市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

群馬県知事・大澤正明の公舎ラブホテル化合法判決により拍車がかかる地方公務員の福利厚生の向上

2013-02-28 23:32:00 | オンブズマン活動
■勤務中に暇つぶしの余り長時間にわたりAV画像を見ていた群馬県企業局の幹部や、勤務時間中に多数の職員らがソフトボール大会に興じたりできる群馬県の手厚い福利厚生はこれまでにも話題になりましたが、今度は、公舎管理規則により、公舎に住む職員は、家計を一にしない者として、同居とみなすことができないことから、愛人を宿泊させてもよいことになりました。民間企業の社宅の利用規則の常識では到底考えられない公務員の破格の待遇。しかも、その公舎は私たちの血税で作られたもので、使用料も格安です。

判決のあった2月27日の午後4時ごろ、知事・大澤が不倫のため目的外使用していた知事公舎の向かい側にある桃井小学校の校門を入った目の前にある元内閣総理大臣・鈴木貫太郎の遺訓を刻した石碑を訪れた。


140年の歴史を刻んだ校門。

 昨日の前橋地裁の、群馬県知事・大沢正明による不倫相手を知事公舎に頻繁に宿泊させていた目的外の無断使用問題について、違法ではないという画期的な判決は、群馬県の職員への福音判決となりました。これで群馬県は、全国的にも非常に稀有な、公務員天国の自治体として名実ともに評価されることでしょう。

■市民オンブズマン群馬のメンバー2名が原告として、群馬県知事に提起していた住民訴訟である知事公舎妾宅化損害賠償請求事件に対する、昨日の前橋地裁の判決について、今日の朝刊で、東京新聞を除く各紙は次のように報じました。

**********毎日新聞2013年2月28日(木)11時56分配信
大沢知事:女性宿泊問題 公舎訴訟、市民オンブズの返還要求を棄却 /群馬
 大沢正明知事が、知人女性を知事公舎に宿泊させたのは目的外使用で規則に反するなどとして、市民オンブズマン群馬のメンバーが大沢知事に対し約1957万円を県に返還するように求めた訴訟で、前橋地裁(大野和明裁判長)は2月27日、原告の訴えをいずれも棄却、却下した。
 判決では、知人や友人を公舎に招いて接遇することは当然想定され、「知人を宿泊させたことで直ちに目的外に使用したとはいえない」などと退けた。
 市民オンブズマン群馬の小川賢代表は判決後の会見で「判決内容には納得がいかない」とコメント。控訴については検討中という。県は「主張の正当性が認められたと認識している」と話した。【角田直哉】
**********産経新聞2013年2月28日02:06
女性宿泊「違法でない」 知事公舎訴訟 市民団体の訴え却下 群馬
 大沢正明知事が私用で知事公舎に知人女性を宿泊させた問題で、女性の宿泊や公舎改修は県規則と地方自治法などに違反しているとして、市民団体「市民オンブズマン群馬」(前橋市)の鈴木庸事務局長らが大沢知事を相手取り、計約1956万円を県に返還するよう求めた訴訟の判決が2月27日、前橋地裁であった。
 公舎管理規則では「他人を同居させること」は禁じられており、知人女性を宿泊させたことが公舎管理規則上の違反にあたるかなどが争点となったが、大野和明裁判長は「一定期間の居住を意味する『同居』とはいえない」などとして、訴えを退けた。
 また、大野裁判長は「婚姻外の交際相手を宿泊させたことは道義的に不適切であったとの批判は免れないが、今回の公舎の使用が目的外で違法であるとはいえない」と指摘した。
 鈴木事務局長らは判決後、県庁で記者会見を開き、「今回の判決では、不倫相手との同居はだめでも、宿泊はOKということになる。今後、控訴も視野に入れて検討する」と話した。
**********朝日新聞2013年2月28日
知事公舎訴訟で地裁 大半棄却 一部を却下
 大沢真章知事が公舎に女性を泊めたのは目的外使用などとして、市民オンブズマン群馬の小川賢代表(60)らが知事を相手取り、約2千万円を県に支払うよう求めた訴訟の判決が2月27日、前橋地裁であり、大野和明裁判長は訴えの大半を棄却し、一部を却下した。
 女性宿泊問題が表面化したのは2011年7月。原告側は、知事が女性を泊めたのは県の規則違反の目的外使用だとして民間宿泊施設の利用相当額に支払いを求めたほか、現ス設置などの改修工事費や光熱水費が不正支出だとして相当額の支払いも求めていた。
 県公舎管理規則は、職員と生計が同じ人以外との同居を禁じているが、大野裁判長は、女性の宿泊が規則が指す同居には当らないと判断。女性を泊めたことについて「道義的に不適切であったとの批判は免れないとしても、公舎の使用が目的外で違法ということは出来ない」と述べた。
 また、改修工事費や光熱水費などの支出も「いずれも適法」などと述べて訴えを退け、その一部は住民監査請求の期間が過ぎていたことを理由に却下した。
 大沢知事は判決後、「主張が司法の場で認められたと認識している」と話した。一方、原告の小川代表は「不満が残る判決。控訴を検討したい」と話した。
 大沢知事は問題の発覚後、知事公舎を退去。県管財課によると、現在は自宅から通っている。知事公舎は、前橋市に譲渡する方針だという。
**********読売新聞2013年2月28日
知事公舎に女性宿泊 地裁が請求却下棄却
 大沢知事が知人女性を知事公舎に宿泊させる目的外利用をしたうえ、この行為を隠すためにフェンスを設置したことなどは違法などとして、市民オンブズマン群馬の小川賢代表らが知事を相手取り、改修費など約1956万円を県に返還するよう求めた訴訟の判決が2月27日、前橋地裁であった。大野和明裁判長は「知人を宿泊させたことをもって、直ちに公舎を目的外に使用したとは言えない」などとして請求を却下・棄却した。
**********上毛新聞2013年2月28日
原告側の請求退ける 知事公舎問題訴訟
 大沢正明知事が知事公舎に知人女性を宿泊させた問題で、公舎を目的外に使用したなどとして市民オンブズマン群馬が県に損害賠償約1960万円の支払いを求めた民事訴訟の破滅が2月27日、前橋地裁であった。大野和明裁判長は原告側の請求を退けた。
 判決理由で大野裁判長は、知人を宿泊させたことについて「道義的に不適切との批判は免れないとしても、公舎の目的外使用とは言えない」と指摘した。
**********

■オンブズマンは、群馬県知事・大沢が愛人を週末に頻繁に公舎に連れ込み宿泊をともにしていて、ラブホテル代わりに使っていたことから、当初はこの事件のことを知事公舎ラブホテル化損害賠償請求事件として、訴状や準備書面に記載していました。ところが、大野裁判長は、口頭弁論のなかで、「同居しているというのであれば、“ラブホテル化”というよりも“妾宅化”という言葉を用いたほうが、適切なのではないか」と訴訟指揮を行いました。

 たしかに、ラブホテルではせいぜい月に1回くらい、不定期的に使用する場合が多いのであり、知事・大澤正明の場合には、正妻が太田市にいるにもかかわらず、頻繁に公舎に愛人を宿泊させていて、中で飲酒を伴う食事や入浴まで一緒にしており、同居同然だったことから、“妾宅化”のほうが、より実態に近い表現だと判断して、事件名を知事公舎妾宅化損害賠償請求事件に変更した経緯があります。

■しかし大野裁判長は、きのうの判決で、知人女性=愛人を宿泊させたことをもって、直ちに公舎管理規則で禁じている目的外使用には違反するとはいえない、と判断しました。

 もともと、知事・大澤は自ら「知事公舎は週に1、2回しか使っていない」とか「知事公舎は大きすぎる」などと発言していました。ところが、その週に1、2回しか使わない公舎に入る時、頻繁に愛人を車に乗せて一緒に宿泊をしていました。おそらく殆どの場合、愛人を引き入れていたものと想像されますが、玄関の防犯カメラの映像は、群馬県管財課が公開しようとしません。

 今回の判決で、大野和明裁判長は「仮に週刊誌が報じたように年に30回以上愛人と公舎に宿泊したとしても、一定期間の居住を意味する『同居』とはいえない」などとして、オンブズマンのメンバーらの訴えを退けました。

 知事・大澤の愛人の場合、知事が経営する老人施設に勤務をして、報酬を得ていましたが、いわゆる家計が知事と同一にはなっていないと見るべきでしょう。その愛人と週末頻繁に太田市内の知事・大澤の自宅ではなく、太田市の自宅からずいぶん遠い前橋市内の小学校とキリスト教会の挟まれた場所にある知事公舎で、過ごしていたのですから、いくら一定期間の居住を意味する「同居」はしていない、といっても、知事・大澤が公舎使用願を知事に提出しており、知事が週末に公舎を使用するときには、愛人も一緒に宿泊や飲食、入浴をともにしているわけです。

 知事・大澤自らが、もともと一定期間の居住をしていない状況で公舎を使用しており、その際に、非常に高い確率で愛人が一緒に宿泊、飲食、入浴をしているのですから、これは「愛人と一緒に居住している」=「同居」といえるのではないでしょうか。にもかかわらず、「一定期間の居住を意味する『同居』ではない」と判断した前橋地裁の判決には、誰しも首を傾げるのではないでしょうか。

 新聞報道によれば、今回の住民敗訴判決について、「県は『主張の正当性が認められたと認識している』と話した」(毎日新聞)、「大沢知事は判決後、『主張が司法の場で認められたと認識している』と話した」(朝日新聞)と報じています。裁判所が画期的な判決を出したことで、愛人連れ込み等の公舎不倫用ラブホテル化の懸念があるにもかかわらず、公舎管理規則を見直すつもりはなさそうです。この意味でも、控訴が必要かもしれません。

校舎から公舎を見る。住民訴訟で、原告住民のオンブズマン側が敗訴したことから、県管財課は公舎の解体・撤去・更地化に向けて一目散に走り出す可能性がある。そのため、今のうちに知事公舎の様子を記録しておく必要があると考えて訪れてみた。

■前橋地裁での判決の瞬間、傍聴席にいた群馬県管財課の訴訟指定代理人の職員らの表情が緩みました。新聞記事もあるように、「県管財課によると、現在は自宅から通っている。知事公舎は、前橋市に譲渡する方針だという」ことから、既に知事・大澤の不倫場所を公費で整備してきた群馬県管財課の証拠隠滅のために、公舎の解体・撤去・更地化のための工事費用の見積を取っている可能性があります。そこで、オンブズマンでは裁判の判決の後、記者会見の直前に、群馬県知事に対して次の公文書開示請求を行いました。

<開示を請求する公文書の内容又は件名>
 大沢知事が一時知事公舎として使用していた大手町1号館の解体、撤去、更地化に関して、知事が作成、受領、発行、保有している全ての情報(事前準備、検討段階のものも含む。ただし、昨年8月ごろまでに兼官財貨と前橋市との間で協議したやり取りで既に請求人に開示した文書は除く)

 管財課が素直に対応すれば、2週間後に開示される可能性があります。

 それにしても、群馬県知事・大澤正明に、きちんとコンプライアンスを指導する役目の副知事や総務部長はいったい何をしているのでしょうか。そもそも、知事の首に鈴をつけられる幹部がいないことが、県民の血税を、知事の不倫場所の整備に費消されてしまう原因だと思われます。

 自分の目の前で、違法不当な行為を行われたら、司直に告発するのが地方公務員法に定めた役人の義務ですが、群馬県の総務部では、これが全く機能していません。だから、水増し請求や架空出張、不正経理がいつまでたっても撲滅できないのです。、

 こんな不道徳知事のもとで働かされている多くの全うな職員にとっては、さぞやりきれないことでしょう。

【市民オンブズマン群馬事務局からの連絡】


群馬県が輩出した最初の総理大臣の鈴木貫太郎。だが山口県生まれのためか、なぜか群馬出身総理にカウントされない。そうした事情を気にせず母校の偉人生誕145周年と桃井小学校創立140周年の記念横断幕と校舎。
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全国の知事・公務員諸氏に朗報!公舎に愛人を宿泊させても合法と判断した前橋地裁の画期的福音判決

2013-02-27 23:56:00 | 県内の税金無駄使い実態
■今日、平成25年2月27日(水)午後1時10分に、前橋地方裁判所で画期的な判断が示されました。当日は、市民オンブズマン群馬の幹部メンバーらが勢ぞろいして、前橋地裁のロビーに集合しました。

 午後1時に裁判所の職員が地裁の2階の第21号法廷の部屋の鍵をあけると、待ちかねた傍聴者らが席を埋めました。

 午後1時10分に大野裁判長ら3名の裁判官が法廷に姿を現しました。傍聴席を含め、全員が起立して着席し、さっそく平成24年(行ウ)第10号知事公舎妾化損害賠償請求事件の判決文を裁判長が読み上げました。直ぐに、原告住民側の請求が却下及び棄却されたことがわかりました。

 この間僅か5分でした。外に出るとマスコミ陣から感想を求められましたが、「住民側の負け。ただし、判決文は午後2時にならないと地裁の方から入手できないと言われているので、午後3時の県庁の刀水クラブでの記者会見までに、判決内容を読んで、記者会見時に感想を述べます」と伝えました。

■午後2時に地裁3階の窓口で、次の判決文を受領し、さっそく内容を吟味しました。それでは、前橋地裁が下した画期的な判決を見てみましょう。

**********
平成25年2月27日判決言渡し・同日原本交付 裁判所書記官 継田美貴
平成24年(行ウ)第10号 公金不正支出損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 平成24年12月26日
          判     決
前橋市文京町1丁目15番10号
   原 告    鈴 木   庸
群馬県安中市野殿980番地
   原 告    小 川   賢
前橋市大手町1丁目1番1号
   被 告    群馬県知事 大 澤 正 明
   同訴訟代理人弁護士    新 井   博
   同 指 定 代 理 人  小 見   洋
   同            木 村 功 一
   同            鯉 登   基
   同            杉 田 琢 己
   同            田 村 高 宏
          主     文
1 本件訴えのうち,被告に対し,大澤正明が群馬県に,別紙1の各契約(番号1ないし14,17ないし21及び23のもの。)を締結させたこと及び同契約に基づき群馬県が負担した債務について支出させたこと並びに別紙2の電気代(番号1ないし38のもの。),別紙3の水道代(番号1ないし19のもの。),別紙4のガス代(番号1ないし38のもの。),別紙5の電話代(番号1ないし38のもの。)及び別紙6のインターネット接続代(番号1ないし36のもの。)を支出させたことに関し,大澤正明に不法行為に基づく損害賠償及び不当利得の返還を請求することを求める部分を却下する。
2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は原告らの負担とする。
          事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告ら
 被告は,大澤正明に対し,1956万8940円及びこれに対する平成24年6月8日から支払済みに至るまで年5%の割合による金員を群馬県に支払うよう請求せよ。
2 被告
(1)本案前の答弁
  本件訴えを却下する。
(2)本案の答弁
  原告らの請求をいずれも棄却する。
第2 事案の概要
1 事案の要旨
 本件は,群馬県(以下「県」ということがある。)の住民である原告らが,県知事である大澤正明(以下,同人が,個人として損害賠償義務等の責任主体となる場合は「大澤」と,県の執行機関となる場合は「被告」という。)が,①違法に知事公舎(以下「本件公舎」という。)に知人女性を宿泊させ,これによって県が損害又は損失を被ったのに,被告は,大澤に対する損害賠償請求及び不当利得返還請求を怠っている,②本件公舎を交際相手と宿泊するための施設に改造する目的で,これを改修するための契約を県に締結させ,その費用を支出させるなどの違法な行為により県に損害を与えた,③本件公舎の光熱水費等を負担すべきであるのに,これをせず,県が支出した光熱水費等相当額を不当に利得したと主張して,地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項4号に基づく住民訴訟として,被告に対し,大澤に上記損害又は利得の合計額である1956万8940円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成24年6月8日から支払済みまで民法所定年5%の割合による遅延損害金の支払を請求するよう求めた事案である。
2 前提事実
(1)当事者等
ア 原告らは,群馬県の住民である。
イ 大澤は,群馬県知事であり,県が前橋市内に所有する本件公舎に平成19年12月から平成23年7月まで居住していた(以下,この期間を「本件入居期間」という。)。
  (争いがない)
(2)本件公舎に関する工事等
ア 県の管財課長は,別紙1「工事・委託業務一覧表」の各欄に記載のとおり,各工事ないし委託業務に関する契約を締結した(以下,各番号の契約を「本件○○番の契約」といい,これらを併せて「本件各契約」という。)。
イ 県の会計管理者は,県が本件各契約により負担した債務についての支出(以下「本件各支出」という。)をした。
  (争いがない)
(3)本件光熱水費等
 本件公舎の本件入居期間における電気,水道,ガス,電話及びインターネット接続代(以下,これらを併せて「本件光熱水費等」という。)は,別紙1ないし6及び別紙7「経費(光熱水費等)支出額一覧(平成19年12月~平成23年7月)」の各欄に記載のとおりであった(乙29,32の2)。
(4)本件公舎提供行為
 大澤は,平成23年7月8日から翌9日にかけて,本件公舎に知人女性を宿泊させた(以下「本件公舎提供行為」という。)。同月13日ころ以降,週刊誌等により,同知人女性は大澤の交際相手であり,大澤は,同知人女性を多数回にわたり本件公舎に宿泊させた等と報道された(甲1の2,3)。
 大澤は,平成23年7月31目,本件公舎を退去した(争いがない)。
(5)住民監査請求
 原告らは,平成24年2月23日,大澤について,違法又は不当な①本件公舎提供行為,②本仲冬契約ないし本件各支出及び③本件公舎の光熱水費等の支出が認められると主張し,群馬県監査委員に対し,必要な措置を講ずべきことを請求する住民監査請求を行った(甲1)。
 群馬県監査委員は,平成24年5月1日,上記住民監査請求を棄却した(甲3,4)。
(6)群馬県行政組織規則(昭和32年規則第71号。以下「行政組織規則」という。)の定め(乙27の3)
 13条(総務部各課,室及びセンターの分掌事務) 総務部各課,室及びセンターの分掌事務は,次のとおりとする。
 管財課
  三 公有財産の取得,管理及び処分(他課の主管に関するものを除く。)に関すること。
(7)群馬県公有財産事務取扱規則(以下「公有財産規則」という。)の定め(乙27の5)
 7条(事務の分掌)
  2 部長…は,その所掌する公有財産に関する事務を主管課…の課長に分掌させるものとする。ただし,第60条第3項第2号から第6号までに掲げる公有財産その他主管課の課長以外の課長に分掌させることが適当な公有財産に関する事務は,当該公有財産の用途に従い,それぞれの課長又は地域機関等の長に分掌させるものとする。
(8)群馬県公舎管理規則(昭和43年規則第52号。以下「公舎管理規則」という。)の定め(乙27の6)
 1条(趣旨) この規則は,別に定めがあるもののほか,公舎の管理に関する事務について,必要な事項を定めるものとする。
 2条(定義) この規則においてF公舎jとは,県が公務の円滑な運営を図るため,県に勤務する職員の居住に供する目的を持って設置した施設をいう。
 8条(遵守事項) 使用者は,公舎を常に善良な監理者としての注意をもって使用するとともに,次の各号に掲げる行為をしてはならない。ただし,第1号及び第2号に掲げる行為で知事又は地域機関等の長の許可を受けたものは,この限りでない。(1号略)
  二 職員と生計を一にする者以外の者(使用人を除く。)を同居させること。
  三 転貸し,又は目的外に使用すること。
 9条(費用負担)次の各号に掲げる費用は,使用者が負担するものとする。ただし,特別の事情があって知事が必要と認めた場合は県が負担する。
  (1号略)
  二 電気,ガス,水道等の料金
  (3号略)
(9)群馬県財務規則(平成3年規則第18号。以下「財務規則」という。)(乙27の4)
 4条(財務に関する専決) 知事の権限に属する事務の専決は,次の各号に掲げる事務の区分に従って,当該各号の定めるところによる。・‥
  一 第6章に規定する契約に関する事務 別表第一の二
  二 第64条の支出負担行為及び第68条の支出命令 別表第一の三
 別表第一の二 支出の原因となる契約に関する意思の決定に係る事務に係る課長の専決区分 建設工事費(設計に係るものを除く。)及び土地の取得依頼に係るもの以外の委託料(以下「その他委託料」という。)のうち,新規のものは1000万円未満,継続のものは3000万円未満
 別表第一の三 支出負担行為及び支出命令に係る課長の専決区分 その他委託料につき全額
(10)群馬県処務規程(昭和39年訓令甲第8号。以下「処務規程」という。)の定め(乙27の1)
 4条(専決) 副知事,部長,副部長,局長,事務局長,主管課の長(以下「主管課長」という。),課長,会計管理者,会計局長,地域機関等の長及び出張所等の長は,この訓令で定めるもののほか,別に訓令で定めるところにより事務を専決することができる。
(11)群馬県事務専決規程(昭和43年訓令甲第11号。以下「専決規程」という。)の定め(乙27の2)
 4条(共通専決事項)
  1項 部長,主管課長,課長及び係長は,…その分掌事務に関し別表第二に掲げる事務について専決することができる。…
 5条(個別専決事項)
  1項 部長,会計局長及び課長は,別表第三に掲げる事務について専決することができる。
 別表第二
  課長専決事項
   五十一 その他分掌する事務のうち軽易な事項…を決定すること。
 別表第三
   三 課長専決事項
    総務部管財課 二(六)公舎管理規則9条ただし書により,使用者費用負担の例外を認めること。
3 争点及び争点に関する当事者の主張
 本件の争点は,(1)本件公舎提供行為の違法性,(2)本件各契約及び本件各支出並びに県による本件光熱水費等の支出のうち平成23年2月23日より前になされたもの(別紙1の各契約のうち番号1ないし14,17ないし21及び23,別紙2の電気代のうち番号1ないし38, 別紙3の水道代のうち番号1ないし19,別紙4のガス代のうち番号1ないし38,別紙5の電話代のうち番号1ないし38,別紙6のインターネット接続代のうち1ないし36。以下,併せて「本件期間経過部分」という。別紙1ないし6の着色部分。)に関する原告らの住民監査請求が,法定の1年を経過した後にされたことについて,「正当な理由」(法242条2項ただし書)があるか,(3)本件各契約ないし本件各支出の違法性,(4)本件光熱水費等を県が支出したことの違法性である。
(1)争点(1)(本件公舎提供行為の違法性)
 (原告らの主張)
 本件公舎提供行為は「職員と生計を一にする者以外の者を同居させること」又は「目的外に使用すること」に該当し違法であり,また,大澤は法律上の原因なく宿泊料相当額の利益を得たものである。本件公舎の利用料は,同等の設備を有する民間宿泊施設を利用した場合と同程度である1泊14万円と考えるべきであり,県は,本件公舎提供行為によりこれと同額の損害又は損失を被った。よって,県は,大澤に対し,14万円の不法行為による損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を有する。
 (被告の 主張)
 本件公舎提供行為が,大澤の県に対する不法行為又は不当利得に当たるとの原告らの主張は争う。
 本件公舎提供行為は,群馬県公舎管理規則上禁止されている行為に該当しないし,知事である大澤が本件公舎に居住している限り,その目的に反するものとはいえず,県は大澤に対して損害賠償請求権等を有しない。
(2)争点(2)(「正当な理由」の有無)
 (原告らの主張)
 原告らは,平成23年7月に報道された財務会計行為の具体的な内容について調査するため,大澤に対する公開質問や,県に対する文書開示請求等を繰り返し行った。しかし,県は大澤と一体となって情報を隠匿し違法な財務会計行為があること隠ぺいし続けた。そのため,原告らは,相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的に見て監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなかった。その後,原告らは,平成24年1月4日,県から開示請求の対象となる文書が不存在である旨通知されたことにより,県が事実を隠ぺいしようとしていることを認識し,それから相当な期間内である同年2月23日に本件住民監査請求を行った。したがって,原告らには法定の期間経過後に住民監査請求を行ったことについて「正当な理由」がある。
 (被告の主張)
 原告らの主張は否認ないし争う。
 本件各契約に基づく工事ないし委託業務は,誰でも目にできる状態で実行されていた。また,本件各支出や,県による本件光熱水費の支出に関する情報は公開されており,群馬県情報公開条例に基づく請求があれば,誰でも知ることができた。よって,これらは,秘密裡にされたものではないし,住民が相当の注意力をもって調査すれば,当該各行為の直後から客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたものである。よって,原告らが法定の期間を徒過したことに「正当な理由」はない。
(3)争点(3)(本件各契約ないし本件各支出の違法性)
 (原告らの主張)
 本件各契約は,法令上要求される手続に反して締結されたものであり,違法である。
 また,知事公舎は,知事の公務を遂行する目的及び知事の家族と居住する目的で使用されるべきであるところ,大澤は,本件公舎を交際相手と宿泊するための施設に改造する目的で本件各契約を県に締結させたものである。よって,本件各契約は,必要性・相当性に欠け,財務会計法規上違法であり,これに基づく本件各支出も違法である。
 したがって,本件各契約及び本件各支出に関し,大澤には不法行為法上の過失があり,県に別紙1「工事・委託業務一覧表」の「契約金額(税込み円)」に記載の金額の損害を負わせた(ただし,本件10番の契約の代金は,本件11番の契約の代金に含まれるから,これを加算しない。)ものであるから,県は,大澤に対し,1903万2300円の損害賠償請求権を有する。
 (被告の主張)
 本件各契約は,県の管財課長が適法に専決したものであり,手続上の違法はない。
 また,本件各契約の目的は,別紙1「工事・委託業務一覧表」の「施工理由(乙号証番号)」欄に記載のとおりであり,いずれも必要性・相当性があるというべきである。よって,管財課長には,本件各契約を締結したことについて,裁量の逸脱・濫用はなく,財務会計法規上適法であり,本件各契約に基づく本件各支出も適法である。
 したがって,本件各契約及び本件各支出に関し,大澤に不法行為法上の過失はない。
(4)争点(4)(本件光熱水費等を県が支出したことの違法性)
 (原告らの主張)
 大澤は,本件公舎の使用者として,平成20年3月分から平成22年3月分までの本件光熱水費等を負担すべきであるのにこれを負担せず,その全額を県に支出させた。仮に,大澤が毎月1万6700円を負担していたとしても,大澤が本来負担すべき金額はこれを超えていたはずである。
 よって,本件光熱水費等を県が支出したことは財務会計法規上違法であり,県が違法に支出した額は,1か月当たり1万2000円を下らず,同額について大澤は法律上の原因なく利得し,県は損失を被った。したがって,県は,大澤に対し,19万2000円(1か月当たり1万2000円×平成20年12月分から平成22年3月分までの16か月分)の不当利得返還請求権を有する。
 (被告の主張)
 群馬県においては,法令上,公舎の光熱水費等の経費について,その一部を使用者が負担して残部を県が負担する制度(一部負担制度)を採用することが認められている。
 県の管財課長は,本件公舎について同制度を採用することを適法に専決し,使用者の負担額の上限につき,総務省等の資料を基に,平成9年から光熱水費を毎月1万3000円,平成17年から電話使用料を毎月3700円とし,現在も同基準に従って運用している。そして,大澤は,本件入居期間,県に対し,上記光熱水費及び電話使用料の自己負担分として毎月1万6700円を支払っていた。
 よって,大澤に不当利得はない。
第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(本件公舎提供行為の違法性)について
(1)原告らは,本件公舎提供行為が公舎管理規則8条2号の「他人を同居させ」又は同条3号の「目的外に使用」したことに当たり,違法又は法律上の原因がない旨主張する。
 しかし,前提事実(4)のとおり,大澤は,本件公舎提供行為において,知人女性を本件公舎に1泊させたに過ぎず,同女性を本件公舎に「同居」すなわち一定期間居住させたとはいえない(なお,本件公舎提供行為を報道した週刊誌(甲1の2)は,大澤が同女性を本件公舎に宿泊させたのは,昨年(平成22年)が30回,今年(平成23年)が13回に及ぶとしているが,仮にそうだとしても,これをもって,大澤が知人女性を同居させたとまで評価することはできない。)。
(2)次に,公舎は,「県が公務の円滑な運営を図るため,県に勤務する職員の居住に供する目的」で設置されるものであるところ(公舎管理規則2条),公舎が職員の居住の用に供される以上,当該職員が知人や友人を公舎に招いて接遇することは当然に想定されているものというべきである。したがって,知人を宿泊させたことをもって,直ちに公舎を目的外に使用したとはいえない。本件公舎提供行為が,婚姻外の交際相手を宿泊させたという点において道義的に不適切であったとの批判は免れないとしても,本件公舎提供行為が存在したことのみをもって大澤による公舎の使用が目的外で違法であるということはできない
(3)以上のとおり,本件公舎提供行為が,県に対する不法行為ないし不当利得に当たるとは認められない。
2 争点(2)(「正当な理由」の有無)について
(1)別紙1ないし6に記載のとおり,本件期間経過部分については,各財務会計行為である本件各契約の締結ないし本件各支出がされてから1年を経過した後の平成24年2月23日に住民監査請求がされたものである(本件各契約の締結日は明らかでないが,いずれも本件各支出前(別紙1の契約期間の少し前ころ)に締結されたものと祖語される。)。したがって,本件訴えのうち,本件期間経過部分に関する部分については,法242条2項ただし書の「正当な理由」がない限り,適法な住民監査請求の前置がないことになる。
(2)法242条2項ただし書にいう「正当な理由」の有無は,財務会計上の行為について,これが秘密裡にされたか,又は住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的に見て監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができない場合に,その後,住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたと解されるときから相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきである(最高裁昭和63年4月22日判決・裁判業民事154号57頁,同平成14年9月12日判決・民業56巻7号1481頁参照)。
(3)そこで,以下,本件各契約,本件各支出及び本件光熱水費等の支出の順に,これらの点について検討する。
ア 本件各契約について
 本件各契約に基づく工事ないし委託業務の内容は,本件公舎のフェンスの工事やブロック塀の補強などであり,工事前後の写真(乙1の6,2の4,3の5,6の3,7の3,11の3,14の2,17の3,18の3,20の3,22の1,23の3,24の4,25)及び弁論の全趣旨からすれば,本件公舎の敷地外からでも工事がされていることを了知し得たものと推認され,本件各契約が秘密裡にされたとは認められず,また,県の住民が,本件冬契約に基づく工事ないし委託業務が実施された後,相当の注意力をもって調査を尽くしても監査請求をするに足りる程度に本件各契約の存在又は内容を知ることができなかったとは認められない。
イ 本件各支出について
 別紙1「工事・委託業務一覧表」の15番,16番,22番及び24番以外の契約に基づく支出について住民が相当の注意力をもって調査を尽くした場合に,客観的に見て監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができた時期及び原告らが同時期から相当な期間内に監査請求をしたかどうかについて検討する。
(ア)証拠(甲1の2,甲5ないし15)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
 a 前提事実(2)のとおり,平成23年7月13日に発売された週刊誌は,同月8日に大澤がその知人女性を本件公舎に宿泊させた旨報じたものである。同記事には,要旨,「知事のために県庁近くに公舎が必要になり,従来の知事公舎は取壊し済みであったので,1400万円以上の改修費を費やして副知事公舎を本件公舎に改修したものであるが,この改修は,知事の知人女性を周囲の日から遮るためのものではないかという疑惑がある。」との記載がある。
 b 原告らは,上記報道を契機に本件公舎の改修及びそのための支出がされたこと等を知り,同月20日,被告に対し,「本件公舎の利用に関する一切の情報」を開示の対象とする公文書開示請求をし,同年10月21日,本件光熱水費等に関する文書などが開示されたが,本件各契約や本件各支出に関する文書はこれに含まれていなかった(公文書開示請求から開示までの期間は,3か月と1日間である。)。
 c このため,原告らは,同年12月19日,大澤に対し,「本件公舎に関して秘書課が管財課との間で提出或は受領した一切の書類」及び「群馬県知事公用車の運行に関する一切の情報」の開示を請求し,前者については平成24年1月4日に公文書不存在決定がされ,後者については同月20日に廃棄前の部分が開示され,これにより,本件各契約や本件各支出に関する文書も開示された(公文書開示請求から開示までの期間は1か月と1日間である。)。
(イ)前提事実及び上記(ア)で認定した事実によれば,県の住民は,平成23年7月13日の報道で,本件公舎の改修がされ,そのために1400万円以上の改修費が支出されていることを知ることができたものである。そして,原告らが同日ころに本件公舎の改修ないし改修費に関する公文書開示請求を行っていれば,遅くとも当初の公文書開示請求((ア)b)から開示までの期間(3か月と1日)経過後の同年10月14日ころには,これらに関する公文書の開示を受け,客観的に見て監査請求をするに足りる程度に本件各支出の存在又は内容を知ることができたものと推認することができる。
 そして,前提事実(5)のとおり,原告らが住民監査請求を行ったのは平成24年2月23日であって,上記本件各支出を知り得た日である平成23年10月14日ころから4か月以上経過していることからすれば,相当な期間内に監査請求がなされたものということはできない。
(ウ)以上のとおり,本件期間経過部分に関する住民監査請求については,住民が相当の注意力を持って調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたと解されるときから相当な期間内に監査請求がなされたということはできないから,「正当な理由」があるということはできない。
 原告らは,県が文書開示期限を故意に引き延ばしたこと等から,監査請求をするに足りる証拠資料の収集ができなかったので,「正当な理由」があると主張するが,本件全証拠によってもそのような事実は認められない。なお,原告らが平成23年7月13日にした公文書開示請求は,「本件公舎の利用に関する一切の情報」を対象とするものであったから,本件各契約や本件各支出に関する公文書が開示されなかったのは当然というべきである。
 したがって,原告らの主張は採用することができない。
ウ さらに,本件光熱水費等の支出のうち,平成23年2月23日より前にされたものについては,上記イ(ア)bのとおり,平成23年10月21日に「本件公舎の利用に間する一切の情報」として開示がされたものと認められる。よって,同日より4か月以上経過後にされた原告らの住民監査請求は,相当な期間内にされたものということはできないから,「正当な理由」があるということはできない。
(4)以上によれば,本件期間経過部分に関する部分については,法242条2項ただし書の「正当な理由」がないことになる。したがって,本件訴えのうち,本件期間経過部分に関する部分(別紙1ないし6の着色部分)については,適法な住民監査請求の前置がないから,不適法として却下すべきである。
3 争点(3)(本件各契約及び本件各支出の違法性)について
(1)上記1で述べたとおり,本件訴えのうち,本件15番,16番,22番及び24番以外の契約及びこれに基づく支出に関する部分については不適法であり却下すべきであるから,以下では,本件15番,16番,22番及び24番の契約に基づく支出についてのみ検討する。
(2)被告の権限について
 普通地方公共団体の長は,財産の取得,管理及び処分を担任するが(法149条6号),支出の原因となるべき契約その他の行為(支出負担行為)は,法令又は予算の定めるところに従いしなければならない(法232条の3)。そして,普通地方公共団体の支出は,その長が,会計管理者に対し,政令で定めるところにより命令することによってされる(法232条の4)ところ,普通地方公共団体の長は,当該支出負担行為が不適法である場合には,これに基づく支出命令を発するべきではない旨の注意義務を負うというべきである。
 したがって,普通地方公共団体がする支出に関し,これを命じた首長に不法行為法上の過失があるかについては,当該支出のみならず,その原因となるべき支出負担行為の適法性も検討されなければならない。
(3)本件公舎の管理等に関する専決権者
 本件公舎に関する事務は総務部管財課以外の課の主管に関するものであるとは認められず,公有財産である本件公舎の管理等に関する事務は,総務部管財課長(以下「管財課長」という。)の分掌事務であると認められる(公有財産規則7条2項,行政組織規則13条(管財課)3号)。そして,うち軽易な事項,具体的には,その他委託料として1000万円未満(新規分)又は3000万円未満(継続分)の支出の原因となる契約に関する意思の決定に係る事務並びにこれらに係る支出負担行為及び支出命令については,管財課長が専決権限を有している(財務規則,専決規程)。
(4)本件15番,16番,22番及び24番の契約について
 そこで,本件15番,16番,22番及び24番の契約が,管財課長の専決権限の範囲内において適法にされたものであるか検討する。
ア 本件15番及び16番の契約
(ア)証拠(乙15,16の1ないし4)によれば,別紙1「工事・委託業務一覧表」のとおり,本件15番の契約は,県が,群馬緑化株式会社に対し,本件公舎の庭園内の樹木,芝の維持管理業務を委託したものであって,平成20年度から継続してされている(本件15番の契約が平成22年度,本件16番の契約が平成23年度のものである。)ものであり,その委託料は,本件15番の契約が42万円,本件16番の契約が39万9000円であること,管財課長は,本件15番の契約については平成22年4月1目に,本件16番の契約については平成23年4月1日に,それぞれ契約を締結することについて決裁(専決)したことが認められる。
(イ)庭園の樹木及び芝を放置すれば,これらが荒廃して美観等の価値を損なうことは容易に想定しうる。よって,本件公舎の所有者である県が,樹木及び芝の維持管理等のための業務委託を行うことが財務会計法規に照らして違法であるということはできない。
(ウ)そうすると,本件15番及び16番の契約については,管財課長がその専決権限の範囲内で行ったものであり,また,これらによって県が負担した債務について管財課長が支出命令を行ったことも,専決権限の範囲内であるから,いずれも適法である。
 したがって,本件15番及び16番の契約の締結ないし支出は,いずれも適法にされたものであり,これらについて,大澤に不法行為法上の過失があるということはできない。
イ 本件22番及び24番の契約
(ア)証拠(乙22の1ないし3,24の1ないし3)によれば,別紙1「工事・委託業務一覧表」のとおり,本件22番の契約は,県が,群馬緑化株式会社に対し,本件公舎の庭園内のスモモにカイガラムシ等の病害虫が発生したため,その病害枝の伐採業務を新規に委託したものであり,その委託料は,2万4150円であり,本件24番の契約は,県が,群馬緑化株式会社に対し,本件公舎の庭園にアブラムシ等の病害虫が発生したため,その駆除及び植樹のせん定業務を新規に委託したものであり,その委託料は,8万0850円であること,管財課長は,平成23年6月3日,本件22番及び24番の契約を締結することについてそれぞれ決裁(専決)したことが認められる。
(イ)庭園内の病害虫や,それに感染したスモモの病害植を放置すれば,これが他の植樹に伝染等し,枯死するなどして価値を損なうことは容易に想定しうる。よって,本件公舎の所有者である県が,樹木及び芝の維持管理等のための業務委託を行うことが財務会計法規に照らして違法であるということはできない。
(ウ)そうすると,本件22番及び24番の契約については,管財課長がその専決権限の範囲内で行ったものであり,また,これらによって県が負担した債務について管財課長が支出命令を行ったことも,専決権限の範囲内であるから,いずれも適法である。
 したがって,本件22番及び24番の契約の締結ないし支出に関し,大澤に不法行為法上の過失があるということはできない。
(5)以上のとおり,本件15番,16番,22番及び24番の契約の締結及びその支出命令は,いずれも管財課長がその専決権限の範囲内において適法にされたものであるというべきであるから,これらについて,大澤に不法行為法上の過失があるということはできない。
 したがって,この点に関する原告らの請求は理由がないので棄却すべきである。
4 争点(4)(本件光熱水費等を県が支出したことの違法性)について
(1)上記1で述べたとおり,本件訴えのうち,本件光熱水費等の支出のうち,本件期間経過部分に間する部分は不適法であるから,以下では,同日以降の支出(以下「本件2月23日以降の支出」という。)について検討する。
(2)ア 公舎の電気,ガス,水道等の料金について,特別の事情があって知事が必要と認めた場合には,使用者負担の例外として,県がこれを負担することとされており(公舎管理規則9条ただし書。以下「一部負担制度」という。),この使用者負担の例外を認めることについては総務部管財課長が専決権限を有する(処務規程,専決規程)。
イ 証拠(乙29,30の1,30の2)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(ア)群馬県では,昭和44年から水道光熱水費について,昭和46年から電話使用料について,平成17年からインターネット接続代について,一部負担制度をそれぞれ採用し,度々,公舎使用者の負担額を改定していた。
(イ)総理府統計局(当時)「家計調査報告」の「前橋市勤労者1世帯当たり1か月間の光熱水費調」によると,昭和56年2月から昭和57年1月までの光熱水費の月平均額が1万2431円であったことなどから,本件公舎の水道光熱費のうち,自己負担額の上限は,昭和57年4月1日,本件公舎の使用者の負担額の上限を1万2400円と決定されたが,平成元年の消費税法の導入及び平成9年の税率の引上げにより,平成9年5月1日以降,1万3000円と定められた。
(ウ)平成16年度総務省統計局「家計消費状況調査」の関東地区・平均全世帯平均の固定電話使用料が3735円であったことから,平成17年11月1日以降,本件公舎の電話使用料のうち,自己負担額の上限は,3700円と決定され,この金額は,その後変更されていない。
(エ)管財課長は,平成22年4月1日,本件公舎の個人加入のインターネット接続代等の全額については自己負担とし,これ以外の分については県費負担とする旨の決裁(専決)をした。
(オ)大澤は,上記(イ)ないし(エ)で定められた負担額に従い,別紙7「経費(光熱水費等)支出額一覧(平成19年12月~平成23年7月)」の「自己負担額」欄に記載の額を負担し,県は,同別紙の「県負担額」欄に記載の額を負担し,これを支出した。
ウ 電気,ガス,水道等の料金は,当該公舎の使用によって利益を受ける当該公舎の使用者が負担するのが原則であるが,当該公舎が公務にも使用される場合には,その費用の一部を県が負担することには合理的な理由があり,一部負担制度がもうけられた趣旨はこのような理由に基づくものと解される。そして,公舎の使用者と県の間での具体的な負担割合については,処務規定等には具体的な規定がないから,管財課長が使用者費用負担の原則に反しない限度で合理的に決定する権限を有するものと解される。
 これを本件についてみると,上記イ(イ),(ウ)のとおり,知事が負担すべき水道光熱費及び固定電話使用料は,総理府総務省統牡局が作成した統計資料上の世帯平均の水道光熱費及び固定電話使用料とほぼ同一額となるように定められており,世帯平均の水道光熱費及び固定電話使用料は,知事が本件公舎を使用することにより受ける利益の基準となるべきものと考えられるから,これを基準として知事の負担額の上限を定め,その余を県の負担と定めることには合理的な理由がある。
 そして,平成22年まで,世帯平均の水道光熱費及び固定電話使用料が著しく変動したり,管財課長が本件各支出がされた年度における一部負担の決定をするに当たって統計資料等を参照しなかった等の事情は認められない。そうすると,管財課長が,上記イ(イ),(ウ)によって定められたところに従って負担額の決定をしたことは,使用者が居住することによって受ける利益と県が公務によって受ける利益を考慮されずにされたものであるとはいえない。
 よって,管財課長による負担額の決定について,裁量の逸脱又は濫用があったとはいえず,適法であるというべきである。
 そして,上記圀のとおり,大澤は,本件入居期間における本件光熱水費等のうち,毎月,光熱水費を1万3000円,電話使用料を3700円支払っていたものであり,その余を県が負担していたのであるから(なお,大澤個人加入のインターネット接続代が発生したことを認めるに足りる証拠はない。),本件2月23日以降の支出は,管財課長による負担額の決定に従ったものであり,適法というべきである。
(5)以上のとおり,本件2月23日以降の支出は,いずれも管財課長がその専決権限の範囲内において適法に行ったものであるというべきであるから,これらについて,大澤に不当利得があるということはできない。
 したがって,この点に関する原告らの請求は理由がないので棄却すべきである。
5 結論
 以上によれば,本件訴えのうち,本件各契約及び本仲冬支出並びに本件光熱水費等の支出のうち,本件期間経過部分は適法な住民監査請求の前置がないから不適法であって却下すべきであり,その余の部分については大澤に不法行為法上の過失ないし不当利得はなく,いずれも理由がないから棄却すべきである。
 よって,主文のとおり判決する。
   前橋地方裁判所民事第1部
       裁判長裁判官    大 野 和 明
          裁判官    佐 伯 良 子
          裁判官    毛 受 裕 介
**********

■こうして、全国の都道府県に先駆けて、群馬県の行政トップの大澤正明・県知事が、20年来交際している愛人を、あろうことか群馬県民の血税で整備され、運営されている公舎に頻繁に連れ込んで宿泊させていた件は、公舎管理規則において禁じている「職員と生計を一にする者以外の者(使用人を除く)を同居させること」に抵触しないという画期的な判断が出されたのです。

 つまり、愛人を公舎に何度も引き入れても、常に善良な管理者として使用していると判断され、公舎管理規則に違反することはありません。とくに単身赴任で公舎を利用している職員にとっては、異性の友達や愛人、さらにはホステスやホストを公舎に連れ込んで宿泊させても、違法ではないため、わざわざシティホテルやラブホテルを使う必要はもうないのです。

 このように、裁判所が公舎管理規則をきちんと判断して、判決として出したことで、役所の職員にとっては、非常に福音となる裁判結果となりました。

 取り急ぎ、前橋地裁の画期的な判決について、皆様にご報告しました。公務員は血税で公社をラブホテル化して、そこに生計を一にする家族ではない別の人物(愛人を含む)を宿泊させても、とくに問題は無い、という、非常に大胆な判断をしたことになります。

■なお、市民オンブズマン群馬では、「こんな画期的な判決が出たのだから、もう争う必要はないだろう」とか、「やはり、このままでは全国の笑い物になるので、徹底的に違法不当行為を是正する意味でも、控訴すべきだ」などという意見がでています。慎重に判断の上、控訴も視野に入れた対応をとろうとしています。

【市民オンブズマン群馬からの連絡】


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明日はいよいよ大澤知事の不倫による知事公舎目的外使用等事件の判決日

2013-02-26 23:53:00 | 県内の税金無駄使い実態
■78年前のきょう、1936年2月26日は2.26事件として、歴史に刻まれた日でした。今日のNHK総合テレビの午後9時のニュースで、2.26事件で鈴木貫太郎侍従長(当時)が襲撃された際に、襲撃の現場にいて一部始終を目撃した「たか」夫人が、戦後、昭和40年代に若い人たちに対する後援会で当時の様子を生々しく語った肉声テープが最近たまたま発見されたことが報じられました。


 2.26事件当時の襲撃の様子と、たか夫人が鈴木貫太郎が青年将校らに襲われた先に、拳銃で撃たれた鈴木に対して、青年将校らが止めを刺すことをとどまらせた経緯については本項の末尾を参照してください。

 ニュースでは、鈴木貫太郎の生い立ちや、終戦前に首相になったこと、そして戦後の暮らしぶりなどを紹介していましたが、生立ちの紹介で、前橋市の桃井小学校が取りあげられました。その際、同校の児童たちや、出身者のコピーライターの糸井重里氏のインタビューの模様が紹介され、母校の生んだ偉人とも言うべき鈴木貫太郎のことについてコメントがありました。

桃井小学校児童のコメント。大澤知事にも見習ってほしいものだ。



 最後に印象的だったのは、現在も母校である前橋市の桃井小学校の校門の脇にある石碑に残されている「正直に 腹を立てずに たゆまず励め」という鈴木貫太郎の遺訓の言葉でした。

これはたか夫人の所蔵していた鈴木貫太郎の遺訓の色紙。「たゆまず」のところは「撓まず」と漢字で表現している。「弛」でなく「撓」の字を用いていることから、戦中、戦後の動乱期を強い意志を持ってリードした生きざまがあらわされている。

■鈴木貫太郎は1868年(慶応3年)に和泉国大鳥郡(現在の大阪府堺市中区)に関宿藩主の長男として生まれ、1871年(明治4年)に本籍地の千葉県東葛飾郡関宿町(現・野田市)に居を移し、1877年(明治10年)、群馬県前橋市に転居し、厩橋学校(現在の桃井小学校)、旧制前橋中学(現在の前橋高校)、攻玉社を経て、1884年(明治17年)に海軍兵学校に入学。日清戦争に従軍後、1898年(明治31年)海軍大学校を卒業し、海軍にはいり、1904年(明治37年)から始まった日露戦争では、駆逐隊司令として戦い、日本海海戦の大勝利に大きく貢献しました。その後、ドイツ駐在を経て、1914年(大正3年)海軍次官、1923年(大正12年)、海軍大将となり、1924年(大正13年)に連合艦隊司令長官、翌年海軍軍令部長に就任しました。1929年(昭和4年)に昭和天皇と貞明皇后に懇願され侍従長に就任し、1936年(昭和11年)に2.26事件に遭遇したのでした。

 そして、時代が移り変わり、2.26事件から78年経過しました。そして明日、同じく前橋市内にある地方裁判所で、群馬県行政のトップである大澤正明知事の不倫による知事公舎目的外使用等にかかる裁判の判決が下されます。

■戦争を始めたのは、熱しやすい我が国の国民性から割合簡単でしたが、それゆえに終わりにするのは非常に困難な作業でした。日本が存亡の瀬戸際にあった第二次世界大戦の終戦という処理に携わった偉大な人物を輩出した前橋市の桃井小学校ですが、大澤正明知事は、なんと、子どもたちの通う桃井小学校の目の前の知事公舎で、週末に頻繁に愛人を引っ張り込んで逢瀬を続けていました。そして、その公舎には、子どもたちからの目隠し用としてなのか、かさ上げしたフェンスや、サンゴジュなどの植栽、リモコン式の入り口ゲートなどが、我々群馬県民の血税をつぎ込んで、整備されていました。

 こうして、鈴木貫太郎の偉業に泥を塗り、小学生らに不倫と公金の目的外費消などの反社会的な行為の反面教師となった、我らが大澤正明群馬県知事のとった対応は、当然、前橋地裁の裁判官から、しかるべき判決により処分が行われることが期待されています。

 しかし、この群馬県だけは、何が起きるか分からない土地柄ですので、予断は禁物です。明日午後1時10分の判決後、市民オンブズマン群馬では午後3時から県庁5階の刀水クラブで記者会見を行う予定にしています。

【市民オンブズマン群馬事務局からの連絡】

※参考情報
**********
幣原喜重郎・自伝「外交五十年」(読売新聞社、1951年)
「鈴木貫太郎夫妻」(281~282ページ引用)。
 鈴木貫太郎君は二・二六事件(昭和十一年)の遭難者の一人であった。私は当日難を鎌倉に避けていたから、彼の遭難の事を知らなかった。鈴木君と私とは、彼は海軍次官、私は外務次官だった頃からの知合いで、何か問題が起ったとき、よく二人の意見が合ったので、それから非常に懇意になった。事件の後、私は東京の家〔六義園〕に帰り、彼は負傷もどうやら癒った〈ナオッタ〉ので、ブラブラ歩いて私の家へ来た。そして遭難当時の詳しい話をしてくれた。以下彼の生々しい直話〈ジキワ〉。
 夜中に何だか騒々しい音がする。人がどやどや入って来る気配である。鈴木は寝床を跳ね起きて、そこへ行って見た。鉄砲を持った七、八人の兵隊と一人の指揮者が入って来た。「君らは何だ」というと、「済みませんけれども、閣下の生命を頂戴に参りました」という。鈴太は「よしッ、それなら少し待て」といって、引返して奥へ入った。
 奥の室には、切味〈キレアジ〉のいい日本刀が刀架にかけてある。それを取りに行ったのだ。鈴木はどうせやられるにしても、斬れるだけ斬ってやろうと、刀を取りに行った。ところが幾ら探しても、刀架はあるが、懸けて置いた筈の刀が見えない。これは後になって判ったのだが、その刀のなかったのは、部屋に置いて埃〈ホコリ〉がつくので、奥さん〔たか夫人〕が前の晩にそれを倉の中にしまったからで、鈴木はそれを知らなかったのである。
 あちこち探したが、刀はない。ぐすぐすしていて、あいつ卑怯にも裏から逃げたと思われては、一生の名折れだ。
「よしッ」と素手で出て来て、
「君らの見る通り、オレは何も手に持って居らん。やるならやれ!」
といって、立ったまま両手を拡げた。すると中隊長は中尉ぐらいだったが、「最敬札!」と号令して兵隊たちに鈴木に敬礼させた。そして続いて、「射て」と号令した。バンバンと銃声がして弾丸が頭にあたったので、鈴木はそこヘバッタリ倒れた。
 そのとき、偉いのは奥さんであった。流石〈サスガ〉は武人の妻で、少し離れたうしろの方にキチンと坐って、ジッと良人〈リョウジン〉の最後を見届けていたという。射撃が終ると、一人の兵隊が倒れた鈴木の側へ寄って、脈を見ていたが、「脈があります、止め〈トドメ〉を刺しますか」と隊長にいった。隊長は、「それには及ばん」といって、倒れた鈴木に対して、また最敬札をさせた。そしてそこに鈴木夫人が端然と坐て〈スワッテ〉いるのを見ると、今度は夫人に最敬礼をしたうえ、
「奥さん、誠に済みませんでした。私は御主人に対して何の恨みもないのです。むしろ私は個人としては、御主人を尊敬しておったのです。しかしこういう事になったのは、私の力が及ばなかったからです。奥さんをこういう目にお遭わせして、本当に済みません」と、さんざん詑びをいって、帰り際にまた鈴木と奥さんに最敬礼して引揚げて行った。後に残った奥さんは、字はどう書くか知らんが、セイキ術とかいうものを心得ていたので、血がドクドク出て来る鈴木の傷口ヘ手を当てていた。すると二、三十分で出血が少なくなった。そのうち医者が駈けつける、手術をする、それで鈴木は九死に一生を得たのであった。
**********

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平成24年12月19日頃から続いていた板鼻地区の蟹沢での残土埋立作業現場からのリポート

2013-02-25 23:31:00 | 全国のサンパイ業者が注目!
■年明けの1月11日に、安中市板鼻地区の住民の方から通報があり、蟹沢の上流の窪地に大量の土砂が得体の知れない大型ダンプで連日搬入されていることが分かりました。さっそく1月12日(土)の朝、放射能を測定する線量計を持って、現場に向かいました。

古城団地入口の交差点信号。

 県道171号線(旧・国道18号線)の古城団地入口の信号を入りました。

古城団地に上る道。

 2日前の1月9日には古城団地に上る道路の両脇に黒塗りのダンプカーがズラリと並んでいたそうです。なぜなら、古城団地に上る途中から左手に数百メートルほど入った場所が埋め立て場所ですが、道が狭くダンプカーがすれ違えないため、土砂を捨ててきたダンプが下りてくるのを待つ必要があったためでした。

 埋立て現場に到着すると、「残土埋立地 お問い合わせ 080-5892-2303」と縦に書かれた看板が左側に立っていました。そこから先は舗装が切れて、鉄板が敷き詰められていました。近くに群馬ナンバーの黒塗りのベンツ2台のほか、現場の奥のほうでは、だいぶ使い込まれたブルドーザー2台、これまた年季の入ったユンボト呼ばれるバックホーがエンジン音を唸らせながら整地作業をしていました。

ダンプの荷降ろし場とバックホー。1月12日撮影。

 ダンプが向きを変えて、荷台を谷に向けるためにダンプが向きを変える場所にも鉄板が敷き詰められていました。その近くに、「マルヨ建設」と側面に書いてあるプレハブ事務所様のコンテナがおいてありました。

マルヨ建設と描かれたプレハブコンテナ。

 現場で写真を取っていると、下にいた現場の担当者らしい小太りの若い男がこちらに向かって息せき切って上ってきました。それから現場の様子について質問をしました。応対は丁寧でしたが、具体的な質問に対しては、よくわからないという回答が気になりました。詳しい話はここに電話してほしい、と携帯電話番号090-8038-4352(ヨコオ)を教えられました。

黙々と作業するバックホー。

 現場の担当者に、「搬入した残土の放射線量を測定してもいいですか」と聞くと、OKが出ました。いろいろ質問しながら付近の空間放射線量や土砂の表面放射線量を測定しました。特に放射線量が高いということはありませんでした。

放射線レベル測定中。バックホーを使って残土を埋めるというより、山土と一緒に攪拌しているという感じ。

 担当者の説明は概ね次のとおりでした。
 ・埋立てをしている会社はACMDという高崎の会社。
 ・先日(1月8日)に警察が来たので説明した。警察では写真を撮って行った。
 ・安中市にはきちんと報告をしている。安中市でも線量計をもって測定しにやってきた。
 ・残土には石灰が混ざっているが、その他にはなにも混ざっていない。
 ・ダンプが来るのはどこだかよくわからないが、その日の朝5時ごろになって、その日何台入るという連絡が電話で来るそうだ。
 ・埋立てが完了した後は果樹園になると聞いている。
 ・何か問題があれば、地元の区長を通じて言って欲しい。そうすればダンプの入る次官を調節する。
 ・区長からは「この辺は子どもがいないから大丈夫だ」と言われている。
 ・今週から搬入道路の掃除もしている。

線量計は0.11マイクロシーベルトを記録した。とくに放射能の問題はなさそう。

 既に相当量の残土が搬入されて埋め立てられている様子がうかがわれますが、埋立後の予想図がないので、どの範囲でどれくらいの高さまで埋め立てるのかも分かりません。おそらく既に数百台のダンプがそれまでに残土を運び込んだような感じがしました。

若干ベータ線は検出された。

くぼ地にたまった水が寒さで氷が張っている。

■残土と呼ばれる建設発生土は、谷間の埋立て・低地の嵩上げ・農耕地への客土など土地の有効利用や不動産価値を高めるための貴重な資材です。しかし、心ない一部の業者が廃棄物を混入させたり、選別しなかったりすることなどによって、土壌汚染や地下水汚染などの地質汚染問題が懸念されています。残土への廃棄物の混入は、故意にしても過失にしても、廃棄物処理法違反となります。適正に行おうとする残土処理と混同してはなりません。

 現在の残土に関する国段階の規定では、平成13年6月1日付け、環廃産第276号で環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長から各都道府県・各政令市産業廃棄物行政主管部(局)長あてに通知された「建設工事等から生ずる廃棄物の適正処理について」が基本事項となっています。

 残土処理と関連性の強い事項として、「土砂は廃棄物処理法の対象となる廃棄物ではないこととされているが、建設工事等に係る掘削工事に伴って排出されるもののうち、標準仕様ダンプトラックに山積みができず、またその上を人が歩けない状態のものは、廃棄物処理法第2条第3項に規定する汚泥として扱われること。」と規定されています。

 また、有害物質に関連する部分には、「建設汚泥を中間処理(焼成、固化、脱水、乾燥及びセメント・石灰等による安定処理等)し、その性状を改良したものを、土質材料として利用する場合には有害物質が含まれてはならない。したがって、利用に先立ち、汚泥の再生利用認定に係る金属等の基準(平成9年12月26日厚生省告示第261号)を満足していることが必要となる。」と規定されています。

■また、国交省では残土のことを「発生土」と呼び、「建設工事に伴い副次的に発生する土砂や汚泥」と定義しています。

 このうち「建設発生土」は、建設廃棄物処理指針(廃棄物処理法による分類)により「建設汚泥以外の土砂・地山掘削により生じる掘削物・浚渫土」とされ、次のように区分されます。
<土質区分基準による区分>
区分:第1種建設発生土、性状、強度:礫及び砂状
区分:第2種建設発生土、性状、強度:コーン指数800kN/㎡以上
区分:第3種建設発生土、性状、強度:コーン指数400kN/㎡以上
区分:第4種建設発生土、性状、強度:コーン指数200kN/㎡以上

 一般的には、この建設発生土を「残土」と呼んでいて、その字義の通り建設作業において、基礎工事など全工程の比較的初期の段階で多く発生し、その計画における建設現場では使用用途がない土のことです。建設発生土は、廃棄物処理法に規定する廃棄物には該当しません。しかし、産業廃棄物に該当するものが混入している場合は、それを取り除かなければ、産業廃棄物に該当します。

 また、「建設汚泥」は、建設工事に係る掘削工事から生じる泥状の掘削物及び泥水のうち廃棄物処理法に規定する産業廃棄物として取り扱われるもの、とされており、建設廃棄物処理指針(廃棄物処理法による分類)によれば「標準仕様ダンプトラックに山積みできず、その上を人が歩けないような流動性を呈する状態のもの。おおむね200kN/㎡以下。なお、地山の掘削により生じたものは土砂」とされ、次のように区分されています。
<土質区分基準による区分>
区分:泥土、性状、強度:コーン指数200KN/㎡未満

■国交省による発生土の現在までの対策については次の流れを経てきています。

H06.7 発生土利用基準(案):
     ・建設発生土の分類を詳細に示した「土質区分基準」の作成
     ・土質区分ごとの利用用途の目安を示した「適用用途標準」の作成
 ↓
H11.3 建設汚泥再生利用技術基準(案):
     ・建設汚泥の処理土の「品質区分」の明示(発生土の土質区分基準と同等)
     ・品質区分ごと利用用途の目安を示した「適用用途標準」の作成(発生土の適用用途標準と同様)
 ↓
H16.3 発生土利用基準:
     ・旧運輸も対象に発出、地方自治体へ参考送付
     ・土質区分基準:新たな基準(土質名の変更)等の反映
     ・適用用途標準:発生土の利用促進のための凡例、留意事項の見直し
 ↓
H18.6 建設汚泥の再生利用に関するガイドライン/建設汚泥処理土利用技術基準:
     ・適用用途標準:建築物の埋め戻し、鉄道盛土、空港盛土の追加

■建設発生土に関する今後の方向性としては、「建設発生土等の有効利用に関する行動計画」(H15.10.3策定)の実施、すなわち
 ・公共工事土量調査の実施
 ・建設発生土等の指定処分の徹底
 ・建設発生土等の工事間利用の促進等
が目標とされていますが、H14の時点では建設発生土の利用率は65%でした。これを目標のH22には建設発生土の利用率を95%まで引き上げる計画でした。実際に「利用土砂の建設発生土利用率」は次のように少しずつ上昇していますが、これは公共工事のみの値です。
  H07年度  32%
  H12年度  62%
  H14年度  65%
  H22年度  目標値95%

 いずれにしましても、政府では「発生土の利用用途を拡大し、発生土の有効利用を促進する必要がある」と結論付けています。

■こうした中で、お粗末な環境行政で知られる我らが群馬県では、残土に関する規制はどのようになっているのでしょうか。これに関連して昨年12月に次の報道がされています。

**********産経新聞2012年12月.7日
「早期制定目指す」 残土条例で群馬県
 県は残土条例の制定に向け準備を急いでいる。建設工事などで発生する大量の土砂の堆積を規制するもので、6日開かれた県会環境農林常任委員会で山口栄一環境森林部長は「警察との協議もあり、2月(県会条例案上程)は無理だが、可能な限り早期の制定を目指す」と答弁した。
 土壌汚染や土砂崩落による災害、廃棄物混入による不法投棄などが懸念されるため、関東地方では東京と群馬を除いた各県が土砂の埋め立てを規制する条例を制定している。一定の面積以上の持ち込みについては知事の許可が必要とし、罰則規定も設けられている。
 県内では藤岡市など4市町で制定しているだけで、昨年7月に行った市町村の意向調査では22市町村が県条例の制定を望んでいる。
 この日の委員会では、水野俊雄委員(公明)が関東エリアで群馬が制定していなかった点を質問。
 飯塚幸生廃棄物・リサイクル課長は「県民生活に重大な支障をもたらす事案がなく、進んだ法律整備により現行法体制で対応できると判断した」と説明した上で「関東近県の規制が強く、群馬に残土の持ち込みが集中する可能性がある。予防的措置が必要」と現時点での条例制定への背景を述べた。
**********

■この記事の中で、群馬県内で残土条例を制定している4市町とあるため、群馬県環境森林部廃棄物・リサイクル課不法投棄対策係(電話027-226-2865)に聞いてみました。現在県下で残土条例を持つのは藤岡市、桐生市、邑楽町、板倉町だけだそうです。

 ということは、群馬県にも、そしてサンパイ場計画が目白押しで、今回の板鼻の残土埋立て現場のある我らが安中市にも残土条例がない、ということです。

 前述のとおり、建設発生土は利用基準により、その土の特性に応じた適用がなされ、コーン指数(土の固さを示す指数)、含水比、粒子の大きさなどの基準で判定が行われます。これにより埋立て工事等、その土の特性に最適な再利用がなされます。大きな区分として第1種から第4種までの建設発生土および泥土の5段階があり、工作物の埋め戻し、土木工事の裏込め、道路工事の盛土に使用できる基準区分があります。また石灰を混ぜるなどして改良土として生まれ変わる場合もあります。

 現在、公共工事においては、現場から出る建設発生土を有効利用するために、購入山砂はなるべく使用せず個々の工事間で建設発生土の流用を図ることを原則にしています。また、建設発生土を埋め立てに利用しようとする場合は、県や市町村によっては、いわゆる残土条例により適切な埋立てが求められるほか、農地法など関係法令を遵守して行わなければなりません。

 関東地方では、群馬県以外の栃木県(平成11年4月施行)、茨城県(平成16年4月施行)、千葉県(平成10年1月施行)、東京都(平成13年3月施行)、神奈川県(平成11年3月制定)、埼玉県(平成15年2月施行)というふうに、各都県で既に残土条例が施行されています。残土条例がないのは我らが群馬県だけです。だから、県外から得体の知れない残土がこうして持ち込まれる温床があるのです。

■群馬県が残土条例を制定する動きがあることを察知したのかどうか分かりませんが、板鼻の蟹沢上流の残土埋立現場も、駆け込みを狙ったものかもしれません。残土条例を持たない安中市が板鼻のこの件でどのような対応をとったのか、情報公開条例で関係文書を入手してみました。

**********
【公害発生事案報告処理簿】
稟議:部長・- 課長・竹田 係長・真下 係・横田 供覧・須藤・中島・小柏・木村
     公  害  の  種  類
大気汚染・水質汚濁・騒音・振動・地盤沈下・悪臭・土壌汚染・不法投棄・その他
受付年月日 平成24年12月19日
受付者氏名 真下
時間    午前・午後3時30分
受付方法  来庁・電話・調査・その他
公害・苦情申出者(代表) 住所 板鼻地区第1区区長
             氏名 富澤敬文
             電話番号 382-5921
公害の種類 被害内容 富澤区長が都市整備課に連絡し、都市整備課島崎主任が現地を確認し開発の関係を調べるが面積が少なく開発に関係なく、区長が汚染土の搬入を心配していることで環境推進課に連絡があった。
苦情の発生源場所等 所在地 安中市板鼻地番不明
          氏名  
          業種
          電話番号
調査年月日 平成24年12月19日  時間 午後4時
調査者氏名 真下、横田
調査状況  現場を確認すると、重機で山を切り崩していた。
処理状況  12月19日午後4時に現場の責任者エーシーエムディー(株)■■工事部長に話を聞く。この工事は山の窪い所に土を入れて平にする造成工事を予定していて地権者の了解を得ているとのこと。搬入する土が放射能等の汚染土が入ることを地元区長が心配していることを伝えると、現在東京等の土を県外に出す場合は成分分析等厳しい検査がありそのような汚染土が入ることはないと話していた。また、区長に対しては今度の日曜日にあいさつに行くつもりであるとのこと。造成後は何に使うのかを確認すると、特に予定はなく造成するだけであるとの話しであった。
 同日4時30分に、富澤区長宅に訪戸して奥さんに事情を説明した。


残土埋立業者ACMD㈱の事務所が2階にある高崎市芝塚町の㈱ランドホーム。㈱プロジェクトも同じくこの1階にある。
【業者の名刺】A.C.M.D.
      エーシーエムディー㈱
      工事部長 ■■■■■■■■■
           〔■■■■■■■〕 ←携帯電話番号
〒370-0064 群馬県高崎市芝塚1879-5 2F
       TEL:027-345-7255 FAX:027-345-7256



【現場地図】

**********

市役所が現場を特定する為に地図にマークしたのはここらしい。

■1月中に早朝6時20分ごろ、国道18号線を高崎方面に走ると、黒塗りのダンプカーをよく目にしました。おそらく板鼻の蟹沢の残土埋立現場で残土を捨てて埼玉方面に戻るのでしょう。

 その後、現場がどうなっているのか、2月23日に再訪しました。入口にはロープが張られていましたが、弛んでいて、車で乗り入れれば入れそうでした。しかし、敷き詰められていた鉄板はなく、土の地肌が露出していました。

現在(2月23日)の残土埋立現場入口の様子。

埋立地直下の桑畑。


↑下から見上げたところ。右手から堰堤が延びている。


 ちょうど、堰堤を築こうとしている途中らしく、北側から半分ほど構築されていました。

 以前、配水地のあった場所から見下ろすと、その模様がよく分かります。グーグルマップで見てみると、元の地形はかなりくぼんでいた様子が分かります。その長さ130m、幅80m深さ10m程度のくぼ地の半分近くは埋め立てられているので、既に2.5万立方メートルのうち少なくとも1万立方メートルほど残土が搬入された勘定になります。単純計算で優に1000台以上のダンプが残土を運んできたことになります。



入口の弛んだロープ。

堰堤の上に鉄板が置いてある。

まだまだ埋め立てる余地がありそう。


↑農地法の許可手続中で作業が小休止なのかは不明。安中市は何でもありだからお咎めなしかも。


上から見下ろした様子。堰堤がよく分かる。

 行政情報によれば、現場の入口の土地が農地であることが指摘されたため、農地法違反ということで、現在のところ途中で残土搬入はストップしているようです。

 一方、群馬県環境・リサイクル課不法投棄対策係(いわゆる、サンパイ110番)によれば、通報により現場を見に行って調べたが、(農地法は別として)特に違反行為は見当たらないとのことでした。その理由として、残土条例がないため、他の都県では違反していたとしても、群馬県では違反でないため、見過ごすしか仕方がなかったのかもしれません。

古城団地側から見た残土埋立地。

■それにしても、安中市の対応はあきれ果てます。なにしろ、区長からの通報で現地を調べた報告書には、現場がきちんと特定されておらず、埋め立てている土地の番地も記載がなく、農地法違反の疑いについても少しも言及がありません。

 安中市の北野殿地区の公共事業で発生した残土を、業者に指示して自分の親族の土地にタバコ銭で埋め立てさせた御仁が市長をしているくらいですから、押して知るべしかもしれません。

【平成25年3月21日追記】

上越新幹線で高崎駅から本庄早稲田駅に向かう途中、Max号2階席から右手を見ていると、神流川を渡り埼玉県児玉郡上里町に入り関越自動車道と交差する手前で、上里町立七本木小学校の校舎の裏の畑が2箇所大規模に掘削されている。同町産業振興課(電話0495-35-1232)に確認すると「農地の所有者が一時転用申請をしたあと、砂利採取業者が入って工事を行っている。一応必要な手続を踏んでいる」とのこと。実際には、この砂利が首都圏の工事現場で新築の土木建設工事に使用され、砂利を掘り取った大きな穴には、藤岡市や安中市など群馬県の山間地の山土が埋め込まれ、その山土を掘り取った後に、首都圏の工事現場で解体、撤去されたガレキ等産業廃棄物が埋め込まれるという「産廃トライアングル」が存在するといわれている。今回の板鼻の残土搬入では、山間部の窪地に直接、“残土の様なもの”が持ち込まれた形になる。

【平成25年4月12日追記】
 この板鼻の残土搬入にかかる農地法違反問題については、たまたま平成25年2月25日開催の平成25年度第2回安中市農業委員会において審議されています。安中市HPに掲載されている議事録の中で赤字で示してあります。これを見ると、農地法違反をしても、「手続を知らなかった」として、後付けで申請すれば許可を得られることが分かります。2月25日に許可がおりたことから、既に板鼻の現場では、一旦中断していた残土搬入作業が再開されたと考えられます。
***********
平成25年第2回安中市農業委員会議事録【部分開示】
http://www.city.annaka.gunma.jp/noui/gijiroku/h25-2.pdf
1 開催日時 平成25年2月25日(月) 午前11時00分~午後1時47分
2 開催場所 安中市役所委員会室
3 出席委員(30人)
1番 古谷正義
2番 丸山征二
3番 有坂充子
4番 土屋智則
5番 清水尚幸
6番 小板橋新平
7番 須藤幸男
8番 伊藤彰二
9番 須藤房二
10番 田村佳孝
11番 佐藤重義
12番 白石一平
13番 白石力
14番 神澤日保
15番 内田忠雄
16番 原俊幸
17番 萩原英世
18番 高林一郎
19番 磯貝
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伊勢崎市内で2月17日に盛大に開催された群馬県台湾総会新年会

2013-02-24 22:56:00 | 国内外からのトピックス
■台湾や中国は、新年を旧暦で祝います。今年は2月10日(日)が元旦でした。台湾では正月休みは1週間続きます。ことしはちょうど元旦が日曜日で正月休みが平日続いたため、例年になく盛大に新年が祝われたようです。我らが群馬県に在住する台湾出身者によって構成される群馬県台湾総会の新年会=新年盛会は、正月休みの最後にあたる2月17日(日)に伊勢崎で盛大に開催されましたので、その模様をご報告します。


 群馬県台湾総会による恒例の新年盛会は、2月17日(日)正午から伊勢崎市のプリオパレスで開催されました。今年は約110名のかたがたが参加して、賑やかに執り行われました。また、来賓として、台北駐日経済文化代表処の代表の沈斯淳ご夫妻、王・秘書、僑務課の文君妃・秘書、地元の五十嵐清隆・伊勢崎市長、山本龍・前橋市長、伊藤純子・伊勢崎市議、古賀友二・伊勢崎市国際交流協会会長、古澤朗夫・伊勢崎市民団体ICI21会長ら多数が出席しました。

■日本語、台湾語、中国語、英語を自在に操る林副会長の名司会により新年盛会がスタートしました。


 次に、余沢理事の開会の挨拶が日本語でありました。その中で、日台の経済文化交流の進展について触れられ、高校生同士の修学旅行の相互交流や、群馬県知事が昨年12月中旬に台湾の彰化県と台中市を訪問し、経済分野のパートナーシップ協定を結び群馬県の温泉など観光PRをしたことを紹介しました。


 続いて、オープニングを飾り、アトラクションとして前橋市の上増田町八木節会の皆さんによる八木節の演奏と演舞が行われました。後半の女性の歌い手は全日本八木節大会のチャンピョンということで、会場は美声に聞き惚れました。また、カラフルな菅笠等を使った振付も素晴らしいものでした。


■その後、群馬県台湾総会の頌彦会長の挨拶があり、昨年の会の行事に参加していただいた会員にねぎらいの言葉があり、また会に支援をしていただいている来賓への謝辞がありました。そして、国際交流や親睦会、地域での活動などを通じて引き続き会の活動を継続する決意が述べられました。最後に、「小さな集まりですが、日本における台湾の会の新春を迎える新年会を一緒に楽しんで頂きたいと思います」と結びました。


 続いて、来賓の挨拶として、台湾政府の台北代表処の沈代表による挨拶がありました。最初と最後に、現在学習中とご自分では言いつつも流暢な日本語での挨拶があり、メインの挨拶は中国語で行われました。挨拶の中で沈代表は、台日の関係が深化し、その具体例として台湾と日本の航空自由化協定(オープンスカイ)で、航空路線は350便に増えて、今年3月から高松市に新たに新路線が開設される予定で、今年の台日往復人数は300万人が予測されること、また今年もっとも希望しているイベントとして宝塚歌劇団が4月6日から14日まで台北で公演を予定していること、また現在、台湾の故宮博物館の宝物を日本で展示するための準備中であることなどが紹介されました。最後に、群馬県台湾総会に対して、毎年いろいろな活動を通じて台湾と日本との架け橋となっていることについて、慰労の謝辞がありました。


 次に、伊勢崎市の五十嵐清隆市長が壇上で挨拶しました。先月1月13日無投票で再選を決めたばかりの五十嵐市長は挨拶の中で、旧暦の新年会のために群馬県台湾総会の会員の皆さんが県下各地から伊勢先市に参集していただいたこと、台湾総会については平素より行政面で支援をしていただいていること、国際交流として日台友好親善に貢献していただいていること、伊勢崎市は外国籍の市民が多数おり、国数にして50数カ国、約1万人を超える外国籍の市民が生活していること、そのため、すべての皆さんが安心して仲良く暮らしていただくこと、そのため、伊勢崎市は数年前から外国人共生会議という組織をたちあげ、各国代表の皆さんからいろいろな意見を頂いていること、とりわけ伊勢崎在住の台湾総会のかたがたには積極的に共生会議に参加していただいていること、伊勢崎国際交流祭等でも参加いただいており、市民との絆を深めていただいていること、こうしたことはこれからももっと大事となるので引き続きご協力とご指導をお願いしたい、として温かい祝辞を述べていただきました。


 次に挨拶に立ったのは前橋市の山本龍市長です。「本日は台湾総会の盛会を心からお祝い申し上げます」と冒頭で挨拶をしたのち、山本市長は、2つの国の交流は国同士であるよりもまず、ひとつひとつのお付き合いだと思っていること、かつて台南市の市長として前橋市から羽鳥又男さんというかたが、生誕120年になるが、台南市長として活躍いただいたという昔からの縁があること、この縁を大事にしながらこれからも新しい台日友好の一つのきっかけとして前橋市民と台湾の皆さまが仲良くつきあえる機会になればよいと思うこと、本日は前橋市の八木節を拝見したがこれからも文化・経済・子ども同士のお付き合い、いろいろな面でのお導きを頂きたいこと、を祝辞を交えて述べました。


 その後、来賓としてあらためて沈代表夫妻及び幹部2名、伊勢崎市長、前橋市長のほか、伊藤伊勢崎市議、同市国際協力協会会長、同市ICI会長、そして先程素晴らしい演奏と踊りを披露していただいた前橋市上増田町八木節会の皆さまが紹介されました。

■いよいよ宴席となり、乾杯の音頭は伊藤純子・伊勢崎市議が行い、全員起立して「乾杯」を唱和しました。来賓席の伊藤市議は同じテーブルの沈代表夫妻とも中国語で会話をしていました。かつて中国の南京の大学に留学経験のある同市議は、現在では中国の軍拡や情報統制などを批判し、親台湾派の立場です。


伊藤市議の乾杯音頭に合わせて全員の「乾杯」のコールで祝宴開始。

台湾総会の会長夫妻と来賓のかたがたで記念撮影。

 その後、各テーブルで賑やかに歓談する光景が見られました。筆者もさっそく沈代表夫妻のテーブルにうかがい、自己紹介を兼ねて挨拶をさせていただきました。

各テーブルを回って乾杯の挨拶をする駐日代表夫妻。

 まもなく、アトラクションが始まりました。最初はハワイアンダンスのソロの演技が、日本の「涙そうそう」のメロディーに台湾語で歌った音楽に合わせて披露されました。踊り手は台湾総会の会員が習っているダンス教室の先生とのことです。


 次に、台湾の名曲「雨夜花(ウーヤーホエ)」の独唱を、同じく台湾総会の会員が習っているカラオケ教室の先生に披露していただきまーした。最初は見事な台湾語で歌っていただき、その歌唱力に場内は魅了され、皆さんが聞き入っていました。


■筆者が写真を撮っていたら、いつの間にか横に山本市長がiPadを持って写真を撮っていました。五十嵐市長は宴席開始直後に退席しましたが、山本市長は、このころまで会場内に残って、挨拶に回る一方、しきりにアトラクションをiPadで撮りまくっていました。そして、さっそくツイッターで発信していました。https://twitter.com/YamamotoRyu/status/303059979399725057/photo/1
 余裕あるその姿は、同日実施された前橋市議会議員選挙の投開票の結果、市長派議員が過半数を占めることを既に革新していたかのようでした。

 その後、今後は台湾総会の男性メンバー有志による、これまた台湾の名曲「望春風(ワンツンフォン)」の合唱が披露されました。これは、筆者も飛び入りで参加させていただきました。


 続いて台湾総会会員によるとんちクイズが行われました。台湾語でのなぞかけで、日本の芸能人や地名を連想させるゲームでした。これは日本人には難しすぎましたが、5問のうち2問を沈代表夫妻が正解し場内から拍手を浴びていました。

日本人には難解なとんちクイズ。さすが沈駐日代表が正解して賞品授与。

 その次は、台湾総会婦人部による恒例の台湾原住民ダンスが披露されました。衣装は台湾に現在10族以上ある原住民族のそれぞれの特徴を表したものです。台湾には台湾の総人口23,061,689人 (2011年)のうち約2%にあたる約49万人の現住民族がいます。

子どもたちも参加した台湾原住民族ダンス。

 このダンスの音楽は非常にノリが素晴らしく、会場から次々に飛び入りする人が現れ、とくに八木節会の皆さんは、八木節のテンポに似ていることもあり全員が参加していただきました。

八木節会の方々も飛び入り参加。

踊りを終えた後参加者が揃って記念写真。

 その後は、本庄市に在住の若手のアルパ(スペイン語でハープの意味)奏者による「ア・メリッサ」というラブソングの演奏が披露されました。いわゆる欧米のハープと異なり、持ち運びが容易なコンパクト型ですが、音響箱により非常によい共鳴音を奏でるのには驚きました。日本では男性のアルパ奏者は数が少なく、会場内は、その美しい音色に魅了されたためか、参加者は静かに聞き入っていました。奏者のかたは、小さいころからピアノ奏者になることを親に期待されていたそうですが、アルパの演奏を聴いてから、すっかりこの楽器の虜になり、現地に留学してまで演奏に磨きをかけたそうです。


 このあと、再び歓談となり、その後恒例のカラオケ大会が開かれました。





 それから、これまた恒例の子どもたちへのお年玉プレゼント(図書券入りの赤袋)と、お待ちかねの抽選会が行われました。

台湾で新年と言えば紅包(フォンパオ=お年玉のこと)。

台湾往復航空券2枚をはじめ豪華景品が並べられ恒例のお年玉抽選会。

祝福される往復航空券をゲットした参加者。

 最後に江夏副会長の閉会の挨拶で、平成25年、中華民国102年、西暦2013年の群馬県台湾総会の新年盛会が滞りなく行われたことが宣言され、日本と台湾との友好がますます発展することを参加者一同祈念して、散会となりました。

【ひらく会情報部】

※参考情報
■群馬県台湾総会2012年の歩み
2011年12月3日  忘年会
2002年2月5日   新年会
2002年2月10日  富岡国際交流台湾研修旅行(台湾台北東湖小との交流)
2002年8月26日  名誉会長加久裕士先生米寿祝賀会
2002年10月21日  第13回伊勢崎国際交流のつどい
2002年10月28日  第22回高崎国際交流の集い
2012年11月18日  前橋市富士見村出身の旧台南市長羽鳥又男公生誕120周年祈念会共催
2012年11月25日  日帰り旅行

【台湾新聞Taiwan News 2013年元旦号 東京発行 No.182】
沈斯淳駐日代表 2013年元旦祝辞
  台北駐日経済文化代表処
      代表 沈斯淳
 日本の友人の皆様、在日華僑の皆様、謹んで新年のお祝いを申し上げます。
 昨年5月30日に駐日代表に着任してから半年が経過しましたが、昨年を振り返りますと、経済・貿易、観光、文化交流などさまざまな面において大きな進展があり、台日関係の緊密さを改めて実感しています。
 昨年は、経済面では「台日産業協力推進オフィス」の開設や、「台日特許審査ハイウェイ(PPH)覚書」、「台日電機電子製品相互承認協定」、「台日産業協力架け僑プロジェクト協力強化に関する覚書」が調印されるなどの具体的な進展がありました。また、観光面では台日オープンスカイ(航空自由化)協定により、日本の石垣島、鹿児島、静岡、富山、函館、旭川、帯広、釧路などの地方空港と台湾を結ぶ航空路線が次々と開設され、昨年の台日間の往来人数は、一昨年の約250万人を大幅に超え、300万人に達する勢いとなりました。
 昨年は東シナ海の緊張が高まることもありましたが、台湾と日本は海を隔てた友邦であり、馬英九総統は昨年8月に「東シナ海平和イニシアチブ」を提起し、争議を棚上げし、理性的な対話と共同開発を通じた平和的解決を呼びかけています。昨年11月には、第17回台日漁業会談開催に向けた予備会談が開かれ、今後も誠意と善意をもって協議を継統させていくことで一致しました。第17回台日漁業会談で具体的な成果が出るよう期待しています。
 今年、当代表処は、4つの目標に向かって邁進していく所存であります。第1は、台日間の産業分野における連携の促進です。昨年の日本企業の台湾への投資総額第4位でしたが、投資件数は第1位でした。これは、台日の中小企業間の連携が活発に行われていることの表れといえます。台湾の経済の主体は中小企業であり、日本の中小企業が台湾と連携して、中国大陸および世界のマーケットを目指すことは、お互いの強みを活かし、補完し合え、双方にとって有利なビジネスとなるでしょう。今年は、これらを基礎に引き続き「積み上げ方式」によって可能な部分から着実に、経済連携を深めてまいりたいと願っています。
 第2は、文化面での交流の促進です。今年4月に「宝塚歌劇団」の台湾初公演開催が決まり、「楚留香」を題材にしたショーが披露されます。また、台北の「国立故宮博物院」収蔵品の日本での展覧会も来年6月~9月に東京国立博物館、同10月~11月に九州国立博物館で開催されることも決定しており、それに向けた準備を進めてまいります。
 第3は、観光面における交流の促進です。現在、台日間は毎週350便のフライトがあり、今年は台湾から新潟と高松への定期便が就航する予定です。観光交流の緊密化を通じて、台日間の相互理解が深まるよう願っています。
 第4は、若者間の交流の促進です。企業、スポーツ、文化、教育、さまざまな分野における交流に力を入れていくほか、台日間の修学旅行を通じた交流が深まるよう期待しています。
 私は日本に着任以来、日本のさまざまな地方を訪問しました。そのなかで深く感動したことは、日本各地の皆様が、台湾に対して極めてよい印象を持っておられることでした。このような良好な信頼関係の基礎の上に、われわれは日本の各界と連携しながら、台日間のパートナーシップを強化し、共に努力し、お互いのさらなる発展を促していきたいと願っています。日本の皆様もぜひ台湾を訪れて、台湾のよさを肌で感じてください。
 最後に、中華民国(台湾)政府及び国民を代表し、台日間の一層の友好増進と皆様のご健康を祈念し、新年の挨拶とさせていただきます。
【台北駐日経済文化代表処 2013年元旦】

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