市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

【サンパイまみれの群馬県】お盆休みに徘徊軍団が不法投棄現場を調査(その1)三峰山麓のコンクリ屑

2021-08-22 23:45:00 | 全国のサンパイ業者が注目!

初日に徘徊調査した沼田市の林道

■当会が誇る徘徊老人軍団のスラグ特別調査団(通称「リットン調査団」)がお盆恒例の県内サンパイ不法投棄現場調査を敢行しました。今年の調査は、初日が市民オンブズマン群馬・みなかみ町会員のご案内で県の北部を調査し、2日目は市民オンブズマン群馬副代表が調査に加わり、県の中西部を調査しました。

*****リットン調査団の調査レポート・その1*****
調査団長Aの訓示:なんでも沼田市のある神社の近くがとんでもないことになっているらしい。当会のみなかみ支部会員が先行調査を行い、道路が通行止めになっているから気を付けるように情報をくれたぞい。

団員Ⅾ:それはそれは、詳しい情報ありがとうございます。では関越高速道路側から調査に出発じゃ!

 今回の調査場所はこちらです。↓↓


 衛星写真はこちらです。↓↓



高速道路をまたぐ橋を渡って林道を進むと、車両進入禁止の看板にあたった。情報の通りだね。


ふと振り返ると神社の鳥居が鎮座していた。「調査のためお邪魔します」と礼儀正しく一礼すると、神聖な気持ちになってくるから不思議だ。


河内神社の参道ということだ。なお、看板の反対側は広く駐車スペースとなっていた。


沼田市の通行止めの看板もあるね。当会みなかみ支部会員が事前に問い合わせたところ、道路が陥没し通行不能ということだ。車両進入禁止なので、徒歩で先に進んでみよう。前方に平らな場所が広がっているがなんだろうか?


おやおや~雨でぬかるんでいる場所があるよ。


トラックが出入りした跡のようだ。ぬかるんでいてタイヤが沈んでいるよ。


全体的に白く見えるね。とても滑りやすいよ。ぐちゃぐちゃだ。


真白だ。白いセメントのようだね。


おや?セメントのような塊を発見!これは生コン工場で生コン車を洗ったカスをしぼったものではないだろうか?確かコンクリートくずという産業廃棄物だ。知り合いが生コン工場に勤めていて聞いたことあるぞい。


おっとタイルを細かく砕いたものも発見!あちこちあるぞい。その右上の黒い土は建設汚泥か?いろんなものが混ざっているね。


ピンぼけで申し訳ない、黒い泥の塊も発見。これが建設汚泥か?熱海市の災害で問題になっているやつだな。


黒光りした瓦のような石も発見!だが、スラグではなさそうだ。


回り込んで、下がどうなっているか見た。谷に向かって白い粘土を捨てているように見える。森林が伐採されているうえに、雨で白い粘土が谷に流れ出しているようだ。


谷底に下りてみた。やはり雨により白いコンクリートくずが流れ出している。生コンで擁壁でも設けない限り、谷に向かって流れ出してしまうぞい。


神社側に回り込んでみた。今でもぞろぞろと白いコンクリートくずの流れが動いているようだ。谷に向かって動きが続いている。こちらから見ると明らかにコンクリートくずが大半だ。


更に広く森林が伐採されていて、この現場での投棄はまだまだ続くようだ。


さて、(株)佐藤建設工業が広く群馬県中にバラまいた大同特殊鋼(株)渋川工場の有害スラグ調査でおなじみの、アルカリ試薬を振りかけてみた。すると…。


真っ赤に反応した。スラグも石灰がまぶされていたので赤く反応したが、石灰と同じ成分のセメントもアルカリ試薬に反応する。間違いなく産業廃棄物でコンクリートくずの不法投棄に間違いなし。群馬県森林環境部は不法投棄事案の通報を受けると「3000㎡以下にするように」と指導しただけで立ち去ることが多いと聞くが、この場所は3000㎡を軽くオーバーする広さだ。また、この現場のように産業廃棄物のコンクリートくずを投棄されては、3000㎡以下であろうと取り締まってもらわなくては困る。
*****リットン調査団お盆調査その2に続く*****

■このように、群馬県の環境行政の体たらくは、今に始まったことではありません。なので、こうして、関東百名山およびぐんま百名山で知られ、テーブル形の珍しい山容が目を引く三峰山(みつみねやま:標高1,122.5m)の中腹にある河内神社ですら、その付近にサンパイを捨てられても、群馬県は知らん顔なのです。

 この神社は、かつて沼田城主の信仰が厚かったといい、その境内からは赤城山や武尊山を望み、沼田市街地を見下ろす絶好の展望台となっていますが、不法投棄やらせ放題の罰当たり群馬県としては、神聖な神社界隈ですら、サンパイ業者の格好の餌食とされてしまっています。

 当会では、長きにわたり大同特殊鋼(株)渋川工場由来の有害スラグ問題に取り組んでまいりました。群馬県森林環境部廃棄物・リサイクル課は、スラグ不法投棄実行犯の(株)佐藤建設工業の廃棄物処理及び運搬の許可を取り消す行政処分を行いましたが、不法投棄されたスラグはそのまま放置され続けています。

■廃棄物は、都道府県知事の許可を受けた処理施設において処分されるのが廃棄物処理法の定めです。ところが、群馬県の廃棄物・リサイクル課は、法の決まりに反し、原状回復の措置命令を発出しようとしません。群馬県の廃棄物行政は法を無視し、地に堕ちた対応を続けています。

 この体たらくの無法行政をなんとか動かそうと、当会では、行政手続法36条の3に基づく「処分等の求め」という、平成27年に施行された新たな法律に基づき、佐藤建設工業に原状回復の措置命令を求める申出を行いました。行政手続法36条の3は以下のとおりです。
*****行政手続法*****
第四章の二 処分等の求め
第三十六条の三 何人も、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分又は行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)がされていないと思料するときは、当該処分をする権限を有する行政庁又は当該行政指導をする権限を有する行政機関に対し、その旨を申し出て、当該処分又は行政指導をすることを求めることができる。
2 前項の申出は、次に掲げる事項を記載した申出書を提出してしなければならない。
一 申出をする者の氏名又は名称及び住所又は居所
二 法令に違反する事実の内容
三 当該処分又は行政指導の内容
四 当該処分又は行政指導の根拠となる法令の条項
五 当該処分又は行政指導がされるべきであると思料する理由
六 その他参考となる事項
3 当該行政庁又は行政機関は、第一項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、その結果に基づき必要があると認めるときは、当該処分又は行政指導をしなければならない。

**********

■この行政手続法36条の3に基づいて、当会では2021年7月26日午後3時に群馬県庁16階の廃棄物・リサイクル課を訪れて、行政手続法に基づく処分等の求めの申出書を提出してきました。群馬県に提出した申出書はこちらです↓↓

*****7/26処分等の求めの申出書*****ZIP ⇒ oioj.zip
     行政手続法に基づく「処分等の求め」の申出書
                           令和3年7月26日
群馬県環境森林部廃棄物・リサイクル課 殿

               申出者氏名・名称:市民オンブズマン群馬
                        代表 小川 賢
                  住所・居所:群馬県前橋市文京町1-15-10
                   電話番号:090-5302-8312
                   FAX番号:027-381-0364
                メールアドレス:ogawakenpg@gmail.com

 下記のとおり法令違反を認知したため、行政手続法第36条の3の規定に基づき、是正のための処分又は行政指導を行うよう求めます。
                   記
1.法令に違反する事実の内容
  ㈱佐藤建設工業が廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という)第14条の2第1項に定めた許可を受けずに、産業廃棄物であるスラグ(種類:鉱さい)の収集、運搬、処分をした。
2.処分又は行政指導の内容
  廃棄物処理法第19条の5に基づき、群馬県知事は、必要な限度において、㈱佐藤建設工業に対し、期限を定めて、その支障の除去等の措置を講ずべきことを命ずることができるところ、未だに行っておらず、早急に必要な措置をとること。
3.処分又は行政指導の根拠となる法令の条項
  廃棄物処理法第19条の5
4.処分又は行政指導がされるべきであると思料する理由
  ㈱佐藤建設工業は、平成28年8月3日、産業廃棄物処分業及び産業廃棄物処理施設設置並びに産業廃棄物収集運搬業の許可を取り消される行政処分を受けているが、取り消しの原因となった産業廃棄物であるスラグ(種類:鉱さい)を投棄現場から撤去し処分することにより原状回復する措置命令について、下記の理由により廃棄物処理法第19条の5により発出されるべきである。また、「処分等」を求めない場合にはその理由を明らかにされたい。
                   記
   ① 大同特殊鋼排出のスラグは群馬県が廃棄物に認定した。また大同特殊鋼は佐藤建設工業に廃棄物の処理(混合)や運搬を委託した。(資料①参照)
     廃棄物認定理由の中でスラグを「土壌と接する方法で使用した場合、ふっ素による土壌汚染の可能性があり」としており、生活環境である土壌(環境基本法第16条参照)の汚染が現在も進行している状況である。大同スラグを撤去し国民の生活環境を保全しなければならない(廃棄物処理法第1条参照)。
   ② 群馬県廃棄物・リサイクル課は佐藤建設工業の許可を取り消す行政処分を行った。(資料②参照)
   ③ 環境省の行政処分の指針によれば、許可を取り消したら、原状回復は措置命令で対応することとなっている。しかし佐藤建設工業に対する措置命令が発出されていない。(資料③参照)
   ④ 群馬県は環境省の行政処分の指針に準拠すると話している。(資料④参照)
   ⑤ 現在、大同が排出したスラグや、渋川市などで掘削されたスラグは管理型最終処分場に埋設処分されている。(資料⑤参照)
   ⑥ 行政手続法第36条の3「処分等の求め」は、平成26年6月の同法改正により、国民の権利利益の保護の更なる充実を図る観点から、「処分等の求め」や「行政指導の中止等の求め」などの仕組が設けられ、平成27年4月から新たなルールとしてスタートした。(資料⑥参照)
   ⑦ ㈱佐藤建設工業がスラグ混合砕石を投棄した現場について、平成27年1月に群馬県建設企画課は、「大同特殊鋼㈱への聞き取り調査の結果について」として、違法に取り扱われた鉄鋼スラグを含む砕石の使用工事箇所の一部を公表している。(資料⑦参照)
5.その他参考となる事項
  資料① 群馬県産業廃棄物情報「大同特殊鋼㈱渋川工場から排出された鉄鋼スラグに関する廃棄物処理法に基づく調査結果について」
  資料② 【8月4日】産業廃棄物処理業者に対する行政処分について(廃棄物・リサイクル課)
  資料③ 環廃産発第1303299号平成25年3月29日付「行政処分の指針について(通知)」の抜粋
  資料④ 令和2年第1回定例会農林環境常任委員会(森林環境部関係)―03月10日-01号
  資料⑤ 大同特殊鋼由来の鉄鋼スラグに関する廃棄物処理法に関する定め
  資料⑥ 行政手続法第36条の3
  資料⑦ 【1月26日】大同特殊鋼㈱への聞き取り調査の結果について(建設企画課)
**********

■群馬県でも、この法令に基づく「処分等の求め」の申出書は、これまで取り扱ったことがないらしく、受け取った廃棄物・リサイクル課の職員は、鳩が豆鉄砲を食ったような対応でした。すでに、提出からまもなく1カ月が経過しようとしていますが、未だに群馬県からは何の対応についての連絡が来ません。このまま、ダンマリを決め込むつもりなのでしょうか?

 サンパイの不法投棄を取り締まるどころか、無法状態に等しい群馬県の事務事業の実態ですが、この違反状態をなおすために処分を行う行政の権限、行政指導を行う行政の権限が、つねに適切に行使されるとは限りません。

 このような権限を行使するには、違反状態の存在を、行政が知っていないといけませんが、行政のインフラは限られており、規制の対象が広く追いつかなかったり、そもそも違反事実を認めるのが技術的に簡単ではない場合には、行政のみでは、違反事実にかかる情報を十分に取得できないということが起こり得ます。

 その結果、いわゆる、「執行の欠缺」というべき事態(適切な執行が欠けている状態)が生じていました。さらに、たとえ違反事実を知っていたとしても、黙認してしまったり、法律の根拠に基づかない弱弱しい行政指導を繰り返すばかりで、有効な是正策を講じず、違反状態の継続を許してしまう事態が生じてしまいます。

 こうした問題意識から、法令違反の事実を把握している者からの申出をきっかけとして、行政が必要な調査をし、その結果、必要があると認めるときに違反事実を是正するための処分又は行政指導をする制度をつくることで、行政手続法の目的である「行政運営における構成の確保と透明性…の向上を図り、もって国民の権利利益の保護」をはかろうとしたのが、この法律の趣旨です。

■当会としても、これまでは行政事件訴訟法に基づく行政訴訟ないし住民訴訟と行政不服審査法に基づく審査請求を主に利用して、行政の歪みの是正を求めてきました。今回、それらに加えて行政手続法第36条の3、および群馬県行政手続条例に基づく行政指導の中止等の求め及び処分等の求めに基づく対応を初めて試みました。

 この「処分等の求め」は、「何人でも」申し出ることができる制度であり、申出人個人の権利利益の侵害を要件とする行政不服審査とは一線を画すると考えられたからです。非申請型(直接型)義務付訴訟などの制度が整備されていたとはいえ、訴訟要件も本案勝訴要件も厳しい状況でしたから、このような柔軟な制度ができたのは、選択の多様性が増えたことになり、市民運動の立場からは、喜ばしいことではないかと思います。

 なお、処分の求めと行政指導の求めは、両方を求めることも可能であり、申出人の氏名、住所等の個人情報は、個人情報保護法により保護されます。勿論、当会では堂々と申出人の氏名、住所は自ら開示しております。

 ただし、この処分等の求めの制度にも限界があります。あくまで、職権発動を促す制度と位置付けられているに過ぎないからです。なぜなら、この証左として、申出人に、申出を受けた調査結果や是正措置について、通知を求める権利を与えてはいないからです。実務上は、通知を行うべきですが、法律上明確に書いてないのです。

 当会では今後も、この制度を使って活用例を積み重ね、行政の良質なサービスの提供につながるようにしたいと思っております。

【市民オンブズマン群馬事務局からの連絡・その2に続く】

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【安中タゴ51億円事件】会議録不開示取消訴訟で原告完全敗訴!…土地公社の伏魔殿化を追認した前橋地裁

2021-08-18 23:18:00 | 土地開発公社51億円横領事件

■令和3年8月18日(水)13時30分に前橋地裁2階第21号法廷で開かれた第4回弁論の判決言渡しで、4月に前任の渡邊裁判長(現・東京高裁判事)と交替した田中芳樹裁判長は、冒頭、橋本書記官が「令和2年(行ウ)第17号事件」と読み上げた後、「それでは判決を言い渡します。主文、本件訴えのうち,別紙不開示情報目録記載以外の不開示部分の取消しを求める部分を却下する。原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。理由は判決文を見てください」と宣言しました。

 4月に前橋地裁に赴任した田中裁判長が、前任者から引き継いだ事件で初めて判決を出すということで、その内容が注目され、オンブズマン関係者3名と大手新聞記者1名が傍聴していましたが、やはり行政にモノ申す判決内容とは程遠く、行政におもねる事なかれ主義の判決でした。現在、当会で係争中の数件の行政を相手取った住民訴訟事件を同裁判長が担当していますが、この判決文からすると、その他の事件の行方にも影響は大きいと思わざるを得ません。さっそく判決文を見てみましょう。

6日間続いた雨天からようやく日差しを見せた8月18日午前11時ごろの前橋地裁。

 この事件の出訴からこれまでの経緯については、次のブログを参照ください。
○2020年11月29日:【安中タゴ51億円事件】群銀103年ローンに加えタゴに1万8526年ローンを許容中の安中市を提訴!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3247.html
○2021年1月14日:【安中タゴ51億円事件】群銀103年ローンの公社理事会議録の不開示取消訴訟第1回弁論を前に安中市から答弁書
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3264.html
○2021年6月11日:【安中タゴ51億円事件】群銀103年ローンの公社理事会議録の不開示取消訴訟が結審!8/18に判決
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3325.html

■判決文の全文は次のとおりです。

*****8/18判決文*****ZIP ⇒ 20210818isjj.zip
令和3年8月18日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官橋本勇一
令和2年(行ウ)第17号 行政文書不開示処分取消請求事件
口頭弁論終結日 令和3年5月26日
           判    決
   群馬県安中市野殿980
       原        告   小  川     賢
   群馬県安中市安中一丁目23番13号
       被        告   安   中   市
       同代表者兼処分行政庁   安中市長 茂木英子
       同訴訟代理人弁護士    小  坂  景  子
           主    文
    1 本件訴えのうち,別紙不開示情報目録記載以外の不開示部分の取消しを求める部分を却下する。
    2 原告のその余の請求を棄却する。
    3 訴訟費用は原告の負担とする。
           事実及び理由
第1 請求
 処分行政庁が原告に対して令和元年8月6日付けでした行政文書部分開示決定(安企発第826号。以下「本件決定」という。)のうち,別紙文書目録記載の各文書中の黒塗り箇所を不開示とした部分を取り消す。
第2 事案の概要
 原告は,処分行政庁に対し,安中市情報公開条例(以下「本件条例」という。)6条1項に基づき,「2018年7月以前を含め,これまでに公社と群馬銀行との間で協議を重ねてきた経緯がわかる一切の情報(群銀との協議録のみならず,公社における理事会・評議会など内部の会議録を含む。)」等が記載された行政文書の開示を請求した(以下「本件開示請求」という。)。処分行政庁が同請求について本件決定をしたことから,原告は,被告に対し,本件決定のうち,別紙文書目録記載の各文書中の不開示部分の取消しを求めた。
 1 本件に関する法令等の規定
 (1) 本件条例の定め(抜粋)
ア 本件条例において,「実施機関」とは,市長,教育委員会,選挙管理委員会, 公平委員会,監査委員,農業委員会,固定資産評価審査委員会及び議会をいい,「行政文書」とは,実施機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書,図画及び電磁的記録であって,当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして,当該実施機関が保有しているもの をいう(2条1項,2項)。
 イ 何人も,本件条例の定めるところにより,実施機関に対し,当該実施機関の保有する行政文書の開示を請求することができる (5条)。
 ウ 実施機関は,開示請求に係る行政文書に次に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き,開示請求者に対し,当該行政文書を開示しなければならない(7条2号,3号)。
 (ア) 個人に関する情報であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの又は特定の個人を識別することはできないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。
 (イ) 法人その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって,公にすることにより,当該法人等又は当該個人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの。
 エ 実施機関は,開示請求に係る行政文書の一部に不開示情報が記録されている場合において,不開示情報が記録されている部分を容易に,かつ,開示請求の趣旨を損なわない程度に区分することができるときは,当該部分を除いて行政文書の開示をしなければならない(8条1項)。
 オ 実施機関は,法人の設立に当たり,市が2分の1以上を出資している法人の保有する情報であって,実施機関が保有していないものについて,当該情報の公開の申出があったときは,当該法人に対して当該情報を実施機関に提出するよう求めることができる(24条2項)。
 (2) 公有地の拡大の推進に関する法律(以下「法」という。)の定め(抜粋)
 地方公共団体は,地域の秩序ある整備を図るために必要な公有地となるべき土地等の取得及び造成その他の管理等を行わせるため,単独で,又は他の地方公共団体と共同して,土地開発公社を設立することができ,土地開発公社は,法人とされる(10条1項,11条)。
 2 前提事実
 以下の事実は,当事者間に争いがないか,本文中に掲記の証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認めることができる。
 (1) 安中市土地開発公社(以下「本件公社」という。)は,法10条1項に基づき,被告が全額を出資して設立した土地開発公社である。(甲4)
 (2) 本件公社では,昭和62年から平成7年にかけて,当時の職員が,約3億4490万円の公金を着服し,また,群馬銀行から融資金約48億円を騙し取るなどして,約51億1250万円を横領するという事件(以下「安中市土地開発公社不祥事件」という。)が発生した。
 (3) これを受けて,群馬銀行は,平成7年10月19日,本件公社及び本件公社の保証人であった被告に対し,貸金の支払及び保証債務の履行を求める訴訟を提起した。
 (4) 上記訴訟において,平成10年12月9日,本件公社及び被告が,群馬銀行に対して連帯して24億5000万円を分割して支払う内容の和解(以下「本件和解」という。)が成立した。(甲7,10)
 (5) 原告は,令和元年6月10日,処分行政庁(安中市長。以下「市長」という。)に対し,「広報あんなか2019年6月1日号のP9下半分にある「安中市士地開発公社不祥事件 和解20年後の対応について」という記事に関する次の情報」として,「2018年7月以前を含め,これまでに公社と群馬銀行との間で協議を重ねてきた経緯がわかる一切の情報(群銀との協議録のみならず,公社における理事会・評議会など内部の会議録を含む)。」等が記載された行政文書の開示を求める本件開示請求をした。(甲1)
 (6) 市長は,本件公社に対し,本件開示請求の対象となる情報のうち本件公社が保有しているものについて,本件条例24条2項に基づき,情報を提出するよう求めたところ,本件公社は,別紙文書目録中別紙不開示情報目録記載以外の黒塗り部分(以下「本件公社黒塗り部分」という。)を黒塗りした文書(以下「本件各文書」という。)等を提出した。
 市長は,本件各文書のうち,個人の氏名及び地位については本件条例7条2号に,法人の印影については同条3号に該当するとして,該当箇所を黒塗りした上で,本件決定をし,これを原告に通知した。(甲2,5~10)
 (7) 原告は,令和元年11月7日,本件決定を不服として,市長に対し,審査請求をした。(甲3)
 (8) 市長は,令和2年5月15日付けで上記審査請求を棄却するとの裁決をし,同月16日,原告に対してこれを通知した。(甲4)
 (9) 原告は,令和2年11月16日,本件訴訟を提起した。(当裁判所に顕著な事実)
第3 争点
 1 本件各文書のうち,本件公社黒塗り部分について,市長の不開示決定が存在するか(争点1)
 2 本件決定の適法性(争点2)
第4 争点に関する当事者の主張
 1 争点1(本件各文書のうち,本件公社黒塗り部分について,市長の不開示決定が存在するか)
 (1) 原告の主張
 被告が本件公社の群馬銀行に対する本件和解に基づく債務について連帯保証人である以上,市長は,本件公社理事会の会議録情報を全て保有していなければならない。
 また,本件公社は,その運営に携わる職員は被告の市長部局の職員が全て兼務し,その業務従事時間に相当する給与は全て被告が支払っている。本件公社には組織固有の総務や人事など存在せず,執務用の専用スペースもなく,電話もFAXもなく,本件公社の看板すらない。本件公社は,その施設の全てを被告と共有しており,実質的に被告と同体である。
 さらに,被告は,本件公社の連帯保証人である以上,本件公社理事会で繰り返し行われてきた本件和解に関する協議の内容について,無頓着であってはならず,しかるべき方策を本件公社が取っているか知る必要があるから,本件公社から情報を取得する義務がある。
 したがって,市長は,本件各文書について,黒塗りしていないものを保有しているはずである。
 (2) 被告の主張
 市長は,本件開示請求を受け,本件公社に対し,本件条例24条2項に基づき,情報の提出を求めた。これに対して,本件公社が,本件公社黒塗り部分を黒塗りした文書(本件各文書)等を提出したため,市長は,本件条例7条2号又は3号に該当する部分を黒塗りした上で,本件決定をした。
 本件公社は,被告と密接な関係で業務を行っているが,法人格はもとより会計上も被告から独立しており,本件条例においても同様に位置付けられている。そのため,被告が本件公社の連帯保証人となっていたとしても,市長は,本件公社理事会の会議録情報を保有しておらず,また,保有する義務もない。
 したがって,本件各文書のうち本件公社黒塗り部分について,市長による不開示決定は存在しない。
 2 争点2(本件決定の適法性)
 (1) 被告の主張
 前記のとおり,本件公社黒塗り部分の不開示決定は存在しない。また,別紙不開示情報目録記載部分は,個人の氏名及び地位又は法人の印影であるから,本件条例7条2号又は3号に該当する。
 したがって,本件決定は適法である。
 (2) 原告の主張否認ないし争う。
第5 当裁判所の判断
 1 争点1(本件各文書のうち,本件公社黒塗り部分について,市長の不開示決定が存在するか)について
 原告は,被告が本件公社の群馬銀行に対する本件和解に基づく債務について連帯保証人であること及び被告と本件公社が実質的に同体であること等から,市長は,本件各文書について,黒塗りしていないものを保有しているはずである旨主張する。
 確かに,前記前提事実(4)のとおり,被告と本件公社は,群馬銀行に対し,本件和解に基づく連帯債務を負担している。しかし,そうであるからといって,市長が本件公社理事会の情報を全て保有していることにはつながらないし,本件公社は,法に基づいて被告が設立した土地開発公社であり(前提事実(1)),被告からは独立した法人格を有するものであるところ,本件全証拠によっても,被告と本件公社が実質的に同体であるとの事実は認められない
 また,本件条例24条2項は,実施機関は,市が2分の1以上を出資している法人に対して,実施機関が保有していない情報を提出するよう求めることができると規定するものの,市長において,本件公社が本件公社黒塾り部分を黒塗りして提出した文書について,さらに本件公社に対して黒塗りのないものの提出を強制することまではできないものと解される
 したがって,原告の主張は採用することができない。そして,本件全証拠によっても,市長が,本件決定当時,本件各文書について黒塗りしていないものを保有していたことは認められないから,本件公社黒塗り部分について,市長による不開示決定は存在しないというべきである
 2 争点2(本件決定の適法性)について
 上記のとおり,本件公社黒塗り部分について,市長による不開示決定は存在しない。
 ところで,前記前提事実(6)及び弁論の全趣旨によれば,別紙不開示情報目録記載部分のうち,議事録本文中の黒塗り部分は個人の氏名及び地位が記載された部分であり,議事録添付資料中の黒塗り部分は法人の印影が記載された部分であることが認められる。
 個人の氏名及び地位が記載された部分は,「個人に関する情報であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」として本件条例7条2号に該当する。法人の印影が記載された部分は,法人の印影が,記載事項の内容が真正なものであることを示す認証的機能を有する性質のものであり,これを公開すると,偽造等によって当該法人に損害を及ぼすおそれがあるから,「法人その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって,公にすることにより,当該法人等又は当該個人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」 として同条3号に該当する。
 したがって,不開示情報部分を除いて開示をした本件決定は適法である。
 3 結論
 以上によれば,本件訴えのうち,本件公社黒塗り部分の不開示の取消しを求める 部分は不適法であるから却下し,その余の請求は理由がないから棄却することとす る。

    前橋地方裁判所民事第1部
       裁判長裁判官  田 中 芳 樹
          裁判官  杉 浦 正 典
          裁判官  清 水 瑛 夫

=====別紙1=====
(別紙)
           文 書 目 録
1 平成30年度第3回公社理事会安中市土地開発公社理事会会議録
2 平成30年度第4回公社理事会安中市土地開発公社理事会会議録
3 平成30年度第5回公社理事会安中市土地開発公社理事会会議録
4 平成30年度第6回公社理事会安中市土地開発公社理事会会議録
5 平成30年度第7回公社理事会安中市士地開発公社理事会会識録
6 令和元年度第1回公社理事会安中市土地開発公社理事会会議録

=====別紙2=====
(別紙)
      不 開 示 情 報 目 録
1 平成30年度第3回公社理事会安中市土地開発公社理事会会議録のうち,6枚目の5,6,11,16,18行目の黒塗り部分
2 平成30年度第4回公社理事会安中市土地開発公社理事会会議録のうち,5枚目の7,8,29,30行目,6枚目の16,17,28,29行目,7枚目の9行目,資料 7及び参考資料(「証」書式)の黒塗り部分
3 平成30年度第5回公社理事会安中市土地開発公社理事会会議録のうち,12枚目の35行目,14枚目の14,22行目,資料3及び資料4の黒塗り部分
4 平成30年度第7回公社理事会安中市士地開発公社理事会会議録のうち,6枚目の16行目及び13枚目の35行目の黒塗り部分
5 令和元年度第1回公社理事会安中市土地開発公社理事会会議録のうち,6枚目の36行目,7枚目の1行目,資料1-3及び資料1-4の黒塗り部分


これは正本である。

令和3年8月18日
  前橋地方裁判所民事第1部
   裁判所書記官 橋 本 勇 一
*********

■裁判所が判決文を書く時、よく使う言い回しがあります。それは、判決文の文中に赤字で示したとおり、「しかし,そうであるからといって,○○していることにはつながらないし,○○であるとの事実は認められない。」「○○することができると規定するものの,(ただちに)○○することまではできないものと解される。」「したがって,○○しないというべきである。」という文章構成に如実に表れています。

 公社の事業実態を市民の目から遠ざけたことにより、地方自治体では史上最高額の51億円余りの横領事件が26年前に起きました。

 ところが当時、市民団体である当会の前身の「市政をひらく安中市民の会」が提起した、元職員をはじめ公社の歴代の理事幹事らの責任追及と損害賠償を求める住民訴訟事件において、当時の一審の前橋地裁も、二審の東京高裁も、そして上告審の最高裁判所も、「公社は安中市とは別法人だから、安中市民には被害がなく、よって訴えの利益がないから訴訟資格もない」として、市民団体の請求を棄却しました。

 本当に市民に損害がないのであれば、安中市は土地開発公社に対して連帯保証をする必要がないことになります。しかし、田中芳樹裁判長ら判事は、その点について「しかし,そうであるからといって,○○していることにはつながらないし,○○であるとの事実は認められない。」として、直視した判断をすることはありませんでした。

■24年前に上記の判断をした裁判官に対して、24年後の現在の裁判官が、全く同じ理屈で「公社別法人だから」という判断を最優先にしたのです。その結果、今後とも、安中市=安中市土地開発公社は、自ら損害を被った元職員に対して、損害賠償を求める努力もせず、そのことを市民に対して情報開示する熱意もなく、群馬銀行に対してのみ、あと81年間にわたり、元職員の尻拭いの為の和解金を毎年2000万円ずつ支払うためだけに、公社だけは存続させようという方針を、ますます助長させることになってしまいました。

 しかし、安中市=公社が、高崎市に在住する元職員が、毎月1万円の自主返済をしている現状に満足して、今後も約1万8000年にわたり、返済してくれると思っているのでしょうか。

 あと8年後に、和解後30年目の対応の次期がやがて巡ってきます。次回までに、この忌まわしい負の遺産を次の世代に残さないように、筆者は命の続く限り、尽力してまいる所存です。

【市政をひらく安中市民の会事務局からの報告】

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【繰り返される悲劇】東京高専の学生自死事件で機構本部が設置した第三者調査委の真相究明能力は?

2021-08-13 23:40:00 | 群馬高専アカハラ問題
■「高専生の自殺」については、当会としても地元の群馬高専で2年間に3名の自殺者が出た事件をきっかけに、高専組織の体質にどのような問題があるのか詳しく調査追及してきました。その後、隣県の長野高専からも同様の事例が寄せられ、県境を跨いで検証を続けております。こうした悲劇が繰り返されている原因としては、独法高専機構という文科省傘下のピラミッド役人組織が、恐ろしく国民の監視とガバナンスの届きにくいシステムになっていること、文科省天下り校長や悪徳教職員の隠蔽揉み消し癖のせいで各種ハラスメントやいじめが恒常化しやすい土壌ができていること、などが挙げられます。これが、これまでの当会の活動を振り返っての概ねの結論です。

 事実、高校・大学生に比べ、国立高等専門学校生の自殺率が約2倍になることは、国会でも取り上げられ問題視されています。原因分析として、コロナ感染拡大の影響で大学在学中に就職先が決まらずに卒業し、孤立感を深める実態があるとされていますが、そもそも高専機構の組織的な問題にメスを入れないと根本的な解決はおぼつかないと思います。

 こうした中で、高専機構本部が、8月12日に「『東京工業高等専門学校の自死事案に係る第三者調査委員会』の設置について」と題するお知らせをリリースしました。さっそく見てみましょう。



**********高専機構HP 2021年8月12日10:00
URL ⇒
https://www.kosen-k.go.jp/news/detail.html?itemid=8659&dispmid=1240&TabModule1107=0
               お知らせ
「東京工業高等専門学校の自死事案に係る第三者調査委員会」の設置について

                              2021/08/12

令和3年8月8日(日)国立高等専門学校機構本部事務局に「東京工業高等専門学校の自死事案に係る第三者調査委員会」を設置し、1回目の委員会が開催されました。

委員会は4名の外部委員で構成され、東京工業高等専門学校の学生が令和2年10月5日に亡くなられたことに関する事実関係や背景を明らかにし、学校として必要な改善に関する提言を行うことを 目的としており、令和4年3月末を目処に報告書がまとめられる予定です。
**********

■この痛ましい自死事件に関する情報をネット検索してみると、経緯や背景等を報じた記事が見つかりました。なんと、学生会長を務めていた有能な学生を死に至るまで追い詰めた原因は、東京高専の教職員によるパワハラ行為であると断じています。当会がこれまで、群馬高専と長野高専で多発した学生の自死事件の原因を究明すべく、再三にわたり学校そして元締めの高専機構に対して情報開示請求を行い、学生を死に至らしめる組織的病巣の真相解明を問題視し、改善を求めてきたのに、そのお膝元の東京高専で再び悲劇が繰り返されたのでした。

 当該記事は次のURLでご覧ください。
○2021年5月12日:いじめ探偵がパワハラ教員を告発。東京高専の生徒を自殺に追い込んだ悪魔の所業
https://www.mag2.com/p/news/496577

 ちなみに、この記事を執筆した「探偵」のかたは、2016年5月、大島商船高等専門学校(大島商船)の学生が校舎から飛び降りて自殺した事件についても粘り強い取材をしています。
○2019年2月26日:探偵が暴露。あまりにも酷い大島商船高専いじめ自殺事件の実態
https://www.mag2.com/p/news/387988
○2019年5月27日;いじめ探偵がNHKスペシャル出演で受けた、脅迫や嫌がらせの数々
https://www.mag2.com/p/news/399432
○2019年8月12日:高専いじめ事件の怪。厚顔無恥な校長の放った「無礼千万」発言
https://www.mag2.com/p/news/409418
○2020年4月17日:現役探偵が糾弾。いじめ自殺事件の加害者を守る商船高専の実態
https://www.mag2.com/p/news/448856

 大島商船の自殺事件では、その後、2018年に福田校長が記者会見で「いじめは否定できないと思った」として、いじめを認める発言をしています。また、この事件でも第三者調査委員会が立ち上がり、事件の調査を進めましたが、当時、大島商船では、もう1つのいじめ自殺未遂事件に関する第三者委員会が立ち上がっていました。

 これは当時、いじめ自殺をした生徒と同室だった学生へのいじめ事件を調査するために設置され、同学生の友人らが同様に校内や寮内で嫌がらせを受けているという事と同時に、教員らによるパワハラ行為があったとされるものに対しての第三者委員会でした。船員養成を目的とする大島商船の特殊性も遠因かもしれませんが、高専という文科省キャリアの天下り組織という特殊性が、主原因だと言えるでしょう。

 今回、8月8日に高専機構本部のお膝元で立ち上げられ第三者調査委員会は、はたして適切な調査機能を発揮するでしょうか?これまで機構本部を相手取り、情報隠蔽体質を改善すべく訴訟を重ねてきた当会としては、高専機構の体質を痛感させられているだけに、期待度は低いのが本音です。

 実際、冒頭の高専機構HPの「お知らせ」を見ても、「機構本部事務局に第三者委員会を設置し、1回目の委員会が開催されました」として僅か7行しか記載がありません。今後、来年3月末までに行われる第三者委員会による調査の過程や結果が、はたしてどれほど公開されるのか、極めて不透明です。

■ところで、この「第三者調査委員会」という名称は、不祥事件が起きるたびによく耳にします。一般的には企業の不祥事件で時限的に設置されることが多く、第三者調査委員会の目的について「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」によると、「第三者委員会は、不祥事を起こした企業等が、企業の社会的責任(CSR)の観点から、ステークホルダーに対する説明責任を果たす目的で設置する委員会である。」と記されています。

 さらに「第2.第三者委員会の独立性、中立性第三者委員会は、依頼の形式にかかわらず、企業等から独立した立場で、企業等のステークホルダーのために、中立・公正で客観的な調査を行う。」という規定があります。

 第三者委員会の構成員は、弁護士が就くことがほとんどで、地元の弁護士会に相談すると担当弁護士先生を紹介してくれます。

 企業の不祥事件の場合、設置される第三者委員会は、真相究明、責任明確化、再発防止の為の調査をするわけですが、費用を出すのは顧客である企業である上に、弁護士先生のバイブルと目される弁護士職務基本規程第21条(正当な利益の実現)として「弁護士は、良心に従い、依頼者の権利及び正当な利益を実現するように努める。」との定めがあります。

 そもそも、ほとんどの弁護士先生の性(さが)として、「顧客の利益を最優先する」という行動規範が先に立ち、どうしても「社会全体としてこうあるべき」とか「社会正義としては絶対に許されない」という考え方が脇に置かれがちであるのは、行政訴訟をしてみるとすぐわかります。なぜなら、行政の違法不当な権限の行使を糾弾しようとすると、行政側は「クロをシロにしてください」とばかりに顧問弁護士と称する弁護士先生に声を掛け、弁護士先生も、「顧客の不祥事の揉み消し」が「顧客の為に働く目的だ」として、ホイホイ請負うからです。

 その対価として我々の血税が支払われ、裁判所の裁判官らも「行政を敗訴させると、出世に悪影響を及ぼす」として、住民側に対して、社会正義とは真逆の歪んだ判決を下すのがもっぱらです。

■無論、現在の裁判制度では、犯罪者にも弁護士が付けられるわけで、「弁護士には依頼者のために働くことが求められている」という弁護士職務基本規程の考え方は、社会のニーズに応じたものであることは確かです。

 問題は、第三者委員会の業務に携わる弁護士先生が、ややもすると、報酬を支払ってくれる依頼者のために忖度するなどして働いてしまうことです。今回、機構本部は企業の場合と異なり、費用は公金、つまり我々の血税で賄われるわけですが、財布のひもを握っているのは高専機構ですから、どうしても、高専機構に忖度するなどして、第三者として公平、公正な判断が歪められはしないか、ということです。

 今後、当会として、この第三者調査委員会の動静に注目したいと思いますが、機構本部が詳しくこの第三者調査委員会の調査業務の過程を都度HPで発表することは期待薄です。したがって、皆様からの情報提供を期待する次第です。ぜひ、このブログのメッセージBOX、あるいは拍手コメントに情報をお寄せください。情報源の秘密は厳守いたします。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※関連情報「一般の高校・大学生に比べて自殺率2倍の高専生」
**********
第204回国会 参議院 文教科学委員会 第3号 令和3年3月16日
会議録テキストのURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415104X00320210316

000・会議録情報 令和三年三月十六日(火曜日) 午前十時開会

097・佐々木さやか
○佐々木さやか君 是非よろしくお願いいたします。
 そして、そうした様々な対策を是非高等専門学校生にも行っていただきたいというふうに思っています。
 先ほど御紹介いただいた子供たちの自殺者数の数の中には、高等専門学校生は入っていないというふうに聞いております。この高専、国立高専の自殺者数やその推移について教えていただけますでしょうか。
発言のURLhttps://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415104X00320210316/97

098・伯井美徳
○政府参考人(伯井美徳君) お答えいたします。
 独立行政法人国立高等専門学校機構によりますと、令和二年度の国立高等専門学校の自殺者数は十三人であります。国立高等専門学校の学生に占める割合の〇・〇二五%となっております。
 自殺者数の傾向といたしましては、平成二十七年度、二十八年度の十四人から減少傾向にありましたが、令和二年度は増加に転じ、二月末現在で十三人となっております。
発言のURLhttps://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415104X00320210316/98

099・佐々木さやか
○佐々木さやか君 今、令和二年度の国立高専生の自殺者数が十三人というふうに教えていただきました。そして、自殺率については〇・〇二五%ですかね。
 これ、十三人という数字ですけれども、この自殺率で大学生、また高校生と比べますと、実に二倍以上になっております。令和二年度の大学生の自殺率は〇・〇一三%でございます。そして、高校生については〇・〇一%。これに比較して高専生は〇・〇二五%でございますので、先ほども申し上げたように二倍というような数字になっていると。
 これは一般の高校、大学に比べて多いのではないかと思うんですが、その原因についてはどのように分析しているんでしょうか。
発言のURLhttps://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415104X00320210316/99

100・伯井美徳
○政府参考人(伯井美徳君) お答えいたします。
 自殺の多くは、多様かつ複合的な原因、背景を有しており、原因の特定は困難でございますが、友人などからの聞き取りや学生相談室への相談記録などから、将来への不安あるいは学業不振などが多いというふうになっております。(←当会注:組織的な問題なのに、個人の問題にわざと転嫁している)
 また、その背景には、高専独自の要因ということで、厳しい進級基準等による進級、卒業へのプレッシャー、あるいは高専の先生方、教員の生徒指導に対する経験等の不足、それから、一学科一クラスということで五年間同じクラスで学ぶ場合が多いという高専の学級編制など、高専独自の要因もあるのではないかというふうに分析されております。
発言のURL
https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415104X00320210316/100

101・佐々木さやか
○佐々木さやか君 今、要因についても、もちろんこれというふうにはっきりすることはなかなか難しいかもしれませんけれども、やっぱり過去十年を見ましても、先ほど申し上げたような一般の大学、高校と比べて自殺率が二倍程度というものは、過去十年比べてもその傾向にあります。ですので、この一年、二年で急激にというわけでもありませんし、やっぱり何かしらこの原因があるんだろうと。今お聞きしましたら、例えば学業についてのプレッシャーですとか生徒指導が少し不十分なのではないかと、そういった原因があるというふうに分析しているわけですから、これは早急に対応する必要があるというふうに思います。
 最後に、大臣に伺いたいと思います。
 大臣は、各地の高等専門学校に精力的に足を運ばれていらっしゃって、実際に学生の皆さんともきっと多く接していらっしゃるのではないかなと思います。所信で述べられていらっしゃいますけれども、我が国の高専は産業界や諸外国から高い評価を受けており、我が国の産業界を支える大きな役割を果たしていると。この高専を応援していくというのは私も大賛成であります。この応援をするためには、やはり学生が主役でありますので、是非大臣にもこの学生を応援していただきたい。
 その悩んでいる学生が実は多いということが明らかになっているわけですので、是非大臣にもこの高専生の自殺の問題、対策についてお取組をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
発言のURLhttps://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415104X00320210316/101

102・萩生田光一
○国務大臣(萩生田光一君) 先生の質問通告をいただいて、改めてその高専だけを切り分けて今言ったような数字を検証しますと、本当に他の学校群より残念ながら自殺者の比率が多いということが明らかになりまして、そのことを大変重く受け止めています。
 全国の国立高等専門学校を所管する国立高等専門学校機構では、これまで、自殺防止のために学生の異変を速やかに察知し学生に寄り添った対応ができるよう、予防のための統一アンケートの作成、実施、学生支援担当教職員研修の実施などに取り組んできました。また、平成三十年度には文部科学省において予算を措置し、スクールカウンセラーの全校配置による相談体制の強化を図りました。これに加え、今年度から新たに国立高等専門学校機構本部にいじめ対策チームを設置するとともに、いじめ防止等対策ポリシーの全面改定、全教職員を対象としたいじめ防止等研修などを開始し、自殺防止に取り組んでいるところです。
 さらに、令和三年度予算案においては、各高等専門学校のニーズに応じて、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの増員などの学生支援体制の更なる充実やコロナ禍における学生相談体制の充実に活用できる予算を計上しています。
 先生御指摘いただいたように、私、高専に対しては大変強い思いがあって、この学校の仕組みというものはもう日本の誇る教育システムだと思っております。日本の将来、物づくり企業等を支えていく大切な人材でありまして、唯一今回の質問を機に私自身感じたのは、高専に行っていただくと分かると思うんですけど、本来だったら普通の高校生の年代なのに、非常に自立性が高くて、大人として扱い過ぎてしまっているがゆえに、本当はまだ未熟なところもあるのになかなかそういうことにうまくマッチできていなかったんじゃないかという思いがございますので、普通の高等学校と同じように、あるいは普通の大学生、一年生や二年生をフォローするのと同じように、人的な配置をしながら、高専とも連携をして、学生たちに寄り添って悩みに応えてあげられるような、そういう体制を更に強化していきたい、そう思っております。
発言のURLhttps://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415104X00320210316/102
**********

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【もうすぐお盆】恒例の村の共同墓地の清掃作業

2021-08-01 23:28:00 | 国内外からのトピックス

■筆者の居住する安中市北野殿地区には、4カ所の共同墓地が有り、それぞれのマケごとに所有地が分かれています。マケというのは、本家とその親族分家や奉公人分家,また直接分家だけでなく間接分家(分家の分家,すなわち孫分家とか又分家と呼ばれた家)をも含む組織集団のことで、農山漁村社会でマキ、マケ、マツイ、カブウチ、イッケ、クルワなどとも称されており、商人社会ではノーレンウチなどとも呼ばれていたもので、社会学、民族学、民俗学、社会人類学によっては同族団(同族集団、同族団体、同族組織)と呼ばれています。

 筆者の所属する小川マケが保有する墓地は、村の北側の北浦地区に所在しており、東邦亜鉛安中製錬所との境界から僅か50mの地点にあります。毎年お盆前の8月の第1日曜日の早朝に墓地清掃のための共同作業が行われています。

 年々猛暑となるため、以前から作業開始時間が朝6時と決められており、筆者が10分前に現場に行くと、既に過半数のメンバーが作業を始めていました。


昇り始めた朝日を背に進入路の清掃作業をする住民ら


中央部の三叉路から右側(東側)に伸びた道路の先に見える小区画が共同墓地

 Google Mapでもお分かりのとおり、中央部に見える白い2つの点付近にある安中製錬所の主排気塔(煙突)から120mしか離れておらず、製錬所の境界フェンスからは50mの距離にあります。したがって、煙突から排出される重金属を含む降下ばいじんに長年晒されているため、土壌中のカドミウム等の重金属の含有量は極めて高く、現在、汚染土壌の排客土と合わせた工場周辺の農地(畑)の区画整理方式による事業が、公害裁判和解後の平成7年度から行政主導で進められていますが、26年が経過した今も、遅々として進捗していません。そのため、周辺で栽培した作物の可食部中のカドミウム量が高いままで、耕作したくても安全な作物の栽培が困難だとして、耕作をあきらめる土地所有者も多く、荒れ放題の土地も少なくありません。

 東邦亜鉛はそうした農地を所有者から二束三文で買い上げて、周辺に土地を広げて来ており、現在は55ヘクタールにまで拡大しています。小川マケの墓地も、村の北西部にある大塚マケの墓地も、その周辺は、東邦亜鉛の子会社の安中運輸の名義で買収が進んでおり、このままですと、ますます周囲が荒れ放題になり、東邦亜鉛側の思うつぼとなるため、早期に排客土と区画整理の事業を進める必要がありますが、コロナ禍を理由に、行政の取り組みはますます腰が引けている状況です。

■さて、そうした周辺状況のなかで今年も行われた共同作業ですが、主な作業は、東邦亜鉛安中製錬所のフェンスから墓地迄の進入路の両側に繁る笹薮や雑草の除去と、墓地周辺の笹薮や灌木と、墓地の南側の駐車スペースの確保のためのコサ切りや草刈りです。


両側から張り出した笹薮や雑草を除去する。

年々、未知の両側の笹薮や雑草が繁茂してくる。道路の右手に見えるのはゴミの不法投棄禁止の看板など。

右奥の木立の間から安中製錬所の主排気塔の先端部が見える。朝のうち、うっすらと灰色の排ガスが立ち上っていたのが見えた。

東邦亜鉛安中製錬所のフェンス沿いの墓地進入路。

 2時間ほどの作業で、見違えるほど整備されましたが、年々路面の劣化や道路脇の笹薮の拡大により、作業の難度が増しており、それに逆比例して、参加者の高齢化が進んでおりますが、毎年、お盆で帰省する親族らのことを思うと、草刈り機を持つ手にも力が入ります。

 もっとも、今年も昨年に引き続きコロナ禍にあるため、遠くからわざわざ帰省してくれる親族が果たしてどれほど期待できるのかは未知数ですが、いずれお世話になる場所ですので、可能な限り、墓地の維持に必要なこの作業に参加し続けることになりそうです。


すっかりきれいになった墓地への進入路。東邦亜鉛のフェンスからはみ出したコサ切りも行った。東邦亜鉛から、あとでクレームが来るかもしれない。

↑木立の影の部分は落ち葉や湿気で親友路の中央部に苔が分厚く繁茂しており、路面の劣化が進む。↑

重車両が通ったためか、路面が一部陥没したり、亀裂が入っており、そこに泥や土が堆積して雑草が路面に繁茂しつつある。こうした道路が、ごみの不法投棄を助長しかねず、頭の痛いところだ。↑

道路の路面の亀裂に繁茂していた雑草は、紐を使った草刈り機で対応した。

墓地周辺の樹木がどんどん成長し、日影が増える。猛暑の中での墓地参拝時には涼しいが、落ち葉や湿気で路面の劣化が促進されてしまう。

毎年笹薮を伐採しても、次々に笹が茂ってくる。道路の亀裂も年々酷くなっている。

午前8時を過ぎると、気温もどんどん上昇した為か、主排気煙突からの煙も目立たなくなった。

さきほどの路面陥没による損傷個所。窪んだ箇所に泥が堆積して雑草が茂るようになり、作業の負担が年々増している。

ゴミの不法投棄を禁止する看板。

犬の散歩時のマナー啓発看板もある。

お盆が迫る中、すっかり整備された墓地への進入路。コロナ禍の中であっても、やはりお盆のお墓参りは季節の節目として欠かせない行事だ。

【ひらく会情報部】

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東京五輪の中国バドミントン女子選手の余りに下品な罵声を中共政府が称賛

2021-08-01 22:29:00 | 国内外からのトピックス
■7月23日夜行われた東京五輪の開会式で台湾はプラカードこそ「チャイニーズ・タイペイ」でしたが、行進の順番は事前に予定されていた106番目の「チャド」の次ではなく、実際には103番目の「だいかんみんこく」の次で、105番目の「タジキスタン」の前でした。筆者も見ていて「あれっ」と思ったのですが、あとでネットで確認すると、やはり、「たいわん」の呼称で行進の順番とすることを事前に台湾側に通知していたことがわかりました。さっそく中共政府が抗議したようですが、「余計なお世話」だと言えます。

 さて、今回の五輪で台湾が獲得したメダル数は、8月1日午後5時現在で金2、銀2、銅4の合計8個で、2004年のアテネ大会での金2、銀2、銅1の計5個を早くも上回り、さらに上積みが確実視されています。

 このうち大会2日目の7月24日に行われた、柔道男子60キロ級の決勝戦では日本の高藤直寿が台湾の楊勇緯に延長戦で指導3による反則勝ちをしたが、見ていて明らかにイタリア人の女性審判の判定は時期尚早で不適切だと思われました。しかし、3つ目の指導が入って反則負けを受けた台湾の楊選手は、最初、悔しさを隠し切れない様子でうなだれていましたが、歩み寄った高藤選手と手を握り言葉を交わしたあと、高藤選手を称えるために同選手の手を挙げようとしました。これに対して高藤選手も、楊選手の左手を握り返し、二人は握り合った手を共に高々と掲げたのでした。

 これが、台湾選手ではなく中国や韓国の選手ではどうだったでしょうか。こうしたスポーツマンシップに溢れたシーンはおそらく望むべくもなかったことと思います。

 とりわけ中国選手のマナーには眉を潜めざるを得ないシーンが今大会でも続出しています。その際たるものがバドミントンに出場している中国の女子選手です。

**********ニューズウィーク日本版2021年7月31日10:42
東京五輪、中国人バド選手が韓国ペアとの試合中に「罵倒」連発で騒動に

陳清晨選手(7月29日) LEONHARD FOEGER-REUTERS
<東京五輪に出場している中国の女子バドミントン選手が、試合中に「罵倒」言葉を連発していたと騒動に。本人は「発音の悪さでそう聞こえた」と釈明>
 東京五輪のバドミントン女子ダブルスに出場している世界ランキング3位の中国人ペアが、韓国人ペアとの試合中に罵倒の言葉を繰り返していたとしてネット上で騒ぎが広がっている。ただ、当の中国人選手は、「発音が悪かった」せいだと釈明している。
 陳清晨選手(24)は7月27日に行われた韓国ペアとの1次リーグの試合で、英語にすると大まかに「f***」を意味する中国語を何度も叫んでいたと指摘されている。
 中国ペアはこの試合の第1ゲームを接戦の末に落としたが、陳選手は苛立った様子を見せており、その中で大声で何かを叫んでいた。
 続く第2ゲーム、陳選手は自身やチームメイトの賈一凡選手が得点したときなど、熱くなった瞬間にまた何度か罵倒の言葉を叫んだように見えた。
 試合後に彼女は声明を発表し、感情を爆発させたことについて謝罪した。彼女によれば「自らを励まそうとしていた」という。「私の発音が悪かったせいで、皆さんを誤解させてしまうことになるとは考えませんでした。神経質になっていました。ご支援に感謝します。発音も調整するようにします」
 とはいえ、彼女が実際には何と言おうとしていたのかは明らかにされていない。
 結局、この試合で中国ペアは韓国ペアを下し、準々決勝では福島由紀・広田彩花ペア(日本)にも勝利した。7月31日の準決勝では、騒動となった試合の相手である金昭映・孔熙容の韓国ペアと再戦する。
★東京五輪ではこれまでも「問題発言」が★
 IOCの規定では、試合中の罵倒について明確な基準は定められていない。だが世界バドミントン連盟の行動規範には、選手たちは「あらゆる言語について、一般に知られ、理解される冒とく的または下品な言葉を言い、審判や観客に聞こえるほどはっきりと大声で言うこと」を避けるようにとされている。
 試合の様子はソーシャルメディアを通じて拡散されているが、多くの中国のファンたちは今回の「罵倒騒動」についてはあまり問題視していないようだ。
 今回の大会で、アスリートの発言が問題になるのはこれが初めてではない。イギリスの水泳選手アダム・ピーティーが100メートル平泳ぎの試合後に行われた生中継のインタビュー中に「fワード」を発して問題になった。またオーストラリアの水泳選手ケーリー・マキオンも、同様の騒ぎを起こした。彼女はその後、謝罪している。
 罵りの言葉を発することには、選手の肉体的なパフォーマンスを高める効果があるとする科学者もいる。英キール大学の精神生物学研究者リチャード・スティーブンスが2017年に発表した研究結果によれば、汚い言葉を発することで肉体的なパフォーマンスは最大8%向上し、痛みへの耐性も高まったという。

<SNSで話題になっている韓国ペアとの試合中の陳選手の「叫び声」>
MrX @HelpSoshk – 7月28日
昨天的奧運會場上,出現了奧運史上最怪奇的場景之一。 中國羽球女子雙打選手陳清晨,抗議對手韓國隊擊球時喊聲太大聲,抗議未果後,竟然發聲反制。 她在得分時高喊「操!」、「我操!」、「我操你媽!」、「我去你媽的!」,整場比賽都是她在罵髒話的聲音。
https://twitter.com/HelpSoshk/status/1420274645253509127?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1420274645253509127%7Ctwgr%5E%7Ctwcon%5Es1_&ref_url=https%3A%2F%2Fwww.newsweekjapan.jp%2Fstories%2Fworld%2F2021%2F07%2Fpost-96815.php

**********レコードチャイナ2021年07月30日 06:20
中国バド選手の「汚い」雄たけび、中国国内でも賛否―仏メディア
 2021年7月29日、仏国際放送局RFIの中国語版サイトは、東京五輪のバドミントン女子ダブルスで中国選手が試合中に口汚い言葉を連発し、中国国内からも批判の声が出たと報じた。
 記事は、27日に行われた女子ダブルスの試合で中国の陳清晨(チェン・チンチェン)・賈一凡(ジア・イーファン)ペアが韓国ペアに勝利してベスト8進出を決めたと伝える一方で「残念なことに、陳が試合中にしばしば口汚い言葉を発し、中国のネットユーザーたちは称賛すべきか批判すべきかわからなくなってしまった」とした。
 そして、この試合の第1ゲームで韓国ペアにリードを奪われた陳が反撃のポイントを獲得した際にののしり言葉を叫ぶと、試合中に次々と美しくない言葉を発し続け、最後に勝利を決めた際にも「中継の担当者よりも大きな音量」でののしり言葉を叫び、その様子がネット上で急速に拡散したと伝えている。
 その上で、ネットユーザーから「まさかこれが中国選手の姿なのか」「5000年と言われる中国文化を持ちながら、これは一体どういうことなのか」といった批判的なコメントが寄せられたとしたほか、一部では「わかりやすくていいではないか」「全世界に偉大な中国を知らしめた」などの皮肉めいた「支持」コメントも見られたと紹介した。
 また、世界中継の電波に中国の汚いののしり言葉が流れたことについて、中国国内の市民ならず海外の華僑、華人も大いに恥ずかしさを覚えたと指摘し、「本当に恥ずかしい。わたしはもうののしり言葉を使わないことにした」とするネットユーザーもいたと伝えた。
 記事は、当事者の陳が28日に微博を更新した際に「勝利した気迫で出たもので、発音がまずかったことでみんなの誤解を生むなどということは思いもよらなかった」と釈明、ののしり言葉ではなく具体的にどんな言葉を発したかは明らかにしていないが、今後は発音に気をつけると書き込んだことを紹介した。(翻訳・編集/川尻)

**********VisionTime 2021年7月31日
中国女子バド選手 試合中に「汚い言葉」連発

(ツイッター動画のスクリーンショット)
 27日に行われた東京五輪のバドミントン女子ダブルス予選ラウンドの試合中、中国の陳清晨(チェン・チンチェン、24)選手が「汚い言葉」を連発したことが、英語圏で話題になった。しかし、中国共産党(以下、中共)公式メディアは「聴いていて心地よい」と称賛。
 中国のバドミントン選手が東京五輪の試合会場で汚い言葉を連発した動画がネットで話題になっている。動画には、女子ダブルスの陳清晨と賈一凡(ジャ・イーファン)のチームが、相手チームが負けるたびに、陳は「我X!我X!我XXX!」と汚い言葉を連発した様子が映っている。競技場には陳の汚い言葉が絶えず響いていた。
 また、バドミントン男子ダブルスの中国チームも同じような動画が流出している。動画では、中国の男子選手劉雨辰(リゥ・ユチェン、26)が相手にサーブしながら、「おまえのXX」と叫び、そして拳を握り締めて「X」と叫んでいる様子が映っている。
 中共の公式報道では、「陳清晨は自分を解放したのだ。初めて汚い言葉がこんなにも美しいと感じた」と選手たちの言動を称賛した。さらに、中国のネットユーザーは「あなたたちの声はまるでコウテンシ(百霊鳥)の鳴き声のように美しい」とコメントを寄せた。
 一方で、海外のネットユーザーからは「粗野で下品、文明とは何かを全く知らず、自尊心も他人への敬意もなく、攻撃性に満ちている。彼らの動画は英語圏で広がっており、今では中国語が分かる外国人も多くて、どれだけ下品で無知だと思われるだろう。国際的な競技の場だし、多少偽ってもいいから、気を付けるべきでは。国際的重要なスポーツ大会の生放送で汚い言葉を発するのは、テレビの前にいる次世代の悪い手本になりかねない」と非難された。
(翻訳・藍或)
**********

■このように中国選手が試合場で大声を発するのは、卓球の混合ダブルスの決勝戦で日本の水谷・伊藤ペアが中国ペアを破った仔細でも、応援していた中国チーム側からひっきりなしに聞こえてきました。

 バドミントンの中国選手が発していた言葉は、同選手が「発音が悪い」などと釈明していますが、中国をネイティブとする群馬県台湾総会の会員らによると、同選手が盛んに罵声を叫んでいた「操!」(cào、ツァォ)は「くそ!」あるいは「くそったれ!」という意味で、本来は「肏(cào)=犯す」が正字で「操」は同音の当て字で、もともとの意味が転じて、「我操=くそったれ」の意味になったのだそうです。また「靠」も同じ意味で使われるとのことです。

 つまりアメリカ人がよく使う同様のスラングがありますが、中国語の場合、「操」の意味の下劣度はさらに酷いものです。

■日本の卓球選手で、今回の五輪に出場している両親が中国出身の日本語と中国語のバイリンガルの選手がいますが、彼も試合中に大声で叫び散らすことで知られています。一般に、試合中に気合を入れたり自らを鼓舞するためにガッツポーツをしつつ声を上げる例がありますが、あまり大げさに行うと見ている方も引いてしまいがちです。

 バドミントンのこの中国女子選手をはじめ、他の一部競技の中国選手団のこうした度を過ぎた罵声やジェスチャーは、台湾の選手や選手団には見られません。今回の五輪は、武漢肺炎(新型コロナウイルス)の世界的蔓延拡大のため、開会式を含めほとんどの競技会場で無観客となったおかげで、中国大陸からの一般人による応援のための来日もなく、観客席からも罵声がとぶ事態は回避されました。

 この罵声選手のペアは、7月29日の女子ダブルス準々決勝で日本の福島由紀、広田彩花組と闘いましたが、敗れた日本ペアのもとに、試合後、中国ペアが駆け寄り、健闘を称え合うため、互いのペアがリスペクトのためのハグをしたことが、好感を持って報道されているようですが、試合中、陳選手はさかんに「操!」を連発していました。そのため、試合後、カモフラージュするために、上記のような演技をしたものと見られます。

 この中国ペアは明日8月2日13:50から、インドネシアのペアとの決勝戦が予定されていますが、どのような罵声を発するでしょうか。

 ちなみに、バドミントンでは、7月30日に台湾ペアが男子ダブルスで中国ペアを破って金メダルを獲得しています。また、本日9時20分から、女子シングルス決勝で、台湾と中国の対戦が行われています。

【群馬県台湾総会書記からの報告】

※関連報道「東京五輪における台湾の活躍」
**********日刊スポーツ2012年7月23日20:01
開会式の入場順は50音順 先頭ギリシャ、開催国日本は206番目

7月16日、東京五輪の開会式の演習が行われていた国立競技場の上空に光り輝くドローンが集まり立方体を形成していた(撮影・三須一紀)
 東京五輪の開会式が、23日午後8時から東京・国立競技場で行われる。選手団の入場は今回初めて、日本語で国・地域名を表記した50音(あいうえお)順で実施される。五輪発祥国ギリシャが最初に入場し、「あ行」から順に会場入り。開催国日本は最後に登場する。大会公式サイトのリストに従うと、参加予定の全206の地域・国の順はこのようになる。入場行進は午後8時30分~40分ごろスタートする予定。
入場順は以下の通り。
1 ギリシャ
2 難民選手団
3 ROC
4 アイスランド
5 アイルランド
6 アゼルバイジャン
7 アフガニスタン
8 アラブ首長国連邦
9 アルジェリア
10 アルゼンチン
11 アルバ
12 アルバニア
13 アルメニア
14 アンゴラ
15 アンティグア・バーブーダ
16 アンドラ
17 イエメン
18 イスラエル
19 イタリア
20 イラク
21 イラン・イスラム共和国
22 インド
23 インドネシア
24 ウガンダ
25 ウクライナ
26 ウズベキスタン
27 ウルグアイ
28 英国
29 英領バージン諸島
30 エクアドル
31 エジプト
32 エストニア
33 エスワティニ
34 エチオピア
35 エリトリア
36 エルサルバドル
37 オーストラリア
38 オーストリア
39 オマーン
40 オランダ
41 ガーナ
42 カーボベルデ
43 ガイアナ
44 カザフスタン
45 カタール
46 カナダ
47 ガボン
48 カメルーン
49 ガンビア
50 カンボジア
51 北マケドニア共和国
52 ギニア
53 ギニアビサウ
54 キプロス
55 キューバ
56 キリバス
57 キルギス
58 グアテマラ
59 グアム
60 クウェート
61 クック諸島
62 グレナダ
63 クロアチア
64 ケイマン諸島
65 ケニア
66 コートジボワール
67 コスタリカ
68 コソボ
69 コモロ
70 コロンビア
71 コンゴ
72 コンゴ民主共和国
73 サウジアラビア
74 サモア
75 サントメ・プリンシペ
76 ザンビア
77 サンマリノ
78 シエラレオネ
79 ジブチ
80 ジャマイカ
81 ジョージア
82 シリア・アラブ共和国
83 シンガポール
84 ジンバブエ
85 スイス
86 スウェーデン
87 スーダン
88 スペイン
89 スリナム
90 スリランカ
91 スロバキア
92 スロベニア
93 セーシェル
94 赤道ギニア
95 セネガル
96 セルビア
97 セントクリストファー・ネービス
98 セントビンセント及びグレナディーン諸島
99 セントルシア
100 ソマリア
101 ソロモン諸島
102 タイ
103 大韓民国
104 タジキスタン
105 タンザニア連合共和国
106 チェコ共和国
107 チャイニーズ・タイペイ
108 チャド
109 中央アフリカ共和国
110 中華人民共和国
111 チュニジア
112 チリ
113 ツバル
114 デンマーク
115 ドイツ
116 トーゴ
117 ドミニカ
118 ドミニカ共和国
119 トリニダード・トバゴ
120 トルクメニスタン
121 トルコ
122 トンガ
123 ナイジェリア
124 ナウル
125 ナミビア
126 ニカラグア
127 ニジェール
128 ニュージーランド
129 ネパール
130 ノルウェー
131 バーレーン
132 ハイチ
133 パキスタン
134 パナマ
135 バヌアツ
136 バハマ
137 パプアニューギニア
138 バミューダ
139 パラオ
140 パラグアイ
141 バルバドス
142 パレスチナ
143 ハンガリー
144 バングラデシュ
145 東ティモール民主共和国
146 フィジー
147 フィリピン
148 フィンランド
149 ブータン
150 プエルトリコ
151 ブラジル
152 ブルガリア
153 ブルキナファソ
154 ブルネイ・ダルサラーム
155 ブルンジ
156 米領サモア
157 米領バージン諸島
158 ベトナム
159 ベナン
160 ベネズエラ
161 ベラルーシ
162 ベリーズ
163 ペルー
164 ベルギー
165 ポーランド
166 ボスニア・ヘルツェゴビナ
167 ボツワナ
168 ボリビア
169 ポルトガル
170 ホンコン・チャイナ
171 ホンジュラス
172 マーシャル諸島
173 マダガスカル
174 マラウイ
175 マリ
176 マルタ
177 マレーシア
178 ミクロネシア連邦
179 南アフリカ
180 南スーダン
181 ミャンマー
182 メキシコ
183 モーリシャス
184 モーリタニア
185 モザンビーク
186 モナコ
187 モルディブ
188 モルドバ共和国
189 モロッコ
190 モンゴル
191 モンテネグロ
192 ヨルダン
193 ラオス人民民主共和国
194 ラトビア
195 リトアニア
196 リビア
197 リヒテンシュタイン
198 リベリア
199 ルーマニア
200 ルクセンブルク
201 ルワンダ
202 レソト
203 レバノン
204 アメリカ合衆国(2028年開催国)
205 フランス(2024年開催国)
206 日本(開催国)

**********デイリースポーツ2021年7月24日(土)15:34
開会式、台湾は五十音「たいわん」の順番で登場「チャイニーズ-」ではなかった

23日の開会式、花火が打ち上がる国立競技場
「東京五輪・開会式」(23日、国立競技場)1964年以来2度目の東京オリンピックが23日、天皇陛下の開会宣言によって開幕した。
 開会式では出場各国が日本の五十音の順番で行進した。会場内では「チャイニーズ・タイペイ」と紹介されていた台湾は、当初の予定だった107番目ではなく、104番目で登場した。
 五十音に従えば「チャイニーズ・タイペイ」はチェコ共和国とチャドの間となる。しかし、実際に登場したのは韓国(大韓民国=だいかんみんこく)とタジキスタンの間。「チャイニーズ・タイペイ」ではなく、「たいわん」の五十音の読み方に従ったとみられる。
 場内ではアナウンス、プラカードなども「チャイニーズ・タイペイ」で統一されていたが、しれっと「台湾」色を加えていた形。NHKの生中継では和久田麻由子アナウンサーがきっちり「台湾です」と紹介していた。

**********毎日新聞2021年7月25日09:10(最終更新09:10)
台湾、「チ」ではなくタイペイの「タ」で入場 東京五輪開会式

東京オリンピック開会式で入場する台湾の選手たち=国立競技場で2021年7月23日午後9時41分(代表撮影)
 23日夜の東京五輪開会式で行われた五十音(あいうえお)順の選手団入場で、国際オリンピック委員会(IOC)での名称が「チャイニーズ・タイペイ(中華台北)」となっている台湾が「チ」ではなく「タ」の順で行進した。大会組織委員会の高谷正哲スポークスパーソンは24日の記者会見で「『タイペイ』の『タ』を取った」とし、五輪ではアルファベット分類の際もタイペイの「T」を取るとの合意があると説明した。
 高谷氏は「世界貿易機関(WTO)やアジア太平洋経済協力会議(APEC)などの国際フォーラムでも、同様の対応をしている」と述べた。台湾は、大韓民国(韓国)とタジキスタンの間の104番目に入場した。

**********夕刊フジ2021年7月26日
五輪開会式で「台湾」として行進 50音順の入場めぐり「屈辱」と中国は怒りも NHK和久田アナ「台湾です!」に「粋な計らい」の声

プラカードは「チャイニーズ・タイペイ」だったが…(共同)
 23日に国立競技場で行われた東京五輪開会式で、台湾の入場順が話題となった。事前の発表では「チャイニーズ・タイペイ」の表記に合わせて「チェコ」の後とされていたが、実際には「大韓民国(韓国)」の後に入場、「台湾(たいわん)」の名称を尊重したことになる。
 日本語の五十音順での入場となった今大会では、公式サイトのリストで、台湾はチェコの後、チャドの前に入場すると表記されていた。
 開会式本番でも、台湾選手団の入場時のプラカードの表記は、英語で「CHINESE TAIPEI」、日本語は「チャイニーズ・タイペイ」。場内のアナウンスも「チャイニーズ・タイペイ」だったが、入場順は韓国の後、タジキスタンの前の入場だった。「チャイニーズ・タイペイ」ではなく「台湾」としての扱いだった。
 NHKの生中継でも、和久田麻由子アナ(32)が「台湾です!」と紹介したところ、ネット上では「粋な計らい」などの声が上がった。
 台湾の日本語ニュースサイト「中央社フォーカス台湾」はツイッターで、入場の様子の写真とともに和久田アナのアナウンスと同じ「台湾です!」という一文を投稿すると、「台湾です!」と応じるリツイート(返信)が相次いだ。
 一部の台湾メディアは大会前に「韓国の後に入場する」と報じており、事前に把握していたとみられるが、中国のネットでは「日本は中国に屈辱を与えた」と怒りの声が上がっていた。
 中国が1979年に国際オリンピック委員会(IOC)に復帰したことを受けて、台湾は84年のサラエボ冬季五輪以降、「チャイニーズ・タイペイ」の名称で五輪に出場している。23日の開会式も台湾の旗である青天白日満地紅旗ではなく、台湾のオリンピック委員会の旗で入場した。

**********時事通信2021年07月25日10:37
中国、米の五輪中継に抗議 「台湾抜き」地図表示で

東京五輪の開会式で入場行進する中国選手団=23日、国立競技場(AFP時事)

東京五輪の開会式で入場行進する台湾選手団=23日、国立競技場(AFP時事)
 【ワシントン時事】中国の在米ニューヨーク総領事館は、東京五輪開会式の中継で米NBCテレビが台湾を含まない中国の地図を画面上に映したとして同局に抗議する声明を発表した。ロイター通信などが24日伝えた。中国は台湾を「国家」として認めるような報道ぶりに神経をとがらせている。
 NBCはこの地図を開会式で中国選手団が入場する際に表示。中国の総領事館は「不完全な地図」により「中国人民の尊厳と感情を傷つけた」と主張した。NBCはこれに対してコメントしていない。
 台湾の五輪参加をめぐって国際オリンピック委員会(IOC)は1979年、名称を中華民国(台湾)でなく「チャイニーズタイペイ(中華台北)」とすることを条件に容認した経緯がある。台湾を一地域だとして「一つの中国」を唱える中国政府の立場に配慮した結果だ。
 だが、23日の開会式の入場行進では、NHKもアナウンサーが「台湾です」と紹介。台湾では、中華台北の呼称に反発があり、現地メディアは「台湾に誇りの瞬間をもたらした」と歓迎した。
 中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報はNBCに対する批判は「合理的だ」と強調。NHKについても「公共放送として『一つの中国』を損なうような報道はすべきでない」と主張した。

**********フォーカス台湾2021年7月23日18:36
五輪開会式、台湾は104番目に入場 蔡総統「一緒に頑張りましょう」 日本にエール

東京五輪の成功を祈り、大会に出場する台湾の選手にエールを送る蔡総統のツイート
(台北中央社)日本時間午後8時から開かれる東京五輪開会式で、台湾代表団は104番目に入場する。台湾代表団の旗手を務めるのは、テニス男子の盧彦勳と重量挙げ女子の郭婞淳。このほか、カヌー女子の張筑涵、競泳女子の黄●(サンズイに美)茜、体操女子の丁華恬の3選手が入場行進に参加する。 行進順は日本語で国・地域名を表記した五十音(あいうえお)順で実施され、チャイニーズタイペイ名義で出場する台湾は、1984年に中国が五輪に復帰して以降、初めて中国より先に入場することになる。
 公式資料によれば、チャイニーズタイペイは韓国の後、タジキスタンの前に入場する。中国は110番目。主催国の日本は最後に登場する。入場行進には200を超える国・地域の選手が参加する。 東京五輪には、台湾代表選手68人が計18競技に出場する。 ▽ 蔡総統、ツイッターで日本語メッセージ 東京五輪開会式の開催を前に、蔡英文(さいえいぶん)総統は23日夕、ツイッターにビデオメッセージを投稿した。「台湾の選手たちと主催国、日本に大きなエールを送りしましょう」と呼び掛け、日本語で「一緒に頑張りましょう」と激励した。 (謝静雯/編集:名切千絵)

**********日刊スポーツ2012年7月23日23:44
NHK和久田麻由子アナ「台湾です」と紹介

開会式が始まり花火が打ち上がる国立競技場(撮影・足立雅史)

和久田麻由子アナウンサー(19年10月)
<東京オリンピック(五輪):開会式>◇23日◇東京・国立競技場
 東京オリンピックの開会式が23日、東京・国立競技場で行われた。
 台湾は場内アナウンス、プラカードの表記は英語、日本語とも「チャイニーズ・タイペイ」で、NHKも字幕は「CHINESE TAIPEI」だったが、和久田麻由子アナウンサー(32)は「台湾です」と紹介。バドミントンの有力選手について触れた。
 大会公式サイトで事前に発表されていた「あいうえお」順の入場順では、台湾の入場はチェコ共和国の後となっていたが、実際は大韓民国の後に登場した。

**********Japan Indepth 2021年7月25日
NHK和久田アナ、五輪開会式で「台湾です」 中国国営メディア沈黙
【まとめ】
・東京五輪開会式への反応「挨拶長すぎる」「復興五輪らしさあまりない」
・開会式での台湾の扱いをめぐり波紋。
・中国は抗議せず。冬季五輪を成功させたい思惑が理由か。

 東京オリンピックの開会式が23日夜、東京・国立競技場で行われた。筆者はフェイスブックで内外にいる友人らにテレビで開会式を見た感想を聞いた。
「過去一年間にわたって起きたことをすべてに考慮に入れて、とても厳かで恭しい開会式だった」(オーストラリア人女性)
「競技種目を表す絵文字のピクトグラムが良かった。全体としては日本の一番クールな部分であるポップカルチャーの演出がもっとあるかと思っていた」(韓国人男性)
 一番多かった感想は、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長と大会組織委の橋本聖子会長の挨拶が長すぎるという文句だった。2人合わせて約9分とされていたが、バッハ会長は約13分、橋本会長は約6分半も挨拶した。
「妻と私はテレビに向かって、ひたすらバッハ会長と橋本会長に『早くステージから降りなさい』と言い続けていた。」(日系アメリカ人)

五輪開会式で挨拶するトーマス・バッハ氏と橋本聖子氏(2021年7月23日) 出典:Photo by Matthias Hangst/Getty Images
 政府が掲げてきた「復興五輪」のメッセージは届いたかとの質問には、橋本会長の挨拶からメッセージを感じることはあったが、全体として復興五輪らしき主張はあまり感じられなかったとの意見が目立った。
 フェイスブックへのアクセスができない中国人の友人にも感想を聞いてみた。
「大会式主催者が、中華台北(チャイニーズ・タイペイ)ではなく、台湾として紹介したことに驚いた。過去の五輪では通常は『中華台北』として紹介されてきた。SNSの微博(ウェイボー)で激しい議論の的となっている」(中国深圳市のシンクタンクに勤務する男性)
★NHKの和久田麻由子アナウンサーも「台湾です」と紹介した。★
 NHK関係者は「日本の一部ツイッターは逆に和久田アナを英雄視?していますが、それもヘンな話で(苦笑)、台本組んでいますからね」と話した。
 中国のシンクタンク勤務の男性がほかに指摘していたのが、入場の順番の不自然さだった。微博でも大きな話題になっているという。

五輪開会式で入場する「台湾」の選手たち。後方にはタジキスタン、タンザニアが続く。(2021年7月23日) 出典:Photo by Patrick Smith/Getty Images
 日刊スポーツの記事によると、確かに大会公式サイトで事前に発表されていた「あいうえお」順の入場順では、台湾の入場は「チャイニーズ・タイペイ」としてチェコ共和国の後の107番目となっていた。しかし、実際には大韓民国の後の105番目に登場した。
 大会組織委は「台湾」という日本語の五十音順に基づき、韓国の正式名称である「大韓民国」の後の入場になったとみられる。開会式の行進順はルールで五輪開催国のアルファベット順(日本の場合は五十音順)とされているからだ。
 しかし、中国での反応は、日本が「台湾」という呼称を用いたことで、このような直前の順番変更になったとの疑念が出ているようだ。
 このほか、NBCが中国選手団を紹介する際に、台湾を含んでいない中国地図を放送したため、米国ニューヨークの中国総領事館が抗議をし、中国でも強い反発が起きている。
 ただし、来年2月に北京冬季五輪を開催する中国は、一貫して東京五輪を支援する姿勢を見せている。このため、入場行進での「台湾」と呼称での登場にも今のところ、中国国営メディアは沈黙し、抗議の声を上げていない。
 中国外務省の趙立堅(ちょう・りつけん)報道官は23日の記者会見で、「力の限り東京五輪の支持を続ける。東京五輪の成功を我々も引き継ぎたい」と述べた。

中国外務省の趙立堅報道官(2021年7月23日) 出典:趙立堅氏Twitter
 菅首相が東京五輪の成功に政権の存亡を賭けているように、習近平国家主席も自らの権力基盤の強化に向け、北京冬季五輪を是が非でも成功させたいとの政治的思惑がある。それに比べれば、入場行進での「台湾」登場は小さな問題なのかもしれない。
高橋浩祐(国際ジャーナリスト)
**********

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