市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

駆け足で過ぎ去った夏の名残りを惜しむ間もなく早くも紅葉の季節を迎えんとするロシア沿海州の秋(2)

2012-09-29 10:10:00 | 国内外からのトピックス
■ナホトカ市には中心部と呼べる場所がありません。敢えて言えば、ナホトカ湾の西側に沿って、北から南に走るメイン道路であるナホトキンスキー大通りに面して建っている市役所や、その隣の市議会の建物のある場所かもしれません。市役所の正面の大きなロータリーを挟んで“考えるレーニン像”が椅子に座って、市役所と市議会の建物を見つめています。その背中には、ナホトカ港の石炭積出しヤードがあり、日夜、中国等に向けて貨物船に石炭を積み込んでいるクレーンの姿が見られます。

ナホトカ市の行政中央市場にある建物。左から市役所庁舎、市議会建物、ビジネスセンター。ビジネスセンターは以前観光ホテルだったが改装後はオフィスビルとして使われている。


市庁舎前のロータリーを隔てた講演にある“考えるレーニン像”。

レーニン像の後ろから中央行政広場を見る。

こんな結果になるとは、と銅像が思っているのかどうかは定かでない。

 今回の取材では、この中央行政広場から、南に10分ほど歩いたところにあるナホトカ市創立記念碑の公園から右手に徒歩で5分ほどのところにあるホテル・リェント(Hotel Rent)に宿泊しました。宿泊料は1泊3000ルーブル前後ですが、部屋が広く、快適です。バスタブはなくシャワー室がありますが、狭いバスタブや、体にべったり張り付くカーテンもなく、ひろびろとシャワーが使えます。


 なお、ナホトカ市創立記念碑公園のそばには、「SAMURAI」という日本料理レストランがあり、いつも賑わっています。

■ここから、ナホトキンスキー大通りに沿って、さらに南に向かって15分ほど歩道を歩くと、途中、道路脇の海側には展望台があり、ナホトカ湾や対岸のアスタフィエフ岬を一望できます。また、山側には、第2次大戦の戦没者慰霊碑、舞鶴市との交流を記念する「友好の石」(1978年建立)、敦賀市との交流を記念する「友好の石庭」(1983年完成)があります。

友好の石の前で遊ぶ家族。

友好の石庭と東屋。

 そして、さらに15分ほど歩いてゆくと、当会のブログでも何度も紹介したロシア正教のフラム・カザイスカヤ・ボージャ・マーチ(カザンの聖母教会)の金色に輝くタマネギ状の尖塔が見えてきます。

大通りから見上げたカザンの聖母教会。↑

 さらに15分ほど進むと、ホテル・ピラミッドの壁面と噴水が見えてきます。壁面には日本との姉妹都市がレリーフにして飾ってあります。ホテル・ピラミッドには地下にレストランがあり、平日はいつも空いていますが、ここのロシアを含むヨーロッパ料理は本格的で、種類も豊富で味も確かです。スペインで夏場いつも食べていたガスパッチョ・スープがメニューにあるので試してみたら、本場の味と遜色ありまでした。

ホテル・ピラミドの壁にある日本との姉妹都市レリーフと歩道。

 このホテルの隣に博物館があり、ナホトカの歴史を常設展示で紹介したり、市民のカルチャーセンターにもなっています。昆虫の入った琥珀展もここでやっていました。

琥珀に閉じ込められた4千万~5千万年前の昆虫やクモ類の展示会がホテル・ピラミッドの隣の市立博物館で開催中。入場料150ルーブル(約375円)。

■この前の道を山側に上ってゆくと、サッカー場と野球場があり、その近くに白いエンタシスが特徴的な巨大な建物があります。ここは船員宮殿とよばれ、劇場としても使用されています。向かって右側には船員クラブがあり、ナホトカに来航した船員らがたむろして、情報交換のできるサロンが設えてあります。

 ナホトカにもサッカーチームがありますが、まだ実力は今後の課題のようです。サッカー場、野球場からさらに山側に行くと、TSUNAMIという名前のボーリング場とレストランとバーを併設した施設があります。名前の通り日本料理もメニューにあります。これは昨年の3.11を契機に命名したのではなくて、それ以前からこの名前で営業しています。

■そこから海側に向かって、来た道より南側にある道を戻ると、DIAMONDというライブハウス兼レストラン施設があります。ここでは、毎週末、ロシアかくちからミュージシャンらが来てライブ演奏を行っています。日本食メニューも揃ったレストラン・バーも併設してあり、食事を取りながらライブ演奏を楽しめるため、毎週末は若者たちで賑わっています。

 そこから海側に向かう通りには、第2次大戦後、シベリアに抑留された日本人が建てた建物が両側に続いています。ロシア人は、当時の日本人が建てた建物は丈夫なので、今でも評判がよいとのことです。それが、現在の自動車をはじめ、日本の各種工業製品の高評価に繋がっていると思います。

■再びナホトキンスキー大通りに出ると、海の神様のポセイドンの像のある公園に出ます。ここからホテル・プラミッド側の広場では、毎年12月になると豪華なクリスマス・ツリーが登場します。

 ホテル・ピラミッドの前の通りを渡り、海側に下ると鉄道があります。そこを左に向かって少し行くと聖母教会の建つ丘の下あたりにチハオケアンスカヤ駅が見えてきますソ連時代、ウラジオストクが閉鎖都市だったためナホトカがシベリア鉄道の旅の出発地点だったころ、横浜からナホトカへ行く航路があり、大勢の貧乏学生にとって、欧州旅行の玄関口として、ここからモスクワに向かって列車に乗ったところです。

■さらに車で南に下ると、GUM百貨店や“文化と休息の公園”などがあり、湾の一番奥の通りの突き当たりの4ブロックほど手前の右側に行くと日本人墓地=追悼メモリアル施設があります。道の突き当たりを真っ直ぐ進むとホテル・ホリゾン(Hotel Ghorizon)があり、ここにも宿泊したことがあります。2004年ごろ竣工した新しいホテルで、YAMATOという日本食レストランや、トレーニング・ジムもあります。

 このホテルの目の前がナホトカで一番大きなマーケットです。肉や野菜、果実、菓子、嗜好品などの食料品はもちろん、周辺のダーチャ(自家農園)で採れた有機農産物や蜂蜜などの販売屋台も連なり、衣料品、ゲーム機、おもちゃ、音楽や映画のDVDなども売っています。

■ここから湾と反対側の海岸に向かう山越えの道があり、日本海に面した海岸は砂浜や磯浜、岩礁など変化に富んだビーチとなっており、夏場は沿海州から夏のバカンス客が大挙押し寄せるリゾート地として、宿泊施設や別荘群があちこちにあります。当会の取材班が今回も尋ねたツングースもそのうちの一つです。

ナホトカ郊外のツングースにある海岸。

ツングースの海で夏場活躍した日本製の中古のマリンスポーツ機材も疲れを癒す。

夏場観光客の乗馬の相手をして多忙だったツングースの馬たちもほっとひと時。

 緯度の高いロシアでは、夏場の日光浴は貴重な健康維持の季節です。彼らは水温18度までなら海水浴をします。9月下旬がちょうどその分かれ目となり、ナホトカからウラジオストクに至る海岸線では、夏を惜しむかのように海水浴に興じる姿が、時々見られました。

4人組のおばさまグループが海水浴に来ていた。

海岸で今年夏の最後の水遊び。

 しかし日に日に秋の気配は濃厚になり、9月26日から急に寒気が張り出して天候が悪化し、山の木々も急速に色づき始めました。

【ひらく会情報部海外取材班・この項つづく】

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

駆け足で過ぎ去った夏の名残りを惜しむ間もなく早くも紅葉の季節を迎えんとするロシア沿海州の秋(1)

2012-09-26 23:27:00 | 国内外からのトピックス
■5月中旬以来、久しぶりにロシアの秋を取材しました。地元の人の話によると、今年のロシア沿海州の夏は、あまり夏らしくない季節で、雨こそあまり降りませんでしたが、どんよりと曇った日が多かったそうです。また、9月に入り、台風が日本をかすめたあと、2つほどやって来たことも、例年にないことだったそうです


1500シベリア航空機成田T2で駐機中。

 日本では暑さ寒さも彼岸までといいますが、今年もまさにそのとおりで、ちょうどお彼岸の日に成田を出発しウラジオストクに向かいました。東京は最高気温がようやく30度以下となりましたが、まだまだ暑い日差しが、ターミナルのラウンジに差し込んでいます。

97番ゲート搭乗口。

 今年の春から成田とウラジオストクの間を週2便(土曜日と水曜日)結んでいるシベリア航空(通称S7)のエアバスA320型機は午後3時40分に成田を離陸しました。かなり込んでいて、ロシア人が6割、日本人が4割という感じです。夏休み休暇を日本で過ごしたロシア人家族や友人グループが多く見受けられました。

1559成田空港第一滑走路離陸直前。

1613夏雲が広がる北関東の上空。

1619早くも簡単な機内食が配られる。

1622新潟平野上空。この後佐渡の上空を通過。

 S7航空566便は、日本海上空をちょうど1時間で横断し、沿海州の一面森林だらけの上空を次第に高度を下げていきました。上空には積乱雲があちこちに見られ、雲を見る限り、まだ夏のような感じです。やがて、午後8時15分にウラジオストク空港に到着しましたが、地上の気温は20度あり、半袖でも問題ありません。

1936(日本時間JST1736)沿海州の上空にはまだ積乱雲があちこちに立ち昇っている。

1742白くつながって見える点は刈り取った牧草を詰めた白い袋の列。

1945ウラジオストク空港着陸。新しいターミナルが見える。

■今月初め、ロシアのウラジオストクで初めて開催されたAPEC国際会議に間に合うように建設されオープンした新しい空港ターミナルで、入国審査と荷物の受け取りをしました。以前は、あらかじめ出入国カードに手書きで小さな枠に字を書き込まなければいけませんでしたが、今度は、パスポートとビザを自動読み取り機にかけて、印刷してくれるので、入国と出国の二か所に署名をするだけで済みます。また、入国審査のブースも以前は最大でも4か所しかなく、30分近く待たされることもありましたが、今度は8か所に倍増し、従来の半分の時間で済みます。

1954今まではバスでターミナルの建物に向かったが今回は初めてボーディングブリッジでの降機。

 しかし、入国審査が早く済んだ分、荷物がターンテーブルから出てくるまでに待つ時間が長く感じます。

 空港ビルはドイツの企業が下請けで、地元の建設会社が施工したようですが、鉄骨にはコンクリートの汚れがこびりついたりしていて、細かいところは雑な仕事ぶりがうかがえます。しかし、ロビーは広々としており、以前の貧相な国際線ターミナルビルとは雲泥の違いです。

■そこからようやく日が暮れた道路をナホトカに向かいました。国際空港のあるアルチョム市へ向かう道の途中までは片側2車線の道ですが、それからは、デコボコ道となります。それでもアルチョム市からナホトカまで続く国道A188号線は、修理が割合行きとどいており、大きな穴はあまりありません。しかし補修を重ねているため、路面はかなりデコボコしています。

2029新国際線ターミナルを出発。ナホトカに向かう。

 9時45分ごろウラジオストク空港を出発して約160キロの距離を2時間ほど突っ走り、夜中の11時にナホトカのホテルに到着しました。料金はちょうど3000ルーブルでした。

■夜は、ほどよく冷房が利いている感じで、今の季節、沿海州はほんとうに快適な時期です。

道路脇の花壇のコスモスも盛りを過ぎた。

 9月23日の日曜日は、過ぎゆく夏を名残惜しむかのように海岸で海水浴をする地元住民の姿が見られました。

ナホトカ郊外のツングースにある海岸。

海岸で今年夏の最後の水遊び。

 その後、日に日に朝晩の気温は下がって来ていて、26日の水曜日からは日中の気温も16℃前後となり半袖だと涼しすぎる感じになりました。それとともに、山々の木々の一部が少しずつ黄色く色づき始めています。

■当会の平成24年5月22日のブログでも報告しましたが、ナホトカ市内では、4月に市内のナホトカ港を見下ろす高台の傾斜地にある日本人墓地の改修工事が行われていました。
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/768.html

 今回、当会の海外取材班は、改修後のナホトカ日本人墓地を参拝しました。

見違えるように整備された追悼モニュメント施設。

 この日本人墓地は、平成24年4月下旬から、日本人兵士ら犠牲者の追悼メモリアルとして改修工事が始まり、5月12日に完成しました。整備費用約200万ルーブル(約490万円)は、全額ナホトカ予算で賄われました。この理由について、かつてソ連が対日宣戦布告した67年後の翌日にあたる平成24年8月10日に開かれた追悼式典で、ナホトカ市長のオレグ・コリャディン氏は「日露戦争では海戦で死んだロシア人が日本で手厚く埋葬された。第2次大戦では多大な犠牲者が出たが、人々が悲劇を記憶し、繰り返さないようにするためだ」と説明しました。

石碑の後ろからモニュメント施設の入り口方向をみたところ。

 報道によると、この時の式典にはナホトカ市代表者のほか、在ウラジオストク日本総領事館の伊藤伸彰総領事が出席しました。伊藤総領事は「第二次世界大戦は日本史上最も悲惨な出来事だった」と述べ、総領事はナホトカのグラトキフ副市長と一緒に慰霊碑に献花しました。
http://japanese.ruvr.ru/2012_08_10/nahotoka-nihonjin-bochiato-memoriaru-kansei/

一番最初に墓参したのは近所のペットのようだ。

 追悼メモリアル施設の敷地は2000㎡。花崗岩で囲まれており、中心には旧日本人墓地にあった石碑が慰霊碑として配置され、入口には仏塔と2つの灯明のあるコンクリートの門が設置されています。

石碑は旧来のものを30mほど移設。

もともと左手に見える木々の下に石碑があった。

■ロシアとの間には北方四島問題が横たわっていますが、韓国が強奪した竹島の問題や、中国が海底資源を目当てに強奪を狙う尖閣諸島の問題とは、事情が異なります。第2次大戦での終戦の決断のタイミングの鍵を握っていた日本側がメンツにこだわって大幅に遅らせてしまったことにより、結果的に被ってしまったシベリア抑留や北方領土の問題は、日本側がその不条理にいつまでも拘っていても、得をするのは日露接近を快く思わないアメリカや中国、韓国だけです。

 もちろん、ロシア政府に対しては、北方四島の歴史的経緯と証拠については末永く主張する必要があります。しかし返還時期については、ロシア政府の将来の方針転換に期待するしかなく、それには、両国政府間のみならず、民間交流や経済協力関係の積み上げが欠かせません。

ホテル・ピラミッド脇の歩道。

↑琥珀に閉じ込められた4千万~5千万年前の昆虫やクモ類の展示会がホテル・ピラミッドの隣の市立博物館で開催中。入場料150ルーブル(約375円)。↑

■ロシアは日本に対して、歴史的には日露戦争、ノモンハン事変、太平洋戦争を経て、領土のやり取りを経て来ましたが、現状はロシア側としては全部手中に収めており不満がありません。

 ロシアは、また、中国とは長い国境を接しており、ダマンスキー島事件など領土を巡る戦闘もあり、一応鎮静化しているとはいえ、人口流入や経済圧力など潜在的脅威を感じています。

 ロシアは、北朝鮮とも一部国境を接していますが、2006年のミサイル失敗による沿海州沖合への着弾など、何をしでかすか分からない国として認識されています。

■こうした極東情勢を冷静に見極めて、中国や韓国のような国際ルールを無視する国々をけん制し、米国との対等な同盟関係を構築するためにも、我が国は隣国のロシアや台湾との連携を深めていく必要があるのです。

【ひらく会情報部海外取材班・この項つづく】

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大澤知事の知事公舎目的外使用に深刻な影響を被りかねない前橋カトリック教会の倫理と桃井小学校の道徳

2012-09-21 16:34:00 | オンブズマン活動
■9月19日午前、前橋地裁の第21号法廷で開かれた大澤知事による知事公舎女性宿泊にかかる住民訴訟第2回口頭弁論に立ち会った当会の取材班は、県庁、前橋市役所を訪れて取材を重ねた後、久しぶりに、前橋市立図書館の隣にある知事公舎の現場を訪れました。昨年、平成23年7月13日に週刊新潮で衝撃的なスクープ記事が掲載された直後に、知事公舎の現場を取材して以来、1年以上、訪れていなかったため、どの程度、当時と比べて様子が変わっているかどうかを確認するためです。

知事公舎の塀の向こうに市立図書館と市役所がみえる。9月19日撮影。以下同様。

 懐かしい(?)知事公舎の正門ゲート前に到着してから、さっそく内部を塀越しに大手町1号公舎の庭を確認しました。驚いたことに、空き家の筈の知事公舎(知事が昨年7月に退去後は、以前の呼称である副知事公舎というべきか)なのに、綺麗に樹木は業者によって手入れがなされており、正面ゲートから左手のカーポート前のバラスが敷かれた庭には、くっきりと自動車の轍(わだち)の跡が残っており、もしかしたら、また大澤知事が目的外使用をしているのではないか、と思いたくなるような状況です。


正面ゲート脇の通用門。


表札。


インターフォンは使えそうだ。


綺麗に手入れされた知事公舎の樹木。更地にするのはもったいない。


綺麗に手入れされた芝生とフラッグポール。更地にするのはもったいない。


今年7月末以降不在の筈なのに、真新しい車の轍の跡がある。よもや知事がこっそり再使用しているとなると問題だ。

 正門わきの表札は取り外されていましたが、インターホンは機能しているように見えます。また、上を見上げると防犯カメラがこちらを監視していました。県庁で確認したところ、現在も動かしているのだそうです。


稼働中の防犯カメラ。管財課曰く、居住者不在でも防犯カメラは稼働させているという。管財課はさらに追加的な監視体制をとっていたことがこの後に判明した。


カーポートに車は見当たらないが轍は残っている。

 とにかく、内部は綺麗に手入れと掃除がされており、落ち葉ひとつ、小枝ひとつ落ちておらずさながら都会のオアシス、或は目黒雅叙園http://www.megurogajoen.co.jp/wedding/ 
の前橋支部といった風情です。しかし、これが全部私たち県民からの税金由来の公金を投入して取得、維持、管理されていると思うと、複雑な気持ちとともに、怒りさえ覚えます。しかも、こうした公の聖地が、知事の不倫現場として目的外使用され続けて来たのですから、余計にテンションがあがるのを禁じ得ません。

 正面のゲートから内部をのぞいただけなので、部分的ではありますが、解説付きでいくつか現況写真をごらんください。


玄関脇の目隠し用の建仁寺垣もまだまだ新品同様だ。更地にするのはもったいない。


佐田建設に施工させた目隠しフェンスの内側の模様。こわすのは忍びない。


桃井小学校側に面した目隠しフェンス。知事の不倫を児童と保護者に見せてはならないという公的配慮か。


知事公舎の正門前から見た桃井小学校。なるほど目隠しフェンスがないと教育上よくないことがわかる。

■さて、知事公舎に隣接する前橋市立図書館から、知事公舎を見通すと、反対側にマンションと並んで、三角に尖った塔が見えます。公舎の反対側に回ってみると、尖塔は教会の建物の一部であることが分かります。建物の正面から見ると、非常に均整のとれたカテドラルです。建物の前には文化庁の登録有形文化財のプレートが埋め込まれていました。これが、群馬県で初のカトリック教会として昭和7年(1932年)に建立された前橋カトリック教会です。


右手前が知事公舎、右正面奥がマンション。左奥が前橋カトリック教会。


前橋カトリック協会と知事公舎は市道を挟んで斜め向かい同士の位置関係。


スペインの地方の町にあるカテドラルを彷彿とさせる前橋カトリック教会の佇まい。


文化庁の登録有形文化財のプレートが物語る由緒あるカトリック教会。

 教会前の小さな庭園には聖母マリア像が立っていました。教会の入り口は鍵がかかっていないようでしたが、人影が無いため、内部には入りませんでしたが、ヨーロッパの地方都市でよく見た教会と比べてもまったく遜色が有りません。文化庁が文化財登録したのも道理で、頷けます。※内部を知りたい方は前橋教会のHPをご覧ください。
http://nttbj.itp.ne.jp/0272212746/index.html 

 ところで、カトリックの教えでは、不倫はどのように位置付けられているのでしょうか。キリスト教でよく知られている道徳観として誰でもしっている「神の掟 (十戒)」というのがあります。この十戒として、次の言葉が有名です。
第一 われはなんじの主なる神なり、われのほか何者をも神となすべからず。
第二 なんじ、神の名をみだりに呼ぶなかれ。
第三 なんじ、安息日を聖とすべきことを覚ゆべし。
第四 なんじ、父母を敬うべし。
第五 なんじ、殺すなかれ。
第六 なんじ、姦淫するなかれ。
第七 なんじ、盗むなかれ。
第八 なんじ、偽証するなかれ。
第九 なんじ、人の妻を望むなかれ。
第十 なんじ、人の持ち物をみだりに望むなかれ。

 群馬県知事公舎が前橋カトリック教会と市道を隔てて斜め向かい同士だということは、大澤知事はご存じだったのでしょうか。

■十戒のうち、とくに知られている言葉に「なんじ、姦淫するなかれ」というのがあります。このことについて、カトリックでは分かり易く次のように教えています。

 「姦淫してはならない。」 テレビや雑誌で見る限り、快楽は楽しいものであり、不倫や結婚外の性行為も認められているかのように表現されているが、欲望を満たしても幸せがつかめるとは限らない。動作、言葉、思いに現われる性欲をコントロールするのは人間として価値の高いことである。

 また、「なんじ、偽証するなかれ」という言葉も心に響きます。このことについても、カトリックでは分かり易く説明しています。

 「隣人に関して偽証してはならない。」 偽りはその人の生き方、考え方が誠実でないことを示すし、人間同士の信頼関係を壊すものだ。偽りの証言によって人の名誉を傷つけたら、ゆるしを得るためにその人の名誉を回復することに努めなければならないのである。

■前橋カトリック教会の前に佇む聖母マリア像は、ちょうど教会を隔てて、知事公舎の方角を向いています。大澤知事は、知事公舎から直線距離で数十メートルしか離れていない場所で聖母マリアがじっと見つめていたことを知っておられたのでしょうか。

 大澤知事は、知人女性との宿泊は、週刊誌にスクープ写真を撮られた昨年7月8日夕方から9日朝にかけての一晩だけだと、記者会見で答えました。しかし、世間では、前年から数えても40回以上、さらにさかのぼれば100回以上、知人女性と週末に頻繁に夜を過ごしていると言われています。大澤知事の記者会見での説明が、正しくないとすると、カトリックの教えに背くことにもなりかねません。

 カトリックの信者でなくても、宗教観、イコール道徳観として、普遍的な精神の価値を表していると感じるのではないでしょうか。宗教或は道徳に背いた行動は、時には背徳の喜びという屈折した感情につながりかねません。大澤知事は群馬県のトップとして、人一倍、倫理観を備え、遵守することが求められるのではないでしょうか。


知事の不倫にマリア像も表情が心なしかすぐれないようだ。

■さて、ふたたび公舎の正門ゲートにもどると、そこには、道を隔てて小学校があります。道路に面して、なにやら横断幕が設えてあります。そこには「平成24年度開校140周年」とあり、そのとなりには「本校卒業生鈴木貫太郎先生生誕145周年(平成24年度)」としたためてあります。


創立140周年の名門小学校。郷土の誇り鈴木貫太郎先生も草葉の陰で何思う。


桃井小学校の正門。PTAの皆さんによる安全パトロールは向かい側の知事公舎にも目配利されたと思うが・・・。

 この小学校は、群馬県で最初の小学校「第一番小学厩橋学校」として創立さて、現在、全市を対象とする言語・情緒の通級指導教室を併設している桃井小学校です。詳しい学校の様子は同校のHPをご覧ください。
http://menet.ed.jp/momonoi-es/ 

 同校のHPにも掲げられていますが、「教育目標と目指す学校」を見てみましょう。

<基本目標>
同窓の大先輩 鈴木貫太郎先生 の教訓「正直に 腹を立てずに 撓まず励め」を基盤に、徳育・知育・体育の調和のとれた人間性豊かな児童を育成する。
※鈴木貫太郎:終戦時の内閣総理大臣
 ・1866年 現・大阪府堺市にて生まれる。
 ・1871年 現・千葉県野田市に転居
 ・1877年 父の群馬県庁就職に伴い前橋市に転居。第一番小学校厩橋学校(現・前橋市立桃井小学校)に入学。1881年同校卒業その後、旧制前橋中学(現・県立前橋高等学校)卒。海軍兵学校入学・卒
 ・1945年 内閣総理大臣となり、終戦工作を行う。8月14日、ポツダム宣言受諾を御前会議で決定。
 ・1948年 82歳で死去。
<具体目標>
・明るく、思いやりのある子
・よく考え、進んで学ぶ子
・たくましく、ねばり強い子
<教育方針>
(1)共に生き、思いやる心を育成する。
(2)基礎的な知識・技能と考える力を育成する。
(3)強い意志の育成と体力の向上を図る。
(4)特別支援教育の充実を図る。
(5)桃井小のよき校風を引き継ぎ、開かれた学校経営を推進する。

 ところが、故郷前橋のこの小学校で学んで、後に我が国の国難の最もシビアな時期を政治家の最高責任者として過ごした大先輩の教えを教育の基本目標に据えている群馬県で最も歴史ある小学校のまん前にある知事公舎の中で、同じく政治家として現在の群馬県を引っ張る立場の大澤知事が、目的外使用を長年続けていたのでした。

■それにしても、知事公舎に市道を隔てて、隣接する施設として、かたや宗教施設として群馬県でもっとも由緒ある教会、かたや教育施設として群馬県でもっとも由緒ある小学校。しかも隣は前橋市立図書館もあります。こうした施設に挟まれて立地している知事公舎を、あろうことか大澤知事は反道徳、反倫理となる目的外使用をしていたことについて、どの程度、深刻に且つ真剣に反省したのでしょうか。

 群馬県総務課管財課の職員も同様です。大澤知事が知事公舎で目的外使用をしていたことを知っているのに、誰1人として忠告をしませんでした。それどころか、大澤知事の目的外使用を問題視さえしようとしないのです。これでは、聖母マリア様も、故・鈴木貫太郎総理も、どんなに嘆いている事やら、想像に余りあります。

■などと考えているうちに、再び、最初に教会の尖塔に気付いた前橋市立図書館のたたきの上から、知事公舎と向かい側のマンション、それに前橋カトリック教会を構図に入れて写真撮影をしていたときでした。

 突然、すぐ横から「いったいここで何をしているのか?」と初老の男性に鋭く詰問されたのでした。

「風景を撮影しているだけです」と当会取材担当者が答えると、初老の男性は「知事公舎の周りで不審な行動を見かけたら、通報するように言われている。住所と名前を教えてほしい」と言いました。

 それを聞いて、これはただ事ではないな、と直感し、直ちにカメラのファインダーから目を外し、男性に対して逆に質問しました。「すいませんが、あなたはどういう立場で、そのようなことを我々に求めるのでしょうか」

 最初は、市立図書館の構内で撮影していたため、前橋市の職員か、あるいは警護で雇われているSECOMなどの警備会社の社員かと思いました。ところが、男性は「知事公舎の周りで不審な行動をとっているものを見かけたら、管財課に通報するように言われているんだ」というので、てっきり群馬県の関係者かと思いなおしました。

 しかし、不審者よばわりされては、オンブズマンとして忸怩たるものがありますから、自らの潔白を証明しなくてはなりません。そう考えて、男性のあとについて行きました。

 男性は、桃井小学校の一角にある前橋市の公用車駐車場兼市立図書館南駐車場の守衛でした。守衛所は、まさに知事公舎の正面ゲートのまん前にあります。

守衛詰め所。

図書館南駐車場のレイアウト図の張り紙がしてある。

■守衛所に着くと、男性は、一枚の紙を見せて、「ほら、ここにあるとおり、知事公舎異常時の連絡先として、不審者を見かけたら、ここに通報するように指示されているんだ」と言いました。

前橋市立図書館の駐車場管理業務のかかれた一覧表。確かに知事公舎異常時の通報先は県庁の秘書課となっている。

 よく見ると、男性がかぶっている帽子に前橋市シルバー人材センターと書いてあります。そこで、念の為、男性の名前と所属先を聞きました。すると、やはり前橋市のシルバー派遣で駐車場の管理を委託されているかただということが分かりました。

駐車場の管理をしている前橋市シルバー人材センターの職員。

 となると、なぜ前橋市の臨時職員のかたが、群馬県の施設である知事公舎の警備業務もやっているのかと、不思議な気がしました。しかし、今は一刻も早く、自分も身の潔白を証明しなければなりません。

 教えられた電話番号を控える時間がないため、デジカメでパシパシと写真をとり、一目散で県庁に向かいながらデジカメの画像をみて、秘書課(027-226-2040)に電話をしました。


秘書課に電話で不審者として通報。

■秘書課に電話をすると、女性職員がでて来たので、「すいませんが、知事公舎前の守衛さんから不審者としてみなされたので、守衛さんに確認をとったうえで、自分から通報しています。これから秘書課にうかがって、身の潔白を説明したいので、通報受理窓口の担当のかたをお願いします」と伝えました。女性職員は、なぜか、直ぐ反応をしませんでしたが、こちらが「知事公舎の警備の関係の担当の方をお願いします」と催促したところ、「少しお待ちください」と言い残して、電話をホールドしました。

 間もなく電話口に出て来た男性職員は「いったいどういうことなんですか」というので、「知事公舎の周りで写真を撮っていたら、おたくから警護を頼まれている駐車場の守衛さんから“不審者”と見なされ、通報の必要があるというので、じゃあ、本人から出頭して説明したほうが手間が省けるので、いまそちらに向かっているところです」と答えると、男性職員は「知事公舎のことなら11階の管財課だから、そっちに行ってくれないか」というのです。

 「守衛さんは、秘書課に通報することになっていると言ってます。秘書課は何階ですか。すぐにエレベータでそちらに伺いますから」と言うと、秘書課の職員は「11階の管財課へ行ってくれ」の一点張りです。

■そこで、直接秘書課に行くのをやめて、2階の県民センターの情報開示窓口を訪れました。担当者を呼んで、いきさつを説明し、「秘書課の人をまず呼んでください。そのあと管財課の人も。理由は、なぜ前橋市の駐車場の臨時職員に、県有施設である知事公舎の警備を依頼しているのか、を知りたいので、県と前橋市との協定やら業務委託契約などの関係書類としてどんなものがあるのか知りませんが、それらの書類を特定してもらった上で、情報開示請求をしたい」とお願いしました。

 ところが、県民センターの担当者は、当会がなんども秘書課の男性職員の名前を告げて、2階に来てもらうようにお願いしても、一向に事情を聴くだけで埒があきません。

 そのため、10分以上時間がムダに経過してしまったため、当会では業を煮やして、2階の情報開示窓口を退席し、直ちにエレベータに向かいました。案内板で秘書課が6階にあることがわかったので、6階のボタンを押しました。6階に着くと、秘書課の入り口には、観用植物が通せんぼの形で並べられていますが、それらをかわして秘書課に行くと、既に2階の県民センターから“通報”されていたと見えて、当該の男性職員が押っ取り刀で飛び出してきました。「直ぐに、11階の管財課にゆこう」と急かすのです。

 まだ、事情説明もしていないのに、いきなり管財課にいっても混乱するのではないか、と秘書課職員に伝えましたが、職員はお構いなしにまっしぐらに管財課をめざして歩こうとします。そこで、11階でエレベータから降りた際に、「ちょっと待ってください。事前に事情を説明しておきますから」と言って、ロビーで一旦秘書課の職員に椅子に座ってもらい、ひとしきり事の顛末を説明しました。それから管財課に行くと、既に次長級の職員がキャビネットの脇で待機していました。

■管財課の次長に事情を説明したところ、秘書課も管財課も口を合わせて、「そんな依頼をした覚えはない」とか「これまで2年間、公舎の周りの不審者に関する通報は聞いたことがない」などと、知らぬ存ぜぬを主張するだけでした。

「それじゃあ一緒に、すぐにこれから現場にいきましょう。守衛に会って、直接、ことの経緯を確認しましょうよ」とこちらから持ちかけました。ところが、県の職員らは「なぜ、その時、その守衛に、誰からどのように公舎の監視を依頼されたのか、その経緯を聞かなかったのか」などと他人事のように質問を浴びせてきました。

「守衛が、通報先は秘書課だとはっきり言っているのだから、秘書課が本人に確認するのがスジではないのですか?」とこちらから説明しても、県の職員らは「事情が全然飲み込めないのだから、きちんと経緯を確認してから話をもってきてもらわないと判断のしようがない・・・」というだけで、さっぱり動こうという気が見られません。これでは一向にラチがあかないため、「もう、皆さんには頼みません」と言い残して、こちらだけで、すぐに現場に戻りました。守衛がどこかに行ってしまわないように、一刻も早く現場に着こうと県庁前からタクシーで現場に向かいました。

■幸い、守衛が図書館前の道路で、知り合いとみられる通行人のおばさんと立ち話をしていました。おばさんとの立ち話が終わるのをまってから、守衛に、その後の報告を話しました。指示通り秘書課に通報の電話をしたこと、ところが通報先の秘書課は、自分のところではなく管財課に通報してくれ、の一点張りであること、管財課も秘書課も公社の警備について不審者の通報依頼を下覚えが全くないといっていること、秘書課と管財課に本件の経緯を直接確認してもらうため、現場に来るように依頼したが一緒にくるつもりがないこと、を守衛に話しました。

EV充電用駐車スペース。

駐車場にはEV充電器が設置。電気充電料は無料。電源は市内の小水力発電所から。

 その上で、守衛の方に「秘書課の職員らは公舎の監視業務を前橋市に依頼した覚えはないといっていますけど、どういう経緯で、市ではない県の施設の警備業務を依頼されたのですか?」とたずねました。

 すると、守衛の方は「1年ほど前に、秘書課の職員を名乗るひとが名刺をもってここに来て、知事公舎の監視を依頼してきた。そして、不審者が居たらここに通報してくれ、と通報先の電話番号を教えてもらったので、忘れないように、また、他の守衛にも申し送りするために、パソコンで文書を作成して印刷しておいた。もらった名刺はどこに置いたのか探さないと分からない。あっ、今交代が来たので、そろそろ帰らなくちゃ」といいました。

 こうして、やはり群馬県の秘書課の職員が、前橋市の守衛に知事公舎の警備を依頼していたことが判明したため、さっそく、現場から秘書課の職員に電話を掛けて、「経緯が判明したので、すぐに現場に来てもらえないでしょうか?」とお願いしました。ところが、秘書課の職員は、管財課の意向が気になるのか、四の五の言いながらなかなか来ようとしないのです。「はやくしないと交代時間で守衛が帰宅するといっています。とにかく早く来てください!」と何度も懇願したところ、ようやく「これから行く」という返事がありました。

交代前に知事公舎の監視業務に向かうシルバー人材センター派遣の守衛さん。

 しかし、待てど暮らせど、県の職員はやってきません。結局、「これから行く」との返事を聞いてから20分ぐらいして、秘書課の職員と管財課の次長が、遠くから並んでとことこ歩道をこちらに向かって歩いてくる姿がみえました。

雨の合間を縫ってようやく現場にやってきた秘書課と管財課の職員ら(左端)。

 守衛はすでに交代要員との引継ぎを済ませており、さすがに事情を察した様子で、これ以上関わりたくないというそぶりで帰宅準備を始めました。「もうすこし待ってくれませんか」とこちらからお願いしましたが、それを無視するように、そそくさと歩いて、知事公舎と市立図書館の間の路地を入っていき姿を消して、交代の守衛だけが残りました。

 県職員が歩いてたどり着く前に、交代の守衛に、秘書課からの申し送りの件について尋ねたところ、「その指示事項は承知している」といいました。

■まもなく、県の職員2名が駐車場の詰め所のところに到着しました。交代の守衛の前で、こちらから両方に事情が分かるように詳しい経緯をあらためて説明しました。

 こちらとしては、職務質問をしてきた守衛はきちんと秘書課の指示により職務を果たしたこと。なぜなら、不審者と思しき人物に対して、名前と素性を職務質問し、不審者を見つけて注意した事実について、もみ消すこともなく、指示通り秘書課に通報しようとしたことを県の職員らと交代の守衛に報告しました。守衛は「自分は元国家公務員だ。依頼された業務はきっちりとこなす。確かに秘書課から名刺をもらって依頼を受けている」と胸をはって自分オしょk無を果たしている慈父がうかがえたからです。

 その上で、「とにかく守衛のかたには、目の前にある公舎の監視業務について秘書課から依頼されているという認識があるのだから、そのことについて秘書課が知らないというのであれば、きちんとその旨、守衛の皆さんにわかるように通知をする義務があるのではないでしょうか」と県の職員らに提案というかお願いをしました。あとは、県と守衛との間で善後策をきちんときめてもらえればよいからです。

守衛詰め所内部。よく整頓されており、職務に精励している様子がよくわかる。

 ところが、驚いたことに秘書課と職員は「そういう依頼をした経緯もしらないし、確認できないのだから、そうした通知を出す義務もない」と言うのです。きちんと秘書課の依頼を受けて、職務を誠実に果たした元国家公務員の誇りを持つ守衛のかたの勤務態度とは雲泥の差です。

■さらに驚かされたのは、こちらからの事情説明と提案のあと、秘書課の職員が、交代の守衛に「公舎の監視業務の委託について、実際のところどういうことなのか?そういう申し送りの紙があれば、見せて欲しい」と交代の守衛に質問したときでした。交代の守衛は、ただならぬ気配を察知した様子で、さきほどはこちらに対して、「申し送りはちゃんとある」と言っていたのに、今度は前言を翻して、「そういう申し送りのことは知らない」などと言い出しました。

 この交代の守衛の話をきいた秘書課の職員は、どうだといわんばかりに「そういう申し送りなど存在していないといっている。であれば、よけい、もう公舎の警備は不要だなどという指示を出す必要はない」とこちらに向かって発言したのです。

 そして、こちらから、「繰り返しになりますが、秘書課に通報するように前の守衛さんから指示された時に、秘書課の電話番号を書いたメモ紙から電話番号を写し取る手間を惜しんで、デジカメに画像で収め、それを見て県庁に向かう途中で携帯から電話をしたんですよ」と説明したところ、表情が少し変った職員らは「そのデジカメに引継ぎメモが移っているのか」とこちらに質問してきました。「そのとおりです」と答えましたが、それ以上の言葉は県側からはありませんでした。

■いずれにしても、秘書から直接名刺を受け取って公舎の警備を要請された守衛はすでに帰宅してしまったことから、本人から直接話を聞くことはできません。県の職員らは交代の守衛に対して「その方が次に勤務予定なのはいつなのか?」と質問しました。

 交代の守衛はすっかり萎縮してしまい、守衛の詰め所に閉じこもろうと、その場から離れたい一心の様子がうかがえます。ちょうど、詰め所の中に入る口実が見つかったので、中にはいって、スケジュール表をチェックし、「あすの12時半からになっている」と報告するやいなや、詰め所から出ようとしませんでした。

 県の職員らは顔を見合わせて、もじもじしているので、こちらから「では、その時間に、守衛本人に会って、直接確認をとるんですね?」と念押ししたところ、秘書課の職員は急に「明日は外出しなければならないので、あとになるかもしれない」などと言い始めました。

 こちらからは「守衛本人と会って経緯の確認をする場合、オンブズマンとしても1名アテンドしてもらうようにしたいから、本人と会う前にかならず当方に連絡をしてください」と秘書課職員に要請しました。

■その翌日、こちらから9月20日の午前11時前に県庁の秘書課に電話をしました。秘書課の担当者に今日の予定を聞こうとしたところ、女子職員が「当人はいま会議中です」というので、「いつ戻るのですか」ときくと、「正午以降になるとおもいます」とのことでした。

 その後、同日の昼休み後の午後1時半頃に、再度、秘書課に電話をしたところ、代わりに出てきた女子職員が、「当人は午後も会議で席をはずしています」ということでした。「すいませんが、ご本人は昼休みに、外出していましたか?」と聞いたところ、「昼食はとりに行ったようだが、また戻って午後の会議に入っています」と言っていました。

 引続き、この件にかかる、その後の秘書課の対応をチェックしていくことにしています。

【ひらく会情報部・知事公舎女性宿泊問題取材班】

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

住民訴訟を受けて一刻も早く知事公舎を解体し更地化して前橋市に売りつけたい群馬県管財課の思惑と焦り

2012-09-20 23:55:00 | オンブズマン活動
■昨日の午前10時半から前橋地裁の第21号法廷で開かれた大澤知事による知事公舎女性宿泊にかかる住民訴訟第2回口頭弁論で、開廷前に傍聴に来た市民オンブズマン群馬の会員のかたから、「今朝の東京新聞に次の記事が掲載されていた」との情報提供がありました。どうやら、当会の平成24年9月14日付のブログ情報を参考に、東京新聞の記者が群馬県の管財課長や前橋市の関係者に取材をしたものと思われます。

9月19日付の東京新聞朝刊群馬版。
**********2012年9月19日東京新聞群馬版
副知事公舎 県、前橋市と売却交渉
 県が前橋市大手町の副知事公舎について、同市に売却する交渉をしていることが9月18日、関係者への取材で分かった。公舎は一時、大沢正明知事が利用し、女性と宿泊したのが問題化。現在は市民団体幹部が大沢知事を相手に公舎に関連して不要な支出をしたなどとして費用の返還を求める訴訟を前橋地裁に起こしており、県はこの段階で売却交渉を急ぐ理由を明確に説明する必要がある。 (菅原洋)
 さらに、交渉には県が公舎を解体して市へ渡す内容を含む。公舎は約4年前に大沢知事が入居する際、約1190万円の改修工事をしたばかりで、結果的に支出を疑問視する指摘が出そうだ。
 県によると、公舎は前橋市役所と市立図書館の東側に隣接する敷地面積約1300平方メートルに、鉄筋二階建て、延べ床面積約180平方メートルの建物がある。
 1972年に建設され、歴代の副知事が入ってきた。大沢知事は近くの旧知事公舎(既に解体)を耐震不足から避け、副知事公舎に入居。その際に塀を高くし、門扉を自動開閉にするなどの改修工事をした。しかし、昨年7月に女性問題が発覚して大沢知事は退去。その後、池本武広副知事(当時)が一時入り、現在は空いている。
 県と市によると、交渉は5月下旬、県が市に文書で提案。その後に交渉を重ね、今月上旬に市が更地になった後に購入する方針を文書で県へ示した。売却の時期や価格は未定。
 市管財課は「裁判の動向もみる必要があるが、図書館や本庁舎の駐車場が不足気味のため、購入したい」としている。
 一方、県管財課によると、訴訟の代理人弁護士に相談したが、裁判中でも売却に問題はないとの見解を示しているという。
 県は「大沢知事が公舎に入居した当時は危機管理上の必要性があったが、その後に体制が整備され、公舎に常駐する理由がなくなった。有識者の意見も踏まえ、場所は利用価値が高く、広く県民のために活用するべきだと判断した」と説明している。
**********

■当会の事務局長が代表を務めている市民オンブズマン群馬では、平成24年9月12日付で被告群馬県知事から原告のオンブズマン会員2名に送られてきた準備書面(1)の5ページ目で、「(オ) なお、知事は平成23年7月末に本件公舎を退去した。その後、本件公舎は平成24年4月1日から同年7月31日まで副知事公舎として利用されていたが、現在は利用されていない。但し、今般前橋市から、本件公舎の敷地を隣接する市立図書館の駐車場として利用するために、更地での譲渡を早期に受けたいと要望されており、群馬県もこれに応じる予定である」という記載に注目し、群馬県の管財課が、大澤知事のハレンチ知事公舎(管財課では「大手町1号公舎」と呼ぶ)証拠隠滅を図ろうとしていた矢先に、渡りに船で、前橋市から土地購入のオファーが群馬県にあったということで、随分、タイミングがいいときに、前橋市から声がかかったものだと思い、9月19日の前橋地裁での第2回口頭弁論のあと、事実関係をチェックしようと考えていたところでした。

 東京新聞の記事は、まさにそうした絶好のタイミングで掲載されました。

■皆さんはもうお気付きでしょうか。群馬県の管財課がオンブズマン会員の原告らによこした準備書面(1)の記載内容と、東京新聞の取材による群馬県と前橋市の対応内容との間に食い違いあることを・・・・。

<被告準備書面(1)>
(オ) なお、知事は平成23年7月末に本件公舎を退去した。その後、本件公舎は平成24年4月1日から同年7月31日まで副知事公舎として利用されていたが、現在は利用されていない。但し、今般前橋市から、本件公舎の敷地を隣接する市立図書館の駐車場として利用するために、更地での譲渡を早期に受けたいと要望されており、群馬県もこれに応じる予定である。

<東京新聞>
1972年に建設され、歴代の副知事が入ってきた。大沢知事は近くの旧知事公舎(既に解体)を耐震不足から避け、副知事公舎に入居。その際に塀を高くし、門扉を自動開閉にするなどの改修工事をした。しかし、昨年7月に女性問題が発覚して大沢知事は退去。その後、池本武広副知事(当時)が一時入り、現在は空いている。
 県と市によると、交渉は5月下旬、県が市に文書で提案。その後に交渉を重ね、今月上旬に市が更地になった後に購入する方針を文書で県へ示した。売却の時期や価格は未定。

■被告の群馬県知事・大澤正明、実際には県庁総務部管財課は、オンブズマンの会員2名に対して、住民訴訟の準備書面では、あたかも、前橋市からぜひ市立図書館に隣接する大手町1号公舎=知事公舎を更地して譲渡してほしいと要望されているので、しかたがないから群馬県として、応じてやるか、という書き方をして、知事公舎の建物はもちろん、施設そのものをぶっ壊して、目的外使用の痕跡を消し去る為に、3千万円近く公金を投入して、妾宅化した知事公舎の証拠隠滅を図ろうとしているのです。

 東京新聞の記事によれば、この売却交渉を持ちかけたのは、群馬県のほうからであり、前橋市は、寝耳に水の話であって、その後、前橋市は庁内で協議を重ねて、更地にすれば、購入しても良いという返事を出した、というのが実際の話の流れのようです。

■東京新聞の記事をよく読むと、もうひとつ、重大な事実に気が付きます。これは、あまりにも群馬県の総務部管財課の本心が見え見えなので、呆れるどころか、笑えてしまうほどです。

 被告の群馬県の準備書面にもあるように、平成23年7月31日を持って、知事・大澤正明は、同年7月13日発売の週刊新潮の衝撃のスクープ記事で動揺し、そそくさと知事公舎から退去しました。その後、例によって、第3者委員会とやらに諮問して、妾宅化した大手町1号公舎=知事公舎も不要だから解体もやむなし、という結論を出したりしましたが、オンブズマンの会員らによって住民監査から住民訴訟を提起されたことから、性急にぶっ壊すことはためらわれたのか、しばらく無人のまま管理していましたが、平成24年4月1日~7月31日までの4ヶ月間、池本武弘という副知事(当時)が一時的に入居した経緯が判明しました。

 一方、東京新聞の取材記事によれば、群馬県が前橋市に、知事公舎の買取りを打診したのは、平成24年の5月下旬とされています。その後、前橋市で買い取るかどうかを庁内で協議をして、4ヵ月後の9月上旬に購入する方針を文書で群馬県に示したとあります。

 つまり、知事の大沢が妾宅化した大手町1号公舎は、知事・大澤が退去して8ヶ月間空き家状態になっていましたが、なぜか平成24年4月に副知事が入居して僅か1ヵ月半しか経過しない時点で、群馬県総務部管財課は、公舎を売り払うという打診を前橋市に持ちかけていたことになります。通常、こんなことはありえない話です。

■たとえば安中市の安中高校は、2008年に安中実業高校(旧・蚕糸高校)と統合し安中総合学園高校(開校は2006年4月)となりましたが、安中高校が生徒募集を停止したのは2006年春であり、2008年3月をもって閉校しました。この時、安中市の岡田市長は、市長就任後まもなく2007年8月28日付で跡地取得の以降を群馬県に表明していましたが、正式に買い取る旨の文書を安中市長が県に提出したのは、2008年11月27日でした。

 このように、安中高校の場合には、統廃合計画により、あらかじめ廃校となる高校跡地の処分について、事前に地元自治体などに買い取りの意思を打診することはあるようです。

 実際にも、平成23年8月30日の上毛新聞記事によれば、「県知事公舎(前橋市大手町)の存廃を検討する有識者を交えた検討委員会(座長・吉永国光東和銀行頭取)は8月29日、県庁で初会合を開き、公舎を前橋市内に置く必要性を認める一方、「現公舎は官庁街に立地し、利用価値が高く、広く活用すべきだ」との認識で一致。事実上、現公舎を廃止し、民間賃貸住宅や職員公舎などで対応する方針が固まった。」という内容の記事を掲載したことがあります。

 それがなぜ、解体撤去、更地化という方針に変わったのか。住民訴訟で、群馬県は、そのことを説明する義務が有りますが、準備書面では、前橋市から買取の要望があった、ということにして、真相を隠そうとしているため、説明責任をきちんと果たすつもりのないことがわかります。

■しかも群馬県は、今年の4月1日に副知事を大手町1号公舎=知事公舎に入居させておきながら、オンブズマン幹部らによる知事公舎の妾宅化の公費の無駄遣いに関する住民監査請求に対して監査委員に5月1日棄却させたため、オンブズマンらが30日以内に住民訴訟を提起することが想定される最中の5月下旬に、早くも知事公舎の解体と更地化を前提として、前橋市に跡地の買取りを打診していたのでした、このことは、重大な意味をもつ行為と言えます。

 市民オンブズマン群馬の幹部らは、この群馬県総務部管財課の不可解な行動を解明する為に、9月19日(水)の午前10時半からの第2回口頭弁論が終わった後、さっそく、群馬県庁2階の県民センターの情報開示窓口で、裁判で対峙したばかりの管財課職員を呼び出し、昨年7月31日に大澤知事が知事公舎を退去してから現在に至るまでの、知事公舎にかかる経費や利用、処分等に関する情報開示請求を行いました。

前橋市役所に併設されている市議会の前から見た群馬県庁。6階に秘書課、11階に管財課がある。

 さらに、その足で、前橋市役所を訪れ、知事公舎の買取リ交渉に関する群馬県と交わした一切の情報開示請求を行いました。



■この買取問題について、本日の上毛新聞が次のように報じています。どうやら、知事公舎の証拠隠滅をカモフラージュするために、群馬県は、前橋市との間で県庁や市役所周辺の互いの所有地が入り組んでいるから、として、土地の有効活用を図るため土地の交換分合について全体的に協議をするというストーリーをでっち上げて、知事公舎を解体撤去して更地化するという作戦を編み出したようです。

**********上毛新聞2012年9月20日(木) PM 02:00
旧知事公舎、前橋市に売却検討
 前橋市大手町の副知事公舎(旧知事公舎)について、県が前橋市に売却する方向で検討していることが分かった。公舎をめぐっては、大沢正明知事が公舎に女性を泊めたのは目的外使用として、市民オンブズマン群馬が起こした民事訴訟が係争中で、県は前橋地裁が公舎の取り壊しを認めれば、更地にして市に売却する方針
 現公舎は、昨年10月に有識者らの検討委員会が廃止して跡地を利活用すべきと大沢知事に答申。県は、池本武広副知事(当時)が入居する公舎として使用していたが、池本氏が7月末で退任して以降、使われていない。
 県庁や市役所周辺には県有地と市有地が混在していることから、県と市は土地の有効活用を図るため、土地の交換や購入について協議しており、市の公舎取得もその一環という。
**********

【ひらく会情報部・知事公舎女性宿泊問題取材班】


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ラブホテル化というより妾宅化…語彙の豊富さに感嘆の声が上がった大澤知事公舎女性宿泊住民訴訟第2回弁論

2012-09-19 23:17:00 | オンブズマン活動
■台風16号がシベリヤに遠ざかりましたが、南からの湿った空気を引っ張っていったので、上空には雲が多く、晴れたり雨が降ったりの不安定な一日でしたが、そうした変化しやすい天候のもと、大澤知事による公舎女性宿泊問題の住民訴訟第2回口頭弁論が、本日、平成24年9月19日(水)の午前10時34分から、前橋地方裁判所第21号法廷で開催されました。

 午前10時30分に、大野和明裁判長・佐伯良子裁判官・毛受裕介裁判官の3名が第21号法廷に現れて登壇しました。最初に、サラ金のアコムとプロミスが不当利得返還請求でそれぞれ個人を訴えた2件の控訴事件の第1回弁論が開かれ、それぞれ2分で陳述が終わり、ただちに結審し、10月17日(水)午後1時10分に判決が出されることになりました。

 続いて、午前10時34分から、平成24年(行ウ)第10号知事公舎ラブホテル化損害賠償請求の第2回弁論が開始されました。

■最初に、裁判長による訴訟書類のチェックが行われました。被告の群馬県側から、9月12日付で提出された準備書面(1)と乙1-1から乙32-2号証までの全ての確認が行われました。準備書面は10ページですが、証拠書類の乙号証は厚さ5センチに及びます。それらの原本の提出が被告からなされ、原告らは、それらをペラペラとめくりましたが、開示の際には黒塗りされた箇所もすべて、黒塗りされておらず、また、写真も鮮明なカラーだったことから、1分半ほど見た時点で原本と判断して、「はい、確認しました」と裁判長に伝えました。

 続いて原告らから、甲号証の原本について、甲2の補正命令書と甲4の住民監査結果通知書を裁判長に提出しました。また、甲1の住民監査請求書の添付書類の証拠書類として綴られた被告が作成して原告らに送ってきた公開質問状の回答や、知事公舎内部の見学会の申入れに対する拒否回答が原本であることを説明しました。少しくすんだ色の再生紙に県側のハンコが押してあるから、裁判長はすぐに原本であることを理解しました。そして、裁判長が、被告の訴訟代理人である新井博弁護士のほうに向かって、「これもチェックしますか?」と尋ねると、新井弁護士は「こちらは結構です」と答えました。なにしろ、被告側についている群馬県監査委員に、原告らが提出した際に、全部ファイルしておいた書類なので、当然といえば当然です。通常は、住民訴訟の場合には、役所と県民との間でやりとりされた書類が添付されることが多いため、あまり原本にはこだわらないのが通例ですが、大野裁判長は比較的シビアに原本チェックを行いました。

■原告らと被告が9月12日までに、それぞれ提出した裁判資料の原本確認が終わったところで、裁判長は「争点がいくつかあるが、ラブホテルがわりに使用というのは、同居しているとまではいえないから違法ではない、と被告が主張している。また、公舎の改修費はたくさんあるけど、4つ以外は、1年間の監査請求期限を、徒過している。まだ徒過していない工事については、樹木の伐採やら害虫の駆除などだから、ラブホテルとは関係ないということになると被告が言っている」として、原告らに向かって、これらが争点であることを示唆しました。

 裁判長は、今度は被告に向かって、「公舎の家賃などについては、もう少し詳しい資料が出せるのかどうか。公舎の衛生費等について、電気代や水道代などについて、もっと細かい情報が出せないのか」と持ちかけました。被告の訴訟代理人の新井弁護士は「もっと細かい情報はあると思います」と答えました。裁判長は、被告から出された一覧表だけでは、それらの支出の具体的な内容がよく分からない様子で(原告らもそのように思ったが)「たぶん、被告側が衛生費等一覧表に記載した数字のベースになっている情報があるはずだから、そういう数字を決めた根拠を示すように」と被告の群馬県側に指示を出しました。訴訟代理人は「あるのは一応全部出したつもりだが」と答えていましたが、資料を作成したのは群馬県の管財課職員のはずなのに、新井弁護士のほか、被告席に座った4名ほどの県職員らは、誰も自分で発言するものはいませんでした。なお、傍聴席にも数名の管財課と思しき職員が着席して静かにしていました。

■こうして、原告らと被告に、とりあえずの争点の整理と解説をしてから、大野裁判長は、次回に向けた訴訟指揮を行いました。

 裁判長いわく「事件自体は、割合シンプルな感じになってきている。基本的に、原告らの言いたいことは、知事がラブホテル代わりに公舎を使ったということなんだろう。だけども、そうすると、同居の親族以外の者以外の者を同居させたというのが違法だという話だが、(ラブホテルの通常の意味からすると)同居とまではいえないんじゃないか、というのが被告の主張らしい。つまり、知事が公舎をラブホテルがわりに使ったから、という主張の場合、ラブホテルに“住む”ということは、普通の人ではいないだろう。(ラブホの)従業員とか社長ならともかく。というのが被告の主張らしいので、そこのところがまず第一点。次に、二点目として、公舎の改修については、たくさん工事があるけども、支出については、1年以上経過している場合には、基本的には監査請求が1年以内でないとアウトになるのだから、本訴もアウトになるというのが、被告の主張だよね」と分かりやすく原告らに向かって、説明がなされました。

■そこで原告らは、やはり、今回の裁判でも門前払いで却下されるのか、と直感して、「それは役人の常套手段なんですよ」と返事をしました。すると裁判長は「よくご存知なんだね。そういえば、(原告らは住民訴訟を)随分やってきたから、とおっしゃったよね」と原告らにほめ言葉をかけてくれました。

 原告らはちょっぴり嬉しい気持ちになり「もう何回、何十回も住民訴訟をやってきましたが、役所が不利な裁判ではいつもこの期限徒過を持ち出して、門前払いを食らわされ、敗訴を重ねてきたんですよ」と追加でコメントしました。

 すると裁判長は「そうだねえ。でも、そうにならないように注意深くやっていればよかったよね。というのが被告の主張なんだよね」と非常に分かりやすく説明しました。そして、裁判長は「だから、そうならないように、1年以内に(監査請求を)するように心がけておられたのではないのかね」と原告に向かって質問しました。

■原告らは「開示された情報で、拙速で住民監査から住民訴訟に踏み切ると証拠不十分で負ける。だから、開示情報に加えて、当事者に対して公開質問等で事実関係を確認しようとした。さらに、ここにあるように実地検証も必要になる。しかし、いずれも警備上の問題だとして拒否された。外部から、不正の事実の確証を得るのは至難の業だ」と現在の住民訴訟の不完全なシステムについて裁判長に解説しました。

 もちろんこの点について裁判長はよくご存知の様子で「それはよく言われていることで、本にも書いてあるように、そういう決め事になっているので、しょうがない」とコメントがありました。原告らは「乱訴でもいいというのであれば、直ぐに住民監査から住民訴訟に踏み切るのだが、それはそれで、先ほどもいったように証拠不十分となり、しかも監査委員はまともに調査しないので、住民訴訟に役に立つことは何もないから、結局住民側が立証責任を負わされる」と愚痴をこぼしました。

 そして、原告らは「まあ、そういうことになるので、そういう不利な条件を、最初からハンディとして負っちゃうわけね」と愚痴を締めくくったところ、大野裁判長は「そういうふうにわざわざルールを作ってあるんだよ」と、実に卓見なことをおっしゃいました。

 この本質をズバリ突いた裁判長の言葉に、原告らは思わず「よく本質を裁判長!ご存知ですね!」と感嘆の声を上げてしまいました。

■裁判長は淡々と「ということで、きのう原告から提出のあった準備書面(3)は、とりあえず陳述ということでよしと。それと、この現場検証命令申立も陳述ね」と語りました。原告らはラブホテル化された公舎の現場検証を非常に重視している為、裁判長に「裁判長!ぜひお願いします。被告に証拠隠滅をされないうちにね」と、強くお願いをしました。

 しかし大野裁判長は、原告らが極めて重要視する現場検証の実施について、「問題点について吟味すると、目的外使用とか衛生費については直接そんなに(公舎の現場検証は)関係ないと思うので、あとは、不必要な工事かどうかというのがポイントだ。ようするに問題としては、害虫駆除などの工事だけであれば、あんまり見どころもないので、現場に行く必要は無いのではないかという気もするけどね」という感想を述べ、あまり乗り気でないそぶりを見せました。

■どうやら裁判長は、今朝の東京新聞の群馬版をお読みにならなかったようです。原告らが「目的外使用にともない、本来公舎が具備すべき施設を逸脱していることを分かっているから、被告は前橋市に売っ払って証拠隠滅を図ろうとしている」と説明しても「公舎というのは、ただそれだけのものであって、それ以上でも以下でもないのでは」と、被告の企みに想いが巡らない様子で、原告らとしては、歯がゆい想いがしました。

 そこで原告らは「本来、公舎というのは“公の舎”だから、来賓や賓客のために、庭の樹木の剪定作業をするし害虫防除もするはず。しかし、実際には、知事以外の家族はもとより、公務にかかる来賓やゲストなどは誰も公舎に入ったことがない様子だ。知事は単身で入居するといいながら、実際には毎週末、頻繁に家族以外の者を同居させていた」と、準備書面でも記載済みの原告らの主張を重ねて強調しました。

■裁判長は、いちおう最後まで原告らの意見を聞いた後「まあいいけどね。では、そこんところを普通に主張いただければいいと思う」と言ってくれたので、原告らは「分かりました。知事は1晩しか記者会見で認めなかったが、家族以外の者との週末の同居は常態化していること。毎週末、頻繁に一緒に住んでいたということについては、また、きちんと弁論していきたい」と決意表明をしました。

 大野裁判長は、原告らがこの裁判のタイトルについて「ラブホテル化」と掲げているように、原告らの主張がラブホテルにこだわっていることが気になる様子で「“ラブホテルがわり”という表現は、実態を現していないのではないか」とアドバイスをしました。

 原告らは、ラブホテル化が最もイメージしやすい表現だと考えている為「いや、ラブホテルという表現は、いちばんよく実態をイメージできる言葉と考えている」と、すこしむきになって反論しました。

■すると裁判長は、「(ラブ)ホテルというと、同居というイメージとは程遠くなってしまうのではないか」と、改めて原告らにアドバイスしてくれたのです。「“ラブホテルに同居”とは、普通、言わない」という裁判長の言葉に、なるほど、という気持ちがしてきた途端、裁判長の次の発言に、衝撃を受けました。

「だから、“ラブホテル化”でなくて、“妾宅化”というのであればイメージがわかりやすい」

 原告らは顔を見合わせて、おもわず「なるほど。さすがに裁判官の方は、日本語の語彙が豊富だ」と感心してしまいました。

 あまりに、原告らが感心の表情を示すので、裁判長は「妾宅(しょうたく)化というのがいいのではないか・・・まあどっちでもいいことにしよう。それは言葉の問題だから」と、トーンダウンしましたが、原告らは「最初、“ラブホテル化”というのが皆さんに理解しやすい言葉だと思ったんだけど、妾宅化のほうがいい」と、決意したのでした。

■裁判長は、それにはとりあわず「その(目的外資料の)点についても主張いただきたい。また、出訴期間、監査期間の徒過についても、主張いただけばいい」と原告らに訴訟指揮を行い、被告の群馬県に対しては、「あとは、とりあえず被告のほうでさっきいったような補充のものがあれば出してもらえればいいと思う」と指揮をしました。

 その上で、裁判長は「(公舎の現場)検証については、それら(の原告らと被告の主張のやりとり)を踏まえて、どうするか、を決めたい」と述べました。

 原告らは、「とにかく、早めに実現できるようにお願いします。我々も検証が重要だと考えているけど、我々が強引に公舎内に入ると、セコムのアラームが鳴って捕まっちゃうからね」と重ねてお願いをしました。

■裁判長は、早くも期限徒過の場合を念頭に置いているらしく「監査期間が徒過していることになれば、実際に公舎でなされた沢山の改修が、無駄な工事だったのかもしれないが、その場合には、(公舎の内部に入っても)しょうがない、という話になる」と、述べました。

 原告らとしては、ラブホテルという言葉がインパクトがあり、公舎の目的外使用のイメージをよく現していると思っていましたが、裁判長の意見を聞けば聞くほど、どうやら被告は、ラブホテル化という定義を歪めて、被告の都合のよいように解釈されて、誘導されてしまうおそれがあることが、よく理解できるようになりました。

 無理もありません。原告らはラブホテルに実は入ったことが無く、どういうものか、雑誌やネット情報で聞きかじっただけです。

 大野裁判長は最後に「被告は、さきほどの補足資料の提出をすること。原告らは、①監査請求期間の徒過について、②ラブホテル化というと常宿かというイメージ、この点をもう少し補足すること」と総括のまとめをしてくれたので、原告らは「ぜひとも門前払いを食わされないようにしっかりと反論したい」と申し伝えました。

 以上のやり取りを終えると、時間は午前10時48分になろうとしていました。

■最後に、裁判長は次回の第3回弁論時期について、打診してきました。「原告のほうも1ヶ月もあればよいか」とおっしゃるので、「原告らの準備書面(2)で、被告に求釈明をしたが、答えてもらえていない。おそらく答えるつもりも無いのだろうが、原告らとしての反論は適宜、迅速に行うつもりなので、相手方次第だ。次回まで1ヶ月でもいいし、1ヵ月半でも言いし、1日でもいい」と裁判長に伝えました。

 裁判長はそれを受けて、ご自身の手帳をめくりながら、「では、次回を10月24日(水)午前中としたい」と言うと、被告の訴訟代理人の新井弁護士が、やはりシステム手帳らしいものをめくって「すいません。その日は生憎、高崎(支部)の事件が入っている」と言いました。

 裁判長は、手帳のページを1枚めくり「それでは、10月31日の水曜日でよろしいか。時間も今日と同じでよいか」と提案があったので、原告らは「OKです」と伝えました。結局、次回の第3回弁論は、10月31日(水)午前10:30開始となることが決定しました。

【ひらく会情報部・法廷取材班】


※参考資料
**********
【原告準備書面(3)】
平成24年(行ウ)第10号 知事公舎ラブホテル化損害賠償請求事件
原 告  鈴木 庸、 小川 賢
被 告  群馬県知事 大澤弘明
                    平成24年9月18日
      原 告 準 備 書 面 (3)
前橋地方裁判所 民事第1部合議係 御中
                    原 告  鈴木 庸   印
                     同   小川 賢   印

 平成24年9月12日付の被告の準備書面(1)に関して、次のとおり陳述する。

第1.公舎の目的外使用との主張について

1 住民訴訟の要件につい
 被告は、準備書面(1)の第1の「1 住民訴訟の要件不備」で「原告らの請求が地上自治法第242条第1項のどれに該当し、どのような『損害をこうむった』のかについて相当な主張をしていない」として、「それ自体が相当ではないが、その問題がどうあれこの請求は住民訴訟の要件を欠くものであり、却下されるべきである」と主張している。
 原告らは、本事件に前置して、住民監査請求を行い、その過程で、群馬県監査委員から補正命令の通知を受け(甲2)、補正書を提出し(甲3)、その結果、監査結果通知(甲4)の「第5 請求の受理」で、監査委員は「知事が居住していた大手町1号公舎の使用に関する事項・・・は、地方自治法第242条で定める要件を備えているのでこれを受理し、その他の請求については、同条第2項で規定する請求する請求期間に関する要件を満たしていないのでこれを却下した」と判断している。となると、被告は、この監査結果さえも認めないということなのか、きちんとした見解を示せ。

2.目的外使用について
 原告らは、知事・大澤正明が、知事公舎に知人女性(原告らは“=愛人”と考えている)と週末、頻繁に一緒に住んでいたことが目的外使用であると主張しているのである。平成23年8月26日付の読売新聞によれば、同8月25日開催の群馬県議会総務企画常務委員会で、新井雅博県議(自民)が「知人を宿泊させる行為はどう解釈すべきか」と質問したところ、中野三智男・県管財課長は「規則は一般の職員公舎も対象で、知人、友人が宿泊することは禁止していない。『家族以外の他人を一緒に生活させないで下さい』と定めており、(知事の行為は)問題ないと考えている」と答弁した、と報じている。
 被告が、準備書面(1)で例示しているとおり、群馬県公舎管理規則(乙27-6)第8条、第1項の第2号及び3号の規定には、「使用者は、公舎を常に善良な管理者としての注意をもって使用するとともに、次の各号に掲げる行為をしてはならない。とあり、「一 職員と生計を一にする者以外の者(使用人を除く。)を同居させること」と「二 転貸し、または目的外に使用すること」を原則禁止としているが、但し書きとして「ただし、第一号及び第二号に掲げる行為で知事又は地域機関等の長の許可をうけたものは、この限りでない」と主張している。
 被告のこの主張をもとに、前述の県議会での被告の管財課長の答弁の内容を改めて吟味してみると、「職員と生計を一にしていなくても、知人女性や友人女性が宿泊することは禁止していない」ということになる。あるいは、知事が自ら許可をすれば、家族以外の他人を一緒に生活させてもよい」ということになるし、「目的外使用や、転貸をしてもよい」ということになる。
 被告は知事・大澤を庇うつもりで「本件では、知事は公舎に居住しており、目的にそって利用がされていることは明らかである」と主張しているが、この説明は分かり難いので、きちんと群馬県公舎管理規則第8条の条項に沿って、その適用範囲や条件を例示し、なぜ知事が知事公舎に愛人と一緒に生活しても問題ないのか、分かりやすく説明せよ。
 なお、上記の新聞報道にもあるが、「知事公舎は、2007年8月、茂原璋男副知事が入居予定だったが、同年9月、県南西部を襲った台風9号の被害を契機に、危機管理対策等のため大沢知事が入居」とされており、もともと、台風襲来や震災、洪水などの天災時に一時的に入居するのが目的だったと考えられる。この観点からしても、知事大澤が、頻繁に週末の夜、愛人と一緒に生活していたことは、目的外使用というべきである。
 民間では、単身者用の賃貸住宅、例えばアパートなどでは、二人入居や友人・恋人等の宿泊を禁止するというルールは常識となっている。ましてや、既婚者が単身を装って単身用の賃貸住宅に住み、配偶者以外の、すなわち家族ではない、知人女性や友人女性と住めば、居住者に等しく良好な住環境を供与する義務がある大家にとって、看過できない状況に置かれることは火を見るよりも明らかである。
 それとも被告は、知事・大澤に限り、大家(=群馬県)に無断で二人で入居しても、それは知事が認めたと解釈できるから大目に見た、というのか。
 知事公舎は本来、家族と同居可能なつくりになっているはずである。しかし、知事・大澤は、広い庭付きの一戸建ての知事公舎に、急遽、危機管理対策用として、単身を条件に入居届を提出していたのである。であれば、周囲には目隠しのフェンスやサンゴジュ、そして、玄関脇にはこれまた目隠し用の竹垣を設置する必要性はあるのだろうか。しかも、本来の知事公舎では、前橋警察署とのホットライン設置や、警備会社の夜間不定期見回り業務が付けられていたのに、知事・大澤が急遽、単身で入居した副知事公舎では、ホットラインは整地されず、警備会社の夜間巡回警備業務も取りやめとなり機械警備に変更され、公舎の正門は従来の手動ではなくリモコン式にするなど、不可解な改造を公費で実施されたのである。
 もし単身社用の賃貸住宅に、知人女性、もしくは友人女性が一緒に夜だけ住んで、風紀上の問題があったとしても、家族がたまにやってきて、一晩過ごして翌朝帰宅したのと同じだから、問題ないというふうに被告が判断しているのであれば、そのように説明すべきだ。
 愛人と事に及んで音漏れなどの問題があったとしても、家族の宿泊でもありうることだから、特段、問題はないというふうに被告が判断するのであれば、そのように説明すべきだ。
 そのうえで、上記のような考え方が民法上、権利と義務の関係から何の問題もなく、単身者が、知人女性や友人女性と単身者用の賃貸住宅に住んでもよいのかどうか、被告はきちんと説明すべきである。また、公平性の観点から、そのような解釈したならば、それについて、賃貸住宅(=公舎)の他の利用職員らにも説明し周知徹底を図るべきではないのか。

第2 工事、業務委託について

1 別紙工事・委託業務一覧表の訂正について
 原告の主張に金額等に誤りがあるので訂正した、とする被告の指摘について、予定価格と契約価格、及び税抜き価格と税込価格を混同した箇所が一部にあったことは認める

2 本件工事等をする際の一般的方法と法令上の根拠

(1) 知事公舎の管理について
 被告は、準備書面(1)で「県が公舎の維持管理のために行う業務の必要性を判断する権限は知事にある」と認めながら、一方で、「群馬県処務規程第4条の規定により、群馬県事務専決規程等で定められた者が定められた事務を専決することができるとされている」と主張した。本当に被告がそう信じていすのだとすれば、これは重大且つ深刻な問題と言わねばなるまい。
 専決処分というは、基本的なルールを遵守することを前提に、事務的な手続や、それに必要な判断を、各実施機関に委ねるということであり、ルールを遵守しないまま、各部署の専決責任者が、勝手に判断してよいということにはならない。
 被告の主張は、完全に二重基準、いわゆるダブルスタンダードが群馬県の管財課に存在していることの証左である。
 事務専決の主旨を乱用或いは故意に誤用し、知事の機嫌をとろうとする木っ端役人の考えそうな言い訳であり、断じて認めるわけにはいかない。そもそも、こうした主張をすること自体、今回の知事・大澤の破廉恥な行為が公になった週刊新潮平成23年7月21日号が、群馬県下で、大勢の何者かにより買い占められたという事実が重なって想起されるのである。原告らは、この週刊誌を大量に買い占めたのは、県庁関係者に違いないと確信しているが、そもそも、こうした異常な行為に県庁職員を走らせたの背景には、知事の機嫌を取ることに、特に神経質になる性向を持つ県庁の総務部管財課の「性(さが)」とも言えよう。猛省を促したい。

(2) 財務に関する事務の権限について
 被告は「契約や支出等の財務に関する事務の専決は群馬県財務規則第4条に定められている」と主張するが、これも前項(1)と同様、基本的なルールを遵守することを前提に、事務的な手続や、それに必要な判断を各実施機関にゆだねるということであり、ルールを遵守しないまま、各部署の専決責任者が、勝手に判断してよいということにはならない。
 なお、公舎の違法な改修工事にかかる契約等については、随意契約が多く見受けられ、例えば目隠しフェンスなどの工事は高額であり、しかも通常の土建業者であれば誰でもできる簡単な工事だが、なぜか自由競争入札にせず、佐田建設と随意契約をしているのも、政治的な配慮が見え隠れして興味深い。このことについては、追って検証し、準備書面の中で指摘する。

3 本件工事等について

(1) 法令上の手続を執ったかどうかについて
 被告は、「本件工事等の執行区分は、すべて管財課長の専決事項である」と主張するが、前項2.(2)で原告らが述べたとおり管財課長のルール逸脱による専決判断であり、法令上の手続に沿ったものではなく、その支出は違法・不当なものである。ただし、前述の通り、知事・大澤が、群馬県公舎管理規則第8条第1項の但し書き「ただし、第一号及び第二号に掲げる行為で知事又は地域機関等の長の許可をうけたものは、この限りでない」とする証拠があれば、話は別である。しかし、知事公舎のラブホテル化に係る一連の支出行為は、公序良俗の観点からしても、但し書きが適用されるとは到底思われない。

(2) 必要性・相当性について
 被告は準備書面(1)で、本件各工事等を実施した必要性・相当性について縷々主張しているが、いずれも取ってつけたようなこじつけ論である。原告らは、本件請求事件について、単なる損害賠償請求事件ではなく、敢えて「知事公舎知事ラブホテル化損害賠償請求事件」と銘打った。被告も、ぜひ、この事件名称を使うことを強く要請したい。
 原告らがこの名称を事件名に付した理由は、知事・大澤が、長年、深く関係している知人女性を宿泊させたという行為のみならず、知事公舎そのものが、ラブホテル化するように改築、改造されていたことについても鑑みているからである。
 ラブホテルを規制する法律として、風俗適正化法の「店舗型政府族特殊営業」として「専ら異性を同伴する客の宿泊(休憩)のように供する施設」がある。もちろん、知事公舎は、そのような施設ではないはずだが、知事・大澤の単身入居後、いろいろな工事等が実施され、もともとの知事公舎が随分改築、改造された。
 風俗適正化法の適用対象となるためのラブホテルの構造又は施設面での一定要件がある。
 構造面でいえば、①自動車の車庫から客室に直接通じている構造の施設、②自動車の車庫に近接して客室があり、車庫の害壁面に客室への出入口がある構造の施設。③自動車の車庫から見通しの悪い固有の廊下や階段を通って客室に行ける構造をとっていること。ただし、このような構造をとっていても、客と面接してフロントでカギの授受、宿泊者名簿の記載、料金の受け渡しを行うラブホテルは風俗適正化法の対象から除外される。
 設備面でいえば、①回転ベッド、横臥している人の姿態を移す目的の鏡(1㎡以上)、②アダルトグッズ等の自動販売機、③その他専ら異性を同伴する客の性的好奇心に応ずる為の設備(例としてガラス張りの浴槽やビデオ設備など)を具備していること。
 原告らは、知事公舎の不正改修の実態を検証すべく、被告に再三、知事公舎の内部見学の機会提供を申し入れたが、すべて拒否された。その目的は、本来、知事が公務の必要性から、家族とともに居住するための目的で公金を投入して建築された知事公舎が、目的外使用されたことにより、その関連でどの程度不正改修が施されたかを検証する必要があったためである。
 知事公舎にかかる知事・大澤による一連の不正改修について、原告らは、公舎内部の見学により、前述のラブホテル化と共通する改築、改造がなかったかどうかを確認する必要を痛感した。具体的には、①自動車から降りずに人目を避けて知事公舎敷地内に入れるようになっているかどうか→リモコン式自動ゲート設備等の様子、②敷地内に入ったあと、人目を避けて、公舎建物に入れるようになっているかどうか→玄関脇の竹垣の様子、③人目を避けて公舎の敷地内及び建物内で行動できるようになっているかどうか→目隠しフェンスの様子、④同じく、敷地外からの人目を避けるようになっているかどうか→敷地内に移殖されたサンゴジュ等の植栽の様子、⑤内部からの音漏れを防ぐようになっているかどうか→サッシの改造の様子、⑥人目を避けて、薄暗くなっても安全に且つなるべく短時間に玄関から中に入れるようになっているかどか→公舎の外灯電球交換、照明スイッチ改修や玄関改修の様子、⑦回転ベッドなど特殊な設備や機材が存在し、それらを動かすようになっているかどうか→電気設備改修の様子、⑧知事公舎に公務のために誰か入ったことがあり、公務のために公舎施設が使用されたことがあるのかどうか→屋外のフラッグポールや駐車場、屋内のロビーやソファーや什器備品などの使用状況の様子、⑨公務との関連でどのような必要性があるのかどうか→毎年植栽の維持管理のための剪定や、枯死や倒木などの撤去作業の様子、などを実際に知事公舎の敷地内の屋内外で確認する必要があった。
 にもかかわらず被告は、原告らの見学要請を「警備上の理由」だとして拒否し、知事・大澤が、目的外使用を週刊誌に報じられて平成23年7月末、知事公舎を退去した後でさえも、原告らの見学要請に対して拒否を続けて、現在に至っている。よほど、原告ら県民、納税者に対して、知事公舎の敷地内を見学させたくない理由がありそうだ。

(3) 知事公舎の証拠隠滅のおそれについて
 被告は、準備書面(1)の5ページ目の最下段で、「その後、本件公舎は平成24年4月1日から同年7月31日まで副知事公舎として利用されていたが、現在は利用されていない。但し、今般前橋市から、本件公舎の敷地を隣接する市立図書館の駐車場として利用するために、更地での譲渡を早期に受けたいと要望されており、群馬県もこれに応じる予定である」と驚くべき陳述をしている。
 これは明らかに、原告らはじめ県民、納税者らに対して、知事・大澤による目的外使用や不正改修の痕跡を消し去る目的や意図をもって、あるいは実施することを、被告が目論んでのことに違いない。
 従って原告らは、被告が証拠隠滅を図る前に、裁判所の立会いのもとに、きちんと知事公舎の内部を早急に検分する必要があるため、別途、裁判所に対して、緊急申立を行うことにしたい。

第3 公舎の光熱水費等の支出について
 被告の陳述によると、インターネット代は、自己負担が原則とされているが、すべて群馬県が支払っていると思われ、ここでもルールが遵守されていない。
 そもそも、知事・大澤が、知事公舎を目的外使用し、ラブホテル化のために知事公舎を不当改修したことにより、光熱水費等が費消されたわけであり、これらの光熱水費等の支出そのものが違法不当と見なすことができる。

第4 地方自治法第242条第2項について
 被告は、原告らが提起した本件請求そのものを期限徒過として、門前払いを裁判所にさせようとしているようだが、そうはいかない。そもそも、知事・大澤がこのような破廉恥事件を起したのかどうかについては、知事を選出した県民、納税者として、原告らにとっても慎重な対応を必要とした。週刊誌で報じられた直後の記者会見で、知事・大澤が宣言したとおり、知事・大澤は知人女性と1晩しか知事公舎で一緒に生活していなかったのか、それとも週刊誌の報道などで、その前の年から40回ほど週末に一緒に知人女性と住んでいたのか、目隠しフェンスは治安上の観点から必要な措置だったのか、知人女性と一緒に住んでいた時に台風は来ていたのか、など、きちんと状況証拠をできる限り精査した上で、住民監査請求に踏み切らない限り、これまでの経験から、住民監査を請求しても、調査らしき調査をしてこなかった群馬県監査委員の「実績」を痛感させられているだけに、乱訴のそしりを避ける為に少しでも時間をかけて事実関係を確認しておき、住民監査請求にそれらを反映しておく必要があった。
 にもかかわらず被告は、原告らを同じ土俵に立たせないようにすべく、あろうことか地方自治法242条第2項の期限徒過を強引の当てはめようと必死に主張している。なぜ被告は、かくも異常なほどに知事・大澤の立場を慮るのか。原告らには、住民監査請求を行う地方自治法第242条第2項の但し書きに定めた「正当な理由」がある。
 それにしても、行政訴訟になると、行政側は、住民側に対して、なぜいつも、理不尽な論理を平気で主張しようとするのだろうか。今回の請求事件は、知事・大澤が知事公舎を、危機管理対策どころか、なんとラブホテル代わりに少なくとも40回にわたり、利用していた事件だ。裁判を通じて被告は、反省すべき点は反省し、改善すべき点は改善するように、きちんと今後の知事公舎のあり方について、議論を尽くし、コンプライアンスに則った指針を確立する好機と捉えるべきだ。
                   以上
**********
【現場検証命令申立書】
平成24年(行ウ)第10号 知事公舎ラブホテル化損害賠償請求事件
原 告  鈴木 庸、 小川 賢
被 告  群馬県知事 大澤弘明
                     平成24年9月18日
         現場検証命令申立書
前橋地方裁判所 民事第1部合議係 御中
                 原 告  鈴木 庸   印
                  同   小川 賢   印

 頭書事件について、原告らは次のとおり、現場検証命令の申立をする。

1. 現場の表示
(1) 前橋市大手町1-13-14 大手町1号公舎(群馬県知事公舎のこと)

2. 現場検証の趣旨
(1) 現場の表示(1)記載の現場は、知事・大澤が、平成19年12月1日から平成23年7月31日まで、単身で台風等の襲来時に備えた危機管理対策のための入居理由とは裏腹に、実際には、週末頻繁に知人女性とともに居住して、目的外使用していたものであること。
(2) 同現場は、知事・大澤が単身で台風等の襲来時に備えた危機管理対策のための入居理由とは裏腹に、週末頻繁に知人女性とともに居住するのに都合の良い不正改修が行われていたものであること。

3.現場の所持者
(1) 被告群馬県である。

4.証すべき事実
(1) 自動車から降りずに人目を避けて知事公舎敷地内に入れるようになっていること。(検証場所の例:リモコン式自動ゲート設備等)
(2) 敷地内に入ったあと、人目を避けて、公舎建物に入れるようになっていること。(検証場所の例:玄関脇の竹垣)
(3) 人目を避けて公舎の敷地内及び建物内で行動できるようになっていること。(検証場所の例:目隠しフェンス)
(4) 同じく、敷地外からの人目を避けるようになっていること。(検証場所の例:敷地内に移殖されたサンゴジュ等の植栽)
(5) 内部からの音漏れを防ぐようになっていること。(検証場所の例:サッシの改造の様子)
(6) 人目を避けて、薄暗くなっても安全に且つなるべく短時間に玄関から中に入れるようになっていること。(検証場所の例:公舎の外灯電球、照明スイッチ改修部分や玄関改修の様子)
(7) 回転ベッドなど特殊な設備や機材が存在し、それらを動かすようになっていること。(検証場所の例:電気設備改修の様子)
(8) 知事公舎に公務のために誰か入ったことがなく、公務のために公舎施設が使用されたことがないこと。(検証場所の例:屋外のフラッグポールや駐車場、屋内のロビーやソファーや什器備品などの使用状況の様子)
(9) 公務との関連での必要性が見出せないこと。(検証場所の例:毎年植栽の維持管理のための剪定や、枯死や倒木などの撤去作業の痕跡の様子)

5.現場検証義務の原因
 被告は、準備書面(1)の5ページ目の下から5行までの部分で、「本件公舎は平成24年4月1日から同年7月31日まで副知事公舎として利用されていたが、現在は利用されていない。但し、今般前橋市から、本件公舎の敷地を隣接する市立図書館の駐車場として利用するために、更地での譲渡を早期に受けたいと要望されており、群馬県もこれに応じる予定である」と陳述している。
 このため、現場の敷地及び建物の現状が保全されず、証拠隠滅のおそれがあるので、すみやかに発令されるよう求める。
以上
**********

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする