市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

タゴ51億円事件、今年を振り返って

2008-12-31 23:55:00 | 土地開発公社51億円横領事件
■2008年(平成20年)もあと僅かで終わりますが、今年は、安中市土地開発公社巨額詐欺横領事件(通称タゴ51億円事件)を追及してきた当会にとって、大きな節目となる一年でした。

最大の出来事は、8月3日の日曜日の早朝に発生した首都高5号線でのタンクローリー横転事故でした。

当会のブログはそれまで毎日30~40件程度のアクセス数でしたが、8月4日に突然5000件以上をカウントしました。それが3日間続いたため、一体何が起きたのかと不思議に思っていたところ、関東運輸局が多胡運輸に特別監査に入ったという報道を知り、直ちに合点がいきました。その後、多くの人に当該のブログにアクセスいただき、当会が追及しているタゴ51億円事件について、広く日本中の方々に知っていただく契機となった多胡運輸による首都高タンクローリー横転炎上事故は、今年最大の出来事でした。

■そして、それと同時に、タゴ51億円事件の異常な幕引きが、やはり大物政治家の政治力により、行なわれた事がはっきりしたのです。ネットでは、多胡運輸を支えていたのが、大物政治家の息の係った運送会社であり、その手厚い庇護の下で、タゴ一族がしっかりと存続していたことを示す情報が飛びかいました。タゴ事件発覚直後から、当会に寄せられた複数の市民による告発情報が正しかったことを痛感させられました。

ということは、首都高の前代未聞の大事故でも、同様な異常な現状が発生するのではないか。当会のこの予測は、やはりピッタリと当っているかのようです。いまだに、荷主の出光興産はもとより、元請の運送会社も、そして多胡運輸による記者会見がまったく行なわれず、マスコミもこの事件の真相報道に対して、極めて消極的だからです。

首都高速道路会社が被った巨額の損失の尻拭いをきちんとタゴ一族およびその関係者が行なうのかどうか、当会は極めて悲観的な見方をしていますが、それはただちにタゴ一族およびその関係者に対する得体の知れないバリアーの存在を肯定する結果が出るかもしれないという懸念でもあります。

■また、今年は、安中市土地開発公社とその保証人である安中市が、群馬銀行との和解条項により、毎年2000万円ずつ支払ってきた10年目の節目でもありました。

皮肉にも、タゴ事件で、重要な立場にあった人物が現在の安中市の首長になっており、案の定、群馬銀行に首根っこを掴まれているため、群馬銀行に対してきちんとした交渉ができず、さらに今後10年間、103年ローンを支払い続けることになったのは誠に遺憾です。

来年は、首都高の損害賠償請求の推移と、タゴ事件による公社の塩漬け土地の始末など、いろいろな面で目が話せない展開が起きてくるものと思われます。

どうぞ、来年も当会の活動にご注目くださり、ご理解とご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

【ひらく会事務局】


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コンプライアンス無縁のガスパッチョ、東京ガスのやりたい放題

2008-12-31 17:57:00 | 東京ガス高圧パイプライン問題
■現在、安中市では、碓氷川の南側のあちこちで、平成19年8月からガスパイプライン工事が行なわれています。この地域を車で走ろうとすると、埋め戻したデコボコ道路にハンドルを取られそうになってヒヤリとしたり、あちこちで道路規制にぶつかったりしてイライラさせられます。

写真上:東京ガスが高圧ガス管埋設後、埋め戻した凸凹道。埋設後、最大1年以上経過しても、まだ仕上舗装していない箇所も多い。

迷惑な工事だと思いつつも、「どうも都市ガスがいよいよ安中にも導入されることになるようだから、不便でも我慢しよう」。地元住民は最初、そう思っていました。

安中市の北野殿と岩井地区の場合、最初の工事は平成19年6月14日から同年7月末にかけて行なわれました。天神川の橋から農免道路を経て、北野殿の二夜堂から市道に出て、藤井坂から岩井の県道をへて、碓東小学校の前の交差点から、少林山に向けて、常楽寺の前から高崎市との境の急カーブのところまで全部で41箇所を試験掘するということが、回覧板で地元に配布された東京ガスのチラシに書いてありました。このチラシには「輸送用ガス管埋設工事についてのお願い」として、「工事のための試験掘工事を施工させていただくことになった」ので「工事期間中、片側交互通行になるのでご協力願います」として簡単な日程表と試験掘の位置図が添付されていました。

■試掘掘工事が終わった途端、平成19年8月になり、また回覧板で「追加試験掘工事」を施工するというチラシが回覧板で回ってきました。この追加工事は同年8月27日(月)~9月29日(土)まで、前回工事のルートに沿って、26箇所で施工されました。

8月にたまたまチラシをみた地元住民が、チラシに書いてあった連絡先の東京ガスの群馬幹線I期建設工事事務所に電話をして工事の内容を聞いたところ、次のことが判明しました。

1)敷設するガスパイプは直径50センチ、ガスの圧力は7メガパスカル(約70気圧)。
2)安中市中野谷の信越半導体の横野平工場から高崎市の下小塙町まで総延長15.7キロ、投資額57億円、使用開始時期2010年3月。
3)安中市では、一般需要家に対する都市ガス供給サービス事業は考えていない。
4)試験掘工事は、埋設物が実際にどのように埋まっているのかを実際に掘ってみて、位置を事前に確認するため行なうもので、ルートは既に決まっている。

■また、ネット等で調べると、東京ガスと帝国石油が平成17年12月に共同で発表した天然ガスパイプライン「群馬連絡幹線」構想の概要は次のようなものでした。

**********
【天然ガスパイプライン「群馬連絡幹線構想について」】
   平成17年12月 東京ガス㈱ 帝国石油㈱
<はじめに>
 近年、地球環境問題の深刻化に伴うCO2排出量の削減問題等から、石油等の他化石燃料と比較して環境に与える影響が少なく供給安定性に優れた天然ガスが注目され、より一層の普及拡大が求められております。政府の「2030年エネルギー需給見通し」の中でも、1次エネルギー供給に占める天然ガスの割合が、今後更に高まるものと想定されており
 ます。また、地球温暖化防止のため、先進国等に対する二酸化炭素排出量削減を定めた京都議定書が発効される等、地球環境の保全が企業の最優先課題となっており、こうしたことからも天然ガスの果たす役割はますます重要になっております。
 天然ガスには、国産天然ガスと海外から輸入するLNG(液化天然ガス)の二種類が存在しますが、いずれの場合においても、天然ガスは各種パイプラインを介して全国約2,600万件のお客さまへ供給されております。現在、国内には首都圏等の大規模需要地周辺や関東甲信越等国産ガス供給地周辺を中心に約3,000kmの主要幹線パイプラインが敷設されておりますが、今後の天然ガスの普及促進のためには更なるパイプライン建設が必要不可欠であるといえます。
 これらの状況を鑑み、この度帝国石油㈱と東京ガス㈱では、群馬県を始めとする北関東エリアにおける天然ガスの旺盛な需要増に対応するために、群馬連絡幹線構想を計画し、共同で検討することと致しました。今後とも、環境に優しいエネルギーである天然ガスによる、“より快適な暮らしづくり”と“環境に優しい街づくり”に貢献し、地域の皆様の信頼に応えてまいります。
<「群馬連絡幹線」構想の目的>
 「群馬連絡幹線」構想は、帝国石油㈱が現在建設中の新東京ライン(2008年1月より供用開始予定)と、東京ガス㈱が現在供用中の熊谷~佐野幹線を連絡する、延長約100kmの天然ガスパイプラインを建設するものです。
 昨今の原油価格の高騰を背景に、省エネを推進する上で最も有効なクリーンエネルギーである天然ガスの導入を望むお客さまが急激に増加しております。群馬県を始めとする北関東エリアにおいては、主に新潟県内に埋蔵されている国産天然ガスや、海外から輸入し東京湾内の工場で生産している天然ガスを、帝国石油㈱及び東京ガス㈱が保有するパイプラインを介して供給しております。しかしながら、現在の旺盛な需要増に対して既存パイプラインでの供給ではその能力に限界が生じる可能性があります。そこで、同社の保有するパイプラインを有機的に連絡するパイプライン「群馬連絡幹線」を具現化することにより、群馬県を始めとする北関東エリアにおける天然ガスの供給安定性を大幅に向上させるとともに、天然ガスの更なる普及拡大に貢献することが可能となります。
<「群馬連絡幹線」構想の概要>
 現段階における概要は、以下の通りです。
 項目/主な内容
 始点/群馬県甘楽郡妙義町(帝国石油㈱妙義VB)
 終点/群馬県邑楽郡邑楽町(東京ガス㈱邑楽GS)
 延長/約100km
 圧力/7MPa
 ガス導管の主な仕様/口径 500mm
           材質 鋼管
           接合方法 溶接接合
 完成時期/2011年(2012年より全線供用開始予定)
<「群馬連絡幹線」I期工事について>
 上記のように全体構想がある中で、東京ガス㈱群馬支社内における天然ガス需要が堅調に増加する見通しがあることから一部区間(妙義~高崎)についてはI期工事として建設に着手することと致しました。
 区間/群馬県甘楽郡妙義町~群馬県高崎市
 延長/約20km(帝国石油㈱約6km、東京ガス㈱約14km)
 導管仕様/500mm(全体構想と同じ)
 工事予定/2006年工事着手、2010年完成目標
<おわりに>
 今後は、関係官庁ならびに沿線の皆様方のご指導、ご協力を賜りながら計画を推進してまいりたいと考えております。また、建設にあたりましては設計・施工・維持管理に方全を期すと共に、維持・運用にあたりましても安全管理・品質管理を十分徹底してまいります。
 何卒、ご理解と格段のご高配を賜りますようお願い申し上げます。
  [連絡先]東京ガス㈱群馬連絡幹線建設PT.  TEL:027-324-5437 FAX:027-323-9662
       帝国石油㈱新東京ライン建設事業所 TEL:0274-74-7881 FAX:0274-74-7883
**********

このように、エネルギーフロンティアを自称する東京ガスは、低炭素社会実現のために崇高な精神と目標を掲げていますが、実際には、地元の安中市には全く裨益効果のない計画であり、カドミウム公害で知られる東邦亜鉛安中精錬所向けに安価でクリーンな燃料として売り込む計画も目指していることが伺えます。ところが、住民の知らない間に、東京ガスは安中市との間で必要な手続を殆ど済ませていたのです。

■住民は、東京ガスが地元に天然ガスを供給する意思のない事を知って驚き呆れました。てっきり都市ガス供給のための工事だとばかり思っていたら、単なる通過のための工事であること、しかも、住民はそれまで一度もガスパイプラインの工事計画など、誰からも聞かされていなかったからです。そこで、このルートに決めた理由を東京ガスに聞いたところ、東京ガスは「いろいろなルートを検討した結果だ」というだけで、詳しい説明を避けました。

住民は、「回覧板で交通規制の通知チラシを配布しただけでは、不十分。70気圧もの超高圧の可燃ガスが地元の生活・通学道路の下に埋設されると、交通安全や生活環境の安全面で脅威となるから、事前に地元住民に説明をして理解を得ておくことが必要だと思うが、説明会をやったのか?」と質問しました。

すると、東京ガスは「ガス管が通る沿線の方々や地権者の方々に説明するが、地元説明会という形では説明する予定はない。市道管理者の安中市の指導で、既に区長の同意書を取った」と答えました。東京ガスは「これまでガス導管工事で、地元説明会は一度もやったことがない」と過去の“実績”を強調したのです。

既に安中市や地元区長には相談済みだというので、さっそく情報公開で安中市から資料をとりよせ、地元区長にも様子を聞いてみまた。その結果、驚くべきことが判明したのです。
1)経緯として、東京ガスは、平成19年7月18日に、野殿21番地~岩井371番地における市道へのガス導管占有工事について桜井区長(安中地区代表区長)、赤見区長(岩野谷地区代表区長)と協議し、同意書を受領していた。
2)今後の対応として、桜井区長、赤見区長と協議の上PR範囲を決めた後、工事予告回覧板の回覧、訪問による個別PRを実施する予定。
3)7月31日付けで桜井区長の同意書、7月27日付けで赤見区長の同意書が安中市長宛に出ていた。
4)岩野谷地区の赤見代表から各地区の区長らには何の話もなかった。赤見代表区長は「東京ガスに、回覧を各区長に届ける際に工事内容について説明するよう依頼しただけで、東京ガスが、地権者や沿線住民の方に説明するという約束ができている」として、実際にガス管が埋設される岩野谷1区、2区、3区、5区の各区長には全く話をしないで勝手に東京ガスの持参した同意書に署名押印した。
5)北野殿(岩野谷4区)の岡田区長は「東京ガスは、回覧板にチラシを入れてくれと言って持ってきて、簡単な説明はあったが、専門的なことは分からないので、4区の区長代理2名にもちゃんと説明しておいてくれ」と東京ガスに頼んだ。峯組の大塚区長代理は「直接業者がチラシを持ってきて入れてくれ」というので、内容のわけも分からないチラシを受け付けるのを最初は断ったが、「名刺を置いていくから頼む」というので、結局チラシを回覧板に入れたが、東京ガスからの説明は、チラシの内容についてだけだった。

■このように、地元説明会もせずに、交通規制のチラシを回覧板で回しただけで、東京ガスはガス管埋設工事に着手しようとしたため、地元住民が東京ガス社長に対して、直訴状を出し「地元説明会をぜひ開催してほしい。また、沿道に民家が密集し、地元通学路として使っているルートを避けて、再度見直ししてもらいたい」と強く要請しました。

地元住民は、生活道路や通学路を避けて、交通量が少なく沿線に住宅が比較的少ない代替ルートとして、①切通しの野殿交差点から野殿に上らず、そのまま県道を真っ直ぐ進み、柳瀬川沿いの道路を東邦亜鉛に沿って東進し、国道18号線に出て、碓東大橋を経て豊岡に抜けるルート、②切通しから農免道路を経て北野殿を経由し、再び東邦亜鉛の敷地に沿って農免道路を下り、中宿の交差点から国道18号線に出て、碓東大橋を経て豊岡に抜けるルート、③あるいは②のルートで農免道路を下って信越線の線路の手前から碓東小学校の北側の市道を東進し、碓東小の交差点の北側の越線橋の下を通過して、若宮橋の付近に出るルートなどを提案しました。いずれも工事による交通への支障が最小限に抑えられ工期の短縮により、コストダウンにも役立つからです。しかし、東京ガスは、既に決定済みだとして一切の変更に応じようとしませんでした。

そこで思い余った地元住民は直訴状を東京ガスの社長宛に送りました。ところが、東京ガスでは、本社では回答できず、全て出先の事務所が回答するというのです。

写真上:通学路の下に70気圧50センチ径の高圧ガス管を敷設する東京ガスの無神経。

■その後、工事の認可手続の経緯、実際の工事内容についてさまざまな情報を収集し分析した結果、東京ガスの高圧ガス導管工事には次の問題があることが明らかになりました。
1)住民からの要望は無視
 頑なにルート変更を拒否している東京ガスが、実は、岡田市政スタート直後の平成18年7月末に安中市に対して「周辺の水田、河川への影響等を考慮してルートを変更したい」として申し入れていたこと。変更前のルートは、信越化学の半導体工場付近の磯部MSから柳瀬川と信越線の間に沿って下磯部~大竹~岡田市長選挙小屋付近を通過して、野殿交差点からヒヤ坂を経由して北野殿地区に至り、岩井地区の東平から直接碓氷川の川底を推進工法で対岸の八幡町の国道に抜け、上豊岡町から環状大橋に添架工法で導管を設置し、対岸の高崎市下小塙町の高崎GSに接続する計画でした。しかし、計画を知った住民が平成19年10月に住民説明会で生活・通学道路を避けたルートに変更してほしいと要請しても、東京ガスは、コスト高や工法面での技術的課題などを理由に拒否。
2)安中市長との密約
 住民に説明もなく勝手に地区代表として東京ガスの同意書に署名押印した岩野谷地区の赤見代表区長が、平成20年12月5日(金)の地元区長会議で、住民の意向を無視して勝手に同意書を出した経緯について、「自分が同意書に署名押印する前に、既に岡田義弘・安中市長が、本件工事に同意ないし承認をしていたので、追認する形を取らざるを得なかった」との釈明したことが判明しました。市長が地元住民の意見を聞かずに業者の計画にゴーサインを出した根拠と経緯について、さっそく情報公開したところ、上記1)のとおり平成18年7月末に業者のルート変更について承諾済みであることが判明。
3)行政手続きの杜撰さ
 東京ガスは、岩野谷地区の高圧ガス導管敷設工事に際して、本来、道路法32条及び36条に基づく許可である道路占用許可申請で、道路法24条の承認工事許可で使う同意書を使用して平成19年7月18日に地元代表区長の同意を取り、平成19年7月26日付で道路占用許可を得た。このため、安中市に訂正を求められて、本来であれば、許可申請を初めからやり直すべきであるところ、平成19年8月初めに、同意書の差し替えを行なった。加えて、東京ガスは、先行する東横野地区の地元区長の同意書も同様に道路法24条に基づく様式であったことが明らかになったにもかかわらず、平成18年12月21日付の東横野地区の地元区長の同意書を添付した平成19年2月13日付の道路占用許可申請(同年5月23日付で占用許可取得)を修正しようとせず、東横野地区での高圧ガス導管敷設を強行。
4)地元との災害協定防止協定に消極的
 通常、直径50センチで70気圧もの高圧可燃物質が、住宅地や通学路に敷設される場合、万が一の事故や災害に備えて、地元と災害防止協定を締結するのが常識です。岩野谷地区でも、あまりにも身勝手な東京ガスのやり方を心配して、早期に災害防止協定の締結を地元と結ぶよう要請したところ、東京ガスが前向きに検討するというので、工事の回覧版の地元配布を承諾したが、いまだに東京ガスは協定締結をやろうとしない。
5)工期の延長による地元住民への迷惑無視
 東京ガスは、地元住民に対して、「平成20年12月末までに、岩野谷地区における全ての高圧ガス導管敷設工事を完了予定」と、平成19年1月に地元住民に説明しましたが、その後、平成20年3月末に工期を5ヶ月延長し、平成20年11月末にさらに7ヶ月延長すると臆面もなく一方的に通知しました。地元住民が、現状ルートでは土質や地形条件が悪いので、ルート変更により農免道路の使用により工期の短縮とコストダウンを提案したにもかかわらず、東京ガスはこれを無視。
6)コストとCSR意識の欠如
 距離16キロたらずのパイプライン敷設に57億円もの巨費(1m当たりなんと40万円!)を投じたり、予定より1年以上工期延長をしたり、東京ガスは、工程管理やコスト管理の意識が完全に欠如している。このようなコスト意識は、施工する住友金属エンジニアリング会社との馴れ合い体質から生じている。東京ガス向けに高圧ガス導管を製造する住友金属、新日鉄、JFEの製鉄製管会社は以前から談合体質が問題となり、公正取引委員会から何度も是正勧告を受けている。また東京ガス自体、談合体質を有している。東京ガスの豊洲工場の跡地は、土壌汚染で大問題となっているが、東京ガス自体は既に東京都に所有権が移転され無関係だとして、社会的企業責任(CSR)問題などどこ吹く風。

■こうして、岡田市長との密約で、巨額の利権を生む高圧ガス導管敷設工事が、住民への説明もないまま、どんどん進められています。今後、高崎市の豊岡町から烏川を越えて下小塙町まで高圧ガス導管敷設工事が実施されますが、とくにルート沿線の住民にとって、東京ガスの強引な工事の進め方には要注意です。

写真上:岡田市長の庭先で施工中の高圧ガス導管敷設工事。東京ガスに便宜を図る岡田市長の思惑と東京ガスの利害が一致しているかのようだ。

【ひらく会情報部・東京ガス高圧導管敷設問題研究班】

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首都高、中間決算にローリー横転炎上による影響について記載

2008-12-29 08:45:00 | 首都高炎上とタゴ運輸
■平成20年12月22日に、首都高速道路株式会社は、平成21年3月期の中間決算情報を次のとおり発表しました。

**********
1.平成21年3月期中間期の連結業績(平成20年4月1日~平成20年9月30日)(百万円未満切り捨て)

(1)連結経営成績(%表示は対前年中間期増減率)

項目/営業収益(百万円, %)/営業利益(百万円, %)/経常利益(百万円, %)/中間純利益(百万円, %)
20年9月中間期/ 129,881 △3.4/ 705 △87.4/ 1,041 △82.4/ 537 △83.5
19年9月中間期/ 134,420 △11.8/ 5,610 △44.9/ 5,901 △42.5/ 3,260 △46.4

項目/1株当たり中間純利益(円、銭)/潜在株式調整後1株当たり中間純利益(円、銭)
20年9月中間期/ 19.91/ -
19年9月中間期/ 120.74/ -

(2)連結財政状態

項目/総予算(百万円)/純資産(百万円)/自己資本比率(%)/1株当たり純試算(円、銭)
20年9月中間期/ 457,014/ 31,221/ 6.7/ 1,138.28
20年3月期  / 454,814/ 30,625/ 6.6/ 1,118.37
(参考)自己資本 20年9月中間期 30,733百万円 20年3月期 30,196百万円

2.平成21年3月期の連結業績予想(平成20年4月1日~平成21年3月31日)(%表示は対前年増減率)

項目/営業収益(百万円,%)/営業利益(百万円,%)/経常利益(百万円,%)/当期純利益(百万円,%)1株当たり当期純利益(円、銭)
通期/ 311,400 △30.0/ 2,000 △21.4/1,700 △45.4/ 1,200 △41.1/ 44.44
(注)連結業績予想数値の当中間期における修正の有無:有

【個別業績の概要】

1.平成21年3月期中間期の個別業績(平成20年4月1日~平成20年9月30日)

(1)個別経常成績(%表示は対前期増減率)

項目/営業収益(百万円,%)/営業利益(百万円,%)/経常利益(百万円,%)/中間純利益(百万円,%)
20年9月中間期/ 129,012 △ 3.4/  224 △95.7/  231 △95.5/  68 △97.6
19年9月中間期/ 133,593 △12.0/ 5,203 △48.3/ 5,204 △48.6/ 28,84 △52.0

項目/1株当たり中間純利益(円,銭)
20年9月中間期/  2.53
19年9月中間期/ 106.82

(2)個別財政状態

項目/総資産(百万円,%)/純資産(百万円,%)/自己資本比率(%)/1.株当たり純資産(円、銭)
20年9月中間期/ 448,672/ 29,061/ 6.5/ 1,076.33
20年3月期  / 449,063/ 28,992/ 6.5/ 1,073.80
(参考)自己資本 20年9月中間期 29,061百万円 20年3月期 28,992百万円

2.平成21年3月期の個別業績予想(平成20年4月1日~平成21年3月31日)(%表示は対前期増減率)

項目/営業収益(百万円,%)/営業利益(百万円,%)/経常利益(百万円,%)/当期純利益(百万円,%)/1株当たり当期純利益(円、銭)
通期/ 309,400 △30.2/ 1,200 △5.8/ 500 △60.0/ 300 △69.6/ 11.11現在
**********

■首都高によれば、当中間連結会計期間の利用交通量について、大型車は対前年比1.3%減、普通事は2.9%減となり、全体としては前年度より2.7%減の205百万台(112万台/日)となったとしています。この結果、当中間連結会計期間の業績は、営業収益129,881百万円(前年同期比3%減)、営業利益705百万円(同87%減)、経常利益1,041百万円(同82%減)、法人税等を控除した中間純利益は537百万円(同83%減))となり、前年同期に比べると、営業収益が56.1億円から7.05億円に激減しました。

各事業分野(セグメント)別に見ると、屋台骨の高速道路事業では、「首都高速道路のネットワーク整備の推進と営業路線の適正な管理を24時間365日体制で実施しており、営業路線延長は293.5kmに及び、高速道路株式会社6社中で最高となる81.4%(平成20年9月平均)のETC利用率を達成した」にも関わらず、「このような状況の中で、営業収益のうち、料金収入等比ガソリン価格の高騰や景気後退、タンクローリー火災事故に伴う通行止めの影響等により、123,720百万円(前年同期比2%減)となった」と述べています。

■さらに首都高は、平成21年3月期の通期の連結業績の見通しについて、グループの連結の営業収益として、高速道路事業において料金収入等2,495億円を見込んでいます。これは前年同期に比べ63億円の減少で、道路資産完成高455億円、高速道路事業以外の事業の収益163億円と合わせて、営業収益を合計3,114億円と見込んでいます。この結果、平成21年3月期の首都高の経常利益は17億円(前年度比45.4%減)、当期純利益は12億円(前年度比41.4%減)としています。

この減収の原因として、首都高は、中間決算同様、ガソリン価格の高騰と景気後退、タンクローリー事故に伴う通行止めの影響等による料金収入等の減を挙げています。

また、前述の連結・個別の業績予想に記載している数値について、首都高は「現在入手している情報を基礎とした判断及び仮定に基づいており、判断や仮定に内在する不確実性及び今後の事業運営等による変動可能性に照らし、将来における当社の業績と異なる可能性がある」としており、それらの「不確実性及び変動可能性を有する要素」として、“経済情勢の変動”、“自然災害等の発生”に加えて、“訴訟に関するリスク”を掲げています。

■このように、平成20年8月3日未明に起きた多胡運輸のタンクローリー横転炎上事故等による料金収入への影響について、首都高は、同年9月末までに昨年同期比で37億円減少し、通年の減少幅は63億円に拡大すると中間報告で述べています。

一方、横転炎上事故で破損した5号線熊野町ジャンクション付近の施設の修理に要した費用とされる25億円は、どのように計上されているのか説明が無いため判然としませんが、中間期の営業費用が、昨年同期比で僅か3億円しか増加していません。営業費用1291億円のうち道路資産賃借料987億円を除くと304億円となり、前年同期での321億円に比べると、17億円減っています。通期連結予想では、営業費用3093億円から道路資産賃借料1861億円を除き、1232億円の見通しを立てており、前期より半減しています。従って、タンクローリー横転炎上事故の復旧費用がどこにどういうふうに計上されているのか、さっぱり分かりません。

■こうしてみると、修理費用は、タンクローリーの運送会社に請求してみて、その後、訴訟に持ち込まれるリスクも勘案して、中間決算や今期の通期決算予想には計上していないのかもしれません。本来、そのようなリスクを先送りするような経理処理をすることは、監査上、認められないはずです。しかし今回は中間決算ということなのでしょうか。首都高の独立監査人である新日本監査法人の中間監査報告書を見る限り、訴訟の可能性に関する記述はありません。

現況では、まだ不確実性が高いため、首都高の中間決算のポイントと題する書類の注書きに「上記に記載した予想数値は、現時点での情報により判断した見通しであり、多分に不確定な要素を含みます。実際の業績等は様々な要素により上記予想数値と異なる場合がある」と念入りに書かれているのは、訴訟の可能性や必要性を認めていることを示唆しています。また、現時点で、首都高は、まだ損害賠償請求を多胡運輸やその関係先に正式に出していないことをうかがわせます。

もし多胡運輸やその関係先から、損害額の約45億円を回収できたと仮定すれば、7.05億円+45億円=52.05億円となり、平成20年9月期の決算は、前年同期の営業利益56.10億円並みの連結経営実績を達成できたわけで、首都高の民営化に一段と弾みがついたことでしょう。

いずれにせよ、平成21年3月期の首都高の連結及び個別業績に関する正式な通期の決算報告書には、監査報告書における監査人の意見及び首都高の対応方針として、何らかの記述がされるものと思われます。

■このように、首都高の平成20年9月期の中間決算情報を見る限り、タンクローリー横転火災事故に伴う通行止めの影響で、料金収入が明らかに減ったことは、しっかりと明記されています。しかし、火災により破損した道路の修復工事にかかる費用については、その取扱に苦慮していることが伺えます。

首都高の苦悩とはうらはらに、多胡運輸も、その元請の運送会社であるホクブトランスポートも、平常どおり営業を続けているように見えます。会社の存続に関わる高額の損害賠償を突きつけられかねない状況下において、平然と業務を継続できる理由は、51億円事件でも14億円余りの使途不明金が不問にされ、安中市民に103年ローンという尻拭いを課さざるをえなかった理由と、なにか共通するものを感じます。そのキーワードは、やはりタゴ一族への異常な配慮という点に帰着するのでは、と安中市民は感じています。


写真上:関東運輸局の55日間使用停止処分も12月4日に喪が明けて、ローリー4台が出払っている多胡運輸(12月25日撮影)


写真上:普段どおり業務を行なっているように見える元請のホクブトランスポート本社(12月25日撮影)


写真上:国道17号線を走る配送中のアポロマークのローリー(12月20日撮影)

果たして、首都高は、多胡運輸やその関係先を取り巻く政治的バリヤーに抗して、料金収入の減少や復旧に要した費用をカバーすべく、きちんと損害賠償請求をおこなえるのかどうか。あと3ヶ月と迫った今年度の会計期限内に、どのような決断と結果が出されるのか、注目されます。

【ひらく会情報部特別調査班】

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飲酒事故の内田弁護士・・・群馬弁護士会が懲戒委で事案審査決定

2008-12-27 01:45:00 | 不良弁護士問題
■酒を飲んで車を運転し衝突事故を起こしたとして、群馬県警安中署は10月5日、自動車運転過失傷害と道交法違反(酒気帯び運転)の現行犯で、前橋市元総社町、弁護士内田武容疑者(65)を逮捕しました。

この弁護士の不祥事件について、当会では、平成20年12月8日付けで群馬弁護士会に懲戒請求書を提出していました。

12月10日付けで、本件を平成20年(綱)第19号事案として、調査開始をするという通知書が、群馬弁護士会から送られてきました。

■そして、年末も押し迫った12月25日付けで、この懲戒請求事案について、群馬弁護士会の神谷会長から配達証明と書留で次の通知が郵送されてきました。

**********
平成20年12月25日
懲戒請求者 小川 賢 殿
  群馬弁護士会 会長 神谷 保夫(公印)
懲戒請求事案について(通知)
 本会は、下記事案につき綱紀委員会の議決に基づき、懲戒委員会に事案の審査を求めたので、綱紀委員会及び綱紀手続に関する会規第55条第1項の規定により、綱紀委員会議決書の謄本を添えて通知いたします。
    記
事案番号 平成20年(綱)第19号

【決定書】
群馬弁護士会 平成20年(綱)第19号事案
決定書
群馬県安中市野殿980番地
 懲戒請求者 小川 賢
群馬県前橋市大手町3-4-15 内田 武法律事務所
 対象弁護士 内田 武 (登録番号13572)
 本会は、上記懲戒請求事実につき、次のとおり決定する。
  (主 文)
 懲戒委員会に事案の審査を求める。
  (理 由)
 上記対象弁護士に対する懲戒の請求について、綱紀委員会の調査を求めたところ、同委員会が別紙のとおり議決したので、主文のとおり決定する。
平成20年12月25日
  群馬弁護士会 会長 神谷 保夫(公印)

【別紙】
平成20年(綱)第19号
議決書
 群馬県安中市野殿980番地
  懲戒請求者 小川 賢
 群馬県前橋市大手町3-4-15 内田 武法律事務所
  対象弁護士 内田 武(登録番号13572)
     主  文
 対象弁護士につき、懲戒委員会に事案の審査を求めることを相当と認める。
     理  由
第1 懲戒請求事案の要旨
 対象弁護士は、平成20年10月5日午後3時55分ころ、群馬県安中市野殿地内の県道前橋安中富岡線において、酒気を帯びた状態で乗用車を運転したうえ、センターラインをはみ出して対抗してきた乗用車と衝突し、対抗車両の運転手(女性75歳)に傷害を負わせた。
 対象弁護士の交通事故(自動車運転過失傷害罪)は酒気帯びに起因するものである。
 この対象弁護士の行為は、弁護士法第56条に該当する。
第2 対象弁護士の弁明の要旨
1 懲戒請求事実の概要は認める。
2 尚、対象弁護士は、以下のとおり酒気を帯びた状態、事故状況、傷害の程度について弁明した。
 ① 酒気を帯びた状態
  対象弁護士は、当日、その所属する富岡ゴルフクラブの月例杯に参加し、午前10時40分ころから11時15分ころまでの昼食時間中に生ビール小ジョッキ1杯、焼酎水割り1杯を飲み、午後のプレーを終了し、サウナ、入浴して後帰宅のため前記自車を運転した。この帰宅途中本件事故を起こし、この事故捜査の際警察官より何処から来たのかと問われて富岡ゴルフクラブから来たと答えたところ飲酒検知を求められてなした検知の結果、警察官からアルコール濃度呼気1リットル中0.15ミリグラムの酒気を帯びていると告げられたものである。対象弁護士は、車を運転するに当たり飲酒後4時間以上経過し、プレー終了後に入浴しサウナに入り汗も十分流していたのでアルコールは抜けているものと考えていた。本件酒気帯び運転は、故意又は故意に準じるような状態ではなく過失によるものである。
 また、対象弁護士の酒気帯びの程度は、道路交通法による最低数値アルコール濃度呼気1リットル中0.15ミリグラムであった。
 ② 事故状況
 対象弁護士は、富岡ゴルフクラブを午後3時30分頃帰宅のため出発し本件事故現場に午後3時55分ころ差し掛かったところ、その場所は片道一車線の富岡方面から安中市国道18号線に向かい緩やかな右カーブしているところである。当時の交通状況は、進行・反対の双方向とも車が数珠繋ぎで時速40~45キロで車の流れで走行していた。上記事故場所付近で、対象弁護士は雨も降ってきて「馬鹿に車が多いなあ」と右前方に顔を上げたところ自車がはみ出し禁止の黄色のセンターラインをオーバーしてA子(当年75歳、主婦、群馬県高崎市鼻高町××××)運転の対向車と衝突してしまったものである。
 本件事故は酒気帯び運転によって発生したものではない。
 ③ 傷害の程度
 上記A子は、当初の診断は全治2週間の胸部打撲傷とのことでる。高崎の○○病院に検査入院2日、その後は自主入院した。
 対象弁護士は、事故後幾度か被害者に対して病院を訪れるなどして謝罪とお見舞いをしている。また本件事故処理については代理人弁護士を立てるなどして示談中である。
第3 証拠
1 請求者提出
(1) 書証
  ① 甲第1、2号証  新聞記事(上毛新聞、東京新聞)のコピー
2 対象弁護士提出
(1) 書証
  ① 乙第1号証 地図
  ② 乙第2号証 自動車保険契約書
  ③ 乙第3号証 現場見取図(安中警察署交通課より聞き取りによるもの)
3 当委員会収集証拠
  ① 対象弁護士からの事情聴取
第4 当委員会が認定した事実
 対象弁護士が下記の酒気帯び運転並びに交通事故を惹起したことは、関係証拠により認められ、また対象弁護士も特に争わず自認しているところでもある。
                   記
(1)対象弁護士は,平成20年10月5日午後3時55分ころ群馬県安中市野殿2110番地先の県道前橋安中富岡線(県道10号線)をゴルフ場富岡ゴルフクラブから国道18号線方面に向けて、アルコール濃度呼気1リットル中0.15ミリグラムの酒気帯び状態で普通乗用自動車(レクサスLS、群33ぬ××××)を運転したこと。
(2)対象弁護士は、上記場所の道路上で上記自動車を運転中、過失によりセンターラインオーバー(センターラインから約60センチメートルはみ出した。)して自車右全部を対面してきたA子(当年75歳)運転の普通乗用自動車(トヨタイスト、群501さ××××)右全部に衝突させ、同人に全治2週間を要する胸部打撲傷(但し、現在も治療中とのこと)を負わせたこと。
第5 当委員会の判断
 上記当委員会が認定した事実は、弁護士法第56条第1項所定のその他職務の内外を問わずその品位を失う非行に該当すると認められる。
 よって、主文のとおり議決する。
平成20年12月15日
    群馬弁護士会綱紀委員会 委員長 戸枝 太輔(自署・公印)
**********

■この議決書から、綱紀委員会における内田弁護士の弁明の要旨は、次のようなものだったことがわかります。
①飲酒後、4時間の間に、ゴルフをし、入浴し、サウナに入り、充分発汗したので、アルコールは抜けていると判断した。だから、本件酒気帯び運転は、故意ではなく過失である。
②事故現場では当時、進行・対向の両車線とも車が数珠繋ぎで走行しており、雨が降り出して顔を上げたらセンターラインをはみ出して対向車に衝突したのであり、(脇見運転による過失であり?)酒気帯び運転によって発生したものではない。

さすがに元日弁連副会長を務めた実力派弁護士だけあって、あくまでも酒気帯びではなく過失によるものだと主張しています。普通の市民だったら、警察はおろか、とても所属先や勤務先に対してこんな言い逃れはしません。なぜなら、一般社会の常識として、「飲んだら乗るな」「飲むなら乗るな」は誰でも肝に銘じているはずだからです。

にもかかわらず内田弁護士は、ゴルフ場に車で来て、酒を飲み、そしてハンドルを握って帰路に着き、事故を起こしたのです。それが、どうして過失なのか、理解に苦しみます。

■福岡県弁護士会所属の若手弁護士4名のブログによると、「交通三悪は無免許運転、スピード違反そして飲酒運転ですが、これらは故意に行われるため、『三悪』と呼ばれている。一方、居眠り運転や脇見運転なども、同様に交通事故を誘発する危険をはらんでいるが、これらは過失によるものなので、交通三悪とは別に位置づけられる」ということです。

だから、経験豊富な内田弁護士は、群馬弁護士会の綱紀委員会の前で、今回の交通事故は、「故意」ではなく、あくまでも「過失」によるものであることを強調して、弁明したかったのでしょう。

■日本弁護士被害者連絡会等のブログによると、12月19日に前橋区検が略式起訴し、同日、前橋簡裁が内田弁護士に対して、罰金70万円の略式命令を出し、内田弁護士は納付したという報道に接して、「塀の向こうには行かなかったので弁護士活動はセ~フ!!」「しかしだ。問題はこれからだ。飲酒事故を起こした弁護士を所属弁護士会はどういう懲戒処分を出すかだ。世間で飲酒事故したら会社員や公務員は懲戒免職になる場合もある。ところが弁護士会は弁護士の業務とは関係ないし罰金70万円を払ったのだから弁護士会としての懲戒はないとする。あっても戒告というのが今までの弁護士会の処分内容だ」と断じている。

なお、今後、想定される群馬弁護士会の懲戒内容は、①何もしない、②戒告処分、③業務停止1ヶ月~3ヶ月、④業務停止3ヶ月~6ヶ月、⑤退会処分、⑥除名処分、そして⑦自主退会という選択肢が考えられということです。

■飲酒運転による交通事故で人身事故を引き起こしておいて、「ゴルフをしに行ったのは弁護士の業務とは関係ない」などという論理そのものが非常識だと思われますが、これまでは、そうした弁護士業界の論理がまかり通って、飲酒運転で事故を起こしても、所属先の弁護士会から穏便な処分が出されることが多かったことをうかがわせます。

今回、群馬弁護士会は、内田弁護士に関する今回の懲戒請求事案について、懲戒委員会に事案の審査を求めることを決定しました。

■懲戒委員会の審査の結果、「懲戒しない」場合や、「不当に軽い」処分が下された場合には、日弁連の懲戒委員会に異議申立をすることもできるようですが、まずは群馬弁護士会が、身内に対して、どの程度毅然とした対応が下せるのかどうか、に注目が集まります。

そして、弁護士業界の常識が、一般市民の常識から乖離していないことを証明できるかどうか。

今回の綱紀委員会による懲戒委員会への審査請求の決定を重要な試金石として捉え、今後の審査の成り行きを見守りたいと思います。

【岩野谷の水と緑を守る会】

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安中フリマ中止を巡る未来塾と安中市のバトル・・・第1ラウンド

2008-12-26 22:47:00 | 安中フリマ中止騒動
■昨年まで15年間に亘り、安中市で開催され、北関東でも屈指の規模のフリーマーケットとして名を知られていた「フリーマーケットinあんなか」を巡り、突然、市民団体に嫌がらせを始めた岡田義弘市長と使用責任者の安中市を相手取り、市民団体側が9月17日に提訴した損害賠償等請求事件は、地裁高崎支部で11月13日(木)に第1回口頭弁論が開かれ、裁判のルールに基づいて粛々と陳述した原告の市民団体に対して、裁判官の制止も聞かず、チンプンカンプンな陳述を臆面も無くぶち上げた岡田市長の対応が話題になりました。

ところが、チンプンカンプンな陳述ながら、あれほど自らの正当性を述べた岡田市長でしたが、突然、岡田市長自作の「談話」と称する記事を、予告なく12月8日に、安中市のホームページからこっそり削除していたことが、最近発覚しました。12月18日と19日の朝刊でそのことが報じられたからです。

***********
<朝日新聞12月18日朝刊群馬版>
安中市長の談話を市HP上から削除 フリマ訴訟巡り
 安中市の地域づくり団体が「フリーマーケットの中止を巡って市広報紙に載った虚偽の市長談話で名誉を傷つけられた」として、岡田義弘市長と市に損害賠償などを求める訴訟を前橋地裁高崎支部に起こした問題で、安中市が、市のホームページに転載したこの市長談話を削除していたことが分かった。ホームページからの削除は、この訴訟で団体側が求めていることの一つ。
 市長談話は、岡田市長名で昨年12月21日付で発行された広報紙「おしらせ版 あんなか」に掲載された。フリーマーケットの開催を巡って市長らと団体側が話し合った内容などが書かれており、市のホームページでも閲覧できたが、市が今月8日午後に削除した。
 削除した理由について、岡田市長は「(12月5日の弁論準備手続きの中で)裁判官からホームページ上の談話を削除したらどうかと提案されたので、それに応じた」とコメント。ただし、11月の第1回口頭弁論で「談話の内容は事実を歪曲していない」などと述べ、原告側請求を棄却するよう求めた主張を改めたわけではないという。
 原告側は、岡田市長らに①合計800万円の損害賠償①インターネット上の談話削除③謝罪記事の掲載を求めている。

<毎日新聞12月19日朝刊群馬版>
市長の「談話」をHPから削除 安中市・地域団体との損賠訴訟で
 「未来塾」との開で行われたフリーマーケトを巡る意見交換会について、市広報紙に掲載した岡田義弘市長の「談話」を、今月8日に市のホームページ(HP)から削除していたことがわかった。
 談話は07年9月に行われた市と同塾側の意見交換会の内容について岡田市長が自ら執筆。同年12月21日付の市広報紙に掲載され、HPにも転載された。
 未来塾と同塾の松本立家代表は今年9月、市と岡田市長を相手取り「談話の内容は虚偽で、信用を低下させた」として計800万円の損害賠償と、HPからの削除などを求めて前橋地裁高崎支部に提訴している。
 岡田市長は「弁論準備手続きの中で、裁判官からHP上の削除を提案され、それに応じた。談話が事実と異なることを述べていないという主張は変わらない」とコメントした。
【増田勝彦】
**********

■次回第2回口頭弁論は、平成21年1月29日(木)に地裁高崎支部で開かれる予定ですが、第1ラウンドを終えて、早くも被告岡田市長と安中市がダウンを取られた形となっています。岡田市長は強気にも、「談話」の削除は裁判官の提案に従ったまでで、「談話」の内容の真実性は微塵も揺るがない、という趣旨の“談話”を新聞記者にコメントしていますが、「所詮、強がりに過ぎないのでは」と、リングを注目している観衆の多くは感じていることでしょう。

というのは、市民団体側が訴状で請求している4項目の請求趣旨のうち、3番目の請求項目に応じたからです。したがって、残りの3つの請求項目への影響波及が俄かに注目されます。

1月29日の第2ラウンド開始のゴングまでに、岡田市長が、どのような秘策を繰り出すのでしょうか。明らかに劣勢に立った岡田市長ですが、「裁判所への圧力」という禁じ手を使うかどうか、早くも市民の間で、予測が飛びかっています。

■なお、第1ラウンドで双方から提出された訴訟関係の文書のうち、原告未来塾側の訴状と、被告安中市側の答弁書は次のとおりとなっています。

**********

【【原告未来塾側の訴状】】

平成20年9月17日
前橋地方裁判所 高崎支部 民事部 御中
  原告ら訴訟代理人 弁護士 山下敏雅、中城重光、釜井英法、登坂真人、寺町東子、後藤真紀子、青木知己、吉田隆宏、大伴慎吾、船崎まみ、寺田明弘
  当事者 別紙当事者目録記載の通り
損害賠償等請求事件
訴訟物の価額 960万0000円
貼用印紙額 5万0000円

目 次 (略)

<請求の趣旨>
1 被告らは、原告Mに対し、連帯して、金400万円及びこれに対する平成19年12月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え
2 被告らは、原告地域づくり団体未来塾に対し、連帯して、金400万円及びこれに対する平成19年12月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え
3 被告安中市は、被告安中市が運営するインターネット上のウェブサイトにおける、別紙データ目録記載の記事を削除せよ
4 被告らは、連帯して、被告安中市が制作する「お知らせ版あんなか」に別紙1記載の記事を別紙2記載の条件で1回掲載せよ
5 訴訟費用は被告らの負担とする
との判決及び第1項ないし第4項につき仮執行宣言を求める。
<請求の原因>
第1 事案の概要
 本件は、原告らが長年にわたって開催してきたフリーマーケットに関して、平成19年9月10日に、原告らと、被告安中市の市長である被告岡田義弘を含む市関係者とで「意見交換会」が行われたところ、被告岡田義弘が、その「意見交換会」の内容等に関する虚偽の記事を、被告安中市の編集・発行する広報紙に掲載し、安中市全戸に配布するとともに、被告安中市のインターネット上のウェブサイトに現在もなお掲載し続け、原告らの社会的信用を低下させたことから、原告らが被告岡田義弘及び被告安中市に対し、損害賠償、インターネット上のデータの削除、及び謝罪記事の掲載を求めた本案である。
第2 当事者
1 原告ら
(1)原告MT
 原告MT(以下「原告MT」という)は、安中市の市民であり、家庭電化製品類販売等の有限会社の代表取締役を務めながら、下記の「地域づくり団体未来塾」代表として、地域のために長年にわたってボランティア活動を続けている者である(甲26)。
 平成16年5月3日には、群馬県から、群馬県総合表彰「地域づくり功労賃」を受賞している。
(2)原告地域づくり団体未来塾
 ア 設立・目的・活動内容
  原告地域づくり団体未来塾(以下「原告未来塾」という)は、平成元年10月1日に設立された団体である。
  原告未来塾は、会の目的として、会則第3条において、「この会は、塾生による自由な発想のもと『より良いまちづくり・人づくり・環境づくり』を目指すとともに、個々にある可能性や夢などをさまざまな活動を通じて引き出し自らの向上を目指す」と定めており(甲29)、下記に詳述するフリーマーケットの開催、バザー(「もったいない市」)の収益金から被告安中市や社会福祉協議会への寄付、里山の自然を取り戻す環境保護活動、小学校のビオガーデン整備、各種文化事業等を実施している(甲28)。
 イ 原告未来塾の活動に対する社会的評価
  未来塾の活動は外部から高い評価を受けており、主な受賞歴だけでも、上毛新聞社・上毛新聞厚生福祉事業団「上毛社会賞」(平成8年)、群馬県新生活運動推進協議会「群馬ふるさとづくり奨励賞」(平成8年)、群馬県「緑の大地ぐんま180選『山根ホタルの里』」(平成10年)、群馬銀行環境財団「群馬銀行環境財団賞」(平成13年)、安中市「安中市地方自治功労賞」(平成18年、甲31の1)、群馬県社会福祉協議会会長感謝状(平成18年)、群馬県地域づくり協議会外「群馬ふるさとづくり賞」(平成19年、甲31の4)、財団法人あしたの日本を創る協会「あしたのまち・くらしづくり活動賞・振興奨励賞」(平成19年,甲31の5)等がある(甲28)。
 ウ 権利能力なき社団
  原告未来塾は、法人格を有していないものの、会則(甲29)において、目的、名称、意思決定方法、業務執行機関など、団体としての組織性を備えており、多数決の原則が行われ、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、代表の方法、総会(甲30)の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定している、いわゆる「権利能力なき社団」である(最判昭和39年10月1日民集18巻8号1671頁参照)。
2 被告ら
(1)被告岡田義弘
 被告岡田義弘(以下「被告岡田」という)は、平成18年4月より被告安中市の市長を務めている者である。
(2)被告安中市
 被告安中市は、群馬県西部に位置し、平成20年4月時点で6万4000人余りの人口/2万3000戸余りの世帯を抱える、地方自治法の定める普通地方公共団体である。
 被告安中市は、平成18年3月18日に、旧安中市及び松井田町が新設合併して、現在の市となった。
第3 被告らの名誉毀損行為に至る経緯
1 原告らが長年開催してきたフリーマーケット
(1)概要
 原告未来塾は,安中市青年団連合会(その後の「地域創造集団楽舎」)と共催で、平成4年5月31日から、年に2回、「フリーマーケットinあんなか」を開催してきた。
 当初、西毛(せいもう)運動公園広場を会場とし、区画数70で始まった同フリーマーケットは、市民らからの人気の高まりを受けて徐々に規模が拡大し、平成16年5月30日の第25回からは、会場として米山(こめやま)公園と安中市のスポーツセンターの2つを利用し、区画数も400に増え、毎回、当日の来場者数が1万5000人以上に及ぶ規模にまで成長し(甲6)、「北関東最大級のフリーマーケット」と称されるようになっていた。
(2)被告安中市(市長)からの会場使用許可
 フリーマーケットは、被告安中市の所有・管理する公園や施設を会場として利用し開催されていた。
 米山公園の利用にあたっては、原告らは、「安中市都市公園条例](その後「安中市公園条例」に改正。甲12)の規定に基づき、被告安中市(市長)から公園使用許可を得ており、その利用料を免除されてきた(甲9、甲10)。
 また、スポーツセンターの利用にあたっては、同センターに直接申請を行ってきた(広場の利用料について特段の定めなし)。同センターを会場として利用するにあたり、原告らは、警備員やシルバー人材センターなどによって人員を配置し、体育館(アリーナ)利用者の妨げとならないよう努め、現場では特段の混乱は生じていなかった。また、体育館との話し合いにより、午前10時以降はフリーマーケット利用者も駐車場への駐車が可能となっていた。
(3)出店者の参加費
 原告未来塾は、フリーマーケットの出店者から、1区画あたり2000円、企業参加の場合は1万円を、参加費として受領してきた(甲7:3頁)。
 上述したとおり、フリーマーケットは2つの会場を使用し、参加者・来場者も多数に及び、広告宣伝費、会場整備費、シャトルバス代等、経費が多額に上る。上記参加費は、経費に充てるため必要最低限のものであり、毎回、出店者から事前説明会において説明し了承を得たうえで受領してきた。
 会場費が被告安中市から免除され、上記参加費を集めても、原告未来塾の収支はマイナスであり、利益は全く生じていない(甲13)。その赤字分は、原告らの持ち出しとなっていた。
(4)原告未来塾自身のバザーの収益からの寄付
 また、原告未来塾は、フリーマーケット内において、自らもバザー「もったいない市」を行ってきた。これは、不用品の有効活用とともに、その収益を被告安中市及び訴外社会福祉法人安中市社会福祉協議会(以下「安中市社協」という)に寄付することや、自然保護活動に充てることを目的として行ってきたものである(甲14の1,甲8)。
 フリーマーケット終了後、後日、原告ら、被告安中市、及び安中市社協が安中市役所に集い、寄付金の受渡しが行われるのが慣例となっていた(甲14の2)。
 なお、これまでの寄付は、累計で300万円及び車椅子4台である。
(5)フリーマーケット内での募金活動
 フリーマーケット内において募金活動が行われることもある。
 募金活動は、原告未来塾が主体となって行われることもあれば、原告未来塾以外のグループが行うこともあった。
 例えば,
 ①第12回(平成9年11月2日)及び第14回(平成10年10月18日)開催のフリーマーケットでは、「ちびくろ関東ネット群馬支部」のOY氏が、阪神淡路大震災に関する募全活動を行った(甲16、甲17)。
 ②第26回(平成16年10月31日)開催のフリーマーケットでは、原告未来塾が、新潟県中越地震災害に関する募金を行い、日本赤十字社群馬支部を通して寄付を行った(甲18、甲19)。
 ③また、ここ数年は、毎年、秋のフリーマーケットにおいて、群馬県共同募金会安中支会が、赤い羽根共同募金を行っていた(平成18年10月22日開催の第30回につき、甲20、甲21)。
2 被告岡田の市長就任以降
(1)第29回及び第30回のフリーマーケット
 平成18年4月に被告岡田が被告安中市の市長に就任して以降も、フリーマーケットは第29回(平成18年6月11日、第30回(同年10月22日)と従前通りに開催された(甲6、第30回の使用許可につき甲11の1)。
(2)第31回(平成19年6月3日)のフリーマーケット
 第31回は、平成19年6月3日に開催された(甲6、甲7、甲8)。
 米山公園の使用許可は、先立つ同年4月17日に、被告安中市長の被告岡田名義で出されていた(甲11の2)。
 ところが、開催日の約10日前である同年5月22日、突然、原告MTのもとに、安中市の建設部長及び教育部長名義で、「出店料及び、その他の徴収についても自粛していただき、真のボランテァ(注:原文のまま)活動にて運営下さるよう、お願い申し上げます」との文書(甲22)が郵送されてきた。
 原告らは、同文書の内容が意味不明であったため、名義人たる建設部長に対し問い合わせた。 しかし、建設部長の回答は「私たちが書いた文書ではなく困っている。これは市長が自ら行った事である」というものであった。
 原告らは被告岡田からの説明を求めたが、その後被告岡田からは特段連絡はなかった。
 第31回フリーマーケット自体は、予定通り開催された。
(3)被告安中市の原告未来塾からの寄付金の受領拒否
 第31回フリーマーケット終了後、例年通り、平成19年7月2日に、安中市役所において、原告未来塾のフリーマーケット内のバザーでの収益から被告安中市及び安中市社協への寄付金の受渡しが行われる予定となっていた。
 ところが、同日午前9時ころ、突然被告安中市秘書課長より原告MT宛に、「寄付金の受取りはできない。理由は以前送った文書の通りである。公共の施設で2000円を徴収しているようなイベントの寄付は受けられない」旨の連絡が入った。
 原告MTは被告岡田からの説明を求めたが、被告らより連絡はなく、予定されていた寄付は行われなかった。
(4)第32回の公園使用許可申請の不受理
 平成19年8月、原告未来塾の副代表KMは、平成19年10月28日に予定していた第32回のフリーマーケット開催のため、被告安中市(市長)に対し、公園使用許可申請を行うため、被告安中市建設部都市整備課に持参したところ、「受けられない」とその場で返却された(甲23)。
3 平成19年9月10日の「意見交換会」の内容
 原告らは、再三にわたって被告岡田との話し合いを求め、結果、同年9月10日午後5時から、安中市役所にて話し合いがもたれることとなった(甲24)。実際に話し合いが始まったのは午後6時であり、午後8時頃まで行われた。
 被告安中市側は、被告岡田の外、総務部長、建設部長、及び教育部長が出席し、原告未来塾側は、原告MTの外、副代表のKM及び運営委員のMHが出席した。
 「意見交換会」は、フリーマーケットの出店者からの参加費の徴収に関するものが主であったが、被告岡田はボランティアならば無償でやるべき(参加費を徴収すべきでない)との市民の指摘がある、との主張を繰り返し、話は全く平行線のままであった。
 この「意見交換会」において、被告岡田は、同人から見て左側に並んで座っている原告関係者の方を見ずに、右を向いたままで話を進めていたことから、途中(開始後約15分経過)、原告松本が「市長さん、お話をしているのは私ですから、できれば私のほうに向いていただけると、お答えもしやすいんですが」と指摘する場面もあった。
4 第32回のフリーマーケット開催の断念
 上記の意見交換会の後も、被告安中市(市長)からは会場の使用許可が出されなかったため、同月12日、原告らは第32回のフリーマーケットの開催を断念し、フリーマーケット関係者に連絡した。
 その後の同月14日午前9時ころ、被告安中市の建設部長より原告松本に開催許可の電話があった。
 原告らの開催しているフリーマーケットは、その規模の大きさから準備に約3ケ月を要する(甲25)。原告らは限界まで被告安中市からの回答を待ったうえ、開催の断念を決定し関係者に連絡をしたのであり、被告安中市からの回答は明らかに遅きに失していた。
第4 被告らの名誉毀損行為
1 「おしらせ版あんなか」41号への本件記事の掲載と配布等
(1)本件記事の掲載
 ア 被告安中市は、月に2回、「おしらせ版あんなか」を、総務部秘書行政課が編集し、「安中市役所」が発行する形で、安中市内の全戸に配布している。
 イ 被告岡田は、この「おしらせ版あんなか」41号(平成19年12月21日付)3頁に、「談話」と題する下記の記事(以下「本件記事」という)を掲載した(甲1)。
 ①「1.話し合い開催日:平成19年9月10日
   2.出席者:安中市:4名 未来塾3名
   3.安中市から回答した日:平成19年9月13日午前8時30分誠意を持って許可する旨回答した
   4.フリーマーケット開催予定日:平成19年10月28日・・・市の回答から44日間もある」
 ②「市 :すみませんが確認をさせていただきたいのですが・・・」
   未来塾:目を見て話をしろ(冒頭から怒鳴る)」
   市 :静かに話をしましょう。」
 ③「市 :募金箱を持って回るのはおかしい。市はそういうことを知っているのか・・・。という指摘もあります。本当なのか伺います。
   未来塾:阪神大震災が発生した時、募金箱を持って回り、募金活動をしたことが1回あるだけです。
   市 :阪神大震災は12年前ですよね。12年前のことを市民が指摘するのですかね・・・。
   未来塾:阪神大震災のときだけです。その時以外は―切幕全活動はしていません。
   市 :そうですか。未来塾の皆さんは昨年ここ(市長室)へ何回(※)も来たんですから、フリーマーケットの内容の説明をされて市は聞いていれば市民から苦情や指摘があった時に即座に金額的は市は承知していますと答えられたんですよね。市は市民に説明責任があるのです。」
 ④「市 :スポーツセンターの駐車場使用について確認させてください。西の駐車場はスポーツセンター利用者の駐車場に。東駐車場はフリーマーケットに。はっきりスミワケを決めたことはご承知ですか。
   未来塾:知っています。
   市 :スポーツセンター中央駐車場までフリーマーケットの駐車場にするとは市は何を考えて提供しているのだ・・・と市民から抗議や苦情がきて困っているのですよ。」
 ⑤「※市役所北側のサワイ産業が閉鎖するので、市が跡地を買収するよう3回米庁しています。(1回目、2回目は未来塾から1人で、3回目はサワイ産業社長と2人で来庁)」
 ⑥「○フリーマーケット出店者に配布された資料(平成19年6月3日開催分)から抜粋」と称して、甲7号証を一部引用
 ⑦「 安中市は人と争うことを避け、人に責められて人を責めず、罵られて罵らず、市行政は寛容の精神を持つ人を育てることを銘としています。」
 ウ 原告らは、かような記事の掲載について事前に被告らから知らされておらず、被告らから当該記事内容の正確性についての事前確認もなかった。
(2)配布等
 ア 全戸への配布
  本件記事を含む「おしらせ版あんなか」41号は、被告安中市によって、安中市内の約2万3000戸の全戸に配布された。
 イ インターネット上のウェブサイトヘの掲載
  また、この「おしらせ版あんなか」41号は、被告安中市によって、同市の運営するインターネット上のウェブサイトにPDF形式で掲載され、現在もなお公開されたままとなっている(URLはデーク目録記載の通り)。
2 本件記事の虚偽性等と原告らの社会的評価の低下
 被告岡田は、本件記事において、「意見交換会」の内容や話し合いに至るまでの経緯について虚偽の事実を掲載し、さらに、話し合いの内容・関係資料の恣意的抜粋や、フリーマーケットと無関係かつ誤った内容を掲載するなどし、原告らの社会的評価を低下させた。
 すなわち,
 ①安中市が回答した日は平成19年9月13日ではなく、14日であるうえ、「市の回答から44日間もある」などと、あたかも、準備期間が十分にあり、フリーマーケット開催の断念が原告側の責任であるかのように記載しているが、上述した通り、開催には約3ケ月を要するものである。
 ②被告岡田が、同人から見て左側に並んで座っている原告関係者の方を見ずに、右を向いたままで話を進めていたことから、途中(開始後約20分経過)、原告MTは「市長さん、お話をしているのは私ですから、できれば私のほうに向いていただけると、お答えもしやすいんですが」と指摘する場面もあったが、原告関係者が「目を見て話をしろ」などと「冒頭から怒鳴った」事実は、全くない。
 ③話し合いの中、募金活動に関する議論は最初の約15分程度で終了しており(それも被告岡田が「地震に関する寄付はわかりました」と述べて終了している)、その余はほぼすべて参加費の徴収に関する議論であった。
  他方、本件記事での引用は、「1問1答」として掲載している議論のうち半分近くを募金に関する内容で占めており、引用の分量としても不適切かつ恣意的である。
  またその内容も全く歪曲されている。原告らは、阪神大震災だけでなく新潟での震災の募金活動を行い、安中市社協に寄付している旨を、被告らに対し、話し合いの当初から説明しており、また、阪神大震災の募金活動は、原告未来塾ではなく、別グループが主体となってフリーマーケットで募金活動をしていた旨を説明している。「12年前のことを市民が指摘するのですかね」などと被告らが述べた事実もなければ、阪神大震災の時以外一切募全活動はしていないなどと原告らが述べた事実も存しない。
  さらに、被告岡田が「未来塾の皆さんは昨年ここ(市長室)へ何回も来たんですから」と発言した事実も全くない(下記⑤で述べる)。
 ④駐車場利用に関しては、被告岡田の主張を一方的に掲載しているのみであり、議論のまとめとして著しく恣意的かつ不適切である。
  被告岡田の言う「市民からの抗議・苦情」自体、当該話し合いの中でも具体的根拠は示されていない。
  原告らは、警備員やシルバー人材センターなどによって人員を配置し、体育館(アリーナ)利用者の妨げとならないよう努力をし現場ではスムーズであったこと、また、体育館との話し合いにより午前10時以降はフリーマーケット利用者も駐車場への駐車が可能となっていたこと、を説明しているが、かような原告の説明はー切記載されていない。
 ⑤訴外有限会社サワ井商店(「サワイ産業」は誤記である)に関しては、当該話し合いの中では一切触れられていない。
  原告松本がサワ井商店の跡地の件に関し被告岡田と面談をしたことはあるが、原告未来塾は無関係であって「未来塾から1人」との記載は事実に反する上、そもそも本件フリーマーケットとは全く無関係である。
 ⑥説明会資料(甲7)の一部のみを抜粋し、その外の内容を恣意的に省略して引用している(特に、「活動のための寄付金」については、「公園建設、福祉向上、自然保護活動のための寄付金」とパンフレットに明記しているにもかかわらず、これを意図的に省略している)。
 ⑦「安中市は人と争うことを避け、人に責められて人を責めず、罵られて罵らず、市行政は寛容の精神を持つ人を育てることを銘としています。」との記載は、あたかも、原告らが被告らを理不尽に「責め」、「罵った」かのように事実を摘示しているが、理不尽な理由により施設の利用を拒んだ被告らとの話し合いを「責めた」などと評価される謂われはなく、ましてや、被告らを「罵った」事実など存しない。
3 その後も継続する名誉毀損行為
 なお、被告岡田は、その後も様々な場において、本件記事と同趣旨の名誉毀損行為を反復継続しており、被告らの訴訟態度如何によっては、その後の名誉毀損行為についての請求を追加する可能性がある。
第5 被告らの責任
1 被告岡田の責任
(1)名誉毀損行為
 ア 名誉、すなわち人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について
  社会から受ける客観的な社会的評価を低下させる行為は、名誉毀損として不法行為が成立する。
  そして、ある表現が名誉毀損的表現に当たるか否かは、一般読者の普通の注意と読み方を基準として解釈すべきである(裁判昭和31年7月20日民集10巻8号1059頁)。
 イ 原告らは、フリーマーケットの開催をはじめとして、安中市の地域活性化、自然保護等のため、ボランティア活動に従事し、尽力してきた。
  実際、諸団体からもその活動を高く評価され、多くの賞を受けてきている。
  被告岡田の作成した「おしらせ版あんなか」41号の「談話」と称する本件記事は、一般読者の普通の注意と読み方を基準としてみれば、全体として、あたかも原告らが私利私欲のためにフリーマーケットに関し不正な活動に従事し、また、被告安中市関係者との話し合いに際しても不誠実な態度を示す者・団体であるかのように虚偽の事実を摘示し、原告らの築き上げてきた上記の社会的信用を低下させるものである。
  被告岡田が本件記事を作成し、被告安中市をして全戸への配布させ、またインターネット上に掲載させた行為が、名誉毀損行為に該当することは明らかである。
(2)最高裁判例に照らしても責任が免れないこと
 ア 総論
  民事上の不法行為たる名誉毀損については、その行為が公共の利害に関する事実に係り、専ら公益を図る目的に出た場合において、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、右行為には違法性がないため不法行為は成立せず、また、公共の利害に関する事実に係り、専ら公益を図る目的に出た場合において、仮に摘示された事実が真実でなくても行為者において真実と信ずるについて相当の理由がある場合には、故意もしくは過失がないものとして不法行為は成立しない、とするのが最高裁判例である(最判昭和41年6月23日民集20巻5号1118頁)。
  しかし、上記最高裁判例の規範に照らしても、本件で被告岡田の不法行為の違法性、故意・過失は阻却されない。
 イ 「専ら公益を図る目的」でなされたものではないこと
  被告岡田の本件記事は、フリーマーケットの会場として被告安中市の公園・施設の利用についてのものであって、「公共の利害」に関するものであることは特段争わないが、「専ら公益を図る目的」であったものとは到底評価しえない。
  被告岡田は、ボランティアの無償性を曲解し、フリーマーケットの参加費の徴収をすべきでないという独自の見解を元に原告らの公園使用許可申請を受理せず、平成19年9月10日の「意見交換会」においても、その独自の主張を展開した。
  また、被告岡田は本件記事作成後、マスコミ等で報道がなされ、各地の住民説明会でも説明を求められるや、フリーマーケットの会場使用を拒絶する理由を変遷させている。後日、被告岡田は、「会場のそばに市営住宅や個人住宅があり、夜勤勤務明けの方や病弱者・乳幼児の安眠ヘの配慮が必要」などの理由を持ち出しているが(甲27)、そのような主張は平成19年9月10日の「意見交換会」では一切出ておらず、加えて、当該会場の周辺住民らからは、「迷惑はない」「もっとやってほしい」とフリーマーケット開催を望む声が多かった(甲3)。
  平成20年2月19日付けで被告岡田が建設部長を通して原告らに手渡した「フリーマーケット開催会場について」と題する文章では、「今後のフリーマーケットの開催は西毛運動公園広場を使用されたくご要請を申し上げます」と記載されているが(甲27)、同公園は15年前のフリーマーケット開始当時の、70区画しか取れない小規模な会場であり、被告岡田の要請は、原告らのフリーマーケットを妨害する悪質な嫌がらせという他ない。
  被告岡田は、以上のような背景をもとに、被告岡田独自の見解に基づく私的な満足を得るため、また、何としても現状のフリーマーケットを中止に追い込む嫌がらせのため、等の目的から、本件記事を敢えて掲載したのであって、「専ら公益を図る目的」からなされたものではない。
 ウ 真実性の欠如
  「摘示された事実が真実であること」の要件を満たさないことは、すでに「第4」「2 本件記事の虚惰性等と原告らの社会的評価の低下」の①ないし⑦において詳述した通りである。
  「目を見て話をしろ(冒頭から怒鳴る)」などを始めとして、本件記事に記載されている各事実自体、存しないうえ、記事全体から一般の読者が普通の注意と読み方で受け止める、「原告らが私利私欲のためにフリーマーケットに関し不正な活動に従事し、また、被告安中市関係者との話し合いに際しても不誠実な態度を示す者・団体である」との事実について、全く真実に反していることは明らかである。
 エ 真実性・相当性の欠如
  また、「行為者において真実と信ずるについて相当の理由がある」と評価しえないことも明らかである。
  当該「意見交換会」で出席者らがどのような議論を行ったかは明らかであり、被告岡田は、上記の私的満足等の目的のために故意に虚偽の内容を本件記事に記載した。
  また、仮に万一故意が認められないとしても(原告らとしては断じてこれを容認する趣旨ではないが)、当該「意見交換会」は、被告岡田のみならず被告安中市職員が他に3名も同席しており、記載内容が事実と反しているか否かは容易に確認できるうえ、原告らに事前確認を求めることも可能であったのに、これを怠っている。被告岡田は、いやしくも市民から選出された公務員として、地域に貢献すべき重大な責務を負う市長である以上、市の広報特に自ら記事を掲載する場合には、事実関係を公正かつ真摯に確認すべきであったのにもかかわらず、これを怠っているのである。被告岡田に重過失が存することは明らかである。
2 被告安中市の責任
(1)被告岡田の行為に関する責任
 ア 国家賠償法上の責任
 (ア)上記の通り、被告岡田の行為が不法行為を構成することから、被告安中市は、国家賠償法1条1項責任を負う。
 (イ)なお、被告安中市に国家賠償法上の責任が認められる場合でも、加害公務員本人に故意又は重過失があった場合には、当該公務員は民法709条(国家賠償法1条ではない)の規定による責任を負担すべきであり、またそのような場合の加害公務員と国又は公共団体の責任は不真正連帯債務の関係に立つと解すべきである(同旨判例として東京地判昭和46年10月11日下民集22巻9~10号994頁)。そして、被告岡田には既に述べたように故意・重過失が認められることから、被告安中市に国家賠償法上の責任が認められても、被告岡田は免責され得ない。
 イ 使用者責任(民法715条)
  また、被告岡田の行為は、「事業の執行」についてなされたものであるから、被告安中市は、民法715条の使用者責任も負う(公務員の不法行為につき地方公共団体・国に民法715条責任を肯定した判例として、最高裁昭和57年4月1日民集36巻4号519頁、東京地裁平成16年1月30日判例時報1861号3頁、東京地裁昭和52年5月27日判決判例時報878号84頁、静岡地裁浜松支部平成8年2月19日判決判例時報1588号130頁、松山地裁平成13年6月22日判決判例時報1778号126頁等)。
(2)「おしらせ版あんなか」の編集・発行・配布・掲載に関する責任
 被告安中市は,上記の通り,被告岡田の行為について責任を負うと共に、被告安中市自身が、漫然と「おしらせ版あんなか」を編集・発行・配布し、また被告安中市のウェブサイト上に掲載した行為について、担当職員の行為につき、国家賠償法上の責任を負う。
第6 損害
 原告らが、被告らから受けた名誉毀損行為に対する慰謝料は、その悪質性及び深刻さから、原告MT、原告未来塾それぞれ、少なくとも、金400万円を下るものではない。
 また、金銭による補償のみならず、適切な方法により社会的信用を回復する必要がある。市の広報は、地域社会において決定的な影響を及ぼすものであり、その公共性ゆえに高度の信頼性が要求されるものである以上、これによって毀損された名誉を回復するためにも、金銭による補償では不十分である。具体的には、被告安中市が運営するインターネット上のウェブサイトに現在もなお掲載されている別紙データ目録記載の記事の削除、及び、「お知らせ版広報あんなか」への謝罪文の掲載が必要にして不可欠である。同様の事例として、小学校内における職員会議において、会議内でなされた教諭の言動を市及び町の広報詰に掲載した行為が名誉毀損に当たるとして、市に対して300万円、町に対して50万円の支払及びそれぞれの広報誌に「お詫びと訂正]と題する謝罪文の掲載を命じた事例(広島地裁三次支部平成5年3月29日判例時報1479号83頁)がある(なお、東京地裁八王子支部平成12年12月25日判例時報1747号11O頁参照)。
第7 本件訴訟の意義
 本件は、地域活性化のために原告らが労力を割いて長年開催してきたフリーマーケットイベントが、新市長による理不尽な主張により中止を余儀なくされる事態に追い込まれており、それ自体、地方行政のあり方として極めて問題である。他の同種イベントにおいては、出店者から必要最低限の経費分担のために参加費を徴収することは一般的に行われている。地方公共団体としては、かような地域活性化につながるボランティア活動に対して、施設の使用に便宜を図ることや積極的に補助金を出すこと等が期待されこそすれ、本件のように妨害・嫌がらせが行われるなど、未曾有の出来事である。
 これに加えて、本件では、地方公共団体の長が、その地方公共団体の広報紙という、公的かつ影響力の大きい媒体を用いて、「目を見て話をしろ(冒頭から怒鳴る)」などと、事実関係を歪め、自らの一方的な見解に基づく内容を掲載し、地域活性化のために尽力してきた市民らの社会的評価を貶めたという、悪質極まりない事件である。
 本件は、原告らの社会的評価の低下の回復が図られるべきことはもちろんのこと、それのみにとどまらず、ボランティアとはそもそも何か、また、地域活性化のために地方公共団体と市民との連携がどうあるべきか、という本質的な問題を背景としており、本訴訟を通して正常な行政を安中市に回復させる点でも、重要な意義を有している。
第8 結語
 よって、
1 原告MTは、被告らに対し、名誉毀損の不法行為(被告岡田については民法709条、被告安中市については国家賠償法1条1項及び民法715条)に基づく損害賠償として、連帯して金400万円及び不法行為日である平成19年12月21日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払いを、
2 原告未来塾は、被告らに対し、名誉毀損の不法行為(被告岡田については民法709条、被告安中市については国家賠償法1条1項及び民法715条)に基づく損害賠償として、連帯して金400万円及び不法行為日である平成19年12月21日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払いを、
3 原告らは、被告安中市に対し、民法723条に基づき、被告安中市が運営するインターネット上のウェブサイトにおける、別紙データ目録記載の記事の削除を、
4 原告らは、被告らに対し、民法723条に基づき、連帯して、被告安中市が制作する「お知らせ版あんなか」に別紙1記載の記事を別紙2記載の条件で1回掲載することを、
それぞれ求める。
 以上

証拠方法
 別途提出する証拠説明書記載の通り。
添付書類
1 甲号証の写し 各正本1通、副本2通
2 証拠説明書   正本1通、副本2通
3 訴訟委任状          2通

当事者目録
〒379-0112 群馬県安中市岩井×××-×
 原告 MT
〒379-0112 群馬県安中市岩井638
 原告 地域づくり団体未来塾
 上記代表者代表 MT
〒170-0013 東京都豊島区東池袋1-34-5 池袋SIAビル2階
 弁護士法人東京パブリック法律事務所(送達場所)
 電話03-5979-2900 F AX03-5979-2898
 原告ら訴訟代理人弁護士 山下 敏雅(主任)
 同           中城 重光
 同           釜井 英法
 同           登坂 真人
 同           寺町 来子
 同           後藤真紀子
 同           青木 知己
 同           吉田 隆宏
 同           大伴 慎吾
 同           船崎 まみ
 同           寺田 明弘
〒379-0114 群馬県安中市野殿969
 被告 岡田 義弘
〒379-0192 群馬県安中市安中1-23-13
 被告 安中市
 上記代表者市長 岡田 義弘

【データ目録】
おしらせ版 あんなか 平成19年12月21日号(No.41)
http://www.city.annaka.gunma.jp/kouhou/pdf/pdf191221/191221.pdf
 このうち3頁(「談話」と題された記事)すべて
【別紙1】
市民の皆様へ
  お詫び
 安中市長岡田義弘は、安中市の発行した平成19年12月21日付「おしらせ版 あんなか」第41号に「談話」と称する記事を掲載しました。
 同記事の掲載にあたり、安中市及び岡田義弘は、事実関係を公正かつ真摯に確認すべきであったにもかかわらず、これを怠り、事実と異なる内容の記事を掲載したため、MT氏及び地域づくり団体未来塾の社会的信用を傷つけ、多大なご迷惑をおかけしました。
 また、皆様からの貴重な税金を使用しながら、市の広報の信頼性を損ないかねない事態を生じさせ、市民の皆様に対しても、多大なご迷惑をおかけしました。
 ここに、岡田義弘及び安中市は、MT氏、未来塾、関係者、及び市民の皆様に対し、深くお詫びし謝罪申し上げますと共に、今後、同様の誤ちを二度と繰り返さぬよう、信頼回復に努めて参ります。
 平成  年  月  日
  岡田 義弘
  安 中 市
【別紙2】
1 記事のスペースはA4サイズ全面とする。
2 年月日は記事掲載の日を記載する。
3 「お詫び」という見出しの文字は12ポイントゴシック体、本文の文字は8ポイント明朝体とする。
【証拠説明書】(略)
**********

**********

【【被告安中市側の答弁書】】

平成20年(ワ)第492号  損害賠償等請求事件
原告 松本立家 外1名
被告 岡田義弘 外1名
 答弁書
 平成20年11月5日
前橋地方裁判所高崎支部合議2係 御中
 〒379-0192 群馬県安中市安中一丁目23番13号
   安中市役所(送達場所)
   電話 027-382-1111
   FAX 027一381-0503
   被告 岡田義弘
   同  安中市  代表者市長 岡 田 義 弘
第1 請求の趣旨に対する答弁
1 原告らの請求をいずれも棄却する
2 訴訟費用は原告らの負担とする
  との判決を求める。
第2 請求の原因に対する認否
1 請求の原因第1(事案の概要)につき
  概ね認める。ただし虚偽の記事を掲載したこと及び原告らの社会的信用を低下させたことについては、否認する。
2 同第2(当事者)のうち「1 原告ら」につき
  概ね認める。ただし、原告松本立家氏(以下「原告松本氏」という。)が地域のために長年にわたってボランティア活動を続けている点については不知。また、原告地域づくり団体未来塾(以下「原告未来塾」という言は、その構成員に、現在、群馬県議会議員1名及び安中市議会議員1名を有し、政治的にも発言力のある団体である。
3 同第2(当事者)のうち「2 被告ら」につき
  認める。
4 同第3(被告らの名誉毀損行為に至る経緯)のうち「1 原告らが長年間催してきたフリーマーケット」につき
  原告らがスポーツセンターの利用にあたり、体育館利用者の妨げとならないよう努め、現場では特段の混乱は生じていなかったこと及びフリーマーケット内での募金活動については不知。また、駐車場の利用については、全面的にスポーツセンターの全ての駐車場の利用を認めたわけではなく、プール・アリーナ等の利用者の駐車スペースに配慮するよう伝えてあった。その余は概ね認めるが、甲第13号証によるフリーマーケットの収支については、否認する。
5 同第3(被告らの名誉毀損行為に至る経緯)のうち「2 被告岡田の市長就任以降」につき
  建設部長の文書に対する回答内容及び公園使用許可申請が「受けられない」とその場で返却されたことは否認する。その余は概ね認める。
6 同第3(被告らの名誉毀損行為に至る経線)のうち「3 平成19年9月10日の「意見交換会」の内容」につき意見交換会の出席者は認めるが、その余の事実は否認する。
7 同第3(被告らの名誉毀損行為に至る経緯)のうち「4 第32回のフリーマーケット開催の断念」につき
  建設部長から原告松本氏に開催許可の電話を行った日は、「同月14日」とあるのは「同月13日」である。また、原告らが限界まで回答を待って開催の断念を決定したこと及び被告安中市の回答が遅かったことは否認する。その余は不知
8 同第4(被告らの名誉毀損行為)のうち「1 「おしらせ版あんなか」41号への本件記事の掲載と配布等」につき
  事実行為は、認める。
9 同第4(被告らの名誉毀損行為)のうち「2 本件記事の虚惰性等と原告らの社会的評価の低下」及び「3 その後も継続する名誉毀損行為」につき
  争う。
10 同第5(被告らの責任)乃至同第8(結語)につき
  争う。

第3 被告らの主張
1 はじめに
  原告らが相手方としている一方の被告は「安中市長 岡田義弘」なのか、それとも「安中市長の肩書きを有する個人としての岡田義弘]なのか、原告らに釈明を求めたい。以下は後者の「個人としての岡田義弘」として反論する。
2 公園使用許可における適法性及び問題点
  被告らは、公正公平な業務遂行と透明性の高い行政を維持するために、条例、規則等を遵守する責務があることは当然のことである。
  被告安中市は、合併前の旧安中市において平成10年4月1日から安中市行政手続条例を施行し、合併後も同様に制定施行している。その安中市行政手続条例第7条において、申請の形式上の要件に適合しない申請については、当該申請の補正を求めることが定められている(乙1号証)。
  また、安中市公園条例第9条においては、利用者の別表に掲げる使用料の納付義務が定められており、使用料は前納であるため、通常は申請と同時に納付されるべきであるが、原告らが提出した公園利用許可申請書(甲23号証)では空欄のままとなっている(甲12号証の1、2)。
  これは申請当初から、使用料は免除されるものと期待したためと思われるが、そうであるならば、同条例施行規則第9条により公園使用料減免・還付申請書を市長に提出する必要があるが、過去に提出されたことはない(乙2号証)。
  公園使用許可における行為の制限として、安中市公園条例第4条第1号で、公園内で物品の販売、募金その池これらに類する行為をする場合は、あらかじめ市長の許可を受けなければならないが、原告らは、一度も募金の許可を受けていない。
  さらには、同条例第11条では、公園を利用する権利の転貸禁止条項があるが、主催者がフリーマーケットで参加費を徴収して、その区画を有料で参加者に貸すことに違法性がないか疑問が生じていたところであった。
  なお、原告らの主張によれば、申請を建設部都市整備課に持参したところ、「受けられない」とその揚で返却されたとあるが、既に安中市行政手続条例が施行され、職員研修も実施しているなかで、こうしたことが起きるわけがなく、今回は上記問題点も含めフリーマーケットの運営上の疑問から、使用許可についてその場で回答できないので検討させてもらいたい旨を話したところ、申請書をそのまま持ち帰ったというのが事実である。
  また仮りに何の理由もなく申請書を不受理にされたのならば、地方自治法第244条の4の規定及び行政不服審査法に基づき、不服申立てを行うなど法的な対応が可能であったはずであり、被告岡田義弘(以下「被告岡田」という。)によりフリーマーケットが中止させられたとする原告らの主張は事実と反する。
  原告未来塾の運営委員のかかに、県議会議員及び市議会議員を有する団体がこうした法的知識がないはずがなく、原告らのその後の対応から、被告岡田が原因でフリーマーケットを断念させられた」ことを強調したいがためのブロパガンダであると椎測せざるを得ない。
3 市民の声
  平成19年3月から4月にかけて、市民から公共施設を無料で使用しているフリーマーケットの運営に関し、1店舗2,000円を徴収していることやさらに募金を求められることに対して安中市公園条例に違反し、問題があるのではないかという問い合わせや苦情があった。
  一方、市長として各地区の会合に出席すると、「フリーマーケットを開催するので寄付してぼしいと言われた。不景気なので家計は生計が大変だし商店も大型店の進出で品物は売れない。だけど寄付は断わることもできない。市行政はどう思って公園を貸しているのだ」という市民から行政に対する疑問の声があった。
  また、会場となった米山公園前の市営住宅の住民からは、フリーマーケットの騒音に対する苦情もあった。
  本件に関する報道の私見として、フリーマーケットの参加者から業者主催のフリーマーケットと何ら変わることがなかったという指摘もなされている(乙3号証)。
4 意見交換会の事実
  平成19年9月10日(月)の意見交換会であるが、午後5時頃に原告未来塾から代表原告松本氏、■■■■■■■■、■■■■■■■の3名が来庁したものの、意見交換会の前に長澤和雄建設部長に対し、今日の市の話し合いのテーマに、先般、市から郵送された文書「フリーマーケットの運営について」(甲22号証の1)の件を文字で明確に議題にするようにと1時間20分余りにわたって自己主張を展開し続けた。
  このため、予定開始時刻から約1時間30分遅れ、午後6時30分頃になって、ようやく市長室に苛立った表情で3人が無言のまま入室してきたが、被告岡田が立ち上がって「お世話になります」と挨拶しても、挨拶を返すこともなく応接の椅子に座り込んだ。その後、まもなく、堀越久男(元)総務部長が入室し、続いて佐藤伸太郎(元)教育部長、長澤和雄建設部長が入室して着席すると、同建設部長が「今日の未来塾と市による意見交換台の進行係をさせていただきます私、建設部長の長澤です。よろしくお願いいたします。」と発言し、市職員の自己紹介の後、被告岡田が「今日は市役所までおいでくださいましてお世話になります」と改めて挨拶をして、意見交換会が始まった(別紙「市長室・秘言行政談配置図」参照)。
  建設部長:「長時間お待たせしました。以前から懸案でありましたフリーマーケットの件でございますが、本日1時間ほどお時聞をいただきました。未来塾の方と市の執行部との意見交換台ということで、ここに次第があります。いくつかのポイントに沿って意見交換をしていただき、今後について進めていきたいと思ってます。まず、はじめに市長と代表の方から一言ずつお願いします。」
  岡田市長:「これまでフリーマーケットを何回か開催してきたと思いますが、この行政に入ってきている話として、出店された方から1店舗2,000円を徴収していると、それが1点。2,000円徴収しているにもかかわらず、募金箱を待って出店されているお店を回っているという話が来ていまして、大変行政としても苦慮いたしております。これについて明快なご返答をお願いします。」
  原告松本氏:「お世話になります。ただいま市長から明確な疑問があるようですので、この話し合いの中でそのことについて説明していきたいと思います。」
  建設部長:「本日は意見交換をするテーマが3つあります。まず、公共施設での開催についてですが、市長が言いましたように2,000円の徴収の件ですが、この件について代表の方からお願いします。」
  この後で、被告岡田は本題に入る前に開始予定時間から1時間30分近く遅れたことの説明を求めるため、「すみません。その前に確認させてください。」と言ったとたん、原告松本氏が「目を見て話をしろ」と言い放ったのである。
  続いて、■■■■■■■も「市長さん目を見て話し合ってください」と大きな声で発言し、同席した職員にも「そうでしょう!!」と威圧的に確認してきたため、「そうした行為は尋問じゃないですか。重箱の隅みたいなことでなく、もっとおおらかに話をしましょう。」と宥めたのが意見交換会冒頭における真実であり、原告らの主張は事実を歪曲している(乙4号証、5号証及び6号証)。その際、隣室にいた秘書行政課職員数名もその声の大きさに驚いている。
  また、「談話」の記事には書いていないが、意見交換会終了後において、原告松本氏は、被告岡田に対して、罵言雑言を浴びせている。
5 フリーマーケットの収支報告
  フリーマーケットの収支についてであるが、共催者の地域創造集団楽舎の市からの補助金に対する補助事業等実績報告書には、第31回のフリーマーケット開催時にフリーマーケット特別会計から30万円支出されているのに、原告らの収支計算書にはこれが記載されていない(乙第7号証、甲13号証)。
 本件においてフリーマーケットの収支が赤字であったかについては、争うつもりはないが、これまで市民や出店者に対しても会計報告がなされておらず、上述したような金の流れなど市民協働のイベントとしては事業運営が透明性に欠けている。
6 本件記事の正当性
 ①安中市が回答した日が、平成19年9月13日であることは、自分及び職員のメモに残っており、それを記事にしたものである。その前にも何度か電話で連絡を取ったが、不在のため回答できなかった。また、「市の回答から44日間もある。」と記載したのは、過去に31回も行われてきたイベントであるから、今までの経験を考慮すると、それまでの準備期間も含めてその他に44日間もあれば十分であろうと客観的に判断したためである。事実、原告らは、意見交換会において、使用許可についてその日以降1週間以内に結論を出すよう求めており、3日後であれば開催には何の問題もなかったはずである。
  また、原告らが再三にわたって被告岡田との話し合いを求め、その結果9月10日になったと主張するが、事実は、建設部長及び総務部長から、6月当初よりずっと話し合いを求めていたものの、条件が整っていない等の理由により断られ、ようやく被告らの要請により9月10日になったものである(甲24号証の1)。
  そうした事情に加え、正式に申請書も提出せず、話し合いの日時の繰り上げさえ要望することなく、原告らが漫然と9月10日の意見交換会を迎えたということは、その日以降3日遅れただけで準備期聞か不足するはずがないと被告らが信じるに足る十分な証拠である。
  さらに、上記1のとおり、フリーマーケット開催の断念は、正式な法的手続を行わず、なかなか話し合いにも応じなかった原告らの責任に負うところが大きい。
 ②「目を見て話をしろ(冒頭から怒鳴る)」については、上記4のとおり意見交換会の冒頭における全くの事実である。それに関しても「未来塾」の誰が怒鳴ったかは記事では明らかにせずに、事実をありのままに報告しただけで個人を中傷するものではなく、意見交換会がそうした異常な雰囲気の中で開始されたことを市民に知らせただけである。
 ③本件記事での引用は半分近くを募金に関する内容で占めており、引用の分量として不適切かつ恣意的であるとしているが、事実として募金に関しての話し合いは行われており、それを市民に知らせる目的で記載したものである。意見交換会の記録が要点筆記であったことや紙面の都合もあることから全てを記載することはできなかったが、事実を歪曲して報告していない。
  これは募金に対して市長の事前の許可が必要であるにもかかわらず、市に事後報告さえなされていなかったため、市としては募金に対する苦情の対応に苦慮した事実を市民に知らせたものである。
  また、阪神大震災の募全活動についての記載は、原告らが募全活動を行っていた一つの例として書いたものであり、そもそも災害の募全活動を行う自体は、慈善事業であるから、そのことが原告らの社会的評価を低下させるはずがない。
  参加費の徴収の議論も要点のみではあるが、正確に記載している。
 ④駐車場利用の記述に関しては、スポーツセンターの利用者から抗議や苦情を受けていたため、フリーマーケット開催にあたっての条件を市民に報告するためのものであり、もとより原告らの社会的評価を低下させる記事ではない。
 ⑤サワイ産業の記述に関しては、※で示すとともに枠で囲んで当日の意見交換会の中での話題ではなく、単なる補足説明であることをわかるようにしてある。
  原告松本氏は原告未来塾の代表者であるのに、原告未来塾と無関係と主張するのは、理解できないうえ、被告岡田としても原告松本氏個人と会ったのではなく、未来塾の代表者と面談したと認識している。また、プライバシーに配慮して個人名を明らかにしないで、単に「未来塾から1人」と記載したものである。
 ⑥説明資料の引用は、全てを載せることはできないから、意見交換会の議題と関係がある箇所の必要部分を引用しただけであり、意図的又は恣意的に省略したわけではない。
 ⑦「安中市は人と争うことを避け、人に責められて人を責めず、罵られて罵らず、市行政は寛容の精神を待つ人を育てることを銘としています。」は、被告岡田が、本件における行政の対応として銘とすべきことを記載したものである。意見交換会において、原告らから責められ、かつ、終了後には原告松本氏から罵られたことは事実であり、この対応方について抽象的に表現したつもりである。
  しかし、一般読者が普通に読めば、単に安中市の銘が示されていると考え、原告らのことを書いているとまでは深読みはしない。
7 被告岡田の責任に対する反論
  本件記事は、題名を「談話」と大きく表示してあること、末尾に市長名が記載されていることから、一般読者は、被告安中市ではなく、市長個人が意見交換会の経過を説明していることが理解できる。
  したがって、これを読んだ市民が通常の広報紙の記事とは、一線を画して読むことは十分期待されるはずである。
  このような形式で広報祇を通じて、市長が自分の考えを市民を伝えることは、首長主義を採用する地方自治において、それが選挙活動の一環として行われるか、虚偽の事実等により他人の権利を侵害するものでないかぎり、憲法で保障された表現の自由の枠内において、その表現方法に制約を受けるものではないと考える。
  本件「談話」を発行した理由は、新開やテレビ等で、原告らがフリーマーケット開催を断念したことが報道され、それに関する問い合わせが市民から寄せられたため、市は公園使用を許可したことや意見交換会の経過について市民に真実を知ってもらいたいという専ら公益的な理由によるものである。
  内容についても、上記6のとおり事実は全く歪曲しておらず、意見交換会において被告岡田が要点単記したものを、さらに要約して記載するとともに、議題となったことに関係する資料についての抜粋を載せ、最後に銘という形で、市行政の対応について抽象的に書いたものであるから、一般読者に誤解を与える内容とはなっていない。本来であれば、市長個人の意見をもっと記載しても良かったかもしれないが、広報紙の一部を利用することから、公平性を考慮し、意見交換会における市の主張について報告するようにした。原稿については同席した3名の部長に談話の原文を渡し、事実関係についての確認をしている。
  この記事を一般読者の普通の注意と読み方を基準として読んだ場合も「原告らが私利私欲のためにフリーマーケットに関し不正な活動に従事し、また、被告安中市関係者との話し合いに際しても不誠実な態度を示す者・団体である」とは到底読み取れず、原告らの名誉を毀損し、社会的評価を低下させる内容とはなっていない。
  特に原告松本氏について個人を特定して書いた記事は何もないのだから、原告松本氏の個人としての主張は失当である。
  ただ、「冒頭から怒鳴る」という表現が、意見交換会において原告らに不穏当な言動があったことを予測させ、それが仮りに原告らの社会的評価を低下させたとしても、公共の利害に関することであることには争いがなく、それが事実であって、市民に真実を伝えるという専ら公益を図る目的によるものである限り、原告らも認めるとおり違法性がなく、不法行為は成立しない。
  さらには、たとえ、「談話」の内容に誤りがあったとしても、市長の定例記者会見及び市議会での発言が職務上当然に尽くすべき注意義務を尽くさなかったとは認められず、名誉毀損による国家賠償責任は認められないとされた市長発言名誉毀損国家賠償請求事件(平成19年9月26日判決仙台高裁)と同様に、自分の要点筆記に基づいて同席した職員にも事実確認をしており、基礎事実の重要な部分が真実と信じたことには合理的な理由があるから、違法な職務行為であるとの評価を免れ、名誉毀損による不法行為は成立しない(乙8号証)。
  本件記事作成後に会場使用を拒絶する理由を変遷させていると主張するが、もともと会場使用を拒絶したことはないし、フリーマーケットにおいて騒音に対する苦情があったことを会合等で説明しただけである。
  そもそも、原告らは市が公園使用申請を不受理としたごとく主張し、また、一般市民においても、市が公園使用を不許可としたような誤解があったようだが、実際はそうした事実はなく、市に寄せられたフリーマーケットに対する苦情をもとに運営上の問題点を指摘したうえで、開催するのであれば、是正について検討をお願いしていただけである。こうした誤解を解くためにも、市長自身の言葉による本件記事は公益的な意義を有する。
  さらに、西毛運動公園の使用を要請したのも、スポーツセンター駐車場の混乱を避けることや団地の騒音に対する苦情に配慮したものである。被告安中市が開催していた体育祭のように、西毛運動公園の陸上競技場及び少年野球場を活用すれば、25,000㎡を超える面積が確保できるため、フリーマーケット開催には何ら支障がなく、原告らがいうような70区画しかとれない小規模な会場ではないばかりか、むしろ米山公園(供用面積23,256.41㎡)より広くて植栽が少ない分、イベント会場として有効な活用が期待できる(乙9号証)。
8 被告安中市の責任に対する反論
  上記のとおり、被告岡田の不法行為は成立しないのだから、被告安中市の国家賠償法上の責任はない。
  また、国家賠償法に基づく補償は、公権力の行使であったことが条件であるから、本件は、通常の広報記事と違って市長の個人的意見表明に過ぎず、行政部門の私経済作用に属し、公権力の行使には当たらない。
  さらに上記主張が認められた場合における民法715条の使用者責任についても、被告岡田の不法行為は成立しないのだから、使用者責任はない。
  仮りに不法行為が成立した場合でも、被告岡田は、地方自治法第17条により公選に基づき選任された市長であり、同法第147条により被告安中市を統轄し代表する者であるから、民法第715条ただし書が適用され、被告安中市の使用者責任は発生しない。
  なお、原告らは国家賠償の請求とは別に、被告岡田に責任を求めているが、最高裁は、国が公務員に代わって賠償責任を負う以上、被害者の救済は満足されるから、国家賠償法第1条の適用が認められる限り、公務員個人の責任を追及することはできないとしている(最判昭和30年4月19日民集9巻5号534頁、最判昭和53年10月20日民集32巻7号1367頁)から、本訴えは不適法である。
  「おしらせ版あんなか」の編集・発行・配布・掲載についても、職員に違法行為はなく、被告安中市の国家賠償法上の責任はない。
9 損害、本件訴訟の意義及び結語について
  名誉毀損行為に対する慰謝料として、原告松本氏、原告未来塾それぞれに400万円を下らないとしている。しかし権利能力なき社団に対して、精神的苦痛の補償である慰謝料が認められるのか甚だ疑問であり、原告松本氏に対しては、本件記事において個人を特定しては何ら言及していないのだから、個人としての慰謝料請求は認められない。
  また、本件訴訟の意義についても、縷々述べているが、ボランティアとはそもそも何かとか、地域活性化のために地方公共団体と市民との連携がどうあるべきかなどは本件とは直接関係がなく、いたずらに争点を拡大するだけであって、本件において司法に判断を求めることではない。
  もし、当該判断を求めて正常な行政を安中市に回復させたいと原告らが願うのならば、当初から申請を不受理にしたと主張しているのだから、本件訴訟より前に、このことを理由に行政訴訟を起こし、司法の判断を仰ぐべきであったのではなかろうか。

     証  拠  方  法
1 乙1号証 安中市行政手続条例
2 乙2号証 安中市公園条例施行規則
3 乙3号証 安中フリーマーケット報道に関しての私見
4 乙4号証 陳述書(長澤和雄)
5 乙5号証 陳述書(堀越久男)
6 乙6号証 陳述書(佐藤伸太郎)
7 乙7号証 補助事業等実績報告書
8 乙8号証 判例地方自治No.307(市長発言名誉毀損国家賠償請求事件解説)
9 乙9号証 西毛運動公園の面積

     附  属  書  類
1 答弁書副本            1通〔直送済〕
2 乙1号証乃至10号証の写し   各2通〔うち1通は直送済〕
3 証拠説明書            2通[うち1通は直送済〕

【別紙】
市長室・秘書行政課配置図(市長室には、窓側の市長執務机の前に岡田市長がソファーに座り、テーブルを挟んで向かい側に長澤建設部長が座り、市長の左手に未来塾の松本立家氏ら3人が座り、市長の右手に堀越総務部長(当時)と佐藤教育部長(当時)が座ったことを示してあり、入口を隔てて隣接の部屋には、窓側に秘書行政課長席があり、その右手の窓側に総務部長席があり、秘書行政課長席の前に、秘書係長席と秘書係席が並び、その向かい側に、広報係長席と広報係席があることを示した配置図)

【証拠説明書】(略)

【乙第1号証】
○安中市行政手続条例(略)

【乙第2号証】
○安中市公園条例施行規則(略)

【乙第3号証の1】
平成20年5月20日付け安中市長宛の「安中フリーマーケット報道に関しての私見」と題する手紙(略)

【乙第4号証】
陳述書
前橋地方裁判所高崎支部合議2係 御中
  平成20年11月 1日
   建設部長 長澤和雄 (印)
 私は建設部長の長澤和雄と申します。都市公園であります米山公園がフリーマーケットの会場となっていたために、所管担当部長として話し合いの対応をいたしました。意見交換会当日の対応について下記のとおり陳述いたします。
 市と未来塾の話し合いについては、日程は勿論のこと、話し合う内容についても調整が進みませんでしたが、平成19年9月10日に意見交換会という形で行うことで合意がなされました。当日は、9月議会が開会中であり決算審査特別委員会が予定されていましたので、午後5時から行うこととし未来塾の方々には1階ロビーで待機して頂くことで連絡をいたしました。
 しかし、当日、群馬県議会の県土整備常任委員会の委員による現地視察もあり、決算審査特別委員会が終わったのが5時近かったと記憶しております。委員会終了後ただちに、1階ロビーで待機して頂いていた未来塾の方々に、遅れたお詫びを申し上げると共に、意見交換会の会場である市長室に案内しようとしましたが話し合いのテーマとして
 「フリーマーケットの運営について]を次第に入れるよう強く申し入れがあり、開始時間が遅れました。
 未来塾からの申し入れを受け入れることで市長室に案内をしたのが午後6時30分頃であり、入室しましても厳しい雰囲気だったと記憶しております。意見交換台は、私の司会により、まず自己紹介から始めていただき、続いて市長の挨拶、松本代表の挨拶と続きましたが、本題に入る前から大変殺気だった状況で3人からもあらあらしい発言もあり、特に「話をするときは目を見て」と叫ばれたりして、私としても話し合いを進めていくことが出来ず、議論が意外な方向へ進展するのを引きとめることが出来ない状況で話し合いは終了いたしました。

【乙第5号証】
陳述書
前橋地方裁判所高崎支部合議2係 御中
  平成20年11月1日
  元安中市職員 堀越久雄 (印)
 私は、意見交換会当時、総務部長の職にあった者です。
 未来塾と市との意見交換今について、平成19年6月頃から日程及び内容について建設部長が窓口となり調整を行ってきました。市長は常に日程が空いていればいつでも話し合いに応じたいとの基本姿勢でありましたが、未来塾側からの内容等の要望事項もあり、合意に至らず、9月10日となってしまった訳であります。特にこの9月10日は、9月定例市議会の決算審査特別委員会の開催日でありましたが、少しでも早く話し合いに応じたいということから、通常では議会日程以外(市長・部課長が出席のため)の日程は、なるべく入れないようになっていましたが、委員会終了後ならということで意見交換会という形で予定し、建設部長が進行役となり行ったと記憶しております。
 9月10日は開始予定時間から約1時間以上も遅れたこともあり、決して和やかな雰囲気は感じられず、本題に入り、まもなく市長がメモを見ながら説明を行っている中で、未来塾側が、強い口調で「話をする時は目を見て・・・」その数分後には同席の女性から「市長さん話をする時は目を見て・・・」と叫んだことが、強く脳裏に焼き付いています。この意見交換会が始まった時間帯の庁内は議会開会日でもあったことから、決して静寂ではなかった訳でありますが、隣室の秘書行政談で業務を行っていた職員も何の騒ぎかと驚いていたと後ほど間きました。また、話し合いが終了して、市長室を退席する際にもドアの前に立ち止まって、強い口調で市長を非難していたことは事実であります。
 なお、談話について線で囲んであります「サワイ産業」に関する記事については、意見交換会では話題にはならなかったですが、その他は、概ねその通りかと思っています。
 以上のような好ましくない雰囲気の中で行われた意見交換会は、予定された話し合いのテーマ全部を済ませることが出来ず終了いたしました。

【乙第6号証】
平成20年(ワ)第492号事件に係る「おしらせ版あんなか」41号市長談話に関する陳述書
前橋地方裁判所高崎支部御中
  平成20年11月4日
   佐藤新太郎 (印)
 私は、佐藤伸太郎と申します。当時教育部長をしておりましたので、平成20年(ワ)第492号事件に係る「おしらせ版あんなか」41号市長談話に関して陳述します。
「おしらせ版あんなか」の掲載事項について
 安中市と未来塾の話し合いは、平成19年9月10日に市役所市長室で午後6時30分頃開会となりました。
 出席者は、市は、市長、総務部長、建設部長、教育部長の4名、未来塾は、未来塾代表松本立家氏、■■■■■■■■氏、■■■■■■■■氏の3名が出席しました。
 安中市から回答した日については、市長から平成19年9月13日午前8時30分に誠意を持って許可する旨回答したことを聞いています。
 フリーマーケット開催予定日については、未来塾との話し合いの中で平成19年10月28日と聞いています。
 一問一答の記述で、未来塾:目を見て話をしろ(冒頭から怒鳴る)の記述についてですが、話し合いは、市長が未来塾の出席者に市長のところに市民の方から寄せられた苦情や抗議の内容を説明していただく形で進められ、はじめの頃の質問の途中で市長の話をする姿勢について、一言一言を記憶しておりませんが、松本立家氏と松本遥氏の両氏から、相手の目を見て話をするようにという趣旨の指摘が大きな声であったと記憶しています。この他の一問一答で掲載された事項は話し合いの一部ですが掲載内容のとおりと記憶しています。
 四角で囲まれた記述の内容については、承知しておりません。

【乙第7号証】
20年4月28日付け安中市教育委員会教育長中澤四郎宛の補助事業等実績報告書
(略)

【乙第8号証の1】
自治体の判例と情報
「判例地方自治」平成20年10月号 地方自治判例研究会/編集 No.307
(略)

【乙第8号証の2】
議会発言名誉毀損国家賠償請求事件(石巻市)
 市長が定例記者会見及び市議会において、市議会議員が市職員に対し威圧的行動をとった等と発言したことについて、市長が記者会見等発言に際して、職務上当然に尽くすべき注意義務を尽くさなかったとは認められず、名誉毀損による国家賠償責任は認められないとされた事例
(内容略)

【乙第9号証】
(西毛総合運動公園とその周辺施設の載った地図)
**********

【ひらく会情報部】

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