市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

被害者何万人も出してやっと逮捕されたてるみくらぶ社長の裏で息を潜める日本旅行業協会の無責任

2017-11-21 23:24:00 | はらぼじ観光被疑事件

■2017年3月27日に倒産したてるみくらぶの事件は詐欺行為ではないかとマスコミや業界筋でも騒がれましたが、7カ月余り経った11月8日に詐欺の容疑で逮捕されました。本来、旅行業法ではこうした事態が起きて、利用者が損失を被らないように、わざわざ旅行業協会という官製主導組織が旅行業法によって設立されています。しかしその実態は官僚の天下り先の受け皿になり下がっています。今回、損害の僅か1パーセントしか救済されないのは、旅行業法そのものを運用する権限を持つ旅行業協会に問題があるのです。旅行業界の発展は、もはや旅行業法のような現実離れをしたルールでは却って弊害があることを、図らずも今回のてるみくらぶ破産事件が証明しました。この事件については当会の次のブログをご覧ください。
○2017年4月6日:長年顧客に喜ばれた「はらぼじ観光」が証明した「てるみくらぶ」破産で何万人を大損させた旅行業法の無意味
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2284.html#readmore
○2017年5月1日:被害者ゼロのはらぼじ観光を訴え百億円詐欺のてるみくらぶを訴えない旅行業協会の実態を消費者庁に直訴
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2306.html#readmore
○2017年5月18日:被害者ゼロのはらぼじ観光を訴え百億円詐欺のてるみくらぶを訴えない旅行業協会の実態を公取委に直訴
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2312.html#readmore
 当会では、業界に君臨する官製の旅行業協会という無駄な組織を淘汰するためにも、消費者庁や公正取引委員会の積極的な行動を期待して、公開書簡を双方に提出しましたが、いずれも無しの礫です。

■今回の逮捕に関連する報道記事を見てみましょう。

**********トラベルボイス2017年11月6日
てるみくらぶ破綻の真相が明らかに、3年前から「債務超過」と「多額の粉飾決算」、都内で債権者集会を実施

てるみくらぶ債権者集会が行われた会場(2017年11月6日撮影)
 2017年11月6日、大きな被害を出して破綻した「てるみくらぶ」の債権者集会が都内で行われた。そこでは、新たに同社が2013年4月には月次の総利益がマイナスになっており、その後2014年9月期には債務超過に陥っていた事実が明らかになった。
 債権者に配布された資料には「多額の粉飾決算」という項目が設けられ、過去7期分の税務申告書上の貸借対照表と損益計算書の実態(粉飾決算修正前のもの)と粉飾決算による修正後の数値が示され、出席した債権者はその事実に改めて怒りを覚えたという。
 また、債権者に対して破たんにいたった事情についても示した。その内容は、2012年頃からLCCの台頭や航空券の仕入れなどの環境変化によってビジネスモデルの転換が図れず、格安で旅行を販売することで運転資金を確保。資金集めのための赤字販売を続け、それが「雪だるま式に増加していった」としている。
 破産管財人の調査では、2013年4月には月次の総利益がマイナスに。その後、繁忙期を除いて月次で数百万円から数千万円の粗利益がマイナスになる状況が続き、2014年9月期には債務超過に陥っていた。その後も、運転資金を調達するために、赤字商品の販売を続けた結果、2015年1月以降は月次の粗利益が全てマイナスになったという。
 2017年2月末段階で、宿泊施設に対する取引債務5億6600万円の遅滞が発生し、破たん直前、3月23日が期限だったIATAへの支払い3億7100万円を実行できなかった。さらに、24日以降の支払期限がくる宿泊施設や海外の現地ランドオペレーターなどに対する債務の支払いの見通しが立たず、同27日に破産手続き開始に至った。
 一体経営をしていた関連会社、「自由自在」や「てるみくらぶホールディングス」についても、てるみくらぶの破綻によって資金不足で連鎖した。
 なお、債権者によると代表取締役の山田千賀子氏も破産手続きに入ったことが説明されたという。
★今後の手続きは?
 破産管財人の資料によると、てるみくらぶ破産手続きの中で過年度の更生請求などによる税金の還付が認められる可能性もあるという。その配当を債権者に「配当可能性はあるものと判断」していることが示された。一方で、「自由自在」「てるみくらぶホールディングス」の配当可能性は低いことも明示されている。
 被害者に対する救済では、日本旅行業協会(JATA)が行っている弁済制度もある。JATAでは、現在、弁済申請のあった書類の認証審査しているところ。それが終わった段階で、認証された被害者には弁済される金額などが通知されることになる。3月の段階で、その処理は8~9か月かかる見込みを示しており、年内から遅くとも年明けには被害者への通知とともに弁済の全体像が明らかになるだろう。
★どんな債権者集会だったのか?
 集会に参加した債権者(一般旅行者)によると、収容人数約1600人の会場で1階席の約半分弱が埋まった。約500人前後が出席したものとみられる。冒頭では、山田社長が債権者に対して謝罪。上記の粉飾決済が指摘されているものの、破綻したこと自体は計画的でなかったことを話したという。
 時には、ヤジや怒りの声が上がることもあったというが全体的に債権者は冷静に話にききいったという。質疑応答の時間には、約20名の債権者が質問。東京商工リサーチによると、質問内容で社長の犯罪行為の有無を問う質問もあった。そこでは、破産管財人の弁護士・土岐敦司氏が「捜査機関に資料は提供している」と回答した。全体の質問と回答での債権者の感想では、明確に納得できる回答が得られるものではなかったというコメントが多く聞かれた。
 また、会場前には多くの報道陣が訪れ、被害者へのインタビューを行うなど、社会的なインパクトが大きな事件だったことを物語る光景が広がっていた。

会場前に集まる報道陣
 次回の債権者集会は来年の5月28日。詳細は管財人ホームページで案内される。
(トラベルボイス編集部 山岡薫)

**********産経ニュース2017.11.8 11:02
「てるみくらぶ」山田千賀子社長らを逮捕 2億円詐取の疑い 警視庁

警視庁渋谷署に入る「てるみくらぶ」社長の山田千賀子容疑者=8日午前10時19分
 今年3月に経営破綻した旅行会社「てるみくらぶ」(東京)をめぐり、虚偽の決算書類を作成し、銀行から融資名目で現金約2億円をだまし取ったとして、警視庁捜査2課は8日、詐欺などの疑いで、同社社長の山田千賀子容疑者(67)=東京都町田市=と、元経理責任者の笹井利幸容疑者(36)=埼玉県春日部市=を逮捕した。
 逮捕容疑は、2人で共謀し、経営状態が良好であるように見せかけた決算書類を数回にわたり三井住友銀行に提出。融資名目で約2億円をだまし取ったとしている。山田容疑者は6日に都内で開かれた債権者集会で粉飾決算を認めていた。
 破産開始申立書などによると、同社は平成26年9月期以降、慢性的な赤字が続いていたが、利益を水増ししたり支出を過小計上したりするなどの手口で、黒字に見せかける粉飾決算を繰り返していた。28年9月期では、決算書類上は1億2000万円の営業利益を計上したが、実際には50億円の営業損失を計上していた。
 捜査2課は、同社は詐取した融資金を運転資金に充てていたとみて、詳しい資金の流れを調べている。
 同社は、破綻直前まで「現金一括入金キャンペーン」とする広告を出したり、契約者に早期に旅行代金を支払うよう求めたりしており、資金繰りが悪化した“自転車操業”の状態だったとみられる。破綻により、同社は契約者ら約3万6000人に約100億円の負債を抱え、計8~9万人に影響が出たとされる。
 同社は10年設立。大型旅客機の空席を安く仕入れてインターネットで販売する手法で急成長したが、近年は航空会社が需要に応じて旅客機を小型化したり、旅行客が代理店を通さずに航空便やホテルを予約する傾向が強まったりしたことで業績が低迷していた。

**********産経ニュース2017.11.20 16:00
【衝撃事件の核心】てるみくらぶは禁断の「粉飾くらぶ」 逮捕2日前、「カネ返せ!」怒号飛び交った債権者集会

会見で破産手続きの開始を報告する「てるみくらぶ」社長の山田千賀子容疑者=今年3月、東京都千代田区(寺河内美奈撮影)
 今年3月、経営破綻状態となり、一斉に航空券が発券できなくなった「てるみくらぶ」(東京)。虚偽の決算書に基づき金融機関から約2億円をだまし取ったとする詐欺容疑で逮捕された社長の山田千賀子容疑者(67)は、破綻の危機に直面しながらも高額の役員報酬を受け取っていた。さらに破綻直前まで集客を続けており、破綻で前払い金が返還されていない顧客や、海外に“置き去り”にされた旅行客らの怒りは大きい。長年にわたる無軌道経営に警視庁捜査2課のメスが入ったものの、顧客救済までの道はなお険しい
★余計に出費、海外に置き去りの不安も
 「航空券が発券されない可能性があるので、空港には行かないでください」
 3月下旬、てるみくらぶを通して海外旅行をしていたり、旅行を計画したりしていた8万~9万人ともされる人々に突然、こんな電子メールが届いた。
 札幌市に住む娘と孫2人と一緒に行くタイ旅行を翌日に控え、成田空港近くのホテルに宿泊していた川崎市の女性会社員(57)は「何の説明もないままメールは届いた。どうしていいのか分からなくなった」と当時の心境を振り返る。
 女性は20万円を超す旅行代と、4人での宿泊代などで計約50万円が余計にかかったが、同社からの返金はない。
 既に海外にいた旅行客はさらなる苦境に立たされた。宿泊を予定していたホテルに「代金が支払われていない」といった理由で宿泊を拒否されたり、帰りの航空便のチケットが発券できなくなったりするトラブルに見舞われた。
 旅行先のハワイでこうした状況に直面した都内の女性会社員は「『帰れないかもしれない』と不安に襲われた。何度も利用していたのに信頼を裏切られた」と唇をかんだ。
★悪循環に陥り 慢性的な赤字に
 こうした事態が起きた原因は、社会情勢の変化に対応できないまま、業績不良に陥っていった同社の無責任な経営体質だ。
 平成10年に設立された同社は、大型旅客機の空席を安く仕入れ、格安で海外旅行ツアーなどを提供するというビジネスモデルで急成長した。
 しかし、24年ごろから格安航空会社(LCC)が台頭し始めたほか、大手の航空会社も空席を減らすために旅客機の小型化を進めた。その結果、空席の確保が困難になり、必然的にコストは増加することとなった。
 同社は旅行ツアーなどの契約者が支払った前払い金を原資に、航空会社や宿泊施設への支払いを行っていた。そのため、LCCなどとの価格競争による利益の減少やコスト増で経営環境が悪化していたにもかかわらず、さらに価格を下げて旅行者を集め、当面の運転資金を確保する必要性に迫られた。こうした“悪循環”の中、赤字が増え始め、26年9月期からは慢性的に債務超過状態となった。
★経営に根付いた粉飾体質
 そこで、窮地に陥った同社が手を伸ばした“禁断の果実”が粉飾決算だった。
 捜査2課などによると、山田容疑者は赤字を黒字に見せかけるように決算書類を改竄(かいざん)。経営状況が順調であるように見せかけた決算書類を作成した上で、メーンバンクである三井住友銀行に提出し、融資名目で現金約1億9400万円をだまし取ったとされる。金融機関に対しては「航空機をチャーターするために融資が必要」などと嘘をついていたという。だまし取った現金は、同社の運転資金に充てられていたとみられる。
 赤字を黒字に偽装する粉飾決算は25年9月期から始まっていたが、それ以前にも、黒字を少なく見せかける粉飾決算を行っていたことも判明。法人税を免れる意図があったとみられ、粉飾体質が長期間にわたって経営に根付いていたことをうかがわせる。
★顧客救済難しく
 今回、事件の直接の被害者は銀行だが、楽しみにしていた旅行を台無しにされ、返金も受けられていない旅行客らの怒りは今も収まっていない。
 今月6日、都内で開かれた債権者集会では、出席した旅行客たちから山田容疑者への不満が爆発した。
 管財人らからの現状説明が終わり、質疑応答に移ると、参加者からは「客に対する詐欺だとは思わないのか」などの質問が相次いだ。こうした質問が出るたびに会場には拍手がこだました。
 逮捕2日前の山田容疑者は「詐欺だと思ったことはありません。事業継続のために必死だった」と消え入りそうな声で釈明したが、納得できた顧客は少なかったようだ。
 参加者の男性は「経営破綻のかなり前から赤字販売を続け、赤字が増え続けている。こんな状態ではいずれ破綻するのは誰でも分かる。あなたがもっと早く会社をたたむ決意をしていれば、こんな被害は生まれなかった」と糾弾した。
 また、同社は破綻直前まで広告を出し続け、顧客に「一括ですぐに代金を支払えば割引になる」などと入金をあおっていた。山田容疑者はこれについて「売り上げを伸ばそうとしていたが、努力が実らなかった」と話すにとどまった。
 さらに債権者集会では、債務超過に陥った以降も、山田容疑者が年間3300万~3400万円の役員報酬を受け取っていたことも明かされた。その際には参加者から「どんな顔してもらってたんだ」「金返せ!」と怒号が飛んでいた。
 旅行客を海外に置き去りにするという前代未聞の事態を引き起こした、てるみくらぶ。自転車操業を続けた無軌道経営に巻き込まれた被害者の救済が待たれるが、救済原資は限られているとみられ、顧客の怒りや混乱が収束する見通しは立っていない

**********週刊実話 2017年11月21日 17時00分 (2017年11月22日 16時52分 更新)
山田千賀子社長逮捕 夢砕いた『てるみくらぶ』の根深い罪
 今年3月に経営破綻した格安旅行会社『てるみくらぶ』(東京・渋谷区)の債権者集会が去る11月6日に行われ、会場には取引先や顧客を含めた多数の債権者が押し寄せた。
 「8日には、三井住友銀行に虚偽の財務書類を提出して2億円を詐取した疑いで、同社の山田千賀子社長と元経理担当者の2人が警視庁に逮捕されました。資金の流れが不透明で、資産を隠している可能性もあります」(全国紙社会部記者)
 当時、予定されていたツアーが急遽中止となり、海外渡航中だったツアー客約2500人は航空券やホテルを自力で再手配。追加購入を余儀なくされる事態となった。
 「ハワイ挙式で親戚の渡航費まで支払いましたが、空港で航空券がキャンセルされていたことが発覚し、泣きながら帰宅しました」(20代女性)
 「卒業旅行でグアムに向かったところ、現地のホテルで倒産を知り、ホテル代金と帰国する航空券代金25万円を支払う羽目になりました」(20代男性)
 被害に遭った旅行客への弁済率は約1.1%とわずかで、仮に10万円の旅行代金を支払った場合、たった1100円しか還付されない。顧客や銀行から集めた金の行方もいまだに不明瞭な部分が多くある。
 「倒産理由は“粉飾”ですよ。銀行から借り入れをするために架空計上していたのです。2012年頃からの格安航空会社の台頭で、旅行業界では価格破壊が起きていました。特にここ数年で航空会社からのリベートが急激に減った。
 粉飾の手法として、航空会社からのリベートを悪用して売り上げを水増しすることが多いのです。さらに、売り上げを確保するために採算割れのツアーを販売するのはザラ。近年は訪日外国人旅行者の急増や為替の変動によって、格安航空券の大量仕入れができなくなっています。特に中堅以下の旅行会社は目玉となる格安航空券の仕入れが厳しく、旅行業者の淘汰が加速しています」(旅行代理店関係者)
 いずれにせよ、顧客や銀行を騙し、“夢”まで打ち砕いた山田社長の罪は重い。

**********トラベルボイス2017年11月8日
てるみくらぶ事件で旅行業協会がコメント、旅行業界からの逮捕者に遺憾、被害者への弁済支払いは年内に
 てるみくらぶ代表取締役の山田千賀子氏らの逮捕を受け、同社が正会員として加盟していた日本旅行業協会(JATA)は理事長・志村格氏のコメントを発表。志村氏は「旅行業界から逮捕者が出たことは遺憾」とし、「警察の捜査で事実が解明されることを望みます」とした。
 JATAでは弁済制度を通じ、被害者に対する弁済手続きを進めており、年内に完了する予定。12月中の支払に向けて最終確認作業中で、詳細が分かり次第発表する。
 さらに、再発防止制度に対して観光庁と協議をしていることに触れ、「業界の信頼回復に努めたい」との考えも示した。
★観光庁の再発防止制度設計は12月から開始
 観光庁では、てるみくらぶ経営破たんの影響を踏まえ今年4月、「新たな時代の旅行業法制に関する検討会」の下部組織として、「経営ガバナンスワーキンググループ」を設置。「経営ガバナンスの強化」と「弁済制度のあり方見直し」の2点を軸に議論を進め、今夏に再発防止案の最終取りまとめを行なった。
 現在、再発防止策の制度設計と実施に向けた調整を行なっているところで、公表されたスケジュールによると、広告募集や旅行者募集のあり方に関しては、募集広告での前受け金の使途明示などが12月に開始される予定。2019年4月には第1種旅行会社を対象に、観光庁への決算申告書や納税証明書、純資産と取引額の提出、および第三者機関の通報窓口の設置などが行なわれる予定だ。
 その他、制度設計のスケジュールなど詳細は、以下の資料に記載。
※観光庁・新たな時代の旅行業法制に関する検討会「経営ガバナンスワーキンググループ とりまとめ」(PDFファイル、12ページ)↓
http://www.mlit.go.jp/common/001200937.pdf
**********

■案の定というべきか、被害者の被った損害はほとんど弁済される可能性はありません。債権者会議では、被害に遭った顧客の怒りが渦巻いたといいますが、このような詐欺師が経営していた旅行会社をなぜ旅行業協会はのさばらせていたのでしょうか。

 本来、債権者会議で謝罪しなければならないのは、こうした無法会社の存在を許して免許を与えてきた旅行業協会なのではないでしょうか?

 当会会員が経営していた旅行会社「はらぼじ観光」は、顧客や旅行業者から満足され感謝され、誰一人被害者を出さなかったにもかかわらず、旅行業法違反だとして逮捕され、廃業に追い込まれてしまいました。

 こうした本末転倒の事態を引き起こした旅行業法は直ちに見直されなければならず、それには旅行業協会という天下り機関の存在を問う必要があります。当会は引き続き、実態にそぐわず、旅行者の安全・安心を保証できない現在の旅行業法とその利権に胡坐をかいている旅行業協会の責任を追及してまいります。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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旅行業界の寡占に関心の薄い公正取引委員会から通知書が到来・・・その内容は?

2017-08-16 23:20:00 | はらぼじ観光被疑事件

■旅行業界に造詣の深い当会会員から、今年2017年3月27日に経営破綻した格安旅行会社「てるみくらぶ」(東京)による3万6000件超え、総額約100億円にも上る旅行代金踏み倒し事件を教訓に、我が国の旅行業界に巣食う利権団体である全国旅行業法協会と日本旅行業協会による業界操作の悪弊の実態を消費者庁と公正取引委員会に通報していたところ、この度、8月8日付で公正取引委員会から書面で通知書が送られてきました。本件については次のブログを参照ください。
○2017年4月6日:長年顧客に喜ばれた「はらぼじ観光」が証明した「てるみくらぶ」破産で何万人を大損させた旅行業法の無意味
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2284.html#readmore
○2017年5月18日:被害者ゼロのはらぼじ観光を訴え百億円詐欺のてるみくらぶを訴えない旅行業協会の実態を公取委に直訴
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2312.html#readmore

公取委から簡易書留で送られてきた通知書の入った封筒。

*****公取委からの通知書*****PDF ⇒ 20170808.pdf

                         公審通第217号
                         平成29年8月8日
市民オンブズマン群馬
 代表 小川 賢 殿
                         公正取引委員会
          通  知  書
 平成29年4月6日及び同年5月16日に書面にて報告いただいた件について下記のとおり処理したので,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)第45条第3項の規定に基づき通知します。
               記
 報告いただいた情報は,独占禁止法上の問題には該当しないため,措置は採りませんでした。
**********

■このように、誠に遺憾ですが「不作為」を露呈した通知書の内容となっております。

 市民オンブズマン群馬では、当会会員からの提案に基づき、独占禁止法第45条第1項に定めのある「何人も、この法律の規定に違反する事実があると思料するときは、公正取引委員会に対し、その事実を報告し、適当な措置をとるべきことを求めることができる。」とする条項に基づき、本年4月5日付と5月15日付で次の2通の書面を公取委に郵送で提出しました。

*****公取委への申入書*****PDF ⇒ 2017005.pdf
                           2017年4月5日
〒100-8987 東京都千代田区霞が関1-1-1
公正取引委員会 御中
               〒371-0801 群馬県前橋市文京町一丁目15-10
               市民オンブズマン群馬
               代  表 小川 賢
               事務局長 鈴木 庸
               連絡先:電話 090-5302-8312(小川携帯)
                   電話 027-224-8567(事務局)
                   FAX 027-224-6624(事務局)
件名:全国旅行業協会が賛助会員として積極的に営業を認めている総合案内所の違法性について(旅行業界における「官製カルテル」の存在)
前略 平素より、消費者・生活者の立場に立ち、国民全体の利益を考えて、厚く御礼申し上げます。
 当会は、群馬県において行政の違法不当な権限の行使による税金の無駄遣いや、住民の不利益を住民の立場から是正を図ることを活動としている民間の市民団体です。
 さて、本状は旅行業界における「官製カルテル」とでも呼べる不公正な実態について、ぜひ御庁の権限で強く是正措置をとり、違法業者や行政関係者を取り締まってくださるよう強く願って、発出いたしました。
 この事件は、当会会員である松浦紀之氏が直面した業界の実態と、それに伴う二重基準の存在について、当会として到底看過できないことから支援し続けているものです。この事件の概要を次に示します。

1.事件の概要
 同氏は小さな旅行会社を経営していましたが、業種転換をはかり、旅行業者の許認可を返して、総合案内所と同じ業態で営業していました。
 即ち、お客さんから対価を受け取らず、債務が派生しない仕事に限定して、ホテル旅館の広告営業していました。しかし、群馬県警の捜査を受け、営業を休業しました。
 半年後、同氏が自分自身の事件を広く公開したところ、群馬県警から検察庁に書類送検されました。そしてさらに半年がたって、起訴されました。
 群馬県警が同氏を捜査したのは、全国旅行業協会が同氏を刑事告発したからだということを、同氏は起訴されてから法廷に提出された証拠書類を見て知りました。
 同氏は、刑事裁判において、「私を告訴した旅行業協会がその営業を認めている総合案内所と同じ事をしているのだから、私は無罪だ」と主張をしましたが、前橋簡裁では受け入れられず、1審で罰金刑が下されました。
 その後、控訴、上告しましたが、2審も3審も何の審理も行われずに、最高裁での同氏の罰金刑が確定しました。
当会は1審から上告審まで一貫して、同氏の支援を行ってまいりました。

2.旅行業法による判断と判決の相反性
 判決では「予約業務をした対価をお客さん(=消費者)から受け取ろうが、受入(=ホテル)から受け取ろうが、予約業務の対価を受け取ることは許認可がなければできない」と旅行業法にあるので、同氏が行ってきた仕事は違法だ、とされました。
 そうであれば、当然のことですが、「総合案内所も違法行為をしている」ということになります。
 このため、当会では、群馬県旅行業協会を刑事告発しました。
 「違法行為に荷担しているのに、もう一方では、同じことをしている業者を組織を使ってつぶす。これは許されることではない」という内容の告訴です。
 群馬県旅行業協会への告発を受け、総合案内所に事情を聞いた前橋東警察署は、当会に対して、摘発に至らない理由を「お客さんから対価を受け取らないから債務が派生しないためだ」と答えています。
 同封したのは同氏の再審請求に対しての前橋地方裁判所の答えです。
 このまま総合案内所が旅行業の許認可なしで営業を行う。
 そして、旅行業協会は総合案内所から定期的に会費を徴収する。
 かたや旅行業違反だとしてペナルティーを科せられ、かたや、このような違法行為が堂々と、まかり通る・・・、わかっていても警察も動かない・・・、それが法治国家のそれも違法行為を監視する立場の人たちがすることでしょうか?

3.一連の裁判の記録
 群馬県旅行業協会への告発文とそれに対する前橋東警察署の対応の記録などは証拠として文章にしてあります。それらの証拠を御庁に提出する用意もあります。
 
4.おわりに
 旅行業者の倒産で供託金の問題も出ています。インバウンドを扱う業者の多くが無資格だと言う現実があります。ネットでの予約の急増は旅行業法での想定外のことばかりです。健全な観光産業の発展のためにも、真剣な対応をお願い致します。なお、この事件の詳細は市民オンブズマン群馬代表の小川の運営するホームページ「市政をひらく安中市民の会」でも説明しています。
                        以上

*****意見書*****PDF ⇒ 20170515.pdf
                         2017年5月15日
〒100-8987 東京都千代田区霞が関1-1-1
公正取引委員会 御中
                 〒371-0801 群馬県前橋市文京町一丁目15-10
                 市民オンブズマン群馬
                 代  表 小川 賢
                 事務局長 鈴木 庸
                 連絡先:電話 090-5302-8312(小川携帯)
                     電話 027-224-8567(事務局)
                     FAX 027-224-6624(事務局)
          意 見 書
件名:てるみくらぶの倒産と旅行業法の弁財業務保証金分担金制度の弊害について

前略 当市民オンブズマン群馬より今年の4月5日付で「件名:全国旅行業協会が賛助会員として積極的に営業を認めている総合案内所の違法性について(旅行業界における『官製カルテル』の存在)」の文章はすでに送ってあります。

それに関連して、旅行業法と旅行業協会の現状が消費者被害を拡大させているという典型的な「事件」が起こりました。2017年3月27日に東京地裁に破産を申し立て倒産した“てるみくらぶ”のことです。

負債総額151億円は、旅行業ではリーマンショック後で最大と言われており、そのうち約100億円が、一般旅行者約3万6000人のもので、春休みの旅行シーズンに現地でホテルがキャンセルとなったり、帰国できない可能性が生じたり、新卒内定者50人が内定取り消しを通告されたりと、その衝撃は甚大です。

そのため、公正な取引という観点から、調査と対応をお願いしたいと思い意見書を送付致します。

旅行業法には旅行業者として認可を受けるためには供託金を観光庁または各都道府県へ納入するという事が義務づけられています。

供託金を納入する代わりに、観光庁の下部組織である日本旅行業協会、または国土交通通省の下部組織である全国旅行業協会へ「弁財業務保証金分担金」(以下「弁財保証金」と省略)を納入して旅行業の認可を受ける事もできます。

報道によれば、てるみクラブは日本旅行業協会の会員であり、観光庁への供託金ではなく、日本旅行業協会へ弁財保証金を納入し、旅行業の認可を受けていました。

てるみクラブの弁財保証金の額は1億2千万円です。また、弁財保証金の額は本来の供託金の額の5分の1です。

てるみクラブの倒産により、旅行代金を支払ったにもかかわらず、そのサービスが提供されない「被害額」の総額は、弁財保証金の1億2千万円の100倍相当だという報道があります。100万円払ったのに返還されるのはたったの1万円。

供託金の5分の1の弁財保証金という制度そのものが、消費者の被害額を少なくとも、5倍にしているということです。

さらに、てるみクラブは日本旅行業協会の会員だということを広告に盛り込むことで、公的機関が何かを保証するようなイメージを消費者に与えています。日本旅行業協会のホームページには「てるみくらぶは当協会の保証社員です」とあり、間接的にでも協会が詐欺行為とも見られているまゆみクラブの行為に荷担しているという見方もできます。

ちなみに、前回「官製カルテル」の文章は、国土交通省の下部組織である「全国」旅行業協会の違法性についてを指摘したものです。

全国旅行業協会は“はらぼじ観光”の事件に見られるように、消費者から代金を預からない債務が発生しないという業態に対してまでも登録を強要し、協会に会費を支払ってさえいれば、登録なしでの営業を認めています。これでは、やくざの“みか締め料”といっしょです。

全国旅行業協会にしても、日本旅行業協会にしても、「営業許可料」を5分の1に減額する代わりに多額の入会金を徴収しています。さらに年会費も徴収しています。入会金や年会費が、被害を受けた消費者に返還されるべき金額に換算されることはありません。
“てるみくらぶ”から多額の入会金と会費を徴収し、供託金の5分の1の額である弁財保証金を預かっているにもかかわらず、これほど多額の被害を出さないための対策を取っていたのかどうかも調査すべきです。

調査をしても、業者側からの一方的な取扱高の報告を受け取るだけで、それを例えば税務書類などと照らし合わせることもしていませんから、弁財保証金の額を決めるための表面上のことしかしていないことは関係者ならすぐにわかることです。

事件がおきてから形式上の補償の提示をホームページでしたところで、1%が返還されるだけでは、消費者保護のために何もしていないのと同様です。ホームページには「被害額は1億2千万円を超える見通しです」という表現で現実に1%しかもどらないということに比べれば現実を偽った表現だとも言えます。

インターネットの普及などでこれだけ1社あたりの取扱額が増えている現状で、民間の取引を「保証」するということ自体が無理なことではないでしょうか。

旅行業協会なる組織がなぜ2つあるのかも疑問視されます。
税金の無駄遣いをなくすという当会の目的から考えれば、1つにまとめるべき組織だとも考えられます。

天下りの問題も大きく報道されました。観光産業の健全な発展のためにも、2つある旅行業協会が、自分たちの収入のためではなく、観光客の利益のための仕事をするように変わることに期待し、御庁におかれましては、“てるみくらぶ”の事件に関しては日本旅行業協会の調査と指導を、官製カルテルの存在については全国旅行業協会への調査と指導をお願いしたいと思います。

また、観光産業の底辺は個人や小さな会社が知識や経験により、サービスや情報の提供を行うことで支えているということもあります。インバウンドを扱う多くの業者が無資格であること。インバウンドを扱う多くの観光バスが、国交省やバス協会の基準とはかけはなれたところで営業しています。その理由は、役所の規制が大きな会社や既存の業者の利益を優先し、新規参入の業者や資本力の弱い業者は「もぐり」にならざるをえないという現状があります。

御委員会のホームページに「創意ある事業者と消費者の保護のために」とあります。日本旅行業協会と全国旅行業協会のような「みか締め料を支払わなければ営業させない」という組織、そして、そのみか締め料の制度が、消費者の被害を増幅させてしまった、その責任を追求しないと、既得権を持ったものが他社排除を行い、創意ある事業者がつぶされていくという現状に歯止めがききません。

なお、この問題について、御庁から折り返し文書で当会の意見に関してなにかコメントをアドバイス賜れれば幸いです。
                以上
**********

■上記の公取委宛ての申入書と意見書の意義は、現在の旅行業界の発展は、もはや旅行業法のような現実離れをしたルールでは却って弊害があることを公取委に知らしめることでした。図らずも今回のてるみくらぶ破産事件がその実態を証明したからです。

 業界に君臨する官製の旅行業協会という無駄な組織を淘汰するためにも、公正取引委員会の積極的な行動を期待していましたが、やはり全国旅行業協会も日本旅行業協会も民間団体とは程遠く、役所との結びつきが強い組織であり、天下りの受皿にもなっていることから、公取委は、独禁法に基づくしかるべき措置を採ることについて、躊躇したことになります。

■「違反事実の報告、探知」に関する独禁法第45条第1項に基づき、当会は旅行業法協会の二重基準問題について提起しましたが、公取委は同条第2項に定めた「前項に規定する報告があつたときは、公正取引委員会は、事件について必要な調査をしなければならない。」とされる必要な調査を果たして行ったのでしょうか。

 確かに今年5月16日以降、8月8日付で公取委から通知書が発出されるまで、3カ月近い日にちが経過したことになります。そのため公取委として何らかの調査を行った可能性は否定できませんが、結果的には、独禁法第45条第3項に基づき、「第1項の規定による報告が、公正取引委員会規則で定めるところにより、書面で具体的な事実を摘示してされた場合において、当該報告に係る事件について、適当な措置をとり、又は措置をとらないこととしたときは、公正取引委員会は、速やかに、その旨を当該報告をした者に通知しなければならない。」として、措置の不作為の方針が伝えられてきたのです。

 本来、全国旅行業法協会が特定の業者のみを対象に旅行業法違反を宣告し、一方で、同協会に会費を支払っていれば、漁港業法の登録なしでも旅行の斡旋行為を認めていることは、明らかに公正な取引の確保に違反しています。だから、独禁法第45条第4項に定める「公正取引委員会は、この法律の規定に違反する事実又は独占的状態に該当する事実があると思料するときは、職権をもつて適当な措置をとることができる。」はずです。

 ところが公取委は、その強大な行政権限を、役所の息のかかった社団法人に対しては、厳しく行使して対処するつもりのないことが、今回の一連の公取委の対応から明らかになりました。

■それでも一応独禁法のルールに基づいて、返事の通知を寄こしたことは、無視を決め込む群馬県内の行政側の仕打ちに比べれば、まだマシだと言えるかもしれません。当会会員や読者の皆様には、公正な取引を損なうような実態を把握したら、すぐに公取委に通報しましょう。とりわけ、群馬県の場合は行政による不公正取引や情報秘匿傾向が顕著なので市民オンブズマンとしては今後も目が離せません。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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東名高速での観光バスの衝突事故の偏った報道に対しての意見書をNHKと公取委に提出

2017-06-25 23:40:00 | はらぼじ観光被疑事件
■2017年6月10日(土)午前7時29分ごろ、東名高速道路上り線新城パーキングエリア付近で、上り線を走行中の貸切観光バスに、反対側車線を走行していた乗用車が中央分離帯を飛び越えて衝突するという事故が発生しました。この事故で、たまたま観光バスにドライブレコーダーが設置してあり、衝突の瞬間を生々しく記録してあったのと、同観光バス会社がそれを即座にマスコミに公開したことから、マスコミ各社は競うようにその動画映像を放送しました。このショッキングな事故動画は依然としてネット上で公開されていますが、なぜこの事故の映像は公表できるのに、飛行機事故の映像は公表されないのか、公表の基準というものがマスコミ業界にあるのかどうか、確認する必要があると考えた当会は、次の内容の意見書を、唯一の公共放送であるNHKに6月22日付で提出しました。

【8月20日追記】
NHKから6月30日の消印で陶器事務局に回答がありました。内容は記事本文末尾をご覧ください。

**********
                       2017年6月22日
〒150-0041
東京都渋谷区神南2丁目2
NHK放送センター
ニュース報道ご担当様、責任者様
CC:〒100-0013 東京都千代田区霞が関1丁目1-1
   公正取引委員会 御中
                 〒371-0801 群馬県前橋市文京町一丁目15-10
                 市民オンブズマン群馬
                 代  表 小川 賢
                 事務局長 鈴木 庸
                 連絡先:電話 090-5302-8312(小川携帯)
                     電話 027-224-8567(事務局)
                     FAX 027-224-6624(事務局)

        件名:観光バスの事故の偏った報道に対しての意見書

前略 当会は、群馬県において行政の違法不当な権限の行使による税金の無駄遣いや、住民の不利益を住民の立場から是正を図ることを活動としている民間の市民団体です。

 さて、6月10日のニュースで、観光バスの事故の映像が流れました。反対車線を乗り越えた乗用車が、空を舞ってバスに激突するという衝撃的な映像でした。その直後、バスの右上部に激突した乗用車は原型を留めないほど大破し、運転をしていた医師の方は即死状態で亡くなったものとみられます。
 この意見書の主旨は、観光バスの衝撃的な映像を報道するのであれば、他の事故の衝撃的な映像も報道してほしい、ということです。その具体的な根拠について次に説明します。
 他の衝撃的な事故というと、最近では、次の事故が挙げられると思います。
  ・3月5日長野県松本での防災ヘリ墜落事故
  ・5月15日北海道函館での自衛隊墜落事故
  ・6月3日富山県黒部ダム付近での小型機墜落事故
 これらの3つの事件では、今回の観光バス事故報道のような、衝撃的な映像の報道がありません。今回の事故では、たまたま観光バス会社がバスに設置していたドライブレコーダーの画像を、マスコミ等の取材に対して逸早く提供したため、それを競ってメディアで取り上げたものと思われます。

 観光バス会社としては、観光バスの運転手や乗客に死者がでなかったからよかったものの、一歩間違えば大量死の事故につながった可能性は大です。今回の事故で、観光バス会社がいち早く情報の公表、公開に積極的に踏み切った背景には、そうした不幸中の幸いといった事情があったものと思料されます。
 では、このショッキングな画像が、もし、観光バスの運転手や乗客に死者がでた場合はどうなるのでしょうか。観光バス側には死者が出ていませんが、今回の事故では、激突した乗用車を運転していた医師は死亡しました。やはり、このショッキングな映像の扱いは慎重さが求められるのではないでしょうか。

 なぜなら、こうした観光バスの重大事故の場合、ともすれば、事故の悲惨さだけを誇張して報道することがこれまで多々行われてきたからです。その背景には、大手バス会社と権力の癒着が、中小のバス会社をつぶそうと企んでいる、という事実が潜んでいます。
 2016年1月の軽井沢碓氷バイパスのスキーバスの報道以降から、マスコミ報道を利用して中小のバス会社への規制の強要が顕著に行われるようになっています。
 軽井沢スキーバス事故に対比して、2012年12月の中央道笹子トンネ天井墜落事故を取り上げるとしましょう。この事故の死者数は軽井沢の事故よりも死者の数が多い上に広域の経済をもマヒさせました。事故の影響はより大きかったはずです。しかしながら、報道の絶対量が少ないように見えます。ぜひ、報道の数や量を調べてみてください。
 2016年1月の軽井沢スキーバス事故ではバス会社をはじめ、スキーツアーを実施した旅行会社の責任を追求する報道が目立ちました。ところが笹子トンネルの事故の責任者を特定する報道は皆無です。
 ちなみに、軽井沢スキーバス事故から1年半が経った今、中小のバス会社の廃業が急増しています。軽井沢の事故を引合いに出しての、中小のバス会社に対する官による「圧力」が強まったからです。つまり、「スキーバスの事故はバス代が安いから起きた。よって安いバス代で運行するバス会社を摘発する。安いバス会社を利用するバス旅行会社も摘発する」というのが官の論理なのです。航空機の会社は「格安」を売りに新規の会社が次々設立されているのに、安いことを事故の原因にするというのは、理不尽なこじつけであり、事故原因として無理があります。その結果、中小観光バス会社に対して、安いことが「悪」という風潮が蔓延してしまいました。
 事故防止を言い訳にした中小のバス会社への圧力について、その2つ目は、「運行管理についての強要」があります。一例として、韓国との比較をしてみます。「韓国の観光バスの台数の6割以上はバス1台だけを保有する個人事業主だ」ということを聞いています。この事業形態をとることで、観光客の細かなニーズに応えられ、観光先進国として多くの外国人観光客を受け入れる体制を取っています。反面、日本では複数のバスを保有しなければ、営業バスの認可さえ受けられません。
 観光後進国である日本が観光産業の発展に重きを置くのなら、「台数を保有しなければ認可も受けられない」という時代錯誤的な規制は廃止すべきですが、現状では、逆の方向に向かっています。このため、無理な規制が多くのひずみを生む結果となっています。
 事故防止にかこつけた中小のバス会社への官による圧力について、3点目は「高い設備の強要」があります。「運転手が仮眠を取れるスペースを設備しなさい。運転手からの死角部分を見渡せるためのモニター装置をいくつも設備しなさい」などと義務を強要していることです。高度な設備など必要のない近距離の安い料金での運行を仕事とする安いバス会社には、いずれも不必要なことなのに、官はお役所的な基準を一律に押しつけてきます。
 30年前までは「バスの台数自体を増やせない」というあからさまな規制が存在していました。「新しいバス会社は作れない。既存のバス会社でも増車ができない」など、自由競争の世の中で信じられないような規制を陸運局は行っていたのでした。
 行政手続法ができてから「申請さえすれば認可は下りる」というふうに変わってきて、観光バスの台数も増える方向に向かっていたのですが、このところ逆方向に向かってきています。憲法22条に反する違法行為がまかり通っているとも言えます。

 いろいろ課題点を列挙しましたが、最初に戻ります。今回の観光バスの事故では、結果的に“もらい”事故によって重傷者が出たものの、幸い死者を出さずに済んだ観光バス会社から積極的な情報提供があったものと言えます。しかし、実際にドライブレコーダーに映し出された映像には、直後に死亡した運転手の乗った乗用車が宙を舞って激突する瞬間が生々しく記録されています。
 こうした衝撃的な映像を報道できるのであれば、次の航空機墜落事故についても、現場のショッキングで生々しい映像も報じられるはずです。とくに長野県の防災ヘリの墜落事故では、離陸から墜落までの様子を写したビデオ映像の存在が確認されています。
・3月5日長野県松本での防災ヘリ墜落事故(乗員9名死亡)
・5月15日北海道函館での自衛隊墜落事故(乗員4名死亡)
・6月3日富山県黒部ダム付近での小型機墜落事故(乗員4名死亡)
 報道倫理として、自動車の衝突のような交通事故の場合は、ショッキング映像を報道してもよいが、航空機の墜落のような交通事故の場合は、ショッキング映像を報道しないという基準のようなものが存在するのでしょうか? 存在の有無や、存在する場合、その基準のあらましについて教えていただけますでしょうか?
 加えて、お願いとしては「消防署のヘリコプターが落ちた事故」「自衛隊の飛行機が落ちた事故」「民間の飛行機が落ちた事故」「トンネルの天井が落ちて、道路上の事故では最大の犠牲者が出た事故」のように、観光バスの事故以外の悲惨な事故について「何周年の記念イベント」の特別番組や特集など、しかるべき報道もしてください。
 視聴者からの潤沢な受信料収入により広告収入を受け取らないNHKであればこそ、政官業からの影響を排除して、報道の平等性、公平性、公明性を常に心がけていただきたいと思います。

 この意見書に対しての御協会のコメントをいただければ、当会のホームページなどで公開させていただきたいと考えています。大本営発表と皮肉られるマスコミのあり方についての大衆の声も大きくなっています。この問題は全国のオンブズマンと情報を共有して広く知らしめていくよう働きかけてゆく所存です。
 外部からの圧力に影響を受けないNHKの報道姿勢に期待しています。ぜひコメントを賜りたいと存じます。
                              以上
**********

■この背景として、今年の3月5日に長野県松本市の鉢伏山で墜落した長野県防災ヘリの事故の場合、事故で亡くなった9人のうち、ヘリの右後部にいた隊員のヘルメットに小型カメラが装着されていたとされ、離陸から墜落までの機内の様子などが約20分間映っていたが、音声はなかったという映像の存在があります。

 この事故に至る記録映像について、関係者の話として、ヘリの機内はパイロットが座る席とその横の席以外は座席がないため、映像には隊員らが訓練開始に向けて機内で膝をついた状態で待機している様子や、外の景色が映っており、異変を感じさせる状況はなかったが、映像が途切れる数秒前、高度が下がったような場面が映っており、この間、同機が高度を持ち直す様子は見られなかったという内容が報じられましたが、映像そのものはマスコミによって公表はされていません。

■NHKからコメントが寄せられることを期待しつつ、当会では観光バスの事故のたびに、役所による規制の強化がとられ、ひいては観光バス業界の底辺を担っている中小の観光バス会社にしわ寄せが集中し、倒産の憂き目にあう事業者が続出することで、結果的に大手観光バス会社の寡占を助長するのではないか、という懸念があるため、6月23日付けで公正取引委員会宛に、次の申し入れを書面にて行いました。

**********
公正取引委員会御中

当会、市民オンブズマン群馬ではバス会社やスキー場に隣接する観光地の現場の声を基にして、同封の意見書をNHKへ送りました。

また、他のテレビ局にも順次送付していくつもりでおります。

そして、全国のオンブズマンなどの市民グループでもこの意見は共有できたらよいと考えています。

御委員会におかれましては、中小バス会社への過度の規制の実態の調査など観光産業の健全な発展のための対応をしていただきたいと思います。

平成29年6月23日

市民オンブズマン群馬

**********

【2017年8月20日追記】
 NHKから上記の意見書に対する回答書が6月30日の消印で当会事務局に届いていたことがわかりました。内容は次の通りですが、当会の意見書で要請したほかの類似事故との報道姿勢の違いについて、NHKからの回答には全く触れられていませんでした。これが公共放送を標榜するNHKのやり方です。


NHKから送られてきた封筒(表)。


同封筒(裏)。


*****NHKからの回答書*****JPEG ⇒ 201706112nhkfw.jpg
市民オンブズマン群馬
代表   小川賢様
事務局長 鈴木庸様

このたびは、観光バスと乗用車の事故に関して、ご意見をお寄せ頂きまして、ありがとうございました。

個別のニュースや番組の編集判断や取材の過程については、基本的にお答えを差し控えさせて頂いておりますが、放送などで紹介した観光バスのドライブレコーダーの映像は、今回の事故の状況や原因を知る上で重要な判断材料となりうるものと考え、お伝えしました。

今後も、公共放送として、視聴者・国民が知りたいと思うことなどに十分、お応えできる報道に努めていく考えです。引き続き、NHKの報道にご理解とご支援をお願い申し上げます。

                         平成29年6月

                          NHK報道局

**********

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※参考記事
**********毎日新聞2017年6月10日 09時34分(最終更新 6月13日 10時01分)
https://mainichi.jp/articles/20170610/k00/00e/040/205000c
※毎日新聞ではいまだに事故の瞬間の動画を掲載しています。
【東名高速】 観光バスと衝突、20人超けが 屋根に大破の車

観光バスと乗用車の衝突事故があった東名高速道路=愛知県新城市で2017年6月10日午前9時52分、本社ヘリから平川義之撮影
 10日午前7時半ごろ、愛知県新城市富岡の東名高速道路上り線で、大型観光バスと乗用車が衝突し、バスの乗客・乗員計47人のうち20人以上が病院に搬送された。いずれも軽傷とみられる。乗用車はバス前部の屋根の上に乗った状態で大破しており、同県豊川市消防本部などが車内にいる人の救出作業を行っている。
 愛知県警高速隊によると、バスは追い越し車線を走行中だった。乗用車が下り線から中央分離帯を乗り越え、バスの前部にぶつかった可能性があるとみて調べている。
 バスの乗客は豊川市上宿地区周辺の住民らの団体。豊川市の旅行会社「トラベル東海」が旅行を受注し、同県豊橋市の「東神観光バス」が運行していた。
 両社の担当者によると、10日午前7時ごろに豊川市を出発し、山梨県内でサクランボ狩りやウイスキー蒸留所の見学をして、午後7時ごろに戻る予定だった。バスには乗客44人と旅行会社の添乗員、運転手、ガイドが乗っていたという。
 現場は新城パーキングエリアの入り口付近。乗用車は原形をとどめないほどに壊れ、バスの運転席上部に乗った状態だった。バスの前部も崩れ、周囲には車の部品が散らばっていた。救急車や消防車が多数駆け付け、救急隊員らが乗客たちの救助に当たった。
 事故の影響で、東名高速は豊川インターチェンジ-三ケ日ジャンクション間の上下線で通行止めとなった。【太田敦子】

**********朝日新聞デジタル投稿日: 2017年06月10日 11時57分 JST 更新: 2017年06月10日 18時35分 JST
東名高速の観光バス事故、運転席は大破 「どうしてこんな事故に...」現場の状況は
乗客ぼうぜん、運転席大破 東名バス事故、現場の状況は

 10日午前7時半ごろ、愛知県新城市富岡の東名高速上り線の新城パーキングエリア(PA)付近で発生した観光バスと乗用車の衝突事故。新城PAからは、クレーン車で乗用車をつり上げているのが見えた。現場からPAまで歩いてきた女性たちは、高速下で待機していた救急車に乗り込んだ。
 午前10時ごろには、後続車の人たちが歩いてPAのトイレを使用。男性は「午前9時ごろから立ち往生している。状況は分からない」と話した。
 PAの店舗で働く女性は「事故の後、来たお客さんが、『100メートル前ぐらいから破片が散らばっていた』と言っていた」と話す。
 事故直後の午前8時ごろ、新城パーキングエリアで休憩中だった男性(40)はバスの状況を目撃した。男性によると、当時、バスからはうっすらと煙が上がり、消防の誘導を受けながら後部の非常口から乗客が避難していたという。男性は「乗客は皆ぼうぜんとしているようだった」と振り返った。
 また、バスの運転席は上半分が大破していたが、運転手は座ったまま抜けられず、上半身は動いている様子だったという。
 男性は「最初はキャリアカーから車がバスに落ちたのかなと思った。どうしてこんな事故になるのか一見してはわからなかった」と話した。

**********朝日新聞デジタル2017年06月10日 18時21分 JST 更新: 2017年06月10日 18時37分 JST
【東名高速衝突事故】バスの正面に車が飛んできた その瞬間をドライブレコーダーが捉えた
飛んできた車、運転手「とっさの判断」 バス側死者なし


観光バスのドライブレコーダーには、中央分離帯を越えて浮き上がった乗用車が向かってくる様子が記録されていた(10日午前、愛知県新城市、東神観光バス提供撮影)
 愛知県新城市の東名高速で起きた観光バスと乗用車の衝突事故で、乗用車は中央分離帯を乗り越えて空中にジャンプし、バスの正面上部に激しくぶつかっていた。バスの乗員乗客計47人に重傷者は出たが、死者はいなかった。バスのドライブレコーダーには、衝突直前に左に急ハンドルを切って回避するバス運転手の映像が残っていた。バス会社の社長は「とっさの判断が幸いしたのでは」と話す。
 バスは愛知県豊橋市の東神観光が運行し、同県豊川市の乗客44人が山梨県のサクランボ狩りに向かうツアーだった。
 高速道路上の「正面衝突」で、相対速度は時速200キロ近い。バス会社の斎藤雅宣社長(68)は、それでもバス側の被害が比較的少なかった理由について「左にハンドルを切り、バスの骨組み部分と車が衝突したためでは」と見る。また、運転手はブレーキを目いっぱいかけていたといい、斎藤社長は「運転手の対応が的確だったと思う」と話した。

*********NHK Web News 2017年6月10日 19時01分
東名高速の衝突事故 乗用車が反対車線に飛び出しか
 10日午前、愛知県新城市の東名高速道路で、47人が乗った観光バスに乗用車が衝突し、乗用車を運転していた62歳の医師が死亡したほか、バスの乗客ら45人がけがをしました。乗用車は中央分離帯を乗り越えて反対車線に飛び出しバスに衝突したということで、警察が事故の原因を調べています。
 10日午前7時半ごろ、愛知県新城市の東名高速道路の上り線で、観光バスと乗用車が衝突しました。
 警察によりますと、観光バスには、さくらんぼ狩りなどのため山梨県に向かっていた乗客44人と運転手や添乗員ら3人が乗っていました。このうち、40代から70代の乗客の男女6人がろっ骨などを折る大けがをしたほか、乗員3人を含む30代から70代の男女39人が軽いけがをしたということです。
 また、乗用車はバスの前方にめり込むようにして衝突していて、運転していた静岡県浜松市の医師、伊熊正光さん(62)が死亡しました。伊熊さんは、自分の車が修理中のため、借りていた代車を運転して、勤務する愛知県内の病院に向かっていたということです。
 バスの車載カメラの映像などから、下り線を走っていた乗用車が中央分離帯を乗り越え、反対の上り線に飛び出してバスに衝突したということです。
 中央分離帯は幅がおよそ3メートルで、乗用車が走っていた下り線側には、高さ70センチほどの傾斜になった盛り土がありました。また、分離帯にある高さ1.5メートルほどの柵には、乗用車がぶつかったと見られる跡があったということです。
 警察は乗用車の当時の運転状況など事故の原因を詳しく調べています。

**********HuffPost Japan 投稿日: 2017年06月11日 13時38分 JST 更新: 2017年06月12日 12時51分 JST
【東名事故】バス会社の迅速な対応に関心集まる 車載カメラ映像は、事故の瞬間もネット転送されていた
 愛知県の東名高速道路で、乗用車が反対車線に飛び出し観光バスと衝突した事故をめぐり、バス会社の対応に関心が集まっている。
 バス会社は事故が起きた6月10日の午前中に、報道各社に事故の瞬間を捉えた車載カメラの映像提供を開始。午後8時30分には、プレスリリースで第一報を発表した。この対応にTwitterからは、「映像を早く見ることができてすごい」「分かりやすくまとまっているプレスリリースだ」などの声があがった。
 観光バスを運行していたのは、愛知県豊橋市の「東神観光バス」。代表取締役の齋藤雅宣氏はハフポスト日本版の取材に対し、「車載カメラの映像はサーバに保存されており、いち早く取り出した」などと、対応内容について説明した。
 事故は10日の午前7時29分頃発生した。齋藤代表は事故直後にかかってきた観光会社からの電話で事態を知った。
 斎藤代表によると、同社のバスは全て、車載カメラの映像をリアルタイムにネット上に保存できるシステムを採用していた。カメラにSDカードが差さっていれば、サーバ上に撮り溜められた映像をネットを通じてすぐに確認できる仕組みだ。
 事故の情報は、社内の運行管理部のパソコンにもアラームで送付された。会社は事故を受けて、カメラ映像を保存している会社に連絡を取り、すぐに報道などに提供できるようにダウンロードした。そのため、警察からSDカードの提供を求められた後でも、対応することができた。
 プレスリリースは午後6時頃から対応を始めた。リリース用の報告テンプレートなどは用意していなかったが、社内の担当者らが何が必要なのかをとりまとめた。

↑東神観光バスのプレスリリース。PDF ⇒ 1706101_vxx.pdf
170613_vxx.pdf  

 齋藤氏は、自身も事故直後にネットで情報を調べたことを打ち明け、「なるべくはやくネットにも情報を提供したかった」と話した。
 「今回の事故も、心配な方、関心のある方は多かったと思います。ネットですぐに情報が得られる時代ですので、私たちも一刻も早く、分かっている情報をお伝えしなくてはと思いました」【執筆者:Chitose Wada】

**********産経WEST 2017.6.12 21:52
http://www.sankei.com/west/news/170612/wst1706120053-n1.html
※産経新聞ではいまだに事故の瞬間の動画を掲載しています。
大惨事を救ったのは「フレーム」だった 専門家が被害軽減の理由を指摘
yov.jpg
東名高速道路で乗用車と衝突し、前部が大破した観光バス=10日、愛知県新城市
 愛知県の東名高速道路で、乗用車が中央分離帯を越えて対向の観光バスに衝突した事故で、乗用車がバス前部の強度の高いフレーム(骨組み)部分にぶつかっていたことが12日、県警への取材で分かった。専門家は、バス側の被害が軽減された要因と指摘している。
 事故では乗用車の医師伊熊正光さん(62)=浜松市東区=が多発外傷で死亡、バスの乗客乗員計47人のうち45人が重軽傷を負った。民間の事故調査会社「日本交通事故調査機構」の佐々木尋貴代表は「仮に乗用車がバスの天井部分やフロントガラスに衝突していたら、被害はさらに甚大になっていただろう」と指摘した。
 佐々木代表によると、バスは軽量化のため天井部分などがもろい分、フレームが強化されているという。
 一方、バスを運行する「東神観光バス」の斎藤雅宣社長(56)は取材に「事前にシートベルト着用を徹底したことと、衝突直前に運転手がハンドルを左に切りながら補助ブレーキをかけたことが被害軽減につながったのかもしれない」と語った。実際に多くの乗客がシートベルトを着用。軽傷を負った愛知県豊川市の主婦(68)は「ベルトのおかげで顔を打っただけで済んだ」と話した。
**********

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被害者ゼロのはらぼじ観光を訴え百億円詐欺のてるみくらぶを訴えない旅行業協会の実態を公取委に直訴

2017-05-18 23:37:00 | はらぼじ観光被疑事件
■3月27日に倒産したてるみくらぶの事件は詐欺行為ではないかとマスコミや業界筋でも騒がれています。本来、旅行業法ではこうした事態が起きて、利用者が損失を被らないように、わざわざ旅行業協会という官製主導組織が旅行業法によって設立されています。しかしその実態は官僚の天下り先の受け皿になり下がっています。今回、損害の僅か1パーセントしか救済されないのは、旅行業法そのものを運用する権限を持つ旅行業協会に問題があるのです。
 まずは当会のブログ記事をご覧ください。
○2017年4月6日:長年顧客に喜ばれた「はらぼじ観光」が証明した「てるみくらぶ」破産で何万人を大損させた旅行業法の無意味
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2284.html#readmore
○2017年5月1日:被害者ゼロのはらぼじ観光を訴え百億円詐欺のてるみくらぶを訴えない旅行業協会の実態を消費者庁に直訴
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2306.html#readmore

 今回の事件の発端は3月24日早朝に旅行会社のてるみくらぶからツアー参加者に送られてきたメールでした。その内容は概ね次の事項でした。
① 滞在先のホテル等に宿泊できないかもしれない
② お客様が支払いを請求されるかもしれない(支払い済みの場合でも)
③ バスの送迎を受けられない等のトラブルが生じる可能性が強い
④ 返金に関しては後日連絡する
⑤ よって、ご出発を控えていただくことを強く推奨する

 旅行を計画し、既に支払いも済ませ、勤務先にも休みを申請した後に突然このような内容のメールを受け取ったツアー参加者は、早速、てるみくらぶに、真意や実情を確認しようと問い合わせを入れました。ところが、メール配信日を含め連続3日間「臨時休業」という理由で、連絡を取ることができませんでした。

 すると3月27日に、経営の継続が困難だとして、東京地裁に破産申請し、破産手続開始が決まり、国土交通省で「てるみくらぶ」の山田千賀子社長が記者会見をし、涙を流すフリをしながら「お客様に多大なるご迷惑をおかけして誠に申し訳ありません」と語ったのでした。

 倒産理由は、格安旅行の過当競争に巻き込まれ、激安ツアーで利益がほとんど残らず、そこに新聞に掲載する広告費がかさみ資金繰りが悪化して倒産したと言われています。いうなれば経営が自転車操業状態だったところ、とうとう3月23日、航空券の発券に必要な支払いができなくなり、上記のメールが利用者に配信されたのでした。

 今回の事件は被害案件が3万6000件、対象人数はおよそ8万~9万人で、被害額は99億円余りに上る見通しと言われています。クレジットカードで支払った被害者が多数いるため、カード会社にも対応面で混乱を招きました。

■被害の相談先について、日本旅行業協会、消費者庁などの名前が挙がっていますが、日本旅行業協会はおそらく何の役にも立たないことは、当会のブログで述べたとおりです。なぜなら、旅行業法に定める顧客との金銭取引を一切しない業態を作り上げて、何万人もの顧客に対して満足のいくサービスを提供し続けていたはらぼじ観光に対して、群馬県旅行業協会や全国旅行業協会が提訴し、裁判所も行政の息のかかった旅行業協会の肩を持つ判断をして、1審、2審、そして最高裁においても無罪を主張したはらぼじ観光に対して、30万円の有罪判決を下したからです。

 はらぼじ観光の問題は「日本旅行業協会」ではなく「全国旅行業協会」が、新しいビジネススタイルを構築した業者を見せしめ的に締め出した事例ですが、日本旅行業協会も、全国旅行業協会と同様に、カネだけを集めて、肝心の旅行業の発展に寄与する事業は何もしていない組織です。

 はらぼじ観光は、旅行業法で定義される顧客との金銭取引をやめて、「今後はお客さんから前集金しないから、供託金(=許認可)なしでもよいでしょう」という主張を宣言して、仕事をしていました。だからこそ、顧客との金銭トラブルは皆無で、一度もクレームを受けたことはなく、そのきめ細かいサービス対応は多くの顧客に十分な満足度を与えていました。

■今回の、てるみクラブの倒産は、はらぼじ観光を旅行業違反容疑で訴えた全国旅行業協会と同じ形態の日本旅行業協会の会員会社(補償社員)を隠れ蓑にして、多額の旅行代金を顧客からだまし取ったことで被害が増大しました。

 日本旅行業協会ではホームページに「弁財補償」について掲載しています。
https://www.jata-net.or.jp/travel/info/qa/bond/170324_terumiinfo.html

 この弁財補償というのがくせもので、あたかも顧客が損害を被っても、協会の弁財補償で救助してもらえるようなイメージを顧客にあたえています。

 そのため、旅行業界における旅行業協会がいかに旅行業の発展に逆行しており、存在自体が無用なことをアピールする必要があると考えた当会は、今回てるみくらぶが起こした「詐欺」事件について、旅行業の健全な発展を願い官製談合とも言うべき、現在の旅行業協会の制度にメスを入れてもらうよう、公正取引委員会に次の内容の意見書を提出しました。

*****意見書*****PDF ⇒ 20170515.pdf
                         2017年5月15日
〒100-8987 東京都千代田区霞が関1-1-1
公正取引委員会 御中
                 〒371-0801 群馬県前橋市文京町一丁目15-10
                 市民オンブズマン群馬
                 代  表 小川 賢
                 事務局長 鈴木 庸
                 連絡先:電話 090-5302-8312(小川携帯)
                     電話 027-224-8567(事務局)
                     FAX 027-224-6624(事務局)
          意 見 書
件名:てるみくらぶの倒産と旅行業法の弁財業務保証金分担金制度の弊害について

前略 当市民オンブズマン群馬より今年の4月5日付で「件名:全国旅行業協会が賛助会員として積極的に営業を認めている総合案内所の違法性について(旅行業界における『官製カルテル』の存在)」の文章はすでに送ってあります。

それに関連して、旅行業法と旅行業協会の現状が消費者被害を拡大させているという典型的な「事件」が起こりました。2017年3月27日に東京地裁に破産を申し立て倒産した“てるみくらぶ”のことです。

負債総額151億円は、旅行業ではリーマンショック後で最大と言われており、そのうち約100億円が、一般旅行者約3万6000人のもので、春休みの旅行シーズンに現地でホテルがキャンセルとなったり、帰国できない可能性が生じたり、新卒内定者50人が内定取り消しを通告されたりと、その衝撃は甚大です。

そのため、公正な取引という観点から、調査と対応をお願いしたいと思い意見書を送付致します。

旅行業法には旅行業者として認可を受けるためには供託金を観光庁または各都道府県へ納入するという事が義務づけられています。

供託金を納入する代わりに、観光庁の下部組織である日本旅行業協会、または国土交通通省の下部組織である全国旅行業協会へ「弁財業務保証金分担金」(以下「弁財保証金」と省略)を納入して旅行業の認可を受ける事もできます。

報道によれば、てるみクラブは日本旅行業協会の会員であり、観光庁への供託金ではなく、日本旅行業協会へ弁財保証金を納入し、旅行業の認可を受けていました。

てるみクラブの弁財保証金の額は1億2千万円です。また、弁財保証金の額は本来の供託金の額の5分の1です。

てるみクラブの倒産により、旅行代金を支払ったにもかかわらず、そのサービスが提供されない「被害額」の総額は、弁財保証金の1億2千万円の100倍相当だという報道があります。100万円払ったのに返還されるのはたったの1万円。

供託金の5分の1の弁財保証金という制度そのものが、消費者の被害額を少なくとも、5倍にしているということです。

さらに、てるみクラブは日本旅行業協会の会員だということを広告に盛り込むことで、公的機関が何かを保証するようなイメージを消費者に与えています。日本旅行業協会のホームページには「てるみくらぶは当協会の保証社員です」とあり、間接的にでも協会が詐欺行為とも見られているまゆみクラブの行為に荷担しているという見方もできます。

ちなみに、前回「官製カルテル」の文章は、国土交通省の下部組織である「全国」旅行業協会の違法性についてを指摘したものです。

全国旅行業協会は“はらぼじ観光”の事件に見られるように、消費者から代金を預からない債務が発生しないという業態に対してまでも登録を強要し、協会に会費を支払ってさえいれば、登録なしでの営業を認めています。これでは、やくざの“みか締め料”といっしょです。

全国旅行業協会にしても、日本旅行業協会にしても、「営業許可料」を5分の1に減額する代わりに多額の入会金を徴収しています。さらに年会費も徴収しています。入会金や年会費が、被害を受けた消費者に返還されるべき金額に換算されることはありません。
“てるみくらぶ”から多額の入会金と会費を徴収し、供託金の5分の1の額である弁財保証金を預かっているにもかかわらず、これほど多額の被害を出さないための対策を取っていたのかどうかも調査すべきです。

調査をしても、業者側からの一方的な取扱高の報告を受け取るだけで、それを例えば税務書類などと照らし合わせることもしていませんから、弁財保証金の額を決めるための表面上のことしかしていないことは関係者ならすぐにわかることです。

事件がおきてから形式上の補償の提示をホームページでしたところで、1%が返還されるだけでは、消費者保護のために何もしていないのと同様です。ホームページには「被害額は1億2千万円を超える見通しです」という表現で現実に1%しかもどらないということに比べれば現実を偽った表現だとも言えます。

インターネットの普及などでこれだけ1社あたりの取扱額が増えている現状で、民間の取引を「保証」するということ自体が無理なことではないでしょうか。

旅行業協会なる組織がなぜ2つあるのかも疑問視されます。
税金の無駄遣いをなくすという当会の目的から考えれば、1つにまとめるべき組織だとも考えられます。

天下りの問題も大きく報道されました。観光産業の健全な発展のためにも、2つある旅行業協会が、自分たちの収入のためではなく、観光客の利益のための仕事をするように変わることに期待し、御庁におかれましては、“てるみくらぶ”の事件に関しては日本旅行業協会の調査と指導を、官製カルテルの存在については全国旅行業協会への調査と指導をお願いしたいと思います。

また、観光産業の底辺は個人や小さな会社が知識や経験により、サービスや情報の提供を行うことで支えているということもあります。インバウンドを扱う多くの業者が無資格であること。インバウンドを扱う多くの観光バスが、国交省やバス協会の基準とはかけはなれたところで営業しています。その理由は、役所の規制が大きな会社や既存の業者の利益を優先し、新規参入の業者や資本力の弱い業者は「もぐり」にならざるをえないという現状があります。

御委員会のホームページに「創意ある事業者と消費者の保護のために」とあります。日本旅行業協会と全国旅行業協会のような「みか締め料を支払わなければ営業させない」という組織、そして、そのみか締め料の制度が、消費者の被害を増幅させてしまった、その責任を追求しないと、既得権を持ったものが他社排除を行い、創意ある事業者がつぶされていくという現状に歯止めがききません。

なお、この問題について、御庁から折り返し文書で当会の意見に関してなにかコメントをアドバイス賜れれば幸いです。
                以上
**********

■てるみくらぶ倒産事件では、てるみくらぶに旅行代金を支払っていた被害者のかたがたが4月23日に都内に集まり、被害者の会を結成しました。被害者の会は山田社長に損害賠償を求める民事訴訟を起こすことも視野に対応を検討することにしています。

 さらに、代金の弁済制度の不備を国に訴えたりする活動についても検討中とのことです。再発防止には、こちらの弁済制度の根本的な見直しが不可欠です。天下り組織になり下がった旅行業協会の解体や旅行業法の抜本的改革なくしては、再発防止はあり得ないからです。

 そのため、被害者の会はツイッターで情報を発信し、ほかの利用者に活動への参加を呼びかけています。
てるみくらぶ被害者の会 https://twitter.com/terumi_soshou

 てるみくらぶは少なくとも3年前から赤字を黒字と見せかけていた可能性があり、山田社長には年間3300万円余りの役員報酬が支払われていました。てるみくらぶの山田社長が損害賠償をするのは勿論のことですが、役に立たない代金弁済制度を放置したままの旅行業協会にも損害賠償責任は免れません。さらには、時代錯誤の旅行業法に胡坐をかいて、旅行業協会に職員OBを天下りさせてきた国交省にも賠償責任があるはずです。この際徹底的に、今回の事件発生の原因を追究し、責任の所在を明らかにしたうえで、正しい再発防止策を講じることができるはずです。

【市民オンブズマン群馬・・旅行業協会撲滅キャンペーン推進班・この項続く】

※参考情報
**********2017年4月11日旬刊旅行新聞
てるみくらぶ破産、消費者被害額99億円に
返還額は1・2%程度か


国交省で会見する山田千賀子社長
 格安海外旅行ツアーを販売するてるみくらぶ(山田千賀子社長)が3月27日、破産手続きを始めた。3月24日から航空券の発券を巡るトラブルが発生。8―9万人に影響があり、混乱が広がっている。同社の試算によると、消費者への被害額は99億円、現地ホテルへの未払い金などを含めると151億円に上る。利用者へは日本旅行業協会(JATA)が弁済業務保証金制度から保証するが、弁済限度額が1億2千万円のため、代金の約1・2%と極めて低い返還額になる。
【後藤 文昭】
          ◇
 今回のトラブルは、国際航空運送協会(IATA)に対し、同社が航空券購入代金を支払えなかったことが原因。スポンサーや銀行と期限直前まで交渉を進めたが、期日の3月23日までに融資を受けられず、その後も資金調達が難しい状況が続き、破産申請に至った。関連会社の自由自在と持株会社のてるみくらぶホールディングスもこれに連鎖し、営業を停止した。
 山田社長は27日に国土交通省で会見を開き、ツアー参加者や関係者に対し謝罪。宿泊先が無いなどのトラブルを回避するため、「今後は渡航を控えてほしい」と語った。すでに現地にいる参加者に対しては、「自費ですべてを賄うことになる」と述べた。
 観光庁は同社に対し26日、旅行業法に基づく立ち入り検査を実施し、検査で38カ国・地域に約2500人の旅行者がいることを把握。宿泊代金の支払いなどで日本からの送金が必要なケースを想定し、円滑な帰国に向け外務省に協力を要請した。保証制度の是非を問う声には、「現行制度上では適切だが、さらなる消費者保護の観点から必要な事項があれば検討する」と回答した。
 同社は感染症の発生などで空席が出た際や、新規就航時などに、航空会社から直接座席を安価に仕入れ、販売していた。
 しかし、航空機の小型化などで余剰分の発生率が下がり、大手旅行会社と同じ方式の仕入れとなり、コストが上昇。インターネットの発達によって消費者が個人で航空券の手配をする傾向が強くなったことも加わり、売上が減少した。一昨年からシニア層向けに営業方針を転換したが、広告宣伝を行ったことで媒体コストがかさみ、資金繰りが悪化、破産に至った。

てるみくらぶ関連年表
★弁済制度の妥当性を問う声も
 JATAの弁済業務保証金制度とは、加盟する旅行会社が倒産などをした場合、一定の範囲で消費者に弁済する制度。納付している弁済業務保証金分担金の額の5倍の金額が限度額になる。観光庁によると、2008年以降同制度の利用会社は17件あり、このうち15件が全額、1件が7割、もう1件が4割の返還ができていた。
 しかし、今回は返済額が著しく低いため、記者からは積立額の妥当性などを問う声も出た。同庁は弁済額を上げることで安易な倒産などが起こることを心配するが、消費者保護の観点から制度の見直しが求められそうだ。

**********2017年4月24日日経朝刊
「てるみくらぶ」被害者の会結成 民事訴訟など視野
 旅行会社「てるみくらぶ」(東京)の経営破綻を巡り、同社のツアーに申し込んだ被害者が「てるみくらぶ被害者の会」を23日、結成した。同日、都内で記者会見した被害者からは経営のずさんさや国の管理責任を問う声などが相次いだ。同社への民事訴訟や詐欺容疑などでの刑事告訴も視野に入れて活動する方針だ。
 被害者の会はインターネット上で知り合った被害者らが声を掛け合って結成。参加表明している被害者は約30人。
 会見に出席した都内在住の男性会社員(29)は8月にハワイで結婚式を計画しており、友人や親族を含め計12人で約150万円を支払った。「皆が式を楽しみにしていたのに水の泡で泣き寝入りしたくない。ずさんな経営を見抜けなかった国にも責任があるのでは」と憤った。
 てるみくらぶに旅行代金を支払い済みの顧客は8万~9万人とみられ、弁済額は1%程度にとどまる見通し。観光庁は月内に有識者会議を設置し、弁済額の引き上げや旅行会社の経営状況を把握する体制の在り方などを議論する。

**********朝日新聞デジタル2017年4月23日19時25分
てるみくらぶ被害者の会結成 国の責任問う声も

「被害者の会」の集会に参加した人たち=東京都墨田区、森田岳穂撮影
 破産手続き中の格安旅行会社てるみくらぶ(東京)に旅行代金を支払っていた15人が23日、東京都内で集会を開き、「被害者の会」を結成した。旅行代金の多くが弁済されない見通しで、てるみくらぶ側に損害賠償を請求したり、代金の弁済制度の不備を国に訴えたりする活動を検討中だ。ツイッターで情報を発信し、ほかの利用者に活動への参加を呼びかけていく。
 てるみくらぶは破産手続きに入った時点で、最大で約9万人分(約99億円)の旅行の申し込みを受けていたとされる。旅行業法に基づく弁済制度には、弁済額の上限があり、てるみくらぶの場合は計1億2千万円。観光庁は有識者会議をつくり、制度の見直し策を検討する予定だ。
 被害者の会に参加する都内の会社員男性(29)は「(弁済額に上限があって)『法で守られない』と突っぱねられるのは、納得できない。見抜けなかった国の責任もあるのでは」と訴えた。ハワイで結婚式を予定し、友人の分を含めて12人の旅行代金計150万円を支払ったという。
 会の発起人の会社員男性(29)は、自分の誕生日祝いとして妻がハワイ旅行を準備してくれたという。「旅行代金を奪われただけでなく、(妻の)思いが踏みにじられた」と憤った。(森田岳穂)
**********

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被害者ゼロのはらぼじ観光を訴え百億円詐欺のてるみくらぶを訴えない旅行業協会の実態を消費者庁に直訴

2017-05-01 23:05:00 | はらぼじ観光被疑事件
■3月27日に倒産したてるみくらぶの事件は詐欺行為ではないかとマスコミや業界筋でも騒がれています。しかし、本来旅行業法ではこうした事態が起きて、利用者が損失を被らないように、わざわざ旅行業協会という官製主導組織が設立されて、官僚の天下り先の受け皿になっているはずです。なぜ、今回、損害の僅か1パーセントしか救済されないのでしょうか。それは、旅行業法そのものを運用する権限を持つ旅行業協会に問題があるのです。
 まずは当会のブログ記事をご覧ください。
○2017年4月6日:長年顧客に喜ばれた「はらぼじ観光」が証明した「てるみくらぶ」破産で何万人を大損させた旅行業法の無意味
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2284.html#readmore

 一方、旅行業法に定める顧客との金銭取引を一切しない業態を作り上げて、何万人もの顧客に対して満足のいくサービスを提供し続けていたはらぼじ観光は、群馬県旅行業協会に登録せずにあっせんを行っていたとして、群馬県旅行業協会の依頼を受けた全国旅行業協会の顧問弁護士ら7名連名で提訴され、1審、2審、そして最高裁においても無罪を主張しましたが、裁判所ははらぼじ観光に対して30万円の有罪判決を下したのでした。

 はらぼじ観光の問題は「日本旅行業協会」ではなく「全国旅行業協会」が、新しいビジネススタイルを構築した業者を見せしめ的に締め出した事例ですが、日本旅行業協会も、全国旅行業協会と同様に、カネだけを集めて、肝心の旅行業の発展に寄与する事業は何もしていない組織です。

 はらぼじ観光は、旅行業法で定義される顧客との金銭取引をやめて、「今後はお客さんから前集金しないから、供託金(=許認可)なしでもよいでしょう」という主張を宣言して、仕事をしていました。だからこそ、顧客との金銭トラブルは皆無で、一度もクレームを受けたことはなく、そのきめ細かいサービス対応は多くの顧客に十分な満足度を与えていました。

■今回の、てるみクラブの倒産は、はらぼじ観光を旅行業違反容疑で訴えた全国旅行業協会と同じ形態の日本旅行業協会の会員会社(補償社員)を隠れ蓑にして、多額の旅行代金を顧客からだまし取ったことで被害が増大しました。

 日本旅行業協会ではホームページに「弁財補償」について掲載しています。
https://www.jata-net.or.jp/travel/info/qa/bond/170324_terumiinfo.html

 この弁財補償というのがくせもので、あたかも顧客が損害を被っても、協会の弁財補償で救助してもらえるようなイメージを顧客にあたえています。

 そのため、旅行業界における旅行業協会がいかに旅行業の発展に逆行しており、存在自体が無用なことをアピールする必要があると考えた当会は、このてるみくらぶが起こした「詐欺」事件について、旅行業の健全な発展を願い、消費者庁に次の内容の意見書を提出しました。

**********PDF ⇒ 2017tnuic20170501j.pdf
2017年5月1日
〒100-8958 東京都千代田区霞が関3-1-1中央合同庁舎第4号館
消費者庁 御中
〒371-0801 群馬県前橋市文京町一丁目15-10
                市民オンブズマン群馬
                代  表 小川 賢
              事務局長 鈴木 庸
                連絡先:電話 090-5302-8312(小川携帯)
                    電話 027-224-8567(事務局)
                    FAX 027-224-6624(事務局)

         意 見 書
件名:てるみくらぶの倒産と旅行業法の弁財業務保証金分担金制度の弊害について

前略 当市民オンブズマン群馬より今年の4月5日付で「件名:全国旅行業協会が賛助会員として積極的に営業を認めている総合案内所の違法性について(旅行業界における『官製カルテル』の存在)」の文章はすでに送ってあります。

それに関連して、旅行業法と旅行業協会の現状が消費者被害を拡大させているという典型的な「事件」が起こりました。2017年3月27日に東京地裁に破産を申し立て倒産した“てるみくらぶ”のことです。

負債総額151億円は、旅行業ではリーマンショック後で最大と言われており、そのうち約100億円が、一般旅行者約3万6000人のもので、春休みの旅行シーズンに現地でホテルがキャンセルとなったり、帰国できない可能性が生じたり、新卒内定者50人が内定取り消しを通告されたりと、その衝撃は甚大です。

そのため、消費者保護という観点から、調査と対応をお願いしたいと思い意見書を送付致します。

旅行業法には旅行業者として認可を受けるためには供託金を観光庁または各都道府県へ納入するという事が義務づけられています。

供託金を納入する代わりに、観光庁の下部組織である日本旅行業協会、または国土交通通省の下部組織である全国旅行業協会へ「弁財業務保証金分担金」(以下「弁財保証金」と省略)を納入して旅行業の認可を受ける事もできます。

報道によれば、てるみくらぶは日本旅行業協会の会員であり、観光庁への供託金ではなく、日本旅行業協会へ弁財保証金を納入し、旅行業の認可を受けていました。

てるみくらぶの弁財保証金の額は1億2千万円です。また、弁財保証金の額は本来の供託金の額の5分の1です。

てるみくらぶの倒産により、旅行代金を支払ったにもかかわらず、そのサービスが提供されない「被害額」の総額は、弁財保証金の1億2千万円の100倍相当だという報道があります。100万円払ったのに返還されるのはたったの1万円。

それでは、消費者保護にもなんにもなっていないということです。

供託金の5分の1の弁財保証金という制度そのものが、消費者の被害額を少なくとも、5倍にしているということです。

さらに、てるみくらぶは日本旅行業協会の会員だということを広告に盛り込むことで、公的機関が何かを保証するようなイメージを消費者に与えています。間接的にでも協会が詐欺行為とも見られているてるみくらぶの行為に荷担しているという見方もできます。

ちなみに、前回「官製カルテル」の文章は、国土交通省の下部組織である「全国」旅行業協会の違法性についてを指摘したものです。

全国旅行業協会は“はらぼじ観光”の事件に見られるように、消費者から代金を預からない債務が発生しないという業態に対してまでも登録を強要し、協会に会費を支払ってさえいれば、登録なしでの営業を認めています。これでは、やくざの“みか締め料”といっしょです。

日本旅行業協会においても、“てるみくらぶ”から会費を徴収し、供託金の5分の1の額である弁財保証金を預かっているにもかかわらず、これほど多額の被害を出さないための対策を取っていたのかどうかも調査すべきです。

事件がおきてから形式上の補償の提示をホームページでしたところで、1%が返還されるだけでは、消費者保護のために何もしていないのと同様です。ホームページには「被害額は1億2千万円を超える見通しです」という表現で現実に1%しかもどらないということに比べれば現実を偽った表現だとも言えます。

旅行業協会なる組織がなぜ2つあるのかも疑問視されます。

税金の無駄遣いをなくすという当会の目的から考えれば、1つにまとめるべき組織だとも考えられます。

天下りの問題も大きく報道されました。

観光産業の健全な発展のためにも、2つある旅行業協会が、自分たちの収入のためではなく、観光客の利益のための仕事をするように変わることに期待し、御庁におかれましては、“てるみくらぶ”の事件に関しては日本旅行業協会の調査と指導を、官製カルテルの存在については全国旅行業協会への調査と指導をお願いしたいと思います。

なお、この問題について、御庁から折り返し文書で当会の意見に関してなにかコメントをアドバイス賜れれば幸いです。

以上
**********

【5月20日追記】
誤字修正版をあらためて5月14日付で消費者庁に送付しました。 
PDF ⇒ 20170514.pdf

■今回の意見書では、観光産業の健全な発展を阻害する2つの旅行業協会への調査と指導を消費者庁に要請しました。このほかにも次の問題があります。

その1:官が民間の取引を「補償」すること自体に無理があるうえに、まやかしであること。

その2:旅行業法は旅行代金を手集金していた頃の古いもので、ネット販売の時代には合わないこと。

その3:旅行業協会はなくすか、百歩譲っても、一つに統合すること。


 それでばなぜ、我が国の旅行業界では、日本旅行業協会と全国旅行業協会の2つが存在するのでしょうか?当会の旅行業協会撲滅チームが調査をしました。

 その結果によると、旅行業法は、1952年に「旅行あっ旋業法」として制定され改正を繰り返してきました。店頭販売や団体旅行が主流だった時代に対応した内容で、かつては、海外旅行を扱う旅行業者と国内旅行に限定して扱う旅行業者の区別がありました。海外を扱う業者は旧運輸省に登録申請して、供託金を預け、国内限定の業者は都道府県知事の管轄で、各県庁に登録申請して、供託金を預けていました。

 「旅行業法が現実と乖離し、現状に即していない」という意見も多数みられた。標準旅行業約款や、旅程保証制度、特別補償規定などが現状に即しているのか検証が必要で、「多様なニーズに合わせた自由な営業や、自由なツアー企画ができず、日本の旅行業界は世界のなかでガラパゴス化している」との指摘も挙がった。

 その登録申請後、1年が経過すると、海外は「日本」、国内は「全国」の旅行業協会への入会の「資格」を得ることができるようになります。1年経過した時点で、それぞれの旅行業協会への入会申請をし、官報にその旨を掲載し、申請して半年が経過すると、晴れてどちらかの旅行業協会の入会となるわけです。入会できた時点で、供託金の代わりに弁財保証金を協会に預けるわけです。そして、弁財保証金の5倍相当額の供託金を取り戻すせることになります。

■時代は変わって、すべての旅行業者が海外旅行を扱うようになり、その途中では、本来、海外旅行を扱えない業者も公然と違法に海外を扱いはじめたため、後追いで旅行業法が変わったという経緯もあります。

 また、登録申請後1年を経なくても、いきなり、日本と全国旅行業協会へ入会できるように変わりました。その時点で、協会への入会金と年会費が以前よりおよそ10倍相当に値上げされました。

 このことからも、旅行業法の建前である
「資本力のある会社が旅行代金を前集金し、旅行業の認可を受けることができる」
ことよりも、露骨に
「協会に会費を支払えば、認可を与える」
という
「役人と天下りの居場所の確保」
を優先させることに変わった、というふうに当会では見ています。

 海外をすべての業者が扱い、観光庁ができた時点で、1つにまとめることが自然なことなのでしょうが、そうはなりませんでした。いったいなぜでしょうか?

 全国旅行業協会(ANTA)の役員の一覧表が同協会のホームページに掲載されています。
http://www.anta.or.jp/anta/yakuin.html
*****役員構成(平成27年7月1日現在)*****
役名    氏名      会社・団体名・役職名            勤務
会 長  二階 俊博  衆議院議員                   非常勤
副会長  近藤 幸二  (株)全観トラベルネットワーク 代表取締役社長 非常勤
 加藤 正明  ツーリスト・トップジャパン(株) 代表取締役会長 非常勤
     國谷 一男  国谷観光(株) 代表取締役社長          非常勤
専務理事 有野 一馬  (一社)全国旅行業協会 専務理事        常勤
     ※経歴 昭和53年4月運輸省入省、平成18年7月国土交通省北陸信越運輸局長、平成20年7月(財)地域伝統芸能活用センター理事長、平成23年6月本会専務理事
理 事  浅子 和世  藤邦旅行(株) 代表取締役社長         非常勤
     岩本 公明  長崎県交通観光(株) 代表取締役社長       非常勤
     北  敏一  (株)トラベルシティ 代表取締役社長      非常勤
     木村  進  木村トラベル 代表者              非常勤
     駒井 輝男  (有)東日本ツーリスト 代表取締役社長     非常勤
     坂入  満  (株)ミサワツーリスト 代表取締役社長     非常勤
     高橋 幸司  水沢ツーリストサービス(株) 代表取締役社長  非常勤
     積田 朋子  (株)観光経済新聞社 代表取締役社長      非常勤
     中川 宜和  (株)ホリデイプラン 代表取締役社長      非常勤
     永野 末光  (株)西日本トラベルサービス 代表取締役社長  非常勤
     花岡 正雄  (株)ニュートラベル広島 代表取締役社長    非常勤
     玄  東實  アシアナスタッフサービス(株) 代表取締役社長 非常勤
     藤木  均  (有)ロイヤルツーリスト 代表取締役社長    非常勤
     藤田 雅也  (株)アイラブイット 代表取締役社長      非常勤
     三浦 雅生  五木田・三浦法律事務所 弁護士         非常勤
     三橋 滋子  (一社)日本添乗サービス協会 専務理事     非常勤
     山中 盛世  (有)香北観光トラベル 代表取締役社長     非常勤
     和田 雅夫  (株)ワンダートラベルサービス 代表取締役社長 非常勤
監 事  川崎  糺  (株)かつらぎ観光社 代表取締役社長       非常勤
     日暮 良夫  綜合商社日本サンセット(株) 代表取締役社長   非常勤
     酒井 和夫  酒井和夫事務所 公認会計士           非常勤
**********

 全国旅行業協会の会長は自民党幹事長の二階俊博・衆議院議員で、ずいぶん長く会長をしています。和歌山県選出で、旅行業界関連のイベントを観光県である和歌山に誘致することも多く、業界では「土建屋の構図を旅行業界に持ち込んだ」典型的な権力志向体質を表す政治家と言えるでしょう。現に、78歳になるこの老政治家は「自民党の妖怪」とか「21世紀の金丸信」などと称されています。

 ちなみに、二階俊博幹事長は4月29日までに、香港フェニックステレビの取材に応じ、中国主導の国際金融機関アジアインフラ投資銀行(AIIB)への日本の参加について「可能性もある」と述べ、親中派であることが判明しています。このAIIBは、習近平が提唱した現代版シルクロード経済圏「一帯一路」構想を資金面から支える役割を果たしており、これまで我が国は慎重な対応をとってきました。

 ところがこの親中派政治家は「一帯一路」構想について、日本として今後「最大限の協力をしていく」と強調し、その上で、「日中友好を心から願っており、その道に間違いはない。妨害は許されない」とまで発言したのでした。(2017年4月29日産経ニュース)

 この御仁が会長に長年居座っている組織が、まともに旅行業界の発展に寄与しているとは到底考えられません。

 一方、今回の事件で、てるみくらぶが加盟していた日本旅行業協会は、会長や副会長こそ大手旅行代理店の会長や社長が非常勤として名を連ねていますが、常勤の志村格・理事長は、旅行振興課長(現観光産業課長)をはじめ、2011年9月より観光庁の観光地域振興部長、審議官、次長を歴任し、航空分野でも、航空交渉官や国際航空課長を務めたほか、新関西国際空港では取締役、常務取締役の肩書をもつ天下りの御仁です。

 したがって、理事長ポストは天下り用にとってあることが分かります。

■全国旅行業協会では、入会金についてホームページで説明しています。
http://www.anta.or.jp/anta/sinkinyukai.html

 第1種旅行業の場合入会金225万円とあり、年会費は「各都道府県支部に問合せください」と記してあります。中央と地方の両方の組織が潤うように仕組んであることがわかります。

 業界関係者の間では、「こんなに高い入会金を払うのなら、協会に入らずに5倍であっても、供託金を預けておいた方がよい」と考える業者が増えているに違いありません。だから、そうした業者に退会されては困るので、見せしめに、はらぼじ観光被疑事件をでっち上げたのだと推測できます。

■今回のてるみくらぶ事件は、はからずも、2つの旅行業協会の存在意義を根本から問い直す契機となりました。2つの協会は旅行業界の発展にとってなんら寄与しておらず、まったく無用な組織であることが、今回の事件で証明されました。

 てるみくらぶでは、資金繰りが苦しくなってきたのに、会社を解散することなく、存続を図るため、さらに広告をだして顧客をだまし続けました。こうした経営者としてあるまじき行為を、同社の女性社長が行った背景には、自ら手を染めた経緯のほかに、金貸しだかコンサルタントだか、素性のわからない人がすり寄って、詐欺のアドバイスをした可能性もあります。なぜなら、100億円や150億円もの大金を「広告代」として費消したなどとはとうてい考えられないからです。

 はらぼじ観光をみせしめのため訴えた旅行業協会や、捜査に加担した警察や検察は、これだけ多数の被害者が出た事件なのだから、「広告代」として消えた100億円から150億円のカネがどこに行ったのかは調べるべきです。

■まったく被害者がいないはらぼじ観光被疑事件の場合、前橋東署から総勢17人もの警察官が家宅捜索にやってきました。今回の事件では、被害者の多さといい、損害金額の大さといい、せめて10倍の170人くらいの警察官を動員しなければならないはずです。また、旅行業協会は、顧客の目線で、100億円から150億円の使途を明らかにすべく、てるみくらぶによる被害者を支援して、最小限でも損害賠償請求を起こすべきです。

 はらぼじ観光被疑事件の捜査に携わった警察官や、管轄の群馬県庁の職員らは、旅行業界の知識がまったくありませんでした。それにもかかわらず、彼らの捜査資料や供述調書は有効だとされ、同じく旅行業界のことを全く知らない検察官が、はらぼじ観光を起訴しました。さらに旅行業界のことを何も知らない裁判官が、素人の役人、警察官、検察官らの資料を鵜呑みにして、被害者ゼロのこの事件の被疑者であるはらぼじ観光に対して、有罪判決を下したのでした。

 今回の事件で、旅行業協会への信頼回復のためにも、旅行業協会として、消費者保護を最優先に取り組むことが求められています。しかし同協会は、これまでそうした消費者保護のことはなにもせずに、高い入会金や年会費の上に胡坐をかいてきただけでした。

 この事件に対して、旅行業協会が、被害者に対してきちんと補償しないまま、相変わらず旅行業法で担保された利権の旗だけを表面上掲げて、自らのメシの確保を優先して、今回の事件をうやむやのまま幕引きするのか、当会としても注意深く監視していく所存です。

【市民オンブズマン群馬・旅行業協会撲滅キャンペーン推進班・この項続く】

※参考記事
**********トラベルボイス2017年4月30日
https://www.travelvoice.jp/20170430-88045
観光庁、てるみくらぶ問題で再発防止案の検討会、弁済制度と旅行業経営の2視点で議論を開始

 観光庁は2017年4月28日、てるみくらぶの経営破綻の影響を踏まえ、再発防止を目的とする「第1回新たな時代の旅行業法制に関する検討会 経営ガバナンスワーキンググループ」を開催した。
 冒頭挨拶で観光庁長官の田村明比古氏は、「被害の大きさを鑑みて立ち上げた」と発足の理由を説明。「これまでに明らかになった事実や状況から判断すると、複数の問題点が浮かんでいる」として、被害者や債権額の多さや現行の弁済制度の限界に加え、破綻直前まで行なわれていた現金決済キャンペーン、粉飾決算の疑いなどを列挙し、「幅広い論点で、速やかな検討をお願いしたい」と要請した。
 座長に選ばれた一橋大学大学院商学研究科教授の山内弘隆氏は、「昨今の観光ブームで旅行業界の環境、業態が変わってきている。大きな躍動感を削いではいけないが、こういう事案をどう防いでいくか、重要な局面にある」と述べ、ワーキンググループのミッションとして、「政府と業界による再発防止策の検討」と、「再発時に消費者を守る措置の検討」の2点を示した。
★夏に取りまとめ案、秋に具体的なアクションか
 会議終了後の記者ブリーフィングによると、初会合は状況の共有と論点の収集を目的に行なわれた。まずは議論の前提として、観光庁が(1)弁済制度のあり方、(2)企業のガバナンスのあり方の2つの大テーマのもとに論点を提示(記事の最後に記載)。これに対し、各委員からも同様の意見が述べられ、新たな論点は提示されなかった。
 また議論では、弁済制度について、債権者数・債権額が過去に比べて格段に多いことから、「今回の事例は特殊」とした上で、「特殊事例にあわせて変えるのは機能を歪めてしまう」との意見が上がった。現行の弁済制度では、これまで8割程度の旅行業倒産などの事案で100%の弁済がされており、「通常のケースでは機能している」という観点での意見だ。
一方で、「これを踏まえながらも弁済制度を変える場合は、事実関係の把握が必要」や、弁済制度に限らず「行政や旅行会社、業界団体のぞれぞれで取り組むべきことを考えるべき」など、制度の見直しに対する意見も述べられたという。
 ブリーフィングを担当した観光産業課参事官の黒須卓氏は、「今までの制度がすべて機能しているなら、ワーキンググループを開催する必要がない。委員の知恵をいただき、新たな制度設計や制度の改正が必要かどうか、予断を持たずにやっていきたい」との考えを示した。また、旅行会社の経営状況の把握については、透明性を高めるための制度設計なども検討していく考えだ。
 ワーキンググループの委員には、日本旅行業協会(JATA)や全国旅行業協会(ANTA)などの業界団体のほか、保険会社や銀行、クレジット業界団体なども招請。オブザーバーとして、消費者庁も参加する。先ごろ、結成されたてるみくらぶの被害者の会には、同会からの要請があれば意見を聞き、議論に反映する考えがあることも示した。
 次回のワーキンググループは5月中を予定。今後4回~6回程度を開催し、夏までに取りまとめ案を出す考え。それを踏まえて秋ごろには、省令や通達、業界に対する呼びかけ、広報などいずれかの形式で、行政側からの発信がなされる見通しだ。
<<参考記事>>
てるみくらぶ決算書から読み解く経営の問題点、企業会計のプロに一問一答で聞いてみた(2017年4月3日)
【検討や議論の前提として観光庁が提示した項目】
1.弁済制度のあり方
・適切な弁済業務保証金制度の水準について
・取引額の規模と弁済業務保証金分担金の額との観点
・モラルハザード防止の観点
・弁済業務保証金制度を補完する制度の導入の可能性(現行のボンド保証制度のさらなる活用等)
・保険制度の活用について
・役務的履行保証の可能性について
2.企業ガバナンスのあり方
・健全な経営を遵守させるための方策について
・登録更新の年度以外の企業の経営状況の把握について
・企業自身の監査体制のあり方について・広告表示、旅行業募集のあり方について
・旅行業の宿泊施設等への支払期間等の見直しについて

**********トラベルボイス2017年4月26日
観光庁、てるみくらぶ倒産で消費者保護や旅行業の経営のあり方を議論へ
 観光庁は2017年4月28日、第1回「旅行業法制検討会 経営ガバナンスワーキンググループ」を開催する。
 旅行会社てるみくらぶが、約9万人もの予約を受けたまま2017年3月27日に破産申請をして倒産したことに加え、オンライン取引が増加している現況も考慮し、消費者保護と弁済制度、経営ガバナンスのあり方などを検討する。同ワーキンググループは、2016年10月に立ち上げた「新たな時代の旅行業法制に関する検討会」の下部組織とする。
 ワーキンググループのメンバーは以下の通り。
【旅行業法制検討会 経営ガバナンスワーキンググループ 委員構成】 (五十音順、敬称略)
 金森大輔氏:損害保険ジャパン日本興亜株式会社 企業商品業務部保証・信用保険グループ グループリーダー
 近藤幸二氏:一般社団法人全国旅行業協会 副会長
 篠原貴子氏:篠原会計事務所 税理士
 志村格氏:一般社団法人日本旅行業協会 理事長
 谷口和寛氏:御堂筋法律事務所 弁護士
 速水邦勝氏:一般社団法人日本海外ツアーオペレーター協会 専務理事
 伏谷充二郎氏:日本公認会計士協会 理事 公認会計士
 三浦雅生氏:五木田・三浦法律事務所 弁護士
 山内弘隆氏:一橋大学大学院商学研究科 教授
 與口真三氏:一般社団法人日本クレジット協会 理事・事務局長
 横沢泰志氏:株式会社みずほ銀行 証券部調査チーム 次長
(オブザーバー)
 河内達哉氏:消費者庁消費者政策課課長

**********女性自身 2017年4月21日 17:02配信
ユーミン好きで3億円 てるみくらぶ社長が行っていた乱脈協賛

記者会見で号泣する山田社長
 「『てるみくらぶ』は、会社の規模に釣り合わないような大きな音楽イベントに協賛を続けていました。14年から大幅な赤字経営に転落していたのに昨年も協賛をやめなかったようです」(イベント関係者)
 旅行会社てるみくらぶは3月27日、自己破産を東京地方裁判所に申請した。負債額は151億円。支払った旅行代金が一部しか弁済されない被害者は、9万人にのぼる。
 「本当に申し訳ないと思っている。とにかくみなさんのお役に立つことだけを思って、いままでやってきたので」と謝罪会見で号泣しながら語った山田千賀子社長だったが、冒頭のコメントのように協賛という形で会社の金を音楽イベントに注ぎ込んでいたようだ。別のイベント関係者が語る。
 「そのイベントはゆず、ミスチルなど大物ミュージシャンが参加する音楽イベント『Golden Circle』。ある音楽プロデューサーが企画したもので、山田社長は彼を通してイベントを知るようになったそうです」
 島根県出身で、神奈川県の大学を出て旅行代理店に就職後は添乗員として活躍し、32歳の若さで独立して社長に。バリバリのキャリアウーマンだったという山田社長だが、いっぽうでこんな話もあった。
 「ミュージシャン好きが高じて、音楽イベントの協賛も社長が先頭に立って10年から始めたようです」(前出・別のイベント関係者)
 そのイベントの“ウリ”はライブの前に旅行商品が当たるというものだった。山田社長は、ミュージシャンのなかでも特にユーミン(63)の大ファン。同世代でカリスマのユーミンは憧れの人で、少しでも近づきたいという思いが、13年1月3日のユーミンの40周年コンサートへの協賛として結実する。
 「武道館で行われたイベントは大掛かりで、薬師丸ひろ子やムッシュかまやつ、細野晴臣など大物が集結。社長もその日はユーミンに挨拶するために会場に来ていたようです」(別のイベント関係者)
 てるみくらぶはイベントにどれくらいの“出費”をしていたのだろうか。この音楽イベントに関わっていたある関係者がこう明かしてくれた。
 「ざっと見積もって7年で3億円くらいではないでしょうか。てるみくらぶの破綻で、イベント参加経験のあるミュージシャンのなかには、被害者に対して心苦しいと思っている人もいると聞きます」
 7年間にわたってイベントに協賛し続けていた事実は、今後のてるみくらぶの破たん処理にどんな影響をあたえるのだろうか。破産手続きの申立代理人弁護士の柴原多氏に聞いた。
 「今後、管財人が、資産をお金に変えて負債を確定する作業をします。しかし多い年で宣伝費が20億円を超えているのは腑に落ちないですね。経営が立ち行かなくなっているのに個人的関係だけで山田社長がお金を出しているなら問題があると思いますが、これからの調査次第となります」
 ユーミンの所属事務所に山田社長との関係について聞くと、「個人的な関係はありません」とのことだった。社長が、会社の金で個人の夢を叶えようとした行為が破たんの一因だったとしたら、被害者の怒りはさらに強まることだろう。

**********トラベルボイス2017年4月3日
てるみくらぶ決算書から読み解く経営の問題点、企業会計のプロに一問一答で聞いてみた

*写真は2017年3月27日に行われた同社の記者会見。
 経営破綻した「てるみくらぶ」が粉飾決算を繰り返していた可能性が高まっている。決算書は観光庁や銀行など提出先によって目的別に複数、作成されていたという報道もある。これは事実なのか?このほど同社が提出した破産手続開始申立書から、てるみくらぶの経営状態をトラベルボイスのコラムニスト公認会計士・税理士の石割由紀人氏に一問一答形式で聞いてみた。
Q1、てるみくらぶは粉飾決算をしていたのでしょうか?その場合、法的な責任は?
 粉飾決算をしていたのは、ほぼ間違いないでしょう。破産申立書においても詳細は精査中であるとしつつも粉飾の疑いのある会計処理についての指摘がなされています。
 直近2年の決算書をみると、未収収益の内訳に航空会社の名前が並び、その販売におけるキックバックの過大計上(売上過大計上)、前受金の過少計上、ソフトウェア資産の過大計上等といった粉飾の手口が使われた可能性があります。
 粉飾を行うと刑事責任と民事責任を負います。刑事責任では、違法配当罪、特別背任罪、銀行等に対する詐欺罪など、民事責任では違法配当額の賠償、第三者責任、銀行等債権者に対する損害賠償請求を負います。
Q2、外部から、経営状況は把握することは難しかったのでしょうか?
 てるみくらぶは、上場会社ではありませんので、決算書の公表は義務ではありません。2年前から業績開示をしていないという報道がありましたが、従来、会社独自の判断で任意に業績開示していたものの、業績不振を隠すために非公表にしたのかもしれません。
 取引金融機関等は決算書等を通じて経営状況をある程度は把握していたとは思いますが、その決算書が粉飾決算であったということです。
 現金一括入金キャンペーン等もあって、何とか事業が回ってしまっていたので、銀行側から融資を止めづらかった状況があるかもしれません。憶測にはなりますが銀行も薄々粉飾決算の可能性を嗅ぎ取っていたのではないでしょうか。銀行にとっても、これ以上被害額を増やさないというのは合理的な判断だったのではないかと思います。
Q3、経営の問題点は、どこにあったのでしょうか?
 インターネットの普及で、業績拡大してきた「てるみくらぶ」ですが、インターネットの更なる進化によって、旅行者は旅行業者を利用しないで、自分で宿泊施設や格安航空券を手配することが可能になりました。国内・外資ともにオンライン旅行会社(OTA)との競争激化で粗利率が低下したと思います。
 てるみくらぶの経営は、航空会社からのボリュームインセンティブであるキックバック手数料に依存した収益構造であった可能性があります。
 破産手続き開始申立書においては、「航空会社との合意が成立しているか必ずしも明らかではなく、その村費及び金額については精査が必要である。」と粉飾の可能性を示唆しています。要するに架空売上げの疑いがあるということです。
 旅行業界を取り巻く経営環境は厳しいものがありますが、粉飾決算に手を染めて、金融機関らからの融資を継続させることに注力し、厳しい現実や根本的な経営の課題と向き合っていなかったのではないかと思います。
Q4、破産の理由であげられた広告宣伝費の急増とは、どのような状況でしょうか?
 会社作成の決算書では平成27年9月期では9億7600万円だった広告宣伝費が平成28年9月期では一気に20億円に増加しています。新聞への広告出稿を増やしたという報道がありましたが、広告宣伝費の激増が資金繰りを悪化させた原因の一つではないかと思います。
 航空会社からのボリュームインセンティブを獲得するために、薄利多売で広告宣伝費を増やさざるを得ない状況に陥ったのだと思います。
Q5、2017年度に新卒50人の採用を決めていたといいます。この規模の会社が50名の採用したことをどう見ますか?
 正社員75名(他、契約社員4名、パートアルバイト48名)であるのに、内定者58名は多過ぎだと思います。憶測になりますが、シニア向けに新聞広告を増やしたので、インターネット広告に比べて電話アポインターとして人件費の低い新卒が必要だったのかもしれません。
 一方で、事業継続事態に疑義があったであろう状況を考えると、計画倒産を疑われないために、世間に積極採用を印象付けようと考えた可能性もありますが、その点は謎です。
Q6、決算書から山田代表の役員報酬が明らかになりました。その金額は適正ですか?
決算書には、役員報酬が年収3360万円と記載されています。それは、たしかに高額な給与とみていいでしょう。黒字会社ならともかく、赤字会社の役員報酬としてはもっと金額を抑えるべきだったかもしれません。
 ちなみに、破産手続開始申立書の添付書類を見ると住まいは年間家賃421万円のマンションでした。社用車にはベンツが記載されていましたが、平成19年登録の簿価28万円のものです。際だって豪華待遇ではないと思います。
 しかしながら、役員報酬減額といった自分の身を削れない経営者に抜本的な経営改善は難しかったのかなと思います。
Q7、てるみくらぶのように急激に資金繰りが悪化したとき、経営者はどうするべき?
 まずは止血と資金調達を進めるしかないと思います。資金繰り悪化が、安値による現金一括入金キャンペーンに走らせたのだと思います。
 今回の破産申立は、メインバンクであるSMBCから緊急融資等を受けつつも、資金繰りに窮し、国際航空運送協会(航空券購入代金を一括受託)への航空券代金支払遅滞と航空券発券システム停止が直接的な引き金となりました。
 自転車操業状態でボリュームインセンティブを獲得するために走り続けるしかなかったのではないでしょうか?
Q8、今回の破産は計画的で詐欺といわれています。本当でしょうか?
 計画詐欺のようだと思われても仕方ない面はあると思います。
 「てるみくらぶ」の給与計算は、10日締め25日払いで、3月25日は土曜日ですので、3月24日に最後の給与を従業員に支払って、翌月曜日27日に破産申立を行ったのだと思いますが、給与支払前の現金一括入金キャンペーン等は悪質だと思います。
回答者:石割 由紀人氏(公認会計士・税理士)
 国際会計事務所にて監査・税務業務に従事後、ベンチャーキャピタルを経て、スタートアップベンチャー支援専門の会計事務所を経営。多くのベンチャー企業等の株式上場支援・資本政策立案等を多数支援。上場会社をはじめ多くの社外役員も兼任。
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**********Business Journal 017.03.29
http://biz-journal.jp/2017/03/post_18499.html
てるみくらぶ、詐欺の可能性…破産準備の一方で大々的に広告&料金徴収の疑い

てるみくらぶのHPより。https://www.tellmeclub.com/20170327_info.html
 3月27日、旅行会社てるみくらぶ(本社・東京都渋谷区)が破産手続きを開始したというニュースが流れました。報道によると負債総額は100億円を超えているとのことであり、リーマンショック以来の旅行業者の倒産としては最大規模といわれています。
 突然の破産に、てるみくらぶで旅行を申し込んでいた多くの顧客が悲鳴を上げています。なかには、海外でホテルから宿泊を拒否されたり、復路の航空券を自前で用意しなければならない状況になるなど、かなりの混乱が生じているようです。
 さらに、破産となれば、旅行代金として振込んだお金のうち、返金されるのは1%にも満たないとのことで、「詐欺事件ではないか?」という声も上がっています。
★詐欺罪(刑法246条)の成立
 では、果たしててるみくらぶ(厳密にいえば、代表取締役である山田千賀子氏や経営幹部など)に詐欺罪(10年以下の懲役)は成立するのでしょうか。
 この点、単に負債が多額に及んでいる状態であることを知りつつ顧客に旅行代金を振り込ませていただけでは、詐欺罪は成立しません。もっとも、「倒産が確実である」という認識がありながら、顧客との間で旅行契約を締結して旅行代金を振り込ませたのであれば、「会社の現状からすれば、もはや顧客に対し旅行代金に見合う旅行サービス(航空券やホテルの手配・提供など)を提供することは不可能である」という認識を持ちながら旅行代金を徴収していたわけなので、「金銭をだまし取る」ことにつき「故意」が認められ、詐欺罪(刑法246条)が成立する場合があります。
★破産をいつから認識か
 そして重要なのは、てるみくらぶにこのような認識がいつの時点から生じていたのかという点です。
 今回、てるみくらぶは弁護士に依頼して破産手続開始申立てをしているようです。ここで、一般的な能力を有する弁護士であれば、通常、クライアントから債務整理を含めた破産申立ての依頼を受けてから「破産手続開始申立書」を裁判所に提出するまで、1カ月、諸事情により“特急”で申し立てる場合であれば約2週間ほどかかります。
 とすると、少なくとも遡ること約2週間前の時点で、てるみくらぶの経営陣は会社が破産する可能性が高いことを認識しながら、顧客から旅行代金を受け取っていた可能性があります。
 一般的に、破産申立てをするか否かの相談を弁護士にするということは、その時点において経営が相当程度、難局に陥っていることが多いといえます。
 さらには、破産申立ての依頼を受けた弁護士は、破産申立ての準備が整った頃には、「1週間後の〇月〇日には破産申立てをしますので、申立日の午前中に社員を集めて説明会を行ってください」「金融機関への説明会を設定してください」など、申立前後の計画や段取りを助言しますので、おそらく3月20日前後には、破産に至ることを確信していたのではないでしょうか。
 このように考えてみると、てるみくらぶの経営陣は、破産間際の“取り込み詐欺”として詐欺罪が成立する可能性はゼロではないと思います。
★「故意なし」との主張には無理
 なお、山田社長は記者会見で「詐欺をはたらくとか、毛頭考えておりません」「会社はこの1カ月の間に入金された顧客からの旅行代金は経営資金に充てるために使用した」旨、発言していましたが、おそらく、詐欺罪を追及されることを恐れ、「会社が倒産するとは考えていなかった。旅行代金を経営資金に充てればお客さんにサービスを提供できると思っていた」ことをアピールしたかったのでしょう。
 しかし、上記の通り遅くとも破産を確実に認識したと思われる3月20日前後の時点で会社を維持すること=旅行サービスを提供することが極めて困難であると認識することが可能であった以上、それ以後のネット広告や新聞広告を全部取りやめるべきでした。
 ところが、てるみくらぶは3月22日の時点でも「現金一括の場合に限り格安」といったツアー広告を出していたわけです。これは、破産を確実に認識しながら、顧客に対し旅行契約を申し込むよう誘因したといえますので、詐欺、少なくとも詐欺未遂の故意がなかったとの主張は無理があるのではないでしょうか。
(文=山岸純/弁護士法人ALG&Associates・パートナー弁護士、荻野正晃/同法人弁護士、高橋駿/早稲田大学大学院法務研究科、前里康平/同)
**********

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