市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

【一太知事の独善】「安倍、竹中の次はお前だな」Twitter投稿に被害届を出した知事の思惑と今後の影響

2022-09-26 23:25:11 | オンブズマン活動
群馬県職員が一太知事に通報して、一太知事が群馬県警に被害届を出した発端になったTwitter投稿

■2022年7月27日に地元紙などが、山本一太知事に対する脅迫事件で、同26日に県民が逮捕されたと報じました。まずは、メディアの報道内容の趣旨を見てみましょう。

**********上毛新聞2022年7月27日(水)18:27
「安倍、竹中の次はお前だな」 知事を脅迫した疑いで県内の男を逮捕 群馬県警前橋署

群馬県知事に危害を加えるかのような内容をツイッターに書き込んだ男が逮捕された
 山本一太群馬県知事に危害を加えるような内容をツイッターに書き込んだとして、群馬県警捜査1課と前橋署などは26日、脅迫の疑いで、県内の男性を逮捕した。
 逮捕容疑は8日午後5時20分ごろ、ツイッター上の群馬県公式アカウントの投稿に対して「安倍、竹中の次はお前だな、県税私的流用腐れ一太」と書き込み、山本知事に閲覧させて脅迫した疑い。
 県警によると、「投稿したことは間違いないが、何かしてやろうという意図はなかった」という趣旨の供述をして犯意を否認している。県職員が9日に気付き、同署に届け出た。

**********読売新聞2022年07月28日10:54
ツイッターに「安倍・竹中の次は、お前だな」…群馬知事へ殺害予告男を逮捕
 群馬県の山本一太知事(64)を脅迫したとして、県警は26日、県内の男性を脅迫容疑で逮捕した。

群馬県警察本部↑

山本一太・群馬県知事
 発表によると、男性は8日夕、ツイッターの県公式アカウントの投稿に対し「安倍、竹中の次はお前だな、県税私的流用腐れ一太」と送信し、山本知事を脅迫した疑い。調べに対し、「投稿したことは間違いないが、何かしてやろうという意図はなかった」と供述している。
**********

■この報道を見て、当会としていくつかの疑問が生じました。それらを列挙してみます。

【疑問その1】投稿メッセージははたして脅迫なのか
 群馬県公式アカウントのツイッターに投稿されたという「安倍、竹中の次はお前だな」という文章には、「殺す」「殴る」「放火する」「爆弾をしかける」「一文無しにしてやる」など、具体的な脅迫行為が記されていません。とすると、この投稿を見た県職員が、一太知事に報告した際、知事は脅迫されたと感じたことになります。
 しかし、例え知事は自身のブログで「『死ね』などの投稿や批判的な投稿が寄せられた場合は、ブロックする」と言っており、なぜこの投稿文を目にして脅迫を感じたのか、矛盾を感じます。

【疑問その2】被害届は誰が出したのか
 報道によると、7月8日午後5時20分ごろこのメッセージが県公式アカウントのツイッターに投稿されていることに「県職員が9日に気付き、同署に届け出た」とあります。当会のこれまでの経験では、警察は当事者の被害届でないと受理しないため、その場合、一太知事が被害者として届けたことになります。
 群馬県がHPで公表している「群馬県Twitterアカウント運用方針について」(本件記事末尾参照)は、「群馬県知事戦略部メディアプロモーション課及びG-SNSチームが運用する」としており、この部署の職員が今回の投稿に気付き、知事に報告したものと想定できます。
 しかし、「当アカウントへ宛てた質問等への回答は行いません」「当アカウントに対し、公序良俗に反する返信やダイレクトメッセージ等を繰り返し行うアカウントや、その他群馬県が不適切と判断したアカウントについては、予告なくブロックする場合があります」としていることから、投稿者を含む閲覧者に予告なく、知事が今回の投稿を見て脅迫と見なし、警察に被害届を出すことは、過剰反応と言えるのではないでしょうか。

【疑問その3】投稿者の言い分が報じられないのはなぜか
 メディアでは、県警からの取材情報として、投稿者が「投稿したことは間違いないが、何かしてやろうという意図はなかった」という趣旨の供述をして犯意を否認している」と報じられていますが、投稿者本人から直接言い分を聞いていません。警察からの発表情報が正しいとは限りませんので、果たして公正な報道姿勢と言えるのでしょうか。

■一太知事と言えば、ちょうど1年前に同じくツイッターに自らのことを「犯罪者」「詐欺師」呼ばわりした投稿者を、誹謗中傷による名誉棄損だとして、発信者を特定するための情報開示を求める裁判を起こし、発信者を特定して謝罪させた事件が思い起こされます。

**********産経新聞2021年9月9日21:30
ツイッターに「犯罪者、詐欺師」誹謗中傷 群馬・山本知事が発信者特定 謝罪受ける

山本一太・群馬県知事(柳原一哉撮影)
 群馬県の山本一太知事は9日、自身の短文投稿サイト「ツイッター」に「犯罪者の一人」「詐欺師」などの誹謗(ひぼう)中傷のリプライ(返信)を多数寄せた投稿者を特定し、弁護士を通じ謝罪を受けたと明らかにした。山本知事は損害賠償は求めないという。
 投稿は「ブログで私腹を肥やしている」「賄賂や不正献金のオンパレード」などいずれも根拠がない内容。昨年の春から夏にかけ頻繁に発信され、知事がアクセスを制限する「ブロック」をしてもアカウントを替えて投稿されたという。
 山本知事は看過できないとして、昨年7月にプロバイダー責任制限法に基づいて発信者情報開示の仮処分を東京地裁に申し立てるなどして発信者を特定。今年5月に謝罪を求め、書面で謝罪を受けたという。
 山本知事は手続きに1年近く要したことを踏まえ「簡素化が必要だ」と指摘。県が全国に先駆けて制定した「インターネット上の誹謗中傷等の被害者支援等に関する条例」を生かし、ネットリテラシー(情報判断力)の向上を図っていくとしている。
**********

 一太知事本人も、自らのブログで顛末を公表しています。

**********山本一太ブログ「気分はいつでも直滑降」2021年09月13日10:53:09
知事のSNS誹謗中傷裁判:②〜名誉毀損が認められるまでの煩雑かつ長期間に渡る裁判プロセスとは?!
2021年9月13日
 午前7時。眠い目をこすりながらのブログ。昨晩は早めに運動を済ませた。・・・(中略)・・・。
 今回の裁判では、名誉毀損が認められ、発信者の情報が開示された。が、この人物の名前や職業を公開したり、損害賠償請求を行うことまでは考えていない。先ず、そのことを明確にしておく。
 これまでの経緯を少し細かく説明したい。昨年の春頃から、twitterの特定のアカウントからのリプライで、知事である自分に対して、看過出来ない内容の誹謗中傷が頻繁に行われるようになっていた。具体的には、「犯罪者の1人」「本当に腐っていて大馬鹿な人」「本当に小物」「哀れ」「根っからの馬鹿」「馬鹿丸出し」「詐欺師」「発言は嘘ばかり」「癒着」「賄賂や不正献金のオンパレード」といった表現のツイートだ。
 これらの発信は、事実無根の内容か、又は意見や論評の域を超えた人格攻撃そのものだと感じた。何らかの対応を取る必要があると考え、昨年6月頃から弁護士と相談を始めた。ブログの末尾に添付したスライドに、投稿者特定までの一連の流れを整理してある。
 最初に分かったのは、プロバイダのアクセスログ保存期間が3か月から6か月程度とされているため、迅速に対応しなければならないということ。このため、昨年7月に、東京地方裁判所に、「Twitter社に対して発信者情報の開示を求める」申し立てを行った。
 その結果、2ヶ月後の9月に、Twitter社に対して仮処分命令が出され、10月上旬には発信者情報が開示された。これにより、ソフトバンク社の端末からの書き込みであることが判明した。
 さっそく、開示のその日にログ保存の仮処分を申し立てた。アクセスログの保存期間が過ぎてしまったら困るからだ。すると、同月の(10月)下旬にソフトバンク社から任意でログを保存する旨の回答があった。その時点で、仮処分の申立ては、取り下げることとした。
 その2ヶ月後の同年(昨年)12月に、ソフトバンク社に対する発信者情報の開示訴訟を東京地方裁判所に提起した。その結果、今年の4月になって、やっと「発信者情報(氏名・住所・メールアドレス・電話番号)を開示せよ」との判決が出された。
 判決では、リプライの内容について、「社会通念上許される限度を超えた侮辱行為に当たる」として、名誉毀損が認められた。この判決に従い、翌月の5月に、ソフトバンク社から発信者情報が開示された。
 こうした流れを踏まえ、問題のA氏と、弁護士を通じてやり取りした。A氏本人に、「なぜ誹謗中傷するような書き込みを続けたのか?」「どうしてあのような表現になったのか?」を確認すると同時に、知事への謝罪を求めた。
 6月に入り、A氏から返信があった。そこには、「知事のツイッターやブログの内容に関して不満を持ち、道義的に度を超した内容を書き込んだり、感情的な発信となってしまった。今後、意見表明する際には、法とマナーを遵守する」と書かれていた。
 正直言って、この説明に100%、納得したわけではない。が、本人からの謝罪もあったため、今回、損害賠償請求は行わないこととした。
 さあ、そろそろ仕事(公務)を始めないと。この続きは「その3」で。



 

**********

■この一連の体験が今回の過剰とも思える対応に結びついていると想像するに難くありません。

 そうした中、当会役員のもとに、投稿者のかたからコンタクトがあり、先日、9月17日の当会の10月例会に参加を頂きました。以下は本人から聴取した内容をそのまま掲載するものです。

*****投稿者による事件の顛末の報告*****
 私は掲題事件の犯人として逮捕、起訴された者です。以前から山本一太知事の政治姿勢に問題を投げかけていました。
 掲題事件の当事者として、事実をありのままに告白したく、ぜひオンブズマンの皆さんにお話しようと決意し、例会に参加希望をお願いしたところ、こころよく受け入れていただき感謝します。また、この機会に、マスコミ発表には書かれていない山本知事の実態も併せて告発します。
 もしかしたら、オンブズマンの皆さんの方が更に多くの情報をお持ちかもしれませんが・・・。

■1 事件に至る背景

 参議院議員だった当時、山本一太氏は、群馬の自動車利用実態・所有率等を十分理解していると思っていましたが、2008年福田総理の時に、いわゆる「ガソリン国会」において廃止になった暫定税率の強行復活に賛成しました。
 
 これはご存じのとおり、大半の国民も復活に反対していたものです。
(当会注:日本のガソリン価格の約半分は税金。本来のガソリン税(本則税率)は1リットル当たり28.70円で、これに暫定税率25.1円が加わり、トータル53.8円がガソリン税となる。これに石油税2.8円が加算され、さらに消費税10%の二重課税がかかる。ガソリン税などの石油諸税は、長期にわたり道路特定財源として道路を作り続ける原資となっていた。暫定税率は2008年3月末までに一旦現在は廃止されたものの、直後のガソリン国会で福田康夫内閣と衆議院で再議決され、再び暫定税率が復活し、2008年5月1日からガソリン1リットルあたり53.8円と再増税になっている)
 
 また軽自動車税の増税にも賛成し、県民の多くが乗っている軽自動車の税負担を増やしました。
(当会注:平成26年税制改革で、平成27年4月から軽自動車税について値上げが決定。なお、今年4月から「経年車重課」制度として、ガソリン車に限り、最初の新規検査(≒ナンバーがついたとき)から13年を経過したクルマについて、自動車税率を上乗せ。乗用車では、登録車の場合約15%、軽自動車では約20%増税。具体的には、登録車の1リッター以下のクルマであれば本来なら2万9500円のところが3万3900円になり、1リッター超1.5リッター以下で3万4500円が3万9600円となり、1.5リッター超2リッター以下では3万9500円が4万5400円となる。また、軽自動車の場合は1万800円が1万2900円になる)

 こうした一連の、民意を無視した言動により、私は山本議員への信用を完全に無くしました。

 その後、山本氏は2019年に、突如として参議院議員を辞めて群馬県知事に立候補して当選しましたが、当選後の県政について、どうにも納得できないことも多く目につきます。私の気付いたことをいくつか挙げてみます。

○2020年8月ごろ
 コロナ騒ぎになった頃、県民には外出自粛・リモートワークを要請しておきながら自らは県のサッカーチームの応援に出かけたり、リモートで済む様な都内での打ち合わせに出かけて行ったり、挙げ句県内の零細飲食店を脅すような写真(下写真)を載せてみたりと、ひとりよがりな事を行っていました。

2020年8月7日知事ブログ「気分はいつもで直滑降」より

○2021年2月ごろ
 群馬と栃木の県境で発生した山火事の時、県はその事に関する知事の対応をツィッターにはほとんど書かず、無関係なことばかり書いていました。

○2020年4月24日~現在進行中
 彼が作成しているYouTube動画について、県税を使っているのにも関わらず動画の時間の半分は県政とは全く無関係な芸能人やスポーツ選手等を出演させたりしています。当然、出演料やスタッフ人件費、スタジオの光熱費等に県税を流用している可能性が指摘されます。つまりは県税の私的流用に近い事を平然と、現在もなお、やっているわけです。
(当会注:投稿者のこの指摘は、県庁最上階の動画スタジオ設置を巡る無駄遣いで、TBS「噂の東京マガジン」でも取りざたされた通り、当会の考えと共通しています)

○2021年ころより顕著に
 知事自身もツイッターアカウントを持っており、県政についての事をツイートしていますが、そこに苦情・意見をリプライすると、その直後に必ずブロックされてしまいます。次の写真をご覧ください。
 
(当会注:山本一太知事は、このブロックについて、自身のブログで以下の説明をしています。
**********
Twitterでのブロックの基準〜デマや口汚い言葉、憶測をもとにした自分や第三者への誹謗中傷。
2020-09-10 23:51:34
テーマ:ブログ
2020年9月10日:パート3
 ・・・(前略)・・・
追伸:少し前の記者会見で、ある記者から、「知事のツイッターですが、どんな基準でブロックをかけているんですか?」と聞かれた。この質問自体にちょっと驚いたが、いい機会だ。念のために、説明しておく。
 ブロックするのは、(大きく言って)次の2つの場合だ。
(1)「ブログで小遣い稼ぎ」「○○から賄賂をもらっている」「不正のオンパレード」などのデマを書き込んでいるケース。
(2)「バカ」「犯罪者」「死ね」(4ね、氏ね・・)などの汚い言葉や、憶測をもとに私自身や第三者を誹謗中傷しているケース。)


 もし苦情を書かれるのが嫌なのであれば、リプライを受け付けない設定にすればいいのです。発信専用のアカウントとすれば良いだけです。その方がよほど「公平」です。

 自分にとって嫌な意見は踏みつぶし、心地よい意見だけきく。これは河野太郎氏同様、公人のやることでしょうか。私だけでなく、他にも同じ事をされた人が多数います。もちろん私は納税者であり有権者です。

 細かい事は他にも多々ありますが、概ねこれらが山本知事に対して不信感を募らせていった原因・背景です。

■2 今回の事件の端緒
 前記の背景を基に、私がこれまで山本一太県政について意見を述べようとしてきた経緯とその結果を報告します。

 私は、何度かツィッターのアカウントを新規に取り直し、そこから何度か県政に対する意見を書きましたが、やはりその度にブロックされました。

 県のホームページからも同様に意見を送りましたが、県からも本人からも、何の回答も反応もなくすべて無視されました。

 私が山本知事の事務所に問い合わせてもやはり無視されました。

 以上のように、私は、どうしてもこれらのことについての回答が欲しくて、関係各所に問い合わせを行ったのですが、「いまだに」回答が貰えていません。形式としては、直接メール等で回答を貰うなり、あるいはせめて県のホームページに県民からの意見として載せてもらうなり、私としては、どんな方法でも知事が県民からの意見に耳を傾けて、関心をいただいている、という対応を示してもらえれば、それでよかったのです。
(当会注:当会関係者も、オンブズマンとして一太知事に公開質問やら申入書やら、いろいろと文書で問い合わせをしてきました。しかし、一向に回答が得られていません。したがって、投稿者の指摘は、決して誤りではありません)

■3 事件の本当の真実
 新聞等のメディアには、私が単に脅しの様なツィート(リプライ)を書き、それを「脅迫」として知事(もしくは群馬県)が被害届を出した、とのみ書かれていました。

 もちろんそこには、私からの弁明などの説明が全く記載されておらず、警察からの部分的な発表記事のため、読んだ人には私だけが悪者になってしまっています。

 私は単に、上記■1のようなことをなぜ行うのか、知事からその理由の回答が欲しかったため、その日偶然発生した故安倍総理銃撃事件をヒントに、ブラックジョークとしてあの様なリプライを書きました。

 そうすれば、無視せずに何かしらの反応を見せてくると考えたからです。

 ほとんどの報道等では、リプライの前半部分の「脅し」と取られるところを重要視していますが、私の真意・本心は、むしろあのリプライの後半部分「県税私的流用」にありました。

 もちろん記事にもあった通り、私としては、知事に対して直接的な危害を加えるつもりは一切ありませんでした。実際、警察による家宅捜索が入った時点で、私自身、そのリプライのことは完全に忘れていました。

 もし何か県や知事から反応があれば、それに呼応して、上記■1に書いた内容の質問を再び送るつもりでした。

 しかし後から考えれば、あのリプライの前半部分は、タイミング的に、受け取りようによっては、確かに行き過ぎた文言であり、私は警察や検察の取り調べにおいても、その点は素直に認めて反省しました。

 ところが私は、知事からの「脅迫」を罰条とする被害届のみならず、その後「威力業務妨害」という追加の罰条の被害届を受けました。しかし、それは筋違いではないでしょうか。安倍首相に対するあのような事件があったことで、本当に知事自ら万一のことを考えたのであれば、自らそういった警護などを増やすなどしてしかるべきであろうに、それまで私に責任をなすりつけてきました。これは本当に心外です。

 最終的に検事からの説明では、「初犯でもあり、当事者(私)自身も深く反省している態度が認められるのと、事件としてもあまり大きくないこと、また今後二度と同様な事をしないと確約し、アカウントも削除するとしている」という理由で、一般的には勾留20日、かつ正式裁判にて執行猶予判決になる可能性がありましたが、勾留10日の罰金刑(実質減刑)という判断となりました。

 今回逮捕・勾留に至った理由は、「ネット関係の犯罪のため、釈放した場合に捜査完了までの期間にツィートを削除するなどのいわゆる「証拠隠滅」の恐れがあったため」との事でした。

 このような判断を受けましたが、本来の目的であった上記■1と■2に対する回答はいまだにどこからも貰えていません。

 逮捕勾留され供述調書に書いて貰ったにもかかわらずそれが残念でならないのです。

 特に県税を使用した県政と無関係な動画作成や納税者ブロックにはどうにも納得ができないのです。

 私以外にも、知事からの意見を期待して投稿しても、それが意に沿わなかったり、気に入らなかったりすると、批判的だと見なされるのか、ブロックされてしまうことに戸惑いを感じている人は決して少なくありません。知事としては耳ざわりのよい意見のみならず、耳の痛い意見にも耳を傾ける度量が、公人として、また首長として、当然求められる資質のはずです。

 ところが、納税者が納得できる説明を全くしようとせず、私の場合、あの一文だけで、知事は脅迫されたとばかりに被害届を警察に提出し(実際にはとりまきの県職員が代行したかもしれませんが)、結果的に、知事の政策について関心を抱いている者に、ここまで苦しく辛い思いをさせたことになります。果たして、それが知事の正しい政策の進め方なのでしょうか。

 逮捕・勾留・失職、この辛さは経験した者でないと分からないことでしょう。

 また知事は、1年前にも同じようにツイッターに投稿した県民にブロックし続け、それでもしつこく投稿したら、裁判までして発信者を突き止め、名誉棄損による損害賠償をちらつかせて、謝罪をもとめて、実際にそれを実行しました。そうした県知事と思えない度量の小ささから発せられするのでしょうか、「耳障りのよくない意見をしつこく投稿すると、同じ目に遭わせるぞ」と言わんばかりに、見せしめとして、自由な発言を封じる雰囲気を望んでいるとも受け取れます。そうなると、今後も私と同じような目に遭う県民が出るかもしれないのです。

 来年県知事選挙がありますが、山本氏も再出馬するようです。その前に、こういった事を平然と行っているという「事実」を広く県民の皆様に知って貰いたいとつくづく思います。

 事件後の会見で、知事本人は「あのような誹謗中傷は絶対に許さない」などと語っていたようですが、それ以前に首長として、自身がやっている行動を振り返り、反省すべきところは素直に反省をして欲しいものです。

 私は再度、強く弁明いたします。

 私は知事に対して暴力等の危害を加えるためにあのような事を書いたのではなく、あくまでも、納税者県民のひとりとして、県政への問い合わせをしようとしても、ツイッターをブロックする行為を続ける知事に対して、何とかして回答して欲しいという一念で、あのようなブラックユーモアで注目してもらおうと投稿を行っただけです。他意は全くありません。

 逆に言えば、知事から、今までに何かしらの回答を貰えていたら、今回のようなことをする必要は無かったのです。

 もちろん、迂闊にあのようなリプライを書いた私も、浅はかでしたが、何度意見や質問を送っても無視して全く回答をせず、ツイッターもブログもブロックする県や知事にも責任の一端はあると考えています。

 納税者県民のひとりである私からの上記■1と■2の要望等を全く聞かず、いきなり被害届を警察に出して、逮捕し、勾留させたことは、甚だ遺憾であり、自由な発言を封じる土壌を拡げることになりかねません。

 私は、全く無関係な第三者から、ツィッターや掲示板等で私の実名や住所、職業、年齢を拡散され、それを元にいまだに心無い誹謗中傷や侮辱を受けていて精神的にも参っています。また再就職にも影響が出かねない状況が続いています。

 市民オンブズマン群馬の皆さんが、もし少しでも今回の一件について、追及し、調査していただけるのであれば、ぜひとも上記の顛末について、第三者として事実関係を調べたうえで、ひろく納税者県民の皆さんにも公表して欲しいです。

 このままでは私ひとりが、単なる浅はかなおっさんとして、幕引きをされてしまうでしょうし、知事に物申す県民にとって恒常的な脅威となってしまうことすら懸念されます。

 現にツィッター上では、背景や理由を知らない人々によってそのような反応が多数書かれています。

 私にもっと資力があり、知事のように公費で弁護士が頼めるような権限があれば、むしろ山本知事と群馬県を、県民への説明責任放棄による知る権利の剝奪など、公務員職権乱用罪?的なことで告訴したいところです。そうすれば、双方痛み分けの「喧嘩両成敗」とすることができます。しかし、裁判に訴えても、裁判所は行政側に味方するでしょうし、警察や検察も、知事が出した被害届は直ちに受理しましたが、一般県民が出した被害届は決して受理したがらないことでしょう。

 私は、山本氏が、来年の知事選に出馬しても当選してほしくありません。最近の知事の言動は明らかに感情むき出しでみっともなく、度量の小ささが全体的に漏れ出てくる印象を強く感じます。

 どうかこの事実をご承知の上、お集りのオンブズマンの皆様には、何かのご関心やご示唆をいただけるとありがたいです。よろしくお願いします。

 もし必要であれば、いつでも直接、皆さんからの意見聴取にも対応する所存です。

 何しろこの事件によって失職してしまい、次の仕事を見つけようと日々奮闘中ですが、苦戦しております。

 30万円と言う脅迫罪での「最高罰金」(当会注:投稿者によると、最終的には、脅迫罪に加えて威力業務妨害罪の2つの罪で起訴されたということで、併合罪として30万円の罰金が検事により決められたのか、どちらなのか定かでない)に加え、裁判費用についても私への負担となる旨、前橋簡裁から通知されました。

 収入が少ない非正規の私には、経済的にもかなり厳しい状況に追い込まれています。しかし、知事あるいは群馬県は県民広場のモニュメントを巡り1億3千万円もの公金を平気で無駄に使おうとしています。このようなことをしておきながら、私のような貧乏人を知事は平然と容赦なくいじめてきます。

 しかし、あまりにも行政側から一方的な制裁を受けたまま、この事件に幕引きされることはどうしても納得できません。行政の不当な権限の行使により、同じ目に逢う県民がこれ以上出ないように、私にできることはなんでもするつもりですので・・・。
**********

 投稿者本人から実体験を赤裸々に語っていただいたあと、その内容をじっくりと聞いていた当会副代表は、次のコメントを発しました。

「警察は、この事件の被害届が県知事から出されて、捜査を始めた当初から逮捕はおそらく決まっていたと思います。ツイッターへの書き込み(ツイート)が7月8日で、逮捕が7月26日夜だったということから、用意周到に逮捕の準備を進めていたに違いありません。なぜなら、警察庁は今年4月1日にサイバー警察局を作ったからです(当会注:関連記事末尾参照)。今回の事件は、警察として、さっそく新設のサイバー警察局の手柄にもなり、群馬県でも4月1日に鳴り物入りでサイバーセンターを発足させたことから(当会注:関連記事末尾参照)、手柄を上げなくては、ということで、それとの関連が見て取れます。」

「サイバー警察局は、今年の4月1日から、警察庁直轄の警察法を改正して発足させたもので、多くの国民が懸念していました。警察庁というのは、捜査機関ではなく指導機関なので、警察庁が直々に捜査局を持ってはいけない、ということで、反対の声が多く出されました。ところが、国会では山本太郎らが質問しただけで(当会注:https://www.youtube.com/watch?v=TpBPr9vxE64)、他は皆OKで通ってしまいました。サイバー警察局は、東京の警察庁の中ではなく、埼玉県所沢の関東管区警察局の中で作りました。その捜査範囲は警察庁管轄なので全国に及びます。その中で群馬県警がとりわけ張り切っていたなかで、今回の事件が目を付けられたことになります」

■投稿者のかたから生々しい体験報告をうかがった当会は、あらためて、冒頭の疑問につきあたりました。群馬県の公式Twitterアカウントに投稿した際、本来であればブロックされるはずの内容なわけですから、県職員はその投稿元のアカウントをまずブロックすることを優先することになります。

 それなのに、県職員が今回の「安部、竹中の次はお前だな」の投稿メッセージを目ざとく見つけ、一太知事にご注進申し上げ、一太知事が自らの名義で被害届を県警に提出したということがうかがえます。

 そうすると、批判的な投稿を本来無視しておきながら、たまたま今回の「安部、竹中の次はお前だな」とするリプライの書き込みに目を付けて、脅迫文だと決めつけて、今回の事態を招いたことになります。あきらかに、群馬県の公式Twitterアカウントにはトラップ(罠)が仕掛けられていたのも同然と言えます。

 たまたま、その罠にはまった投稿者を見せしめとすべく、一太知事は警察に被害届を出たのでしょう。そして警察も、脅迫は親告罪ではないことから、警察が自ら判断して犯罪性の程度を決めるわけで、本来であれば慎重に吟味して判断しなければならないところ、一太知事から出された被害届ということで、なにはともあれ逮捕に踏み切らざるを得ないと判断し、さっさと検察に送検したという事情が、ひしひしと伝わってきます。

■これまでも、今も、そしてこれからも、行政に対して物申すことを目的に活動している当会として、今回ご報告いただいた事件当事者の方が経験したことは、決して他人事ではありません。なぜなら、税金の無駄遣いに敏感な多くの一般の納税者県民が行政に物申したら、いつ何時、見せしめの仕打ちを受けるかもしれないからです。

 なぜ、知事や群馬県は、県民からの耳の痛い意見にブロックをかけて背を向けたり、無視したりするばかりか、発信者個人に対しても攻撃をするようになったのでしょうか。このような県民の知る権利をないがしろにする知事や行政の行為が果たして適切であったのかどうか、疑問点や課題をあきらかにすべく、当会としては公開質問状などを通じて、知事や群馬県に対して意見を求めていくべきと考えています。

 もちろん、これまでも当会として公開質問を知事や群馬県に対してなんども出したことがありますが、真摯に回答をしてもらったことは少ないように記憶しています。本当に県民の声を聴く姿勢があるのかどうか、公開質問を通じて確かめることも有益と考える次第です。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※参考情報
**********群馬県HP
https://www.pref.gunma.jp/07/b2100542.html
群馬県Twitterアカウント運用方針について
 群馬県では、インターネットを活用し、県政情報をより広く県内外に発信するため、ツイッターに群馬県公式アカウントを開設しています。
 なお、当アカウントの運用については、「群馬県Twitterアカウント運用方針」に基づき行います。
<アカウント情報>
 名前:群馬県
 ユーザー名:GunmaPref_koho
 URL:https://twitter.com/GunmaPref_koho (群馬県Twitter(外部リンク))
<群馬県Twitterアカウント運用方針>
1 目的
 本方針は、群馬県Twitterアカウント(@GunmaPref_koho)の運用に関する事項について定めたものです
2 基本方針
 @GunmaPref_kohoは、群馬県公式ホームページ(以下県ホームページ)等の情報をより広く発信し、多くの方にお知らせすることを目的とします。
3 運用方法
 @GunmaPref_kohoは、群馬県知事戦略部メディアプロモーション課及びG-SNSチームが以下のとおり運用することとします。
(1)主な発信情報
 次に上げるもののうち、県民の生活や群馬の魅力発信などに関する情報
   県ホームページの新着情報、注目情報
   県公式外部サイト等の新着情報
   知事の活動に関する情報
   県が広く周知すべきと判断した情報
(2)運用体制
 運用者はメディアプロモーション課職員及びG-SNSチームとします。
 運用管理責任者はメディアプロモーション課長とします。
 運用時間帯は、原則として、月曜日から金曜日までの8時30分から17時15分までとします(祝祭日及び年末年始を除く)。ただし、それ以外の時間にも必要に応じて情報を発信することがあります。
(3)他アカウントのフォロー等
 原則として、フォロー、リツイート、返信は行いませんが、国・地方公共団体又は公共性の高い機関のアカウントについて、必要に応じて実施することがあります。
 また、県が広く周知すべきと判断した情報について、リツイート等をすることがあります。
4 注意事項
 当アカウントへ宛てた質問等への回答は行いません。各ツイートで紹介している情報については、リンク先ページに記載のある部署へお問い合わせください。その他の群馬県へのお問い合わせ等は、県ホームページの「ご意見・ご質問」をご利用ください。
 当アカウントに対し、公序良俗に反する返信やダイレクトメッセージ等を繰り返し行うアカウントや、その他群馬県が不適切と判断したアカウントについては、予告なくブロックする場合があります。
5 免責事項
 群馬県は、利用者が当アカウントの投稿内容を用いて行う一切の行為及びそれに関連して生じた一切のトラブル又は損害について、何ら責任を負うものではありません。
6 運用方針の周知・変更等
 本方針の内容は、県ホームページに掲載し、周知します。また、本方針は必要に応じて予告なく変更することがあります。

**********東京新聞2022年4月1日06:00
4月発足「サイバー警察局」に学者ら懸念の声 警察庁初の「直接捜査」に「戦後警察の骨格変わる」 

警察庁が入る中央合同庁舎第2号館=東京・霞が関で
 深刻化するサイバー犯罪に対応するため、警察庁に4月1日、「サイバー警察局」が発足する。「重大サイバー事案」について直接捜査する「サイバー特別捜査隊」も設置。デジタル社会の進展でサイバー犯罪のリスクが増す中、高度なサイバー攻撃に対応し、海外の機関と連携することを目指す。
 皇宮警察本部を除き、国の機関である警察庁が直接捜査を行うのは初めて。戦前の国家警察への批判もあって、戦後は犯罪捜査を都道府県警が担ってきており、警察制度の大きな転換点となる。
 サイバー事案にはこれまで、生活安全局や警備局、情報通信局に分かれて対応してきたが、サイバー警察局(約240人体制)に業務を集約し、捜査指導や解析に当たる。情報通信局はなくし、警察通信の整備などを担ってきた部署は長官官房に移し、技術政策を統括する。
 特別捜査隊(約200人体制)は関東管区警察局に設置するが、全国を管轄する。国や地方自治体、重要インフラに重大な支障が生じたり、海外のサイバー攻撃集団が関与したりした場合を「重大サイバー事案」とし、捜査対象とする。国際共同捜査にも乗り出す。国の機関が捜査することを受け、国家公安委員会に苦情を申し出ることができる規定をつくった。
 警察庁によると、全国の警察が摘発したサイバー犯罪は2021年に初めて1万件を超え、身代金要求型のコンピューターウイルス「ランサムウエア」による被害などが深刻化している。
 一方、足立昌勝・関東学院大名誉教授ら刑法や憲法学の学者と弁護士の有志113人は30日、サイバー警察局・サイバー特別捜査隊の創設に反対する共同声明を発表。「戦後警察の骨格であった自治体警察を中央集権的な国家警察に変えるとともに、海外での警察活動を容認するものであり、絶対に許されない」と批判した。

**********群馬テレビニュース2022年4月1日18:37
群馬県警「サイバーセンター」など4つの組織を新設 サイバー捜査一元化は全国初

 群馬県警は、年々増加するインターネットなどを悪用したサイバー犯罪の捜査を強化するため新たに「サイバーセンター」などを設置しました。
 新たに設置されたのは、サイバーセンターや刑事部組織犯罪対策統括官など4つの組織です。県警本部で行われた合同発足式には、千代延晃平本部長をはじめ、新しい組織に配属された職員など11人が出席しました。
 新設されたうちのひとつ、サイバーセンターは、多発するサイバー犯罪に対応するためこれまでの関連部署をまとめたものです。サイバー捜査などを一元化した組織は、全国でも初めてです。
 県警によりますと、去年のサイバー犯罪の相談件数は3411件で、3年連続で過去最多を更新しているということです。センター長を新たに置き、30人体制で、サイバー犯罪の捜査をすることで、県民が安心して利用できるサイバー空間の実現を目指します。
 千代延本部長は「それぞれの使命を深く認識し、安全・安心を誇れる群馬県の実現に向け全力を尽くしてほしい」と訓示しました。県警では、新たに発足した組織により、さらなる体制の強化を図ります。
**********

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公園市有地をタダで神社に利用させて住民監査で勧告を受けても最小限しか対応しない前橋市の無策行政

2022-09-21 10:15:21 | 前橋市の行政問題

前橋公園に隣接する前橋東照宮の周辺整備状況図。住民訴訟を契機に著しい改善が見られる

■県庁と裁判所の近くにある前橋公園は、群馬県庁舎、前橋市庁舎、地方裁判所の近くに位置しており、江戸時代前橋藩の城内の一角を占めています。春の桜のシーズンには花見客でにぎわうこの公園で、とんでもないことが起きていました。

 今回ご紹介する前橋市を巡る行政事件では、一級建築士の資格をお持ちの原告住民が弁護士に頼らず本人訴訟のかたちで原告として前橋市を相手取り住民訴訟を提起しました。当会は、たまたま4月22日(金)午前10時30分に当会が群馬県知事山本一太を相手取り住民訴訟を係争な行方不明建設残土量に係る損害賠償請求事件(通称「渋川残土問題事件」。事件番号:令和元年(行ウ)第13号)の第14回口頭弁論のため、前橋地裁第21号法廷に出頭した際、この事件を知りました。

 なぜなら開廷票に、続いて午前11時から住民監査請求に対する措置対応不服請求事件(事件番号:令和3年(行ウ)第11号)として、前橋市民のかたが、前橋市長山本龍を相手取り、住民訴訟をしていることが記されていたからです。

*****21号法廷(本館)開廷表*****
令和4年4月22日 金曜日
●開始/終了/予定:10:30/11:00/弁論
○事件番号/事件名:令和元年(行ウ)第13号/行方不明建設残土量に係る損害賠償請求事件
○当事者:小川賢/群馬県知事山本一太
○代理人:―――/紺正行
○担当:民事第2部合議係 裁判長 杉山順一
             裁判官 兼田由貴
             裁判官 竹内 峻
             書記官 近藤亜由美

●開始/終了/予定:11:00/11:30/弁論
○事件番号/事件名:令和3年(行ウ)第11号/住民監査請求に対する措置対応不服請求事件
○当事者:■■■/前橋市長山本龍
○代理人:―――/紺正行
○担当:民事第2部合議係 裁判長 杉山順一
             裁判官 兼田由貴
             裁判官 竹内 峻
             書記官 近藤亜由美

●開始/終了/予定:11:30/12:00/弁論
○事件番号/事件名:令和3年(ワ)第98号/損害賠償請求事件
○当事者:平形真理/吾妻広域町村圏振興整備組合
○代理人:羽鳥正雄/田中善信
○担当:民事第2部合議係 裁判長 杉山順一
             裁判官 兼田由貴
             裁判官 竹内 峻
             書記官 近藤亜由美
●開始/終了/予定:13:10/17:00/弁論(本人及び証人尋問)
○事件番号/事件名:令和元年(ワ)第581号/必要費償還等請求事件
○当事者:株式会社上毛新聞TR/株式会社ヤマダホールディングス
○代理人:坂入高雄/高根和也
○担当:民事第2部合議係 裁判長 杉山順一
             裁判官 板野俊哉
             裁判官 竹内 峻
             書記官 近藤亜由美
**********

 さっそく当会の事件の審理が終わった後、当該事件を傍聴しました。裁判長は同じく杉山順一裁判長で、被告席にいるのも、当会が係争中の渋川残土問題の被告群馬県の訴訟代理人の紺正行弁護士が、引き続きで法廷内に陣取っています。

杉山裁判長「この件については第1回以降、弁論準備を4回行いましたので、そこでしていただいた主張それから書面提出については、当裁判所は把握しておりますので、弁論準備の結果を陳述するということでよろしいでしょうか?」

原告・被告「はい。」

杉山裁判長「で、前回確認させていただいたように、以上で双方に主張ないと言うことで判断してよろしいですね?」

原告・被告「はい。」

杉山裁判長「以上で弁論を終結いたします。判決言渡しは7月15日(金)、13時5分から、21号法廷でとさせていただきます。」

■弁論後、原告住民ご本人にヒヤリングを申し入れたところ、当会の活動についてもよくご存じでした。

 ヒヤリングに快く応じていただいた、この事件の原告で地元前橋市在住のかたは、かつて建築業界では官民を問わず、数々のプロジェクトに携わったことのある著名な方です。リタイヤ後も、大学の教壇に立って建築分野の人材育成に尽力し、それも定年になると自治会の仕事を手伝うようになり、地元自治会の副会長を務める中で、今回の不正に直面しました。原告住民によれば、「弁護士に相談しても、市を相手にやる事件の依頼は、皆断わられてしまった。私は、東京で仕事をしていたころ、設計盗作などの被害にあい著作権訴訟も手掛けたことがあったが、費用や事案が面倒なのは事実。弱ったなと思いつつ、仕方がないので本人訴訟でやろうと決めた」ということです。

 原告住民の説明によると、事件の舞台は、裁判所のすぐそばにある前橋公園で、裁判長には、歩いて2分なので、昼休みにでも足を運んでほしいと願ったが、一度も見に来られた様子が見えない、とのことです。

 この前橋公園の北側の一角に東照宮という神社があります。原告住民は、地元自治会の活動を通じて知ったのでしょう。市との境界線をはみ出して、神社の建物が建っていることがわかったので「これはまずいね」ということで、監査請求を前橋市長に一昨年10月頃提出しました。

■監査委員の監査結果によると、「これは市として分かっていることであり、毎年5年ごとに東照宮と覚書を交わして、市との間で了解していることである」としたうえで、「しかし、市との境界からはみ出している事実が確認できたので、この部分に対して、最小限の費用で貸し出すこととする」(注:下線部は当会追記)という勧告が記されていました。

 この監査結果を見た原告住民は、「最小限」という表現に違和感を抱き、「それは何なのか?」と疑問がわきました。なぜなら、前橋市住民として監査請求を出したのも「最小限の義務」を果たしたからです。この場合、「最小限」というのは、必要最小限という意味であり、決して、いい加減な結果を想定したわけではありません。

 そこで、必要最小限の情報として、原告住民は前橋市に「神社とは、どのような契約をしたのか?」と尋ねたのですが、前橋市は一向に教えてくれません。原告住民は、監査結果の勧告とそれに対する前橋市の対応が、自分が求めていたものとかけ離れていたため、不服事件ということで訴状提出に踏み切りました。監査請求に対して市が措置をとったものの、それが請求した者にとって不服であるということで、事件名を「監査請求措置対応不服事件」としました。

 なお後日分かったことですが、当該覚書には境界線を明確にするための垣根などをつくることも約束していたのです。監査では覚書の内容について明確にしていませんでした。

■この事件は、前橋市の市有地と東照宮の私有地との間の境がハッキリしていないことが、発端で起きました。それと同時に、東照宮が、境を超えて市の土地を私物化していました。この実態を調査した原告住民は、地元自治会の住民のみなさんに前橋公園と神社の境をきいてみたところ、あまりにもあやふやな認識に驚き、「実際に法律上はこうなっているよ」と説明すると、「それじゃあ、この生け垣はとっぱらってもらおう」と、住民訴訟の必要性に共感して、当初は原告住民に加えて多数の住民による連名で訴状を提出することも検討しました。

 ところが、不服事件は監査請求をした当人しか出せないことが判明し、やむなく原告住民一人で提訴に踏み切りました。

■前橋市は、東照宮と覚書や契約を交わしていましたが、このことについて、原告住民が市会議員に聞いても誰も何も知らないことが分かりました。山本龍市長ですら知らないため、もしかしたら、現場の前橋公園事務所と東照宮の間で勝手に契約などを結んでしまったのではないか、ということも想像できます。実際に、市会議員に聞いてみても、「ちっぽけな契約だから、目くじらを立てるまでもない」という認識のようです。

 しかし原告住民は、「これは市民にとっては大変な問題であり、例えば通常、市が管理する道路などでは、市の財産とみなされる。こういう市の財産を勝手に市の一部局の、しかも課長以下の係長クラスが、しかも市会議員に報告しないで内緒に進めていたと言うのはおかしいのではないか」と疑問を抱きました。

■前橋市役所と言えば、飲酒運転の常習犯や、不倫、文書偽造は日常茶飯事、果ては強制わいせつまでしでかした管理職や、ストーカー殺人で全国的に名をはせた職員など、ユニークな職員を何人も抱えていたことで知られています。原告住民は、この事件を巡り、被告前橋市が法廷で弁論するのを聞いているうちに、「前橋市行政は、最終弁論まで、市民の立場に全く立とうとしないまま、自分の都合のいい主張ばかり終始した。私は原告として被告に対し、近隣住民、自治会とか公園利用者の視点から訴えてきた。しかし、被告は市民に奉仕するべき立場と視点をないがしろにしている」と痛感させられました。

 原告住民は、被告の提出した準備書面において、「被告前橋市は、市民に奉仕するべき立場と視点が著しくかけている」と一貫して主張しました。そしてこれに対する前橋市からの反論もないまま、弁論準備が終わりました。弁論の形態としては、最初の第1回弁論は公開でしたが、以降の4回の弁論はすべて弁論準備として非公開で開かれました。その結果、上記のやり取りのように、第5回目となる4月22日の公開の場での弁論で結審したわけです。

■原告住民は、住民訴訟の弁論を指揮した裁判所に対しても疑問を感じる、と言います。弁論準備のなかで、裁判所から事務連絡で、たとえば「原告の主張は、たとえば会計に関わることではないのではないか?」と釈明を求めてきました。「どうも、裁判所は行政に忖度しているようだ」という疑問がずっと付きまといました。当会も長年にわたる住民訴訟の経験から、「そうなんです。だから(裁判所は)レフェリーではないんです」と感想を述べました。

 原告住民は、弁護士についても疑問を抱いています。知り合いの東京の弁護士に訴状の案を見せて聞いてみたところ、「これ負けるね」と言われました。原告住民は、それでも「負けても良いが記録が残れば」と、気を取り直して、住民訴訟に踏み切らなければと思いました。そしたら、裁判が進行するに伴い、被告前橋市は、ずるずると準備書面段階で、当初の主張を変えてきました。「原告の主張は取り入れたから、非難される根拠はない」と言いはじめたのでした。要するに、「お金(の問題)が済んだから、問題となる事象は存在しない」という論点なので、役所のいつものやりかたです。

 当会も「弁護士に法律的な解釈の相談を1時間5500円はらって相談するのはよいのですが、訴訟代理人として行政訴訟業務を委任するのに30万円を支払っても、弁護士は行政に忖度するので、必死になってやってくれません。だから本人訴訟を選択した貴殿の判断は正しいですよ」とコメントを差し上げました。

■原告住民は、前橋公園の地図(冒頭の写真参照)を示して、当会に以下の説明をしてくれました。

「ここにほら、さっき言った境界です。こっちが、市の土地。本来はね。ところが、こういうところに生け垣をこういうところに作ったりしたから、どうみてもこっち側がこの神社の土地に見えるんですよね。それはもう明らかにね。だってここに門まであるから。しかも鳥居が市の敷地に建っているから。そしたら、誰も指摘しなかった。だから私が『これはおかしい』と、弁論準備の段階で主張したんです。すると市は『じゃ、つい最近鳥居はもう撤去しましたから、だからあなたの指摘したところは根拠を失っていますよ』と言い始めたんです。市は『何か訴えられたのでそのとおりにしました。だから訴えはもうないですね』という言い分ですが、でも、そういう意味ではないですよね」

 当会は、「それは行政訴訟で、裁判所と弁護士が結託して、原告に必ずと言ってよいほど持ち出してくる定番の論理です。訴えの利益がないとか、訴訟資格はないとか、彼らの常とう手段です」とコメントしました。

 原告住民はさらに裁判で前橋市の主張についての疑問点を示しました。

「あと、こういうのが会計上にあたるか、ということ。市の言い分では、『東照宮の賃貸料を決めているのは、これは公共事業と公益事業と同じ、まあ、いわゆる利益追求ではないので安く貸し出す』というのですよ。実際に東照宮は、ここ(越境ゾーン)で喫茶店をやっている。だから事業として、公益事業かもしれないが神社付属の喫茶店であれば営利事業となるはず。これは営利事業の条件で貸し出すべきだと言っています。1.5%で貸し付けているが営利なので2.6%で算定すべきだと。こういう事業なのに、前橋市の課がやっているんです。このことも問題ですが、それよりも、これまで50年経っている状況なので、違法な建築物は壊させるべきです。しかも、耐震上問題のある建物なのに、それを東照宮が勝手に建ててしまい、境界線からはみ出ていたことが公になったため、東照宮が市に『だから(市有地を)貸してくれ』というのは、本末転倒ではないか、と原告として主張しました。」

「ところが市は『代々50年前からここはそういう条件で覚書が作っている』と弁明してきました。5年ごとに覚書を交わしているというが、口約束も同然。しかも市は『今度はあらためて覚書を作った』と言い始めたんです。『じゃあ、それを見せてくれ』と市に要請したら、市は今度『これを全部、令和7年になったら売る』と言ってきました。市は、東照宮とそういう覚書を交わしていることが判明しましたが、議会にも知らせないままで、市の財産を勝手に売るなど、到底考えられないことです。しかも、既に全部測量を済ませて売るための準備をしていました。裁判でそれがバレたから、もうストップになったんです。こういうことで最終的に、(公園内にあった)鳥居も生け垣も全部撤去されました。おかげで、今年の4月、市内外の皆さんは、桜見物でここを自由に楽しそうに歩いていました。その光景を私も観察していて、『ああこれで良かったな』と感慨を覚えました」

■原告住民は、マスコミに対しても不信感を募らせています。

「こういう住民訴訟を提起したら、最初に、上毛新聞の記者が取材に来ました。『あなたが提出した訴状を見せてほしい』というので、こちらは素直だから、すぐに見せました。その後も、裁判資料を求められるままに見せたが、その後、さっぱりフォロー記事を書いてくれない。むしろ市側に忖度しているのかも…」

 ちなみに上毛新聞は、2021年8月17日に『市の対応に不服 男性が住民訴訟 前橋東照宮巡り』と題して小さく記事を掲載しました。それ以前には、2021年1月21日にも『東照宮が半世紀無償利用 前橋の公園市有地 監査委が市に是正勧告』という記事を掲載しています。上毛新聞が行政側に軸足をおく報道をしがちなことは、当会もなんども経験しております。現場の記者の皆さんは、熱心に取材してくれるのですが、結果的にそれが紙面の掲載されない原因は、デスクとよばれる編集長が、バイアスのかかった編集判断をするためであることは、これまでの経験から当会も承知しています。

■原告住民は、8か月間の住民訴訟を振り返り、感慨深げに感想を述べておられました。

「だから、私はたぶんこの裁判では負けるとは思うが、負けても実を取れたからね。素晴らしい成果が上がったと思っています。なにしろここが、散策路として取り戻せたのだから。ぜひこのあと広々した公園の現場を見てきてください」

「それにしても、市の答弁書には呆れますね。原告の請求の趣旨に対して、『全面的に棄却する。訴訟費用は原告の負担とする』などと平然と記してきます。それについても、なぜ行政が反省もせず、根拠も示さず反論してくるのでしょうね。しかも我々の税金で、弁護士を雇って対抗してきます。それで訴訟して敗訴したら、かかった費用はまた払えというのでは、かないません。自分では多分負けると思っているので…」

 当会は原告住民の方に「住民として裁判に負けても、これまで何十回もやって一度も勝ったことがありませんが、住民訴訟で敗訴しても訴訟費用を請求されることはまずないので、安心してください」とお伝えしました。

■最後に原告住民の方がおっしゃったのは、次の見解でした。

「今回訴訟という手段をとらせてもらいましたが、裁判をしないと、こういう役所内部の書類が表に出てきません。裁判に踏み切ったからこそ、出てくるわけです。おかしなことに、情報公開請求だと絶対出てきません。これは、私にとっても初めての経験です」

 ということで、同じ経験を持つ当会としても、非常に共感に値するコメントです。結びとして原告住民が語ったのは次の感想です。

「でも7月15日の判決ではおそらく負けるとしても、当初はね、なんか原告の私の方を、軽視する感じだったんですよ。それが、だんだんやっていくうちに裁判所のほうも『なるほどなあ』と聞く耳を持ってきてくれたので、敗訴判決が言い渡されるでしょうが、どういう判決が出るのか楽しみです」

■たった一人で、しかも地元自治会の副会長として、その財産を守るという強い意志を持って、いい加減な前橋市行政を質そうとした原告住民の熱意と努力は、まさにオンブズマン活動のエッセンスを凝縮して体現した結果であり、今後とも、互いに必要に応じて連絡を取り合うことで同意しました。

 そして、ついに7月15日の判決日を迎えました。午後1時5分前に地裁に着き、玄関から入って2階の21号法廷に行くと、エレベーターロビーや廊下で大勢の関係者がたむろしていました。傍聴席にも結構大勢の人を見かけました。

 まもなく定刻の午後1時5分になり、杉山裁判長が陪席裁判官2名を連れて入廷してきました。全員起立して一礼し着席すると、近藤書記官が「令和3年行ウ第11号」と事件番号を読み上げました。そして、杉山裁判長が「それでは判決言渡しをいたします。主文のみでございます。1、本件訴えを却下する。2、訴訟費用は原告の負担とする」と言い終わるなり、法定を退出していきました。その間、わずか30秒足らずでした。

 原告住民に「この間はどうも」と挨拶をしました。原告住民は「だいたい、こうなるかなと思っていました」と判決の感想を述べました。続けて「でも実際は、勝訴したようなものです」とおっしゃいました。書記官から判決文の写しは3階で交付されると告げられたので、一緒に3階の民事第2部の窓口に向かいました。

 原告住民が、判決文の写しの交付を受けている間、エレベーターホールのベンチで待っていると、思いもかけず、原告住民の奥様から声をかけていただきました。筆者は思わず、自らの経験から「奥様の理解があったからこそ、ご主人はここまで裁判を続けることができたのだと思います」とコメントを述べました。奥様も「これ(住民訴訟)をやらなければ、今の公園整備は全然実現しなかったんですよ。おかげでだいぶ良くなりました。それと、裁判をやっていなければ、いろいろな資料は手に入りませんでした」と、ご主人と同じように住民訴訟の意義を理解しておられました。

 判決文はかなりの分量でしたので、後日コピーを電子ファイルでお送りいただくことにして、原告住民ご夫妻とお別れしました。

■7月26日に判決文を送っていただいたので、さっそく拝読しました。

*****7/15判決文*****
令和4年7月15日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和3年(行ウ)第11号 住民監査請求に対する措置対応不服請求事件
口頭弁論終結日 令和4年4月22日
          判         決
  前橋市大手町3丁目6番12号
       原       告     ■   ■       ■
  前橋市大手町2丁目12番1号
       被       告     前   橋   市   長
                     山   本       龍
       同訴訟代理人弁護士     紺       正   行
       同 指 定 代 理 人      狩   野       健
       同             石   原   則   之
       同             風   間   健   一
          主         文
        1 本件訴えを却下する。
        2 訴訟費用は原告の負担とする。
          事 実 及 び 理 由
第1 請求の趣旨及び原因
 1 本件訴えの請求及び原因は、別紙の訴状(写し)、令和3年6月4日付け回答書(写し)及び訴状訂正申立書(写し)に各記載のとおりであり、要するに、本件訴えは、前橋市が前橋公園の用地となっている土地(以下「本件公園用地」という。)を所有及び管理し、宗教法人東照宮(以下「前橋東照宮」という。)が本件公園用地に隣接する土地(前橋東照宮の境内地。以下「本件境内地」という。)を所有しているところ、前橋市の住民である原告が、前橋市の執行機関である被告を相手方として、①被告が、前橋市が前橋東照宮に対して本件公園用地の一部を賃貸する旨の契約(以下「本件賃貸借契約」という。)に係る契約書(以下「本件契約書」という。)及び前橋東照宮が前橋市から令和7年3月31日を期限として上記の一部の士地を買い取る旨の合意(以下「本件合意」という。)に係る覚書(以下「本件覚書」という。)の原告に対する開示を違法に怠っていると主張して、地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項3号の規定に基づき、当該怠る事実が違法であることの確認を求め(以下「本件訴え①」という。)、②前橋市が前橋東照宮との間で本件賃貸借契約及び本件合意を締結することは政教分離原則に違反し違法であると主張して、同項1号の規定に基づき、本件賃貸借契約及び本件合意の締結の差止めを求め(以下「本件訴え②」という。)、③前橋市が前橋東照宮との間で本件公園用地と本件境内地との境界と管理に閲する契約の締結を違法に怠っていると主張して、同項3号の規定に基づき、当該怠る事実が違法であることの確認を求め(以下「本件訴え③」という。)、④前橋市が本件境内地内に前橋公園を利用する者が車両で進入可能な園路があること及び前橋公園内の駐車場も利用可能であることを表示する看板の設置を違法に怠っていると主張して、同項3号の規定に基づき、当該怠る事実が違法であることの確認(以下「本件訴え④」という。)を求めた住民訴訟であると解される。
 2 前提事実(争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)
  (1) 当事者等
   ア 原告は、前橋市の住民である。
   イ 被告は、前橋市の執行機関である。
   ウ 前橋市は、普通地方公共団体であり、本件公園用地(前橋市大手町3丁目600番1の土地及びその周辺の土地)を所有し、同士地を前橋公園として管理している。
   エ 前橋東照宮は、宗教法人であり、本件公園用地と隣接した本件境内地(前橋市大手町3丁目13番1、同2及び同3の各土地)を所有している。
     なお、同土地上には、前橋東照宮が管理する本殿、拝殿、社務所(以下「本件社務所」という。)等の建物があり、本件社務所の一部が本件公園用地」に存在する。
  (2) 原告の住民監査請求
    原告は、令和2年10月21日、前橋市監査委員に対し、同日付け「前橋市職員措置請求書」と題する書面(乙1)により、住民監査請求をし、同月26日、同日付け「前橋市職員措置請求書・補正書」と題する書面(乙2)により、上記の住民監査請求の内容を補充した(これらを併せて、以下「本件住民監査請求j という。」、その内容は、要旨、次のとおりである。
   ア 前橋市は、前橋東照宮に対し、無償で本件公園用地の一部を使用させており、同土地の適正な管理を怠っている。
   イ 前橋市は、前橋東照宮との間で、上記アに記載の本件公園用地の一部の使用に係る賃貸借契約又は売買契約を締結し、前橋東照宮にその正当な対価を支払わせるべきである。
   ウ 本件公園用地と本件境内地との境界が不明瞭であり前橋市民にとって不便であるから、前橋市は、本件公園用地の財産管理を徹底して境界を明確化すべきである。
  (3) 住民監査請求に対する監査結果
    前橋市監査委員は、 上記(2)の本件住民監査請求を受け、令和2年12月16日頃、同請求のうち、本件社務所の一部が本件公園用地に越境している部分については理由があるものと認め、その余の請求を監査の対象外ないし棄却するとの判断をし、原告に対し、同日頃、その旨の通知をした。また、同委員は、同月18日頃、被告に対し、法242条5項の規定に基づき、①本件公園用地に本件社務所が越境している部分について、適切な財産管理に資する措置を講ずること、②本件公園用地の利用実態に鑑み、当該越境部分を前橋市が確保し続ける必要性について検討した上で、必要に応じて本件公園用地の一部の売却又は有償貸付を検討するなど、長年にわたる懸案事項の解消に努めることなどを勧告した。(甲1)
  (4) 前橋市の措置
    上記(3)の勧告を受け、前橋市は、令和3年3月15日付けで、前橋東照宮との間で、本件公園用地について、本件社務所の建物の一部が越境している部分があるところ、その部分を含めた最小限の土地を普通財産に変更した後、前橋東照宮に対して賃貸する旨の土地賃貸借契約(本件賃貸借契約)を締結するとともに、前橋東照宮が令和7年3月31日を期限として同土地の買取りを行う旨の合意(本件合意)を締結した(甲2、3)。
    前橋市監査委員は、令和3年3月19日頃、原告に対し、法242条9項の規定に基づき、同日付け「前橋市職員措置請求に係る監査結果に対する措置について(通知)」と題する書面(甲3)により、上記の措置内容を通知した。
  (5) 本件訴えの提起
    原告は、令和3年4月12日、本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。
 3 争点
  (1) 本件訴えの適法性(本案前の争点)
  (2) 財務会計上の行為又は怠る事実の違法性の有無
 4 争点及び当事者の主張
  (1) 争点(1)(本件訴えの適法性)について
   (原告の主張)
    本件訴え①及び本件訴え②の対象は「契約の締結・履行」であり、本件訴え③及び本件訴え④の対象は「財産の管理を怠る事実」であるから、法242条1項所定の財務会計上の行為又は怠る事実に該当し、いずれも住民訴訟として適法である。
   (被告の主張)
   ア 本件訴え①は、前橋市が本件契約書及び本件覚書の開示を怠っている事実が違法であることの確認を求めるものであるが、住民監査請求の前提がされていないから、不適法である。
   イ 本件訴え②は、本件賃貸借契約及び本件合意の締結の差止めを求めるものであるが、本件賃貸借契約及び本件合意の締結は既に完丁しているから、訴えの利益は消滅しており、不適法である。
   ウ 本件訴え③は、前橋市が前橋東照宮との間で本件公園用地と本件境内地との境界と管理の契約の締結を怠っている事実が違法であることの確認を求めるものであるが、住民監査請求の前提がされていないから、不適法である。
   エ 本件訴え④は、前橋市が看板の設置を怠っている事実が違法であることの確認を求めるものであるが、①看板の設置は、法242条1項所定の財務会計上の行為又は怠る事実のいずれにも該当しないこと、②請求の趣旨に含まれていないこと、③住民監査請求の前提がされていないことから、不適法である。
  (2)争点(2)(財務会計上の行為又は怠る事実の違法性の有無)について
   (原告の主張)
   ア 本件訴え①について
     被告は原告に対して本件契約書及び本件覚書の関示をせず、これを怠っているが、被告のかかる行為は違法である。
   イ 本件訴え②について
     本件公園用地は守られるべき市民の財産であるにもかかわらず、本件賃貸借契約及び本件覚書の内容は市民に不利で前橋東照宮に有利なものであり、同土地を普通財産に変え、前橋東照宮に売却することは不当であるから、差し止められるべきである。
   ウ 本件訴え③について
     本件公園用地と本件境内地との境界は、近隣住民及び公園利用者の視点からすると不明瞭のままであるから、前橋市は、前橋東照宮との間で、①本件公園用地と本件境内地との境界に柵や看板を設置して明確にすること、②本件公園用地内に存在する鳥居(以下「本件鳥居」という )を本件境内地内に移築すること及び③本件境内地内に園路(本件境内地と本件公園用地とを行き来するための通路)があることを表示することを内容とする「境界と管理に関する契約」を締結すべきであるのに、これを怠っていることは違法である(第2回弁論準備手続調書参照)。
   エ 本件訴え④について
     前橋市は、前橋公園の利用者に対し、本件境内地の北側にある道路(主要地方道前橋・安中・富岡線)から車両が進入可能な園路があることや本件公園用地内の駐車場も利用可能であることを表示する看板を設置すべきであるのに、これを怠っていることは違法である
   (被告の主張)
   ア 本件訴え①について
     本件契約書及び本件覚書は、前橋市の情報公開条例に規定する行政情報に該当すると考えられ、原告は、被告に対し、同条例の規定に基づき、当該行政情報の公開の請求を行うことができるのであるから、本件契約書及び本件覚書の公開に係る不作為について違法はない。
   イ 本件訴え②について
     本件賃貸借契約及び本件合意の内容は、前橋市監査委員の勧告に沿うものであり、前橋市民等の便益や前橋公園の価値を減少させるものでもない。また、前橋市が、前橋東照宮に対し、本件公園用地の一部を有償で使用させることは、政教分離の原則に直ちに反するものではない。
   ウ 本件訴え③について
     本件公園用地と本件境内地との境界に柵や看板を設置して明確にすべきとの点については、前橋市は、本件公園用地における本件境内地との境界付近において、園路のカラーペイント塗装の施工、車止めの設置、生垣の撤去等を既に実施し、さらに境界を明確にするために縁石の施工を行うなどし、境界管理を明確化している。
     本件公園用地内に存在する本件烏居を本件境内地内に移築すべきとの点については、前橋東照宮は、令和3年12月17日に本件鳥居を既に撤去しているから、原告の主張はその前提を欠くものである。
     本件境内地内に園路があることを表示すべきであるとする点については、本件境内地内に園路は存在しないから、原告の主張はその前提を欠くものである。
   エ 本件訴え④について
     上記ウに記載のとおり、本件境内地に園路は存在しないから、原告の主張はその前提を欠くものである。
第2 当裁判所の判断
 1 争点(1)(本件訴えの適法性)について
  (1) 本件訴え①について
    本件訴え①は、被告が原告に対して本件契約書及び本件覚書の開示を怠っている事実が違法であることの確認を求めるものであるところ、弁論の全趣旨(第2回弁論準備手続調書参照)によれば、被告は、令和3年11月19日頃、原告に対して本件契約書及び本件覚書を開示したことが認められ、もはや違法確認の対象である怠る事実が存在しないから、木件訴え①は、住民訴訟の類型に該当しない訴えとして、不適法であるというべきである。
  (2) 本件訴え②について
    本件訴え②は、本件賃貸借契約及び本件合意の締結の差止めを求めるものであるが、差止めの訴えにおいて差止めの対象とした行為が完了すれば差止めの余地がなくなるからかかる訴えは不適法になると解されるところ、前提事実(4)で認定したとおり、前橋市と前橋東照宮との間における本件賃貸借契約及び本件合意の締結は、令和3年3月15日頃に既に完了しているから、本件訴え②は、不適法であるというべきである。
  (3) 本件訴え③について
   ア 原告は、前橋市において、前橋東照宮との間で、①本件公園用地と本件境内地との境界に柵や看板を設置し明確にすること、②本件公園用地内に存在する本件島居を本件境内地内に移築すること、③本件境内地内に園路(本件境内地と本件公園用地とを行き来するための通路)があることを表示することを内容とする「境界と管理に関する契約」を締結しないことが、違法に財産の管理を怠るものである旨の主張をする。
   イ 上記ア①を内容とする契約を締結しないことについて
    (ア) 法242条の2に定める住民訴訟は、地方財務行政の通正な運営を確保することを目的とし、その対象とされる事項は、法242条1項に定める事項、すなわち公金の支出、財産の取得・管理・処分、契約の締結・履行、債務その他の義務の負担、公金の賦課・徴収を怠る事実、財産の管理を怠る事実に限られるのであり、これらの事項はいずれも財務会計上の行為又は事実としての性質を有するものである。そして、上記の住民訴訟の目的に照らせば、これらの事項のうち「財産の管理」とは、当該財産の経済的価値に着目し、その価値の維持・保全を図る財務的処理を直接の目的とする財務会計上の財産管理行為をいい、「財産の管理を怠る事実」とは、そのような財務会計上の財産管理行為を怠る事実をいうと解するのが相当である(最高裁昭和62年(行ツ)第22号平成2年4月12日第一小法廷判決・民集44巻3号431頁参照)。
    (イ) これを本件についてみると、原告は、前橋市において、前橋東照宮との間で、本件公園用地と本件境内地との境界に柵や看板を設置して明確にすることを内容とする契約を締結すべきである旨の主張をする。しかし、このような柵や看板の設置は、前橋公園の利用者等の便宜を図ることを目的として、同公園の施設を整え、公共の用に供するという公園管理行政の見地からする公園行政担当者としての行為ないし判断であって、これらの行為ないし判断に係る契約の締結が、前橋公園や本件公園用地の財産的価値に着目し、その価値の維持保全を図る財務的処理を直接の目的とする行為ということはできないから、上記ア①の内容の契約を締結しないことの違法を確認する訴えは、住民訴訟の類型に該当しない訴えとして、不適法であるというべきである。
   ウ 上記ア②を内容とする契約を締結しないことについて
     原告は、前橋市において、前橋東照宮との間で、本件公園用地内に存在する本件鳥居を本件境内地内に移築することを内容とする契約を締結すべきである旨の主張をする。しかし、弁論の全趣旨(第3回同弁論準備手続調書参照)によれば、本件公園用地内に存在した本件烏居は既に撤去されていることが認められ、もはや違法確認の対象である怠る事実が存在しないから、上記ア②の内容の契約を締結しないことの違法を確認する訴えは、住民訴訟の類型に該当しない訴えとして、不適法であるというべきである。
   エ 上記ア③を内容とする契約を締結しないことについて
     原告は、前橋市において、前橋東照宮との間で、本件境内地内に園路(本件境内地と前橋公園とを行き来するための通路)があることを表示することを内容とする契約を締結すべきである旨の主張をする。しかし、上記イで判断をしたとおり、仮に本件境内地内に原告が主張するような園路が存在するとした場合であっても、その園路に係る表示は、前橋公園の利用者等の便宜を図ることを目的とした公園行政担当者としての行為ないし判断を前提とするものであって、その行為ないし判断に係る契約が、前橋公園や本件公園用地の財産的価値に着目し、その価値の維持・保全を図る財務的処置を直接の目的とする行為であるということはできないから、上記ア③を内容とする契約を締結しないことの違法を確認する訴えは、住民訴訟の類型に該当しない訴えとして、不適法であるというべきである。
  (4) 本件訴え④について
    原告は、前橋市において、本件境内地内にその北側にある道路(主要地方道前橋・安中・富岡線)から車両が進人可能な園路があること及び本件公園用地内の駐車場も利用可能であることを表示する看板を設置すべきである旨の主張をする。しかし、上記(3)イ及びエで認定及び判断をしたところと同様に、上記のような看板の設置は、前橋公園や本件公園用地又は上記の道路の財産的価値に着目し、その価値の維持・保全を図る財務的処理を直接の目的とする行為ということはできないから、本件訴え④は、住民訴訟の類型に該当しない訴えとして、不適法であるというべきである。
 2 以上によれば、本件訴えは、不適法であるから、これを却下することとして、主文のとおり判決する。
    前橋地方裁判所民事第2部

      裁判長裁判官  杉山順一
         裁判官  兼田由貴
         裁判官  竹内 峻
**********

■やはり、原告住民が予想していた通りの判決内容です。そして当会として気になったのは、判決文の「第1 請求の趣旨及び原因」のところで、原告住民の請求が次の4分割になっていることでした。

被告が、前橋市が前橋東照宮に対して本件公園用地の一部を賃貸する旨の契約に係る契約書及び前橋東照宮が前橋市から令和7年3月31日を期限として上記の一部の士地を買い取る旨の合意に係る覚書の原告に対する開示を違法に怠っていると主張して、地方自治法242条の2第1項3号の規定に基づき、当該怠る事実が違法であることの確認を求めること
前橋市が前橋東照宮との間で本件賃貸借契約及び本件合意を締結することは政教分離原則に違反し違法であると主張して、同項1号の規定に基づき、本件賃貸借契約及び本件合意の締結の差止めを求めること
前橋市が前橋東照宮との間で本件公園用地と本件境内地との境界と管理に閲する契約の締結を違法に怠っていると主張して、同項3号の規定に基づき、当該怠る事実が違法であることの確認を求めること
前橋市が本件境内地内に前橋公園を利用する者が車両で進入可能な園路があること及び前橋公園内の駐車場も利用可能であることを表示する看板の設置を違法に怠っていると主張して、同項3号の規定に基づき、当該怠る事実が違法であることの確認を求めること

 住民訴訟の原則は、行政に代理して税金の無駄遣いや行政の不当な権限の行使の是正に対して、自らの利益にならないことから、一律、「算定不能」として訴額160万円として収入印紙1万3000円の手数料で済むはずです。ところが、前橋地裁では、最近の傾向として、請求の趣旨をはき違えて、原告の請求内容を子細に区分し、なるべく小分けにして件数を増やそうとする傾向にあります。

 このことから、この事件でも、4件分として原告住民に5万2000円の手数料納付を命じたのではないか、と気にかかり、原告住民のかたに確認してみました。すると、やはり「訴額ですが、住民訴訟では一律160万円と聞いておりましたが、160万円×4件ということで、手数料も1万3000円+3万9000円+郵券代6000円を納めるよう事務連絡をしてきました。そのため指示に従い、納入しました」とのことでした。

 原告住民の方はさらに、「訴状で、訴訟費用は被告の負担とするとしたのですが、原告の負担との判決でした。しかし被告側の費用は、税金で負担しているので、支払わないつもりです」とおっしゃっていました。そのため、当会からは、「住民訴訟でたとえ敗訴しても、被告行政側から訴訟費用を請求されることは絶対にありません。また訴訟費用には、相手方の弁護士費用は含まれず、交通費と通信代のみ対象となるだけです」とコメントを差し上げました。

■こうして、この事件でも、裁判長からの指揮で、本来、自らの直接的利益とならない算定不能なはずの住民訴訟の訴額160万円がこのような形で、水増しさせられて、行政の不正を追及するという納税者住民の崇高な精神を軽視する裁判所の姿勢は、つくづく民主主義に背くものだと痛感させられます。当市民オンブズマン群馬としても、この問題は法務省に対して迅速な是正措置の必要性をアピールしてまいります。

 このように、一般市民のなかにも、行政を相手取って、本人訴訟でしっかりと訴訟を通じて、行政の不正行為の是正に取り組んでいるかたがいらっしゃることに、当会としても意を強くした次第です。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※参考資料
*****住民監査請求の監査結果*****
                    内 監
                    令和2年12月18日
前橋市長 山本 龍様
                   前橋市監査委員 (略)

   前橋市職員措置請求(住民監査請求)に係る措置について(勧告)

 令和2年10月21日に提出のあった前橋市職員措置請求書について・・・(略)・・・別紙監査結果のとおり勧告します。
 つきましては、・・・(略)・・・、令和3年3月19日(金)までに、勧告に基づき講じた措置を通知してください。

==========
          前橋市職員措置請求監査結果

第1 請求の受付
 1 請求人
   住所・氏名 (略)

 2 請求書の収受日
   令和2年10月21日

 3 補正書面の収受日
   令和2年10月26日

 4 請求の内容
   請求・・・(略)・・・の要旨は次のとおりである。
  (1) 請求の要旨
    前橋市(公園管理事務所)が前橋公園用地の北側部分の土地の境界を明確化せず、隣接する前橋東照宮に対し不当に前橋公園用地を使用させていることは、公有財産の適正な管理を怠る事実に当たる。
    また、前橋市の土地を50年近くも無償で使用できるとは社会通念上ありえない。正規の賃貸契約又は売買契約のもと、正当な対価を支払うべきである。
    更に、前橋公園と前橋東照宮の境界が前橋市民にとって不明瞭であるため、散歩などで立ち入れなかったり、時々通行禁止となるなど不便である。
  (2) 請求する措置の内容
    前橋市は、前橋東照宮と正規の賃貸契約又は売買契約を結び、前橋東照宮に対して正当な対価の支払いを求めるとともに、前橋公園用地の財産管理を徹底して境界を明確化するべきである。
    大手町三丁目600番1に建つ建物の違法行為を明確にし、罰金科料するべきである。

 5 請求書の要件審査
   本件措置請求について、・・・(略)・・・、これを受理した。

第2 監査の実施
 1 監査対象項目
  (1) 怠る事実の確認
    前橋公園用地の北側部分の土地の境界が不明瞭で、市が隣接する前橋東照宮に前橋公園用地を使用させていることは、違法若しくは不当に公有財産の管理を怠る事実に当たるか。
  (2) 損害の有無の確認
    上記について、当該土地の対価である使用料を徴収しなかったことにより、市に損害が生じているか、又は生じる恐れがあるか。
  (3) 求められた措置への対応
  請求人から求められた措置を行う必要があるか。
    なお、大手町三丁目600番1に建つ建物の違法行為を明確にして罰金科料を科すことを求める請求は、・・・(略)・・・必要な措置を講ずべきことに当てはまらないため、監査の対象外とした。
 2 監査対象部局
   建設部公園管理事務所

 3 請求人の証拠の提出及び陳述
   請求人に対し、・・・(略)・・・、新たに証拠となる資料の提出はなかった。請求人は政教分離の徹底を求めるとともに、請求事項のうち主として士地の境界を正確に設定することを求める陳述を行った。陳述には、建設部公園管理事務所(以下「公園管理事務所」という。)の職員が立ち会った。

 4 監査対象部局の書類の提出及び関係職員の陳述等
   公園管理事務所に、監査対象項目に関する資料の提出を求め書類審査を行うとともに、令和2年11月20日に関係職員である公園管理事務所長、同所所長補佐、同所副主幹に対する陳述の聴取を行った。・・・(略)・・・。陳述には請求人が立ち会った。

3 事実関係の確認
 1 書類審査等による事実確認
  (1) 前橋東照宮(以下「東照宮」という。)による公園用地の使用を前橋市が認めるに当たり、都市公園法に基づく占用手続を省略して覚書による使用承認に至った理由、経過及び使用条件に関して次のとおり確認した。
  【事実の発生】
   ア 昭和44年7月23日付け市長決裁の起案「東照宮社務所建築に伴う公園用地使用の取扱について(伺)」において、東照宮宮司及び氏子総代名で提出された嘆願書及び東照宮との協議に基づき、覚書を取り交わし無償で東照宮の公園用地使用を認めた。なお、嘆願書の内容は、・・・(略)・・・公園用地の一部の使用を認めてもらいたいとするものであった。
   イ 覚書を取り交わした理由は、中央大橋架橋に伴う街路事業に積極的に協力してもらうためであった。
   ウ 覚書の内容は以下のとおりである。(本件措置請求に関わる部分を抜粋)
   ・覚書締結日 昭和44年7月24日
   ・街路事業の執行に伴い、東照宮は前橋市に協力し土地の買収に応じ、前橋市は東照宮が建築する社務所の一部が前橋市が管理する公園用地の一部を占用することを承認する。占用面積は52.78㎡。
   ・占用料は無料とし、・・・(略)・・・境界線は両者立会いのうえ確認する。
   ・管理上の新境界について東照喜は・・・(略)・・・園地の保全に努力するものとする。
   ・本覚書による施策のため必要な費用は全て東照宮の負担とする。
   ・本覚書により、都市公園法による占用の取扱いは省略するものとし、占用の期間は覚書の有効期間とする。
  【経過1 使用許可面積の拡大及び専用使用の承認】
   ア 昭和46年3月9日付け市長決裁の起案「中央大橋架橋にかかる東照宮からの陳情の処置について(伺)」において、東照宮から提出された陳情書の内容を受け入れ、・・・(略)・・・東照宮の専用使用を認めた。なお、陳情書の内容は、・・・(略)・・・4m程度の車路を設置してほしいというものであった。
   イ 覚書再締結の理由は、・・・(略)・・・、陳情を受け入れざるを得ないものと判断したためである。
   ウ 覚書締結に当たり、現地を実測した結果、東照宮は昭和44年に取り交わした覚書で認めた利用境界を越境して89.28㎡の公園用地を使用していたことが判明した。
     ただし、これらは結婚式場及びこれに引き続き建築された写真館等の建設により生じたものであり、越境部からの原状回復は極めて困難であった。
   エ 覚書の内容は以下のとおりである。(本件措置請求に関わる部分を抜粋)
   ・覚書締結日 昭和46年3月20日
   ・前橋市及び東照宮は、街路事業の円滑な完遂を図るため、相互に協力を行うものとする。
   ・・・(略)・・・
   ・本覚書により、都市公園法による占用の取扱いは省略するものとし、占用の期間は5か年とする。
  【経過2 東照宮の専用使用を廃止して一般市民も利用できるように変更】
   ア 昭和56年11月16日付け市長決裁の起案「東照宮結婚式場改築による公園地の使用陳情の扱いについて(伺)」において、昭和46年覚書締結後の状況変化を勘案しつつ、東照宮から提出された陳情書及び願書の内容を受け入れて、覚書を更新した。・・・(略)・・・。
   イ 覚書を取り交わした理由は、次の3点である。
   ・東照宮は、・・・(略)・・・市行政に協力していること。
   ・公園用地と東照宮境内は昔から一体的に扱われ、・・・(略)・・・境内地と公園の両者にまたがる利用も多く、事情やむを得ないと思われること。
   ・昭和44年7月24日付けで容認した区域内での結婚式場改築であり、市の犠牲を最小限にとどめられること。
   ・なお、市の犠牲とは東照宮による占用面積を最小限に抑えることができるという意味であると思われる。ちなみに起案に記載されていた結婚式場改築に伴う公園用地への越境面積は、1階部分8.65㎡、2階部分29.72㎡の計38.37㎡である。
   ウ 覚書の内容は以下のとおりである。(本件措置請求に関わる部分を抜粋)
   ・覚書締結日 昭和56年12月4日
   ・この覚書は、東照宮の建築物の改築にあたり中央大橋架橋に伴う街路事業の執行に際しての覚書(昭和46年3月20日付け交換)を尊重しながら現状に即したものとして改めたものとする。
   ・東照宮が利用できる建築敷地は前回の覚書により前橋市が承認している区域を超えないものとする。
   ・境内への地元車両出入りの利便のための通路については、東照宮の専用とせず一般市民の利用できる園路として共用するものとし、その管理上必要な柵等の設置は東照宮が行うものとする。
   ・東照宮は建築敷地と通路の境界を生垣などにより施工し、園地の保全と修景に特に配慮し、日常の管理を行うこと。
   ・本覚書により、都市公園法による占用の取扱いは省略するものとし、占用の期間は5か年とする。
  【経過3 昭和56年12月4日付け覚書の更新 】
   ア その後も覚書は更新され続け、現行の公園用地使用許可期間は令和2年4月1日から令和7年3月31日までである。なお、覚書は5年ごとに更新されているが、更新手続の末了を2回確認した。
   イ 起案に添付されていた求積図において、東照宮の使用を認めている土地の範囲は、昭和46年3月20日付け覚書から現在に至るまで変更されていないが、許可面積については測量に基づき187.77㎡(以下「覚書締結部分」という。)であることを確認した。
  【法令上の適合性に対する認識について】
   ア 市長決裁を受けた起案3件のうち2件において市側には、東照宮と覚書を取り交わして公園用地の使用を認めることは、都市公園法上望ましくないとの認識があったことを確認した。
   ・昭和44年7月23日付け市長決裁起案
   「東照宮社務所建築に伴う公園用地使用の取扱について(伺)」
   ・昭和56年11月16日付け市長決裁起案
   「東照宮結婚式場改築による公園地の使用陳情の扱いについて(伺)」
    ・・・(略)・・・
  (2) 公園用地の財産管理及び境界の状況を明らかにするため、請求人が事実証明書において示した「東照宮が使用している市有地の範囲」(以下「請求対象区域」という。)の土地に関して次の事項を確認した。
   ア (略)
   イ (略)
   ウ (略)
   エ 請求対象区域は、東照宮からの申請に基づき、平成13年122月、平成14年3月及び令和2年3月の三度にわたる境界確認を経て、市と東照宮の敷地の境界確定が完了していること。
   オ (略)
   力 (略)
   キ (略)
   ク (略)
   ケ (略)

 2 公園管理事務所の陳述における事実確認
  (1) 東照宮に対して公園用地の使用を認めた理由と経緯
   ア 東照宮社務所については、昭和44年に東照宮が社務所新館を神社北側へ建築しようとしたところ、中央大橋線の街路事業により断念し、やむなく公園北側へ建築することとなり、その一部が前橋公園用地にかかることになったものである。当該用地はもともと東照宮所有地であったが、昭和24年に前橋公園野球場として、前橋市及び市議会からの強い要望により、やむなく譲渡したが、野球場が廃止されたこと、公園及び中央大橋道路建設のため、大幅な土地を失うこととなり、神社に必要な建物を建築することに支障になっている状況に対し、譲渡した土地の返還若しくは社務所建築に当たる土地の使用を認めることを、東照宮宮司及び氏子総代7名から嘆願書が提出されたことにより、市での検討及び東照宮との協議を経て、終局的には中央大橋街路事業への協力を受けることもあり、公園用地の使用を無償にて認め、市と東照宮の間で覚書の交換に至ったものである。
   イ その後、昭和46年には車両通路設置要望の陳情書を受け、社務所建築と同様に承諾することを認め、覚書を再交換したが、後に、車両通路に関しては、東照宮専用通路としてではなく、一般市民の利用にも供するものとして覚書に記されている。
  (2) 東照宮との覚書について
   ア 覚書の交換は現在まで継続的に行われており、対象範囲は大手町三丁目600番1の土地の一部である。
   イ 本件のような形態で公園用地の継続的な占用を認めた事例は他には無く、原則的には許可事項とならないことと認識している。
   ウ 一般的には都市公園法に基づき審査を行った後、認められるものについて許可を出している。
   エ 昭和44年に市と東照宮の間で覚書について協議がされているが、当時の起案からは、都市公園法に基づいた審査が行われていたことを示す記載を確認することはできない。 
   オ これまでの間、覚書を継続していく中で、使用範囲の見直しや使用料の導入を検討したという記録はなかった。
  (3) 覚書により無料での公園用地使用を認めた理由について
   ア 公園用地内における公園施設の設置や工事用施設等の設置については、都市公園法に基づいて許可を出しており、料金体系については、前橋市公園条例に基づき、基本的には使用料を徴収している。
   イ 本件に関しては、東照宮が社務所を南側に建築せざるを得なかった状況等を市が重々理解したうえで交渉しており、それは現行の前橋市公園条例の規定から考察すると、公園の占用に関わる使用料については、市長において特に必要があると認めた場合は使用料を免除する旨の規定があり、昭和44年当時の状況を鑑みて無料とすることを市長決裁において決定したものだと考えている。
  (4) 前橋公園の範囲及び覚書締結部分の公園用地について
   ア  大手町三丁目600番1は、都市公園として都市計画決定をされている範囲の地番である。
   イ 都市公園法に基づく公園としての開設範囲は、大きな図面ではあるが、社務所を含めた形ではなく、この一部は公園の開設範囲からは除外されているものと考えている。すなわち、都市公園の開設範囲は大手町三丁目600番1全てではなく一部である。
   ウ 大手町三丁目600番1の土地は行政財産である。社務所が建っている部分を都市計画決定されている範囲から除く処理ができるのであれば、今後普通財産として扱うことも可能かと思われる。現時点でははっきりしないが、将来的には可能性があるという意味である。
  (5) 覚書締結部分の管理について
   ア これまで、東照宮が利用している土地の範囲や利用方法が覚書のとおりであるのかどうか、定期的に現地の確認をしていたという記録はない。日常的に施設の状況を確認しているということはなく、覚書更新の際に、その内容についての精査がされていたのではないかと思う。
   イ 当初に覚書が交換されたのが昭和44年で、その後45年に通路の要望を受け、覚書が再交換され、その後5年というスパンで覚書の期間を更新し現在まで至っている。その都度、覚書を再交換する際に確認をしているものと思うが、その間には境界確認もされており、現地の確認はしていたものと思う。
  (6) 覚書未締結部分の管理について
   ア 覚書未締結部分の公園用地について、通路の整備や詳細な管理を東照宮にしてもらっていたと認識している。そのことについて東照宮と市で協議されてきたといったような記録は見当たらない。
   イ この度の措置請求により、東照宮境内地との境界付近の覚書未締結部分に工事現場事務所と仮設トイレが設置されていることを確認したため、都市公園法に基づき、令和2年11月18日付けで占用を許可した。
   ウ 工事現場事務所及び仮設トイレの占用許可範囲は、確実に占用する部分である。工事車両も通過する部分は、一般の公園利用者も通行することができ、完全に占用していると考えられないので、実際に仮設物が置いてある面積について許可をしている。
   エ 請求対象区域の駐車場は、平成22年度末に解体された県消防警察慰霊碑の跡地に隣接しており、公園の駐車場として供しているものである。
   オ 東照宮境内地の西側に位置する彰忠碑、さちの池方面、前橋城土塁の上の桜並木には、市有地を通って回遊や散策をすることができる。
   カ 上記に関して、東照宮境内地と公園用地との境に柵等は設けていないが、公園用地としてはつながっている状況である。
  (7) 土地の境界確定の状況について
   ア 前橋公園と東照宮の境界は、平成13年度から令和元年度にわたり三度の境界立会いが行われ、双方の境界確定は完了したところである。
  (8) 東照宮境内地北側の土地について
   ア 東照宮の北側は県有地であり、道路用地と認識している。
  (9) 請求人の主張である「前橋東照宮が、勝手に前橋公園用地北側部分を使っている」という点について
   ア 措置請求では「東照宮が市有地を使用している」とあるが、公園管理事務所としては、覚書締結部分以外の公園用地を東照宮が使用しているという認識はなかった。
   イ 前橋公園用地は覚書で使用を認めている東照宮社務所の建築部分を除き、一般市民の利用に供している。前橋公園と東照宮境内は昔から一体的に利用され、両者にまたがる利用も多く、公園利用について支障があるとは考えていない。
   ウ 公園の駐車場は、東照宮に参拝する方が利用しても公園使用について特段の支障がない。参拝者が公園を利用することもあり、どちらの利用者であっても自由に使えるものと考えている。
   エ 今回の陳述で質間を受け、また、境界も令和元年度に全て確定したということもあり、これを契機に使用料について今後どうしていくかということを市の内部で協議していきたいと考えている。

第4 監査委員の判断
 1 まとめ
  (1) 本件措置請求において、請求対象区域のうち東照宮社務所が公園用地に越境している面積分については請求に理由があると認められるため、地方自治法第242条第5項の規定により前橋市長に対して第5に記載のとおり勧告する。
  (2) 市民の利用を目的に設置される市有施設の管理に当たり最も大切な視点は、当該施設を市民が快適に利用できるよう、施設の設置目的に即して日常的な維持、管理が適切に行われているかどうかという点である。
    この点において、園路や駐車場として市民と共用されている上記(1)以外の請求対象区域は、覚書の締結若しくは長年にわたる運用により東照宮の協力のもと、往来や駐車が可能な状態に保たれている。また、東照宮境内地との境界確定も完了しており、結果として、公園の設置目的及び公園利用者の便益のいずれも損なうことなく管理されている状態にある。したがって、本件措置請求事項である市が違法若しくは不当に財産の管理を怠る事実に相当すると認めるまでには至らないため棄却する。
    しかしながら、当該区域は一般の利用者にとっては東照宮境内地との区別がつきにくいことに加え、日常的な管理は東照宮が担っていることから、一般利用者の多くは東照宮の敷地として認識するであろうことが推察される。
    更に、公園用地と宗教施設の敷地が実質上一体的に使用されていることは、憲法第89条及び第20条第1項後段の政教分離の原則からみて望ましい状態であるのかどうか懸念されるところである。
    したがって、社務所の越境部分の解決策を講じる際に、利用実態に即して公園予定区域のあり方についても再検証するよう勧告に盛り込むこととする。

 2 判断の理由
  (1) 請求対象区域のうち覚書締結部分について
    東照宮社務所の一部が公園用地にはみ出し、前橋公園用地を占用することから覚書締結に至ったが、前橋公園は都市公園法第2条に規定される都市公園であり、請求対象区域についても同法第33条第4項の準用規定が適用されるため、本来であれば同法第6条に基づき社務所の占用許可手続を行うべきである。しかしながら、社務所は同法第7条第1項に列記する許可対象施設には該当しない。
    覚書締結に至った経緯が公共的な見地からやむを得ないものであり、公園用地にはみ出している面積も僅かであるとはいえ、都市公園法上問題があることを認識して根本的な解決策を図ることとしていたにもかかわらず、何の検討もされないまま 50年余りにわたり使用を認めてきたことは、市に財産管理上の過失があるものと言わざるを得ない。
    一方、上記以外の区域については東照宮の専用ではなく、公園利用者の自由な往来が確保されている。よって、前橋公園の設置目的及び利用に際しての便益のいずれも損なうことなく、覚書に基づいて東照宮により日常的に維持、管理されていると認められることから、東照宮に対する使用許可が市に財産管理上の損害を発生させていたとは断定できない。
  (2) 請求対象区域のうち覚書末締結部分について
    覚書未締結部分である東照宮社殿の西側及び南側は、公園用地と東照宮境内地との境界確定が完了しているものの、利用者の便益に配慮して区画を分ける表示等はされておらず、双方の利用者から一体的に使用されている。
    なお、東照宮参拝車両の経路は、社殿北側の入口から入り、社殿の西側を回り込んで南に向かい、覚書締結部分の公園用地へ抜ける一方通行となっている。参拝車両の安全走行に配慮した動線として理にかなっている運用であるが、この運用により、市が整備した公園駐車場へは、参拝者と同じ入口を利用することになるため、前橋公園の駐車場であることが認識できにくい状況である。
    公園を利用する市民にとっては駐車場の場所が分かりにくく、望ましい状態とは言い難いが、公園利用者が自由に駐車場を使用できる状態が常に保たれていることから、市が管理を怠り東照宮による占用を不当に認めていたと断定することはできない。
    同様に、園路についても両者の敷地の境界は明示されていないものの、公園用地のみを通って前橋公園内の桜並木や彰忠碑への散策が可能であり、公園利用者の通行を制限することなく園路を使用できるため、市が管理を怠り東照宮による占用を認めていたとは断定できない。したがって、違法若しくは不当に市が財産の管理を怠る事実があるとまでは認められないと判断する。
    なお、請求対象区域内に設置されている工事現場事務所及び仮設トイレについては、本件監査期間中に都市公園法第6条に基づく占用許可手続が完了したため、違法状態が解消されている。

第5 勧告
  地方自治法第242条第5項の規定に基づき、次のとおり前橋市長に勧告する。
 1 前橋東照宮と隣接している公園用地について、東照宮社務所の越境部分の適切な財産管理に資する措置を講じること。併せて、請求対象区域の利用実態に鑑み、前橋公園予定区域として市が確保し続ける必要性について検証し直すこと。
 2 検証に基づき、前橋公園用地のあり方や活用についての方針を定め、必要に応じて公園用地の一部の売却若しくは有償貸付を検討するなど、長年にわたる懸案事項の解消に努めること。

  なお、地方自治法第242条第9項の規定に基づき、令和3年3月1 9日(金)までに講じた措置について通知することを求める。

第6 意見
  監査の結果については以上のとおりであるが、請求対象区域については、一見すると東照宮の敷地と認識されても仕方がない状況となっているため、勧告に基づく措置を講じる際には、この点にも留意され公園利用者の便益性向上を図られたい。
  また、覚書未締結部分の公園用地については、長年にわたり東照宮が自主的に日常の維持管理を行い、それに要する費用も負担していると考える。公園用地の一体的利用を踏まえ、その見直しが行われるまでの間、市は公園用地の管理者として園路等の維持管理及び費用の負担を検討されたい。

*****住民監査請求の措置通知*****
                    内 公 管
                    令和3年3月17日
前橋市監査委員 様
                   前橋市長 山 本   龍

前橋市職員措置請求(住民監査請求)に係る監査の結果に対する措置について(通知)

 令和2令和2年10月21日に提出のあった前橋市職員措置請求(住民監査請求)に係る監査の結果において、・・・(略)・・・同法第242条第9項の規定により下記のとおり措置を講じたので、通知します。

                  記

1 前橋東照宮と隣接している公園用地において、同社務所の建物の一部が公園用地に越境しているが、その部分を含めた最小限の土地を普通財産に変更した後、前橋東照宮に対して有償で貸付けを行うことを内容とする契約を令和3年3月15日付けで市と前橋東照宮の間で締結した。
  なお、貸付けの対象となる土地については、令和7年3月31日を期限として、前橋市東照宮が買取りを行うことを内容とする覚書を令和3年3月15日付けで市と前橋東照宮との間で締結した。
**********
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【税金無駄遣いの権化】群馬県庁前広場のモニュメント解体撤去でNHKがオンブズマンを取材・放映

2022-09-16 23:01:34 | 県内の税金無駄使い実態

NHK前橋放送局「ほっとぐんま630」で9月13日に放送された「県庁モニュメント問題」の一シーン

■2022年7月21日の群馬県知事選で初当選した山本一太知事ですが、3年を経過していよいよ本性を現しつつあります。もともと外遊好きであることは、かつてJICA(国際協力機構)に勤務していた当時からの習性ですが、大統領的な権限をもつ知事に就任してからは、コロナの影響で自粛をよくなくされていました。ところが最近の渡航制限緩和に便乗し、チャンス到来とばかりに、さっそく8月2日(火)から6日(土)にかけて、ベトナムのハノイとダナンを訪問し、続いて、9月5日(月)から14日(水)にかけてフィンランドのヘルシンキと米国インディアナ州を巡り、念願の世界一周旅行を果たしました。

 そうした中、当会は、9月12日の正午過ぎにNHK前橋放送局の田村華子記者から取材の打診を受けました。目的は、県庁舎前のモニュメントの解体・撤去に関する公費の妥当性について、この問題に取り組んできた市民団体としての見解を聞きたいというものです。

 当初は、当会の事務局で取材を受ける予定でしたが、エアコンの修理中だったため、適当な場所が確保できないため、同日の午後4時からNHK前橋放送局内の会議室でカメラ撮りを行うことになりました。

■さっそく、当会の代表と事務局長と現地の前橋放送局前の駐車場で集合し、体温と手指の消毒を済ませた後、午後4時に受付で「田村記者」を尋ねました。ロビーの奥のテーブルについて待っていると、田村記者がやってきて、奥に向かって左手の通路の左側にある会議室に案内されました。

 既に女性カメラマンと、男性スタッフが待機していました。取材用の椅子が一つしかなかった為、当会の代表がインタビューを受けることになりました。

 男性スタッフに小型のワイヤー付きマイクをワイシャツの裾から通して左側の襟に止めると、さっそく取材開始となりました。

■取材開始前に田村記者から「カメラを意識しないように、自然体で、私の目を見て、普通に会話するイメージでお願いします」と言われたので、田村記者の目をじっと見つめて話すよう心掛けました。しかし、あまりじっと見つめるのも失礼かと思い、視線はカメラの方を向けないように、適宜、身振り手振りにしたてって、方向を変えるようにしました。

 田村記者からは数項目の質問がありましたが、その場で、当会の考え方をアドリブで回答しました。事前のリハーサルやシナリオなどまったくなく、ぶっつけ本番でした。

 準備作業も入れて20分ほどで取材は終了しました。インタビュー後、ひとしきりこの問題について田村記者と話しました。同記者によると、群馬県の財産有効活用課いわく、「撤去したモニュメントの石はリサイクルせずに、廃棄する」のだそうで、その理由について「石材どうしがセメントで固着されているので、切り離せないため」なんだとか。「SDGsが世界的に叫ばれている今日、群馬県行政は、なんという時代錯誤の感覚を引きずっているのでしょうね」と、同記者とともに嘆息を禁じ得ませんでした。

■そして、NHK前橋放送局からネット記事として、翌日の昼過ぎに発信され、テレビ放映については、同じく9月13日の午後6時半からの「ほっとぐんま」の番組の中で、報じられました。以下のネット記事と、画像を参照ください。

**********NHK News Web 群馬 前橋放送局 2022年09月13日12:52 
県庁舎前モニュメント 未完成のまま撤去へ 県の対応に批判も


 群馬県庁の庁舎前に20年前から8500万円かけて建設されたモニュメントが、未完成のまま年内に撤去されることになりました。
 撤去にはさらに4400万円かかるということで、建設に反対してきた市民団体は県の対応を批判しています。


 前橋市大手町の県庁庁舎前にあるモニュメントは、前橋市出身で東京芸術大学の池田政治名誉教授がデザインし、当時の小寺知事が「群馬県庁」と書いた文字が刻まれています。


 2002年に始まった建設当初の計画では、25年かけて7.5メートルほどの高さまで石を積み上げ、その石に、県内で生まれた子どもの名前を刻む予定でした。


 ただ、県によりますと、個人情報保護や費用面などについての懸念を踏まえて3年後の2005年に建設が中止され、この間、8500万円の費用がかかったということです。


 その後、未完成のまま残されてきたモニュメントについて、県は、県庁前の広場の再整備を目的に撤去することを決め、9月の補正予算案に撤去費用として4400万円を計上しました。
 撤去は年内に行われる予定です。


 建設と撤去に合わせて1億3000万円近い公金を県が投じたことについて前橋市の市民団体「市民オンブズマン群馬」は「税金のむだづかいだったが、建てたからには残しておけばいい」などと県の対応を批判しています。


 一方、県の財産有効活用課は「多くの費用がかかることへの県民の批判があるのは承知している。ただ、今のまま放置すると県庁周辺を有効活用する機会を損失するため、未来への投資だと考えている」と話しています。


 モニュメントの撤去について、前橋市の40代の女性は「この形が完成形で建っているのかなと思っていた。作ってしまったものはしかたないけれど、4000万円以上かけて撤去することはもったいないと思う」と話していました。


 また、前橋市に住む70代の男性は「なじみがあるし、お金がかかるのならそのまま残しておいた方がいいと思う。このモニュメントを残した上で広場を作ればいいのにと思う」と話していました。

 「市民オンブズマン群馬」の小川賢代表は「25年かけて7.5メートルの高さまで建設するといっても、いったいどんなものなのか、トータルでいくらかかるのかもわからなかった。そんなものを県民の意見を聞かずに作るのは不思議で税金のむだづかいだと思っていた」と当時を振り返りました。


 一方で撤去については「合わせて1億3000万円近くかかる税金が“無”になってしまうので、“今のまま残しておけば”というのが正直な思いだ」と話しました。
 そのうえで今後の広場の活用については「山本知事は記者会見で『これから考える』と発言したが、本末転倒だと思う。県民の意見を聞くことが基本でその意見を最大限反映して、SDGsなどの世界的な潮流ももっと取り入れ県民がきちんと理解できるような説明をして施策に反映してほしい」と注文をつけていました。


 山本知事は今月1日の記者会見で「芸術作品自体は価値あるものだと思っている。デザインをした池田先生に、撤去の同意をいただいたことに本当に感謝したい」と述べました。


 そのうえで、撤去後の広場のあり方について「広場を活用することで群馬県の存在感を高めて群馬県の魅力を発信できる、そして多くの人が集まる場所になるように、独自のおもしろいアイデアを出しながら議論をしていきたい」と述べました。


 さらに、県の財産有効活用課は「広場は、スポーツやイベントなど幅広い用途に使えるように民間の知恵なども借りながら、にぎわいが創出できるような場を作っていきたい」と話しています。
**********

■当会では9月9日付で群馬県知事あてに次の内容の公文書開示請求書を提出しており、早ければ、9月23日ごろ、開示に関する何らかの連絡があるはずです。

*****開示を請求している内容*****
①解体撤去の根拠の一つとして、モニュメント自体の老朽化が進んだことを挙げているが、この根拠が分かる情報。
②「池田さんの許可も得て撤去を決めた」という証拠情報。
③既に芝生広場となっているのに「撤去とともに芝生を張り替え、今後は周辺を含めた約三千八百平方メートルを芝生広場として活用する方針」を打ち出した理由や根拠が分かる情報。
④モニュメント撤去費として計上した4400万円の内訳情報。
⑤既に「群馬県庁」と彫られているのに、わざわざ「県庁を示す銘板は新たに設置する」のか、その理由が分かる情報。
⑥もともと賑わいを創出するはずのモニュメントだったはずなのに、なぜ「イベントなどさまざまな用途に活用したい」ために解体・撤去する理由が分かる情報。
⑦「今後、具体策を検討していく」として、具体策も決めない内になぜ撤去しなければならないのか根拠を示す情報。
⑧「これまでの制作に8500万円がかかった」内訳を示す情報。
**********

■実は、群馬県行政の無駄遣いは上記の平成14年3月に発表された県民広場整備計画に伴うモニュメント21だけではありません。当時、この県民広場の整備に際して、平成6年後半に7961万9千円(消費税込み)の公費をかけて製作・設置された電光掲示板と、それに伴う電源設備工事に731万3千円(同)、さらに制御用通信ケーブル工事に16万4800円(同)の血税が投じられていましたが、それらを僅か7年後の平成13年に241万5千円かけて解体したのでした。

 この電光掲示板にかかる一連の設置・解体・撤去に総額8720万円近いカネをかけていたのです。恐るべき税金のムダ遣いの連鎖が、知事が変わるたびに、相も変わらず繰り返されているのです。なんとかこの負の連鎖を断ち切らないと、群馬県行政の無駄遣い体質は、この先もずっと続くことでしょう。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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【渋川市の乱脈行政】移住促進事業を食い物にする選良と市長部局の怠慢がもたらす血税垂れ流しの実態!

2022-09-13 06:33:22 | 渋川市の行政問題

■少子高齢化がいよいよ進み、各自治体では税金を投入してさまざまな施策を打ち出して、少しでも減少度合いを緩和しようと四苦八苦しています。そうした背景などお構いなしに、インサイダーとも言える不正が行政内部で横行しています。当会では桐生市で市外居住を装う職員が、市内移転のため住宅建設をするとして補助金を不正に受給していた事件を、地元会員が追及してきた事件を知っています。同じような不正は、きっとほかの自治体でもあるにちがいないと感じていました。そうした最中、当会に、渋川市民から調査依頼が届きました。

 何かと不正が絶えない渋川市ですが、昨今の人口減少に歯止めをかけようと、移住対象者に補助金を支給することで、人口減少を逆に人口増にしようとする無謀な考えのもと、渋川市移住者住宅支援事業という政策が実施されているようです。

 制度内容はこちらです。↓↓
https://www.city.shibukawa.lg.jp/kurashi/hikkoshi-sumai/sumai/sumai/p003794.html

 当会では、主体的に調査する権限を持たないため、思案した結果、調査権を有する渋川市議会に以下の内容の上申書を提出し、調査依頼をすることにしました。


*****9/9上申書*******
                       令和4年9月9日
〒377-8501 群馬県渋川市石原80番地
渋川市議会
 議長 望月昭治 様
TEL: 0279-22-2483/FAX: 0279-22-2329

           〒371-0801群馬県前橋市文京町1丁目15番10号
           市民オンブズマン群馬
            代表 小川 賢
           TEL: 027-224-8567(事務局・鈴木)
               090-5302-8312(代表・小川)
           FAX: 027-224-6624

                           上 申 書
件名:渋川市移住者住宅支援事業を巡る不正の実態について(報告とお願い)

 弊団体は、渋川市行政およびその関連機関を外部から監視し、当該機関による権限の不当な行使ないしは不行使による市民への権利利益侵害、並びに税金を原資とした公的資金の濫費について、調査および救済の勧告を図る活動をしている民間団体です。
 この度、弊団体に渋川市民より貴市の助成金に纏わる情報提供がありました。
 早速、当該情報を精査したところ、貴市が行う、渋川市移住者住宅支援事業において不正が行われている事実があることが分かってまいりました。ちなみに、この支援事業は、貴市の人口減少を抑制し、定住人口の増加を図るため、渋川市内に住宅を取得して市外から転入する人に、最大120万円(加算額を含む。但し過疎地域(伊香保地区、小野上地区、赤城地区)は最大220万円)を助成する制度です。
 しかも、この制度を巡り、渋川市議会議員が口利きを行って不正に加担していたことも分かってまいりました。
 ところが遺憾なことに、渋川市行政は、「調査権が無い」として不正の実態を調査しようとしません。結果として、この市議会議員を擁護しているとの誹りを免れません。また、実態に即していない補助金事業は渋川市の公的資金の濫費につながりかねず、こうした状況は弊団体として看過する訳にまいりません。
 この渋川市移住者住宅支援事業は、追加で補正予算が組まれるという情報もあります。その裏で特定の輩が、暗躍していることも懸念されることから、早急に不正の実態調査が必要です。
 よって、渋川市議会議長におかれましては、下記に示す不正の実態について議会に付与されている調査権限を行使していただくとともに、追加で渋川市移住者住宅支援事業の補正予算が組まれる際には、実態とかけ離れた移住申請に対して、簡単に助成金を拠出するこの事業の制度的欠陥を解明し、抜本的な見直しを図るようお願い申し上げます。
 なお、渋川市民からの情報によれば、中之条町ではコロナ関連クーポンが一人2万円配られているのに対し、渋川市では一人5千円しか配られず、国からの補助金を渋川市移住者住宅支援事業に流用しているのではないか、とする疑惑についても指摘がありました。国からの補助金が、果たして目的通りに利用されているかどうか、このことについても、併せて調査していただきたく、お願い申し上げます。
                記

【事実その1】高崎市に住居の実態がある女性による渋川市移住者住宅支援事業の助成金申請・受給している。
 ・申請者氏名:●●●●
 ・申請時の登録:北群馬郡吉岡町大字漆原○○○○○○
 ・助成金額:60万円(基本10万円+空き家バンク30万円+若者支援20万円)
【事実その2】助成金受給者の居住の実住所(居住の実態)
 ・高崎市下小鳥町○○○○○○○○
 ・助成金申請時も、そして現在も引き続きこの住所に居住している。ちなみに、この事実は公正証書原本不実記載等罪(刑法第157条)、詐欺罪(刑法第246条)や住民基本台帳法違反など、我が国の行政の信頼を揺るがしかねない重大犯罪に該当すると考えられる。
【事実その3】移住の実態
 ・助成金対象の移住先には、●●●●の母親が住んでいる。
【事実その4】助成金を巡る不正事実
 ・本来、移住した●●●●の母親名義で助成金を受給すればよいところ、更に若者支援20万円上乗せをだまし取ろうと思いつき、若者である●●●●名義で助成金を申請し渋川市に損害を負わせた。ちなみに、この事実は詐欺罪(刑法第246条)に該当すると考えられる。
【事実その5】不正に口利きをした議員の存在
 ・この移住先に足繁く出入りする市会議員の後藤弘一がいる。それだけでなくこの助成金申請に際し、同市議が市役所窓口に頻繁に訪れ助成金制度を詳しく訊ねている。この過程で同市議は、若者支援の場合20万円の上乗せがあることを知り、●●●●の母親名義ではなく●●●●名義で助成金申請をするよう指導(教唆)させたことが考えられる。こうした不法行為は市議会議員の加担無くしては成立し得ないことであろう。
 ・同市議は●●●●の母親宅に足繁く通っていることから、●●●●の居住の実態が渋川市にないことを知っている。ちなみに、このことは教唆罪(刑法第61条)に該当していると考えられる。
【事実その6】渋川市行政は居住の実態を調査しようとしない。
 ・貴市の田中総合政策部長は、この助成金の不正受給に際し、「執行された助成金については調査する権限がない」と話している。
 ・この事実は「渋川市補助金等交付規則」第15条違反に該当すると考えられる。
 ・規則に違反してまで、この助成金不正受給事案を調べないことから、渋川市行政幹部からの指示の存在が疑われる。

 以上をまとめると次のとおりとなります。
【まとめ】
 ・渋川市移住者住宅支援事業の助成金を巡っては、申請の実態を調査しない現実がある。
 ・そもそも現実に移住したかどうかを調べない助成金事業などは、制度そのものに欠陥があると指摘せざるをえない。
 ・また、この制度的欠陥を悪用する議員も存在するなど、公的資金の濫費は留まることを知らない。伊香保地区などに移住すればさらに助成金が上乗せされることから、この助成金制度は“好評”を理由に、補正予算で追加が見込まれていると聞き及んでいる。
 ・「渋川市議会の複数の者らは、市議の後藤弘一を庇っている」との情報も聞き及ぶ。この欠陥制度を悪用している議員の存在や、行政幹部の関与も疑われる。
 ・住民の議会に対する信頼向上の観点から、本件にかかる不正の実態の真相究明と責任の明確化に加えて、本件助成金制度の欠陥を是正することにより、再発防止策を講じることが、急務である。

                           以上
**********

■市民には、転入転出の自由があります。限られたパイを自治体間で奪い合う人口減対策に、こうした補助金は馴染むと言えるのでしょうか?カネで釣るより、自治体の魅力を発信したほうが理に適うのではないでしょうか?

 また、渋川市内においては、大同特殊鋼㈱と㈱佐藤建設工業による有害スラグが大量に投棄されたママになっています。土壌汚染や地下水などの生活環境の悪化に敏感な市民にとって渋川市は、安全な生活環境の保全が脅かされており、とても安心して住むことができない要注意地域となっています。

 生活環境対策をイの一番として、安心・安全をスローガンに魅力度アップに全力で取り組んで人口減少問題に対処しなければなりません。にもかかわらず、そこには手を付けず、逆に補助金で人口増を狙おうなどとは、問題の本質を見極めておらず、正気の沙汰ではありません。

■渋川市移住者住宅支援事業には、その実態を調査しないという制度的欠陥があります。そうした状況から、市役所職員が、規則で定められている調査を「調査権がない」と堂々と答える始末です。こうしたことから、この度の不正は、市議会議員の口利きや圧力に留まらず、その裏に市長を含めた市役所全体の関与すら疑われます。

 渋川市議会議長には、上申書の内容を精査のうえ、権限をフルに発揮していただき、徹底的な調査を強く求めたいと思います。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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【一太県政】県職員の士気を損なう不明朗人事の温床を絶つべく提訴した住民訴訟に9月7日敗訴判決!

2022-09-11 00:57:51 | 県内の税金無駄使い実態

■群馬県庁に4月に入庁したフレッシュマンの職員の皆さんは1・2・3類合計で200名以上に上ると思いますが、半年が経過した現在、公務員としてのモチベーションは依然として強く維持されておられるでしょうか。

 公務員は国や自治体に従事する職業で、その活動資金(給与等)は税金で賄われており、営利を目的とせず、社会への奉仕が仕事となっています。一方で民間は、営利を活動の目的としており、所属する企業の営利のために仕事をしています。そのため、民間に比べると、公務員の仕事は定型的で、可もなく不可もなく、そつなくこなしていれば、一定の評価が得られるようです(筆者の感想です)。

 ところが、群馬県庁内では、いわゆる高学歴で入庁した「上級職員」と呼ばれる一部エリート職員らがおり、彼らはその特権意識から強い結束を誇っていますが、それが行政の効率化に活かされるのであればともかく、私物化に走り、とくに人事面でエコ贔屓を生む温床になっています。

 こうした、群馬県行政の歪んだ人事管理について、当会は、2019年度から着目してきました。とくに当時、県庁3階で起きていた不透明な実態に着目し、独自の調査を重ねました。そして、2020年2月28日に住民監査請求を群馬県監査委員に提出したところ、いつもの補正命令もないまま、突然同年3月17日に門前払い同然の却下通知が送られてきたため、同年4月16日に訴状を前橋地裁に提出しました。以来、コロナ禍の中、9回の弁論を重ねて、令和4年4月13日の第10回弁論で人証尋問が行われ、結審し、当初8月10日13時30分に判決言渡しの予定でした。

 しかし、その前に裁判所から「都合で判決期日を延期する」と連絡があり、その後「判決日は9月14日とする」旨の連絡を受けたと思っていました。ところが、実際には9月7日に判決言渡しとなっていたことを、9月6日にオンブズマン事務局に届いた判決書で知りました。

 なお、この問題については、以下のブログ記事も参照ください。

○2020年2月28日:【一太県政】一部職員が私物化する群馬県庁の不明朗人事の弊害と、障害をもつ特定職員への過度な優遇実態
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/e/02c48c763d5cd4ea043a8796ec6942eb

○2020年3月18日:【一太県政】一部職員が私物化する県庁不明朗人事にノーを突き付けた住民監査請求に対し監査委員が却下!
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/e/39f79caea3a76eda4612e9e87bb4d622

○2020年4月23日:【一太県政】一部職員が私物化する県庁不明朗人事にノーを突き付けた住民監査請求棄却で住民訴訟提起!
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/e/f13d77ade5c839a3b64a4987dbb320c2

○2020年9月21日:【一太県政】一部職員が私物化する県庁不明朗人事を巡る9.30住民訴訟初公判を前に届いた県の答弁書
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/e/6a6e13b9ea8f6c5160c8d12b62108479

○2021年10月22日:【一太県政】一部エリート上級職員が私物化する県庁不明朗人事を巡る住民訴訟のその後の顛末報告
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/e/41591e867b0705c353d9531c0f681b23

■では、9月9日に当会事務局に届いた前橋地裁からの判決文を見てみましょう。

*****判決文*****
令和4年9月7日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 橋本勇一
令和2年(行ウ)第5号 損害賠償請求事件
口頭弁論の終結の日 令和4年4月13日
              判         決
   前橋市文京町一丁目15-10
       原        告    市民オンブズマン群馬
       同 代 表 者 代 表      小  川     賢
   前橋市大手町一丁目1番1号
       被        告    群馬県知事 山本一太
       同訴訟代理人弁護士     新  井     博
       同 指 定 代 理 人      中  島  高  志(当会注:人事課長)
       同                高  橋  智  之(当会注:人事課次長)
       同              佐  藤     裕(当会注:人事課企画係長)
       同            柿  沼  輝  信(当会注:教育委員会総務課長)
       同            角  田  毅  弘(当会注:教育委員会総務課次長)
       同            本  山     晃(当会注:教育委員会総務課秘書人事係長)
              主         文
    1 本件訴えのうち、福島金夫が平成21年度に松本高志を教育委員会事務局特別支援教育室の次長に任命したことについて、同人に対し、1020万円及びこれに対する平成22年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求するよう求める部分を却下する。
    2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
    3 訴訟費用は原告の負担とする。
              事 実 及 び 理 由
第1 請求
 1 被告は、福島金夫(以下「福島」という。)、吉野勉(以下「吉野」という。)及び笠原寛(以下「笠原」という。)に対し、1億0200万円及びうち1020万円に対する平成22年3月31日から、うち1020万円に対する平成23年3月31日から、うち1020万円に対する平成24年3月31日から、うち1020万円に対する平成25年3月31日から、うち1020万円に対する平成26年3月31日から、うち1020万円に対する平成27年3月31日から、うち1020万円に対する平成28年3月31日から、うち1020万円に対する平成29年3月31日から、うち1020万円に対する平成30年3月31日から、うち1020万円に対する平成31年3月31日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を連帯して支払うよう請求せよ。
 2 被告は、堀越正勝(以下「堀越」という。)に対し、200万円を支払うよう請求せよ。
第2 事案の概要
 松本高志(以下「松本」という。)は、昭和58年4月、群馬県に任用され、平成31年3月31日に定年退職した後、同年4月1日、群馬県に再任用された。 群馬県の住民である権利能力のない社団である原告は、松本が、平成20年6月23日に発症した脳内出血により右上下肢に機能障害が残り(身体障害者障害程度等級2級)、かつ、平成31年に高次脳機能障害と診断されたにもかかわらず、①当時の教育委員会教育長(以下「教育長」という。)である福島が、平成21年度に松本を教育委員会事務局特別支援教育室の次長に任命したこと(以下「本件行為1」という。)、②当時の教育長である福島が、平成21年度から平成23年度までの間、松本の給与を、適切な人事評価により業務遂行能力に応じた水準まで切り下げるべきであったのにこれを怠ったこと(以下「本件行為2」という。)、③当時の教育長である吉野が、平成24年度から平成27年度までの間、松本の給与を、適切な人事評価により業務遂行能力に応じた水準まで切り下げるべきであったのにこれを怠ったこと(以下「本件行為3」という。)、④当時の教育長である笠原が、平成28年度から平成30年度までの間、松本の給与を、適切な人事評価により業務遂行能力に応じた水準まで切り下げるべきであったのにこれを怠ったこと(以下「本件行為4」という。)、⑤当時の総務部人事課長である堀越が、平成31年4月1日に松本を会計局審査課の主幹専門員として再任用したこと(以下「本件行為5」という。)、⑥当時の総務部人事課長である堀越が、平成31年4月以降、松本の給与を、通切な人事評価により業務遂行能力に応じた水準まで切り下げるべきであったのにこれを怠ったこと(以下「本件行為6」といい、本件行為1から6までを「本件各行為」という。)が違法であると主張して、群馬県の執行機関である被告を相手方として、地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項4号本文に基づき、不法行為による損害賠償として、福島、吉野及び笠原に対し、松本に対して過大に支払われた給与等相当額合計1億0200万円及び平成21年度から平成30年度までの各年度の各給与等相当額に対する各年度末から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を、堀越に対し、松本に対して過大に支払われた給与等相当額合計200万円の支払を、それぞれ請求することを求めた。
 1 前提事実等
 以下の事実は、当事者間に争いがないか、本文中に掲記の証拠(以下、書証の枝番号は省略する。)及び弁論の全趣旨によって容易に認めることができる。
 (1) 松本の経歴について
 ア 松本は、昭和58年4月、群馬県に任用された。
 イ 松本は、平成20年6月23日当時、教育委員会事務局管理課の次長であったところ、同日、脳内出血を発症した。そのため、松本は、同日から同年12月19日まで病気休暇を取り、同月20日から平成21年1月16日まで休職し、同月17日、上記次長として復職した。
 松本は、上記病気休暇及び休職の間、脳内出血の治療を受けたが、右上下肢に機能障害が残り、身体障害者障害程度等級2級に認定された。
 ウ 松本は、平成21年度、教育委員会事務局特別支援教育室の次長に任命され、同年度から平成27年度までの間、同次長を、平成28年度から平成30年度までの間、教育委員会事務局特別支援教育課の次長を、それぞれ務めた。
 平成21年度から平成23年度までの教育長は福島であり、平成24年度から平成27年度までの教育長は吉野であり、平成28年度から平成30年度までの教育長は笠原であった。
 工 松本は、平成31年3月31日に定年退職し、同年4月1日、群馬県に再任用され、会計局審査課に主幹専門員として配属された。
 平成31年度の群馬県総務部人事課長は堀越であった。
 オ 松本は、令和2年度、会計局会計管理課に配属された。
 令和2年度の群馬県総務部人事課長は堀越であった。
 (2) 本件訴訟に至る経緯について
 ア 原告は、令和2年2月28日、群馬県監査委員に対し、松本の給与等について、住民監査請求(以下「本件監査請求」という。)をした。(甲1)
 イ 群馬県監査委員は、令和2年3月16日付けで本件監査請求を却下し、同月17日、その旨を原告に対して通知した。(甲8)
 ウ 原告は、令和2年4月16日、本件訴訟を提起した。
 2 争点及びこれに対する当事者の主張
 (1) 適法な監査請求の前置の有無(争点1)
(被告の主張)
 ア 住民監査請求に当たっては、問題とする財務会計上の行為(公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行又は債務その他の義務の負担)又は怠る事実(公金の賦課若しくは徴収又は財産の管理を怠る事実)が違法又は不当であるとする具体的な理由を摘示する必要があるところ、本件監査請求は、原告が問題としている財務会計上の行為又は怠る事実が何であるか明らかでなく、間題とする財務会計上の行為又は怠る事実が違法又は不当であるとする具体的な理由の摘示を欠いている。
 イ 本件監査請求は、専ら松本の業務配転や任命といった人事管理に関する事項を問題としており、財務会計上の行為又は怠る事実に関する問題の是正を求めるものではなく、不適法である。
 ウ 原告は、松本に対する給与等の支払を不当な公金の支出としているところ、本件監査請求は令和2年2月28日にされているから、その時点で1年を経過している平成31年2月27日以前の松本の給与等の支払に係る本件監査請求は不適法である。
(原告の主張)
 否認ないし争う。
 (2) 本件各行為の違法性の有無(争点2)
(原告の主張)
 ア 松本は、脳内出血の後遺症により、右上肢の機能に著しい障害があり、右下肢の機能が全廃している。
 したがって、上記の状態にある松本について、福島が、平成21年度、教育委員会事務局特別支援教育室の次長に任命したこと(本件行為1)及び福島、吉野及び笠原が、同年度から平成30年度までの間、その給与を、適切な人事評価により業務遂行能力に応じた水準まで切り下げるべきであったのにこれを怠ったこと(本件行為2から4まで)は、地方公務員法23条、23条の2及び23条の3等に違反する。
 イ また、右上下肢に機能障害が残る松本は、平成31年4月1日に再任用され、会計局審査課に配属された。しかし、松本が、仕事ができず寝てばかりいたため、同課の次長及び国費 決算係長が、松本の主治医に対し、松本の健康状態を問い質したところ、主治医は、脳内出血の後遺症として高次脳機能障害があり、認知症と同じ状態であるとの診断結果を説明した。
 したがって、上記の状態にある松本について、堀越が、平成31年4月1日、再任用したこと(本件行為5)及び同月以降、その給与を、適切な人事評価により業務遂行能力に応じた水準まで切り下げるべきであったのにこれを怠ったこと(本件行為6)は、地方公務員法23条、23条の2及び23条の3等に違反する。
(被告の主張)
 復職後の松本の主な業務は、所属長の補佐や所属職員の管理監督であり、多くは常時継続的に扱うものではなく、身体能力を必要としないデスクワークであった。確かに、松本には右上下肢の機能障害による不自由があり、事務作業に慣れるまでに時間を要することは否定できないが、その職務を遂行できない状態ではなく、上記機能障害に起因する職務遂行上の支障により、分限処分等を検討しなければならない状態ではなかった。
 そして、平成21年4月1日に教育委員会事務局特別支援教育室次長に任命された以降の松本の状況は上記と同様であり、松本には身体の故障はあるものの、職務の遂行に支障があり又はこれに堪えないとの事実等は認められず、給与を引き下げるような事由はない。
 したがって、本件各行為に原告主張に係る違法はない。
 (3) 損害(争点3)
(原告の主張)
 障害者雇用のための群馬県の制度であるチャレンジウィズぐんまにおいて支払われている給与(月額10万円以上15万円未満)を基準とすれば、松本が教育委員会事務局特別支援教育室及び教育委員会事務局特別支援教育課の次長を務めた10年間では、松本に対して、少なくとも年間1020万円の給与等を過大に支払い続けていたことになる。
 また、チャレンジウィズぐんまにおいて支払われている給与を基準とすれば、松本が再任用された後の1年間では、松本に対して、少なくとも年間200万円の給与等を過大に支払い続けていたことになる。
 したがって、被告には、少なくとも、上記10年間で合計1億0200円、再任用された後の1年間で200万円の損害が生じている。
(被告の主張)
 否認ないし争う。
第3 当裁判所の判断
 1 争点1(適法な監査請求の前置の有無)について
 (1) 財務会計上の行為又は怠る事実が違法又は不当であるとする具体的な理由の摘示について
 被告は、本件監査請求は、問題とする財務会計上の行為又は怠る事実が明らかではなく、問題とする財務会計上の行為又は怠る事実が違法又は不当であるとする具体的な理由の摘示を欠いていると主張する。
 住民監査請求においては、その対象が特定されていること、すなわち、対象とする財務会計上の行為又は怠る事実が、他の事項から区別し特定して認識することができるように、個別的、具体的に摘示されていることを要する。しかし、その特定の程度としては、監査請求書及びこれに添付された事実を証する書面の各記載、監査請求人が提出したその他の資料等を総合して、住民監査請求の対象が特定の財務会計上の行為又は怠る事実であることを監査委員が認識することができる程度に摘示されているのであれば、これをもって足り、上記の程度を超えてまで財務会計上の行為又は怠る事実を個別的、具体的に摘示することを要するものではない(最高裁平成16年11月25日第一小法廷判決民集58巻8号2297頁参照)。
 本件監査請求の監査請求書に当たる群馬県職員措置請求書(甲1)には、松本について、①脳卒中で倒れ右半身に麻痺が残ったが、職場復帰し、次長として教育委員会特別支援教育課に在籍し、平成31年3月に定年退職したが、再任用され会計局審査課に配属されたこと、②他の職員はほとんど寝ている様子しか見かけておらず、誰もいないときには倒れてしまうのではないかと心配するくらい身体を倒して寝ており、よだれを垂らしている姿が目撃されていること、③その能力に応じた業務に従事し、それに見合った報酬を受け取るべきであること、④松本に対する過大な報酬の支払は、地方自治法2条14項及び地方公務員法35条に違反していること、⑤これにより、松本に過大に支払われた給与等の相当額が群馬県の損害となっていること、⑥被告に対し、原因究明、再発防止等に取り組むよう勧告するとともに、松本から上記相当額を回収したり、総務部人事課及び教育委員会の歴代幹部らに対して上記損害の賠償を請求したりするよう勧告することを求めることが記載されている。
 このような群馬県職員措置請求書の記載内容からすれば、本件監査請求は、松本に対する給与等の支払が、松本の身体状況や職務状況からすると過大であり違法であるから、必要な措置を採るよう勧告することを群馬県監査委員に求めたものであって、同監査委員において、松本の給与等に関する財務会計上の行為又は怠る事実が監査の対象となっていることを認識することができる程度に摘示されているといえる。
 また、前記のとおり、群馬県職員措置請求書には、松本の給与等に関する財務会計上の行為又は怠る事実が地方自治法2条24項及び地方公務員法35条に違反していることが具体的に摘示されており、違法とする根拠法条の摘示に欠けるところもない。
 したがって、被告の上記主張は採用することができない。
 (2) 本件監査請求は財務会計上の行為又は怠る事実に関する問題の是正を求めるものかについて
 被告は、本件監査請求は、専ら松本の業務配転や任命といった人事管理に関する事項を問題としており、財務会計上の行為又は怠る事実に関する問題の是正を求めるものではないと主張するが、前記(1)のとおり、本件監査請求は、松本の給与等に関する財務会計上の行為又は怠る事実について、その是正を求めるものといえる。
 したがって、被告の上記主張は採用することができない。
 (3) 監査請求期間について
 ア 本件各行為について監査請求期間の制限の適用があるか
 被告は、本件監査請求が令和2年2月28日にされているから、その時点で1年を経過している平成31年2月27日以前の松本の給与等の支払に係る本件監査請求は不遥法であると主張する。
 財産の管理を怠る事実を対象とする住民監査請求については、監査請求期間の制限を定める地方自治法242条2項の適用はないところ、本件行為2から4まで及び6は、いずれも、松本の給与について、適切な人事評価により業務遂行能力に応じた水準まで切り下げるべきであったのにこれを怠ったという財産の管理を怠る事実を問題とするものであるから、監査請求期間の制限の適用はない。これに対して、本件行為1及び5は、松本を、教育委員会事務局管理課の次長に任命した、又は再任用したという財務会計上の行為を問題とするものであるから、財産の管理を怠る事実ではなく、監査請求期間の制限の適用があるというべきである。
 イ 監査請求期間の経過の有無
 前記前提事実等のとおり、松本は、平成21年度、教育委員会事務局特別支援教育室の次長に任命されたところ、本件監査請求は令和2年2月28日にされており、本件行為1のあった日から1年の監査請求期間を経過している。
 この点、監査請求期間の経過について「正当な理由」(地方自治法242条2項ただし書き)があれば、本件行為1に対する本件監査請求が適法になる余地があるものの、原告は、上記「正当な理由」について、何ら主張立証しない。
 ウ 小括
 以上によれば、本件行為1に対する本件監査請求は不適法であるから、本件訴えのうち、本件行為1を対象とする部分は不適法である。
 他方、本件訴えのうち、本件行為2から6までを対象とする部分は、適法な監査請求を前置したものであって、不適法とはいえない。
 2 争点2(本件各行為の違法性の有無)について
 (1) 認定事実
 前記前提事実等のほか、本文中に掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
 ア 松本は、平成20年6月23日当時、教育委員会事務局管理課の次長であったところ、同日、脳内出血を発症した。そのため、松本は、同日から同年12月19日まで病気休暇を取り、同月20日から平成21年1月16日まで休職した。
 松本は、上記病気休暇及び休職の間、脳内出血の治療を受けたが、右上下肢に機能障害が残り、身体障害者障害程度等級2級に認定された。
 イ 松本は、平成21年1月13日、福島に対し、復職願及び「平成21年1月16日退院の予定です。退院後、軽作業であれば復職可能と思われます。」と記載された沢渡温泉病院医師作成の同月8日付け診断書を提出した。
 これを受け、教育委員会事務局管理課長は、同局総務課長に対し、「職員の復職願いについて(副申)」と題する書面を提出した。同書面には、専門医が職場復帰可能としていること及び松本の家族からの聴取によれば、療養の成果が確実に現れていることから、復職を承認されたい旨記載されている。
 上記の結果、松本は、同月17日、教育委員会から復職を命じられ、教育委員会事務局管理課の次長として復職した。(乙11~14)
 ウ 松本は、平成21年度、教育委員会事務局特別支援教育室の次長に任命され、同年度から平成27年度までの間、同次長を、平成28年度から平成30年度までの間、教育委員会事務局特別支援教育課の次長を、それぞれ務めた。
 松本の当時の分掌事務は、所属長の補佐、所属職員の指揮監督、男女共同参画推進責任者、情報公開・個人情報保護、広報・広聴 苦情処理、総合行政の推進、人事管理 人材育成、業務の効率的推進及び職員団体との交渉 調整であった。(乙16、17)
 エ 教育次長が総務部長人事課に対して提出した、平成30年10月17日付け「定年退職者等の再任用に係る意見書」には、松本について、「身体的障害を有するが、心身ともに健康で、勤労意欲もあることから適任である。」との意見が記載されている。(乙23)
 オ 松本は、平成31年3月31日に定年退職し、同年4月1日に再任用され、会計局審査課の国費·決算係に配属された。
 松本の当初の分掌事務は、国庫金の支出負担行為の確認に関すること、国庫金の収入  支出の審査に関すること、国庫金の債権管理に関すること、国費会計事務支援に関すること、計算証明に関すること、「国費会計事務の手引き」に関すること、国の会計事務研修に関すること及びコンピュータ管理担当者の業務に関することであり、いわゆるデスクワークであった。もっとも、松本は、そのほとんどをこなすことができない状況であった。(乙27、証人今井)
 力 平成31年4月以降、松本が時々居眠りしていることがあるとの報告がされるようになった。
 松本は、令和元年6月から7月頃、睡眠時無呼吸症候群と診断され、これに対する治療を開始した。その結果、その症状が改善し、業務の遂行に当たって障害となるような居眠りは見られなくなった。(乙32、乙34、証人今井、証人清水、証人島方)
 キ 会計局審査課の国費 決算係長と会計局審査課の次長は、松本の記憶力や理解力に何らかの障害があるのではないかと思われる出来事があったため、令和元年7月半ばから同年8月頃、松本に同行し、同人の老年病研究所附属病院のリハビリの主治医に意見を聞いたところ、同主治医は、同人の状態について、高次脳機能障害と言われればそうではないかとの意見を述べた。もっとも、松本について、高次脳機能障害の診断はされなかった。(乙32、証人今井)
 ク 会計局審査課の国費 決算係の職務は、作業内容が複雑であり、これまで次長という管理職としての業務を中心に務めてきた松本にとってなじみのないものであって、精神的及び肉体的な負担が大きい業務であったため、松本は、令和元年9月、会計局審査課の審査 指導係に係替えされた。
 松本の当時の職務内容は、群馬県庁の各課から提出される経費の支出に関する書類の審査等であり、ある程度マニュアル化された複雑ではない仕事を担当することとなり、その業務の遂行に問題は見られなくなった。 (乙3 4、証人今井)ケ 松本は、令和2年度、会計局会計管理課に配属された。
 松本の当時の分掌事務は、一般会計、特別会計の支出負担行為及び支出命令の審査確認に関すること、例月現金出納検査資料に関すること(例月検査資料の確認)であり、いわゆるデスクワークであった。また、松本の業務の遂行に問題は見られなかった。(乙28、証人清水)
 (2) 判断
 ア 原告は、松本について、脳内出血の後遺症により右上肢の機能に著しい障害があり、右下肢の機能が全廃しているから、本件行為2から6までは違法であると主張する。
 確かに、前記認定事実アのとおり、松本には、脳内出血により右上下肢に機能障害が残り、身体障害者障害程度等級2級に認定されている。
 しかし、前記認定事実イのとおり、松本が復職願とともに提出した診断書には、「平成21年1月16日退院の予定です。退院後、軽作業であれば復職可能と思われます。」と記載され、これを受けて、教育委員会事務局管理課長が、同局総務課長に対し、専門医が職場復帰可能としていること及び松本の家族からの聴取によれば、療養の成果が確実に現れていることから、復職を承認されたい旨記載された「職員の復職願いについて(副申)」と題する書面を提出しているから、松本は、復職時、軽作業であれば業務の遂行が可能な状態であったと認められる。また、前記認定事実ウ、オ、ク及びケのとおり、平成21年1月17日に復職して以降の松本の職務内容は、いわゆるデスクワークであったから、松本の右上下肢の機能障害が、同人の業務の遂行に著しい影響を生じさせていたとは認め難い。実際に、前記認定事実工のとおり、平成30年10月17日付け「定年退職者等の再任用に係る意見書」には、松本について、 「身体的障害を有するが、心身ともに健康で、勤労意欲もあることから適任である。」との意見が記載されており、松本の業務遂行能力に問題があったとは認められない。
 イ また、原告は、松本が、再任用された平成31年4月1日以降、仕事ができず寝てばかりいたところ、同人の主治医が脳内出血の後遺症として高次脳機能障害があり、認知症と同じ状態であるとの診断結果を説明したことから、本件行為6は違法であると主張する。
 確かに、前記認定事実力及びキのとおり、松本について、平成31年4月以降、時々居眠りしていることがあるとの報告がされ、令和元年7月半ばから同年8月頃、同人の老年病研究所附属病院のリハビリの主治医が、同人の状態について、高次脳機能障害と言われればそうではないかとの意見を述べている。
 しかし、前記認定事実力のとおり、松本は、令和元年6月から7月頃、睡眠時無呼吸症候群と診断され、これに対する治療を行った結果、その症状は改善し、業務の遂行に当たって障害となるような居眠りは見られなくなったこと及び前記認定事実キのとおり、松本について、高次脳機能障害の疑いが指摘されたものの、その診断まではされていなかったことからすれば、上記居眠り及び高次脳機能障害の疑いをもって、松本の業務遂行能力に重大な問題があったとはいえない。
 ウ この点、前記認定事実オのとおり、松本は、平成31年4月1日に再任用され、会計局審査課の国費 決算係に配属された当初は、その職務のほとんどをこなすことができない状況であった。
 しかし、前記認定事実ク及びケのとおり、松本について、①再任用当初に配属された会計局審査課の国費  決算係の作業内容が複雑であり、これまで次長という管理職としての業務を中心に務めてきた同人にとってなじみのないものであって、精神的及び肉体的な負担が大きい業務であったこと、②これを受けて、令和元年9月、同課の審査 指導係に係替えされ、ある程度マニュアル化された複雑ではない仕事を担当することとなったため、その業務の遂行に問題は見られなくなったこと、③令和2年度、会計局会計管理課に配属された後もその業務の遂行に問題が見られなかったことからすれば、松本が職務のほとんどをこなすことができない状況は一時的なものであって、その後に係替えされた結果、上記状況が解消され、令和2年度に入っても業務の遂行に問題は見られなかった。そうだとすれば、松本の上記状況を考慮しても、なお、松本の給与について、適切な人事評価により業務遂行能力に応じた水準まで切り下げるべきであったとはいえない。
 エ したがって、原告の前記各主張は、いずれも採用することができない。
第4 結論
 以上によれば、本件訴えのうち、福島が平成21年度に松本を教育委員会事務局特別支援教育室の次長に任命したことについて、同人に対し、1020万円及びこれに対する平成22年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求するよう求める部分は不適法であるから却下し、その余の請求はいずれも理由がないから棄却することとする。

   前橋地方裁判所民事第1部

     裁判長裁判官  田 中 芳 樹
        裁判官  杉 浦 正 典
        裁判官  清 水 瑛 夫

これは正本である。
令和4年9月7日
  前橋地方裁判所民事第1部
    裁判所書記官 橋 本 勇 一
                 前橋20-008584
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 上記の通り、前橋地裁は、被告群馬県が出してきた書証や人証を全面的に採用し、当会が独自に行った内部調査の情報を全く無視してしまい、原告に対して敗訴判決を言い渡しました。この背景には、なにがなんでも、行政内の不祥事に目をつむり、屁理屈を付けてもなお、行政を勝たせなければならない、ヒラメ裁判官の存在があります。

■3年間にわたる上記の一審の結果は以上の通りです。残念ですが、現在の我が国の裁判所では、行政最優先の判決を出すのが通例であり、今回もご多分に漏れない結果となりました。控訴するかどうかは、9月17日の当会の例会で協議して決める予定です。

 これまで、この問題について、数々の情報をお寄せいただいた関係者の皆様に対してこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。

 今回の事件で痛感させられたのは、県庁内で不適切な人事管理がまかり通っている実態が厳然と存在しているにもかかわらず、そうした実態を是正しようと、県庁内の人事課に報告しても、取り上げてもらえないどころか、却って組織として好ましくない人物というレッテルを張られる懸念があります。

 本来、群馬県は組織内に独立機関を設置し、通報者の秘密を守りながら、庁内の不適切で不公平な人事管理を撲滅する努力をしなければならないはずです。しかし遺憾ながら、群馬県はそうしたあたりまえのことをしようとしません。ですので、今後とも、群馬県や県内自治体において、人事管理に不合理な実態が起きている場合、どこに相談してよいかわからないと迷ったら、遠慮なく当会に連絡してください。通報者・相談者の秘密は固く厳守しますので安心して情報をお寄せ下さるようお願いいたします。

■なお、松本高志氏は今年2月、発作が再発して入院されたとの情報が被告群馬県の裁判資料に記されております。そのため、今年度令和4年度は再任用職員としての契約をされていません。実際に、令和4年度群馬県職員録にも、同氏の名前は掲載されていません。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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