■大同特殊鋼渋川工場から、過去76万トンもの鉄鋼スラグ、いわゆる鉱滓と呼ばれる産業廃棄物が排出され、その多くは公共事業や民間事業等で、群馬県内各地に不法投棄されてきたと見られます。その中で、あろうことか、営農環境に最も配慮しなければならない群馬県農政部が、圃場整備事業により農道等に有害物質入りの鉄鋼スラグが路盤材の名目で敷き込まれたのに、原因者に撤去を命ずるどころか、“臭いものには蓋をしてしまえ”とばかりに舗装工事を強行してしまいました。このため、市民オンブズマン群馬では、いずれ撤去する際には舗装を再び剥すことになるため、無駄な公金を投入した責任をきちんと行政にとってもらおうと考えて、住民監査請求をしたところ、群馬県監査委員が「本件舗装工事の実施に係る公金の支出については、違法又は不当というべきものはなく、請求人の主張には理由がないものと認め、これを棄却する」という最終判断を下してしまいました。そこで、当会ではやむなく住民訴訟に踏み切りました。
↑本日7月7日に前橋地裁から郵送されてきた被告群馬県の答弁書等の裁判資料。↑
裁判の開始に先立ち、前橋地裁の裁判長からいくつか指示が出ました。その中で5項目の「求釈明事項」というのがありました。これらについて、原告側に簡潔な回答を求めてきました。5項目の求釈明事項とは次のとおりです。
1 本件訴えは、地方自治法242条の2第1項4号を根拠として、群馬県知事が、吾妻農業事務所長に対して、損害賠償請求をすることを求める請求であると理解してよいか。
2 「工事名 萩生川西地区 区画整理補完3工事」(訴状2頁13行目)の基となった契約の内容等(いつ、誰との間で、どのような内容の契約か。)について説明されたい。
3 「工事名 萩生川西地区農道舗装工事(本体舗装工事)」(訴状1頁末行)の基となった契約の内容等(いつ、誰との間で、どのような内容の契約か。)について説明されたい。
4 本件舗装工事にかかる請負契約に基づきなされた公金の支出は、具体的にいかなる事実が、いかなる法に反し「違法」(訴状3頁11行目)なのか、説明されたい。
5 群馬県知事は、いかなる理由から吾妻農業事務所長に対して損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を有するのか、説明されたい。
通常、役所は、今回のような住民訴訟を含む行政訴訟の場合、裁判所と連絡を密にとって、原告住民側をいかに排除するか、相談をします。今回も、逸早く求釈明事項が出されたところを見ると、群馬県側がさっそく前橋地裁に相談したことがうかがえます。
■しかし、そうした動きはいつものことなので、当会ではあまり気にせず、求釈明事項をひとつずつクリアすべく作業を進めていました。とくに2番と3番の項目については、情報は全て群馬県側が握っているため、公文書開示請求という手段で情報を入手するしかありません。ところが、当会の情報開示請求に対して、群馬県吾妻農業事務所は1か月半も開示を先送りしてしまったのでした。当会のブログ参照↓
大同スラグ住民訴訟…7.10初公判直前に工事情報の開示を1か月半も先送りしてきた県吾妻農業事務所
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1656.html
そのため、なかなか求釈明事項の回答を地裁に出せずにいたところ、本日、被告の群馬県から答弁書が、地裁を通じて郵送されてきました。内容を見てみましょう。注目すべき個所は当会が赤色で示してあります。
*****【地裁からの送り状】*****
20150707_maebashichisai_soufujou.pdf
事務連絡兼送付書
平成27年7月6日
小川 賢 殿
前橋地方裁判所民事第2部合議係
裁判所書記官 近 藤 直 樹
T E L 027-231-4275 内線324
F A X 027-233-0901
事件番号 平成27年(行ウ)第7号 住民訴訟事件
原告 小川 賢 外1名
被告 群馬県知事大澤正明
頭書事件について,被告代理人から次の各書面が提出されたので,各副本を送付します。
(1)答弁書
(2)訴訟告知書
同封の受領書に記載し,平成27年7月9日必着でご返送ください。
よろしくお願いします。
*****【受領書】*****
受 領 書
前橋地方裁判所民事第2部合議係 御中
事件番号 平成27年(行ウ)第7号 住民訴訟事件
原告 小川 賢 外1名
被告 群馬県知事大澤正明
頭書事件につき,次の各書面の各副本を受領しました。
(1)答弁書
(2)訴訟告知書
平成27年7月 日
氏名 印
*****【被告群馬県知事からの答弁書】*****
20150707_gunmaken_toubensho.pdf
平成27年(行ウ)第7号 住民訴訟事件
原 告 小 川 賢 外1名
被 告 群馬県知事 大澤正明
答 弁 書
平成27年7月3日
前橋地方裁判所民事第2部合議係 御中
〒371-0026
前橋市大手町三丁目4番16号
石原・関・猿谷法律事務所(送達場所)
電 話 027-235-2040
FAX 027-230-9622
被告訴訟代理人弁護士 関 夕 三 郎
同 弁護士 笠 本 秀 一
同 指定代理人 福 島 計 之
同 指定代理人 播 磨 幸 三
同 指定代理人 吉 田 輝 彦
同 指定代理人 篠 原 孝 幸
被 告 指 定 代 理 人 石 澤 隆 之
同 指 定 代 理 人 安 藤 敏
第1 請求の要旨(趣旨)に対する答弁
1 本案前の答弁
(1)原告らの本件訴えをいずれも却下する
(2)訴訟費用は原告らの負担とする
2 本案に対する答弁
(1)原告らの請求をいずれも棄却する。
(2)訴訟費用は原告らの負担とする。
との裁判を求める。
第2 本案前の主張
1 住民訴訟は,監査請求前置主義が採用されているところ(地方自治法242条の2第1項),住民訴訟で請求することが認められる違法な行為又は怠る事実は,監査請求において対象としていなかった行為又は怠る事実を新たに訴訟の段階で請求の対象とすることを認めない趣旨と解されている(松本英昭「新版逐条地方自治法〔第5次改訂版〕956頁」)
2 ここで,原告らは,住民監査請求において,本件舗装工事は公金の不当な支出に当たる旨を主張しており,違法な行為又は怠る事実を主張していない(甲10の第3の3項(3頁)参照)。
すなわち,本訴における原告らの違法な行為に係る請求は,本訴において新たに請求の対象とするものであり,適法な住民監査請求を経ていない。
3 よって,原告らの本訴請求は,訴訟要件を充たさないので,却下されなければならない。
第3 請求の原因(ただし,平成27年5月26日付け訴状訂正申立書及び同29日付け訴状訂正申立書による訂正後のもの。)に対する認否
1 「第2 当事者」について
(1)(1)は,認める。
(2)(2)は,一般論としては認めるが,本件について被告がそのような義務を有することは争う。
(3)(3)は,認否の必要を認めない。
2 「第3 住民監査請求」について
(1)(1)は,認める。
(2)(2)は,認める。
(3)(3)は,認める(なお,監査結果の日付が平成27年8月30日とされているが,平成27年3月30日の誤記と思われる。)。
3 「第4 群馬県の損失」は,否認する。
4 「第5 本件契約の違法性」について
(1)(1)は,否認ないし争う。
(2)(2)は,原告らによって住民監査請求が行われたことは認め,その余は否認する。なお,・吾妻農業事務所側の見解は,甲10の13頁以下に摘示されているとおりである。
(3)(3)は,監査報告書中(16頁)に原告が主張する内容が指摘されていることは認め,その余は否認する。
(4)(4)は,群馬県吾妻農業事務所において平成26年6月11日に本件舗装工事に(つき開札を行い,翌12日に訴外池原工業株式会社との間で本件契約を529万2000円で締結し,その後,同年7月11日に請負額を649万0800円に変更したことは認め,その余は否認する。
(5)(5)は,否認する。
(6)(6)は,否認する。群馬県吾妻農業事務所の見解は,「いわれのない風評被害の発生を防止するため,予定よりも早期に舗装すべきと判断した」とされており(甲10の14頁),風評被害の防止は,舗装を急いだ理由ではなく,予定よりも工期を早めた理由と認められる。
(7)(7)は,平成26年2月19日の衆議院予算委員会において,石関議員が鉄鋼スラグについて質問をしたこと,国土交通省が行った調査において「半田改良その4工事」の盛土からふっ素が基準値を超えて検出されたことは認め(甲7の別添3の一覧表のNo7),その余は不知。
(8)(8)は,否認ないし争う。
(9)(9)は,争う。
5 「第6 まとめ」について
(1)第1段落は,否認する。先に述べたとおり,本件舗装工事は元々予定されていたものである。
(2)第2段落は,撤去作業が原告の主張のとおり進められたことは認めるが,それが大同特殊鋼株式会社の費用で行われたことについては不知。
(3)第3段落は,不知。
(4)第4段落は,否認する。
(5)第5段落は,否認ないし争う。
(6)第6段落は,平成22年10月15日付けの通知(甲9)が存在することは認め,その余は否認ないし争う。
(7)第7段落は,否認ないし争う。
第4 被告の主張
住民訴訟は,住民監査請求の対象とされる「違法若しくは不当な公金の支出,財産の取得,管理若しくは処分,契約の締結若しくは履行若しくは債務若しくは負担」又は「違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実」(地方自治法242条1項)のうち,違法な行為又は怠る事実についてのみ認められる訴訟類型である(同法242条の2第1項柱書き)。
そして,ここにいう「違法」とは,法令の規定に違背することをいうものと解されるところ(前掲松本英昭945頁)),原告らの主張には,吾妻農業事務所長の法令違背の摘示がない。
要するに,原告らの主張は,本件舗装工事の当不当を論ずるものに過ぎないのであり,原告らの本訴請求には理由がない。
以 上
*****【訴訟告知書】*****
20150707_gunmaken_soshoukokuchisho.pdf
平成27年(行ウ)第7号 住民訴訟事件
原 告 小川賢,外1名
被 告 群馬県知事 大澤正明
訴訟告知書
平成27年7月3日
前橋地方裁判所民事第2部合議係 御中
告知人(被告)訴訟代理人弁護士 関 夕 三 郎
同 弁護士 笠 本 秀 一
同 指定代理人 福 島 計 之
同 指定代理人 播 磨 幸 三
同 指定代理人 吉 田 輝 彦
同 指定代理人 篠 原 孝 幸
同 指定代理人 石 澤 隆 之
同 指定代理人 安 藤 敏
上記当事者間の頭書事件について,告知人は,下記の者に対し,訴訟告知をする。
記
〒371-8560
前橋市大手町一丁目1番1号
西部農業事務所長(平成26年8月18日当時の吾妻農業事務所長)
狩 野 伸 雄
第1 告知の理由
1 上記事件は,原告らが,告知人に対し,違法な財務会計上の行為を行った職員等に対して損害賠償等を請求するよう求める事件である(地方自治法242条の2第1項4号。いわゆる4号請求)。このような4号請求事件では,告知人は,当該職員に対し,遅滞なく訴訟告知をしなければならないとされている(地方自治法242条の2第7項)。
2 ところで,本件では,訴状において当該職員につき「吾妻農業事務所長」と特定されている。これは,本件行為当時の吾妻農業事務所長と解される。
3 そこで,告知人は,当時の吾妻農業事務所長である被告知人に対し,地方自治法242条の2第7項に基づき,訴訟告知をする。
第2 訴訟の程度
上記事件は,前橋地方裁判所において,第1回口頭弁論期日が平成27年7月10日午後1時10分に指定されている。
以上
********************
■驚くべきことに、少しも事の重大性を理解しようとしていません。これが我々が毎月多額の税金を支払っている公務員だと思うとまことにやりきれない気持ちになります。
被告群馬県は、「本案前の主張」として、なんとか住民側を門前払いすべく、とんでもない論理を展開しています。例えば「住民訴訟で請求することが認められる違法な行為又は怠る事実は、監査請求において対象としていなかった行為又は怠る事実を新たに訴訟の段階で請求の対象とすることを認めない趣旨と解されている」とか、「原告らは本件舗装工事は公金の不当な支出に当たる旨を主張しており、違法な行為又は怠る事実を主張していない」などとイチャモンをつけて、「原告らの本訴請求は、訴訟要件を満たさない」とまで言い切っています。
このことは、裏返せば、大同スラグ問題の根深さを認識しており、実質的な審理に入ると、いくら裁判所が親身になってくれたとしても、不利になることを内心承知しているものと見られます。
それだけに、いつもはトンデモない判決を出す前橋地裁ですが、このスラグ問題に絡む住民訴訟ではどのような判断が下されるのか注目されます。
もっとも、それは誰がこの事件の裁判長となるのかで、大きく見方が変わってくることも事実です。館林市土地開発公社を巡る巨額公金使途不明にかかる住民訴訟や、富岡市丹生地区の県有地不法占拠及び廃棄物処理法違反にかかる住民訴訟を指揮した女性裁判官のような立派な裁判長の場合、これは最初から住民側が敗訴したも同然です。
■それでは続いて、答弁書に記載された訴状の各項目に対する認否について、対比させながら見てみましょう。
********************
訴 状
平成27年4月30日
前橋地方裁判所 御中
第2 当事者
(1) 原告らは群馬県の住民であり納税者である。
→認める。
(2) 被告は、群馬県知事であり、群馬県が受けた損害・損失について、賠償・不当利得返還請求すべき義務を有する者である。
→一般論としては認めるが、本件について被告がそのような義務を有することは争う。
(3) 訴外 池原工業株式会社 佐藤建設工業株式会社 大同特殊鋼株式会社
→認否の必要を認めない。
第3 住民監査請求
(1) 平成27年1月30日、原告らは群馬県監査委員に、地方自治法第242条第1項により、「工事名 萩生川西地区農道舗装工事」(以下、「本件舗装工事」という。)にかかる請負契約(以下、「本件契約」という。)について措置請求(甲第1号証)を行った。
→認める。
(2) 平成27年2月16日、原告らは群馬県監査委員に対して、地方自治法第242条第6項の規定に基づき、意見の陳述(甲第3号証)を行った。
→認める。
(3) 平成27年3月31日、原告らは、請求棄却の監査結果(平成27年8月30日付、群監第202-25号)(甲第10号証)を受け取ったが不服である。
→認める(なお、監査結果の日付が平成27年8月30日とされているが、平成27年3月30日の誤記と思われる。)
第4 群馬県の損失
(1) 本件契約に基づいて群馬県吾妻農業事務所長が支出した6,490,800円は、群馬県の公金で負担すべき理由がなく、群馬県の損失である。
→否認する。
第5 本件契約の違法性
(1) 本件契約は、群馬県が本件舗装工事以前に、同じ場所で不法投棄された「工事名 萩生川西地区 区画整理補完3工事」で使用された有害物質を含む路盤材を、本来、原因者の費用で撤去させるべきところ、それを怠ったうえに、有害物質に蓋をするために施工されたものであり、そもそも不要で、違法な工事であった。
→否認ないし争う。
(2) 原告らは、東吾妻町萩生地区で、産業廃棄物として群馬県が認めた大同特殊鋼渋川工場由来の有害スラグが混入され、無許可処理された偽装再生砕石が敷砂利として使われていることを住民監査請求で指摘した。ところが、吾妻農業事務所は「下層路盤工として使用した」と反論した。
→原告らによって住民監査請求が行われたことは認め、その余は否認する。なお、吾妻農業事務所側の見解は、甲10の13頁以下に摘示されているとおりである。
(3) しかし、監査委員は「路面敷砂利として積算しているので、農村整備課及び吾妻農業事務所の説明は一貫性の低いものである」と指摘しており、原告らは「敷砂利」ということで間違いはないと考えている。
→監査報告書中(16頁)に原告が主張する内容が指摘されていることは認め、その余は否認する。
(4) にもかかわらず、群馬県吾妻農業事務所は、この有害スラグ敷砂利に蓋をする目的で、平成26年6月11日に本件舗装工事を吾妻農業事務所で入札にかけ、翌6月12日に訴外池原工業株式会社と本件契約を5,292,000円で締結した。さらに、群馬県吾妻農業事務所は、なぜか同年7月11日になり、池原工業株式会社と、本件舗装工事にかかる変更契約を6,490,800円で締結した。
→群馬県吾妻農業事務所において平成26年6月11日に本件舗装工事につき開札を行い、翌12日に訴外池原工業株式会社との間で本件契約を529万2000円で締結し、その後、同年7月11日に請負額を649万0800円に変更したことは認め、その余は否認する。
(5) だが、この有害スラグは、平成26年6月11日の入札時点で、既に廃棄物であることが、群馬県環境森林部廃棄物・リサイクル課や、排出者である訴外大同特殊鋼株式会社自身が認めていた。
→否認する。
(6) 吾妻農業事務所は、有害スラグが施工された道路について、舗装を急いだ理由を、「いわれなき風評被害を防ぐ」と主張している。
→否認する。群馬県吾妻農業事務所の見解は、「いわれのない風評被害の発生を防止するため、予定よりも早期に舗装すべきと判断した」とされており(甲10の14頁)、風評被害の防止は、舗装を急いだ理由ではなく、予定よりも工期を早めた理由と認められる。
(7) しかしこれまでにも、平成26年2月19日の第186回国会予算委員会の場で、地元選出の石関貴史・衆議院議員が質問し、さらに、国土交通省の「半田その4改良」現場において平成26年3月の分析調査で有害物質が検出され騒ぎになっていた。
→平成26年2月19日の衆議院予算委員会において、石関議員が鉄鋼スラグについて質問をしたこと、国土交通省が行った調査において「半田改良その4工事」の盛土からふっ素が基準値を超えて検出されたことは認め(甲7の別添3の一覧表のNo7)、その余は不知。
(8) 従って、吾妻農政事務所は、農政の重要な柱のひとつである「食の安全」に配慮して、訴外大同特殊鋼株式会社の負担で有害スラグ敷砂利を撤去することを最優先とすべきであった。このことは原告らが再三、群馬県農政部農村整備課を通じて吾妻農業事務所に要請していたが、結果的に、吾妻農業事務所は、原告らの要請を無視して、本件舗装工事を強行してしまった。
→否認ないし争う。
(9) 産業廃棄物が農道に大量に不法投棄されているにもかかわらず、それを撤去しないまま、本件舗装工事により、産業廃棄物の上部に蓋をしたことは、不法投棄という違法行為を隠ぺいする目的で為されたものであるから、本件契約にかかる支出もまた違法である。
→争う。
第6 まとめ
そもそも、本件舗装工事が必要となった原因は、平成26年1月27日に群馬県環境森林部廃棄物・リサイクル課が訴外大同特殊鋼株式会社渋川工場に、廃棄物処理法に基づく立入検査がきっかけで、同社が排出してきた鉄鋼スラグが産業廃棄物であることが世間に知られて、平成27年3月までに、国や県や渋川市がそれまでに施工した公共工事で、大量に使用されてきたことが判明し、さらに鉄鋼スラグには有害物資が基準値を超えて含有していることも判明したためである。
→否認する。先に述べたとおり、本件舗装工事は元々予定されていたものである。
このため、国の水資源機構は平成27年6月11日に群馬用水の管理道路に使用されていた鉄鋼スラグの撤去作業を決断し、平成27年12月26日に、大同特殊鋼株式会社の費用で全量の撤去作業を完了している。
→撤去作業が原告の主張のとおり進められたことは認めるが、それが大同特殊株式会社の費用で行われたことについては不知。
また、渋川市も平成8年渋川スカイランドパーク建設当時、大同特殊鋼由来の鉄鋼スラグ砕石を路盤材として使用してきたが、この路盤材の有害性が問題となり、渋川市が撤去したあと、当該撤去費用を、大同特殊鋼が負担することを渋川市に申し入れて、渋川市はこれを了承した経緯がある。
→不知。
いずれにしても、平成26年6月11日の時点では、既に大同特殊鋼渋川工場由来の鉄鋼スラグは、その有害性がひろく認識されており、群馬県自身も産業廃棄物であることを認識していたことは明らかである。
→否認する。
もともと、大同特殊鋼から排出された鉄鋼スラグは「鉱さい」として分類される産業廃棄物であり、食の安全性が担保されるべき農地に隣接する農道に使用すること自体、違法である。
→否認ないし争う。
群馬県県土整備部は、平成22年10月15日付で監第647-003-1号として、監理課建設政策室長の倉嶋敬明により、吾妻農業事務所を含む県土整備部内所属長・土木事務所長・関係機関の長宛の、「砕石骨材(クラッシヤラン:C-40及びC-100)にクラッシャラン鉄鋼スラグ(CS-40)をプレンドした骨材の取扱いについて」と題する通知を、本件契約の妥当性の根拠として挙げているが、実際には、県土整備部が大同特殊鋼からの要請を受けて、リサイクル法に定めた「再生砕石」を偽装したものであり、佐藤建設工業株式会社が、自社の砕石場から切り出した天然の砕石骨材と、大同特殊鋼株式会社が排出した基準値以上の有害物質を含む有害スラグを混合して、主に群馬県内に広く不法投棄される状況を作り出した不法書類であるから、群馬県農政部農村整備課と吾妻農業事務所の主張は失当である。
→平成22年10月15日付けの通知(甲9)が存在することは認め、その余は否認ないし争う。
蓋をされたままの大量の鉄鋼スラグの撤去費用や復旧費用は、原因者に負担を求めるのが当然であるところ、「臭い物には蓋」という間違った判断により、本件舗装工事に係る本件契約を、訴外池原工業株式会社と締結し、公金を支出することを決定した群馬県吾妻農業事務所長は、群馬県が被った損失を賠償する責務がある。
→否認ないし争う。
********************
■ここまでくると、いかに公務員が無責任であるかがよく認識できると思います。刑事罰を犯しても、罰金だけで執行猶予付きとなるし、2年経過したが異動で違う部署に移り、本当に責任感のある職員というのがいまやシーラカンス化してしまうほど珍しくなってしまいました。今回の住民訴訟を通じて、県職員らの無責任意識に警鐘を鳴らしたいと思います。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
↑本日7月7日に前橋地裁から郵送されてきた被告群馬県の答弁書等の裁判資料。↑
裁判の開始に先立ち、前橋地裁の裁判長からいくつか指示が出ました。その中で5項目の「求釈明事項」というのがありました。これらについて、原告側に簡潔な回答を求めてきました。5項目の求釈明事項とは次のとおりです。
1 本件訴えは、地方自治法242条の2第1項4号を根拠として、群馬県知事が、吾妻農業事務所長に対して、損害賠償請求をすることを求める請求であると理解してよいか。
2 「工事名 萩生川西地区 区画整理補完3工事」(訴状2頁13行目)の基となった契約の内容等(いつ、誰との間で、どのような内容の契約か。)について説明されたい。
3 「工事名 萩生川西地区農道舗装工事(本体舗装工事)」(訴状1頁末行)の基となった契約の内容等(いつ、誰との間で、どのような内容の契約か。)について説明されたい。
4 本件舗装工事にかかる請負契約に基づきなされた公金の支出は、具体的にいかなる事実が、いかなる法に反し「違法」(訴状3頁11行目)なのか、説明されたい。
5 群馬県知事は、いかなる理由から吾妻農業事務所長に対して損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を有するのか、説明されたい。
通常、役所は、今回のような住民訴訟を含む行政訴訟の場合、裁判所と連絡を密にとって、原告住民側をいかに排除するか、相談をします。今回も、逸早く求釈明事項が出されたところを見ると、群馬県側がさっそく前橋地裁に相談したことがうかがえます。
■しかし、そうした動きはいつものことなので、当会ではあまり気にせず、求釈明事項をひとつずつクリアすべく作業を進めていました。とくに2番と3番の項目については、情報は全て群馬県側が握っているため、公文書開示請求という手段で情報を入手するしかありません。ところが、当会の情報開示請求に対して、群馬県吾妻農業事務所は1か月半も開示を先送りしてしまったのでした。当会のブログ参照↓
大同スラグ住民訴訟…7.10初公判直前に工事情報の開示を1か月半も先送りしてきた県吾妻農業事務所
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1656.html
そのため、なかなか求釈明事項の回答を地裁に出せずにいたところ、本日、被告の群馬県から答弁書が、地裁を通じて郵送されてきました。内容を見てみましょう。注目すべき個所は当会が赤色で示してあります。
*****【地裁からの送り状】*****
20150707_maebashichisai_soufujou.pdf
事務連絡兼送付書
平成27年7月6日
小川 賢 殿
前橋地方裁判所民事第2部合議係
裁判所書記官 近 藤 直 樹
T E L 027-231-4275 内線324
F A X 027-233-0901
事件番号 平成27年(行ウ)第7号 住民訴訟事件
原告 小川 賢 外1名
被告 群馬県知事大澤正明
頭書事件について,被告代理人から次の各書面が提出されたので,各副本を送付します。
(1)答弁書
(2)訴訟告知書
同封の受領書に記載し,平成27年7月9日必着でご返送ください。
よろしくお願いします。
*****【受領書】*****
受 領 書
前橋地方裁判所民事第2部合議係 御中
事件番号 平成27年(行ウ)第7号 住民訴訟事件
原告 小川 賢 外1名
被告 群馬県知事大澤正明
頭書事件につき,次の各書面の各副本を受領しました。
(1)答弁書
(2)訴訟告知書
平成27年7月 日
氏名 印
*****【被告群馬県知事からの答弁書】*****
20150707_gunmaken_toubensho.pdf
平成27年(行ウ)第7号 住民訴訟事件
原 告 小 川 賢 外1名
被 告 群馬県知事 大澤正明
答 弁 書
平成27年7月3日
前橋地方裁判所民事第2部合議係 御中
〒371-0026
前橋市大手町三丁目4番16号
石原・関・猿谷法律事務所(送達場所)
電 話 027-235-2040
FAX 027-230-9622
被告訴訟代理人弁護士 関 夕 三 郎
同 弁護士 笠 本 秀 一
同 指定代理人 福 島 計 之
同 指定代理人 播 磨 幸 三
同 指定代理人 吉 田 輝 彦
同 指定代理人 篠 原 孝 幸
被 告 指 定 代 理 人 石 澤 隆 之
同 指 定 代 理 人 安 藤 敏
第1 請求の要旨(趣旨)に対する答弁
1 本案前の答弁
(1)原告らの本件訴えをいずれも却下する
(2)訴訟費用は原告らの負担とする
2 本案に対する答弁
(1)原告らの請求をいずれも棄却する。
(2)訴訟費用は原告らの負担とする。
との裁判を求める。
第2 本案前の主張
1 住民訴訟は,監査請求前置主義が採用されているところ(地方自治法242条の2第1項),住民訴訟で請求することが認められる違法な行為又は怠る事実は,監査請求において対象としていなかった行為又は怠る事実を新たに訴訟の段階で請求の対象とすることを認めない趣旨と解されている(松本英昭「新版逐条地方自治法〔第5次改訂版〕956頁」)
2 ここで,原告らは,住民監査請求において,本件舗装工事は公金の不当な支出に当たる旨を主張しており,違法な行為又は怠る事実を主張していない(甲10の第3の3項(3頁)参照)。
すなわち,本訴における原告らの違法な行為に係る請求は,本訴において新たに請求の対象とするものであり,適法な住民監査請求を経ていない。
3 よって,原告らの本訴請求は,訴訟要件を充たさないので,却下されなければならない。
第3 請求の原因(ただし,平成27年5月26日付け訴状訂正申立書及び同29日付け訴状訂正申立書による訂正後のもの。)に対する認否
1 「第2 当事者」について
(1)(1)は,認める。
(2)(2)は,一般論としては認めるが,本件について被告がそのような義務を有することは争う。
(3)(3)は,認否の必要を認めない。
2 「第3 住民監査請求」について
(1)(1)は,認める。
(2)(2)は,認める。
(3)(3)は,認める(なお,監査結果の日付が平成27年8月30日とされているが,平成27年3月30日の誤記と思われる。)。
3 「第4 群馬県の損失」は,否認する。
4 「第5 本件契約の違法性」について
(1)(1)は,否認ないし争う。
(2)(2)は,原告らによって住民監査請求が行われたことは認め,その余は否認する。なお,・吾妻農業事務所側の見解は,甲10の13頁以下に摘示されているとおりである。
(3)(3)は,監査報告書中(16頁)に原告が主張する内容が指摘されていることは認め,その余は否認する。
(4)(4)は,群馬県吾妻農業事務所において平成26年6月11日に本件舗装工事に(つき開札を行い,翌12日に訴外池原工業株式会社との間で本件契約を529万2000円で締結し,その後,同年7月11日に請負額を649万0800円に変更したことは認め,その余は否認する。
(5)(5)は,否認する。
(6)(6)は,否認する。群馬県吾妻農業事務所の見解は,「いわれのない風評被害の発生を防止するため,予定よりも早期に舗装すべきと判断した」とされており(甲10の14頁),風評被害の防止は,舗装を急いだ理由ではなく,予定よりも工期を早めた理由と認められる。
(7)(7)は,平成26年2月19日の衆議院予算委員会において,石関議員が鉄鋼スラグについて質問をしたこと,国土交通省が行った調査において「半田改良その4工事」の盛土からふっ素が基準値を超えて検出されたことは認め(甲7の別添3の一覧表のNo7),その余は不知。
(8)(8)は,否認ないし争う。
(9)(9)は,争う。
5 「第6 まとめ」について
(1)第1段落は,否認する。先に述べたとおり,本件舗装工事は元々予定されていたものである。
(2)第2段落は,撤去作業が原告の主張のとおり進められたことは認めるが,それが大同特殊鋼株式会社の費用で行われたことについては不知。
(3)第3段落は,不知。
(4)第4段落は,否認する。
(5)第5段落は,否認ないし争う。
(6)第6段落は,平成22年10月15日付けの通知(甲9)が存在することは認め,その余は否認ないし争う。
(7)第7段落は,否認ないし争う。
第4 被告の主張
住民訴訟は,住民監査請求の対象とされる「違法若しくは不当な公金の支出,財産の取得,管理若しくは処分,契約の締結若しくは履行若しくは債務若しくは負担」又は「違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実」(地方自治法242条1項)のうち,違法な行為又は怠る事実についてのみ認められる訴訟類型である(同法242条の2第1項柱書き)。
そして,ここにいう「違法」とは,法令の規定に違背することをいうものと解されるところ(前掲松本英昭945頁)),原告らの主張には,吾妻農業事務所長の法令違背の摘示がない。
要するに,原告らの主張は,本件舗装工事の当不当を論ずるものに過ぎないのであり,原告らの本訴請求には理由がない。
以 上
*****【訴訟告知書】*****
20150707_gunmaken_soshoukokuchisho.pdf
平成27年(行ウ)第7号 住民訴訟事件
原 告 小川賢,外1名
被 告 群馬県知事 大澤正明
訴訟告知書
平成27年7月3日
前橋地方裁判所民事第2部合議係 御中
告知人(被告)訴訟代理人弁護士 関 夕 三 郎
同 弁護士 笠 本 秀 一
同 指定代理人 福 島 計 之
同 指定代理人 播 磨 幸 三
同 指定代理人 吉 田 輝 彦
同 指定代理人 篠 原 孝 幸
同 指定代理人 石 澤 隆 之
同 指定代理人 安 藤 敏
上記当事者間の頭書事件について,告知人は,下記の者に対し,訴訟告知をする。
記
〒371-8560
前橋市大手町一丁目1番1号
西部農業事務所長(平成26年8月18日当時の吾妻農業事務所長)
狩 野 伸 雄
第1 告知の理由
1 上記事件は,原告らが,告知人に対し,違法な財務会計上の行為を行った職員等に対して損害賠償等を請求するよう求める事件である(地方自治法242条の2第1項4号。いわゆる4号請求)。このような4号請求事件では,告知人は,当該職員に対し,遅滞なく訴訟告知をしなければならないとされている(地方自治法242条の2第7項)。
2 ところで,本件では,訴状において当該職員につき「吾妻農業事務所長」と特定されている。これは,本件行為当時の吾妻農業事務所長と解される。
3 そこで,告知人は,当時の吾妻農業事務所長である被告知人に対し,地方自治法242条の2第7項に基づき,訴訟告知をする。
第2 訴訟の程度
上記事件は,前橋地方裁判所において,第1回口頭弁論期日が平成27年7月10日午後1時10分に指定されている。
以上
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■驚くべきことに、少しも事の重大性を理解しようとしていません。これが我々が毎月多額の税金を支払っている公務員だと思うとまことにやりきれない気持ちになります。
被告群馬県は、「本案前の主張」として、なんとか住民側を門前払いすべく、とんでもない論理を展開しています。例えば「住民訴訟で請求することが認められる違法な行為又は怠る事実は、監査請求において対象としていなかった行為又は怠る事実を新たに訴訟の段階で請求の対象とすることを認めない趣旨と解されている」とか、「原告らは本件舗装工事は公金の不当な支出に当たる旨を主張しており、違法な行為又は怠る事実を主張していない」などとイチャモンをつけて、「原告らの本訴請求は、訴訟要件を満たさない」とまで言い切っています。
このことは、裏返せば、大同スラグ問題の根深さを認識しており、実質的な審理に入ると、いくら裁判所が親身になってくれたとしても、不利になることを内心承知しているものと見られます。
それだけに、いつもはトンデモない判決を出す前橋地裁ですが、このスラグ問題に絡む住民訴訟ではどのような判断が下されるのか注目されます。
もっとも、それは誰がこの事件の裁判長となるのかで、大きく見方が変わってくることも事実です。館林市土地開発公社を巡る巨額公金使途不明にかかる住民訴訟や、富岡市丹生地区の県有地不法占拠及び廃棄物処理法違反にかかる住民訴訟を指揮した女性裁判官のような立派な裁判長の場合、これは最初から住民側が敗訴したも同然です。
■それでは続いて、答弁書に記載された訴状の各項目に対する認否について、対比させながら見てみましょう。
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訴 状
平成27年4月30日
前橋地方裁判所 御中
第2 当事者
(1) 原告らは群馬県の住民であり納税者である。
→認める。
(2) 被告は、群馬県知事であり、群馬県が受けた損害・損失について、賠償・不当利得返還請求すべき義務を有する者である。
→一般論としては認めるが、本件について被告がそのような義務を有することは争う。
(3) 訴外 池原工業株式会社 佐藤建設工業株式会社 大同特殊鋼株式会社
→認否の必要を認めない。
第3 住民監査請求
(1) 平成27年1月30日、原告らは群馬県監査委員に、地方自治法第242条第1項により、「工事名 萩生川西地区農道舗装工事」(以下、「本件舗装工事」という。)にかかる請負契約(以下、「本件契約」という。)について措置請求(甲第1号証)を行った。
→認める。
(2) 平成27年2月16日、原告らは群馬県監査委員に対して、地方自治法第242条第6項の規定に基づき、意見の陳述(甲第3号証)を行った。
→認める。
(3) 平成27年3月31日、原告らは、請求棄却の監査結果(平成27年8月30日付、群監第202-25号)(甲第10号証)を受け取ったが不服である。
→認める(なお、監査結果の日付が平成27年8月30日とされているが、平成27年3月30日の誤記と思われる。)
第4 群馬県の損失
(1) 本件契約に基づいて群馬県吾妻農業事務所長が支出した6,490,800円は、群馬県の公金で負担すべき理由がなく、群馬県の損失である。
→否認する。
第5 本件契約の違法性
(1) 本件契約は、群馬県が本件舗装工事以前に、同じ場所で不法投棄された「工事名 萩生川西地区 区画整理補完3工事」で使用された有害物質を含む路盤材を、本来、原因者の費用で撤去させるべきところ、それを怠ったうえに、有害物質に蓋をするために施工されたものであり、そもそも不要で、違法な工事であった。
→否認ないし争う。
(2) 原告らは、東吾妻町萩生地区で、産業廃棄物として群馬県が認めた大同特殊鋼渋川工場由来の有害スラグが混入され、無許可処理された偽装再生砕石が敷砂利として使われていることを住民監査請求で指摘した。ところが、吾妻農業事務所は「下層路盤工として使用した」と反論した。
→原告らによって住民監査請求が行われたことは認め、その余は否認する。なお、吾妻農業事務所側の見解は、甲10の13頁以下に摘示されているとおりである。
(3) しかし、監査委員は「路面敷砂利として積算しているので、農村整備課及び吾妻農業事務所の説明は一貫性の低いものである」と指摘しており、原告らは「敷砂利」ということで間違いはないと考えている。
→監査報告書中(16頁)に原告が主張する内容が指摘されていることは認め、その余は否認する。
(4) にもかかわらず、群馬県吾妻農業事務所は、この有害スラグ敷砂利に蓋をする目的で、平成26年6月11日に本件舗装工事を吾妻農業事務所で入札にかけ、翌6月12日に訴外池原工業株式会社と本件契約を5,292,000円で締結した。さらに、群馬県吾妻農業事務所は、なぜか同年7月11日になり、池原工業株式会社と、本件舗装工事にかかる変更契約を6,490,800円で締結した。
→群馬県吾妻農業事務所において平成26年6月11日に本件舗装工事につき開札を行い、翌12日に訴外池原工業株式会社との間で本件契約を529万2000円で締結し、その後、同年7月11日に請負額を649万0800円に変更したことは認め、その余は否認する。
(5) だが、この有害スラグは、平成26年6月11日の入札時点で、既に廃棄物であることが、群馬県環境森林部廃棄物・リサイクル課や、排出者である訴外大同特殊鋼株式会社自身が認めていた。
→否認する。
(6) 吾妻農業事務所は、有害スラグが施工された道路について、舗装を急いだ理由を、「いわれなき風評被害を防ぐ」と主張している。
→否認する。群馬県吾妻農業事務所の見解は、「いわれのない風評被害の発生を防止するため、予定よりも早期に舗装すべきと判断した」とされており(甲10の14頁)、風評被害の防止は、舗装を急いだ理由ではなく、予定よりも工期を早めた理由と認められる。
(7) しかしこれまでにも、平成26年2月19日の第186回国会予算委員会の場で、地元選出の石関貴史・衆議院議員が質問し、さらに、国土交通省の「半田その4改良」現場において平成26年3月の分析調査で有害物質が検出され騒ぎになっていた。
→平成26年2月19日の衆議院予算委員会において、石関議員が鉄鋼スラグについて質問をしたこと、国土交通省が行った調査において「半田改良その4工事」の盛土からふっ素が基準値を超えて検出されたことは認め(甲7の別添3の一覧表のNo7)、その余は不知。
(8) 従って、吾妻農政事務所は、農政の重要な柱のひとつである「食の安全」に配慮して、訴外大同特殊鋼株式会社の負担で有害スラグ敷砂利を撤去することを最優先とすべきであった。このことは原告らが再三、群馬県農政部農村整備課を通じて吾妻農業事務所に要請していたが、結果的に、吾妻農業事務所は、原告らの要請を無視して、本件舗装工事を強行してしまった。
→否認ないし争う。
(9) 産業廃棄物が農道に大量に不法投棄されているにもかかわらず、それを撤去しないまま、本件舗装工事により、産業廃棄物の上部に蓋をしたことは、不法投棄という違法行為を隠ぺいする目的で為されたものであるから、本件契約にかかる支出もまた違法である。
→争う。
第6 まとめ
そもそも、本件舗装工事が必要となった原因は、平成26年1月27日に群馬県環境森林部廃棄物・リサイクル課が訴外大同特殊鋼株式会社渋川工場に、廃棄物処理法に基づく立入検査がきっかけで、同社が排出してきた鉄鋼スラグが産業廃棄物であることが世間に知られて、平成27年3月までに、国や県や渋川市がそれまでに施工した公共工事で、大量に使用されてきたことが判明し、さらに鉄鋼スラグには有害物資が基準値を超えて含有していることも判明したためである。
→否認する。先に述べたとおり、本件舗装工事は元々予定されていたものである。
このため、国の水資源機構は平成27年6月11日に群馬用水の管理道路に使用されていた鉄鋼スラグの撤去作業を決断し、平成27年12月26日に、大同特殊鋼株式会社の費用で全量の撤去作業を完了している。
→撤去作業が原告の主張のとおり進められたことは認めるが、それが大同特殊株式会社の費用で行われたことについては不知。
また、渋川市も平成8年渋川スカイランドパーク建設当時、大同特殊鋼由来の鉄鋼スラグ砕石を路盤材として使用してきたが、この路盤材の有害性が問題となり、渋川市が撤去したあと、当該撤去費用を、大同特殊鋼が負担することを渋川市に申し入れて、渋川市はこれを了承した経緯がある。
→不知。
いずれにしても、平成26年6月11日の時点では、既に大同特殊鋼渋川工場由来の鉄鋼スラグは、その有害性がひろく認識されており、群馬県自身も産業廃棄物であることを認識していたことは明らかである。
→否認する。
もともと、大同特殊鋼から排出された鉄鋼スラグは「鉱さい」として分類される産業廃棄物であり、食の安全性が担保されるべき農地に隣接する農道に使用すること自体、違法である。
→否認ないし争う。
群馬県県土整備部は、平成22年10月15日付で監第647-003-1号として、監理課建設政策室長の倉嶋敬明により、吾妻農業事務所を含む県土整備部内所属長・土木事務所長・関係機関の長宛の、「砕石骨材(クラッシヤラン:C-40及びC-100)にクラッシャラン鉄鋼スラグ(CS-40)をプレンドした骨材の取扱いについて」と題する通知を、本件契約の妥当性の根拠として挙げているが、実際には、県土整備部が大同特殊鋼からの要請を受けて、リサイクル法に定めた「再生砕石」を偽装したものであり、佐藤建設工業株式会社が、自社の砕石場から切り出した天然の砕石骨材と、大同特殊鋼株式会社が排出した基準値以上の有害物質を含む有害スラグを混合して、主に群馬県内に広く不法投棄される状況を作り出した不法書類であるから、群馬県農政部農村整備課と吾妻農業事務所の主張は失当である。
→平成22年10月15日付けの通知(甲9)が存在することは認め、その余は否認ないし争う。
蓋をされたままの大量の鉄鋼スラグの撤去費用や復旧費用は、原因者に負担を求めるのが当然であるところ、「臭い物には蓋」という間違った判断により、本件舗装工事に係る本件契約を、訴外池原工業株式会社と締結し、公金を支出することを決定した群馬県吾妻農業事務所長は、群馬県が被った損失を賠償する責務がある。
→否認ないし争う。
********************
■ここまでくると、いかに公務員が無責任であるかがよく認識できると思います。刑事罰を犯しても、罰金だけで執行猶予付きとなるし、2年経過したが異動で違う部署に移り、本当に責任感のある職員というのがいまやシーラカンス化してしまうほど珍しくなってしまいました。今回の住民訴訟を通じて、県職員らの無責任意識に警鐘を鳴らしたいと思います。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】