     賢
  東京都八王子市東浅川町701番2
       被 控 訴 人    独立行政法人国立高等専門学校機構
       同代表者理事長    谷  口     功
       同訴訟代理人弁護士  木  村  美  隆
       同          藍  澤  幸  弘

              主       文
    1 本件控訴を棄却する。
    2 控訴費用は控訴人の負担とする。


              事 実 及 び 理 由
第1 控訴の趣旨
 1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
 2 被控訴人が平成31年4月16日付けで控訴人に対してした法人文書開示決定のうち,本判決別紙記載の各部分に係る情報を不開示とした部分を取り消す。

第2 事案の概要(以下,略称は,原判決の例による。)
 1 本件は,控訴人が,被控訴人に対し,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(法)に基づき,その保有する法人文書の開示を請求したところ,被控訴人から,一部を開示し,その余を開示しない旨の決定(本件決定)を受けたことから,本件決定のうち,原判決別紙 1 記載の各部分を不開示とした部分は違法であるとして,その取消しを求める事案である。
 2 原判決は,控訴人の請求のうち,本件決定中,原判決別紙1記載1の文書(本件文書1) の項目名及び整理Nоに係る情報を不開示とした部分の取消しを求める請求を認容し,その余の請求を棄却した。控訴人は,原判決の控訴人敗訴部分のうち,本判決別紙記載の各情報についての控訴人の請求を棄却した部分を不服として,控訴を提起した。なお,被控訴人は,原判決の被控訴人敗訴部分に対して控訴及び附帯控訴の提起をしておらず,本件決定中原判決が取消し請求を認容した部分について,情報を開示する旨の新たな決定をし,控訴人にこれを開示した。
 3 法の定め,前提事実,争点及び争点に関する当事者双方の主張は,後記4のとおり原判決を補正するほかは,原判決「事実及び理由」中の第2の1から4まで(2頁5行目か ら18頁4行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
 4 原判決の補正
  (1) 3頁8行目末尾を改行して以下のとおり加える。
    「(4) なお,被控訴人は,令和2年11月24日,本件決定中,本件文書1(原判決別紙1記載1の本件各候補者一覧)のうち「項目名及び整理Nоに係る情報」を不開示とした部分が違法であるとして,その部分を取り消した原判決の言渡しを受け,同年12月14日付けで,当該不開示部分に係る情報を開示する旨の新たな決定をし,控訴人に対して同決定を通知するとともに,当該情報を開示した新たな開示文書(以下「再開示文書」という。)を送付した(甲47, 弁論の全趣旨)。」
  (2) 原判決別紙1の5のうち 「事件・事故発生状況報告書【最終報】(4枚のもの)」を「事件・事故発生状況報告書【最終報】(2枚のもの)」に改める。

第3 当裁判所の判断
 1 当裁判所も,原判決のとおり,控訴人の請求は,本件決定中,本件文書1(原判決別紙1記載1の本件各候補者一覧。以下,本件各候補者一覧のうち個別の年の候補者一覧を「平成23年候補者一覧」などという。)について,項目名及び整理Noに係る情報を不開示とした部分の取消しを求める限度で理由があり,その余は理由がないと判断する。その理由は,後記2のとおり原判決を補正し, 後記3のとおり控訴人の当審における新たな主張に対する判断を加えるほかは,原判決「事実及び理由」中の第3の1から5まで(18頁6行目から28頁22行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
 2 原判決の補正
  (1) 21頁6行目から7行目にかけての「群馬高専内の者や群馬高専の関係者」を「群馬高専内の者,これらの者の関係者(当該個人の関係者を含む。) 及び群馬高専の関係者等の不特定多数の者」に改める。
  (2) 21頁7行目の「個人を識別することが可能であるもの」を「個人を識別することを可能にする個人に関する情報(法5条1号本文による保護を要するプライバシーに係る情報)である」に改める。
  (3) 22頁3行目の「群馬高専内の者や群馬高専と関係のある者」を「群馬高専内の者,これらの者と関係のある者(当該個人と関係のある者を含む。)及び群馬高専と関係のある者等の不特定多数の者」に改める。
  (4) 26頁12行目の「弁護士法人が,」の次に「訴訟案件(特に,被控訴人を依頼者とし,当該事件ないし本件と同種の案件のもの)について,」を加える。
  (5) 26頁23行目の「「配分金額」欄に記載された情報は,」の次に「「支払金額」欄のみに記入されたものを含め,」を加える。
  (6) 27頁14行目の「長野高専内の者や長野高専の関係者」を「長野高専内の者,これらの者の関係者(当該学生の関係者を含む。)及び長野高専の関係者等の不特定多数の者」に改める。
  (7) 28頁9行目末尾に改行の上以下のとおり加える。
    「控訴人は,当審において, 控訴人に開示された資料(甲53~55)を組み合わせる方法によって,本件報告書に記載されている事件の発生時期に係る情報をおおまかには確定することができ,したがって,当該情報は,すでに公衆が知り得る状態に置かれているから,法5条1号ただし書イに該当する旨を主張する。
    しかし,控訴人の上記主張を踏まえても,本件報告書に記載されている事件の発生時期に係る情報は,控訴人に開示された資料を組み合わせることによって初めておおまかには推知し得る状態となるにとどまるものであって,上記事件発生の年月日や時刻を特定し得る情報はいまだに公開ないし公表されていないことが認められ(弁論の全趣旨),また,当該情報が将来公開ないし公表されることが予定されていることを認めるに足りる証拠もない。したがって,当該情報は,法5条1号ただし書イ所定の「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」に該当するものとは認めることができない。これに反する控訴人の主張は,採用することができない。」

  (8) 28頁16行目の「対照文書」を「対象文書」に改め,同19行目の「当該情報が」の次に「,「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」として,」を加える。

 3 控訴人の当審における新たな主張に対する判断
  (1) 控訴人の主張
    本件文書1(本判決別紙記載1の本件各候補者一覧)のうち,平成23年ないし平成31年候補者一覧が扱う「推薦機関の種別」の情報は,開示されるべきである。その理由は,以下のとおりである。
   ア 被控訴人は,再開示文書(甲47)によって,本件各候補者一覧のうち, それまで不開示としていた項 目名及び整理Noに係る情報を新たに明らかにした。
     原審での被控訴人の主張によれば,本件各候補者一覧は,各候補者を推薦機関の種別ごとに区分して一覧表としてまとめたものであるところ,平成23年から平成28年までの候補者一覧には,右上に資料番号が付されており,更にその細目番号が二つ(①及び②ないし1及び2)に区分されており,それぞれの細目番号が付された一覧表の項目欄の最初の項目には, それぞれ「推薦機関」(細目番号が①ないし1のもの)又は「学校名」(同じく②ないし2のもの)と記載されているから,細目番号が②ないし2の一覧表が高等専門学校(以下「高専」という。)や大学を含む教育機関からの推薦者ないし出身者を,細目番号①ないし1の一覧表がその他の研究機関や官公庁からの推薦者ないし出身者をそれぞれまとめたものであることが推知できる。そうすると,少なくとも上記細目番号により二つに区分される一覧表がそれぞれ扱う「推薦機関の種別」は,事実上おおまかなものとして既に明らかになっているといえるから,これを開示しても,被控訴人の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるとはいえず, 法5条4号ヘ所定の不開示情報に該当しない。
   イ 再開示文書の平成29年候補者一覧は,1又は2の細目番号が付された二つの一覧表と細目番号が付されず候補者が1名のみ記載された一覧表とから成っている。各一覧表の各項目欄の最初の項目にはいずれも「推薦機関」と記載され,「学校名」の記載はない。控訴人に開示された資料(甲51)と,実際に高専の校長に就任した者について公開されている平成29年4月付け高専の校長の人事に係る文書(甲52)から判明する各校長の前職とを組み合わせてみると,細目番号1の一覧表に「国立大学」からの推薦者を,同2の一覧表に「高専」からの推薦者を,細目番号の記載のない一覧表に「高専」からの追加の推薦者がそれぞれ記載されていることが明らかである。
   ウ 再開示文書の平成30年候補者一覧は,平成29年候補者一覧と同じく,各一覧表の各項目欄の最初の項目にいずれも「推薦機関」と記載され,「学校名」の記載はない。各一覧表の整理Noによると,細目番号1の一覧表に6名,細目番号2の一覧表に4名の候補者が記載され,細目番号が付されていない一覧表3枚に,それぞれ1名,2名,1名の候補者が記載されていることが分かる。一方で,実際に高専の校長に就任した者について公開されている平成30年4月 付け高専の校長の人事に係る文書(甲48)により判明する各校長の前職を見ると,高専教員4名,大学(院)出身者5名,文部科学省2名,国立教育政策研究所1名となっている。ある区分における就任者数が候補者数を上回ることはありえないことも考慮すると,細目番号1が大学(院)出身者,同2が高専出身者, 細目番号なしの一覧表のうち候補者2名のものが文部科学省出身者であることが推知される。平成31年候補者一覧の各一覧表についても,平成30年候補者一覧のものと同様に区分けされているから,同様の手法でそれぞれの区分に係る推薦機関の種別が推知可能である。
   エ 以上のとおり,本件文書1に含まれる情報のうち,各一覧表が取り扱う大まかな「推薦機関の種別」は,既に開示されている情報から推知可能な情報であり,法5条4号ヘ所定の不開示情報でないことが明かである。
  (2) 被控訴人の反論
    控訴人の主張は,いずれも争う。
   ア 控訴人が主張する「推薦機関の種別」とは,再開示文書(甲47)の各一覧表(本件各候補者一覧)の標題中の「国立高等専門学校長候補者一覧」との文字の右側に続く不開示部分を指すと解される(以下,上記不開示部分に係る情報を「標題部不開示情報」という。)。
     高専の校長の前職は,高専や国立大学の教授,文部科学省や国立の研究所の職員といったように複数あり(甲48),これらの出身者が再開示文書の各一覧表のどこに掲載されているかは明らかになっておらず,平成30年度の高専の校長の人事文書(甲48)に記載されている各人が,再開示文書のどの整理Noの箇所に記載されているかはもちろん,控訴人のいう二つの細目番号のいずれが付された一覧表に記載されているかも具体的に特定することはできない。控訴人の主張は,控訴人個人による単なる推測にすぎない。
   イ また,上記「推薦機関の種別」に係る情報(標題部不開示情報)が開示されると,控訴人が指摘するように,候補者の人数(再開示文書の各一覧表の整理Noの数)と実際に校長に就任した者の人数(甲48の校長の人数)との比較により,ある程度の精度で推薦機関ごとの校長採用の割合を 推測することが可能となる。これにより,推薦機関が推薦した者が校長に登用される可能性が低いことを危惧して,校長の候補者の推薦を躊躇するなど,多数の有為な人材から校長を選任するという被控訴人の公正かつ円滑な人事の確保に支障を来すおそれがある。
   ウ なお,年度によっては,校長候補者の人数や構成が比較的少数,単純であり,一覧表に記載された校長候補者の推薦母体が推測しやすい年度が生じ得ることは避けられないが,このことを理由に当該年度における推薦母体の分類内容やその表現(例えば「国立大学法人」や「外部推薦分」といった表記)を明らかにした場合には当該年度のみならず他年度の候補者一覧の分類方法や一覧表の構成をより正確に推測することが可能となるおそれがある。これにより,候補者を推薦した推薦機関や推薦機関別の候補者の多寡を判断することができるようになり,推薦した者が校長に登用される可能性が低いことを危惧して,推薦機関が校長の候補者の推薦を躊躇するなどのおそれがあり,被控訴人の円滑な人事の確保に支障を来すおそれがあることになる。
   エ したがって,再開示文書を前提としても,上記「推薦機関の種類」の情報(表題部不開示情報)は,法5条4号ヘ所定の不開示情報に該当するものである。

  (3) 当裁判所の判断
    当裁判所は,本件文書1の本件各候補者一覧(平成23年ないし平成31年候補者一覧)の標題部不開示情報は,控訴人の当審における新たな主張を勘酌しても,いずれも法5条4号ヘ所定の不開示情報に該当し,これを不開示とした本件決定の部分は適法であるから,この取消しを求める控訴人の請求は理由がないと判断する。その理由は,以下のとおりである。
   ア 上記引用に係る原判決(18頁7行目から11行目まで)が説示するとおり,本件各候補者一覧は,いずれも被控訴人において各国立高等専門学校の校長を選考する際に用いられる資料であり,学校長候補者の氏名,生年月日等候補者を特定する事項や,整理No, 推薦機関,主な学歴,学位,専門分野,職歴及び現職(被控訴人に所属する者の場合には現在の所属先)が,推薦機関ないしその種別ごとに一覧表にまとめて記載されているものと認められる(弁論の全趣旨)。
   イ 再開示文書(甲47)及び弁論の全趣旨によると,控訴人が開示を求める「推薦機関の種別」とは,本件各候補者一覧の標題部不開示情報であると認められるところ,平成23年ないし平成31年候補者一覧は,いずれも控訴人主張のとおり細目番号の有無や相異により区別された各一覧表から成るものであり,各一覧表の各項目欄の最初の項目には,控訴人主張のとおり「推薦機関」及び「学校名」(平成23年ないし平成28年候補者一覧)又は「推薦機関」(平成29年ないし平成31年候補者一覧)と記載されていることが認められる。
   ウ そして, 弁論の全趣旨によると,平成23年ないし平成31年候補者一覧の標題部不開示情報の全部を開示する場合はもちろん,その一部を開示した場合でも,各一覧表の区分ごとの候補者の人数(再開示文書の各一覧表記載の整理Noの数)と,各年度の実際に校長に就任した者の人数等の情報 (例えば甲48から判明する校長の人数やその前職)を組み合わせて考察することや,各年度における上記の考察の結果を比較して更に考察を加えることなどの方法によって,ある程度の精度で各年度の具体的な推薦機関ないしその種別(例えば,高専,国立大学法人,文部科学省,国立教育政策研究所など)ごとの校長採否の割合を推測することが可能となる場合のあることが認められ,現に控訴人も,その正確性は別にして,一部の年度について,具体的な推薦機関やその種別を推測する主張をしているところである。
     したがって,本件各候補者一覧の標題部不開示情報が開示され,これが確定した情報として公開されることになれば,推薦機関が推薦した者が校長に登用される可能性が低いことを危惧して,校長の候補者の推薦を躊躇するなど,多数の有為な人材から校長を選任するという被控訴人の公正かつ円滑な人事の確保に支障を来すおそれが生じるものというべきである。以上によれば,本件各候補者一覧 (平成23年ないし平成31年候補者一覧)の標題部不開示情報は,いずれの年度のものも,法5条4号ヘ所定の不開示情報に該当するから,本件決定中これを不開示とした部分は適法であり,当該部分についての控訴人の取消請求は理由がない。
 4 控訴人は,本判決別紙記載の各部分が法5条所定の不開示事由ないし不開示情報に該当しないとして,当審においても原審と同様に縷々主張するが,その主張を勘酌しても,上記引用に係る原判決(前記2の補正後のもの)の認定判断及び前記3の当裁判所の認定判断は左右されない。
 5 よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。

東京高等裁判所第17民事部
       裁判長裁判官 矢 尾   渉
          裁判官 橋 本 英 史
          裁判官 今 井 和佳子


 (別紙)
1 平成23年4月1日付け国立高等専門学校長候補者一覧,平成24年4月付け国立高等専門学校長候補者一覧,平成25年4月付け国立高等専門学校長候補者一覧,平成26年4月付け国立高等専門学校長候補者一覧,平成27年4月付け国立高等専門学校長候補者一覧,平成28年4月付け国立高等専門学校長候補者一覧,平成29年4月付け国立高等専門学校長候補者一覧,平成30年4月付け国立高等専門学校長候補者一覧及び平成31年4月付け国立高等専門学校長候補者一覧の不開示部分のうち,原判決が開示を命じた「項目名及び整理No」に加えて更に「各一覧表が扱う推薦期間の種別の表示」,「選考通過者のうち実際に校長に就任した者に係る記載情報の全て」及び「各候補者の推薦機関及びその種別」の各部分
2 西尾典眞の平成29年3月15日付け辞職願の不開示部分のうち辞職理由が記載された部分【原判決別紙1記載2に同じ】
3 群馬工業高等専門学校「校報」第129号から第131号までの表紙及び人事関係の不開示部分のうち,同校職員の全てについて,「人事前後の同校における所属・職名に係る情報」,特に同校職員のうち教育研究支援センター所属の技術補佐員については,「氏名および人事前後の同校における所属・職名に係る情報」
4 平成28年度支払決議書,平成29年度支払決議書及び平成30年度支払決議書の不開示部分のうち,「合計金額」,「支払金額」
5 事件・事故等発生状況報告書【第一報】」(報告日時の時刻が1時40分のもの),事件・事故発生状況報告書【第二報】(6枚のもの),事件・事故発生状況報告書【最終報】(7枚のもの),事件・事故等発生状況報告書【第一報】(報告日時の時刻が15時0分のもの),事件・事故発生状況報告書【第二報】(2枚のもの),事件・事故発生状況報告書【最終報】(2枚のもの),事件・事故等発生状況報告書及び故■■■■君に関する報告書の不開示部分のうち,年月日や時刻に関する記載【原判決別紙1記載5に同じ】

                                   以上

                   これは正本である。
                   令和3年6月16日
                    東京高等裁判所第17民事部
                     裁判所書記官  渡 邊 万倫子
                       東京(高)19-004378
**********


■以上のとおり、高専機構側にかなり不利とみられた2つ3つの争点や不開示箇所に関してだけは一応言及するだけした上で機構側の主張をフリーパスで素通し採用し、その他の主張や争点は「原審と同じ」として言及すらしない、というお見事な斬り捨て判決です。

 予期せず控訴審の焦点となった「高専校長候補者一覧」については、せめて大まかにどういったまとめ方をしているか、各文書のタイトル程度は明かされるだろうと考えていたのですが、それすら甘い予測でした。東京高裁は、一覧表のタイトルですら、「高専機構の公正かつ円滑な人事の確保に支障を来すおそれが生じる情報」などとあまりに不条理な認定をしてきたのです。

 それも、この馬鹿げた認定のベースとなっている主張は、明らかに当会からの具体的な反論に慌てた田中・木村弁護士事務所が第二回口頭弁論の2日前に駆け込み提出してきた例の無茶苦茶書面のものです。まさに、「どんな主張でもとりあえず出してさえおけば採用される」入れ食い状態です。

■それにしても、高専校長候補者一覧表の徹底不開示に関するアクロバティックな三段論法は、あまりに噴飯モノです。すなわち、高専校長候補者一覧表の黒塗りを一ミリも剥がさせまいと高専機構側がひたすら強弁し、そして東京地裁・東京高裁が素通しで認めてしまった以下の「ロジック」です。

●高専校長候補者一覧表にかかる情報を、タイトルですらも開示すると……
 ①「ある程度の精度で各年度の具体的な推薦機関ないしその種別ごとの校長採否の割合を推測することが可能となる場合のあることが認められる」
⇒②「推薦機関が推薦した者が校長に登用される可能性が低いことを危惧して,校長の候補者の推薦を躊躇する」
⇒③「多数の有為な人材から校長を選任するという被控訴人の公正かつ円滑な人事の確保に支障を来すおそれが生じる。よって不開示が妥当な情報である」

 しかしこの主張自体、国立高専機構が校長選考において「『推薦機関』による特定校長候補者の優遇や差別を行っています!」ということを公に堂々認めるも同然の代物です。その「優遇と差別」の最たるものが、文科省が自省キャリア官僚を高専校長に「推薦」したときの100%フリーパスであることは言を俟ちません。

 この致命的問題点については、当会が再三にわたって指摘し続けてきました。それにも関わらず東京地裁・東京高裁は、この単なる不条理な暗部を「高専機構の公正かつ円滑な人事」と有無を言わさず認定してしまったのですから、開いた口が塞がりません。そもそも、「円滑」はともかくとして、一体どこが「公正」な人事なのか、地裁審と高裁審を担当した裁判官らのご優秀な脳回路に問い質してみたいものです。

■また、長野高専の連続自殺事件の発生年月日についても、事実上明らかになっている情報でありながら、年レベルでの開示すら一切認められなかったのは極めて遺憾というほかありません。

 これでは、連続自殺問題について、長野高専と正面から向き合い、当時の学校側の体質や対応に問題点はなかったか、原因究明と再発防止はしっかり行ったのかといった事実追及を行おうとしても、「不開示情報(発生時期)を明らかにしてしまう」などとして一切回答拒否にされてしまうことは目に見えています。

 したがって、約10年前の長野高専連続自殺問題について、学校側と向き合って紐解いていくという方向での活動は厳しいものとなってしまいました。今後は、当会独自の情報収集に基づき、独立して事態の解明を進めていくことになります。

 そして、不開示取消を求めて数年来闘い続けてきていたその他の情報、すなわち西尾校長(当時)の手によって抜け目なく公開停止させられた群馬高専校報の人事情報や、高専機構の“守護神”である田中・木村弁護士事務所のポンコツ弁護士陣に国費から湯水のごとく注いだ弁護士費用の情報などに関する請求は、ほとんど言及すらされずに「不開示の認定判断は左右されない」と一刀両断されてしまいました。まったく遺憾としか言いようがありません。

■今回の第一次訴訟控訴審を振り返ってみて思い出されるのは、第一回口頭弁論の時に裁判長と右陪席裁判官がやたらしつこく釈明権を行使して、藍澤弁護士に「主張の抜け」を懇切丁寧に教えていたこと、そして高専機構側から杜撰な書面が出た第二回口頭弁論では態度が打って変わって、当会の反論にも関わらずあっさり結審させにかかったことです。

 口頭弁論中からある程度危惧はしていたものの、あらためて思い返すと、やはり高専機構側を勝たせることありきの裁判であったことを痛感します。東京高裁としては最初から高専機構側を勝たせるつもりではあったものの、その訴訟代理人である田中・木村法律事務所の弁護士陣が、重要なポイントの数々にそもそも反論すらしてこないという想像以上のポンコツであったため、第一回口頭弁論で急遽「お膳立て」をしてあげたものと推察されます。

 すなわち、当事者が言っていない主張まで裁判所が勝手に忖度して代弁するわけにはいかないので、とりあえず「内容がなんであれ反論はした」という既成事実だけは作らせるべく、「釈明権の行使」の形で、どう反論すべきかのアドバイスを仔細に行ったものと考えられます。そして、田中・木村弁護士事務所側も東京高裁の意図を察し、期日2日前の強行提出になってでも「とにかく主張を出すこと」を優先してきたと考えられます。あとは、控訴人当会が何を言おうが結審し、どれほど無茶苦茶であろうと高専機構側の言い分をそのまま判決に仕立てるだけの楽な作業、というわけです。

 このように、「とにかくバットを振りさえすれば全部ホームラン」という忖度お膳立てぶりが、今の日本の行政裁判の実情です。


■当会では、高専組織の異常な情報隠し体質に少しでも歯止めをかけようと、2019年10月に「高専過剰不開示体質是正訴訟」プロジェクトをスタートさせました。

 このプロジェクトは、第一次訴訟・第二次訴訟にわたる二つの裁判を軸とするもので、高専機構側が次々仕掛けてくる卑怯な法廷戦術の嵐と、新型コロナ禍による前代未聞の裁判所機能停止をなんとか乗り越え、1年半以上に及ぶ激闘を遂行してきました。

 しかし、徹底的に行政/公機関側に立って判断し、下手をすればスクラムまで組んで、悪意に満ちた判決すら平然と下してくる我が国司法の悲しい実情という厚い壁に阻まれ、残念ながらいずれも当会側のほぼ完敗に終わってしまいました。

 なお、4月に下された第二次訴訟控訴審の判決については次の記事をご覧ください。

○2021年4月29日:【高専過剰不開示体質是正訴訟】第二次訴訟控訴審で曰く付き白石裁判長が案の定・問答無用の全面棄却判決!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3310.html

 よって残念ながら、今回の取り組みを経て、高専組織の情報不開示体質に歯止めをかけることは叶いませんでした。むしろ、何が何でも裁判所が勝たせてくれるという身も蓋もない現実に自信を得て、より一層、問題の隠蔽と揉み消しのための無茶苦茶なノリ弁不開示を加速させてくる事態も危惧されます。もちろん、当会としてそのような事態を認めるわけにはいきません。

 当会では今後、悪化の一途を辿る高専組織の異常な情報隠し体質を打ち破り、闇のベールを引き裂いて腐敗の実態を白日の下に晒すべく、更なる多角的な調査追及方式をもって対抗していく構えです。

■さて、今回の判決をもって、1年8か月に及ぶ「高専過剰不開示体質是正訴訟」プロジェクトは一応の区切りということになります。

 とはいえ、この闘いを経て収穫がなかったわけではありません。得たもののひとつは、高専機構・各高専とその御用達代理人である田中・木村法律事務所の面々が、どれほどまでに汚い手段を平気で使い、呆れるほどに杜撰な主張を平気で言い立ててくるか、というケーススタディが十分に蓄積されたことです。

 今後とも、何らかの事情によって高専組織と闘わなければならなくなった方々は、日本中で次々と生まれてくることでしょう。そうした際に、今回の訴訟経過の記録を、高専機構という腐敗を極めた組織の「手の内」を示す有用なライブラリとして少しでも活用していただければ、まさに幸甚の至りです。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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【揺れる東京五輪】チャイニーズタイペイではなく台湾の呼称を求めた11.1万人の署名をJOCが門前払い!

2021-06-29 22:31:00 | 国内外からのトピックス

■スポーツの国際試合で「台湾」ではなく「チャイニーズタイペイ」という言葉が使われているのはご存知のことと思います。東京五輪でも同様な名称が使われることになるのか、と、筆者もかねてから疑問を感じていました。なぜなら、チャイニーズタイペイは「台湾は中国の一部である」という中共政府の政治的な圧力によって生まれた呼称だからです。


中華奧林匹克委員會(チャイニーズタイペイオリンピック委員会)のエンブレム。

 中共政府は国際スポーツを政治問題に利用し、自らの主張を国際社会に宣伝していますが、チベット、ウイグル、そして香港に対する中共政府の覇権主義の経緯や現状を見るにつけ、平和の祭典である五輪に、中共政府の意向がもろに示された「チャイニーズタイペイ」の名称が強いられるのは到底容認できません。台湾は台湾であり、中国ではありません。ましてや、中共=中華人民共和国=中国共産党一党独裁国家と同一視されることは、絶対にあり得ません。

 2014年の台湾におけるひまわり学生運動は香港で民主化を求める雨傘運動の端緒となりました。また2016年の総統選挙からも分かるように、台湾国内では、台湾人としての強いアイデンティティがあることは、世界中に示されており、多くの人々が認識しています。

■そこで、国内外の有志の皆さんが、オンライン署名サイトwww.change.orgでこの提案に共鳴する方々から署名を募った結果、現時点で筆者の分も含め13万1363人が賛同しています。このうち、11万1千人分の署名について、2021年6月25日に有志代表がJOC(日本オリンピック委員会)本部に提出しようとしたところ、受け取りを拒否されました。

 JOCに出向いたのは台湾研究フォーラムの永山英樹氏、「Let Taiwan Be Taiwan at the Tokyo Olympics」オンライン署名の主催者で在日アメリカ人のリンデル・ルーシー氏、日本ウイグル協会のイリハム・マハムティ氏の3名でした。

 永山氏からの事前の問い合わせに対してJOCは「IOCとは別の団体だから受け取ることは出来ない」という返答を一度よこし、その後から連絡が取れない状況にありました。リンデル氏もJOC、IOCに問い合わせをしていましたが、きちんとした返答は受け取っていませんでした。

 当日、いくつかのメディアが取材する中で、署名簿を持参した3名の代表を含む約10名がJOC本部入口に入ろうとしました。すると、突然3人の警備担当者が現れて、ドアをふさいで中に入れないようにしました。そして警備員らは「『何も受け取れない。職員を呼ぶことも出来ない』という指示をJOCから受けている。ポストの投函もさせない」と言いました。そして、申し訳なさそうに「署名簿は郵送による提出方法にしてください」と付け加えました。

 このように、「JOCの指示には逆らえない」とする警備員らの“謝罪”があったため、あらためて他の場所から郵送するに決めて、3名の代表はその場を退出しました。別途、JOCには署名簿を郵送で送り、IOCにはメールで署名数について伝える予定です。










■以上のやりとりで分かったことは、JOCがこの件で非常にナーバスになっていることです。そのため、この署名の目的について、今回の東京オリンピックでは遺憾ながら実現しそうもありませんが、台湾の国名でオリンピック出場を求める運動は引き続き継続して行くことが肝要です。

【群馬県台湾総会書記からの報告】

※関連情報
**********京都新聞2021年6月29日
【報道】プリズム~東から~ チャイニーズ・タイペイ
 「チャイニーズ・タイペイ」ではなく「台湾」として五輪へ―。そんな思いが詰まった13万筆を超えるオンライン署名を、JOC(日本オリンピック委員会)は受け取らなかった。
 25日、署名を呼び掛けた日本、台湾、米国の人たちが直接届けようと、新国立競技場向かいのJOCにが入るビルに集まった。事前に担当者に面会を希望したものの、応じてもらえず、アポ無しでの訪問だった。
 「批判するわけではない。署名を渡したいだけ」「10万人以上に委託されている。帰るわけにはいかない」。入館を拒否する警備員と10分ほど入口で押し問答となったが、取り次いでもらうことも、受付に署名を預かってもらうことすらもできず、立ち去った。
 この呼称の問題は根が深い。「一つの中国」を主張する大陸側は台湾を国として認めていない。1980年代以降、台湾が五輪など国際大会に参加する際は「チャイニーズ・タイペイ」が使われている。JOCがこの問題に関与したくないことは一定、理解できる。
 でも、署名は一つの民意の表れだ。JOCは公益財団法人であり、国から補助金が出ている。まして国民の理解がなくして本来の目的である「オリンピズム」の促進は図れない。門前払いをしていては、友情、連帯を説いた近代五輪の父であるクーベルタンが泣く。
 「台湾はカントリーネームを使えない。それはフェアではない」。署名活動をする東京在住の米国人高校教師リンデル・ルーシーさんの訴えは、いたってシンプルだ。今夏のホスト国として耳を傾ける必要があるように思う。
(国貞仁志)
**********

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【安中市庁舎建替え問題】4市民団体が現位置・適正予算での建替えに係る要望書・報告書を市長に提出

2021-06-27 23:29:00 | 安中市庁舎建替えに伴う予算過大問題
■安中市庁舎建替え問題に取り組んでいる市内4つの市民団体は、6月25日に合同で、茂木英子・安中市長に要望書、報告書等を手渡しました。残念ながら時間はわずか30分しか許されませんでしたので、市民団体側では提出資料の説明をざっとしただけで、肝心の意見交換等は出来ませんでした。

 合同で資料を提出したのは、当会のほか、安中市庁舎建設を考える市民の会(小川光・代表)、安中まちづくりワンワンチーム(吉永真・代表)、庁舎建設の方向性を考える会(嶋村楓太郎・代表)で、4会を代表して嶋村代表が1か月前からアポイントを市側に申し入れていたものですが、ようやくこの日実現したものです。

 市側の出席者は、茂木英子・安中市長、町田博幸・企画経営部長、大溝泰彦・企画経営部財政課長です。田中秀人・企画経営部秘書政策課長の顔も見えましたが最初だけで居なくなり実質的には3名でした。またマスコミから上毛新聞、東京新聞、毎日新聞がきて取材をしていました。マスコミにはこの問題についてのこれまでの経緯と論点をまとめた資料を配布しました。


松井田庁舎。ここの議場は物置になっているが、ここに市議会の議場、議会事務局、正副議長関及び会議室をそっくり移転すれば、20議席でもOKで、傍聴人も40名は入れる。仮設ではなく恒久的に移転すれば市庁舎建設費用が50億円から10億円へと大幅に節約できる。出典:安中市庁舎建設を考える市民の会FB。

 この経緯は次のブログ記事を参照ください。
○2021年3月28日:【安中市庁舎建替え問題】広報あんなか4月号「市庁舎の整備について検討しています」記事に異議あり!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3293.html
○2021年4月11日:【安中市庁舎建替え問題】旧安中高校跡地に建替え場所を誘導したい思惑ミエミエの官製アンケートに要注意!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3300.html
○2021年4月27日:【安中市庁舎建替え問題】4/26松井田地区と安中地区の一部へアンケート兼用チラシ6000部を新聞折込配布
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3308.html
○2021年5月20日:【安中市庁舎建替え問題】官製アンケートの結果ほぼ固まる・・・安中市が中間報告
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3316.html
○2021年6月6日:【安中市庁舎建替え問題】官製アンケート中間報告のトリックに係る公開質問に対し市から不明確な回答届く
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3322.html#readmore

 また、市庁舎建替え問題に取り組む市民のかたがたのブログやサイトの記事もご覧ください。
■安中市庁舎建設に関する特別サイト
https://usuipc.wixsite.com/annaka
■庁舎建設の方向性を考える会
https://www.facebook.com/groups/289833998763551/about
■安中市まちづくりワンワンチーム
https://www.facebook.com/annakawanwan/
■安中市庁舎建設を考える市民の会
https://www.facebook.com/groups/2308088432540835/
■かわ遊び・やま遊び雑記/「安中市庁舎問題」のブログ記事一覧
https://blog.goo.ne.jp/koizumi-masato/c/18bdb559bbad9cec5dc59fdf5b15a1de

■当日、安中市長に提出した文書は次のとおりです。

*****6/25市長への要望書*****ZIP ⇒ 20210625sapgv.zip

            要 望 書
安中市長 茂木英子様
庁舎建設等特別委員会委員長 田中伸一様
                          令和3年6月25日
                  庁舎建設の方向性を考える会 嶋村楓太郎

  市民アンケートの結果を踏まえた安中市庁舎建設に関する要望書

 安中市役所の旧庁舎・中庁舎は、平成19年2月23日に、(財)群馬県建設技術センターより耐震診断の判定結果通知が出て、旧庁舎は、「耐震性能は非常に低く大規模な改修が必要」、中庁舎は、「耐震性能は低く補強が必要」と結論づけられております。それからはや13年の歳月が経ち、市役所を訪れる市民にも危険な状態が続いております。4月に配布され5月に集計された「庁舎整備等に関する市民アンケート」の結果に基づいて市庁舎建設の方向性を決定出来るものと拝察いたします。
 そこで、是非とも市民や市職員の生命の安全を最優先にして、早急に仮設庁舎への移転に対処されるよう要望いたします。
 なお、庁舎整備等に関する市民アンケート集計中間報告書の現状のまとめ方では判りにくいので、市民の意向が明確に判るよう下記および次頁にデーターを整理し直した結果を添付いたしますのでご高覧いただきますようお願い申し上げます。

【具体的要望項目】
・旧庁舎、中庁舎に在籍する部署を人命尊重のため仮設庁舎に移転する。
 議会関係は松井田庁舎に、その他は、谷津庁舎、安高格技場、法務局跡など既存施設を使用する。
・現在地の用途地域指定の変更を早急に手続きする。
 第1種住居地域の延床面積制限3000㎡を越える建物も可能にする。
・旧庁舎・中庁舎跡に建設する建物には西庁舎の機能も含むこと。
 西庁舎は撤去して駐車スペースを拡げる。

【庁舎整備等に関する市民アンケート集計中間報告書より「問9の結果」】

建設場所の意見として見れば、耐震補強票も現在地である。現在地は、43.4%+3.9%=47.3%


※問9を無回答と無効を除外して再計算すると現在地と安高跡地の割合は明白になります。


【市民アンケート問9の結果まとめ】
建替える場所;1位 現在地(50.6%)、2位 安高跡地(43.2%)
       1位、2位は、上毛新聞が書いたような拮抗では無く、1位(現在地)が過半数を獲得。

*****6/25市民団体による民間アンケート結果報告*****ZIP ⇒ 20210625apg.zip
                           令和3年6月25日
安中市長 茂木英子様
                    安中市庁舎建設を考える4団体共同

  新聞折込による「安中市庁舎建設に関するアンケート」の結果報告

下記日程にて新聞折込にアンケートはがきを組み込んだチラシを配布してアンケート調査を行いました。
新聞折込日;令和3年4月25日、折り込み部数6000部(松井田地区、磯部、東横野地区)
16歳以上の安中市民を対象 期間;4月25日~5月2日 ハガキ回収日;5月6日
アンケートは集計の正確さを期すため、追跡出来るよう氏名・住所・連絡先記入の記名アンケートとしました。
                     (別紙添付のアンケートチラシ参照)
【設問】
○質問1:建替える庁舎の規模
 ①一極集中の大型庁舎(市の行使貴案9500㎡)
 ②老朽化した庁舎のみを建て替える。(旧庁舎、中庁舎約3600㎡)
 ③わからない。
○質問2:建替え場所について
 ①現在の場所
 ②安高跡地
 ③それ以外の場所
 ④わからない
○質問3:市庁舎建設費用はどこまで許容?
 ①20億円台
 ②30億円台
 ③40億円台
 ④50億円以上

【届いたアンケート葉書】
切手代負担にもかかわらず予想以上の返信をいただきました。



【市庁舎建設に関する民間アンケート集計結果】
                          令和3年5月12日




【安中市庁舎建設を考える4団体共同調査結果の内訳】


【アンケート調査結果まとめ】
市庁舎の規模;1位 老朽化庁舎のみ建て替える(88%)
建替える場所;1位 現在地(82%)
       2位 安高跡地(7%)
建設費用;  1位 20億円台(83%)
       2位 30億円台(8%)
       3位 50億円以上(5%)

備考; 必要であれば、安中市全域に折り込むことも考慮します。

*****6/25マスコミ配布資料*****ZIP ⇒ 20210625ve.zip
                令和3年6月25日記者会見補足説明資料
新聞社 各位

       安中市庁舎に関するこれまでの経緯と論点

安中市役所本庁の庁舎は、4棟の建物で構成されています。
(入口側から新庁舎、旧庁舎、中庁舎、保健センター)

古い順に、旧庁舎、1959年竣工(築62年)、中庁舎、1969年竣工
(築52年)、保健センター、昭和61年竣工(築35年)、新庁舎、平成13年竣工(築20年)となっています。
耐震診断の結果、旧庁舎と中庁舎に問題があります。特に旧庁舎は、耐震性能は大変低く大規模な改修を必要としています。

【年月と主な経緯】
●平成19年2月23日<市長:岡田義弘>
  (財)群馬県建設技術センターより耐震診断の判定結果通知が出る。
  旧庁舎;「本建築物の耐震性能は非常に低く、大規模な改修が必要です。」耐震性能ランクD1 PH階はD3
  中庁舎;「本建築物の耐震性能は低く、補強が必要です。」耐震性能ランクC2(1次判定D1)

●平成20年9月<市長:岡田義弘>
  安中市耐震改修基本計画を策定し、学校、保育園、病院の建て替え及び耐震補強に順次着手(市庁舎は後回しになる。)
●平成27年5月22日<これ以降の市長:茂木英子>
  第1回庁内事前準備組織による検討会議、以後平成29年6月28日まで8回の会議を開催
●平成29年9月26日
  庁内事前準備組織より「庁舎建替に関する報告書」を市長に提出
  報告書の結論(これが現在の安中市の公式案)
  ・庁舎建設場所について  安中高校跡地
  ・規模について 全ての部署を新たな庁舎に集中させるのが理想、現在の新庁舎・旧庁舎・中庁舎・保健センター・松井田支所内に所属する部署が入ることを前提とし、9,500 ㎡規模の庁舎を建設する。
  ・建設費  49億3530万円 (暫定金額)校舎撤去費用等は含まず。

●令和2年6月23日~令和2年10月26日
  ・安中市庁舎に関わる市民懇談会を開催
  ・メンバーは、公募市民5名、市が選定13名の計18名で5ヶ月間に5回の会議を行い提言書をまとめる。
  【市民懇談会設置要綱】
  第2条 懇談会は、次に掲げる事項について調査・検討し、市長に提案するものとする。
  (1)庁舎に関わる基本的事項に関すること。
  (2)庁舎の位置に関すること。
  (3)庁舎の規模及び施設計画に関すること。
●令和2年11月24日
  ・市民懇談会の提言書を市長に提出。
  ・提言書の中身は、庁舎の位置は3カ所が並記、庁舎の規模に関することも意見の羅列に終治し方向性を決める提言書としては役に立たない。
●令和3年4月5日~令和3年4月30日
  ・市民懇談会で方向性を出せなかったため「安中市役所の庁舎整備等に関する市民アンケート」を実施
  ・満16歳以上の住民基本台帳から無作為抽出した市民4,000人を対象
●令和3年5月19日
  ・「安中市役所の庁舎整備等に関する市民アンケート」の結果中間報告公開
●市民アンケートと同時に広報あんなか4月1日号で募集していた市ホームページやFAXや郵送による市民の意見については、現時点では未公開。

【論点のポイント】
・市役所の現在地で老朽化した庁舎のみを建て替えれば建設費は約20億円で済む。
・安高跡地に移転して市庁舎を新設すれば建設費は50億円を超える。差額は30億円以上
・市役所に30億円も余分に費やすよりもインフラ整備や市民のために使ってもらいたい。
・一極集中型庁舎では、地域全体の持続的な発展に役立たない。

**********

■タゴ51億円事件で元職員タゴに対して、民事訴訟勝訴により22億円+遅延損害金=約61億円の債権をもつ安中市土地開発公社の連帯保証人をしている安中市ですが、この債権を行使すれば、タダで市役所庁舎建て替えが出来、予算がすべて市民サービスに充当できるのに、それをまったく実行しようとしない安中市は、いったい誰のための行政なのでしょうか。

 当会は引き続き、他の市民団体とともに、市庁舎建替えに際して、最小のコストで最大の効果を発揮できるようなかたちでの計画実現に向けて、市政を監視してまいります。

【市政をひらく安中市民の会事務局からの報告】

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IoT時代到来に伴う電磁波障害者への対応を問うため楽天モバイルに申入書提出

2021-06-26 22:53:00 | オンブズマン活動
■今、盛んに「5G」という言葉が取りざたされています。これは第5世代という意味で、戦闘機、暗視スコープ、ビデオカメラなどの軍事や映像分野でも使われますが、本稿では移動通信システムについて考えてみます。5G、つまり、第5世代無線通信システムを導入すると、超高速・大容量の通信が可能になり、約2時間の映画を僅か3秒でスマートフォンに取り込めたり、 ロボット等の精緻な操作をリアルタイム通信で実現できたり、スマホやPCをはじめ、身の回りのあらゆる機器がネットに接続できるようになり、自動車自動運転化や4K/8Kの導入が可能になり、さまざまなモノがネットにつながるIoT化が加速するなど、言いことづくしのような印象です。

 5Gに使われる電磁波は、ミリ波と呼ばれる非常に高い周波数の電波で、直進性が強く、エネルギーも高く、金属などの障害物に当たると反射する性質があります。そのために電波等の影になる鉄筋の建物の中には電波が入りにくくなります。そこでSub-6とよばれる6GHz帯未満の電波を併用します。ミリ波と比べると、Sub-6は遮蔽物や雨に強いという特徴があるからです。

 ただし、それでも遮蔽物に弱いという特性は克服できないため、ミリ波で5Gエリアを広げようとすると、従来よりも非常に多くの基地局を設置しなければなりません。このため、5Gの普及を目指して基地局があちこちで林立し始めています。


2020年4月1日から楽天モバイルが都内で運用を開始した5G基地局。同社がNECと開発したSub-6用アンテナ(右)と設置中のmmW用アンテナ(左)

■こうした中で、令和3年4月16日、前橋市は国(内閣府地方創生推進事務局国家戦略特区担当スーパーシティ班)に、スーパーシティ型国家戦略特別区域の指定に関する公募へ提案書を提出しました。

 この「スーパーシティ」構想というのは、医療や交通、教育、行政手続きなど、生活全般にまたがる複数の分野で、AI(人工知能)などを活用した最先端のサービスを導入することにより、便利で暮らしやすいまちを実現していく、というものです。

 そしてこの構想のもとに、前橋市は、デジタル最先端技術等を活用した「スーパーシティ」の実現により、日常の負担となっていることを軽減することで、日々の暮らしにゆとりが生まれ、そのゆとりで、豊かな自然、歴史文化に触れ、食や文化を楽しみ、自分らしく生き生きとした生活を送る「スローシティ」の構想を目指すとしています。しかし、スマートシティには5Gが必須となります。

■前述のとおり、5Gで使われる電波(電磁波)は高エネルギー・高周波であり、人体に対して熱作用を及ぼす可能性が指摘れされていますが、それ以外の影響についてはまだ未知の部分もあり、安全性が証明されているとはいえません。

 また、コロナワクチン接種によるアレルギーなどの副反応を起こす例があるのと同様に、電磁波過敏症の体質を持つ人が存在することも事実です。

 当会会員においても、そうした体質をお持ちの方がおり、日常生活でもいろいろな場面で電磁波障害に悩まされているとの報告がありましたので、ご紹介します。

■群馬県伊勢崎市内在住のAさん(61歳・女性)は電磁波過敏症ですが、昨年来、体調不良の原因が分からないでいた矢先、自宅近くに、楽天モバイルが基地局を建設したことを知ったのは2020年10月20日ごろでした。

 さっそく楽天モバイルに善処を求めたところ、同年10月27日に、楽天モバイルのS氏から電話が有り「楽天のせいで体調が悪いのであれば、客観的な証拠となる診断書を出してほしい。稼働していないのに楽天のせいだというのか?」と問われたAさんは「楽天は電磁波過敏症を病気と認めますか」と逆に質問しました。

 すると、楽天モバイルのS氏は沈黙してしまいました。

 そこでAさんは、S氏の上司のM氏に電話をしました。するとM氏は「楽天のせいで体調が悪いのであれば、客観的な証拠となる診断書を出してほしい。(最寄りの基地局が)稼働していないのに楽天のせいだというのか」と述べたうえで、「(部下の)Sが言ったことを文書にするかどうか、会社で話し合い電話をする」とし、さらにAさんに「要望書を出してほしい」と言ったものの、要望書の宛先や住所等はもとより書式についてAさんが尋ねても返事はありませんでした。

■2020年11月26日に、Aさんは2017年7月に電磁波過敏症を発症して以来、受診しているかかり付けの医院の医師に相談しました。するとその医師は「カルテに化学物質過敏症と書いていない」(当会注:電磁波過敏症は病名リストに載っておらず、リストにある化学物質過敏症の付随的な症状として記載されているため)と述べて、「診断書を携帯会社に出せば嫌がらせを受ける。家族が総務省から圧力を受けかねない」などとして、診断書の発行を拒否されてしまいました。

 その後、同年11月29日にAさんは楽天モバイルに内容証明郵便で善処を求めました。

 すると同年12月11日にM氏から「Sの言ったことは文書にしない。内容証明郵便に対しても文書で回答しない」と言ってきました。

 Aさんは納得できず、同年12月30日及び2021年1月10日に楽天モバイルに対して、2回目と3回目の内容証明郵便を送りました。さらに、かかり付けの医者がビビッて診断書を書いてくれないため、医師免許を持つ親族が書いた診断書を同年2月12日に楽天モバイルに提出し、同3月5日には、基地局撤去の要請を求める近隣住民172人やAさんの知人・友人ら312名の署名簿を楽天モバイルに提出しました。

■さらに同3月19日に、Aさんが楽天モバイルに電話をしたところ、同社T氏は「基地局が稼働していないと誰が言ったのか」と訊いてきたので、Aさんは「S氏とM氏です」と答えました。

 同4月1日に楽天モバイルからAさんに電話がありました。同社M氏は「家族の書いた診断書ではなく、第三者が書いた診断書を出してほしい。内容も楽天モバイルの基地局のせいで、具体的にこれこれの症状が出たと書いてほしい」というので、Aさんは「診断書は家族の関係でも足りるはずです。基地局の稼働について、M氏とS氏は稼働していないと言ったが、稼働していたのでしょうか」と質問しました。

 するとM氏はこの質問に答えず「診断書は第三者に書いてもらってほしい」の一点張りでした。Aさんは「あなた(M氏)が言ったことを文書にしてほしい」と申し入れました。

 その後、4月16日にM氏から電話があり、「文書は出せない」と連絡してきました。

 Aさんは、5月18日に、楽天モバイル以外の大手携帯3社に、楽天モバイルに提出した診断書の写しを同封して、診断書の取扱いについて各社の見解を問い合わせました。すると、5月31日付で携帯会社から「電磁波過敏症ということでお見舞い申し上げます」との内容の返事が郵送されてきました。家族の書いた診断書を有効と判断する携帯会社もありました。また、Aさんが相談した電磁波問題の専門家も「家族の書いた診断書を認めないのは不当だ。これまで聞いたことがない」とコメントしました。

■4月17日以降、楽天モバイル側からなんの応答もないため、Aさんからの要請を受けて当会は6月22日付で次の内容の申入書を楽天モバイル宛に特手記録郵便で提出しました。7月2日必着で楽天モバイルの見解を書面で求める内容としています。

*****6/22申入書*****ZIP ⇒ 20210622_rakuten_mobile_heno_mousiiresho.zip
                            令和3年6月22日
〒375-8601 東京都世田谷区玉川一丁目14番1号
楽天モバイル株式会社
代表取締役社長 山田善久 様
電話:050-5432-2890(楽天モバイル基地局設置)

         〒371-0801 群馬県前橋市文京町1丁目15番10号
         市民オンブズマン群馬  代表  小川 賢
         TEL: 027-224-8567(事務局・鈴木)/
            090-5302-8312(代表・小川)
         FAX: 027-224-6624

            申 入 書
 群馬県伊勢崎市太田町にある貴社基地局の撤去について

拝啓 貴社益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
 弊団体は、行政およびその関連機関を外部から監視し、当該機関による権限の不当な行使ないしは不行使による一般国民への権利利益侵害、並びに税金を原資とした公的資金の濫費について、調査および救済の勧告を図る活動をしている民間団体です。活動の対象は行政の他、事案によって、公益的な事業を営む第3セクターや企業・団体に及ぶことがあります。
 さて、当会に寄せられた情報によりますと、群馬県伊勢崎市に在住されている電磁波過敏症の■■■■様は、自宅近くに貴社が設置した携帯電話基地局による心身への影響が極めて深刻なため、同基地局の撤去を、令和2年10月から貴社に求めています。
 ■■■■様は、多数の署名を集めて、診断書を添えて貴社に提出していますが、貴社から誠意ある対応が未だにいただけておりません。
 当会は、住民の安心・安全な生活環境の保全を最優先とする観点から、貴社に、当該基地局の撤去を強く要請致します。
 また、このことについて、貴社の対応方針、およびその理由や根拠について貴社の見解をお聞かせくださるようお願いします。
 なお、貴ご回答については、大変勝手ながら、書面で2021年7月2日(金)までに郵送あるいはFAXにて上記弊連絡先まで折り返し送達いただければ幸いです。
 なお、何らかの事情によりこの期限までの回答が不能である場合は、大変お手数ではありますが上記弊連絡先までお伝えいただきたく存じます。
                         以上
**********

■電磁波の問題は、コロナ禍対策のワクチン接種の場合に想定される感染リスクと副作用リスクの比較考量と異なり、公益事業であるだけに、事業者や認可機関には、電磁波過敏症の人たちへの配慮が求められます。

 楽天モバイルがこうした症状に悩む人たちのことをどのようにとらえているのかどうか、対応が注目されます。

■新聞などメディアでは、毎日のようにデジタルに関わる言葉を目にします。デジタル庁、スマートシティ、GIGAスクール、5G、AI……。これらを見ていると、世の中が「デジタル化社会」に向かって加速していることを実感させられます。

 しかし、社会には電磁波を発生するものに対して、頭痛やめまい、吐き気、動悸、胸の圧迫感などのさまざまな症状を呈する方々がいます。そのため、Aさんのように、スマートフォンやパソコン、テレビ、炊飯器などが使えなくなり、電線の下や携帯電話基地局の近くにいられない人たちが、不自由な生活を強いられているのです。

 Aさんの場合、症状の改善に努めていますが、発症から約4年が経過した現在も、ほとんど変化は見られません。

 Aさんのように電磁波に何らかの体調不良を示す人たちは、人口の2~10%いることが疫学調査や研究で判明しているとの報告もあります。また、子どもについては、頭蓋骨が薄く、免疫も未発達のために電磁波の影響を受けやすいとする考えも提唱されています。

 デジタル化社会は私たちの生活に便宜をもたらす面は確かにあるでしょう。しかし、その構築には電磁波の発生が付きまといます。政府や行政、そして事業者には、デジタル化社会の実現促進ばかりでなく、人体になんらかの影響を与える電磁波から住民の健康を守るための手法や技術開発も疎かにしてほしくありません。

■楽天グループのHPには「1997年の創業時より、イノベーションの力を信じ、大切にしてきました。今も、『イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする』という想いのもと、『グローバル イノベーション カンパニー』であり続けることを目指し、様々なビジネスを展開しています。」と自らを紹介しています。

 楽天グループとして、高速通信を核としたビジネスを今後も展開してゆくのであれば、電磁波障害で苦しむユーザーのことを楽観的に考えるのではなく、「楽天」の由来となった戦国時代の織田信長や豊臣秀吉など各地の戦国大名により行われた経済政策「楽市楽座」と明るく前向きな様を表す「楽天」の趣旨を重視して、誰にでもメリットのあるイノベーションを実践してもらいたいものです。

【7月12日追記】
 楽天モバイルからの回答期限日から1週間以上が経過しましたが、結局、なにも同社から応答が得られませんでした。当会のブログ記事を楽天モバイル社が閲覧していることは確認できましたので、ダンマリを決め込んでいても、反応を気にしている風情はあるようです。
 楽天モバイルの企業としてのCSR体質は所詮この程度であることが分かったのは収穫でしたが、今後、当会会員の電磁波過敏症に悩む親族の方の苦難と苦痛を思うと、暗澹たる気持ちです。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※関連情報「Aさんの直面する問題を報じた記事」
**********日刊ゲンダイ2021年05月17日06:00
5Gスマホ戦争の盲点 基地局新設で電磁波過敏症の症状が…

運転中も電磁波シールドが欠かせない(提供写真)
体調悪化の原因は新設の「基地局」だった
 大通りに面した民家の駐車場に、先端にアンテナのついた、高さ7~8メートルほどの鉄塔が、天に向かって伸びている。基地局という。スマホや携帯電話と交換局とを結ぶ、電波の中継施設だ。
 群馬県某市――。
 付近に住む主婦のA子さん(61)が語る。
「去年の10月20日ごろに発見しました。少し前から頭痛や息苦しさ、胸の圧迫感など体調がすごく悪かったのですが、あれが原因だったようです」
 というのにはワケがある。学校教員だった彼女は、めまいに悩まされた末、定年を待たずに退職した。パソコン仕事がつらかったためだが、代わりに始めたパート先で電子レンジを使ったところ、「ヤリの束が頭にザーッと降ってきたみたいな、強烈な頭痛に襲われて。以来、パソコンやスマホはもちろん、テレビの画面さえ見られません。家の照明は部屋の端に移しました。外でも電線の下がダメなので、ヘルメットと電磁波シールドが欠かせないんです」。
 いわゆる電磁波過敏症(EHS)の症状が一気に噴き出した。それでも一軒家でひっそり暮らしていれば、一定の体調を保てもしたが、新しい基地局は直線距離で約130メートルの地点にあった。
 A子さんの夫は現役の保健所医師である。苦しむ妻を見かねた彼は駐車場の地主に相談。すると翌々日、基地局の主の側から電話がかかってきた。
 楽天モバイル。三木谷浩史氏率いる楽天グループの移動体通信部門だ。
 A子さんの話。
「専門家のSと名乗る男性が、その距離なら電磁波の影響はないはずだと断じました。それでも基地局のせいだと言うなら、医師の診断書を出せ、と」
■楽天モバイルは回答拒否
 実はA子さん夫妻と楽天との交渉は、半年以上も前のこの時点から、一歩も進んでいない。診断書はかかりつけの医師に、「楽天の嫌がらせや総務省の圧力が怖い」という、奇妙な理由で断られた。当初は好意的だった地主さんの態度が一変した。
 だが、このままでは生活できなくなる。次回で述べるように、電磁波による健康被害は過敏症でない人にも起こり得る。A子さんは三木谷氏やモバイルの社長宛てに、合理的な配慮を求める内容証明を送った。基地局から300メートルの範囲で撤去を求める署名活動を行い、この2月に169筆、3月には13筆を集めた。他に友人・知人らの272筆(2月)と40筆(3月)も。診断書は夫が医師として書いてくれた。
 だが一切が顧みられない。文書による回答さえ拒否されたままでいる。

「基地局」は7、8メートルの鉄塔の先端にアンテナ(提供写真)
日本は基地局の電波の安全基準が極端に甘い
 デジタル改革関連法案が、12日成立した。このままだと私たちは近い将来、わずかな利便性と引き換えに、監視社会の囚人となる。政府と巨大IT資本に支配されるだけの客体におとしめられていく。
 と同時に、電磁波過敏症(EHS)の人だけでなく、多くの人々の健康に悪影響があるのではないか。デジタル化で電波があふれ、高速で大容量の5G(第5世代移動通信システム)が広がれば何もない方が不思議だ。
 環境NGO「電磁波問題市民研究会」の大久保貞利事務局長が語る。
■諸外国では重大な環境問題
「電磁波はヨーロッパなど諸外国では重大な環境問題です。EUによる2007年の公式意識調査では、健康への影響を心配している人が76%を占めました。実際、その4年前にはフランスの国立応用科学研究所が、基地局周辺に住む530人を調べて、300メートル以内だと体調不良を訴える人が多いとする疫学研究を発表しているんです」
 特にEHSを対象にした調査ではない。それでも吐き気や食欲不振、視覚障害、かんしゃく、うつ症状、性欲減退、頭痛、睡眠障害など、多様な症状が報告された。これとは別に、精子への影響や自閉症、白血病との関連を示す研究もあるそうだ。
 あるいは、インドの最高裁が2017年に基地局の撤去を命じる判決を出している。他国に先駆けて5Gの商用化を実現したスイスも、昨年2月にその基地局の全面一時停止を決めた。安全基準策定のための調査が必要というのが理由だ。
「野放しなのは米国と日本くらいなもの。日本は基地局の電波を法的に規制する電波防護指針値が極端に甘い。諸外国とは比べものになりません」
 電磁波の問題は難しい。どれほど重い症状があり、疫学的には因果関係があると考えられても、少なくとも現状では病理学的に証明できないからだ。
 たばこの受動喫煙にも酷似した特徴だが、扱われ方は対極にある。日本では今や、たばこが絶対悪なのに、スマホは神様なのが興味深い。うかつに電磁波被害を語ると“電波系”の烙印を押されかねないゆえんである。
 とまれ、WHO(世界保健機関)は05年に公表した「ファクトシート」でEHSの用語を用い、彼らの日常生活に支障をきたす症状群を「確かに存在する」と認めている。電磁波との因果関係に「科学的根拠はない」とも述べているが、それは現状での話。
 時代は移りゆく。幾多の公害病も、当初は存在しないことにされていた。

1月、新携帯電話料金を発表する楽天の三木谷浩史会長兼社長(C)日刊ゲンダイ
楽天モバイルには誠実に対応しなければならない道理がある
 電磁波による健康被害や恐れを理由に基地局の撤去や建設中止を求める訴訟は、これまで幾度も提起されているが、原告側が勝訴した例はない。この国の司法は政府の意向に従うだけだから、と環境NGO「電磁波問題市民研究会」の大久保貞利事務局長は語る。
「法廷よりも、住民パワーを結集した運動で闘うべき。そうやって基地局の被害を食い止めた事例が、全国にはすでに約280件もあります」
 電磁波過敏症(EHS)に苦しむ住民には、2016年に施行された障害者差別解消法も味方になってくれるはずだ。役所や事業者は、障害のある人に「合理的な配慮」をすることと定めた法律で、障害者権利条約が提示した「障害の社会モデル」を基調としている。
 そこで内閣府の障害者施策担当官にEHSの場合を確認すると、「障害および社会的障壁により、継続的に日常生活または社会生活に相当な制限を受ける状態にあれば、化学物質過敏症などと同様に、法の対象となり得ます」。とすれば、たとえば冒頭で紹介した群馬県のA子さんに対しても、基地局を建てた楽天モバイルは誠実に対応しなければならない道理だが、現実はどうか。
 中国のIT大手・テンセントと資本提携したりソフトバンクの機密を元社員から入手したカドで1000億円の損害賠償請求訴訟を起こされたりと、近頃やたら騒々しい楽天。参入して間もない携帯電話事業でも、この夏の全国回線エリアカバー率目標96%を急ぐあまり、基地局設置をめぐるトラブルが続出している。
■公共性の自覚が欠落
 創業オーナーの三木谷浩史氏が、4月の「日刊工業新聞」で、「1日100局前後を開通させている」旨を語っていた。身勝手きわまりない成長戦略の、A子さんは犠牲者なのだ。
 異様な会社である。取材を申し込もうと代表番号に電話したが、「フリーからの連絡は取り次がない」由。(日刊ゲンダイの)社員デスクにかけ直してもらい、ようやく広報と電話が通じたのも束の間、その後も門前払いの連続でメールでの説得を重ねさせられた揚げ句、「ご依頼の件、諸所の都合により大変恐縮ですが辞退とさせていただけますと幸いです」で強制終了。公共性の自覚が決定的に欠落した、いかにも政治権力に近い政商企業だった。
 あらゆる申し入れを無視され続けているA子さんは8日、楽天モバイルの山田善久社長に4度目の内容証明郵便を送付した。22日までの回答を求めているのだが――。
【斎藤貴男:ジャーナリスト。1958年生まれ。早大卒。イギリス・バーミンガム大学で修士号(国際学MA)取得。日本工業新聞、プレジデント、週刊文春の記者などを経てフリーに。「戦争経済大国」(河出書房新社)、「日本が壊れていく」(ちくま新書)、「『明治礼賛』の正体」(岩波ブックレット)など著書多数。】
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日本が台湾にワクチンを提供した事実を歪曲しようとするニセ報道に注意しよう!

2021-06-25 23:23:00 | 国内外からのトピックス
■中共政府による妨害でワクチン調達が困難だった台湾の窮状を見かねて手を差し伸べた日本政府の善意に対して、日本国内でフェイク報道があまりにもひどすぎる、として、見かねた台湾在住の日本の方々から、正しい現状を伝えたいとして、注意喚起が為されています。


鶴の翼に乗って台湾へ飛び立つ友好のワクチン(6月4日)。
「ありがとう」の一言では言い尽くせない感謝の気持ち!
この一枚の写真が、どれほど多くの台湾の人々の喜びの涙を誘ったことでしょう!
今現在、台湾の人々が異口同音に、日本の政府、そして、日本の皆様に向けてよろこびの涙と共に「ありがとうございます」との想いを抱いております。
「ありがとうございます」の一言では言い尽くせない感謝の想いでいっぱいです。
お互いの間には、まだまだ乗り越えなければならない困難の日々が続くかもしれません。しかし、いつか必ず、平和の日々が戻って来ることでしょう。
その時、きっと今まで以上にすてきな交流ができるはず、と私たちは心から信じております。
その日を共に迎えられるように、希望を持ち続けて・・・。
              群馬県台湾総会一同






上記写真の出典はいずれも駐日代表処。

**********東洋経済オンライン2021年06年24日11:00
「台湾に送ったワクチンで大量死」報道の真相
台湾に関するフェイクニュースの見分け方と台湾理解


2021年6月15日に、日本から送られた新型コロナウイルスワクチンを接種する台湾市民(写真・ Bloomberg Finance LP)
 長らく台湾に住む日本人として、日本のニュースサイトに掲載される台湾の関連記事を見ながら違和感を抱き始めたのは、台湾で感染が拡大した2021年5月後半からだろう。「台湾のワクチン接種は周回遅れ」「現実的な漢族のDNA」「日本人の台湾幻想、妄想」といったネガティブな言葉を多用し、台湾のワクチン政策がうまくいっていないことを批判する記事が出始めた。
 さらには、「多くの台湾人がワクチンを求めて中国に殺到」「実は台湾人はアストラゼネカ製ワクチンをまったく歓迎しておらず、日本は余り物をよこしたと思っている」「在台日本人も中国製ワクチンを打ちたいと思っている」「日本で使われていないワクチンを送るのは毒を送るのと同じ」「漢人である台湾人は実はしたたかで信用できない」といった記事が目につくようになった。
★「日本が送ったワクチンは毒」?
 こうした記事のソースの多くが、いわゆる「中国寄り」「反与党政権」の台湾メディアという共通点もあった。記事中に例として取り上げられた日本人の意見もかなりの少数派と思うが、それが台湾全体のことのように語られているのを見て、怒るというより呆れてしまった。
 台湾で感染が広がったのは突然だった。そのためワクチンを求める声は急激に高まり、それに見合うワクチン入手が遅れていることは確かで、それは政府のワクチン対策に問題がある。それに対する建設的な意見や議論ならばもちろん必要だ。とはいえ、さまざまな理由が重なってそうなってしまったのは、台湾で暮らしてニュースや中央感染指揮センターが連日行う会見を見ていれば何となく理解もできる。台湾は、ただでさえ多くの国際機関から排除され、国際社会のなか「一人ぼっち」で頑張ってきたのだ。無条件に何でも仕方がないとかばうわけではないが、あまりにひどい書きっぷりではないか。
 なにより、台湾についてそこまでネガティブに日本の読者に伝える目的は何だろう。筆者らの経歴を見るとメディアでの経験も多く、中国や台湾での駐在経験もあるようで、台湾事情にはかなり詳しそうだが。とくに問題を感じたのが、2021年6月4日に日本から提供された124万回分のアストラゼネカ製ワクチンが台湾へ到着した後の一連の報道だ。台湾から日本への感謝が伝えられ、日台双方で高まっていた友好ムードに冷や水を浴びせるような記事が散見された。
 その中には、一見冷静に出来事を説明しているように見えるが、実態と異なることや根拠のないことをちりばめた悪意の塊のような文章が少なくない。しかも、「日本から台湾に送られたアストラゼネカ製ワクチンで大量死」、「ワクチンを送った日本に対し反日感情が高まって台湾で暴動寸前」というきわめて扇情的な記事もあった。
 台湾人で北海道大学法学研究科助教の許仁碩氏は、これらの記事の論点や傾向を整理してどういった性格のものかを分析している。許氏は、「今は日台関係が良いので影響も限定的だが、何かしら日台関係に摩擦があるときには、これらの論調が含む問題に日本人が気づけるかどうか」と指摘している。私もこれには同感で、日本読者の台湾リテラシーが試される危うさを感じており、この状況は楽観できず、こうした記事の目的を注視していかなければならないと考えた。
★公式データでもわかるワクチンの有効性
 そして、こういった悪意を持ったネガティブな情報に対抗するために、台湾のこれまでの歴史や現在の立場について、もっと日本の方々に理解を深めてもらうのが効果的だと考え、筆者も「まさかの時の友こそ、真の友――日本のワクチン支援、台湾人を感動させたもうひとつの意味」という記事を書いた。
 台湾では2021年6月14、15日から、日本が提供したアストラゼネカ製ワクチンの接種が、高齢者を対象として行われている。そして接種後に死亡が相次いでいるというニュースが流れ、接種を不安に思っている人も確かに少なくない。ただ、これは、接種への不安を感じている人の多い日本やその他の国々と同じ状況だろう。
 中央感染指揮センターの陳時中部長はこれに対し、同じくアストラゼネカ製を承認している韓国やイギリス、アメリカと比較して台湾が特別多いわけではないこと、死亡原因は追跡調査を行ってきちんと明らかにすること、ワクチン接種はリスクよりも有効性のほうが大きいことを強調した。
 さらに言えば、多少の不安感はあるとはいえ、それを日本のせいにする台湾人はめったにいない。不満の矛先を向けているのは台湾政府に対してであって、ましてや暴動寸前というのはまったくのデタラメである。
 間違った情報が日本で広まることへの危機感を持ち、公式の統計データを用いて日本人向けにツイッターで解説する台湾人もいる。ツイッターでそういった公式データを分析した結果を公表したkaito2198氏によれば、2021年6月20日時点でのワクチン接種後の死亡者は64人。そのうち90歳以上は15人、80歳以上が32人、70歳以上は8人、69歳以下は9人となっている。接種してから亡くなった時間も、接種当日から接種4日後までとまちまちだった。kaito2198氏のような民間パワーが、正しい情報を見つけ解説して広めるなど、フェイクニュース対策の協力者の役割を担っている。
 死亡者の95%に基礎疾患があり、とくに透析を受けている方が多い。そのほか認知症や糖尿病、高血圧、腎不全、冠状動脈性心疾患、がん、心臓病といった慢性病を抱え、寝たきりの方もいた。また、台湾では祝日となる端午節(2021年6月14日)で食べるチマキをのどに詰まらせた人や、接種前に転倒して死亡したといったデータも紛れ込んでいたという。
 実際に、台湾で昨年2020年に、75歳以上の高齢者で亡くなった人は1日平均260人。今回のワクチン接種ではほとんどが75歳以上を対象としていたが、3日間合わせてもその数には及ばない。
★日本からのワクチン送付に台湾は本当に感謝している
 一方で、新型コロナウイルスを原因とする死亡率は、台湾は突出して高い。介護施設でのクラスターや家庭内感染など、高齢者への感染が広がっているためだ。接種後に死亡した後期高齢者の人数を約50人とした場合、(ワクチン接種と直接的な関係がどれほどあるかは不明だが)死亡率は0.0087%である。一方、コロナに感染した場合の死亡率は22%だ。データ上の有効性は火を見るより明らかである。
 だからこそ、高齢者への接種が一刻も早く望まれていたタイミングで到着したのが、日本が提供したアストラゼネカ製ワクチンだった。筆者の周辺でも、ご年配の多くが「接種ができて本当にホッとした、日本に感謝している」との声を聞いたほどだ。
 それでも、世界的に有効性が高いと言われるモデルナ製やファイザー製のほうを接種したいと望む人も少なくない。日本では、台湾がアストラゼネカ製のワクチンしか承認していないと思われているようだが、そうではない。たんにその時はアストラゼネカ製しか入手できなかったのが実状だ。
 とはいえ、日本からのワクチンが到着した後に、それまでアストラゼネカ製の悪口をさんざんテレビで言っていたメディア関係者や富裕層が、自主診療のクリニックへ配布された同社製ワクチンを抜駆けしてこっそり打っていたことが明るみに出ている。またその後、中央感染指揮センターは各国と比較しながら同社製よりもファイザー製のほうが接種後の死亡例が多かったことも示している。当事者やご遺族に「こんな死亡データがあるので、あきらめてください」という話ではない。結局、どのワクチンも未知数であることには変わりないのである。
 それでもやはり、熱が出るなど身体に負担がかかることは考えられ、基礎疾患のある人には充分な事前検討が必要であろう。本当に信頼できないならば打たずとも良いし、台湾でも日本と同じくワクチン接種は強制ではない。
 以上のような台湾の実状が日本に伝わることがないまま、「反日」「大量死」「暴動」というセンセーショナルなワードを並べた報道が、日本のメディアでなされた。そのため、在台日本人の中には、「台湾で死者が相次いで対日感情が悪化しているんでしょ?」などと心配するメッセージを日本にいる家族から受け取った人もいる。
 台湾政府は現在、フェイクニュースを捏造した人に高額な罰金を処している。また受け取ったフェイクニュースを誰かに流しただけでも罪に問われる。何をもってフェイクニュースとするかを、政府という権力機関が判断できることには当然、議論の余地はあるだろう。しかし、台湾の人権団体が異議を唱えているのは、あまり効果の上がらない高額な罰金や特定メディアへの攻撃といった「手段」であって、安全保障や公共福祉を脅かす大量の「フェイクニュース」に台湾がさらされているという問題は共有しており、解決手段として透明性ある情報公開を求めている。それほど切羽詰まった「情報戦争」の渦中にいるという自覚が台湾にあるのだ。
★台湾では情報ソースと目的に敏感
 フェイクニュース、とくに現在の蔡英文政権に関するものがとてもひどかった2018年ごろ、筆者も個人のフェイスブックでフェイクニュースに事実を列挙して反論したことがあった。すると、多くの「捨てアカウント」の持ち主から攻撃を受けた。こういった攻撃は台湾で「網軍」と呼ばれ、ネット軍隊とでも言えるだろうか。コメントが中国で使用される「簡体字」で記されたり、その内容もかなり汚い罵倒語を使って書き込まれていた。こうした「網軍」によってフェイクニュースが作られ、拡散され、世論が攪乱される。
 台湾政治は大まかに言えば、その支持・志向性によって2つの色に分かれる。1つは中華人民共和国に融和的な「藍」陣営と、リベラル的な政治志向をもち台湾の主体性を志向する「緑」陣営(現在の与党・民主進歩党も緑)だが、「網軍」はどちらにも存在する。つまり、台湾では日々熾烈な情報戦が双方で繰り広げられているということだ。
 フェイクニュース法規制が敷かれてから、情報戦はさらに巧妙になっている。こうしたことが日常的な台湾では、少なくない人が情報リテラシーに敏感だ。また、メディア側もその報道姿勢が「藍」か「緑」に分かれ、そのソースがどこのメディアかで、その信憑性を各個人が判断する。「藍」側のメディアには多くの中国資本が入っているとも言われる。このような事情から、台湾で暮らした経験があったり、長いあいだ台湾に興味を持ってきた日本人は、台湾に関する記事がどのような目的を持っているかをある程度は判断できるだろう。
 しかし台湾への関心がこの数年、急激に高まってきたなかで、そういった台湾に関するメディアリテラシーを日本人の多くは持っていないように思う。台湾に関心がそれほどなかった時代であれば、前述したような記事の影響はごく限定的だったかもしれない。
 だが、とくに2020年になってコロナ対策で台湾のデジタル大臣であるオードリー・タン氏など台湾人に注目が集まり、タピオカに続き台湾パイナップルが日本でブームとなるなど台湾への関心が強まっている現在、フェイクニュースでさえこれほど広がるというのは、台湾情報の価値が高まったからと言えるでのはないか。
 そう考えれば少し皮肉ではあるが、このことは1つの必要性を示している。つまりデマやフェイクニュースに惑わされず、「日台友好」という関係をきちんと機能させていくためには、現状を知るだけでなく歴史や地理、社会政治といったさまざまな角度からの台湾理解を進めながら情報を判断するのが重要ということだ。
 台湾の在日大使館にあたる台北駐日経済文化代表処の謝長廷・代表は自身のフェイスブックで、「日本提供のワクチンに対する行きすぎたバッシングは、以降の日本からのワクチン支援に影響する」と投稿した。これは台湾の一部の人々に向けたコメントだが、同時に日本に対しても同じことが当てはまる。
★「親日」を超えた公平な台湾理解が必要
 前述したような記事を多くの日本人が信じた結果、日本世論は「もう台湾にワクチンを送るのは遠慮しよう」という流れに発展するかもしれない。1つの記事が作り出したデマが、多くの台湾の方の感謝の気持ちを踏みにじり、台湾人の生命に影響をもたらす事態になるといっても過言ではないのだ。
 フェイクニュースは、実に巧妙に作られる。すべてがウソというわけでもない。しかし、かなり極端な「ホント」を拡大し、そのうえで虚実取り混ぜて作成される。さらに、「安倍晋三前首相が主導」といった政治家の名前を入れることで、政治的な志向を異にする人たちの関心を引き寄せる状況も見られた。
 そういった一部の人たちにとり、こうした台湾情報は現政権を攻撃できる材料でしかないように思える。また、「日本で使っていないアストラゼネカ製ワクチンを提供するのは申し訳ない」という、多くの日本人がどことなく持っていた後ろめたさを実に刺激したことについては、卑劣の一言に尽きる。
 「台湾は親日だから好き」「敵の敵は味方」といった考えも危うい。台湾はかつて日本の植民地であり、歴史的にも政治的にも、そして心理的にも解決されていない問題は、実はまだ残っている。さまざまなバックグラウンドを持つ人で構成される多様社会であり、日本に関心がない、またはよく思っていない人ももちろんいる。「親日だから、そうした不満を言わないはず」という決めつけは、公平・平等な相互理解を妨げる。
 互いに問題点をしっかり指摘し合い、解決をともに探ることができ、ともに明るい未来を目指す「真の友情」を求めるのであれば、それこそどんなデマやフェイクニュースにも惑わされない、強い結びつきが必要とされるだろう。悪意のある情報やデマは「ウイルス」であり、本物のウイルスと同じく素早く伝播し、人の命を奪うことさえある。そして、手を変え品を変え、これからも次々と現れるだろう。それに対抗するためには、お互いにきちんと知っていく、正確な情報や多角的な理解の深まりこそが「ワクチン」なのではないだろうか。
(著者:栖来 ひかり)
**********

■筆者の関係の台湾ファミリーの皆さんは、日本から発信される一部のニセ情報に呆れています。台湾の大多数のかたがたは、冒頭の写真で、降りしきる雨の中、雨具を着た謝長廷代表が深々と御礼の最敬礼を、ワクチンを積んで飛び立とうとする鶴のマークを付けた翼に向かって深々と最敬礼する姿を、自分に重ねています。

**********Taiwan Today 2021年06月04日
外交部、日本からのワクチン提供に「心から感謝」

日本政府は3日、台湾にアストラゼネカ製ワクチン124万回分を提供し、台湾と共同で新型コロナウイルスに立ち向かう決意を示した。ワクチンはきょう(4日)午後、台湾に到着する。写真は成田空港でワクチンを載せた航空機に深々とお辞儀をする台北駐日経済文化代表処の謝長廷駐日代表。(台北駐日経済文化代表処より)
 台日双方の緊密な交渉の末、日本政府が台湾にアストラゼネカ製ワクチン124万回分を提供し、台湾と共同で新型コロナウイルスに立ち向かう決意を示した。ワクチンはきょう(4日)午後、台湾に到着する。外交部(日本の外務省に相当)は同日、ニュースリリースを発表し、日本が適切なタイミングに支援の手を差し伸べてくれたことに「心から感謝する」と述べている。ニュースリリースの概要は以下のとおり。
★★★★★
 昨年、新型コロナウイルス感染症が全世界に拡大して以来、わが国は医療物資をさまざまな国に無償提供し、国際社会から評価されてきた。最近、新たな感染拡大の波が世界を襲っている。日本政府は、台湾で感染拡大が深刻化していることを鑑み、また、日本の各方面から台湾支援の声が上がる中、日本国内の感染状況が依然厳しい段階にあるにも関わらず、ワクチンを提供することで台湾に協力する決定を下した。これは「人溺己溺(他人が溺れていることを自分が溺れていることとみなす。つまり、他人の苦しみをわが事ととらえる)」、「同舟共済(同じことにあたっている者たちが力を合わせて難局を乗り切ること)」の人道的精神を発揮し、台湾と日本の感染症対策での協力を強化するものだ。外交部は、わが国の政府および国民を代表し、日本政府および関係者に心から感謝申し上げる。
 台湾と日本はもとより緊密な関係にあり、固い友情を築いてきた。災害や事故が発生するたびに互いに支援の手を差し伸べ、「雪中に炭を送る」という行動を繰り返し、長期にわたって支え合いの手本を他国に示してきた。このコロナ禍においても、台湾と日本は互いに、第三国に取り残された相手国民の救出に協力してきた。大型客船ダイヤモンドプリンセス号の台湾人乗客を帰国させるためのチャーター機の運航、あるいはペルー、インド、フィジーなどに取り残された人々の帰国など、さまざまなケースを台日双方の協力で無事解決してきた。今年5月に開催された世界保健機関(WHO)年次総会では、日本の菅義偉首相をはじめとする多くの政府高官が、台湾のWHO参加を支持する立場を表明した。これに加えて、このたび日本政府からワクチンの支援を受けられることは、わが国の感染症対策システムを強化し、国民の健康を守るために大きく役立つことだ。このことはまた、台湾と日本のパートナーシップが「患難真情(まさかのときの友こそ真の友)」であることを改めて証明した。日本の人々からの心温まる支援を、わが国の政府と国民は永遠に忘れないだろう。
 台湾と日本は、自由や民主主義という普遍的価値を共有している。さまざまな側面において、双方は重要なパートナーであり、貴重な友人である。わが国は、この盤石な関係を基礎に、さらに双方の関係を深めていきたいと考えている。

**********フォーカス台湾2021年06月04日17:07
日本のワクチン提供「10日間の静かな作戦」 台湾の安全保障高官が明かす

ワクチンを積んで4日午後に台湾に到着した日本航空の航空機
(台北中央社)日本が台湾に無償提供した新型コロナウイルスワクチンは4日午後、桃園国際空港に到着した。台湾の安全保障部門の高官は4日、ワクチン寄贈が実現するまでの「10日間の静かな作戦」の内幕を明らかにした。この計画は蔡英文(さいえいぶん)政権の「最高機密」と位置付けられ、法律面の交渉から地域情勢の把握まで、台日双方の協力と米国の静かな後押しによって「不可能な任務」を成し遂げた。
 ワクチン寄贈計画は5月24日、謝長廷(しゃちょうてい)台北駐日経済文化代表処代表(大使に相当)が米国のヤング駐日臨時代理大使と安倍晋三政権下で首相補佐官を務めた薗浦健太郎氏を公邸に招いて開いた懇親会に始まる。その席では新型コロナに関する問題が話し合われ、薗浦氏から「日本のアストラゼネカワクチン台湾に提供可能だ」との提言があった。ヤング氏もこの意見に賛同し、「台日米」3者間においてひとまずの合意が得られた。その後には煩雑な法律と政治上の問題の処理が待ち構えていた。
 蔡総統は謝氏から報告を受けると、「内密に、全力で目標達成」を最高原則として、即座に安全保障や外交部門に総動員を指示した。長年にわたり対日関係を築いてきた頼清徳(らいせいとく)副総統はすぐさまルートを通じて日本の重要人物に連絡を取り、日本からの支援に期待を示し、好意的な反応を得た。総統就任前から米国や日本との関係を安定的に築いていた蔡総統は自ら、古くからの友人らに国際電話を掛けて意見交換を行った。得られた反応はどれも全く同じで「日本は東日本大震災時の台湾からの援助、そして昨年のマスク提供にずっと感謝していて、この恩はもちろん心に留めている。必ず力を尽くし、早急に台湾へのワクチン提供を実現させる」というものだった。
 菅義偉政権の重要メンバーの見解や役割についても駐日代表処を通じて即座に把握した。首相官邸や各省庁の官僚が人道支援や恩返しの気持ちから、残業をしてまで短時間でこの困難な任務を達成しようとしていたことは、台湾側を温かい気持ちにさせた。
 中国外務省の趙立堅報道官は先月下旬、この計画について「目的は達成できない」と台湾側をけん制したが、日本国内で台湾を応援する声は高まり、国会議員や大臣までもが台湾を支持する立場を相次いで表明した。蔡政権は「ワクチンの乱」に陥りながらも「内密」を最高原則として、3日夜にNHKの関連報道が出てもなお、総統府も中央感染症指揮センターも「航空機に載せられるまでは事実関係を認めない」という立場を堅持し、口を閉ざしたままだった。このワクチンを無事に台湾に到着させることが最も重要という考えで一致していた。
▽ 日本、あるだけのアストラゼネカ製ワクチンを台湾に
 今回日本から届いたワクチンはアストラゼネカ製124万回分。これは日本が現時点で保有しているアストラゼネカ製ワクチンの全数だったとみられている。安全保障部門の高官によれば、ある日本側の関係者からは「現時点ではこれだけしかなく、申し訳ない」との言葉をかけられたという。
 この高官は、今回の交渉の過程において、日本側の温かさに台湾は深く感動し、深く感謝していると話した。
(溫貴香/編集:名切千絵)
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■親中派のマスコミによる日台友好の進展に対する妨害を意図する報道記事には、今後とも十分に留意が必要です。

【群馬県台湾総会書記からの報告】

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