市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

首都高ローリー横転炎上事故・・・東京地裁のトンデモ判決に控訴しなかった首都高と機構の案の定

2016-10-14 22:10:00 | 首都高炎上とタゴ運輸
■2016年7月14日の報道によれば、首都高速で2008年にタンクローリーが横転、炎上した事故をめぐり、首都高速道路会社が復旧工事費などの損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁(青木晋裁判長)はこの日、群馬県高崎市の運送会社と運転手=業務上失火罪で有罪確定=に約32億8900万円の支払いを命じました。判決では、元請け会社にガソリン運搬を委託した出光興産などへの請求は棄却となりました。

めでたく巨額な損害賠償金支払いを免れた多胡運輸。それにしても事業譲渡の受け皿会社が「美正」とはブラックジョークも甚だしい。


こちらも損害賠償を免れた中曽根ファミリー系企業のホクブトランスポートの本社新社屋。


↑27回の口頭弁論に耐え抜いて損害賠償責任を回避した出光興産の本社が入居する帝劇ビル。本来なら大勲位を呼んで祝賀会開催なのだろうか、現在、昭和シェルとの来年4月の合併に創業者の出光家が反対してそれどころではないのかも。

 青木裁判長は、高架部分の掛け替え費用約17億円の直接損害のほか、通行止めによる営業損失など間接損害も認めました。一方、出光興産については「指揮監督関係が運転手に及んでいたとは認められず、使用者責任は負わない」と判断しました。

 このため当会は、この報道に関連してこれまでに次の見解をブログ上で表明しています。
○2016年7月15日:8年前の首都高横転炎上・・・前代未聞の事故に似合う地裁のトンデモ判決から見えてくる安中タゴ事件の怪
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2073.html#readmore
○2016年8月17日:安中公社51億円事件に次いで首都高ローリー横転炎上事件で多胡ファミリーが打立てた金字塔・・・偽装倒産
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2103.html#readmore

■しかし、この判決のニュースのあと、マスコミはその後、首都高が控訴したのかどうかも含めて、全く報道しません。一体、巨額の損害賠償金は、既に破産した多胡運輸と、禁治産者となった元運転手T氏に対して、請求できるのかどうか、首都高と債務返済機構は、この判決に対してどのような見解を持っているのか・・・などなど、疑問が膨らみます。

 とくに、タゴ51億円事件であと86年間も横領金の尻拭いをさせられている安中市民としては、タゴの実弟が経営していた多胡運輸の所属タンクローリー横転事故による45億円にのぼる物損事故の損害の帰趨に関わることなので、このまま見過ごすことはできません。

 そこで当会では、先日、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構に対して、同機構のHPに掲げられている「問い合わせ」ページからこの件について2016年10月3日に問い合わせを行ったところ、受信確認のメッセージが到来しました。
※独立行政法人 日本高速道路保有・債務返済機構「お問い合わせ」ページのURL
https://www.jehdra.go.jp/toiawase.html

*****10月3日機構から当会へ*****
---------- 受信確認メッセージ ----------
From: 独立行政法人 日本高速道路保有・債務返済機構 <info@jehdra.go.jp>
日付: 2016年10月3日 14:55
件名: 独立行政法人 日本高速道路保有・債務返済機構 お問い合わせ
To: ogawakenpg@gmail.com

─────────────────────────────
独立行政法人 日本高速道路保有・債務返済機構 お問い合わせ
─────────────────────────────
小川賢 様

お問い合わせ、ありがとうございました。
下記内容で承りました。

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■氏名
□小川賢

■メールアドレス
□ogawakenpg@gmail.com

■住所
□379 - 0114
□群馬県安中市野殿980番地

■電話番号
□090-5302-8312

■FAX
□027-381-0364

■タイトル
□平成28年7月14日の東京地裁における判決に対する貴対応について

■ご意見・ご質問
 私は安中市在住市民です。2008年8月3日早朝、多胡運輸の所有するタンクローリーが首都高5号線で横転炎上した事故をめぐり、首都高速道路会社が復旧工事費などの損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁(青木晋裁判長)は2016年7月14日、群馬県高崎市の運送会社と運転手=業務上失火罪で有罪確定=に約32億8900万円の支払いを命じ、元請け会社にガソリン運搬を委託した出光興産などへの請求は棄却されました。
 この事件で私は、首都高速道路会社に対して、損害額の内訳が判る情報について情報開示請求を行いましたが、不開示処分とされたため、上級庁である御機構に対して情報開示請求をしたところ、これも全面的に不開示処分となったため、内閣府情報開示・個人情報保護審査会に不服申立てをした結果、部分開示となった経緯があります。
 それが縁で、2012年11月当時、御機構総務部総務課の中村係長と今別府係員のお二人と面談し、情報開示を受けた際、御機構が後ろ盾となっている首都高速道路会社による出光興産、ホクブトランスポート及び多胡運輸を相手取った損害賠償請求と、関東交通共済協同組合を相手取った保険金支払請求の2つの訴訟のことを教えてもらいました。
 当時、後者については、控訴審が争われており首都高速道路会社が一審勝訴のあとの勝訴審でしたので、その後首都高・御機構側が勝訴されたものと思われます。
 前者についても、平日に一度東京地裁で傍聴しましたが、多胡運輸もホクブトランスポートも出廷せず、出光興産と御機構側の代理人との間で攻防が繰り広げられていました。
 そしてこの度、今年の7月14日に、既に倒産して、実質的に事業を「美正」にそのまま係争した多胡運輸と、事故当時の運転手に対して損害賠償請求せよ、という仰天判決がくだされました。
 そこで次の質問があります。ぜひ御機構の御見解をお聞かせくださるようお願い申し上げます。
(1) すでにこの事件で7月14日の判決を不服として、控訴手続きはおとりになりましたか。
(2) あるいは、この事件で7月14日の判決を受け入れて、控訴手続きはおとりになりませんでしたか。
(3) 控訴手続きをおとりにならなかった場合、その理由はなんでしょうか。
(4) 巷間情報では、多胡運輸がすでに破産手続きをとっていることから、首都高速道路。御機構側として請求額を特別損失で処理できるので、当該金額まで税金を払う必要がなくなり、しかも、内部的に責任問題も生じないことから、控訴しないのではないか、という見方があります。これについて御機構の見解をお示しくださいますか。
 もし、御機構が控訴しなかったとなると、地方自治体では史上最大級とみられる安中市土地開発公社を巡る事件と同様に、多胡運輸による社会への損害は、今回もまた我々の血税あるいは利用料で尻拭いされることになり、あと86年間、毎年元職員の豪遊のツケを毎年2000万円ずつ群馬銀行に支払わされる安中市民としては忸怩たる思いでいっぱいです。せめて、首都高速道路会社・御機構におかれましては、なんとか原因者に損害賠償請求を求めてくださるようお願いしたいと、今でもやりきれない気持ちです。
 ご多忙中誠に恐縮ですが、早期のご返事をお待ちしております。
─────────────────────────────

*****10月5日機構から当会へ*****
---------- 受信メッセージ ----------
From: 高速道路機構 <info@jehdra.go.jp>
日付: 2016年10月5日 9:42
件名: Re: 独立行政法人 日本高速道路保有・債務返済機構 お問い合わせ
To: ogawakenpg@gmail.com

 小川 賢 様

 高速道路機構でございます。
 このたびはホームページよりお問合せいただき、ありがとうございます。

 お問合せのありました、7月14日判決のあった訴訟については、
 首都高速道路株式会社が事故の原因者を相手に行っているものであり、
 当機構としてお答えできる立場にございません。
 また、仮に首都高速道路株式会社が控訴しなかったとしても、
 当機構はその理由を知る立場にもございません。

 何卒ご理解いただけますようお願い申し上げます。

 (独)日本高速道路保有・債務返済機構 総務課

*****10月5日当会から機構へ*****
---------- 発信メッセージ ----------
From: masaru ogawa <ogawakenpg@gmail.com>
日付: 2016年10月5日 10:11
件名: Re: 独立行政法人 日本高速道路保有・債務返済機構 お問い合わせ
To: 高速道路機構 <info@jehdra.go.jp>

機構 総務課御中

貴メッセージ拝読しました。

首都高に聞いても、おそらく以前の情報公開請求と同様、事務事業に影響するので一切コメントできない、という可能性が高いと思われます。そのため、御機構にお願いしたのですが、それも却下されて不服申し立てをし、都合3年近くの時間を要しました。

これほど社会的なインパクトのあるトピックスについて、公益組織である御機構が、記者発表もせず、納税者・利用者である市民に対して見解さえ示せないというのが全く理解できません。

不平を言っていても埒が開かないので、これから首都高速道路会社に公開質問を出すことにします。

群馬県安中市野殿980番地
小川賢
**********

■機構が、当会の質問への回答を拒否してきたため、今度は首都高に対して電話で問い合わせることにしました。
※首都高「首都高お客様センター」のURL:
http://www.shutoko.jp/inquiry/customercenter/
**********
首都高お客様センター
首都高に関する次のご質問に、最新情報でお答えします。
・所要時間 ・渋滞・混雑状況 ・入口閉鎖状況
首都高に不慣れな方にも、分かりやすく親切な道案内をいたします。
首都高ドライブMAPの送付をご希望される方は、首都高お客様センターに電話にてお申込ください。
(在庫数の関係から、送付は、お一人様一部ずつとさせていただきます。)
その他、首都高に関するすべてのご質問、お問い合わせ、ご意見、ご要望を承ります。
TEL 03-6667-5855
FAX 03-3249-1161(耳が不自由な方専用)
営業時間 7:00〜20:00(年中無休)
(営業時間外は自動音声で5分ごとの最新の道路交通情報を提供しています)
**********

 首都高お客様センターでは電話での受付しかしてくれないため、機構への問い合わせ内容を参考にしつつ、予め次の原稿を用意しました。そして10月14日11時40分頃に電話口に出た石野さんという女性職員のかたに問い合わせ内容を説明しました。

*****質問・問い合わせ内容*****
 私は安中市在住市民です。
 2008年8月3日早朝、多胡運輸の所有するタンクローリーが首都高5号線で横転炎上した事故をめぐり、御社が復旧工事費などの損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁(青木晋裁判長)は2016年7月14日、群馬県高崎市の運送会社と運転手=業務上失火罪で有罪確定=に約32億8900万円の支払いを命じ、元請け会社にガソリン運搬を委託した出光興産などへの請求は棄却されました。
 この事件で私は、御社に対して、損害額の内訳が判る情報について情報開示請求を行いましたが、不開示処分とされたため、上級庁である債務返済機構に対して情報開示請求をしたところ、これも全面的に不開示処分となったため、総理府情報開示・個人情報保護審査会に不服申立てをした結果、部分開示となった経緯があります。
 その過程で御社による出光興産、ホクブトランスポート及び多胡運輸を相手取った損害賠償請求と、関東トラック協会を相手取った保険金支払請求の2つの訴訟のことを知りました。
 当時、後者については、控訴審が争われており御社が一審勝訴のあとの控訴審でしたので、その後御社が勝訴されたものと思われます。
 前者についても、平日に一度東京地裁で傍聴したことがありますが、多胡運輸もホクブトランスポートも出廷せず、出光興産と御社側の代理人との間で攻防が繰り広げられていました。
 そしてこの度、今年の7月14日に、既に倒産して、実質的に事業を「美正」にそのまま係争した多胡運輸と、事故当時の運転手に対して損害賠償請求せよ、というサプライズ判決がくだされました。
 そこで次の質問があります。ぜひ御社の御見解をお聞かせくださるようお願い申し上げます。
(1)すでにこの事件で7月14日の判決を不服として、控訴手続きはおとりになりましたか。
(2)あるいは、この事件で7月14日の判決を受け入れて、控訴手続きはおとりになりませんでしたか。
(3)控訴手続きをおとりにならなかった場合、その理由はなんでしょうか。
(4)巷間情報では、多胡運輸がすでに破産手続きをとっていることから、御社として請求額を特別損失で処理できるので、当該金額まで税金を払う必要がなくなり、しかも、内部的に責任問題も生じたいことから、控訴しないのではないか、という見方があります。これについて御社の見解をお示しくださいますか。
 もし、御社が控訴しなかったとなると、地方自治体では史上最大級とみられる安中市土地開発公社を巡る事件と同様に、多胡運輸による社会への損害は、今回もまた我々の血税あるいは利用料で尻拭いされることになり、あと86年間、毎年元職員の豪遊のツケを毎年2000万円ずつ群馬銀行に支払わされる安中市民としては忸怩たる思いでいっぱいです。せめて、御社におかれましては、なんとか原因者に損害賠償請求を求めてくださるようお願いしたいと、今でもやりきれない気持ちです。
 ご多忙中誠に恐縮ですが、早期のご返事をお待ちしております。
 なお、この問い合わせに先立ち、独立行政法人 日本高速道路保有・債務返済機構にも問い合わせてみました。
 その結果、「今年7月14日判決のあった訴訟については、首都高速道路株式会社が事故の原因者を相手に行っているものであり、当機構としてお答えできる立場にございません。 また、仮に首都高速道路株式会社が控訴しなかったとしても、当機構はその理由を知る立場にもございません。」ということで、御社に問い合わせるように言われています。
 なにとぞよろしくご対応のほどよろしくお願い申し上げます。
**********

■すると、受付の石野さんが当会の口頭説明を一生懸命メモにとった成果なのでしょうか。同日午後1時半ごろ、首都高総務課の山田氏(TEL03-3539-9329)から回答の電話がありました。その内容は次の通りです。

(1)すでにこの事件で7月14日の判決を不服として、控訴手続きはおとりになりましたか。
⇒ 【首都高回答】控訴していません。
(2) あるいは、この事件で7月14日の判決を受け入れて、控訴手続きはおとりになりませんでしたか。
⇒【首都高回答】はい。
(3) 控訴手続きをおとりにならなかった場合、その理由はなんでしょうか。
⇒【首都高回答】東京地裁における裁判は非常に長期にわたり、4年半にもなった。この間、口頭弁論期日は27回を数え、機構も首都高もともに「審議をし尽くした」という認識でいる。また判決では、首都高・機構側の主張である間接的な営業損失による損害についても全面的に認められたこと。このため、今後、類似事件が発生した場合、営業がストップさせられたことによる損害についても請求が認められる、という判例が得られたことも一審判決を受け入れる理由となった。
(4) 巷間情報では、多胡運輸がすでに破産手続きをとっていることから、御社として請求額を特別損失で処理できるので、当該金額まで税金を払う必要がなくなり、しかも、内部的に責任問題も生じたいことから、控訴しないのではないか、という見方があります。これについて御社の見解をお示しくださいますか。
⇒【首都高回答】上記(3)の理由がすべてであり、巷間情報のことはしらない。裁判で立証しつくしたことで、首都高はもとより機構側も、有料道路を運営する立場からNEXCO全社としても、今後営業損失も請求出来得るという判決が得られたことで、判決には満足している。

■こうして、安中土地開発公社51億円事件の巨額横領金が結局安中市民に転嫁されたのと同様に、8年前の2008年8月3日(日)早朝に起きた首都高5号線熊野町ジャンクション付近でのタンクローリー横転炎上事故による45億円の損害金も、結局利用者に転嫁されることになりました。

 恐るべし多胡運輸!

 なぜなら多胡運輸は、タゴ51億円事件の関係者を軸にした群馬県の保守政治従事者の皆さまの手厚いご加護の下、首都高・機構側が束になってかかった4年半に亘る民事訴訟でも、結局カメレオンのように、社名をいち早く「美正」と変更し、以前と同じように何事もなかったかの如く、同じ場所で操業しているのです。

 首都高ローリー横転炎上事件はこうして完全な幕引きまで、多胡運輸の破産手続きを残すのみとなりました。

*****倒産情報公告資料室*****
※官報URL:http://kanpou.makelog.net/2016/08/16/6838-19/
平成28年(フ)第1 6 2号
 群馬県高崎市箕郷町上芝*****
 債務者 多胡運輸株式会社
1 決定年月日時 平成28年8月4日午後5時
2 主文 債務者について破産手続を開始する。
3 破産管財人 弁護士 都木 幹仁
4 財産状況報告集会・廃止意見聴取・計算報告の期日 平成28年11月9日午前11時
          前橋地方裁判所高崎支部

**********

【ひらく会情報部】

※関連情報「多胡運輸破産手続の債権者対応」
**********企業法務ナビ 2016/08/31 17:00投稿 fukuyama
https://www.corporate-legal.jp/%E6%B3%95%E5%8B%99navi%E3%81%BE%E3%81%A8%E3%82%81/7567
【法務NAVIまとめ】首都高ローリー横転事故にみる破産手続の債権者対応まとめ

●はじめに
 首都高での事故をきっかけとして巨額の賠償責任を負った運送業者が破産しました。本件を題材として、破産手続開始決定の通知書が送られてきた場合の社内対応の要点を確認します。使用者責任の点については、過去記事をご参照ください。
 参照:弊社サイト「企業法務ナビ」2016年7月19日:首都高炎上の運送会社に32億円の賠償命令、使用者責任について
https://www.corporate-legal.jp/%E6%B3%95%E5%8B%99%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9/%E4%BC%81%E6%A5%AD/6814
●事案の概要(過去記事より抜粋)
 2008年8月3日早朝、群馬県高崎市の運送会社多胡運輸所有のタンクローリーが首都高速熊野町ジャンクション内のカーブで速度超過により曲がりきれず横転・炎上しました。タンクローリーには約16キロリットルのガソリンと4キロリットルの軽油を積載し、埼玉県内のガソリンスタンドに向けて輸送していました。積み荷の燃料は約5時間半に渡って炎上し2階建構造の上層部分の路面を熱で変形させました。道路は長さ40m、深さ最大60cm沈下し北池袋から板橋JCTまでが上下線とも通行止めとなりました。8月9日には片側1車線通行で仮復旧したものの全面復旧までには約2ヶ月半を要しました。首都高速道路会社は多胡運輸と運転手および輸送を発注した出光興産に復旧工事費と逸失利益分で約45億円の賠償を求め東京地裁に提訴していました。
 ※多胡運輸は、既に、2016年8月4日に破産開始決定が出されている。
●破産手続きとは
 破産手続きとは、債権の平等な分配を図り、抜け駆け的な債権回収を防止する目的で行われる、財産の分配手続です。
 債権者は、債務者に対して債権を有している限り、これを行使して債権回収を図ることができるとするのが民法上の原則といえます。しかし、破産の場合、多くの利害関係人が出現する可能性があり、抜け駆け的な債権回収は、債権者の公平を損ないます。そこで、破産法をはじめとした倒産法がこれに修正を加え、破産手続きの中で、債権者に対する公平な分配を図る仕組みが採用されています。
 破産手続きには、以下の類型があります。
・管財事件
 裁判所により、破産管財人が選任され、破産者の財産を調査・管理・換価処分し,それによって得た金銭を各債権者に弁済または配当するという破産手続の事件類型です。管財事件の場合、届出→調査→確定→配当という破産手続きが進んでいくことになります。
・同時廃止事件
 裁判所によって破産管財人が選任されず,破産手続の開始と同時に破産手続が廃止により終了するという破産手続の事件類型です。いかなる場合に同時廃止事件となるかといえば、債権者に弁済または配当すべき財産(破産財団)が集まらない場合などがあります。
破産事件の場合、多数の債権者が破産財産からの債権回収に殺到することが想定されるため、多くの債権者の利害調整の観点から、破産管財人には弁護士が選任されます。
●破産手続きの開始
 裁判所に対する破産の申し立てにより、破産手続きが開始します。破産手続きが開始したら、破産管財人は、財産を調査・管理を行い、順次換価処分を行っていくことになります。また、破産した会社が締結していた契約などを解約していき、財産の分配の準備を進めていきます。
 また、裁判所から、債権者に対して破産手続開始決定の通知が各債権者に送られることになります。
 法務担当者はこの時点で、自社が債権を有する会社の破産手続きが開始されたことを知ることになり、破産手続に参加する準備を進めていくことになります。
●破産手続き開始決定の通知書が届いたら・・・
 破産手続き開始決定の通知書の例(pdf)

 参照:麹町パートナーズ法律事務所(pdf)
http://www.k-partners.jp/kaishikettei.pdf
 ※破産債権は、裁判所に届出なければ、回収できない。したがって、破産債権の開始決定の通知がされた場合、裁判所に対して破産債権の届出を行う必要がある。
 破産手続き開始決定の通知書に記載すべき事項は、
〇破産債権者の表示
・住所
・通知場所
・氏名又は法人名・代表者名
〇破産債権の表示
・届出破産債権の種類
(売掛金、貸付金、給料、退職金、解雇予告手当、手形・小切手債権、租税、約定利息金、遅延損害金)
・別除権の種類及び訴訟の有無
 別除権については後述します。
・執行力ある終局判決ないし債務名義の存在の有無
・債権を証明する文書の添付
 破産債権の届出を行う場合には、請求書、借用書など、債権を証明する文書をコピーして準備する必要がある。
●届出の場所
 届出の場所は、破産開始決定通知書に記載されています。
 届出場所については、裁判所や、破産管財人の所属する法律事務所内などが通例です。
●届出の期間
 原則として、破産手続開始決定の日から2週間以上4か月以内で指定される。
 届出の手続きについては、以下のHPが参考になります。
 参考:おくだ総合法律事務所のHPのURL
http://www.okuda-jikohasan.com/%E7%A0%B4%E7%94%A3-%E8%87%AA%E5%B7%B1%E7%A0%B4%E7%94%A3/%E5%82%B5%E6%A8%A9%E8%80%85%E3%81%AE%E7%AB%8B%E5%A0%B4%E3%81%8B%E3%82%89/%E5%82%B5%E6%A8%A9%E3%81%AE%E5%B1%8A%E5%87%BA/
●債権者集会
 債権者集会の開催日時等は、破産開始決定通知書に記載されています。
 債権者集会では、破産管財人による収支報告、財産の報告などがなされます。しかし、実態は多くの破産事件で債権者が参加しない簡素な手続となっているのが現状のようです。
 参照:中村・安藤法律事務所のHPのURL
http://www.nakamura-ando-hasan.com/930/93010q/
 ※債権者集会では、配当が確定されず、債権調査期日で確定されることから、債権者集会に出席しなかったことを理由とした不利益な取扱いは行われない。
 参考:おくだ総合法律事務所のHPのURL
http://www.okuda-jikohasan.com/%E7%A0%B4%E7%94%A3-%E8%87%AA%E5%B7%B1%E7%A0%B4%E7%94%A3/%E5%82%B5%E6%A8%A9%E8%80%85%E3%81%AE%E7%AB%8B%E5%A0%B4%E3%81%8B%E3%82%89/%E5%82%B5%E6%A8%A9%E3%81%AE%E5%B1%8A%E5%87%BA/
●債権調査期日
 債権者集会に引き続いて、債権者集会が破産事件における管財人の報告、管財業務の方針ならびに当該破産事件に必要な決議をなす手続きであるのに対し、債権調査期日は、債権者から提出された破産債権届出書に記載された債権について、管財人が破産債権としての認否を行う手続きです。
 参照:飯田総合法律事務所のHPのURL
http://www.iida-sogo.gr.jp/qa/qa04/qa04_a12.html
●債権の確定
 債権調査期日において、管財人は、債権者から提出された破産債権届出書から債権認否表を作成し、当該債権について破産債権として認めるのか、あるいは認めない(異議)のかを、債権認否表に記載します。
 破産債権が認めれた場合には、当該債権はそのまま確定します。
 破産債権が認められなかった場合には・・・
〇債権査定決定の申し立て
 届出のあった破産債権について、管財人、再生債務者または他の届出債権者等が、決定送達日から1ヶ月以内に異議を述べた場合に、当該異議を述べられた債権者が、その債権の迅速な確定のため、裁判所に対し、債権の存否・内容等について決定手続で判断することを求める申立てです。
 参照:シティユーワ法律事務所のHPのURL
http://www.city-yuwa.com/explain/ex_glossary/detail/saikensatei.html
・争いのある破産債権についての調査期間の末日または調査期日から1か月以内
・その額等の確定のために、破産管財人および異議を述べた届出破産債権者の全員を相手方として
・破産裁判所に、その額等の査定の申立をすることができる(破産法125条1項)
〇申立て書式例
 参照:厚木 相模側川法律事務所ブログ
http://ameblo.jp/sagamigawar/entry-11868608207.html
 裁判所への提出物は
・申立所 2通(裁判所用正本と管財人弁護士用副本)
・証拠書類 各2部(裁判所用と管財人弁護士用)
・資格証明書(申立人が法人の場合)
・委任状(代理人が提出する場合)
 査定決定に不服がある場合には・・・
〇債権査定異議の訴え
 通常訴訟の手続きで債権の存否・内容等が判断されることになります。
 参照:お金のトラブルドットコム
http://okanetotrouble.com/1hasantetuzuki/08
●配当
 「財団債権」が破産手続き外で優先的に弁済されたあとに、配当表にしたがって、「破産債権」が弁済されることになります。配当によって、破産手続きの目的は達成されるため、報告の後に手続は終了となります。
 参照:LSC法律事務所のHPのURL
https://www.houjintousan.jp/hasan/shuuryou/haitou.html
●その他注意点
〇別除権(債権に担保をとってるんだけど・・・)
 破産債権に担保権が設定されている場合に、破産手続き外で優先権を主張できる場合があります。この場合、配当手続によらずに弁済を受けられる場合があるため、債権の届出の際に、特に裁判所に届け出る必要があります。
 参照:同上
https://www.houjintousan.jp/hasan/betujoken/koushi.html
●コメント
 多胡運輸の例でみれば、多胡運輸は33億円の負債総額を有しています。多胡運輸に対して債権を有する債権者は、破産手続開始通知をうけた後に、自社が有している債権の届けを作成し、通知に記載されている届出場所に期間内に提出する必要があります。その際に、債権を証明する文書をコピーして添付する必要があります。
 その際に、担保を有している場合には、別除権を主張できる場合があるため、特に届け出る必要があります。その後、債権調査手続、債権の確定、配当を経て、債権回収を図っていくことになります。
**********

※参考情報「株式会社 美正」
**********HP ⇒ http://www.gunma-bisyo.com/index.html
一般貨物自動車運送事業 関東運輸局認証整備工場


株式会社 美正

 美正は生活に必要な物流の安心・安全・安定的な供給に全社一丸となって取り組みます。
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 ★お気軽にお問い合わせください★
 (担当 櫻澤)
●ごあいさつ
 高崎市箕郷町を拠点に、燃料をはじめ生活に必要な物資の配送請負業務を中心に業務を行っております。
 群馬県を中心に営業致しておりますが、ご依頼いただければ日本全国各地にお運び致します。
 今後とも株式会社美正をよろしくお願い致します。
●整備工場(関東運輸局認定整備工場)
 配送業務に使われる業務車両の整備・点検・修理をはじめ車検も行い、もちろん一般車両も同様にの修理点検、車検も行っております。

●保有車輛
 主にガスおよびプロパン燃料を運送する車種
 2トン車平ボディ・パワーゲート付き3トン車・7トンのユニック車
●沿革・会社案内
 社名 株式会社 美正
 代表者 桜澤 章(さくらざわ あきら)
 事業内容 一般貨物運送事業、関東運輸局認定整備工場にて車両整備
 所在地 〒370-3104群馬県高崎市箕郷町上芝541番地2
 TEL:027-386-8011
 FAX:027-386-8012
 設立 平成13年12月21日
 社員数 48名
 資本金 300万円
 売上高 3億5千万円(平成25年度決算)
**********
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安中公社51億円事件に次いで首都高ローリー横転炎上事件で多胡ファミリーが打立てた金字塔・・・偽装倒産

2016-08-17 19:40:00 | 首都高炎上とタゴ運輸
■本日の朝、突然東京商工リサーチが「多胡運輸㈱が破産した」とプレス発表を行いました。株式会社東京商工リサーチは、東京都千代田区大手町1-3-1のJAビルに本社を置き、帝国データバンクに次ぐ国内第2位の信用調査会社です。それではどのような内容のプレス発表をしたのか見てみましょう。

**********東京商工リサーチ 8月17日(水)9時45分配信
平成20年に首都高でローリー横転事故を起こした多胡運輸(株)が破産
 多胡運輸(株)(TSR企業コード:270271104、法人番号:4070001009600、高崎市箕郷町上芝541-2、設立平成4年11月、資本金1200万円、多胡茂美社長)は8月4日、前橋地裁高崎支部より破産開始決定を受けた。破産管財人には都木幹仁弁護士(ぐんま法律事務所、同市昭和町224-1、電話027-326-6001)が選任された。なお、多胡茂美社長は逝去しており、上野法律事務所の上野猛弁護士が仮代表に就任している。
 負債総額は約33億円。
 昭和50年、運送業務を目的に創業。一般貨物輸送のほか石油燃料の輸送などを手掛けて業容を拡大し、タンクローリー6台を含む46台のトラックを所有し約2億円の年間売上高をあげていた。
 平成20年8月、東京都板橋区の首都高速5号線熊野町ジャンクションで、当社のタンクローリーが横転し炎上する大事故が発生。この影響で高速道路高架部分の架け替え工事、近隣マンションの外壁被害などで多額の損害賠償補償の問題を抱えていた。事故に伴い、本社営業所の車両使用停止、運行管理者資格者証の返納命令などの行政処分を受けながら、以後も事業を継続していた。しかし事故の影響で業績不振を招き、23年12月には本社不動産を売却するなど経営悪化が露呈し、24年度に事業を停止していた。
 この間、首都高速道路が復旧費用など損害賠償を求め、トラック業界では過去に例のない高額補償事案として係争していたが28年7月、東京地裁で敗訴。判決により当社および運転手に対し約32億8900万円の支払命令が下されていたが、高額な損害賠償の支払いができず事後処理を弁護士へ一任し、今回の措置となった。
東京商工リサーチ
最終更新:8月17日(水)9時45分
**********

 このように、さすがに日本全国に82(支社8、支店74)の事業所を構え、1994年に世界最大手の信用調査会社ダンアンドブラッドストリート(D&B)と提携し、国内与信・海外与信情報(世界200カ国超・2億件以上の企業データベース)を一手に提供できる体制を構築し、世界最大の企業データベースをワンストップで効率的に提供できる会社です。23年12月に本社不動産を㈱美正に売却し、既に偽装倒産の手続きを開始していたこと、その後、多胡運輸の多胡茂美社長が逝去したこと、そして8月4日に前橋地裁高崎支部から多胡運輸が破産開始決定を受けたこと、などを簡潔に記載しています。

■これに遅れること約5時間後、今後は業界トップの帝国データバンクが多胡運輸の破産について報じました。

**********帝国データバンク2016年08月17日(水)14時30分頃
多胡運輸株式会社
特定貨物自動車運送
破産手続き開始決定受ける

TDB企業コード:220222496
負債33億円
「群馬」 多胡運輸(株)(資本金1200万円、高崎市箕郷町上芝541-2、代表多胡茂美氏、仮代表上野猛氏)は、8月4日に前橋地裁高崎支部より破産手続き開始決定を受けた。
 破産管財人は都木幹仁弁護士(高崎市昭和町224-1、ぐんま法律事務所、電話027-326-6001)。財産状況報告集会期日は11月9日午前11時。
 当社は1975年(昭和50年)創業、92年(平成4年)11月に法人改組。群馬県内で燃料輸送大手の協力会社として、2008年8月期には年収入高約3億6000万円を計上していた。
 しかし、2008年8月に首都高速道路でガソリンを積載していた自社のタンクローリーがカーブを曲がり切れずに横転・炎上し、橋桁などが熱で熔解して大きく損傷した。
 その際、加入していた保険会社からの限度額となる賠償金10億円に加えて、資産の整理売却などによる賠償を企図したが、損害額が多額であったため補いきれず、道路を管理する首都高速道路(株)などから損害賠償請求を起こされていた。また、運営に関して利害関係人からの裁判所に対する申立により、2016年2月に弁護士である上野猛氏が仮代表に就任した。その後、2016年7月に当社と運転手に対し32億8900万円の支払い判決があり、今回の措置となった。
 負債額は4社(事故の被害会社)に対し約33億円。
 なお、社会ニーズの強い燃料輸送業務を行なっていたことから、運送事業に関しては、経理事務などを担当していた系列会社(以前は当社代表取締役多胡茂美氏が全株出資)に2011年に移管、所有していた土地に関しても同年末に同社が取得している。
**********

 これを見ると、安中市土地開発公社51億円巨額横領事件で、一人で罪をかぶった、多胡運輸社長多胡茂美の兄で元安中市職員の多胡邦夫に感謝の意を込めて、タゴファミリーのために生計を維持しなければならないことから、多胡運輸の事業を実質的に継承して現在も同じ場所で営業をしている㈱美正のことが、さらにわかりやすく書いてあります。

 これによれば、㈱美正は、多胡運輸の経理事務などを担当していた系列会社で、多胡運輸の社長の多胡茂美が全額資本金を出資していたことがわかります。そして、2008年8月3日に自社のアポロマークのタンクローリーが首都高5号線熊野町ジャンクション付近で横転炎上してから、3年後の時効到来直前に、首都高が多胡運輸と元請のホクブトランスポート、そして荷主の出光興産を相手取り、東京地裁に損害賠償を提訴した直後に、ちゃっかりと多胡運輸の運送事業を系列会社の㈱美正に移管し、所有土地も2011年末に㈱美正に譲渡していたことが判ります。

 これほどタイムリーにしかるべき民事破産に備えて準備を進められた背景には、やはり、前述の通り、群馬県の誇る自民党県連所属の中曽根派ファミリーの恩情による的確なアドバイスがあったことが強くうかがえます。

■どうりで、多胡運輸も、中曽根ファミリーに極めて近しいホクブトランスポートも、首都高とその上部機関の独立行政法人 日本高速道路保有・債務返済機構による苛斂誅求を極めた訴追にもかかわらず、どこ吹く風で、裁判のことは全て荷主の出光興産(この創業者の出光佐三と大勲位との親交はつとに知られる)に任せきりにできたはずです。

 その出光興産も、多胡運輸やホクブトランスポートのかわりに弁護士費用を負担しただけで、既に完全に事業や財産を㈱美正に継承した多胡運輸と既に破産した当時の運転手にすべての賠償責任を負わせる判決が出たことで、損害賠償からは一切解放され、多胡ファミリーも中曽根ファミリーもハッピーエンドを迎えることができたわけです。

■ところで、東京商工リサーチのプレス発表を受けて、レスポンスが次の追いかけ報道をしました。このレスポンスというのは株式会社イード(ホ社:東京都新宿区西新宿2-6-1 新宿住友ビル28階)が展開している自動車関連のウェブサイトです。

**********Response 2016年8月17日(水) 11時03分
http://response.jp/article/2016/08/17/280200.html
多胡運輸が破産、首都高のローリー火災事故で損害賠償32億円

 東京商工リサーチによると、群馬で燃料輸送などを展開する多胡運輸が8月4日、前橋地裁高崎支部より破産開始決定を受けた。負債総額は約33億円。
 多胡運輸は1975年、運送業務を目的に創業。一般貨物輸送のほか石油燃料の輸送などを手掛けて業容を拡大し、タンクローリー6台を含む46台のトラックを所有し約2億円の年間売上高をあげていた。
 しかし2008年8月、東京都板橋区の首都高5号線熊野町JCTで、同社のタンクローリーが横転し炎上する大事故が発生。高速道路高架部分の架け替え工事、近隣マンションの外壁被害など、事故による多額の損害賠償補償が問題となっていた。事故に伴い、本社営業所の車両使用停止などの行政処分を受けながら、以後も事業を継続していたが、事故の影響で業績不振を招き、2011年12月には本社不動産を売却するなど経営悪化が露呈。2012年度に事業を停止していた。
 この間、首都高速道路が復旧費用など損害賠償を求め、トラック業界では過去に例のない高額補償事案として係争していたが2016年7月、多胡運輸は東京地裁で敗訴。判決により同社および運転手に対し約32億8900万円の支払命令が下されていたが、高額な損害賠償の支払いができず事後処理を弁護士へ一任し、今回の破産手続きとなった。
**********

 レスポンスの記事試合は東京商工リサーチの記事の引用なので新鮮味はありませんが、サイトの利用者が多いため、瞬く間にこのニュースが広まりました。そのため、当会のブログのアクセス数が急増したものと考えられます。

■さらに今度はやはり同業の信用調査会社で九州の福岡市博多市に本社を置く㈱データ・マックス社が後追い報道を行いました。

 同社は東京経済出身の児玉直が1994年(平成6年)に設立した信用調査会社で、福岡に本局を置くほか、長崎市に支局、日本国内7ヶ所(宮崎市・熊本市・鹿児島市・下関市・倉敷市・東京都千代田区・大阪市西区)と中国・上海に事業所を構えています。

 信用調査とともに、企業情報誌「I・B企業特報」(週2回刊)の発行や、九州を中心とした企業・経済動向について独自調査によるニュースサイト「NETIB NEWS」の運営を主たる業務としていて、「IB」は「Information Bank」の略ということです。

**********Net IB News 2016年08月16日 13:56
【全国】破産手続開始決定
多胡運輸(株)(群馬)/特定貨物自動車運送

代 表:上野 猛
所在地:群馬県高崎市箕郷町上芝541-2
 8月4日、同社は前橋地裁高崎支部より破産手続開始の決定を受けた。
 破産管財人は都木幹仁弁護士(ぐんま法律事務所、群馬県高崎市昭和町224-1、電話:027-326-6001)。
**********

■そして、夕方には、不景気ドットコムがこのニュースを取り上げました。

**********不景気ドットコム2016年8月17日 15:59
群馬の「多胡運輸」が破産、ローリー横転・炎上で賠償命令
官報によると、群馬県高崎市に本拠を置く運送業の「多胡運輸株式会社」は、8月4日付で前橋地方裁判所高崎支部より破産手続の開始決定を受け倒産したことが明らかになりました。
1975年に創業の同社は、一般貨物輸送やガソリンなど石油製品の輸送を主力に事業を展開していました。
しかし、2008年8月に首都高速5号線の熊野町ジャンクションで、同社のタンクローリーが横転し炎上する事故が発生し、被害を受けた首都高速道路会社が多額の損害賠償を請求、2016年7月に東京地方裁判所より約32億8900万円の賠償命令が下ったため、支払いが困難となり今回の措置に至ったようです。
負債総額は約33億円の見通しです。
**********

■しかし、今回の多胡運輸破産のニュースはそのインパクトのわりに、日経など大手新聞社やテレビなどマスコミは全く取り上げませんでした。この背景としては、7月14日に東京地裁で出された茶番判決についての報道で、1件落着というスタンスをとったことが挙げられます。

 しかし、大手新聞社やマスコミの報道でも、本日の東京商工リサーチをはじめとする信用調査会社のネット記事でも、多胡運輸をとりまく深い闇の部分については全く触れていません。唯一、タゴファミリーと中曽根ファミリーの関係を追及してきた当会のブログだけが、この複雑な事件の背景を切り開いてきただけなのです。

 当会は引き続き、安中市で発生した地方自治体では史上最大の巨額横領事件であるタゴ1億円事件の真相究明と責任の所在明確化を目指して、果てしない活動を継続する決意です。

【8月18日追記】
 多胡運輸の破産の報道により、当会は当初「倒産」と「破産」とをきちんと区別していませんでした。
 今回の多胡運輸が倒産したわけですが、「倒産」は企業の経営破綻状態を広く指す用語として使われていて、「倒産」した企業がとる手続きは、大きく分けて次の二つがあります。
   ①事業を停止し、企業を清算する手続き(清算型)
   ②事業を継続し、企業を存続する手続き(再建型)
 このうち①の清算型の手続とは、会社が事業を停止し、財産を処分して、その代金を債権者に分配することで、「破産」などのかたちがあります。
 ②の再建型の手続とは、債務の一部免除や分割払などで債務の負担を軽減し、事業を継続しながら会社の再生を図っていくものです。再建型の手続の中心的なものに、民事再生手続と会社更生手続があります。
 多胡運輸は破産したとはいえ、実質的には㈱美正が事業を継承し、土地や車両そして人員などの財産を引き継いだことから、多胡運輸が破産時に保有していた財産といえば、多胡茂美社長が実兄の安中市元職員多胡邦夫から預かっていたかもしれない使途不明金14億円余りが考えられます。
 しかし、今回8月4日をもって多胡運輸が破産手続きに入ったことから、もしこの使途不明金14億円を多胡運輸が隠し持っていたとすれば、債権者に分配されてしまうことになります。
 となると、タゴ51億円事件のツケである安中市・公社と群馬銀行との間で24億5千万円を103年ローンで市・公社が群銀に支払う和解条項の残金87年分の17億3000万円だけが、安中市民のかたにのしかかってくるになります。
 多胡運輸が破産したのだから、当然、安中市は債権者として直ちに破産管財人にコンタクトし、1円でも多く横領金を取り戻すよう対策を講じなければなりません。


【ひらく会情報部】

※参考情報「7月14日の東京地裁のトンデモ判決直後の報道記事」
**********日本経済新聞電子版2016年7月21日
首都高タンクローリー火災で32億円の賠償命令
 首都高速道路5号池袋線の熊野町ジャンクションで2008年8月にタンクローリーが横転、炎上した事故で、東京地裁は16年7月14日、タンクローリーを所有する多胡運輸(群馬県高崎市)と運転手に対して、計約32億8900万円を首都高速道路会社に支払うよう命じる判決を下した。
 この事故は、2層構造になったジャンクションの下層を通る下り線で発生。火災の熱で上層の上り線の鋼桁が大きく変形し、路面が60~70cm沈下した。首都高は損傷した上層の鋼桁と床版を2径間分、計40mにわたって架け替える工事を実施。部分開放しながら半断面ずつ施工し、事故から73日目に全面開通にこぎ着けた。

急カーブを曲がりきれずに横転し、炎上するタンクローリー。消火までに3時間半を要した。運転手は業務上失火罪で有罪が確定している(写真:首都高速道路会社)
 首都高によると、昼夜連続の復旧工事に要した費用は約17億4000万円。加えて、当初の通行止めや工事中の渋滞などに伴う交通量の減少で、通行料収入が約15億5000万円減った。さらに、迂回路を示す案内看板の設置といった諸経費も掛かった。首都高は11年7月、これらを合計した約34億5000万円の損害賠償を求めて提訴していた。

鋼桁が変形して、路面が60~70cm沈下した上層の上り線(写真:首都高速道路会社)
■荷主の責任は認めず
 首都高は裁判で、多胡運輸と運転手のほか、ガソリンや軽油の運搬を継続的に委託していた出光興産と元請けの運送会社にも使用者責任があると主張した。これに対して、東京地裁は「個別の運送業務について、出光興産が運転手を指揮監督する地位にあったとは言えない」などと判断。出光興産と元請けの運送会社への損害賠償請求は棄却した。
 多胡運輸と運転手の支払い能力は不明。首都高は、今後の対応について「関係者と協議しているところだ」と話している。

現場検証を終えて搬出されるタンクローリー。「出光」マークがあったことから、首都高速道路会社は出光興産などにも賠償を求めたものの、東京地裁は棄却した(写真:首都高速道路会社)
 なお今回の判決とは別に、日本高速道路保有・債務返済機構が多胡運輸の加入していた関東交通共済協同組合に対して、道路法に基づく行政処分として保険金に当たる共済金の限度額10億円の支払いを求めて提訴。判決は15年7月に確定し、同組合は遅延損害金を含む11億7000万円を機構に支払った。この共済金は既に機構から首都高に渡っている。
 仮に今回の判決に基づく賠償金が全額支払われた場合、首都高は共済金と合わせて40億円超を受け取ることになる。事故の損害額に遅延金を加えた額に相当する。
(日経コンストラクション 瀬川滋)
[日経コンストラクションWeb版 2016年7月21日掲載]

**********物流ニッポン2016年7月21日
首都高ローリー横転事故、多胡運輸に32億円支払い命令 荷主・元請け責任問わず 東京地裁

 2008年8月に首都高速道路でタンクローリーが横転、炎上した事故を巡り、首都高速道路(宮田年耕社長、東京都千代田区)が復旧費用など損害賠償を求めていた裁判で東京地裁(青木晋裁判長)は14日、多胡運輸(群馬県高崎市)と運転者に32億8900万円の支払いを命じた。荷主(出光興産)と元請運送会社(ホクブトランスポート)の責任は問わなかった。この事故では、多胡運輸が加入していた関東交通共済協同組合(千原武美理事長)15年6月、11億8千万円を日本高速道路保有・債務返済機構(勢山広直理事長)に支払っており、トラック業界では過去に例の無い高額補償事案となった。(北原秀紀)
 タンクローリーは、東京都江東区の油槽所からさいたま市のガソリンスタンドにガソリン16キロリットル、軽油4キロリットルを輸送していた。8月3日午前5時52分、5号池袋線下りを走行中、熊野町ジャンクション(JCT)の急なカーブを曲がり切れず横転し、左側側壁に衝突した。運転者は重傷を負い、積み荷は5時間半以上にわたり炎上。路面がゆがみ、橋桁が変形したほか、近隣のマンションの外壁も焼けるなど多くの被害が出て、首都高の全面復旧まで2カ月半かかった。
 青木裁判長は高架部分の架け替え工事の費用など17億円のほか、通行止めによる営業損失を認めた。原因については「20~30キロの速度オーバーでカーブに侵入した」と過失を認定。しかし、出光興産については「指揮監督関係が運転者に及んでいたとは認められず、使用者責任は負わない」とした。
 この事故で13年5月、関交協は保有・債務返済機構から差し押さえ債権取り立て請求の訴訟を起こされた。
 事故後トラック事業を廃業している多胡運輸に支払う危険物輸送の補償最高限度額10億円を巡って裁判となったが、1審、2審とも関交協が敗訴。7年分の利息を含めて11億8000万円を支払った。
 一方、関交協は加入している全国トラック交通共済協同組合連合会(坂本克己会長)の再共済により9億3500万円の支払いを受け、多額の損失を回避した。単独車両による事故としては国内史上最大規模となる損壊事故の業界全体に与えた影響は計り知れず、その爪痕は今も残っている。
【写真=タンクローリーが炎上し、高速道路は大きく損傷=首都高提供】

**********企業法務ナビ2016/07/19 15:10投稿)
首都高炎上の運送会社に32億円の賠償命令、使用者責任について

●はじめに
2008年に首都高速でタンクローリーが炎上した事故をめぐり、首都高速道路会社が損害賠償を求めていた訴訟で東京地裁は14日、運送会社と運転手に約32億8900万円の支払を命じました。一方で運送委託をした出光興産に対しての請求は棄却しました。今回は不法行為に基づく損害賠償請求と使用者責任について見ていきます。
●事件の概要
2008年8月3日早朝、群馬県高崎市の運送会社多胡運輸所有のタンクローリーが首都高速熊野町ジャンクション内のカーブで速度超過により曲がりきれず横転・炎上しました。タンクローリーには約16キロリットルのガソリンと4キロリットルの軽油を積載し、埼玉県内のガソリンスタンドに向けて輸送していました。積み荷の燃料は約5時間半に渡って炎上し2階建構造の上層部分の路面を熱で変形させました。道路は長さ40m、深さ最大60cm沈下し北池袋から板橋JCTまでが上下線とも通行止めとなりました。8月9日には片側1車線通行で仮復旧したものの全面復旧までには約2ヶ月半を要しました。首都高速道路会社は多胡運輸と運転手および輸送を発注した出光興産に復旧工事費と逸失利益分で約45億円の賠償を求め東京地裁に提訴していました。
●不法行為による損害賠償責任の要件
故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負います(民法709条)。その趣旨は損害を補填することによる被害者の保護と損害の公平な分担を図る点にあります。以下要件について見ていきます。
(1)故意・過失
「故意」とは、自己の行為により権利侵害が発生することを認識・認容している心理状態を言います。「過失」とは結果発生の予見可能性があるのに、これを回避する行為義務を怠ったことをいいます(東京地判昭53年8月3日)。その判断基準はその者の職業や身分から通常求められる注意義務に反していないかで判断されることになります。
(2)権利・利益の侵害
他人の権利または法律上保護される利益を侵害するとは、すなわち行為が違法であることを意味していると言われております。民法上違法と言えるためには侵害された利益と行為態様の相関関係によって決まるとされております。利益が生命や身体といった重大なものであれば行為態様が軽微であったとしても違法性が肯定されるということです。
(3)損害の発生
不法行為における損害とは一般的に不法行為があった場合と無かった場合との利益状態の差を金銭で評価したものといわれております(差額説)。たとえば怪我をして病院に行った場合の治療費と仕事ができず得られなかった収入分が損害ということになります。判例も基本的にこの差額説を取っていると言われておりますが、怪我自体を損害と捉え、損害額は個別に算定するという立場(損害事実説)にも理解を示す例もあります(最判昭56年12月22日)。
(4)因果関係
416条は債務不履行に関して、賠償の範囲を原則通常生ずべき損害に限定し、予見可能性のない損害を含まないとしています。つまり債務不履行と相当因果関係に立つ損害に限定しているということです。判例は不法行為においても416条を類推適用し損害とは相当因果関係の範囲内としています。
●使用者責任について
715条によりますと、他人を使用する者は、被用者が事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負うとしています。使用者に代って事業を監督する者も同様としています(2項)。要件は①他人を使用していること②被用者が業務の執行について第三者に損害を与えたこと③上記不法行為の要件を満たすことが挙げられます。「他人を使用」とは実質的な指揮監督関係があればよく、雇用形態等を問いません。「業務の執行について」とは、「業務の執行のために」より広く、「業務の執行に際して」よりは狭い概念と言われております。例えば、配達途中で窃盗を働いた場合には使用者責任は生じません。
●コメント
本件でタンクローリーの運転手は約20キロ~30キロの速度オーバーをしていたと言われております。それにより首都高でのカーブを曲がりきれずに横転しました。ガソリンという危険物を常時運搬する輸送業者としては、20t近い積載で速度超過をすれば事故につながることは予見することができたと言えます。それにもかかわらず回避義務を怠ったことにより横転炎上に至ったことについては、過失は否定できないでしょう。損害との因果関係も認められますので、不法行為の要件は満たすことになります。そして運転手は多胡運輸に雇用され、指揮監督の下に業務についていたと言えるので「他人を使用」していたと言えます。そして輸送業務中に事故を起こしたことから「業務の執行について」損害を与えたと言え、多胡運輸には使用者責任が認められたと言えるでしょう。一方で多胡運輸は出光興産にとっては下請業者と言えますが、判決では使用者責任を否定しました。個別の配送業務については出光が運転手に対して指揮監督する地位にあったとは言えないとしています。このように使用者責任が生じるための重要なポイントは不法行為者との間に指揮監督関係が認められるかだと言えます。事故を起こした場合、重大な損害を生じさせる危険のある下請業者を使用している場合には自社が指揮監督権を持っているかを確認し、持っている場合には事故防止を徹底させることが重要と言えるでしょう。
**********


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8年前の首都高横転炎上・・・前代未聞の事故に似合う地裁のトンデモ判決から見えてくる安中タゴ事件の怪

2016-07-15 23:59:00 | 首都高炎上とタゴ運輸
■一昨日の夜から今朝にかけて当会のブログに異変が起きました。「多胡運輸」のキーワードでのアクセスが以上に増えたためです。チェックしたところ、7月14日の晩から夜中にかけて、時事通信、中日新聞(共同通信配信)、産経新聞および朝日新聞が次のネット記事を配信したことが原因のひとつだと思われることが分かりました。

 これらの記事には、「多胡運輸」の言葉は出てきません。あくまで、「群馬県高崎市の運送会社と運転手」「運転手の男性や、輸送業務を委託した出光興産など」「運転手や所属する運送会社など」としか書かれていません。

 とりあえず報道記事を見てみましょう。

**********時事2016年07月14日18:25
運送会社に32億円賠償命令=首都高炎上、出光の責任否定-東京地裁
 首都高速で2008年にタンクローリーが横転、炎上した事故をめぐり、首都高速道路会社が復旧工事費などの損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁(青木晋裁判長)は14日、群馬県高崎市の運送会社と運転手=業務上失火罪で有罪確定=に約32億8900万円の支払いを命じた。元請け会社にガソリン運搬を委託した出光興産などへの請求は棄却した。
 青木裁判長は、高架部分の掛け替え費用約17億円のほか、通行止めによる営業損失などを認めた。一方、出光興産については「指揮監督関係が運転手に及んでいたとは認められず、使用者責任は負わない」と判断した。
 判決によると、事故は08年8月、東京都板橋区の首都高池袋線で発生。火災で変形した高架部分の掛け替えが必要となり、現場付近は2カ月余り通行止めとなった。

**********中日新聞2016年7月14日 18時52分
首都高火災に32億円賠償命令 出光興産の責任は認めず
 首都高速で2008年にタンクローリーが炎上した事故を巡り、橋の架け替えなどの損害が生じたとして、首都高速道路が運転手の男性や、輸送業務を委託した出光興産などに賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は14日、男性と勤務先の運送会社に計約32億8千万円の支払いを命じた。出光への請求は棄却した。
 運送会社が加入していた共済から約10億円が首都高側に支払われたが、熱による橋桁の変形や通行規制で損害額が膨らんでいた。
 事故車に出光のマークがあったことから、首都高は「出光には下請けへの使用者責任がある」と主張していた。
(共同)

**********産経新聞2016年7月14日18:57
運転手と運送会社に32億円賠償命令 首都高タンクローリー炎上、橋の架け替えなど損害
 首都高速で平成20年にタンクローリーが炎上した事故を巡り、橋の架け替えなどの損害が生じたとして、首都高速道路が運転手の男性や、輸送業務を委託した出光興産などに賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は14日、男性と勤務先の運送会社に計約32億8000万円の支払いを命じた。出光への請求は棄却した。
 運送会社が加入していた共済から約10億円が首都高側に支払われたが、熱による橋桁の変形や通行規制で損害額が膨らんでいた。事故車に出光のマークがあったことから、首都高は「出光には下請けへの使用者責任がある」と主張したが、青木晋裁判長は「個別の運送業務について、出光が運転手を指揮監督する地位にあったとは言えない」と判断した。首都高速道路は「判決の内容を検討し、関係者と協議して今後の対応を決めたい」としている。

**********朝日新聞デジタル2016年7月14日23時25分
運転手らに32億円支払い命令 首都高で横転炎上 地裁
 東京都板橋区の首都高速5号線で2008年8月、タンクローリーが横転し炎上した事故で、首都高速道路(東京都)が運転手の男性や所属する運送会社などを相手取り、復旧費用や通行止めで受けた損失分の賠償を求めた訴訟の判決が14日、東京地裁であった。青木晋裁判長は、事故の原因は運転手らにあるとして、約32億8900万円の支払いを男性と運送会社に命じた。
 判決によると、男性は出光興産の依頼で、20キロリットルのガソリンなどを運んでいた。事故の原因について判決は「運転手がカーブに20~30キロの速度オーバーで進入した」と認定。男性に重大な過失があると認めた。
 首都高側は、出光興産に対しても「下請けを指揮監督しており、使用者責任がある」として損害賠償を求めていたが、判決は「発注者にすぎない」として退けた。
**********

■さらに次のネットニュースサイト記事も見つかりました。この記事には、首都高の訴訟の相手先が「運転手の男性(業務上失火罪で有罪確定)、運送会社、依頼元の出光興産」と更に詳しく記してあります。そして後段には、「多胡運輸」の名前を出てきます。

**********林檎舎ニュース2016年7月15日
首都高速 熊野町ジャンクション火災事故のタンクローリー横転・炎上事故で約32億円の支払い命じる判決

 2008年8月3日、東京都板橋区の首都高速5号線池袋下りを走行中のタンクローリーが「熊野町ジャンクション」内の急カーブを曲がり切れずに横転・炎上した事故(熊野町ジャンクション火災事故)で、首都高速道路(東京都)が運転手の男性(業務上失火罪で有罪確定)、運送会社、依頼元の出光興産に対して復旧費用や通行止めで受けた損失分の賠償を求めた訴訟の判決が7月14日、東京地裁であり、「事故の原因は運転手らにある」として、約32億8900万円の支払いを運転手と運送会社に命じた。
 首都高側は、出光興産に対しても「下請けを指揮監督しており、使用者責任がある」として損害賠償を求めていたが、出された判決では「発注者にすぎない」として退けた。
 この事故の原因について、判決は「運転手がカーブに20~30キロの速度オーバーで進入した」と認定したうえで、運転手の男性に重大な過失があると認めたもの。
 支払いを命じられた群馬県高崎市の運送会社「多胡運輸(たごうんゆ)」は「控訴するつもりはないが、廃業し賠償金を払うのは難しい」とコメントしている。

★熊野町ジャンクション火災事故
 2008年8月3日(日)午前5時52分、首都高速道路の5号池袋線下りを走行中のタンクローリーが「熊野町ジャンクション」内の急な右カーブを曲がり切れずに横転、左側側壁に衝突する事故が発生した。
 タンクローリーは群馬県高崎市の運送会社・多胡運輸所有で、東京都江東区の油槽所から埼玉県さいたま市のガソリンスタンドに向けてガソリン16キロリットル、軽油4キロリットルを輸送していた。
 この事故で運転手は腰を強く打ち重傷、積み荷は5時間半あまりに渡って炎上し、同日11時34分に鎮火した。
 火災の熱により上下2階建て構造で上を走る上り線の路面がゆがみ、鉄製の橋桁が長さ40mに渡って変形、最大60cm沈み込んだ。また、熊野町ジャンクションの近隣のマンションの外壁が火災の熱で焼けるという単独車両による事故としては国内史上最大規模の損壊事故となった。
**********

■この記事から見えてくることは、次のことです。(文中敬称略)

(1)東京地裁の裁判長が、判決で支払いを命じたのは、既に解散した多胡運輸と破産宣告をされたT運転手です。

(2)多胡運輸は少なくとも2年前には解散して、土地も設備も従業員も「㈱美正」が引き継いでいます。多胡運輸の代表者だった多胡茂美も既にこの世に存在しません。そして同社の運転手で事故を起こしたTも、既に自分で掛けていた生命保険の保険料などの財産をすべて首都高に没収され、禁治産者同然の身となっています。

(3)一方、荷主の出光興産㈱(本社東京都港区)や、多胡運輸の元請のホクブトランスポート㈱(本社高崎市)は発注者にすぎないとされ、賠償責任から完全に免れました。

(4)通常であれば、荷主としての責任や元請としての責任を問われるところですが、裁判所は、そうした立場を一切勘案せず、「発注者に過ぎない」としました。

(5)この背景を考える時、多胡運輸の社長だった多胡茂美の実兄である多胡邦夫が単独犯とされた1995年に安中市で発覚した土地開発公社を舞台にした史上空前の巨額詐欺横領事件の幕引きが参考になります。

(6)安中市民が「タゴ51億円事件」と呼んでいるこの史上空前の横領事件では、自民党の重鎮である中曽根派の息のかかった県議や市議ら政治家が多数関与していたため、警察の捜査や検察の起訴の動向が注目されましたが、結局、公社の職員だった多胡邦夫の単独犯行とされ、懲役14年(未決拘留200日を含む)の判決で幕を閉じました。

(7)一方、監督責任のある歴代の公社理事・監事や安中市市長ら幹部、上司、同僚らも、当会によって住民監査請求や住民訴訟で損害賠償責任を追及されましたが、裁判所は最高裁まで含めて、土地開発公社は安中市とは別の法人だから、安中市民には損害が無く、したがって訴訟資格が無いという理由で棄却或は却下されました。

(8)今回も、中曽根康弘とかかわりの強い出光佐三が創業者の出光興産、長男の中曽根弘文の仲人を務めた御仁が代表取締役を務めるホクブトランスポートに賠償責任が当然降りかかってきてもいいはずの事案ですが、裁判所はこうした中曽根派の企業が責任を回避できるように配慮したことがうかがえます。

(9)結局、損害賠償能力のない、しかも実体さえない多胡運輸と、事故で破産した元トラック運転手とスケープ・ゴートに仕立て上げて、首都高としては史上空前の大規模損壊事故は、裁判所の異常な判決で幕引しようとする当局の思惑が見えたことになります。


■当会としては首都高、この原告の首都高らは、首都高の利用者を意識して、きちんと損害賠償を原因者に負担させるという常識的な対応をこれまで取ってきたことは当会としても確認済みです。このため、今回の東京地裁のトンデモ判決を踏まえて、首都高とそのお目付け役の独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構がきちんと控訴するかどうか、を慎重に注視してまいります。

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多胡運輸=書類上消滅、ホクブ=新社屋建設中、出光=昭和シェルとの経営統合で霞む首都高炎上事故

2015-07-31 01:02:00 | 首都高炎上とタゴ運輸
■安中市土地開発公社巨額詐欺横領事件で重要な役割を果たした元職員の実弟が経営する多胡運輸が平成20年(2008年)8月3日(日)午前5時52分に首都高5号線熊野町ジャンクション付近の右カーブ地点で起こしたタンクローリー横転炎上事故から、間もなく7年が経過しようとしています。この時期に、この事故を巡り、それぞれの利害関係者が奇しくも大きな節目を迎えているのは、何かの因縁かもしれません。

高崎市上並榎町にあるホクブトランスポートの仮社屋。

 多胡運輸については、先日当会のブログでも報じたとおり、同社社長の多胡茂美が6月27日に死去したという情報が今月半ばに当会にもたらされました。
○2015年7月12日:【緊急速報】多胡運輸の社長が先月末に死亡か!?↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1664.html

 その後、関係筋の情報によれば、多胡運輸社長の死因は肝硬変らしいことが分かりました。多胡運輸は、既に㈱美正が業務を引き継ぐ形で営業をしており、代表者も㈱美正のかたですが、依然としてホクブトランスポートとの絆は強く、安中市土地開発公社巨額横領事件で罪を一身に被った実兄の元市職員への恩義から、多胡一族の生活支援企業として、会社の名称は変わったとしても、実態は引き続き存続しているものと見られます。

■ホクブトランスポートについても、先日当会のブログで報じたとおり、今年2015年6月22日から現在の本部社屋を建て替える工事に着手しており、首都高から約34億5千万円もの巨額損害賠償金の請求を受けているとは到底思えないほどの積極投資をうかがわせています。

今年6月まで高崎市大橋町にあったホクブトランスポートの旧社屋。

 労災保険関係成立票によれば、2016年1月30日までの保険付保となっていることから、新社屋の落成は、来年2016年2月初めと見られます。


 なお、それまでの期間、ホクブトランスポートの仮社屋がどこに存在するのか調べたところ、現社屋のある場所(高崎市群馬県高崎市大橋町51)から西へ高崎経済大学方面に向かい県道29号あら町下室田線(通称「室田街道」)を750mほど進んだ国道17号線との交差点の左側の側道に入った場所にあることが判明しました。直ぐ隣りが、ONE ROOM個室ダイニングという居酒屋(高崎市上並榎町424-2)です。

 7カ月余りの仮社屋とはいえ、民族系石油資本の出光興産のロジスティックを支える「光運会」の主要メンバーで、傘下に1000台以上の車両を擁する地元の著名な運送業者にしては、随分、目立たない場所に場所を構えたものです。
○光運会↓
http://www.idemitsu.co.jp/csr/activities/cooperation/index.html#jumph22

 なお、当該国道の高架下を、信越線を隔ててさらに南側に行くと国道の下り車線側に「㈱友野測量設計事務所」(〒370-0801 群馬県高崎市上並榎町640-3、TEL:027-323-4165、測量設計業・土地関連調査士業)という設計事務所があります。『友野』といえば、ホクブトランスポートの前社長(個人)の盟友で、旧ホクブ社屋2階に同姓の旧役員がおりましたが、この人物との関係は未確認です。

 なお現在は、その旧役員の子息がSI(エスアイ)商事の代表取締役に就いているという情報も有ります。ちなみにホクブ社屋の2階には次の会社もあります。
・三愛物産(株):群馬県高崎市大橋町55、電話027-363-2266、保険業
・サンアイサービス:群馬県高崎市大橋町55、電話027-363-2266

■そして、多胡運輸やホクブトランスポートの元締めである出光興産については、首都高との裁判では被告として矢面に立っていますが、こちらも34億5千万円の賠償請求額には微塵も揺るぎなど見せておりません。7月30日の報道によれば、同社は昭和シェルの筆頭株主に浮上し、経営統合に向けて本格交渉を開始したというのです。

**********日本経済新聞電子版2015/7/30 13:51
出光、昭和シェルの筆頭株主に 経営統合へ本格交渉
 石油元売り国内2位の出光興産は、同5位の昭和シェル石油の株式の約3割を持つ親会社の英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルから株式を取得することで合意した。出光は筆頭株主となり、昭シェルとの経営統合に向けた交渉を本格化する。統合すれば、国内ガソリン販売シェアは合計で3割超と最大手のJX日鉱日石エネルギーに迫る。国内市場の縮小を受け、生き残りを目指した元売り業界の再編が加速する。
 30日午後、出光興産と英蘭シェルが発表する。

↑出光と昭和シェルの相関図。↑
 出光は昭シェルの筆頭株主である英蘭シェルが保有する35%の株式のうち約33%を取得し、昭シェルを持ち分法適用会社にする。取得額は1600億円程度になる見通し。
 出光は今後、残りの昭シェル株についても取得をめざす。具体的な方法は昭シェルと協議を進めるが、TOB(株式公開買い付け)や株式交換などを検討する。取得後に対等の精神で経営統合したい考え。
 第2位株主で昭シェル株15%を保有するサウジアラビア国営石油会社サウジアラムコも出光が筆頭株主となることを支持している。アラムコは引き続き株主としての立場を維持する方針で、原油供給などで協力する。
 世界石油メジャーの英蘭シェルは油田開発など上流事業に経営資源を集中する一環で、昭シェル株の売却方針を決定。出光興産が名乗りを上げ、昨年から経営統合も含めて交渉を進めてきた。国内元売り3位の東燃ゼネラル石油とも水面下で検討を進めたが、英蘭シェルは株式取得価格など条件面や統合後の効果などを評価し、出光を売却先に選んだ。
 出光と昭シェルの連結売上高は単純合計で約7兆6000億円。JXエネを傘下に持つJXホールディングス(HD)の約10兆9000億円(非鉄事業含む)に迫り、ガソリン販売数量シェアも約3割でJXエネとほぼ肩を並べる。
 統合すれば、両社合わせて約7000カ所のガソリンスタンドでは当面、両社のブランドを併用する方針。全国に計6カ所ある製油所を一体運営し原油調達や製品輸送などのコストを低減する。需要減少で厳しい国内の収益力をテコ入れし、出光が製油所を建設中のベトナムなど海外市場への展開を加速する。
 石油元売り大手の大型再編は2010年に新日本石油と新日鉱ホールディングスが経営統合してJXHDが発足して以来。JXHDと出光・昭シェル連合の2強が誕生することで、残る大手の東燃ゼネラル石油やコスモ石油も対策が必要になるのは必至。さらに再編の波が広がる可能性がある。
**********

■このように、20年前に発生した安中市土地開発公社を巡る総額51億円を超える巨額横領事件を契機に、多胡一族とその取り巻きが関与した起こしたその後の関連事件は、いずれも真相究明がきちんと為されないまま、幕引きされているのが特徴です。

 首都高5号線のローリー横転炎上事故についても、結局、多胡運輸の責任や、ホクブトランスポートの関与の実態が明らかにならないまま、荷主である出光興産だけが首都高と対峙しています。そして、その出光興産でさえも、昭和シェルの株を積極的に買い入れ、更なる規模拡大をめざし経営統合を視野にいれて活動しています。

 その一方で、多胡運輸は㈱美正に引き継がれたにせよ事業を継続しており、ホクブはますます社業の拡大で本社事務所を新築しており、ともに7年前の重大事故などどこ吹く風といった風情で、世にも不思議な現象を呈しているのです

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結局真相と責任がうやむやになりそうなタゴ51億円横領事件と多胡運輸ローリー首都高横転炎上事件の顛末

2013-08-13 23:44:00 | 首都高炎上とタゴ運輸
■2008年(平成20年)8月3日(日)午前5時52分、首都高5号池袋線下りを走行中のタンクローリーが、熊野町ジャンクション内の急な右カーブを曲がり切れずに横転、左側側壁に衝突しました。このタンクローリーは群馬県高崎市にある運送会社の多胡運輸所有で、東京都江東区の油槽所から埼玉県さいたま市のガソリンスタンドに向けてガソリン16キロリットル、軽油4キロリットルを輸送していました。この日から先日の8月3日が5周年目にあたります。

新宿駅の西口から北西方向に徒歩約15分のところにある多胡運輸が組合員として加盟している関東交通共済協同組合(関交協)の自社ビル。首都高が多胡運輸らを相手取り総額およそ34億5千万円の損害賠償請求の行方の鍵の一部はこの関交協にあると言えよう。地下には客席数約150席の本格的なホールがあり有料で外部にも貸し出している。

 この事故は、発生から73日後の10月14日正午頃に全面復旧しましたが、当時、首都高は、被害総額として復旧工事費20億円、通行止めに伴う通行料金の逸失利益25億円の計45億円と試算し、多胡運輸に請求すると発表しました。また、当時の記者会見において、首都高速の被害額45億円の他、首都高速利用者の経済的損失は天文学的数値として算出不能とされました。一説には数千億円とも1兆円前後とも言われました。

 ところが、単独車両による事故としては国内史上最大規模の損壊事故であったにもかかわらず、マスコミによる報道はなぜか消極的で、事故を起こしたのが多胡運輸だということも余り知らされませんでした。

■当会は、この多胡運輸が、平成7年5月18日、安中市土地開発公社を舞台にひそかに発覚した地方自治体史上最大の巨額詐欺横領事件で単独犯とされた元職員の実弟が経営していることから、事件直後からマークしていました。

 安中市民がタゴ51億円事件と呼ぶ巨額詐欺横領事件でも、マスコミはなぜか非常に消極的な報道姿勢を見せました。その理由として、警察による緘口令がマスコミに対して為されていたことが挙げられます。

 そのため、タゴ51億円事件で単独犯とされた元職員の救済策として、多胡運輸に対する手厚い保護が、地元大物政治家の後ろ盾により、高崎北部運送(現・ホクブトランスポート)を通じて与えられていたのでした。

 ところが、この首都高史上最悪の物損事故においても、マスコミによる報道はなぜか消極的で、事故を起こしたのが多胡運輸だということも余り知らされませんでした。そのため、当会では、この事故の処理についても不透明な経緯を辿るに違いないと見て、爾来、成行きを注意深く見守ってきました。

■当会は、首都高に対しても情報公開請求を幾度も行なってきました。平成23年8月3日に3年間の時効到来となるため、首都高の動きを注視していたところ、平成23年10月7日(金)に、首都高が、多胡運輸と、その元請のホクブトランスポート、さらには荷主の出光興産を相手取り、総額およそ34億5千万円の損害賠償を求める訴えを起こし、第1回口頭弁論が東京地裁で開かれたことが報じられました。

 しかし、首都高にいくら裁判情報を聞いても情報不開示という返事しかもらえないため、今度は首都高の元締めの日本高速道路保有・債務返済機構に裁判情報の開示を請求しました。

 多胡運輸が起こした首都高の歴史に名を残すこの大事故について、事故の真相と責任の所在を確認し、再発防止につなげ、安中市のタゴ51億円事件を再検証するためにも、この事故処理の情報と、事故を巡る当事者間の損賠裁判の情報が欠かせないためです。

 そこで、首都高のお目付け役の日本高速道路保有・債務返済機構に情報開示請求を平成24年11月28日付で行ったところ、同12月25日付で同機構から不開示通知が当会に送られてきました。

 そのため、平成25年1月4日付けで異議申立てをしていたところ、平成25年1月28日付で同機構から、本件を情報公開・個人情報保護審査会に諮問した旨の通知が届きました(諮問番号:平成25年(独情)諮問第3号)。

 そして、平成25年2月12日付で同審査会から、同機構が作成した情報不開示の理由説明書が送られてきて、これに対する意見書を3月6日までに提出するように通知があったので、当会は平成25年3月6日付で意見書を内閣府に提出しました。その後、現在に至るまで内閣府からは何も通知が来ていません。

■一方、ネット情報によれば、一時期、「出光が損害金を支払った」などという未確認情報が出たこともありましたが、平成24年12月14日の業界紙報道によれば、依然として首都高と多胡運輸+ホクブトランスポート+出光興産との損害賠償訴訟は継続していることが分かりました。

 さらに平成25年1月24日に関東交通共済協同組合で開かれた理事会の席上で、首都高速タンクローリー横転事故については平成25年2月20日(水)に東京地裁で第7回口頭弁論が行われることが報告され、日本高速道路保有・債務返済機構からの突然の損害賠償請求問題は「回答書を送ったが、その後は全くアクションがない」と報告されました。

■しかし、その後の状況は全く分かりません。そこで当会は直接関東交通共済協同組合を訪れて、首都高と多胡運輸らとの裁判の現況について先日、ヒヤリングを試みました。

 全国に幾つか交通共済はありますが、関東に事業所を構えているのが関東交通共済協同組合です。これは、自動車を使用した中小企業が互いに費用を払って、事故の場合の保険金などが支払われます。

 関東交通共済協同組合は、中小企業等協同組合法に基づき国土交通省関東運輸局の認可を得て、関東7都県(東京・神奈川・千葉・埼玉・茨城・栃木・群馬)のトラック運送事業者により1971年(昭和46年)5月22日に設立された協同組合です。 所在地は〒160-0023東京都新宿区西新宿7丁目21番20号(関交協ビル)(TEL:03-5337-1750、FAX:03-5337-1765)にあります。同組合は、相互扶助の精神に基づき、対人・搭乗者傷害・対物・車両の各共済事業および自動車損害賠償責任共済事業並びに事故防止、その他関連事業を運営して、運送業者によるトラック事業の為の自動車共済として、組合員の経営の安定と社会的、経済的地位の向上を目的としています。

 その自動車共済事業の掛金等は、「貨物自動車運送事業者の事故防止の徹底および経営基盤の強化ならびに第三者たる被害者の保護の見地から運輸省が積極的に指導育成している」として、共済期間の経過に応じ損金の額または必要経費に算入できることになっています。

■多胡運輸も北部トランスポートも組合員となっているこの関東交通共済協同組合、略して「関交協」を、当会では平成25年8月9日の午前10時半に訪れました。

 受付で訪問目的である情報開示の依頼を告げたところ、関交協の組合員かどうかを尋ねられました。組合員ではなく一般人である旨を告げると、受付の女性から担当部署にさっそく連絡していただきました。しかし、担当責任者のかたの所在が掴めずに、3階や5階にある各部署に所在を確認していただきました。ちょうどその時、たまたま1階に下りて来た年配の職員の方に受付のひとが担当責任者の所在を聞いたところ、その職員の方がこちらに来てくれました。当会の訪問目的を話すと、やはりタゴ運輸の問題はよく知っている様子です。それだけに当会の訪問目的についていぶかしく思われた様子でした。

 そのうち担当責任者の方の所在が判明し、受付の奥の待ち合いスペース(以前は喫茶店だったらしい)で待つように案内されました。受付の方の配慮で、冷房を強くしていただきました。それほどこの日は暑い日でした。

■やがて5分ほどすると2名の男性職員の方が現れました。関交協の橋谷田常務理事と損害サービス部損害サービス第二課の野村課長でした。

 挨拶の後、当会からまずアポイント無しで訪問したことについての非礼を詫びました。関交協側から当会の素状と訪問目的について質問があったので、最初に当会から、当会の活動概要と、今回の訪問目的について、平成7年に起きた安中市のタゴ51億円事件の背景と当会の活動内容、そして、その後平成20年に起きた首都高5号線熊野町ジャンクションでの多胡運輸所属のタンクローリーの横転炎上事故とその後の経緯、当会が首都高やその上級庁の日本高速道路保有・債務返済機構に対する情報開示請求とそれらに対する首都高や機構の対応などを説明しました。その上で、平成23年10月7日に、首都高が、多胡運輸+ホクブトランスポート(元請)+出光興産(荷主)を相手取り総額約34億5千万円の損害買収請求訴訟を起こした第1回口頭弁論が行われた件について、その後の経緯に関心がある旨を伝えました。

■当会の説明と関心事に対する関交協側の説明は次の通りでした。

「説明頂いた小川さんの活動や行動は大変理解できる。しかし我々は、あくまでも運送事業者の交通事故に対する事業という形で、組合員の多胡運輸の事故についてということなるので、個別の内容まで、我々は話したくても言えない部分がある。それはご理解いただきたい。」

「現在(首都高と多胡運輸棟との裁判が)どうなっていることについても、そちらではいろいろ情報を集めているようだが、こちらについても、契約者のほうから反対にいろいろ問題も出てくるので、本当に申し訳ないが話すことはできない。小川さんの運動は理解するが、契約者はうちの組合員なので、その内容はよく判っていても、(第3者の皆さんには)申し上げられない。」

「もちろん、(首都高の事故や裁判についても)うちの方は組合員には都度説明しているし情報は入手している。しかし、あくまでうちの組合員である多胡運輸のことについては話せない」

■以上のように、やはり組合員のことについては守秘義務のため、全く聞き出すことはできませんでした。それでも30分程度の会話で感じたことは、依然として首都高と多胡運輸らとの民事訴訟は係争中であるらしいこと、また、多胡運輸は高崎市箕郷町の本社事務所には「株式会社美正」という看板に掛け替えられていますが、裁判では被告として存在しているらしいことがうかがい知れます。

 今回の関交協の訪問では具体的な成果は全くありませんでしたが、安中市土地開発公社を舞台にしたタゴ51億円巨額詐欺横領事件のことと当会の活動については同協会に十分説明することができました。多忙中にもかかわらず応対していただいた同協会の関係者の方々にはこの場を借りて御礼申し上げます。

【ひらく会情報部】

※参考情報
**********物流ウィークリー2012年12月14日 13:19
http://weekly-net.jp/2012/12/post-1534.html
関交協に突然賠償請求 高速道路保有・債務返済機構
 08年8月、ガソリンを積んだ大型トレーラが首都高で横転、炎上するという事故が起こった。道路がトロトロに溶けるという日本の高速道路史上、未経験の大火災事故だった。4年以上経った今も、事故を起こした多胡運輸(群馬県高崎市)と首都高速道路会社との間で裁判は続いているが、多胡運輸が加入する関東交通共済協同組合(大高一夫理事長)に、今年に入って突然、日本高速道路保有・債務返済機構から損害賠償の請求書が届いていたことが本紙の取材で分かった。関交協が支払えるのは危険物特約として再共済を利用した10億円が限度。「それをはるかに上回る金額」の要求に関係者は戸惑っている。
 全面復旧までに2か月以上かかり、市民の生活から首都圏経済まで大打撃を与えた事故を起こした多胡運輸は保有車両30台。直荷主の出光興産から元請けのH運送を経由して仕事をする、いわゆる下請け業者だ。事故の2か月後、関東運輸局は同社に対し車両5台を55日間使用停止とする行政処分を行った。さらに特別監査の結果、運転者に対する指導監督違反など8項目の法律違反が判明。追加の車両停止処分と運行管理者資格者証の返納命令を発出している。
 当初、被害総額は復旧工事費20億円、通行止めに伴う通行料金の逸失利益25億円の計45億円と噂されたが、9か月後に首都高速が関交協に示した「損害見積もり」は、復旧費用17億円、営業損害15億6000万円の計32億6000万円だった。その頃、関交協には、東京都建設局(排水システム被害ほか)、東京ケーブルテレビジョン(配線ケーブル全焼)、隣接するマンション(外壁被害)など首都高速以外の各方面からの損害賠償が出そろったが、現在、2次被害も含めて「ほぼ片付いた」という。
 未解決なのが首都高速に対する損害賠償。多胡運輸との裁判がいまだに続いており、損害賠償額は決定していない。そこに機構からの請求書。関交協は「まだ被害総額も確定せず、当事者の賠償額も決まっていないのに訳が分からない」と困惑。確かに民営化に際して採用された「上下分離方式」では「下」の部分、つまり道路施設は機構の所有物で、損害賠償を請求できる立場といえるが、裁判には現在も参加しておらず「突然、一方的に」加害者の保険会社に文書が送られてきた格好だ。
 首都高速に「今後、どう対応するのか」聞いてみたが、「ノーコメント」。膠着状態が続く炎上事故の裁判が、複雑な様相を見せ始めた。(土居忠幸)

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