市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

台風19号(ハギビス)が遺した満水の八ッ場ダム・・・果たして洪水防止に役立ったのか?

2019-10-22 22:18:00 | 八ッ場ダム問題

■台風19号は、、2019年10月6日3時にマリアナ諸島の東海上で発生し、12日19時前に伊豆半島に上陸後、関東地方を斜めに横断していきましたが、上陸前から長時間にわたり激しい降雨が続き、関東地方や甲信地方、東北地方などで記録的な大雨となり、甚大な被害をもたらしました。この結果、2018年に気象庁が定めた「台風の名称を定める基準」に基いて、浸水家屋数が1万棟以上など、基準条件に相当する見込みとなり、1977年(昭和52年)9月の沖永良部台風以来、42年1か月ぶりに命名される見通しです。政府は台風被害に対して激甚災害の指定を行ったほか、台風としては初となる特定非常災害の認定を行いました。また、災害救助法適用自治体は18日夕方までに13都県317市区町村にのぼり、1995年の阪神大震災以降の自然災害で最多となり、東日本大震災の8都県237市区町村や2018年の西日本豪雨の11府県110市町村を超えて過去最大となりました。
 そうした中、なぜか巷では「八ッ場ダム」のことが取りざたされているようです。なかには「税金の無駄遣いではなかった」として、当時の政権政党だった民主党による計画一時中止を批判する声も聞こえてきます。本当に八ッ場ダムは税金の無駄遣いではなかったのでしょうか。

八ッ場ダム湖を見下ろす「丸岩」と呼ばれる標高1120mの峰。長野原町大字横壁の南方にあり、戦国時代には城があった。北面は赤い岩肌をむき出した100m余の絶壁となり、南は岩峯から続く稜線が起状しながら須賀尾峠へと伸びている。この岩峰の名を冠した「丸岩会」が2005年9月26日、水没する地区の代替地交渉に当たる代替地分譲連合交渉委員会の萩原昭朗委員長の誕生日に合わせて開かれた。そこには萩原委員長と国交省幹部、小寺知事及び100社に上る地元ゼネコン等の参加社が集い、昼はゴルフ大会、夜は伊香保の温泉旅館で大宴会を催し、県知事の挨拶のあと、八ッ場ダムの事業説明が国交省の現場事務所長から行われたりした。この情報が当会の八ッ場ダム問題への取り組みの端緒となった。

**********NHK News Web 2019年10月16日11時17分
八ッ場ダム 台風19号で満水に
 来年春の完成を前に試験的に水をためる「試験湛水」が行われている長野原町の八ッ場ダムで、台風19号による大雨で急激に水位が上がり、貯水率が100%に達したと工事事務所が発表しました。
 八ッ場ダムはダム本体のコンクリートの打設工事がことし6月に終了し、今月1日から試験的に水をためてダムの強度や安全性を確かめる「試験湛水」という最終工程が進められてきました。
 八ッ場ダム工事事務所によりますと、今月1日の時点では、ダムの水位は標高481.5メートルの地点でしたが、15日午後6時ごろに貯水できる最高位の標高583メートルに達し、貯水率が100%になったということです。
 当初、満水までは3か月から4か月かかる見通しでしたが、台風19号による大雨で今月12日から13日にかけて急激に水位が上がりました。
 工事事務所によりますと、13日の午後4時ごろからは水位を調整するための放流操作が行われましたが、これまでのところ下流の自治体への影響は確認されていないということです。
 八ッ場ダムでは、今後は水位をゆっくりと下げて、のり面の強度などダムの安全性を確認し、建屋などの工事を年度内に終えて、来年度から本格的な運用が始められるということです。

**********日経BP 2019年10月21日05:00
2019年台風19号 1日で満水になった八ツ場ダム、一変した景色を写真で比較
 群馬県長野原町で10月1日から試験湛水(たんすい)を始めていた八ツ場(やんば)ダムの貯水率が、台風19号のもたらした大雨で一気に100%近くに到達。付け替え前のJR吾妻線の鉄橋などがダム湖の底に沈み、周辺の風景は大きく変わった。

台風19号が通過した後の10月13日午後2時に撮影した八ツ場ダム。利水放流管から泥混じりの水が噴き出し、土煙を上げる。堤体上空でのドローン飛行は許可が必要なため、許可が不要なダム下流の吾妻峡からドローンを離着陸させて撮影した(写真:大村 拓也)

台風19号通過時のダム湖への流入量(赤線、右軸)と貯水位(青線、左軸)の変化(資料:国土交通省八ツ場ダム工事事務所)

堤体上流の右岸展望台から、台風襲来前の10月5日に撮影。ダム湖の水位は標高約493m。洪水吐きの左側にある選択取水設備の根元に水面がわずかに見えていた(写真:大村 拓也)

右岸展望台から10月10日に撮影。水位は標高約518m(写真:大村 拓也)

右岸展望台から10月13日に撮影。水位は標高約578m(写真:大村 拓也)
 国土交通省八ツ場ダム工事事務所によると、10月11日午前2時から13日午前5時にかけて、長野原観測所で累計347mmの降雨を観測。ダム湖への流入量は12日朝から増加し始め、同日午後8時ごろには毎秒2500m3の最大流入量を記録した。降雨を観測した11日午前2時から13日午前5時までに、約7500万m3の水をダム湖にため込んだ。
 この間、ダム湖の水位は標高518.8mから573.2mまで約54m上昇し、常時満水位の583mまであと高さ10mほどに迫った。
 ダムは利水放流管を使って毎秒約4m3ずつ下流に放流していたものの、常用洪水吐きと非常用洪水吐きのゲート操作は実施しなかった。流入量のほぼ100%がダム湖に貯留されたことになる。
 八ツ場ダム工事事務所によると、常時満水位まで水がたまった10月15日時点でダムの堤体やダム湖の周辺に異常は確認されていないという。今後は1日当たり1m以下のスピードで水位を下げながら、最低水位である標高536.3mまで水を抜き、ダム湖周辺の法面などに問題がないかどうかを確かめる。
(大村 拓也=写真家)
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■その上で、今回の台風19号による豪雨災害において、八ッ場ダムの果たした役割について、二つの観点からの記事を見てみましょう。最初は、「日本を救ったから、税金の無駄ではなかった」という評価です。

**********週刊FLASH(2019年11月5日号)2019年10月24日 11時0分
税金の無駄ではなかった…「巨大ハコモノ」台風19号から日本を救う

首都圏外郭放水路(写真提供・国土交通省江戸川河川事務所)
 10月13日、ラグビー日本代表がスコットランド代表を撃破し、W杯8強入りを決めた舞台・日産スタジアム(横浜市)の周囲は、その数時間前まで冠水していた。
「競技場周辺は遊水地ですから、当然です。あまり知られていませんが、国土計画上は、スタジアムのある窪地は川なんです」
 こう話すのは、岸由二・慶應大名誉教授だ。
 遊水地は、ふだんは競技場の駐車場などとして使われている。スタジアムは、柱に支えられる「高床式」で、遊水地の水が流入することはないという。日産スタジアムが、台風19号の大雨による鶴見川の氾濫を、未然に防いでいたのである。
「鶴見川流域には、日産スタジアムのほかにも、多くの遊水地があります。ふだんは水を抜いてありますが、災害のときだけ水を入れるのです。川の流域にある団地などにも、調整池があります。その数は、4900カ所。国と自治体が、流域全体の問題として取り組んだ結果です」
 じつは、台風上陸前にもっとも危惧されていたのは、東京都東部の大水害だった。“首都水没” は、日本の破滅に直結する。その最悪のシナリオを回避できたのはなぜか。
「大きな要因は2つ。台風の進路と治水対策の結果です」
 こう語るのは、リバーフロント研究所技術参与の土屋信行氏。元東京都職員で、長年、治水対策に関わってきた。
「東京都東部には、低い土地に何本も大河川が流れています。しかし、上流にダム、中流には調節池や遊水地、下流にも放水路など、幾重にも対策がとられているんです」(土屋氏)

10月16日の八ッ場ダム。水位は高いまま
 そのひとつが、2009年、“ハコモノ” と揶揄され、民主党政権時代に無駄な公共事業の象徴として批判を浴び、事業中止で注目を集めた「八ッ場ダム」だ。
「江戸川上流の八ッ場ダムは、完成直後で、試験湛水を始めたところでした。台風上陸後には、ほぼ満水になり、約1億トンの雨水をここで受け止められた。
 しかし、もし本格運用が始まり、水がすでにためられていたら、今回の雨量を受け止めることはできなかった。幸運だったといえます」(同前)
 さらに、建築マニアからは “地下神殿” と呼ばれる「首都外郭放水路」も活躍していた。埼玉県春日部市などを走る国道16号線の直下約50mの深さに設けられた放水路で、利根川水系の中小河川の水を、江戸川に放水するための施設だ。地下放水路としては世界最大級の規模を誇る。
「放水路は5つの川から水を取り込めますが、今回すべて同時に取り込んだのは稀な状況です」(江戸川河川事務所)
“地下神殿” が10月12日から15日にかけて江戸川に排出した水は、50mプール約8000杯ぶん、東京ドームなら約9杯ぶんという途方もない量だ。
 東京都内でも、「神田川・環状七号線地下調整池」が威力を発揮していた。
「台風直撃後は49万トン、最大貯留量の9割まで水がたまった」(東京都第三建設事務所)というから、ぎりぎりの攻防だったのだ。
 日本列島を襲った台風19号は、死者80人以上、全国60以上の河川で堤防を決壊させる甚大な被害をもたらした。「税金の無駄」と揶揄された「巨大ハコモノ」たちは、たしかに首都圏の破滅を防いだ。
 しかしその力をもってしても、被害をゼロにはできなかった――。
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■次は、「利根川の氾濫を救えたのか」という視点の記事です。執筆者は八ッ場ダムの

**********朝日新聞デジタル2019年10月23日
八ツ場ダムは本当に利根川の氾濫を防いだのか?
~治水利水の両面で必要性は失われている~

 利根川水系の八ツ場ダムは、来年3月完成の予定で10月1日から試験湛水が行われているが、今回の台風19号により、貯水量が一挙に増加した。八ツ場ダムの貯水量が急増したことで、「台風19号では利根川の堤防が決壊寸前になった。決壊による大惨事を防いだのは八ツ場ダムの洪水調節効果があったからだ」という話がネットで飛び交っている。10月6日の参議院予算委員会でも、赤羽一嘉国土交通大臣が試験湛水中の八ツ場ダムが下流の利根川での大きな氾濫を防ぐのに役立ったとの認識を示した。
 しかし、それは本当のことなのか。現時点で国交省が明らかにしているデータに基づいて検証することにする。

台風19号の大雨で水かさが増した八ツ場ダム=2019年10月16日、群馬県長野原町
★八ツ場ダムの洪水位低下効果は利根川中流部で17㎝程度★
 10月13日未明に避難勧告が出た埼玉県加須市付近の利根川中流部についてみる。
 本洪水で利根川中流部の水位は確かにかなり上昇したが、決壊寸前という危機的な状況ではなかった。加須市に近い利根川中流部・栗橋地点(久喜市)の本洪水の水位変化を見ると、最高水位は9.67m(観測所の基準面からの高さ)まで上昇し、計画高水位9.90mに近づいたが、利根川本川は堤防の余裕高が2mあって、堤防高は計画高水位より2m高いので、まだ十分な余裕があった。なお、栗橋地点の氾濫危険水位は8.9mで、計画高水位より1m低いが、これは避難に要する時間などを考慮した水位であり、実際の氾濫の危険度はその時の最高水位と堤防高との差で判断すべきである。
 八ツ場ダムの治水効果については2011年に国交省が八ツ場ダム事業の検証時に行った詳細な計算結果がある。それによれば、栗橋に近い地点での洪水最大流量の削減率は8洪水の平均で50年に1回から100年に1回の洪水規模では3%程度である。本洪水はこの程度の規模であったと考えられる。
 本洪水では栗橋地点の最大流量はどれ位だったのか。栗橋地点の最近8年間の水位流量データから水位流量関係式をつくり、それを使って今回の最高水位9.67mから今回の最大流量を推測すると、約11,700㎥/秒となる。八ツ場ダムによる最大流量削減率を3%として、この流量を97%で割ると、12,060㎥/秒になる。八ツ場ダムの効果がなければ、この程度の最大流量になっていたことになる。
 この流量に対応する水位を上記の水位流量関係式から求めると、9.84mである。実績の9.67mより17㎝高くなるが、さほど大きな数字ではない。八ツ場ダムがなくても堤防高と洪水最高水位の差は2m以上あったことになる。したがって、本洪水で八ツ場ダムがなく、水位が上がったとしても、利根川中流部が氾濫する状況ではなかったのである。
★河床の掘削で計画河道の維持に努める方がはるかに重要★
 利根川の水位が計画高水位の近くまで上昇した理由の一つとして、適宜実施すべき河床掘削作業が十分に行われず、そのために利根川中流部の河床が上昇してきているという問題がある。
 国交省が定めている利根川河川整備計画では、計画高水位9.9mに対応する河道目標流量は14,000㎥/秒であり、今回の洪水は水位は計画高水位に近いが、流量は河道目標流量より約2,300㎥/秒も小さい。このことは、利根川上流から流れ込んでくる土砂によって中流部の河床が上昇して、流下能力が低下してきていることを意味する。河川整備計画に沿った河床面が維持されていれば、上述の水位流量関係式から計算すると、今回の洪水ピーク水位は70㎝程度下がっていたと推測される。八ツ場ダムの小さな治水効果を期待するよりも、河床掘削を適宜行って河床面の維持に努めることの方がはるかに重要である。
★利根川の上流部と下流部の状況は★
 以上、利根川中流部についてみたが、本洪水では利根川の上流部と下流部の状況はどうであったのか。利根川は八斗島(群馬県伊勢崎市)より上が上流部で、この付近で丘陵部から平野部に変わるが、八斗島地点の本洪水の水位変化を見ると、最高水位と堤防高の差が上述の栗橋地点より大きく、上流部は中流部より安全度が高く、氾濫の危険を心配する状況ではなかった。

利根川の増水で冠水し通行できなくなった道路=2019年10月13日、千葉県銚子市唐子町
 一方、利根川下流部では10月13日午前10時頃から水位が徐々に上昇し、河口に位置する銚子市では、支流の水が利根川に流れ込めずに逆流し、付近の農地や住宅の周辺で浸水に見舞われるところがあった。八ツ場ダムと利根川下流部の水位との関係は中流部よりもっと希薄である。八ツ場ダムの洪水調節効果は下流に行くほど小さくなる。
 前述の国交省の計算では下流部の取手地点(茨城県)での八ツ場ダムの洪水最大流量の削減率は1%程度であり、最下流の銚子ではもっと小さくなるから、今回、浸水したところは八ツ場ダムがあろうがなかろうが、浸水を避けることができなかった。浸水は支川の堤防が低いことによるのではないだろうか。
 なお、東京都は利根川中流から分岐した江戸川の下流にあるので、八ツ場ダムの治水効果はほとんど受けない場所に位置している。
★ダムの治水効果は下流に行くほど減衰★

利根川の河川敷にあるゴルフ場は増水で冠水した=2019年10月13日、千葉県野田市瀬戸
 ダムの洪水調節効果はダムから下流へ流れるにつれて次第に小さくなる。他の支川から洪水が流入し、河道で洪水が貯留されることにより、ダムによる洪水ピーク削減効果は次第に減衰していく。
 2015年9月の豪雨で鬼怒川が下流部で大きく氾濫し、甚大な被害が発生した。茨城県常総市の浸水面積は約40㎢にも及び、その後の関連死も含めると、死者は14人になった。鬼怒川上流には国土交通省が建設した四つの大規模ダム、五十里ダム、川俣ダム、川治ダム、湯西川ダムがある。その洪水調節容量は合計12,530万㎥もあるので、鬼怒川はダムで洪水調節さえすれば、ほとんどの洪水は氾濫を防止できるとされていた河川であったが、下流部で堤防が決壊し、大規模な溢水があって凄まじい氾濫被害をもたらした。

鬼怒川が氾濫した現場で、ガードレールにつかまりながら救助に向かおうとする茨城県警の救助隊=2015年9月10日、茨城県常総市
 この鬼怒川水害では4ダムでそれぞれルール通りの洪水調節が行われ、ダム地点では洪水ピークの削減量が2,000㎥/秒以上もあった。しかし、下流ではその効果は大きく減衰した。下流の水海道地点(茨城県常総市)では、洪水ピークの削減量はわずか200㎥/秒程度しかなく、ダムの効果は約1/10に減衰していた。
 このようにダムの洪水調節効果は下流に行くほど減衰していくものであるから、ダムでは中下流域の住民の安全を守ることができないのである。
★本格運用されていれば、今回の豪雨で緊急放流を行う事態に★
 本洪水の八ツ場ダムについては重要な問題がある。関東地方整備局の発表によれば、本洪水で八ツ場ダムが貯留した水量は7500万㎥である。八ツ場ダムの洪水調節容量は6500万㎥であるから、1000万㎥も上回っていた。
 八ツ場ダムの貯水池容量の内訳は下の方から計画堆砂容量1750万㎥、洪水期利水容量2500万㎥、洪水調節容量6500万㎥で、総貯水容量は10750万㎥である。貯水池の運用で使う有効貯水容量は、堆砂容量より上の部分で、9000万㎥である。ダム放流水の取水口は計画堆砂容量の上にある。
 本洪水では八ツ場ダムの試験湛水の初期にあったので、堆砂容量の上端よりかなり低い水位からスタートしたので、本格運用では使うことができない計画堆砂容量の約1/3を使い、さらに、利水のために貯水しておかなければならない洪水期利水容量2500万㎥も使って、7500万㎥の洪水貯留が行われた。
 本格運用で使える洪水貯水容量は6500万㎥であるから、今回の豪雨で八ツ場ダムが本格運用されていれば、満杯になり、緊急放流、すなわち、流入水をそのまま放流しなければならない事態に陥っていた。

肱川が氾濫し、浸水した野村地区=2018年7月7日朝、愛媛県西予市
 今年の台風19号では全国で6基のダムで緊急放流が行われ、ダム下流域では避難が呼びかけられた。2018年7月の西日本豪雨では愛媛県・肱川の野村ダムと鹿野川ダムで緊急放流が行われて、西予市と大洲市で大氾濫が起き、凄まじい被害をもたらした。今年の台風19号の6ダムの緊急放流は時間が短かったので、事なきを得たが、雨が降り続き、緊急放流が長引いていたら、どうなっていたかわからない。
 ダム下流で、ダムに比較的近いところはダムの洪水調節を前提とした河道になっているので、ダムが調節機能を失って緊急放流を行えば、氾濫の危険性が高まる。
 八ツ場ダムも本豪雨で本格運用されていれば、このような緊急放流が行われていたのである。
 以上のとおり、本豪雨で八ツ場ダムがあったので、利根川が助かったという話は事実を踏まえないフェイクニュースに過ぎないのである。
★必要性を喪失した八ツ場ダムが来年3月末に完成予定★
 八ツ場ダムは今年中に試験湛水を終えて、来年3月末に完成する予定であるが、貯水池周辺の地質が脆弱な八ツ場ダムは試験湛水後半の貯水位低下で地すべりが起きる可能性があるので、先行きはまだわからない。
 八ツ場ダムはダム建設事業費が5320億円で、水源地域対策特別措置法事業、水源地域対策基金事業を含めると、総事業費が約6500億円にもなる巨大事業である。

自民党の二階俊博幹事長(左から2番目)は八ツ場ダムを視察し、ダム本体上で説明を受けた=2019年10月17日、群馬県長野原町
 八ツ場ダムの建設目的は①利根川の洪水調節、②水道用水・工業用水の開発、③吾妻川の流量維持、④水力発電であるが、③と④は付随的なものである。
 ①の洪水調節については上述の通り、本豪雨でも八ツ場ダムは治水効果が小さく、利根川の治水対策として意味を持たなかった。利根川の治水対策として必要なことは河床掘削を随時行って河道の維持に努めること、堤防高不足箇所の堤防整備を着実に実施することである。
 ②については首都圏の水道用水、工業用水の需要が減少の一途をたどっている。水道用水は1990年代前半でピークとなり、その後はほぼ減少し続けるようになった。首都圏6都県の上水道の一日最大給水量は、2017年度にはピーク時1992年度の84%まで低下している。これは節水型機器の普及等によって一人当たりの水道用水が減ってきたことによるものであるが、今後は首都圏全体の人口も減少傾向に向かうので、水道用水の需要がさらに縮小していくことは必至である。これからは水需要の減少に伴って、水余りがますます顕著になっていくのであるから、八ツ場ダムによる新規の水源開発は今や不要となっている。
 八ツ場ダムの計画が具体化したのは1960年代中頃のことで、半世紀以上かけて完成の運びになっているが、八ツ場ダムの必要性は治水利水の両面で失われているのである。
 八ツ場ダムの総事業費は上述の通り、約6500億円にもなるが、もし八ツ場ダムを造らず、この費用を使って利根川本川支川の河道整備を進めていれば、利根川流域全体の治水安全度は飛躍的に高まっていたに違いない。
○嶋津暉之(しまず・てるゆき) 水源開発問題全国連絡会・共同代表
 1943年生まれ。東京大学大学院工学系研究科博士課程単位取得満期退学。2004年年3月まで東京都環境科学研究所勤務。八ッ場あしたの会運営委員。著書に『水問題原論』(北斗出版)、『やさしい地下水の話』(共著、北斗出版)、『首都圏の水が危ない』『八ッ場ダムは止まるか』、『八ッ場ダム 過去・現在そして未来』(以上共著、岩波書店)などがある。
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■八ッ場ダムがあまりにもタイミングよく試験湛水を行っており、劇的にその風情を変えたことから、ダムの効能がもてはやされすぎてしまった感があります。

 国交省の観測記録によれば、「降雨を観測した10月11日午前2時から13日午前5時までに、約7500万m3の水をダム湖にため込んだ」とあることから、確かにその分の水量は下流に影響を及ぼさなかったのは事実です。したがって、「10月13日未明に避難勧告が出た埼玉県加須市付近の利根川中流部でいえば、八ツ場ダムの洪水位低下効果は17㎝程度あった」ことになります。

 これを、八ッ場ダムの効果としてどのように評価できるかどうか、がポイントとなります。ゼロよりも17センチ低い方が堤防に対する負荷としては低減されたことは事実です。

 しかし、今回は試験湛水という特別なタイミングに合致したまでで、もし八ッ場ダムが本格運用を始めていたら、使える洪水貯水容量は6500万㎥でしたから、今回の豪雨で溜め込めた約7500万㎥の水量のうち、余剰の1000万㎥は、そのまま緊急放流しなければならなかった筈です。そうすれば、逆に台風が過ぎ去ったあとの利根川の流量を増やす結果を招いたことでしょう。

 今回、巷間で取りざたされている八ッ場ダム礼賛設は、どうも胡散臭い気がします。なぜなら、八ッ場ダムを推進してきた政府自民党が、官僚と一緒に異様にはしゃいでいるからです。

**********産経新聞2019年10月15日11:20
【台風19号】自民が対策本部会合 「八ッ場ダムが氾濫防止に」の報告も

【台風19号】水位が上昇した八ッ場ダム=14日午前8時6分、群馬県長野原町(本社ヘリから、恵守乾撮影)
 自民党は15日午前、台風19号の影響で広範囲にわたり被害が出ていることを受け、災害対策本部の会合を党本部で開いた。出席者からは、早期の激甚災害への指定や被災地のライフライン復旧を求める声が相次いだ。
 二階俊博幹事長は会合で「一日も早く(被災者が)元の生活ができるよう、全国各地から情報収集すると同時に的確な対応をしてもらいたい」と語った。
 群馬県長野原町の「八ッ場ダム」が川の氾濫防止に役立ったとの報告もあった。群馬県選出の国会議員は「民主党政権のときに(ダム建設が)ストップされて本当にひどい目にあった。われわれが目指してきた方向は正しかった」と述べた。

**********毎日新聞2019年10月16日 20時00分(最終更新 10月16日 23時41分)
八ッ場ダム、効果あった? 赤羽国交相、氾濫防止の大きな要因になったとの見方示す

八ッ場ダム=2019年10月、西銘研志郎撮影
 「コンクリートから人へ」のスローガンの下、旧民主党政権が2009年に建設中止を表明したものの、11年に方針転換して建設再開を決定するなど紆余(うよ)曲折を経た八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)。16日の参院予算委員会で、自民党の松山政司氏が、このスローガンを引き合いに出し、台風19号での八ッ場ダムの「効果」を尋ねた。
 赤羽一嘉国土交通相は「本格的な運用前の試験(湛水(たんすい))を開始したばかりで水位が低かったため、予定の容量より多い約7500万立方メートル(の雨水)をためることができた」と説明。下流の氾濫防止の大きな要因になったとの見方を示した。
 安倍晋三首相は「八ッ場ダムは大変な財政的負担もあったが、果たして後世に負担を残したのか」と述べ、「財政は何世代にもわたり対応しなければならないが、同時に後世の人たちの命を救うことにもなる。そういう緊張感の中で正しい判断をしていくことが大切だ」と政策の正当性を強調した。さらに「(政府の)国土強靱(きょうじん)化基本計画に基づき、必要な予算を確保し、オールジャパンで国土強靱化を進める」と訴えた。
 旧民主党出身の玉木雄一郎・国民民主党代表は同日の記者会見で「八ッ場ダムを復活したのも民主党政権だ」と反論。立憲民主党の福山哲郎幹事長も記者団に「これだけ頻繁に災害が起こる国土になっている日本で、安心・安全な国土形成のための議論をしていくべきだ。鬼の首を取ったような議論をするのは今の段階で適切ではない」と述べ、批判した。【浜中慎哉、東久保逸夫】
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■巨額の公費を投入し、長年にわたって事業を引き延ばし、官僚や政治家により利用されてきた八ッ場ダムですが、当会は税金の無駄遣いの観点から、この事業の問題点を追及してきました。それらは2015年6月27日(土)午後1時35分から30分間、国土交通省主催の公聴会で公述人として、有害スラグ問題を主体に、発言した内容に凝縮されています。
○2015年7月1日:八ッ場ダム建設工事にかかる公聴会で有害スラグ問題を主体にオンブズマンが公述
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1652.html

 この他にも、八ッ場ダムを巡る官僚による利権の構図の一端である齋藤烈事件を追及してきた経緯もありました。
○2015年6月5日:八ッ場ダム測量業務の贈収賄を巡る斉藤烈事件の協立測量の幹部らがみずほ銀行から融資詐取で逮捕
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1637.html
○2010年9月1~4日:八ッ場ダム推進でアブク銭にあずかりたい国交省職員の気持ちを体現した斉藤烈事件(その1~4)
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/522.html
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/523.html
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/524.html
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/525.html
○2010年9月5日:八ッ場ダム推進でアブク銭にあずかりたい国交省職員の気持ちを体現したもう一つの協立測量事件(その5)
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/526.html
○2009年10月18日:八ッ場ダム問題解明の鍵を握る斉藤烈事件の刑事保管記録閲覧を巡る東京地検の対応
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/351.html
○2009年10月7日:八ッ場ダムの不正の典型・・・斉藤烈事件の刑事記録閲覧許可を東京地検に督促
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/343.html

 さらに、巨大ダム事業で生み出された巨額の公費投入の結果、そのカネが自民党のみならず民主党にも還流し、政治色に染められていった過程も追及してきました。この7月から群馬県知事に就任した一太知事も、ちゃっかりとダム建設業者から献金を受けていました。
○2009年12月19日:税金が政治家に流れムダな事業で談合した金がまた政治家へ…八ッ場ダムの利権スパイラル
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/388.html#readmore

 そしてそのカネの一部は当然、移転に揺れた地元住民らの生活にも影響を与えました。
○2009年10月18日:八ッ場ダムで権力を相手に立派にカネの生る木を育てた御仁の話・・・週刊新潮の場合
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/350.html

 さらには、マスコミもそのカネの力でペン先を鈍らせてしまいました。
○2009年10月16日:民主政権下における「記者クラブ」制度のありかた・・・八ッ場ダム報道の例
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/348.html#readmore

■そもそも、当会が八ッ場ダム問題にかかわり始めたのは、今から10年以上前の2009年冬でした。地元関係者のかたがたから、あまりにも酷い地元有力者を中心とした政官業による利権の構図の実態が当会に報告されたためです。最近で言えば、関電を手玉に取った高浜町元助役を軸とした政官業の癒着の構図にそっくりです。
○2009年2月28日:政官癒着の権化・税金ムダ遣いの象徴/カネまみれ八ッ場ダム物語
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/197.html
○2009年3月1日:八ッ場ダム物語/巨額利権の間接恩恵?かみつけ信組への資本注入
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/198.html
○2009年3月2日:八ッ場ダム物語/丸岩会に所長を講師派遣した国交省の言い分
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/199.html

 その後、国交省の現地事務所を舞台とした職員による汚職事件が密かに発覚していたことが分かり、その刑事記録を調べるため、東京地検と交渉しました。
○2009年7月10日:八ッ場ダム控訴審に向け公金ムダ遣い実態解明のため刑事記録閲覧を東京地検に請求
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/282.html

 同じころ、政治的にも変動が起き、自民党から民主党へ政権交代が起きました。民主党政権化では当初の鳩山政権下で、前原国交省が八ッ場ダム凍結を宣言しましたが、次の野田政権下で前田国交省が方針転換をして、一転、八ッ場ダム建設推進へと舵を切り替えてしまいました。しかし、この政治変動のおかげで、八ッ場ダムの利権の実態が世間に知られることになったのでした。とりわけ、地元有力者を中心とした丸岩会の存在が、当会のブログを見た週刊誌の報道により広く拡散し、前時代的な利権構造が浮き彫りにされました。
○2009年9月1日:民主党政権誕生が迫り、断末魔のあがきの八ッ場ダム推進派関係者
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/326.html
○2009年9月22日:政官業癒着と税金ムダ遣いの象徴・・・八ッ場ダム推進派による丸岩会の所業
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/336.html
○2009年10月3日:八ッ場ダムを取り巻く政官業癒着のシンボル丸岩会の関係先リスト
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/340.html
○2009年10月5日:週刊ポスト10月16日号の衝撃記事!「背信のゴルフコンペ」が指摘する群馬の恥部
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/342.html
○2009年10月11日:今回はダム役人に焦点・・・八ッ場ダム問題を扱った週刊ポストの記事第2弾!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/345.html

■こうして巨額公共投資による利権が生んださまざまな歪みや思惑を伴いながら、人的にはコネ、癒着、文書偽造、背任、着服、横領などが繰り返され、物的には、ダム湖内に違法に投棄されたフッ素や六価クロム入りの有害スラグはそのまま残置され、草津温泉万代鉱から大量に湧出する強酸性の湯を石灰ミルクの注入で中和させる事業により、直下に造った生成物沈殿専用の品木ダムに溜まった堆積物の除去も半世紀を経て周辺の処分施設が満杯となるなど、課題をそのままダム湖に水没させて、八ッ場ダムが来春から本格稼働することになります。

 筆者の誕生年と同じ1952年に建設省が長野原町長にダム調査を通知してから67年を経て、総事業費が約6500億円の巨大事業がようやく稼働の運びになりました。評価の切り口はさまざまですが、本当に投入費用に見合った治水、利水に役立てられるのかどうか、評価は後世代に委ねることになることでしょう。当会の八ッ場ダムについての評価は、無駄遣いがつきものの大型公共工事の負の遺産の典型として位置付けております。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
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八ッ場ダム建設工事に係る土地収用法に基づく6.26公聴会の模様(その8)

2015-11-03 01:11:00 | 八ッ場ダム問題
■午後の部の休憩の後、最後の公述人らが次々に登壇しました。

【議長】 それでは、公聴会を再開します。
 次は、冨永靖徳さんから公述をしていただきます。
 冨永さんは、壇上に上がり、公述人席に着いてください。
 また、公述人からは起業者への質問の希望がありますので、国交省関東地方整備局の方も、壇上に上がり、起業者席に着いてください。
          (公述人・起業者登壇)
【議長】 よろしいですか。
【公述人(冨永)】 はい。
【議長】 そちらは大丈夫ですか。
【起業者(小宮)】 はい。
【議長】 現在の時刻は4時1分です。ただいまから公述を開始し、30分間で終了するよう、お願いいたします。また、終了の10分前、5分前、1分前に呼び鈴で合図をするとともに、表示によりお知らせしますので、目安にしてください。
 なお、終了時間までに終了しない場合には、公述の中止を命ずることとなります。それでは、公述を開始してください。
【公述人(冨永)】 埼玉からやってまいりました冨永と申します。私はしばらく前まで大学で教鞭をとっておりましたけれども、河川工学の専門家でも地質の専門家でも、ましてや法律の専門家でもありませんので、一市民として、埼玉と、それから、群馬に利害関係を持つ一市民として、自分が違和感を感じたことについてお話をして、それから、二、 三、事業者に質問させていただきたいと思います。
 まず、この事業認定なんですけれども、事業認定制度に少し問題があるのではないかというふうに思います。それはどういうことかというと、土地収用の申請者とその申請者に土地収用の法的根拠を与える事業認定者が同一の機関、つまり国交省であるということは極めて不備なんじゃないかというふうに思います。第三者機関、あるいは、全く関係のない機関が当然認定すべきことであるというふうに考えますので、まず、この不備を今後ただしていただきたいなというのが1つの意見です。
 それから、国交省がなさることですから、どこにも違法性はないかと思うんですけれども、八ッ場ダムについては著しく不当であると私は考えておりますので、その立場を明らかにして、それから、幾つか二、三の質問をさせていただきます。
 まず、既に八ッ場ダムの不当なことにつきましてはもう何人かの、もう既に出尽くしていると思いますけれども、一応私が考えている不当なことということについて二、三お話ししたいと思います。
 八ッ場ダム事業による公益性というのは、憲法29条1項で規定されている財産権の侵害を正当化するものでありますので、非常に慎重に検討していただきたいと思います。私の結論は、この八ッ場ダム事業は決してその財産権を侵害するほどの公益性と、それから、-162- 緊急性を持っていないというふうに考えています。
 それは以下のとおり簡単にまとめますと、1つは、もう既に出てきましたけど、治水の問題であります。カスリーン台風の話がたくさん出ていましたけれども、先ほど、高橋さんからお話があったとおり、現在、カスリーン台風が同じように襲ったとしても、八ッ場ダムはほとんど役に立たないということを国交省自身も認めているわけで、そんなところに、ダムをつくるということ自身が私はとても違和感を感じています。
 また、その治水の根拠となる基本高水というものは、カスリーン台風以後の実績から見ても、非常に突出して高い値なので、これは恣意的な設定としか思えません。この件については後で質問いたします。
 利水につきましても、最近、これももう既に出尽くしたと思うんですけれども、最近は水需要が減っておりますので、東京都の予想というのは全く恣意的なものであるとしか言えないわけですね。人口も減る傾向にありますので、利水の点からいっても、八ッ場ダムというものの緊急性、公益性というのは非常に低いであろうというふうに思っております。それから、地盤の問題ですね。これは皆さんご承知と思うんですけれども、現在のダムサイトの位置は既に過去において、国会において、ここは危険だから、別な場所に移せということで下流に移されたはずなんです。下流に移したときに、吾妻渓谷が破壊されるからということで、またもとに戻したんですね。これは全く理解できない。一度ここは地盤が危ないからといってやめた場所にまた移したということは、何かが変化しなきゃいけないわけですね。ですから、国会答弁が間違っているか、あるいは、国会答弁の後で何かの変化があったかということで、これも後で質問いたします。
 それから、もちろんダムを建設しますと環境破壊は免れません。ですから、環境を破壊しないでダムを建設することはできないんですが、そのときに、環境破壊とダムに対する公益性をやっぱりてんびんにかけなきゃいけないわけですね。我々が生活していく上で必ず環境を破壊しなきゃいけないんですけれども、その環境の破壊する程度と、それから得られる公益性あるいは緊急性というものをはかりにかけてやらなきゃいけないんですが、八ッ場ダムに関してはそれは全く環境破壊を上回るような、そういう緊急性と公益性を持っていないというふうに私は考えています。
 それから、これも既に出たと思いますが、文化遺産ですね。非常に縄文から天明期に至る遺跡の宝庫なわけですけれども、ダム事業はこれらの文化遺産を不可逆的に破壊いたします。日本国民全体の大きな損失を伴いますけれども、そのダム事業がこの損失を上回るほどの緊急性と公益性を持っていないというふうに私は考えています。
 以上が、ほかにもいろいろありますけれども、とりあえず簡単にまとめると、以上が私のこの八ッ場ダムに対する一つの立場であります。
 これから国交省に対して3つ質問いたします。1つは戸倉ダムと倉渕ダムの中止と八ッ場ダムの推進との整合性について、それから、2番目は先ほどお話しいたしました地盤の問題について、3番目は基本高水のことについてご質問いたします。順次質問いたしますので、お答えしていただきたいと思います。
 まず、戸倉ダムと倉渕ダムの中止と八ッ場ダムの推進の整合性についてですね。国交省は2003年、このときはまだ国交省じゃなかったかもしれませんけど、建設省だったと、水資源機構ですか。2003年12月25日に群馬県の片品村で建設中の戸倉ダムの事業中止を決めました。中止の主な理由が水需要の減少、それから、自然環境への配慮という、いっぱいあったと思うんですが、等々なんですが、これは八ッ場ダムとほとんど同じ状況ですよね。
 しかも、戸倉ダムの場合には水没人家もないし、地域住民はある意味、完成を願っていたわけで、反対運動もなかったわけですね。さらに、建設費用は八ッ場ダムと比較して格段に少ない計画だったはずなんです。ですから、なぜ多くの問題を抱えている八ッ場ダムは建設を推進して、もう格段に条件のよい戸倉ダムは中止になったか、両者を比較して、まず、納得のいく説明、まずそこからお願いいたします。
【議長】 起業者側、回答願います。
【起業者(小宮)】 お答えいたします。戸倉ダム、水資源機構の、当時、水資源開発公団の事業だったと思いますけれども、これにつきましては、全ての利水の参画する参画者、利水参画者が事業から撤退するという意向を表明しております。そうしますと、治水、利水としての共同事業としてのメリットがなくなったために、ダム事業を中止したものでございます。それは……。
【公述人(冨永)】 なぜそれは、なぜ撤退するようなことに……。
【議長】 公述人、公述を続けてください。
【公述人(冨永)】 なぜそれは撤退するような事情があったんでしょうか。そのことについて、ちょっと今は理解できなかったんですけれども。
【議長】 回答願います。
【起業者(小宮)】 利水の参画につきましては、各利水参画者、地方自治体になるかと思いますけれども、そこが適正に判断されてくるということで、その中で参画者が撤退を表明するというようなことがあったというふうに考えております。
【公述人(冨永)】 それが主な……。
【議長】 地方公共団体の判断だったということですね。公述を続けてください。
【公述人(冨永)】 何の判断と、今の。
【議長】 地方公共団体の判断だったという。
【公述人(冨永)】 地方公共団体がやめろと言ったことで、そのときに国交省はその指導その他は入らなかったんですか。国の事業として、その地方公共団体の考えがほんとにそうなのかということを確かめることはなさらなかったんですか。
【議長】 ちょっと別のダムのことですので、そこまでどうかわかりませんけども、回答できるのであれば、回答してください。
【起業者(小宮)】 戸倉ダムは水資源機構の事業ですので、詳細について我々のほうでは、八ッ場としては存じておりません。
【公述人(冨永)】 わかりました。
【議長】 では、公述を続けてください。
【公述人(冨永)】 それでは、次に、倉渕ダムなんですけれども、これは平成15年度、2003年12月3日に自由民主党の一般質問に対して、小寺知事さんが以下のように答弁をしているんですね。それは、「倉渕ダムの建設事業につきましては」、省略ですね、「財政面から考えますと、本体工事に着手することによって、今後数年間で二百数十億円に及ぶ大きな投資を必要とすることになります。現在の県の厳しい財政状況を考慮すれば、これはなかなか難しいことであります。また、事業の緊急度や県民の事業に対する理解度という点において、カスリーン台風以来、大きな被害が出ていないことや、ここ数年、水道需要が伸びていないこともあって、治水、利水の両面において、さらに慎重な対応が必要であると考えております。これらを総合的に勘案いたしますと、現時点におきましては、倉渕ダムについては来年度より当分の間、本体工事及び残りの工事の着手を見合わせることにして」と、以下いろいろ続くんですが、その後、倉渕ダムは凍結されて中止ということになっております。
 この答弁から、倉渕ダムの取り巻く環境といいますのは八ッ場ダムとほとんど同じですよね。お金がかかって、利水に必要でなくて、それから、治水としてもほとんど問題ないという判断なわけです。
 ですから、そういう、しかも、八ッ場ダムの場合はそれ以上の問題をさらに抱えていますね。ヒ素の問題であるとか、あるいは、酸性土の問題であるとか、炭酸カルシウムの問題であるとか、いろんな、品木ダムの問題とか、いろんな問題を抱えているわけですけれども、その倉渕ダムを取り巻く環境、八ッ場ダムを取り巻く環境、同じどころか、八ッ場ダムのほうがもっと厳しい環境なわけですけれども、それにもかかわらず、倉渕ダムはやめて、それで八ッ場ダムは推進なんですが。
 そのときに、おそらく国交省が答えるだろうことは、これは県のダムであると、八ッ場ダムは国のダムであるというふうにお答えになるんじゃないかと予想されるんですけれども、その場合、予算で自然が変わるわけはないんです。自然として必要なことは、県のダムであろうと、国のダムであろうと、やっぱりつくるものはつくらなきゃいけない、要らないものは要らないということで、県のダムだから、あるいは、国のダムだからということでそれを2つの区別をされるということは非常に私としては納得がいかないんですが、その点についてぜひお答えいただきたいと思います。
【議長】 起業者側、回答願います。
【起業者(小宮)】 お答えいたします。今ご指摘にように、倉渕ダムにつきましては群馬県の事業でございますが、利水者、利水者が別途、水源の確保可能となって、倉渕ダムの治水、利水上の共同事業としてのメリットがなくなったということなので、群馬県において事業が中止されたというふうに聞いております。
【公述人(冨永)】 倉渕ダムの利水の……。
【議長】 公述人、続けてください。
【公述人(冨永)】 倉渕ダムの置かれた治水に関する状況と八ッ場ダムに置かれた治水の状況というのはどれだけ、どういうふうに違うんでしょうか。ほとんど隣ですよね。八ッ場ダムが治水上必要ならば倉渕ダムだって必要だし、倉渕ダムが必要だということで、要らないということであれば、八ッ場ダムも要らないというふうに、普通の考えならそう思います。
 もし財政上に問題があって、どうしても必要ならば、おそらく県で負担ができないなら、 国が援助しましょうということぐらいやるのが国交省の役目だろうと思うんですね、必要 ならですよね。だけど、片方で、国交省はこれは要らないと多分思ったんだと思います。ですから、地方公共団体が要らないと言ったら、それに乗っかったんじゃないか。私は邪推しているんですけれども、そのあたり、ぜひとも、なぜ倉渕ダムは利水上、治水上の問題でもう問題ないと判断したにもかかわらず、八ッ場ダムはどうしてそういう判断をしなかったんでしょう。
【議長】 ご承知のようですけれども、県ダムのことではありますので、ちょっと正確な答えができるかどうか分かりませんけれども、今のご質問は、利水の撤退の話はわかったけれども、治水上の観点は倉渕ダムはなかったのかというご質問かと思いますけど、それについてご回答できますでしょうか。
【起業者(小宮)】 議長も言われるように、県のダムの事業で詳細の点については我々は答える立場ではございませんけれども、聞いているところでは、治水に関する部分について、これについては、引き続き、河川管理者である群馬県が検討を行っていくというふうに聞いております。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(冨永)】 今も検討しているんでしょうか。もう中止になったんじゃないでしょうか。ごめんなさい、まだ中止になっているわけではないんでしょうか。私、そのあたり、ちゃんと把握してないんですけれども。私は中止になったというふうに、はい。
【議長】 県ダムの判断の話ですけれども、お答えできるのであれば、お答えください。
【起業者(小宮)】 ちょっと県において、ダムにかわる治水が必要というふうには聞いております。我々のほうとしては、県のダムのことですので、ちょっとこれ以上お答えする立場にはないと。
【議長】 今の回答ですと、ダムでやるか、ほかの手段でやるかはちょっと把握してないという。
【公述人(冨永)】 わかりました。そうすると、でも、なおかつ、八ッ場ダムは利水、治水上の問題として必要だというふうにお考え、今でもお考えていらっしゃる。
【議長】 今、八ッ場ダムの治水上の必要性と。
【公述人(冨永)】 そうです。はい。
【議長】 治水ですね。はい。
【起業者(小宮)】 端的に申しますと、八ッ場ダムは治水、利水上必要な事業として検証、あと、いろいろその他を経て、継続という決定がなされておりますので、必要というふうに考えております。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(冨永)】 決定はどなたがなさったんですか。
【議長】 回答願います。検証の結果、継続が必要だと決定は誰がしたのかというご質問ですね。
【公述人(冨永)】 どなたが責任を持ってそれを決定されたんでしょう。つまり、どなたがその決定する権限を持っていらっしゃるんですか。
【議長】 ご回答ください。
【起業者(小宮)】 八ッ場ダムの事業につきましては基本計画というものがありますけれども、国土交通大臣が作成した基本計画に基づいて実施していくものでございます。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(冨永)】 それは私も存じておりますけれども、実質的に権限を持って、八ッ場ダムの推進を決定した責任者、つまり何かあったときに責任をとるべき人というのはどういう立場の方でしょうか。
【議長】 要旨にはございませんけれども、お答えできるのであれば、お答えいただい て。
【起業者(小宮)】 大臣の計画に、基本計画に、作成した計画に基づいてやっているということ、あと、今回、事業認定について申請をしているのが関東地方整備局長が申請しているというようなそれぞれの立場、責任を持って事業を推進して……。
【公述人(冨永)】 関東地方整備局長……。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(冨永)】 関東地方整備局長というふうに考えてよろしいんでしょうか、関東地方整備局長。
【議長】 どうぞ。
【起業者(小宮)】 事業の執行、法律に基づいてやっているわけでございますから、一概に誰が、誰の責任がというようなこと、それは一概にはお答えできませんけども……。
【公述人(冨永)】 それは困るので、必ず……。
【議長】 公述人、公述を続けてください。
【公述人(冨永)】 必ず権限を持って決定をされる方が必ずいらっしゃるはずなんですが、それはどなたなんでしょう。権限がない人が決定……。
【議長】 権限というのが、工事実施の権限者は誰かということでいいですか。
【公述人(冨永)】 実施ではなくて、八ッ場ダムの計画を決めた権限を。
【議長】 計画決定権者ということですか、八ッ場ダムの計画決定権者は誰かというご質問ということで。
【起業者(小宮)】 何度も繰り返しになって恐縮でございます。国土大臣が作成した基本計画に基づいて実施しているわけでございますので……。
【議長】 だから、計画決定権者は国土交通大臣だということですね。
【公述人(冨永)】 わかりました。じゃあ、実施の責任者はどなたでしょうか。
【議長】 事業の実施の責任者は誰かということですね。
【起業者(小宮)】 すいません、ちょっと恐縮なんですが、事業実施の責任者ということが質問の事前のものにはありませんでした、なかった、ございませんでしたが、何ていうんですかね、ということでございますが。
【議長】 ちょっと概念として、法律的にいろいろな形があるので。
【公述人(冨永)】 それはわかります。法律的はわかりますけれども、実質的にこの八ッ場ダムを決定して推進しようとした人が必ずいるわけですね。大臣はおそらくそれを聞いて、これは違法でないと、これは違法でないからということで大臣の職務として決定したんだと思うんですが、実質的にこの事業全体を把握して、これは治水、利水面について必ず必要であるから、多少住民の犠牲を払っても、国民の公益のために必要であるというふうに考えて、おそらく考えて、考えていただいたかどうかはよくわかんないですが、考えて決定をされた方がいるはずなんですけれども、それはどなたなんでしょう。
【議長】 はい。
【起業者(小宮)】 いいですか。
【議長】 はい。
【起業者(小宮)】 ちょっと何回も恐縮でございますけれども、今、私が大臣の計画に、作成した計画に基づいてやっているというようにお答えしておりますけども、それがお答えでございまして。
【公述人(冨永)】 権限のある方というのは必ず責任があるんですよね。権限と責任というのは表裏一体のものなんです。権限がなければ責任はありません。だから、私は八ッ場ダムに権限がありませんので、八ッ場ダムが何が起こっても責任はありません。ただ、国交省の方は権限はあるわけですから、それに対して責任があるわけですね。その責任は一体どなたなんでしょう。それははっきり、多分はっきりしていると思うんですけれども、それを曖昧にするから、いろんな方が何をやっても責任がないんだというふうに考えてやっておられるんじゃないかと思います。それは言えるはずですよね。権限を持っておられる方は誰でしょう。
【議長】 ちょっとその責任論というよりは、計画決定権者は国土交通大臣ということですね。事業主体も国土交通大臣ということでよろしいんでしょうか。
【起業者(小宮)】 国土交通省が事業主体でございます。
【議長】 国土交通省が事業主体になる。
【公述人(冨永)】 国土交通省が事業主体って、それは大変優等生の答えなんですけれども、誰かが権限持ってるはずですよね、決めた。誰かが決めてるわけなんです。国土交通省なんていう抽象的なものじゃなくて、どういう役職の方がこれを最終的に決めたんですか。つまり、そうしないと、責任、明らかにならないんですよ。だからいろんなことがいいかげんなことになる。ほんとうに責任を持って、権限を持って、これは国民のために必要だと、何か起こったら俺が責任をとるよということでやる事業なら、それは国民、納得いたします。おお、それはすごい、よくやってくれた。だけど、そうじゃないから、非常にいろんなところで違和感を感じるんです。 もう一度お答えいただきたく質問いたしますが、どなたか、どの役職なんでしょう。
【議長】 行政機関の話をされているのと行政庁の話をされているの等がいろいろありますけれども……。
【公述人(冨永)】 個人の話、つまり、権限を持っている個人はどなたなんでしょう。
【議長】 権限が必ずしも個人に帰着しているかどうかというのはまたあると思いますので、それは必ずしも個人じゃない、要するに大臣なら大臣でなくて、国土交通省というのもあるかもしれませんけれども、それについて、どこが主体なのかということをお答えいただくと。
【公述人(冨永)】 わかりました。時間もありませんので。はい。大体。
 それでは、2番目ですね。2番目、先ほども言いましたとおり、地盤の強度が問題であると国会で答弁したまさにその場所につくるということに対して、国土交通省はどういう見解を持っておられますか。
【議長】 2番目の質問だと思います。ご回答いただければと思います。国会答弁でした場所に建設するということについて。
【起業者(藤原)】 では、ご質問についてお答えいたします。ご質問の地盤の強度に問題があるとの国会答弁のあった1970年当時は、限られた技術的知見をもとに、お尋ねのような懸念がありました。これまで行った現地踏査、ボーリング、横坑などによる調査によって、過去の想定よりも変質部の分布が上流からダムサイトに向かって次第に範囲が狭くなり、ダムサイト付近には分布が見られないことが確認されております。
 河床を横断する岩の断層の存在については地質境界ということが判明し、ダムサイト周辺にダム基礎地盤として問題となる脆弱な断層破砕帯の存在はないことが確認されています。
【公述人(冨永)】 わかりました、はい、大体わかりました。
【議長】 すいません、こちらが指示しますので。
【公述人(冨永)】 ごめんなさい。
【起業者(藤原)】 続けさせていただいていいですか。
【議長】 はい。では、答弁が途中でしたので、答弁してください。
【公述人(冨永)】 簡潔にお願いいたします。まだ質問、ありますので。
【起業者(藤原)】 では、簡単に。
【公述人(冨永)】 簡潔に。
【起業者(藤原)】 全般的に、ダムの基礎岩盤として求められる強度を有しているとの科学的根拠が得られていることから、ダムの基礎地盤としては問題ないというふうに評価しております。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(冨永)】 じゃあ、その判断がもし間違っていたとしたら、どなたが責任を持ちますか。つまり、そういう判断をされたわけですね。だけど、その判断は間違っているかもしれません。その間違ったときに、どなたが責任を持ちますでしょうか。
【議長】 とりあえず、まず、起業者側は答えてください。
【起業者(小宮)】 今、お答えしましたけれども、基礎岩盤としては問題ないというふうに評価しておりまして……。
【公述人(冨永)】 だから、それは……。
【議長】 仮定の話にはお答えできないということですか。
【起業者(小宮)】 はい。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(冨永)】 問題ないという判断されたんですが、その判断は間違っているかもしれません。その間違っていた判断が明るみになったときは、どなたが責任とります?
【議長】 起業者側、回答願います。
【起業者(小宮)】 今ご指摘ありましたけど、これもちょっと仮定のことになってしまいます。現在、今日はお答えはできないということでございます。
【公述人(冨永)】 わかりました。時間がないので、次へ進みます。基本高水について、もういろんなところから出ておりますけれども、基本高水2万2,000㎥/sというのは実測値ですか。
【議長】 基本高水が実測値かというご質問ですね。
【起業者(小宮)】 実測かどうかというご質問ですね。
【公述人(冨永)】 はい。
【起業者(小宮)】 計算から出していると。
【公述人(冨永)】 計算ですね。
【起業者(小宮)】 はい。
【公述人(冨永)】 どういう計算を使われました?
【議長】 公述人、続けてください。どうぞ。
【公述人(冨永)】 どんな計算でやられました? 貯留関数法を使われました?
【議長】 もともとの計算手法については要旨に明示はしていませんけれども、お答えできますか。
【公述人(冨永)】 はい。基本高水のことですけれども、使われた、先ほど、高橋さんの質問によると、貯留関数法を使われたということらしいんですけれども。
【議長】 回答願います。
【起業者(小宮)】 お答えさせていただきます。八斗島地点上流の時間データが入手できた昭和11年以降のデータを用いて、八斗島地点において、年最大流量標本による流量把握についての試算を行うというようなことから、推算をしております。
【公述人(冨永)】 その推算……。
【議長】 続けてください。
【公述人(冨永)】 貯留関数法だと思いますけれども、1つだけ質問します。その貯留関数法には2つパラメータがあります。その2つのパラメータが相関しているということを認識されていますか。それとも、そんなことは全く初めて聞かれました?
【議長】 もともと質問の要旨にない事項でございますので、今お答えできますか。
【起業者(小宮)】 今、質問はお答えできません。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(冨永)】 貯留関数法というのはパラメータに次元があることをご存じですか。
【議長】 先ほどの関連の……。
【公述人(冨永)】 質問です。はい、はい。
【議長】 続けての質問ですので、今のもともとを把握してないということですので、多分お答えできないんじゃないかと思いますけど。
【公述人(冨永)】 基本高水を計算した非常に基本になることで、皆さん、知っていなきゃいけないことだと思うんですけれども。いいです。はい。あと何分ありますか。
【議長】 5分で。
【公述人(冨永)】 そうですか。 この先ほど質問にありましたけど、200分の1というのは200年に一度という意味 で理解しているんで、素人が考えるとそんなふうに考えるんですが、そうなんですか。2 00分の1の確率というのはどういう意味なんでしょうかね。200年に一度……。
【議長】 回答願います。
【起業者(小宮)】 200分の1確率とは、200年に、今、200年に1回発生するというふうにご指摘になりましたけれども、発生するとか、今後発生しないとかというものではなく、超過確率200分の1の洪水とは。
【公述人(冨永)】 なるほど。200年という意味ではないんですね。
【議長】 すいません、途中で遮るのはやめてください。どうぞ。
【起業者(小宮)】 毎年、1年間にその規模を超える洪水が発生する確率が200分の1であるということでございます。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(冨永)】 わかりました。
 それでは、最初の質問に戻りますけれども、国交省も認めて、僕はこれ、一番違和感を感じているんですけれども、国交省はカスリーン台風と言いながら、カスリーン台風が同じように来ても、八ッ場ダムはほとんど役に立たないと、高橋さんの話にもありましたし、国交省もこれは認めているという新聞報道がありましたけれども、にもかかわらず八ッ場ダムをつくるという、その感覚が全くわからないんですが、お答えください。
【議長】 治水上のメリットがあるのかということですかね。
【公述人(冨永)】 はい。もう一遍補います。
【議長】 はい。
【公述人(冨永)】 国交省は、カスリーン台風がもう一度来たとしても、八ッ場ダムはほとんど役に立たないということを認めておられる、認めておられるんですか、認めておられないんですか。まずそれからお聞きいたします。
【議長】 回答願います。
【起業者(小宮)】 八ッ場、カスリーン台風がもう一度来るというちょっと仮定のことになってきますので、お答えは難しいと思いますがね。
【公述人(冨永)】 それはもう……。
【議長】 続けてください。
【公述人(冨永)】 それはもうシミュレーションされているはずなんで、結果はもう出ているはずなんですが、それをご存じないということですか。それとも、知らないということですか。ご存じないということなら、またそれは話は別なんですけれども、知っているけれども答えたくないということでしょうか。
【議長】 回答願います。
【起業者(小宮)】 知っているけれども答えたくないということではございませんが、カスリーン台風、利根川の治水計画につきましては、カスリーン台風時の降雨パターンだけに限定しているものではなく、吾妻川上流域に集中して降った雨のパターン、そういったものを多く含むものを考慮して策定しているものでございます。
【公述人(冨永)】 それが……。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(冨永)】 それがどれぐらいの確率で来るというふうに考えておられます?50年に一度、100年に一度、1000年に一度、そういうことは議論されたこと、ありますか。
【議長】 回答願います。
【起業者(小宮)】 今言ったのを、カスリーン台風のパターンを限定しているということではないので、それが……。
【議長】 今の全体のご説明いただいたのは、200分の1とか、整備計画だと70か ら80分の1とか、そういうものでなっているんじゃなかったでしたっけ。
【起業者(小宮)】 そのとおりです。つまりそういう……。
【議長】 お答えください。
【起業者(小宮)】 整備計画では70分の1から80分の1というような確率ですので。
【議長】 続けてください。
【公述人(冨永)】 それがよくわからないんですが、それをわかりやすく我々に言うと、 何年に一度ぐらいというふうに理解すればいいんでしょうか。
【議長】 回答願います。
【起業者(小宮)】 今、何年に一度とかいうことを、ちょっと200分の1と重複いたしますけれども、毎年、その規模を超える発生確率が、例えば今言ったみたいに、70分の1とか80分の1であるというようなことを示しているというものでございます。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(冨永)】 ダムの寿命って50年もたないですよね。その間、50年のうちに起こらないならいいじゃないかという、ごく普通の市民の考えですよね。50年、あるいは、100年ももたないですよね。そういうものに対して、過大な、何ていうのかな、危険率をかけるというのは、やはりどうしてもダムをつくりたいがための方便でしかないように、普通の庶民はそういうふうに考えますけれども、どうなんでしょう。ダムの寿命はどれぐらいだと思っておられます?
【議長】 回答願います。
【起業者(小宮)】 一般、特段、ダムの寿命というもの、そういったものは特段お示ししているものはないと存じております。今、ダムの寿命と超過確率の関係というご質問がありましたので、今申しましたように、超過確率がその1年間に超える発生確率とダムの寿命、それが確率によってそれを比較しながら、ダムの、それを比較するという議論という、論じるということは違うというふうに思っております。
【議長】 続けてください。
【公述人(冨永)】 できればわかりやすく、庶民にわかりやすく、それが何年に1回ぐらいというふうに翻訳できるかという、翻訳していただけるとありがたいんですが、それぐらいのことは予想されていると思うんですよね。人に説明するときに、そんな20分の1とか何分の1と言われてもぴんとこないんですよ。これは100年に1回ぐらい来るから危ないんだよと、200年1回が危ないんだよ、50年に1回が危ないんだよという、そういうレベルで言うと、どういうふうに考えればいいでしょうか、今の八ッ場ダムの計算上。
【議長】 ご回答ください。
【起業者(小宮)】 利根川の整備計画では70分の1から80分の1、そういうふうになっておりますけれども。
【公述人(冨永)】 わかりました。わかりました、結構です。はい。 最後、まとめま。
【議長】 まとめてください。
【公述人(冨永)】 先ほど言いましたとおり、八ッ場ダムの計画というのは国交省がなさるわけですから、決して違法だということはなさっていないと思います。これはそう信じています。ただ、著しく不当であるということは間違いないですね。著しく不当であるということは、これは違法であると紙一重なんです。ですから、ぜひともその著しく不当であるということを、いろんな方がいろんな形で表現されたと思うんですけれども、著しく不当であるということをしっかりかみしめてください。
 それと、この八ッ場ダム事業に対する責任者というのをはっきりさせてください。責任者がいないから話が混乱するんですよね。ほんとに決断をして決める責任者がいれば、その責任者がきちんと説明を、自分の職をかけて説明すると思うんです。ところが、今、そのおっしゃったとおり、責任者を何もおっしゃってくださらなかった。ですから、自分の職をかけて説明する方がいらっしゃらない。それがおそらく皆さんの持っている最大の不満だと思います。
 ですから、そのあたり、ぜひともかみしめていただきたい。著しく不当な計画ですので、 できるだけ早くやめていただきたいというのが私の結論です。
 ありがとうございました。
【議長】 ありがとうございました。
 降壇してください。
          (公述人・起業者降壇)
【議長】 次は、土屋信行さんから公述をしていただきます。
 土屋さんは、壇上に上がり、公述人席に着いてください。
         (公述人登壇)
【議長】 準備はよろしいでしょうか。
【公述人(土屋)】 はい。
【議長】 現在の時刻は4時33分です。ただいまから公述を開始し、30分間で終了するようお願いいたします。また、終了の10分前、5分前、1分前に呼び鈴で合図をするとともに、表示によりお知らせしますので、目安にしてください。
 なお、終了時間までに終了しない場合には、公述の中止を命ずることとなります。
 プロジェクターを使用しますので、少し照明を落とします。
 それでは、公述を開始してください。
【公述人(土屋)】 私はこの吾妻川の再下流になります千葉県の松戸市に住んでおります、土屋信行と申します。再下流の洪水の考え方をお話しをして、皆様にダムの建設を一日も早く進めていただきたいという立場でお話をさせていただきます。
 この写真はカスリーン台風の決壊の写真ですが、実はこの決壊現場で私は生まれました。ここに少し高台地が見えますが、わずかに高台になったところに私の両親の家がありまして、6畳に4畳半ぐらいの台所のついたちっちゃな家でございました。洪水は夜中に起こったそうです。昭和22年、決壊したときには私の母は1人でその小さな家におりました。すさまじい音が聞こえた後、すごいにおいがしたそうです。何のにおいなのというふうに母に聞きましたが、何のにおいかわかんないって言っております。私の母は今、95歳ですが、今でもしっかりしております。昔はため池やいわゆる人ぷんがあちこちに置いてあったから、肥だめのにおいじゃないのと言ったら、いや、肥だめとも違うよっていうふうに言っておりました。
 洪水のあった後、みんなで村で保管していた米が全部ぬれてしまって、それを早く干さないと、食べられなくなっちゃうということで、一生懸命食糧の確保にみんなで協力したそうです。私の両親の家は、先ほど申しましたように、6畳一間に4畳半の台所、もちろん今のようなガスや水道はありません。へっついの脇にかまどがあって、まきでご飯を炊いているという状況で、みんな家を流された人たちは堤防の上に逃げてバラックをつくったそうです。
 何といっても、洪水になると、一番高い場所が堤防になってしまいます。堤防以外のところは泥だらけで何も使えないという状態であったそうです。ですから、堤防自身は川の大事な施設ですが、そこに住まざるを得ないということで、私の母には、母の家のところには、長い方で3カ月ぐらい、結局いわゆる避難所がありませんでしたので、残った家に暖まるための暖を求め、そしてまた、食糧を求めてみんなで肩を寄せ合って暮らしていました。
 今、私がいるのは千葉県の松戸というところで、大変ここから見れば最下流になります。当時、カスリーン台風はその最下流の葛飾、江戸川区も襲いました。その襲ったときの水位はやはりみな胸につかるぐらいの水がやってきたということです。
 下のほうというか、下流のほうでもその影響は長く続きました。私たちのいる地域では、1カ月ぐらい水が引かずに、結局水が引いてから、泥を排除して、それで、住まいを確保する。一番困ったのは水がないということなんです。周りの水は、言ってみれば、うんこもおしっこも一緒になって、肥だめが全部あふれ返って流れてきております。あらゆる、土砂ばかりではなくて、そういう人々の生活から出てくる汚染物質というか、そういうものもたくさん流れてきてしまいました。結局、長い時間かかって、そういうリカバリーといいますか、生活の場を確保するという闘いが長く長く続いているというのが最下流の洪水の実態です。
 今、私たちのいる最下流では、この写真は昭和24年のキティ台風という台風ですが、この台風は今度、海から高潮といって潮水が上げてくる洪水です。最下流の地域は上流からの洪水と、それから、海からやってくる洪水の危険にいつもさらされています。そして、また、ここに映っている江戸川区は、地盤沈下のために、一番深いところでは4メートルも沈んでしまいましたので、堤防がないと、どんどん海の水が押し寄せてくる、無尽蔵の海の水が堤防によってかろうじてとめられている状況で、それがやってきてしまうということで、洪水の危険性は、雨が降る時期だけではなくて、1年365日が洪水の危険にさられている地域だと言ってもいいのではないかというふうに感じております。
 そして、そんなところにやってくる、これはカスリーン台風ですが、台風は、結局3日も4日もかかって最下流のほうにやってきました。これは鉄道の上を逃げている人たちの写真ですが、この鉄道全部、当時は堤防の上にいわゆる土手を築いて電車が、汽車が走っていました。その軌道も全部水没してしまいましたので、鉄橋を渡ってこの江戸川区の人たちは市川まで逃げたそうです。
 そして、話を、八ッ場ダムの上流のこのダムのことにお話をいたしますと、私たち最下流の人間は上流のダムができることを非常に期待しています。なぜかというと、昭和22年のカスリーン台風のときに、それまでなかった流域全体で洪水調節をするということから、この赤い印がついているのがダム群でございますが、上流のほうで降った雨についてはダムでためてくださるという計画になって、中流で降った雨は途中にあるこういう遊水池、青いのが遊水池群ですが、渡良瀬遊水池とか荒川の遊水池とか、たくさんの遊水池があって、それでとめてくださる。そして、最下流のほうでは放水路をつくったり、河川そのものを改修したりという役割分担で流域全体でやれることをやって、肩寄せ合ってみんなで協力して流域全体の洪水の安全性を図ろうというふうに決まったのが、昭和22年のカスリーン台風が契機になったというふうに聞いております。
 それ以来、営々とそれぞれの地域でそれぞれの努力がなされてきて、それぞれ分担しなきゃいけない水量というのを決めて、治水事業が進められております。私たちがいる千葉県松戸も江戸川の脇におりますが、江戸川のところには上流から来る水はこういうふうに数字で役割分担を決めていただいた上で治水対策をしてきました。
 治水対策をしてきたという意味は、私たちの父や母の時代は堤防を築くのは地域の人たちでした。農閑期に地域のお百姓さんたちが直接、建設省の事業に、いわゆる出稼ぎという格好になるのかもしれませんが、雇用されて、自分たちで自分たちの堤防をつくりました。ですから、もう壊れちゃいけないということで、一生懸命、土を盛ってそういう堤防をつくってきたんです。
 八ッ場ダムがあるということを前提にこの役割分担の水量が決まっていますが、今、八ッ場ダムが突然なくなってしまうと、当然、とめてくださる水が下流に流れていきます。ですので、下流のほうはそれに合わせて、いわゆる堤防の補強ですとか、堤防がそれを受けとめられるだけの対策をとらなければなりません。
 その対策が現実にどんなふうになるかというと、江戸川の最下流の例ですが、堤防をおおむね60メートルぐらい広げないと、八ッ場ダムの水量が下流にやってきたときに受けとめられないというふうに考えられます。この60メートルの幅というのはもう現代ではほとんどたくさんの方が暮らしていらっしゃいます。その暮らしている方々に移転を求めて全部出ていってくださいということになると、大変な方々が移転をしなければならないということになってしまいます。
 下流では、明治以来、いろいろな対策をそれなりにやってきました。八ッ場ダムが決まる以前の話ですが、江戸川はこういう幅で流れておりました。私たちの地域はそこに引き堤ということで、昭和22年にカスリーン台風があって以来、この堤防を広げる努力をしてきました。この堤防をもう一度広げるというのは大変な事業になってしまいます。これは私の概算ですが、この広げる用地費と移転の補償費と、それから、その堤防の工事費だけで、全体で見ると、利根川の本川では1兆3,000億円、江戸川では7,500億円もかかる大事業になってしまいます。大変のたくさんの方々にさらなる協力を求めていかなければならないという事業になると思います。
 私は、先ほど、このカスリーン台風のあった現場で生まれたというふうに申し上げました。ここでカスリーン台風のときに亡くなった方々は約2,000人の方になります。それ から長い時間かかって、その犠牲を取り戻してきたわけですが、実は私の祖父は新潟の信 濃川の大洪水のときに、大河津分水の水防工事で命をなくしました。35歳でした。残さ れた私の母と祖母は、必死の思いで、父のないいわゆる母子家庭になった母たちはしゃに むに頑張りましたが、その無理がたたって、祖母は祖父の後を追うように亡くなってしま いました。私の母はわずか6歳で孤児になってしまいました。川は違いますが、洪水がこ ういうふうに私の母の人生を大きく変えてしまったわけです。
 命をつなぐことを必死の思いで母は頑張ってきましたが、昭和22年、再びその洪水の 現場で決壊の現場にいたという、そういう悲惨な思いを後世に絶対に次の世代にさせたくないと私の母は言っております。
 私が今現在暮らしている樋之口という場所なんですけど、これは最後に見ていただきました江戸川の引き堤という川の幅を広げる工事の際に、部落の真ん中を分断するように川が引き堤をなされました。部落は埼玉県の三郷市と江戸川区、ごめんなさい、千葉県の松戸市に結局二分されてしまいました。故郷を失った村の人たちは、しかし、これで洪水がなくなるならば、子や孫の世代に安心して米づくりができると村で話し合って、部落が2つに分かれることを承諾したそうです。治水事業とは、現在の私たちのためではなくて、まさに次の世代に対する、今を生きている私たちの責務だというふうに思います。
 洪水は全国でこれまでもたびたび繰り返されてきました。伊勢湾台風では5,000人の命が失われ、昨年の大豪雨でも広島でも74人の方々が土砂崩れの犠牲になりました。結局、私たちの住んでいる日本は大変この雨に弱い、山も急峻で平野も小さい、そういうところに肩寄せ合ってみんなで協力して安全に暮らしていかなきゃいけない、そういう場所です。特にこの吾妻川の最下流にある関東地方は全国でも有数の人口密集地帯でもありますし、また、日本の首都東京を抱える経済の大事な場所でもあります。
 もちろん、上流に住む方々が犠牲になれば、下流が安全になるというものではありません。しかし、流域全体で、上流では上流の役目としてのダム、中流では中流としての遊水池、下流では下流として、それぞれ今まで努力した成果として、この地域全体の安全性を高めなければならないのだというふうに思います。
 なぜかというと、地球温暖化はどんどん進み、気候変動はますます極端化が加速しています。前回、3月に世界防災会議という会議が国連の主催でありました。私の知っているオランダの方がその会議に参加されて、帰るときに私に話をしてくださいました。オランダではもう既に地球温暖化による海面上昇を取り入れた治水対策始めたよ、日本も早くやらないと間に合わないよというふうに言って、皆さんにそれを伝えてほしいというふうに言ってお帰りになりました。
 流域という考え方では、洪水に加えて、利水といういわゆる飲み水の確保も流域全体で調整し合っています。また、かんがい用水も今まさに荒川水系ではかんがい用水が足りない分を利根川水系から融通して、今、埼玉県の田植えが進められているという状況です。
 この昭和22年のカスリーン台風のたくさんの犠牲の命を無駄にしないためにも、もう50年もかかっているからやめちゃえということではなくて、地域全体の治水事業の完成をしていただきたいというふうに思います。この事業はほんとうに次の世代のため、今私たちが生きているために、今楽になるためにということではなくて、次の世代が安心して暮らせる地域をつくり、それを手渡しすることが私たちの責任だというふうに思います。それでなければ、私たちがここに来ている意義がないのではないかというふうに思います。
 また、土地収用ということでございますが、私はもう間もなく私自身、鬼籍に入らんという年になってしまいました。そのときに石の帽子をかぶる際に、我がしかばねと一緒に持っていけるもの以外はこれは全て共有のもの、世代を超えて不動のものであるというふうに考えます。地球全体で見れば、私たちが今いる日本というのは、諸外国との合意の上で日本という場所を使わせていただいているわけで、それが今を住む人々が争うことを防ぐための知恵として、土地収用というルールをつくったというふうに考えます。
 土地の収用は大変残念なことではありますが、土地は個人で持てるものではありません。土地は世代を超えて、地球というものが続く限り、そのときに相互に使い合うウイン・ウインの関係をつくれるルールとして、所有があったり、共産主義の国では共有というものがあったり、我が日本でも墾田永世私有法と、土地の所有形式はさまざまなことがありましたが、こういうルールは今を住む人々が争うことを防ぐ、そのための安定して土地を使い合うための知恵だというふうに思います。
 ここ、土地収用という形に至ったことは大変残念なことではありますが、地域を超え、世代を超えて安全に人々が暮らせるようにするために、残念なことではありますが、やむを得ないことだというふうに考えます
 また、この土地で暮らしてきた方々にとっての土地に対するお気持ちを考えるとき、それは大いに共感できることでもあります。大変申しわけない気持ちとあわせ、大変下流域に住む私たちとしては感謝を申し上げたいというふうに思います。ですから、手続に当た-181- っては十分なご配慮と補償をお願いするものでもあります。
 最後になりますけれども、関東地方は古くから上流域と下流域の相互の交流と助け合いが盛んな地域でありました。秩父の三峯神社というところには江戸の町々の方の感謝の石碑がたくさん建っています。こういうふうに残念な形ではありますが、収用によって犠牲になる方、土地を離れる方については十分な補償をした上で、手続については速やかに進めていただき、一日も早い流域全体の治水の安全が確保されることを希望いたします。
 本日はありがとうございました。
【議長】 ありがとうございました。
 降壇してください。
          (公述人降壇)
【議長】 これで本日予定しておりました公述は全て終了しました。
 これにて、一級河川利根川水系八ッ場ダム建設工事に関する事業認定申請に係る公聴会を終了いたします。
 公聴会の円滑な進行にご協力いただき、ありがとうございました。会場の皆様はご退場ください。
                    ―― 了 ――
********************

【市民オンブズマン群馬・この項終わり】

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八ッ場ダム建設工事に係る土地収用法に基づく6.26公聴会の模様(その7)

2015-11-03 00:48:00 | 八ッ場ダム問題
■引続いて2日目の公聴会が続きます。

【議長】 次は、高橋比呂志さんから公述をしていただきます。
 高橋さんは壇上に上がり、公述人席に着いてください。
 また、公述人からは、起業者への質問の希望がありますので、国土交通省関東地方整備局の方も、壇上に上がり、起業者席に着いてください。
          (公述人・起業者登壇)
【議長】 準備はよろしいでしょうか。準備、よろしいですか。
【公述人(高橋)】 はい。
【議長】 現在の時刻は2時36分です。ただいまから公述を開始し、30分間で終了するようお願いします。また、終了の10分前、5分前、1分前に呼び鈴で合図をするとともに、表示によりお知らせしますので、目安にしてください。
 なお、終了時間までに終了しない場合には、公述の中止を命ずることとなります。
 プロジェクターを使用しますので、少し照明を落とします。
 それでは、公述を開始してください。
【公述人(高橋)】 栃木県から来ました高橋と申します。
 まず、起業者への質問です。
 1番目、2013年11月の基本計画第4回変更によって、ダム地点の計画高水流量が3,900トンから3,000トンに変更されました。その理由は何でしょうか。
【議長】 ご回答願います。
【起業者(小宮)】 お答えいたします。利根川の基本高水の検証の際に作成した新たな流出計算モデルを用いて推計したためです。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(高橋)】 ダム地点の計画高水流量が減少したことによって、基本高水流量も減少することにならないのでしょうか。ならないとすれば、その理由は何か。
【議長】 回答願います。
【起業者(小宮)】 お答えいたします。八ッ場ダム地点の基本、すいません、八ッ場ダム地点の計画高水流量は、八ッ場ダム検証において、降雨量等のデータを点検し、利根川の基本高水の検証の際に作成した新たな流出計算モデルを用いて推計しています。ダム地点以外からの流出もあるため、ダム地点の計画高水流量が減少したからといって、八斗島の基本高水のピーク流量が減少するとは限らない、限りません。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(高橋)】 八ッ場ダムによる水位低減効果は、八斗島地点及び江戸川では何センチメートルか。
【議長】 ご回答ください。
【起業者(小宮)】 お答えいたします。過去にある洪水、実績の洪水において、流出モデルを用いて算出したモデルによる水位低下量、八斗島で約30センチです。それから、あと、江戸川についてご質問がありましたが、江戸川については治水計画を検討する上で必要性は高くないことから、算定しておりません。以上です。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(高橋)】 八ッ場ダムは八斗島地点より上流に建設する最後のダムになるのでしょうか。最後でないとすれば、ほかにどのようなダムを計画されているのか。
【議長】 回答願います。
【起業者(小宮)】 お答えいたします。八斗島上流の洪水調節施設については烏川の河道内貯水池、そういったものとかや、ダムのダム容量の再編やかさ上げ、容量振りかえ等を検討し、これでも不足する治水容量は新規の洪水調節施設で確保することとしております。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(高橋)】 そうすると、新規の洪水調節施設というのはどういうものなんですか。
【議長】 回答願います。
【起業者(小宮)】 新規の洪水施設は新規の洪水施設でございますが。
【議長】 いろんなものがありますけれども、その選択肢は、例えばダムも含めて可能性があるということなのかということだと思いますけれども。
【起業者(小宮)】 では、お答えいたします。新規の洪水施設ということでございますけれども、その前提となる不足とする治水容量、そういったものもまだ未検討でございますので、具体的にはお答えはできません。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(高橋)】 いや、不足している量ははっきりしているんじゃないんですか。まあ、いいです。
 じゃあ、河川整備基本方針で、ダムに配分された5,500トンは計画目標は達成する見込みがあるんですか。あるとそれば、その理由。
【議長】 ご回答願います。
【起業者(小宮)】 お答えいたします。利根川水系の河川整備基本方針に定めた目標流量を達成するため、具体的な整備内容につきましては、今後、河川整備計画において検討してまいります。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(高橋)】 決まってないということじゃないですか。貯留関数法や総合確率法で求めたカスリーン台風時の最大流量2万2,000トン程度と、実績、推定実績流量1万7,000トンの差5,000トンはなぜ生じるんでしょうか。
【議長】 回答願いします。
【起業者(小宮)】 まず、昭和22年9月のあのカスリーン台風において、八斗島上流の3地点において、ピーク流量付近の流量観測が行われており、この流量観測の流下時間の時間差を考慮して重ね合わせた、八斗島における最大流量の推定値、これが一千……、すいません、1万7,000トンと、毎秒1万7,000トンでございます。それになお氾濫により相当量の浸水が生じていたというときの状態の量です。利根川の基本高水の検証において、新たに構築した流出計算モデルを用いて、データの点検後の実績雨量から、全て河道を流下すると仮定し、八斗島地点におけるピーク流量を求めると、約2万1,100トン、毎秒2万1,100トンということでございます。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(高橋)】 全然答えてないですよね。5,000トンがなぜ生じるのかと、もう一回お願いします。
【議長】 ちょっと質問追加。5,000トンの差があるということについての……。
【公述人(高橋)】 4,000トンかもしれないですけども、四、五千トンですね。なぜ生じるのか、答えてないですよね。
【起業者(小宮)】 では、もう一度お答えいたしましょうか。いいですか。
【議長】 回答してください。
【起業者(小宮)】 いいですか。まず、利根川の最大流量2万2,000トンについては、観測流量の流下、八斗島上流の3地点において、観測流量を行われており、その観測 ……。
【公述人(高橋)】 ちょっと同じことを繰り返すつもりですか。同じことを繰り返すつもりですか、さっきと、さっきの答えと。
【起業者(小宮)】 内容につきましては、質問に対しては同様の答えになりますけれども。
【公述人(高橋)】 答えということですか。
【議長】 最大流量と実質流量というものがそもそも違うということでいいんですよね。
【起業者(小宮)】 簡単に言われれば、八斗島上流の3地点の流量観測のそれから推定して、重ね合わせたものの推定値と、あと、利根川の基本高水の検証において、流出モデルを用いて計算した、データ点検後のその違いでございます。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(高橋)】 だから、それ、なぜ違うのかを聞いているんですよ。全く時間を潰す気ですね。
 7番、新たな洪水調節方法による場合、八ッ場ダムに3,900トンの流量が流入した場合、洪水調節は可能か、可能だとすれば調節量はどのぐらいか。
【議長】 回答願います。
【起業者(小宮)】 まず、毎秒3,900トンが流入した場合の洪水調節というのは、計画した洪水調節どおりの操作を行えば、洪水調節は可能です。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(高橋)】 調節量も聞いていますが。
【議長】 調節量の話は。
【起業者(小宮)】 調節量の質問についてお答えいたしますが、この調節量については、洪水パターンがそれによるというか異なるため、不明でございます。
【公述人(高橋)】 不明?
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(高橋)】 3,500トン超えても、調節できるんですか。計算してないんですか、それとも。
【議長】 回答願います。
【起業者(小宮)】 よろしいですか。計画した洪水操作どおりの操作を行えば、洪水調節が可能でございます。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(高橋)】 いや、だって、200トンを超えたときから調節始め、ため込んじゃうわけでしょう。それで3,500トンまでもつんですか、ほんとに。計算したんですよね。
【議長】 回答願います。
【起業者(小宮)】 お答えいたします。洪水量については、各洪水パターン、それが異なるため、不明ということでございます。
【議長】 再度質問を、もし必要であれば、再度質問してください。
【公述人(高橋)】 ちょっと意味がわからないんだけども、時間を潰されるんで、次に行きます。
 4,600億円で完成すると断言できるんでしょうか。
【議長】 回答願います。
【起業者(土屋)】 八ッ場ダムについては早期完成に向けて取り組むとの方針のもとで、 事業全体のコスト縮減により対応することを基本として、総事業費以内での完成を目指して、最大限の努力をしてまいります。
【議長】 いいですか。公述を続けてください。
【公述人(高橋)】 努力するだけね。
 9番。時間がなくなっちゃうな。産業の開発または発展及び都市人口の増加に伴い用水 を必要とする地域は利根川流域でどこにあるでしょうか。
【議長】 回答願います。
【起業者(小宮)】 お答えいたします。利根川水系の、利根川水系の水資源の開発の基本計画でもございますけれども、それにおいては、東京都をはじめ、千葉県、埼玉、群馬、 栃木、茨城などをその対象区域としております。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(高橋)】 あれ、じゃあ、具体的に聞きますけども、2020年度以降も、20年以降も人口の増加が見込まれる都市はどこなんですか。
【議長】 回答願います。
【起業者(小宮)】 お答えいたします。いろいろ資料がありますけれども、東京都による、東京都が東京特別区の都心部の人口増、こういったものが見込まれるというようなことも書いてございます。
【議長】 都市はどこですかというお話だったので。
【起業者(小宮)】 例えばほかには千葉県柏市、成田市等については、国立社会保障・人口問題研究所等の推考によれば、人口増加が認められるという推計になってございます。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(高橋)】 ほんとうですか。柏、成田? でも、東京都は、東京都の人口は国立社会保障・人口問題研究所は2015年まで、東京都は2020年までというのが推計ですよね。
 ちょっと、じゃあ、ちょっと時間なので、言いたいことが言えなくなっちゃうんで、質問は飛ばします。
 まず、八ッ場ダムは治水面で公益性がないということを話します。
 八ッ場ダムはカスリーン台風洪水に対応ができないという問題があります。カスリーン台風、この申請書では、カスリーン台風被害が八ッ場ダム建設の大義名分として強調されております。それもそのはずで、利根川水系河川整備基本方針では、計画規模の根拠の既往最大流量とはカスリーン台風洪水であるからであります。さかのぼって、改修改訂計画もカスリーン台風洪水を受けての治水計画です。つまり、カスリーン台風洪水は利根川治水計画の原点であります。したがって、申請者がカスリーン台風洪水による被害を強調するのがある意味当然ということは言えます。
 では、カスリーン台風洪水による被害とはどんなものか。これは栃木県と、群馬県と栃木県が主な被災地であるということがわかります。これは関東1都5県の死者数をあらわしたものなんですが、合計で1,100人とされており、そのうちの944人、86%は群馬県と栃木県での死者であります。つまり、カスリーン台風洪水の再来に備えるなら、群馬県と栃木県の死者数を減らせる対策でなければならないはずです。
 では、群馬県と栃木県の被害とは何だったのか。1つには赤城山の土石流被害です。敷島村と大胡町で多大な犠牲者が出ております。また、渡良瀬川扇状地右岸での洪水被害で最大の人的被害という見出しが、『ぼうさい』という国が出している雑誌にも出ております。つまり、桐生市、足利市を流れる渡良瀬川流域で709人の犠牲者が出たということになっています。
 つまり、カスリーン台風による大規模な被害の原因は赤城山周辺の土石流と渡良瀬川の氾濫だったんですね。しかし、これらの災害が八ッ場ダムによって防ぐことはできないということは明らかであります。国も八ッ場ダムがカスリーン台風洪水に効果がないことを認めております。読み上げは省略しますが、国会答弁とか質問主意書への答弁ですね。したがって、カスリーン台風の再来に対応ができない八ッ場ダムは、利根川の治水計画の目的に沿った趣旨とは言えず、公益性がないということであります。ちなみに、じゃあ、八ッ場ダムはカスリーン台風以外の洪水なら効果があるのかといえば、嶋津さんの計算によれば、最も効果が発揮される場合であっても、八斗島で13センチしか、さっき30センチという話がありましたけども、下がらないという計算があります。
 結局、八ッ場ダムは、カスリーン台風にも洪水にも、それ以外の洪水にも効果がない。 よって、当事業には公益性がないということです。
 次に、八ッ場ダムは内水氾濫を防げないという話です。申請者は、八ッ場ダムは次のよ うな水害に対応できると言っております。これは申請書の20ページに、3つの災害は、 台風、洪水を上げております。これらの水害による、水害で、東京都は多大な被害を受け まして、東京都のホームページから次のような表を作成してみました。
 細かくて見えないと思いますが、原因を見てみますと、ほとんどが内水氾濫であります。98年の台風5号、これについても内水氾濫がほとんどです。2007年の台風9号でも内水氾濫と急傾斜地崩壊、これはいずれも原因のほとんどが内水氾濫でありまして、溢水もありますが、支川の溢水でありますから、いずれにせよ、八ッ場ダムで被害を軽減することはできないということになります。
 この八ッ場ダムで対処すべき洪水被害として、内水氾濫による被害しか申請者が上げらないことこそが、八ッ場ダムが治水上不要であり、公益性がないことの証拠であると考えます。
 次に、利根川の治水計画規模に関する記述が誤っています。申請書の9ページには、河川整備基本方針では計画する確率規模を200分の1としてという記述があります。しかしながら、飛ばしますね、工事実施基本計画、工事実施基本計画でしたか、違ったかな、1980年ですね。これ、決定方針では、200分の1の確率規模の流量は2万1,200トンですね。それで、観測史上最大流量が2万2,000トン。どっちが多いかを比べて、史上観測のほうが多いから、基本高水流量は2万2,000トンとしたというのが工実の考え方です。現在の河川整備基本方針は、その工実の考え方を踏襲しまして、それを点検した結果、工実の考え方が妥当であると判断したという考え方であります。
 したがって、利根川の計画規模であり、かつ、基本高水流量である2万2,000トンというのは、史上、観測史上最大流量であって、200分の1確率流量ではないということです。したがって「河川整備基本方針では計画する確率規模を200分の1とし」とするのは誤りであるというふうに思うんですが、ちょっとどっちなんですか。この辺、誤りだということは認められるんでしょうか。
【議長】 ご質問ということですね。
【公述人(高橋)】 はい。
【議長】 回答願います。
【起業者(小宮)】 ちょっと事前の公述のものになかったですが。
【議長】 整備計画の内容ですので。
【起業者(小宮)】 公述になかったかと思いますけれども、こういったものについては整備、利根川の水系の整備方針、そういったものには誤りという、整備計画、これには誤りはないというふうに認識しております。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(高橋)】 誤りでないというんだったら、計画規模が200分の1であるということがどこに書いてあるのか、これは今は無理だとしても、時間食っちゃうから、いつでもお答えいただけるということですね。いや、後で。
【議長】 質問の要旨にもともと出されてましたよね。出されてませんでしたっけ。200分の1か最大流量かのどちらをとったのかというようなご質問ですか。
【公述人(高橋)】 ええ。ええ。
【議長】 では、それを答えてください。
【公述人(高橋)】 いや、それは質問、出してなかったと思います。
【議長】 すいません。では、公述を続けてください。
【公述人(高橋)】 じゃあ、次に行きます。利根川の……。すいません、あと何分。
【議長】 あと12分です。
【公述人(高橋)】 12分。利根川の基本高水流量2万2,000トンは机上の空論であるという話です。理論値と実績値の差の説明がなされていません、ないということです。実際、今の説明でもなされていなかったですよね。
 つまり、2万2,000トンと1万7,000トンが5,000トンもずれる理由の説明ができなければ、2万2,000トンは破綻するということです。説明できないんですから、もう破綻しているんですね。ですから、基本方針には重大な欠陥があって、それに基づく八ッ場ダム計画も公益性がないということになります。
 5,000トンの差が説明されてないことの根拠はいろいろあるんですが、一番致命的なのは、馬淵澄夫国土交通大臣が2010年の記者会見において、2万2,000トンありきの検討を行ったと、資料もありませんということを認めたということが大きいと思います。5,000トンの差が乖離が説明されてないんですから、2万2,000トンは理論的に成り立たないということであります。
 学術会議の問題はちょっと飛ばします。
 費用対効果の計算に合理性がないという話です。2011年に関東地方整備局は八ッ場ダムの費用便益比算定というのを行いました。これ、治水についてのみですが、それは費用便益比が6.3になるというものです。ただし、計画高水流量を下回る流量についても被害が出るというのはおかしい計算じゃないかということを言われたせいか、その場合のも計算しまして、その場合は2.2にしかならないという非常に危ういことになっています。
 問題点はいろいろあるんですが、ここでは被害、想定被害額がおかしいという話で、こ の表はその資料から抜き出したもので、流量規模ごとの被害想定、想定被害額というもの をこのように掲げております。これに基づいて、年平均被害額を求めると、下表のとおり になります。言えることは、八ッ場ダムがない場合は、50分の1洪水までの年平均被害 額は4,820億円となるということです。
 ところが、2011年までの過去50年間の水害被害は累計で8,758億円、これ、5 0で割りますと、年平均で175億円になります。ということで、175億円と4,820 -146- 億円ですから、28倍もの開きがあり、国の被害は、被害想定は虚構であります。したが って、このような費用便益計算に支えられた八ッ場ダム事業に公益性はありませ。
 これ、群馬県のホームページからなんですが、既存6ダムでの治水効果は毎秒1,000トンだと、八ッ場ダムができれば600トン加えて、1,600トンのカットしかできないということがわかります。河川整備計画でも同様でありまして、1万7,000トンを目標流量として、そのうち3,000トンをダムで確保するという話ですが、それは無理です。
 それから、洪水調節効果の定義を変えるのはご都合主義じゃないかという話。国は2013年11月に計画変更をいたしました。その内容の一つが、計画、洪水調節効果の見直しなんですが、その内容は計画高水を3,900から3,000に落とし、逆に、洪水調節量を2,400から2,800に上げたということであります。
 変更前の洪水調節量の考え方なんですが、計画高水流量から計画最大流量を引いたものが洪水調節量だとしていました。ところが、変更後の洪水調節量の考え方は、計画高水流量から、計画高水量がピーク時の流量で、つまり、前のあれでは変更前は時間がずれているんですけども、これは同じ時期で判断しようという考え方を変えたんですね。それはそれで一つの考え方なのかもしれませんけども、何か急に変えたのは結局ご都合主義じゃないか、この八ッ場ダムの効果を高めるためのご都合主義じゃないかという疑いが拭えません。
 これはダムがパンクするんじゃないかという話ですね。3,500トン以上になったら、洪水調節量はゼロになるという計算もあります。
 次に、栃木県の受益者負担金の賦課は詐欺であるという話です。利根川の八ッ場ダムの治水負担金を栃木県は10億4,000万円払うことになっているんですが、利根川は栃木県を流れていません。そして、板倉町史によりますと、渡良瀬、カスリーン台風時には渡良瀬川が決壊して逆に利根川のほうに向かって流れたという記述があるんですね。それぐらいなんです。10億4,000万円の根拠がこの1枚の、たった1枚の図面なんですよね。これで足利市を中心に、栃木県の区域が24平方キロメートル、水につかるという図面なんです。これは地盤で決めたということなんですね。この図面1枚しかないから、八ッ場ダムができたら、じゃあ、どれだけ被害か軽減するのかというのはわかんない図面なんですね。
 国は、先ほど示したんですが、この2011年の費用便益比計算でもって、一応シミュ レによりますと、ここにカスリーン台風が来て、それで、利根川の左岸で決壊した場合に、栃木県に来るという想定をしているんですね。渡良瀬遊水地の西側が浸水するという図面ですね。これ、ダムなしの場合です。これがダムありの場合です。これ、戻しますと、これがダムなし、ダムありでわかんないですよね、何が違うかね。拡大して見たんですが、拡大しても同じなんですね、拡大しても。
 こんなのは、こんなので、それで、ほかのブロック、Aブロックですね、一番効果のある98年洪水で見ても、やっぱり、これはいくらか差はあるんですが、もうほんとにちょぼちょぼですね。こんなもので10億4,000万の利益を得られるはずがない。詐欺事業に公益性はないということであります。
 次に、バランスの確保ということを、申請書、事業認定申請書は言っているんですね。どういうことかというと、ほかの支流にダムがあるのに、吾妻川だけダムがないのはおかしいじゃないかという、そういうバランス論ですね。しかし、台風の多くは左巻きに渦巻きながら太平洋を北上して、雨雲は赤城山と榛名山でぶつかって豪雨になることが多くて、その山を乗り越えて吾妻渓谷に行くということは少ないんですから、別にダムがなくたっていいという理屈はあるんで、バランス論に合理性はないと思います。
 5分、あと5分ですか。八ッ場ダム、八ッ場ダムは水資源開発法があるからやるんだということを正統性の根拠にしている部分があるんですが、これは先ほども述べましたように、人口が増える地域も産業の開発が発展が見込まれる地域もありませんから、これ、立法事実が消失していまして、こんな法律にしがみついて進めること自体が誤りであります。
 次に、特定多目的ダム法があるから正しいんだということも書かれているんですが、これも国土総合開発法に起源を持つ河川総合開発とセットになって決められた法律なんですが、もうこの国土総合開発法も今ありません。名前が開発がとれちゃっていますね。これも時代錯誤ですから、こんなものの法律に根拠にすることもまた公益性がありません。
 ちょっと時間が迫っていますんで、これ、あと、東京都の水予測も過大であります。これはもう典型的な針ネズミ状態で、何度やっても過大な水需要予測しか東京都はいたしません。これ、八ッ場ダムができるまで続けるつもりだと思いますね。これもカットしますと。
 国が被害として掲げるもの、国が渇水被害の例として掲げるものなんですが、プールの利用停止とか、お風呂が使えないとか、農業用水では番水とか反復利用の強化ということなんですけれども、水が出ないときには我慢が必要であって、水の、雨が少ないときにも雨が多いときと同じだけ水を使わせてくれと言う国民がいるんでしょうかということですよね。そんなのは、いつもと同じ、渇水のときにもいつもと同じとおりに水が使いたいから、ダムをつくってくれと言う国民はいないんじゃないかと思います。
 あと、渇水の影響は昔より小さいはずだということですね。2012年度の1都6県の水需要は94年の値よりも15%も小さい。東京都にあっては20%も小さくなっているわけですから、94年渇水が再来しても、それによって需要者が受ける影響は当時よりずっと小さいはずであります。これが証拠のグラフですね。
 それと、じゃあ、ちょっと、あと、環境影響評価の問題。これはクマタカについて書いた部分が23ページ、申請書の23ページにあるんですが、本事業実施区域とその周辺での営巣が確認され、主な生息環境の一部が直接改変により消失または縮小するが、周辺には同様の環境が広く残存するため、ダム供用後は本種の生息は維持されるという予測結果を得ているということですが、これは同様の環境に見えても、生物にとって同様かどうかは容易に判断できるものではないと思いますし、また、ダムで消失または縮小する区域の周辺に、オオタカ、クマタカ等の生息に適した環境が広く存在するんであれば、そこの地域にも別の個体がその環境を縄張りとして生息しているはずであります。
 したがって、ダムで水没している地域からそこに移ろうとすれば、縄張り争いということになって、そこで勝った個体しか生き延びることはできないんで、このダムで消失または縮小する区域に生息した生物は、周辺に似た環境があればそこで生息できる、だから個体が減らないという考え方はもう基本的に誤っています。このような生物多様性を阻害する事業に公益性はありません。
 ダムで景観が改善されるという話もインチキで、ダムをつくれば水をせきとめるんですから、景観がよくなるはずはないんですね。
 じゃあ、まとめに行きます、まとめ、もう一つありますが、第4回計画変更については、 これはもう事業費が増額しないという前提で関係知事の同意を取りつけたもので、これは 特ダム法を守っているとは言えないということ、そういう瑕疵があると思います。
 まとめですが、カスリーン台風の再来に備えるという大義名分は虚構であります。近年の内水氾濫を軽減することもできない。水位低減効果は最大でも13センチに過ぎない。それから、基本高水を200分の1と誤解して、これは基本的に誤りです。計画基本高水を2万2,000トンは机上の空論であります。学術会議も第三者性がない。それから、栃木、利根川からの被害はない。栃木県への負担金は明らかに違法であります。
 水余りの時代に、水資源開発促進法、特定多目的ダム法、水資源開発基本計画に存在意義はなく、それらの適用すること自体が違法であります。
 それから、維持流量自体は東電の義務放流で解決している問題です。
 渇水被害の実態は、プールの利用とか、さっき、きのうあったんですが、高台の、何だ、取水不良とか、その程度で被害と言えるようなものではないです。暫定水利権は実態は安定水利権であり、虚構であります。
 発電も虚構、逆に発電量が減少します。
 環境影響は常識無視の誤りを犯しています。
 第4回変更計画はコスト増がないと偽って同意を得ており、重大な瑕疵があります。持続可能な水資源政策という国の方針に反しています。これはヒ素とか堆砂問題の先送りをしているという問題ですね。
 以上によりまして、国は八ッ場ダムの公益性を説明しておりません。したがって、強制収用は不可能であります。
 以上です。
【議長】 ありがとうございました。
 降壇してください。
          (公述人・起業者降壇)
【議長】 次は、備藤實さんから公述していただきます。
 備藤さんは、壇上に上がり、公述人席に着いてください。
 また、公述人からは起業者への質問の希望がありますので、国土交通省関東地方整備局の方も、壇上に上がり、起業者席に着いてください。
          (公述人・起業者登壇)
【議長】 よろしいですか。
【公述人(備藤)】 はい。
【議長】 現在の時刻は3時9分です。ただいまから公述を開始し、30分間で終了するよう、お願いいたします。また、終了の10分前、5分前、1分前に呼び鈴で合図をするとともに、表示によりお知らせしますので、目安にしてください。 なお、終了時間までに終了しない場合には、公述の中止を命ずることとなります。 それでは、公述を開始してください。
【公述人(備藤)】 最初に、議長さんはどういう立場の方なんでしょうかね。国交省の方なんですか。
【議長】 本日は議長に対し質問する場ではありませんけれども、私は事業認定、土地収用法の事業認定の所管をしている部局の者です。
【公述人(備藤)】 そうですか。なかなかいい采配を振るっているなと感心しているところです。
 それから、起業者側の方、私は備藤と申しますけれども、発言するときにお名前がわからないんで、1回だけでも結構ですから、発言者は名前を教えていただけませんか。
【議長】 公述人、時間の関係もありましたので、答弁の際に名前を言わないようにというちょっとお願いをしていましたけれども、では、答弁するときにお名前を言うということでよろしいですか。
【公述人(備藤)】 ええ。1回だけで結構ですから、メモしておきますから。じゃあ、お願いいたします。
 きのうから今日にかけて、いろんな人のお話を聞いておりますが、何かまやかしというんかな、説明をしなくていいことを、もういいですと言われても、同じような説明を繰り返して、もうちょっと時間が、私たちの時間、時は金なりという言葉がありますよね。私たちの時間が奪われているような気がするんですけど、もっと簡潔にイエスかノーを答えていただきたいと思います。余分な解説は必要ないです。
 ところで、私は一人の庶民程度の知識しかありません。おかしいことはおかしいなと思うことで、今まで学者の皆さんや知識人の方がグラフを使ったり何かして説明できても、私にはそこまでの能力はありません。普通の一般の国民の目線でお答えいただきたいと思います。
 じゃあ、これから質問します。とりあえず私が質問したい中で、4つほどあるんですけれども、その理由と意見がある程度終わった段階、1個1個ぐらいでご回答いただければありがたいと思います。
 まず、1つは、今からでも遅くはありません、ただちに工事を中止してくださいと。その理由は以下のとおりです。これらの危険性や対応について、八ッ場ダムは無駄、無理で効果がないように思いますが、国交省の考え方をお伺いします。
 質問2。私が見た埼玉県秩父のダムや、私が歩いた利根川の堤防を歩いてみたことがありますかと。
 質問の3番。ダムより堤防を強化したほうが安く対応できると思いますが、どう考えますかと。
 質問の4。住民の意見をくみ取り、強制収用などしないで、どのような対応をするのですか、お伺いします。
それで、理由と意見となると思うんですが、私はかつて長野原に5年間住んだことがあります。八ッ場ダムは私にとって今や第一のふるさとが壊されるという思いです。退職後、数年前から八ッ場ダムについて、県内、県外で学習し、テレビやビデオを見たり、新聞を読み、本を読み、現地見学や説明会や、秩父の同様な地すべりがあるダムを見学したり、バス・アンド・ハイクで利根川の堤防を歩いて、洪水を起こした場所の見学もしました。
 国交省関東地方整備局、省略して、八斗島の近くでも、実際に浮きを垂らして、どのくらいの流量があるのかというようなことも目で見ております。釣りするときに、浮きを垂らして、今これくらいだから、どれぐらいの、八ッ場ダムができたら、流量が増えるのかということを聞いてみたとき、十数センチも、八ッ場ダムがないと流量が増えるんですよというふうな答えを聞いたことがあります。それ、その時点で、利根川の堤防は数メートル余りの、今回こういうところでお聞きしますと、13センチとか、4メートルとかという発言がありましたが、大体私もそのくらいじゃないかなと思っております。
 そうすると、13センチぐらいでしたら、八ッ場ダムは1つで間に合うんですかねと聞きましたところ、あと11基というんですか、ダムの数え方はよくわかりませんけれども、10基か、10基くらい必要だと。じゃあ、一体どこに造ればいいんだろうと。群馬県にそういう土地はもうないと思います。また、予算の措置はどうするんですかと思いますが、これは後ほどお答えいただきたいと思います。
 カスリーン台風で洪水を発生させたところは、その下流の、八斗島からずっと栗橋のほうまで、バス・アンド・ハイクで見て回ったんですけれども、その洪水を起こさせたところの下流のほうに、日光東武線の橋脚に流木やごみが詰まって、それが洪水を起こした大きな原因だというふうなことを聞きました。
 また、その地点よりもちょっと上流では、堤防の下を、漏水というんですかね、利根川 の水がくぐり抜けて、埼玉県下に伏流して水が溜まっていると。先ほども映像で見ました -152- が、私が見たときにはもう少しその、何ていうんですか、水溜まりが小さくなっていまし たけれども。また、それがために、そういうことのないように工事を始めているのかなと いう感じも受けました。現在はどうなっているんでしょうか。お答えいただければありが たいと思いますが。
 それから、きのうも発言されておりましたが、赤城山の白川が氾濫して、前橋市内にまで到達したと。中央前橋駅のところでも床上浸水があったと。これはその当時住んでいた、今現在も住んでおります商店の人に聞いたんですけれども、それと八ッ場ダムと直結する話じゃないと思うんですよね。
 なぜかというと、赤城山も戦争のときに、松の根っこを抜根してガソリンに変えるということで山が荒れてしまった。それだけじゃなくて、当時、戦争ということでもって若い人が大分徴兵されていったということはご存じだろうと思います。その結果、山の手入れがあまり行き届かなくなったんじゃないかと。だから、山が荒れて木はなくなっちゃってると、あるいは、減っちゃっていると、それが主な原因で、赤城山の麓、私が現在住んでいるところから3キロか4キロもないところに洪水が起こったと。
 現在でも、前橋近辺の方ならおわかりだと思うんですけど、富士見中学校の近辺ですね。あの辺では大きな岩が、こんな大きな岩が何個もごろごろしているんです。まだ残っております。畑の中にあります。中学校をつくるに当たっては、大分その当時の人々が協力し合って整地をして、堤防もかさ上げしたんでしょうかね。その当時、私は群馬県に住んでおりませんでした。埼玉県におりましたもんですから、その間の事情はよくわかりません。ですけれども、八ッ場ダム1つ造っても、赤城山から出てきた水が、即、八ッ場ダムに影響するということは到底考えられません。
 それから、カスリーン台風の対価ということですが、先ほどもご説明があったかと思うんですけれども、八ッ場の地形から見て、台風や大雨が降る確率は非常に少ないということは先ほども映像でご承知かと思いますが、そういうことで、つくっても意味のないダムであると私は考えます。
 足尾銅山の閉山後も、あの醜い姿が今では緑豊かな山に変わってきています。あれは植林してボランティアの人たちが大勢参加して緑の山にしたんですね。私も手伝いに行きたかったんですけども、腰痛がちょっと激しくなったときだったもので、今でもそうなんですけれども、行けないのが、環境を守るということを口で言いながら、実際には体が動かせないと。ちょっと残念で仕方がありませんが、赤城山に限らず、その後、八ッ場ダムの周辺、あるいは、日本中で荒廃した山に植林して、洪水が起こらないように、あるいは、少なくなるように、私たちの先輩たち国民が、庶民が努力した結果が、洪水を起こす数を減らすとか、危険を低減させていると思います。
 カスリーン台風が来たころ、私は5歳か10歳ぐらい、あるいは、カスリーン台風の後にもたびたび来ましたが、私が住んでいた埼玉県の見沼田んぼでも、稲や野菜が冠水して被害がありました。それもこれも一応やっぱり戦時中の徴兵された若い人たちが少なくなっちゃって、農家の人も大変な苦労をしてということがまず第一番の原因だと思います。それで、その結果、山が荒れて、東武日光線の橋脚に流木やごみが溜まっちゃったというのが第2の原因で、結果と原因が全然違うんですよね。
 ですから、原因をちゃんと突きとめないで、現場に八ッ場ダムをつくればなくなると、洪水はなくなるということは到底考えられない。こんな状況なんですけれども。
 それから、東京では地下水を捨てていると、水余り現象ですよね。何度もここでもってほかの人が説明されておりますけれども、その地下水を捨てていると。上野駅では地下水が上昇してきているもんですから、駅そのものが浮き上がっちゃって、それをアンカーボルトでとめているという新聞記事とかテレビニュースなんかで見ております。そんな水余り現象の中で、さらに八ッ場ダムをつくるというのは到底理解しがたいというのが庶民の心です。こんな無駄なことは止めてほしいと思います。
 つまり、ここにも書いてありますが、都市の洪水対策のダムを造る理由が無くなったんです。その結果、重要な遺跡も埋没してしまいます。ダムを造った下久保ダムの下流のような状態、水量が減って、それで、雑木、雑草が生い茂り、三波石なんかが見えにくくなっちゃっていると、無残な姿。あるいは、草木ダムではアオコが発生して、それを飲用としている下流の人、渡良瀬川の下流の人たちは水道水として利用しておりますと。これはちょっと八ッ場とは関係ない話かもしれませんけど。
 以上、ここまででお答えしていただきたいと思います。
【議長】 ちょっと整理させていただきますと、まず最初のご質問が、十数センチの効果だとすると、八ッ場ダムみたいなものが11基ぐらい要るんじゃないかという……。
【公述人(備藤)】 10基ぐらいで。
【議長】 10基ぐらい要るんじゃないかというご質問についての、というご質問ということでいいですか。
【公述人(備藤)】 どこへ造るんですか、できるんですか、そういう場所があるんですかと。
【議長】 どこにつくる。はい。もともとのご質問からいくと、直ちに工事を中止してくださいというものに関連してのご質問かと思いますけれども、それについてお答えしていただけますでしょうか。
【起業者(小宮)】 八ッ場ダム工事事務所の……。
【公述人(備藤)】 ヤマダさんですか。
【起業者(小宮)】 いや、八ッ場ダム工事事務所の小宮と申します。
【公述人(備藤)】 コミヤマさんですか。
【起業者(小宮)】 小宮と申します。小宮と申します。
【公述人(備藤)】 小宮さんですか。
【起業者(小宮)】 はい。よろしくお願いします。
【公述人(備藤)】 失礼しました。小宮さんですね。
【起業者(小宮)】 はい。よろしくお願いします。
【公述人(備藤)】 どうしても耳がちょっと複雑になっちゃって、聞き取れなくてごめんなさい。失礼しました。はい。お願いします。
【起業者(小宮)】 まず、ちょっと今、まず、その10基でしたっけ、11基でしたっけ。
【公述人(備藤)】 10基と私は聞いております。
【起業者(小宮)】 ちょっと事前の図、ご質問ということでは、その具体的なものはなかったと思うのでございますけれども、利根川の基本方針、整備計画等ありますけれども、それに従いまして、今後、必要が、ちょっとお待ちくださいね。新規の洪水調節、ちょっと専門的になって申しわけありませんけれども、八斗島上流の洪水施設というふうになりますけれども、烏川とか、あと、そういったもののダムの再編で容量を再編し、これらでも不足する場合には、新規の洪水施設で確保するというようなことになりますけれども、具体的な方針につきましてはまだ検討中というようなことで、具体的にお答えすることはできません。
【公述人(備藤)】 でも、簡単なことだと思うんですよ。十数センチということはきのうから言われていますよね、流量が増えるの。しかし、ゆとり分が4メートル分もあると。そういう状況の中で、あと10基というのは、普通の人が庶民が考えたって、あなたが答えられない内容のことをあなたに提起しているわけじゃないんですよね。普通の感覚なら-155- ば、あるとかないとか、造れるとか造れないということは簡単に答えられるんじゃないで すか。
【議長】 ご質問ということで。
【公述人(備藤)】 ええ。
【議長】 長期計画、基本方針と整備計画という関係もあるのかもしれませんので、今のなかなか質問で、あるか、ないかという答えはなかなかしにくいのかもしれませんけども、そこのあたり、もう少し長期的な計画と河川整備計画との関係ということをお答えいただくのかなと思いますけれども。
【起業者(土屋)】 土屋と申します。
【公述人(備藤)】 土屋さんですか。
【起業者(土屋)】 はい、そうです。先ほど、10基ぐらいというふうなお話がありましたけれども、10基について、この当時、誰がどのような根拠で申したかというのが… …。
【公述人(備藤)】 よく聞き取れなくてごめんなさい。
【起業者(土屋)】 10基ということについて、この当時、誰がどのような根拠で言ったかというのは、ちょっと私ども、不明ですので、この10基ということについてはわからないというところでございます。ただし、利根川につきましては、利根川整備方針と利根川整備計画がございますので、その計画に沿って安全に、国民の生命財産を守れるように適切に対応していきたいというところで、この10基ということについてはちょっとここではわからないということでございます。
【公述人(備藤)】 そうですか。
【起業者(土屋)】 はい。
【公述人(備藤)】 それでは、前橋の洪水ですね。赤城山から来た氾濫ということは、利根川に直結しないと、八ッ場ダムを造れば、それでとめられるものじゃないということは理解できますか。イエスかノーで答えてください。
【議長】 もともとのご質問の要旨にない点ではありますけれども、質問の趣旨はわかりました?
【起業者(小宮)】 ちょっと申しわけない。ちょっとよくわからなかったんで、申しわけありません。失礼なんですが。
【議長】 前橋の。すいません、もう一度。
【公述人(備藤)】 赤城山の白川が氾濫して、前橋のほうまで洪水が起きたと。いろんな人が、もう前橋市民なら、旧市民ならほとんどの人が知っていることですよね。その場所、赤城山ですよね。八ッ場ダムというのは吾妻郡ですよね。ですから、それが利根川とどういうふうに、八ッ場ダムをつくることによって、赤城の氾濫が抑えられるかどうかということです。
【議長】 ご趣旨は、吾妻のほうと赤城山のほうは場所が違うので、赤城山の前あったような洪水については、八ッ場ダムができても防げないのではないかというご趣旨だと思います。ご回答願います。
【起業者(小宮)】 お答えいたします。八ッ場ダムにつきましては吾妻川から下流の、それと、あと、利根川の下流域の洪水を防御をする施設でございますので、その赤城山というのは別の流域かと思いますけれども、そういったところの洪水を防御するという施設ではございません。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(備藤)】 理解できないですね。赤城山から出た洪水と八ッ場ダムでそれをとめることができるというふうに、きのうの……。
【議長】 今、できませんというお答えだった。
【公述人(備藤)】 できませんと答えたと。
【議長】 はい。
【公述人(備藤)】 答えができないという意味ですか。
【議長】 はい。できないというお答えだったと思います。
【公述人(備藤)】 そうですか。それ、できないということは、できるようになったら、教えてください。そのときで結構ですから。
 あとは、私は次の世代が背負う負担をよく考えてもらいたいと。私が国交省に提出したときは1,000兆円は、その後の新聞の記事によりますと、国の借金が1,232兆円、今日ではおそらくもう何兆円も増えていることかと思うんですけれども、これだけの借金は誰が負担し、どういうふうに払ったらいいんですかね。
 八ッ場ダムのことを止めれば、何千億円か、1兆円ぐらいは浮いてくるかと思うんですけれどもね。そういうものを、教育とか福祉とか、あるいは、水道料金に転嫁させるものを少なくできると思うんです。その点、お答えいただきたいと思います。
【議長】 国の財政全般のことにお答えしてくださいというのもなかなか難しいかもし-157- れませんけれども、予算を通じて、つくる、八ッ場ダムをつくる意味があるのかというご 質問としてお答えいただければと思います。
【起業者(小宮)】 お答えいたします。ちょっと今、議長から申されましたように、ちょっと国の全体予算についてお答えする立場ではございませんが、八ッ場ダムについて、そういったかかる予算については適切に執行していくという所存でございます。
【議長】 そういう必要がある事業ということですか。
【起業者(小宮)】 そうです。はい。
【議長】 では、すみません、公述を続けてください。
【公述人(備藤)】 ちょっと納得しがたいんですけどね。財務省の方じゃないから、直接は、その1,000兆円、1,232兆円ということについてはお答えしにくいのかもしれませんけれども、これ以上借金は重ねないように、国交省のほうでもいろんなことで努力してほしいという願いからです。
 じゃあ、その次に行きます。国交省では、奇想天外な前提を提出していると。八ッ場ダムで、当初は治水のためということで八ッ場ダムは計画されたと思うんですけども、その点はいかがですか。
【議長】 これも要旨にはありませんけれども、もともと八ッ場ダムは治水目的で計画されたダムですかというご質問。
【起業者(小宮)】 おっしゃるとおり、八ッ場ダムにつきましては、利根川の治水の施設として、治水の必要な施設としてつくって、計画、建設していく事業でございます。
【公述人(備藤)】 簡単に答えてください。時間がもったいないですよ。私の時間が、時は金なりです。よくかみしめていただきたいと思います。
 それから、造成地や、八ッ場ダム、できてほしくないんですけどね。残された人たちのためには、しっかりした安心して暮らせるような対応は国交省としてもとってほしいと思うんです。この点についてお伺いします。
【議長】 これも要旨にはございませんけれども、多分、安心して暮らせるような対策ということだと思いますけれども、起業者側から。
【起業者(土屋)】 八ッ場ダムの建設に伴いまして、地すべりの発生とかそういうものがないように安全な措置を講じていきますし、ダム建設に伴って環境に影響を与える場合は、それなり、それぞれの措置をとってまいります。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(備藤)】 解りました。それでは、最初のころに質問していました秩父のダムとかで、これ、地すべりで大変ですよ。大きな井戸を掘って集水して、それを地すべりしないようにダムのほうに水を流しております。それから、私が歩いて、私たちが歩いてきた利根川の堤防なんかは、歩いてその現場を見たことがありますか。
【議長】 ご質問の、歩かれたところがどこかというのがちょっとよくわからない部分があるんですけれども。秩父のダムとか、利根川の堤防の状況を見たことがあるのかというご質問かと思います。
【起業者(土屋)】 お答えします。秩父のダムというのはちょっとどこかわからないんですけれども、秩父市内にある二瀬ダムにつきましては関東地方整備局が管理しております。
【公述人(備藤)】 今も地すべりが続いているようですね。たしかダムの名前が滝沢ダムと二瀬ダムだったでしょうかね、私たちが見てきたのは。そこでは大きな工事をして、維持費も大変かかっているそうです。そのようなことが八ッ場にも起こるんじゃないかということでお尋ねしているんですけれども。
【議長】 これも要旨にありませんけれども、秩父の2ダムと同じような地すべりが、秩父の2ダムが地すべりが起こったかどうか、了知していないんですけれども、それと同じような地すべりが八ッ場ダムでも起こる危険性はないのかというご質問だと思います。
【起業者(土屋)】 地すべり対策につきましては、試験湛水前に必要な対策を講じるという予定でございます。
【議長】 続けてください。
【公述人(備藤)】 実際、工事の途中で早い段階で、旧の川原湯温泉駅前に地崩れしましたよね、地すべり。国交省の事務所も腰ぐらいまで土砂が来て、国道やJRの旧の温泉駅もとまっちゃいましたよね、止まっちゃった、列車が止まっちゃってた。トラックも通行できなくなっちゃった。そういうような工事があったわけですよね。今後ともそういうふうな崖崩れが起きないとは限らない。ほかにもそういう箇所がありますよね。時間がないので、その点は省略しますけれども、十分な対策をとってほしいと思います。お答えください。
【議長】 ちょっと重ねてのご質問ですが、今のご質問、突き詰めると、ちゃんとしたほんとに地盤対策をとってくれるのかということかと思いますけれども、お答えいただけますか。
【起業者(土屋)】 地すべり、それから、土石流対策等につきまして、ダムに影響を与えないように、地域住民の方に迷惑をかけないように、対策を講じてまいります。
【公述人(備藤)】 そうですか。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(備藤)】 それでは、やはりこういうことを考えると、安心して暮らせるためには、ダムは即刻中止することです。これ以上もう金かけないでくれとの思いです。お答えされなくても結構です。
 それから、2月8日幾つかの新聞の見出しだけ紹介しておきます。東京新聞は、ダム想定、これですが、全国の4分の1、「八ッ場は本体着工、大丈夫。」それから、「近隣ダム85%埋まった。国の堆砂見込み、疑問」と。「上流に火山があり、土地が流入しやすいと、土砂が流入しやすい」と。同日の朝日新聞では、「移転代替地などの工事現場で環境を超える有害物質が検出された問題が判明した」と。同日、上毛新聞には「道路下の変質原因、安全性に問題なし」と。「八ッ場ダム、バイパス段差や亀裂については県は道路下の変質が原因した」と。鉄鋼スラグのせいじゃないと言わんばかりの見出しだったと思います。道路や構築物には鉄鋼スラグは使用されています。鉄鋼スラグには有毒なヒ素や六価クロムが含まれていると。
 この件について、東京だったでしょうね、六価クロムだったと思いますけども、鼻中隔穿孔で問題になったことがありますよね。あなた方は生まれてなかったかな。そのくらい前ですけどね。大きい記事として新聞に載りましたよ。このごろやってないけども。ですけど、そういった工場跡地とか何かであちこちでもってそういう問題が起きていますよね。
 こういうことについてはもうほかの方が質問し、答えられているから、お答えはいいと思いますけれども、そういう問題があるということをしっかり把握してください。お願いします。
 そして、上毛新聞の後か、地すべり対策について、従来の3カ所に加え、新たに8カ所ですかね。それから、沼田市民や、はい、同新聞社の読者の声として「風光明媚な八ッ場ダムを残して、幻のダム計画に怒り。15歳のY君は、沼田ダムのことについて沼田市民や群馬県の反対により計画が中止されたということを、この話を聞いたとき、怒りを覚えた」と。15歳の少年がですよ。そして、今までにもダムが中止になったのは県内でも倉渕ダム、増田川ダムもつい最近、中止になりましたよね。八ッ場ダムも今こそ即刻中止すべきだと思います。この点についてはどうですか。即刻中止できますか。
【議長】 回答願います。
【起業者(小宮)】 お答えいたします。八ッ場ダムは治水、利水に必要な事業と考えておりますので、継続していくことが妥当と認識しております。
【公述人(備藤)】 あなたは必要だと考えているんですね。国交省の考えで、私は無理で無駄で、ダムの基底というんですかね、あそこの地質が悪いと、地層も悪いと、脆弱な土地だということを考えたら、とてもじゃないけど、ああいうところにダムはつくれないと、造っても無駄だと。多くの学者や専門家、特に専門家というのはお雇い専門家みたいなので、政府の言いなりになるような人だけが集まっているような気がします。
【議長】 時間になりましたので、まとめていただければ。
【公述人(備藤)】 大体私が主張したいことは以上でございます。それを踏まえて、最初の質問なんかで、そうですね、住民の意見をくみ取りながら、強制収用などすぐ実行しないでほしいと。安心して暮らせるように、そのためにはやっぱり即刻中止するしかないと思うんですけどね。何かほかに方法ありますか。
【議長】 ご主張としてお伺いしましたので。では、公述をもう終えていただけますでしょうか。
【公述人(備藤)】 今の、お答えいただいてないんですけども。
【議長】 今のはもう、大分時間が過ぎておりますので、すいません、もう私からまとめてくださいと言った後での質問でしたので、ご遠慮願います。では……。
【公述人(備藤)】 それは残念ですね。
【議長】 すいません、ありがとうございました。 では、降壇願います。
【公述人(備藤)】 ありがとうございました。
          (公述人・起業者降壇)
【議長】 それでは、16時ちょうどまでの間、休憩といたします。
          ( 休 憩 )

【市民オンブズマン群馬・この項続く】

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八ッ場ダム建設工事に係る土地収用法に基づく6.26公聴会の模様(その6)

2015-11-03 00:08:00 | 八ッ場ダム問題
■続いて2日目の午後の公聴会の模様です。午後の部の3番目が当会の代表の公述です。

【議長】 それでは、公聴会を再開します。
 次は、八ッ場ダムをストップさせる千葉の会、中村春子さん、村越啓雄さん、武笠紀子さんから公述をしていただきます。
 中村さん、村越さん、武笠さんは、壇上に上がり、公述人席に着いてください。
          (公述人登壇)
【議長】 準備はよろしいでしょうか。
【公述人(武笠)】 はい。
【公述人(村越)】 はい。
【公述人(中村)】 はい。
【議長】 現在の時刻は12時45分です。ただいまから公述を開始し、30分間で終了するようお願いいたします。また、終了の10分前、5分前、1分前に呼び鈴で合図をするとともに、表示によりお知らせしますので、目安にしてください。
 なお、終了時間までに終了しない場合には、公述の中止を命ずることとなります。
 それでは、公述を開始してください。
【公述人(中村)】 皆様、こんにちは。私は千葉県の八ッ場ダムをストップさせる千葉の会の中村春子でございます。本日は、この場をおかりして、私たちの思いを十分申し上げ、聞いていただきたいと思って今日は参りました。
 私は八ッ場ダムが流域住民にとって真に必要な事業であるのか疑問を感じてから、既に20年がたちました。この間、八ッ場ダムは利水面においても、治水面においても、必要性を失っているばかりか、かけがえのない自然を壊し、災害誘発をつくり出すダムであることもわかってきました。また、次の世代に巨大な負の遺産を残し、問題を先送りする、つくってはならないダムであることも明白になっています。
 八ッ場ダム建設の目的の一つである水道の給水量は最近20年間減少の一途をたどっており、その減少量は全体で八ッ場ダムの開発水量の1.5倍以上になっています。首都圏の工業用水も減り続けています。
 千葉県においては、八ッ場ダムに参加する目的の一つに、今よりさらなる水需要の増加に備えて水利権を確保するためであるとしています。しかし、現在、千葉県内の県水道局をはじめとする6つの水道事業体では、現在、使われていない未利用水、未売水が最大毎秒1,238立方メートル、日量換算で約10万7,000立方メートルもあります。
 その一方で、千葉県は、八ッ場ダムに参加することで新規に毎秒2,135立方メートル、日量換算で20万3,000立方メートルとなり、そのほかに思川開発、霞ヶ浦導水路を加えると、日量33万立方メートル増になります。1日に33万立方メートルの水がお金とともに流れ去っていくのです。
 千葉県は人口増に伴って、水需要も増えると水源開発を進めてきましたが、今年度、平成27年度の人口625万という前提が、26年度で既に619万2,000人と620万を切っています。右肩上がりの県の予測は架空のものであると言っても過言ではありません。
 千葉県総合計画での人口推計は、ダム完成時を早くて平成30年としても、そのときは人口のピークはとうに過ぎており、八ッ場ダムは利水上も必要性を失っています。千葉県県営水道の水需要は今後減少していくのは明らかでありますから、現在の保有水源のままで十分に余裕があります。あくまで右肩上がりの予測は実績と多く乖離しています。1人1日最大給水量は1990年代後半から現在までに20%も減少しています。また、国は20年に2回ある渇水年に対応できるようにする必要があるとして、これら水需要、水の予測を大きくしていますが、この水需要が伸びなくなったので、建設の理由を新たにいろいろつくり出しています。このように、無理に用途をつくり出して無駄な公共事業に巨額の税金を投入することは断じて許せません。
 次に、利根川下流域にある千葉県での八ッ場ダムによる治水効果について述べていきたいと思います。
 八ッ場ダム構想の始まりは、1947年のカスリーン台風洪水にありますが、利根川はカスリーン台風後に河川改修が進められ、現在は洪水時の越流はなくなり、その後の大雨でも堤防よりはるか下を流れるようになっています。
 2015年5月に策定した利根川河川整備計画は過大な洪水流量を設定し、八ッ場ダムを強引に位置づけました。しかし、利根川における八ッ場ダムの治水効果は最も効果のある場所でも数センチの水位低下しかありません。したがって、利根川の治水対策として、八ッ場ダムはいかほどの意味もないものと言えます。カスリーン台風時にたとえ八ッ場ダムがあったとしても、この地域の雨量は少なく、その効果はゼロであったことを、国交省のデータでも明らかにしています。
 今、国の借金が1,000兆円を上回るのに、今年度の予算は、国の予算は54兆円余りの税収に対し、歳出が96兆円も超え、なお借金を重ねています。私たちがこの間見てきた八ッ場ダムに関連する種々の事業を行うのに当たっても、不必要な事業に湯水のように予算を充てていることが、国民である私たちによく見えてきました。
 人口減少が明らかな今、無駄な公共事業にお金を捨てるがごとく平気で使うこの状態に、国にかかわる人たちはいかほどの心も痛まないのでしょうか。ぜひ現実を直視し、無駄な八ッ場ダム建設はやめてください。
 以上で終わります。
【公述人(武笠)】 続きまして、八ッ場ダムをストップさせる千葉の会、武笠紀子です。私は、利根川下流域、千葉県の住民として、八ッ場ダムは要らない、建設はやめるべきである、まして、強制収用はやめるべきであるという立場で意見を述べます。
 八ッ場ダム計画が始まった昭和27年は私が生まれた翌年に当たります。私は今年で64歳になりましたが、八ッ場ダム計画もほぼ同じ年月を経過したことになります。私が育った時代、そして、八ッ場ダム計画が浮上したあの時代は、日本は戦後の目覚ましい経済成長期にあり、物質の力、科学の力、技術の力が信じられていました。そして、多くの国民が、あしたは今日よりよくなる、来年は今年より経済が発展し、自分の暮らしもよくなると信じて頑張っていたのです。そこには日本全体の経済成長のためには一部の人々の犠牲もやむを得ないという考え方が主流にあって、強制収用を伴いながら、大型公共事業がどんどん進められていきました。
 ご存じのように、千葉県において、何度もの強制収用を行って進められた大型公共事業として成田空港建設があります。今でこそ成田空港と呼ばれていますが、当時は千葉県につくるのに、新東京国際空港と言われていたものです。この新東京国際空港の建設に当たっては、人命を伴う多くの犠牲が出ています。そして、半世紀を経た今でも反対運動が続いていて、滑走路の増設が計画どおりに進まない状況です。この空港反対運動には過激派と言われる学生運動家が加わったりして、成田闘争とも呼ばれています。
 そのせいで、国と住民とのまともな話し合いが行われず、問題が長期化したと言われたりしますが、空港計画の閣議決定までの経過を見る限り、関係住民に対するやり方はとてもひどいものです。戦後の入植でようやく手に入れて、汗水垂らして豊かにした農地を、国家の都合で奪われまいとする必死な農家の人々の気持ちを思い、応援する人たちも多くいました。しかし、その後のさまざまな事情から、そうした人たちがだんだん手を引いていき、最後には過激なグループに頼らざるを得なかった成田空港現地の人々の選択を私は非難することはできないと思っています。
 この成田空港問題ほど大きな問題ではないにしても、大型公共事業をとめること、大型公共事業に反対することは極めて困難です。千葉県からの八ッ場ダム建設事業へ無駄な支出をとめようと活動を始めて20年ほどのさまざまな私たちの活動で痛いほど感じています。そして、私たちは、この間の八ッ場ダム事業についてのさまざまな学習会、見学会において、この八ッ場ダム計画が起こった当時には、八ッ場ダム現地での反対運動が大変激しいものであったことを知ることになりました。
 しかし、当時は、高度成長、経済発展という言葉に踊らされていた私たちは、八ッ場ダム現地での反対運動に関心を寄せることはありませんでした。一部でダム問題が報道されていたとは思いますが、日本の経済発展のためにはダムは必要なものだと思い込んでいたためです。この八ッ場ダム現地だけではなく、全国各地でダム事業や埋め立て事業、高速道路や新幹線建設、そして、原子力発電所の建設に反対して活動していた多くの現地の人々のことを思うと、ほんとうに申しわけない思いでいっぱいです。
 そして、おくればせながら、私たちがこの八ッ場ダム問題に気がついたのは、高度成長が終わり、バブルもはじけて、国にも県にも多額の借金が積み上がったときです。しかし、時既に遅し。現地では長年の反対運動が実らぬまま、国や県からのダム建設という大型公共事業へのなみなみならぬ圧力を受けて、反対運動を終わらせ、条件つきで国または県との間でダム建設に向けて協定が結ばれていました。
 私たち首都圏にある千葉県はほかの地域より水とエネルギーの供給を受けています。あの4年前の東日本大震災により、苛酷事故を起こし、今でも12万人の人々が避難している福島第1原子力発電所事故、まさに千葉県を含む首都圏に電気を送るために、東北地方の福島県に建設された極めて危険な施設でした。私たちの便利で快適な電化生活が福島の人たちの犠牲の上に成り立っていたことを実感したのです。それまでは、国や電力会社が言うままに、多分大丈夫だろうと思っていたのが悔やまれます。
 同じことがダムにも言えます。これまでに、ダム建設現地の皆さんの先祖代々の穏やかな暮らしを犠牲にして、多くのダムがつくられてきました。千葉県に流れてくる利根川流域には、国の政策でつくられた8つのダムと、それぞれの県の政策でつくられた幾つものダムがあります。下流域の利水と治水のために次々とつくられてきたものです。
 しかし、既に多くの陳述の中にありましたように、利水上も治水上もこれ以上のダムは要らないという時代が来ています。現に数年前に群馬県議会で参考人として意見を述べられた河川の専門家も、ここまで進んできた八ッ場ダム建設に反対はしないが、これ以上のダム建設は必要ないという意見を述べているのです。
 コンクリートでできているとはいえ、ダムにも寿命があります。最初のダム建設から半世紀以上たち、取り壊されるダムも出ています。今後は老朽化や大地震によってダムが崩壊した場合の下流域、私たち千葉県など下流域の被害を想定した防災計画も策定しなければならない時期に入っています。
 このまま建設が進んでも、当初の計画から既に70年もたとうとしている八ッ場ダムです。このダムが果たすべきであった役割は時代とともに既に終わっています。おくれて来たダム建設は下流域の私たち千葉県民に多大な財政負担をもたらし、八ッ場ダム現地の皆さんには、ひとたび失われてしまえば二度と戻らない、すばらしい吾妻渓谷の景観と自然、そして、遺跡と川原湯温泉という貴重な資源の損失をもたらします。
 今重要なことは強制収用を行って強引にダム建設に進むことではありません。吾妻渓谷と川原湯温泉が残っている今ならまだ間に合うのです。八ッ場ダム現地の未来に向けたまちづくりと、ダム建設計画のために犠牲となってこられた人々の暮らしを、どのように建て直していくかということが重要です。
 ダム建設のために、既に終わっているインフラの整備は、今後、八ッ場が観光地として発展していくために役に立つものです。そして、今回のダム建設計画でご迷惑をかけた現地と、そして、関係する住民の方々には、国と群馬県を含む流域の自治体が連携して、きちんとした補償をしていくことだと思います。私たちはそのための千葉県からの支出には積極的に賛成していきたいと考えています。
 このまま進んでいけば決してよい結果を生まないことは明らかです。多分大丈夫だろうは、福島原発事故でもうこりごりです。下流域の住民にも現地の住民にもリスクや負担を与えるこの八ッ場ダム建設のための強制収用は絶対やめてください。
 以上です。
【公述人(村越)】 八ッ場ダムをストップさせる千葉の会、村越啓雄です。私たちは八ッ場ダム事業の中止を主張している市民団体です。八ッ場ダム事業に反対し、土地収用法を適用することに反対する立場で公述します。
 まず、土地収用法の適用についてです。土地収用法については千葉県民にとって大きな傷跡が残されています。海外に渡航する人たちのほとんどは成田の東京国際空港を利用し、その人数は3,000万人に及んでいます。先ほどの公述人からもありましたが、この成田空港の成り立ちについて、厳しい反対運動が提起されてきたことは皆さんご案内のとおりです。千葉県の内陸部にある農地を基本にして、御料牧場など1,000ヘクタールの用地を政府はある日突然に閣議決定し、用地指定して、農民の生活を奪おうとした計画だったのです。
 政府は地元から合意を得るどころか、事前説明すら怠り、代替地等の諸準備が一切なされていなかったことから、農民を中心とした地元住民の猛反発を招きました。政府は閣議決定であることを盾にして、一切の交渉行為を行わなかったために、地元農民たちによる三里塚闘争が始まったものです。農民たちには、戦後、入植して農民となった人が多く、そうした入植者は元満蒙開拓団員の引揚者が主体となっており、農民としての再起をかけて行ってきた開拓がようやく軌道に乗り始めた時期に当たっていたのです。
 引揚者の中には赤紙1枚で招集されて死地をさまよい、やっと平和な暮らしが成り立ってきたところ、再度、一片の通知をもって土地を強制収用されるという苛酷な運命にさら された人たちも出てきました。その反対運動の結果が多くの死者まで生じさせ、また、一農民に対する行政代執行の様子は、その激しい様子には改めて強い衝撃を与えました。
 成田空港問題シンポジウムの席上、建設当事者の松井新国際空港公団総裁は、当時はもうこれは戦争でしてと述べたと報道されています。これらの紛争の様子は日々、報道で伝えられ、また、県民の生活にも、千葉県に空港警備組織が新たに誕生し、駅や繁華街での警備の強化、県庁内も機動隊が常駐し、県議会の傍聴の際には金属探知機が使用されて、今日まで続いているという後遺症が残されています。土地収用法を適用する案件はいかに時間のかかる困難な道であっても、民主主義社会の成熟を遂げていくためには、成田の教訓を生かしていかねばなりません。
 八ッ場ダム事業に国は事業の遂行に必要な努力をどこまで実行してきたのだろうか、この疑問は国交省が八ッ場ダム建設工事の事業認定申請の説明会を長野原町の体育館「若人の館」で開いた際に、600席が用意されていたものの、参加地権者はわずか20名ほどでした。これで国交省は必要な努力を行った、この状況で土地収用法の適用条件が整ったと言えるのでしょうか。これを整理した上で、法の適用を検討するべきですが、拙速を避け、十分な調整作業を行うことが必要です。何せ20年も完成を延期してきたのですから、緊急性は全くないことは国交省がみずから示しているのです。
 さらには、八ッ場ダム建設工事の土地収用手続は反対の意思表示をしている地権者の土地を除くべきです。そして、反対の地権者には決して強制収用などの強権力の行使は用いないでください。成田での惨事を見てきた千葉県民は、強制収用によっての八ッ場ダムの利水などは全く望んではおりません。
 次に、千葉県の環境から八ッ場ダムは要らないについて述べます。千葉県水道事業には東日本大震災の影響が残されています。2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震と、それに伴って発生した津波では、千葉県も地震及び津波による大きな被害を受け、まだ完全復旧してはいません。被害の状況は人的被害は死者20名、建物被害は全壊799棟、半壊1万24棟、ライフラインの水道は断水が17万7,254戸、減水が合計12万9,000戸、激しい地盤の液状化などにより被害が生じた浦安市では、今川地区については仮配管により対応していますが、一部顧客の敷地内に埋設されている給水管では未復旧箇所があるとの報告です。
 次に、千葉県水道の問題を解消することが急務です。県内水道料金の格差是正、それに、設備の老朽化対策、それに、人口減少による収益力の低下、そして、近い将来想定される東南海沖地震による被災復旧への準備等の問題を抱えています。千葉県が八ッ場ダム事業に参加し続けるには、これらの諸問題を解決していかなければならないのです。
 まず、千葉県内水道の料金格差の問題をご紹介します。千葉県内の水道供給事業は6事業者区域に分かれており、供給を受ける各市町村の水道事業体により水道料金が異なります。中核となる千葉県水道局事業体は1立米当たり132円です。房総半島の先端の勝浦市水道では264円55銭であり、その格差は2.0倍です。一方、安いほうでは千葉市に隣接している八千代市水道は88円55銭です。八千代市と勝浦市水道を比較すると、格差は2.99倍となっています。
 この格差を解消するため、千葉県は全県的な補助金の交付を実施してきました。これは平成25年度では22億円で、昭和52年度からの累計で約1,097億円にも達しています。また、各市町村でも一般会計から繰出金を行い、これにより給水原価を合わせて60円立米の引き下げを行っていますが、なおこの格差が残されています。これを解消するには、用水供給原価の引き下げ、すなわち、必要のない無駄な八ッ場ダム事業への参加を取りやめることが第一歩なのです。
 次に、設備の老朽化対策です。水道施設の老朽化が懸念されています。千葉県中期計画によりますと、施設整備費として1,391億円を計画し、財源は減価償却費の内部留保資金、企業債等で補塡するとしています。この結果、企業債残高は1,851億円としています。老朽化対策は、道路、河川管理施設、公園、農業水利施設、漁港など、千葉県のインフラ施設の全域に及ぶもので、基本計画によると、計画の策定を進めることとしていると具体策を打ち出し得ていない現状です。
 次に、人口減少による収益力の低下です。千葉県の人口減少、少子化への対応は県政の基本政策となっており、地域により前後の動向はあるものの、着実に到来するもので、水道事業においては収益の減少につながる問題です。ところが、千葉県の水道事業体は給水人口の減少に目をそむけている現状です。
 しかし、水道事業体の経営状況を見てみますと、収益は平成19年度より減少傾向を続け、千葉県内水道事業体の黒字事業体は39事業体から、平成25年度には30事業体に、赤字事業体は7事業体から11事業体に増加し、赤字額は平成25年度において436億円、累積欠損金は2,673億円に達しています。これには一般会計からの繰入金42億円、国庫補助金28億円が含まれていますが、人口減対策は含まれていないので、赤字事業体は増加していきます。
 次に、東南海沖地震による被災復旧への対応策です。千葉県財政計画には、近い将来、6年以内に30%の確率で発生すると予測されている東南海沖地震に対する被害の復旧対策が計画されていません。水道管路などの耐震対策が年々対策され、普及度は向上しているものの、先の東日本大震災を上回る被害の発生が懸念されている中、これに対応する財政措置を全く講じられていないのが現状です。
 八ッ場ダムの完成時期は今までに3回延期されましたが、さらなる遅延は避けられない状況にあります。完成時期がおくれることは、工事期間が長引くのみではなく、経費の増大が伴いますし、何より、供用の開始がおくれることを意味します。
 完成時期がおくれる要因として、地すべりの可能性が最も懸念されています。国交省は昨秋、追加地すべり対策及び代替地の安全対策のための追加費用等として183億円の増額を公表しましたが、下流都県の強い反発で表面的には取り下げましたが、国交省は地すべりの可能性を認めているわけです。
 次に、千葉県の利水、治水の負担額は八ッ場ダム事業だけで458億円、水源地域対策2事業を含めると、起債利息を除いて520億円、起債利息を含めると780億円の巨額に上り、今後の増額を受け入れる余裕はありません。千葉県は2004年に、県としてこれ以上の増額は受け入れないと明言、その後も繰り返し確認しています。
 これらの条件から、千葉県には無駄な八ッ場ダム事業におつき合いしている余裕はないのです。
 以上で、当会からの3名の公述は終わりますが、3名の公述の内容をあわせたものが我々の会としての一体意見表明です。
 以上、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【議長】 ありがとうございました。 降壇してください。
          (公述人降壇)
【議長】 次は、青木紅さんから公述をしていただきます。
 青木さんは、壇上に上がり、公述人席に着いてください。
          (公述人登壇)
【公述人(青木)】 自分で動かすんですか。
【議長】 はい。自分で。
【公述人(青木)】 わかりました。
【議長】 準備はよろしいですか。座っていただいて結構ですので。
【公述人(青木)】 はい。
【議長】 現在の時刻は1時14分です。ただいまから公述を開始し、20分間で終了するようお願いいたします。また、終了の10分前、5分前、1分前に呼び鈴で合図をするとともに、表示によりお知らせしますので、目安にしてください。
 なお、終了時間までに終了しない場合には、公述の中止を命ずることとなります。
 プロジェクターを使用しますので、少し照明を落とします。
 それでは、公述を開始してください。
【公述人(青木)】 神奈川県在住の青木紅と申します。よろしくお願いいたします。
 私は東京出身で、東京で育って、東京で仕事をしてまいりまして、その中で、吾妻川の、要するに利根川水系の水道水を飲んできたわけですから、私の体の中にはかなり吾妻川の水が入っているというふうに思っておりまして、八ッ場ダム建設計画を知ったのはほんとに2000年代に入ってからなんですけれども、八ッ場ダム建設計画については非常な思いを持っております。
 先日、2012年に公聴会がまた長野原町のほうでありまして、そのときに意見を陳述したいというふうに国交省のほうに申し上げたんですが、あなたは神奈川県民だから、できないというふうなことを言われまして、非常にちょっと残念に思った経緯があります。今回、このような機会を与えていただいたことに対して、大変感謝をしております。
 私が申し上げたいことは、八ッ場ダム建設計画の反対の立場として意見を申し上げます。
 1つには……、2つあるんですが、1つには、まず、八ッ場の自然を愛する、そして、この自然をずっと見続けていきたい、そういう立場からの反対です。もう一つには、観光客の立場として、吾妻渓谷を壊す、長野原町の自然を壊す八ッ場ダムに反対をしております。その理由についてこれから述べたいと思います。
 私がこちらの長野原町、八ッ場ダム建設予定地である長野原町を滞在して訪れるようになったのは2010年の秋からです。そのとき、初めて吾妻渓谷を秋、ちょうど紅葉の美しいときだったんですけれども、歩きまして、その自然の雄大さ、それから、美しさに対して非常に感銘を覚えました。
 そこで、私は自然散策、観察が趣味なものですから、滞在期間、そのときに3日間ぐらいだったんですけれども、いろいろちょっと植物を見て回ったりですとか、野鳥の記録をつけてみたんですけれども、ちょっと3日間いただけで、ここは非常に豊かな生態系のあるところだなというふうに直感したんですね。それから、これはやっぱり長年かけてずっと観察をしていかないとわからないな、もっとよくここの自然のことを知ってみたいなと思いまして、それから今まで、月1回、大体年に10回以上通って、自然の記録をつけてまいりました。
 私は車がないんです。なので、電車で移動するしかなくて、自転車もないもんですから、ただ、ただ歩いて観察をしていました。その中でやっぱり知り合った現地の方々がいらっしゃいまして、その方に、ここのこの木はどういう木なんだろうとか、ここの場所はどういう場所なんだろうというお話をしていくうちに、案内をしてくださる方も見えてきまして、その方々に教えていただいて、私が自然の記録につけたこともあります。なので、非常に皆さんには感謝をしております。皆さんの、車で連れていっていただかなかったらとか、私が到底行けないようなところに連れていっていただかなければわからなかったことも多いですので、非常に感謝をしております。
 これ、左側の表は私の記録したもので、過去2010年秋から今までの観察記録でして、まだどこにも発表していない未発表のものなんですけれども、どんどん、どんどんつけていきますと、いろんなことがわかってまいりました。
 まず、私はちょっと昆虫類の識別については不得手なもので、哺乳類ですとか、それから、植物、それから、野鳥、クモなどについてしかちょっと識別が難しいんですけれども、そういった中でもわかってきたことは、植物が、草、草花のほう、草本ですとか木本、高等植物と言われるものですね。そういったものを見ていきますと、過去5年間の記録の中で、私の観察したものというふうに限定しますと、150種類、約150種類出てきております。
 また、哺乳類ですと、ツキノワグマ、ニホンカモシカ、ニホンザル、ホンドテン、アナグマ、タヌキ、ニホンムササビ、ホンドリスとかアズマモグラとか、いろんな、大体日本にいる哺乳類のほとんど全てがここで見つかっていることがわかりまして、大体7種類ぐらいいるなというふうに記録をしております。
 また、野鳥に関しては、ここも野鳥の種類が非常に多いところでして、一年中いる野鳥は15種類、東南アジアから夏に渡ってくる野鳥、それから、シベリア、ロシアなど大陸方面から冬に渡ってくる野鳥なども、全部で年間通して大体30種類ぐらい、私の記録にあります。
 また、クモ、クモを調査している方ってなかなか群馬県でも少ないんですけれども、私のほうの調査ですと、クモは大体、吾妻渓谷で見つけたものが多いんですが、大体約20種類ぐらい見つかっております。
 そのほか、観察を5年間にわたって続けてきているんですけれども、観察したものは全て地図に落として、どこで見られた、どのぐらいの数があったとか、状態なども保存、記録をしているんですが、そういったところでわかったことは、建設予定地の中の久森沢、旧第一小学校のそばのところですとか、それから、あとは吾妻渓谷の栃洞の滝、あとは、吾妻渓谷のちょっと上流の不動の滝直下のところで非常に数が多いなという植物があるなというのが印象に残っております。
 もちろん、そこにしかないという意味ではなくて、もちろん予定地外のところ、下流域にもありはするんですけれども、やはりそういう植物の生息が数が多いということは、植物を食べる昆虫、または、昆虫を食べるクモ、野鳥、または、哺乳類などの生息にも影響するということですので、非常に生息地が消えるということは残念なことだというふうに思っております。
 よく言われる話なんですが、1種類の植物があるだけで、5種類の昆虫が生息するというふうに言われております。したがって、例えば1種類植物が消えるということは、5種類の、5種類以上の昆虫が消えるということではありますし、その昆虫が消えるということは、その昆虫を食べている生物にとっても影響があるということですので、何度も言いますが、生息地が減少するということは非常に残念なものだと思っております。
 よく植物を移植するとか、何か公共事業のために植物、貴重植物を移植するとか、何か生物を移すというようなこともやったりしているところもあるようなんですが、なかなか一朝一夕にうまくいきません。それはいろんなことが証明していると思います。
 我々のこの見ている自然というのは一朝一夕にできたものではなくて、ほんとに人間が想像もできないぐらい長い年月をかけてできたものです。ですので、これを人間の力でちょっと変えようとか、復元しようとか、そういったことは非常におこがましいなというふうに思います。
 今後もこのリストをどんどん、どんどん私は増やしていきたいんですね。あと、また、こういったものを続けていくためには、やはりダムができてもらっては非常に困るといいますか、今も大体歩いていますと、通行止めの地域がだんだん増えてきまして、もう不動の滝の遊歩道ですとか、それから、吾妻渓谷の上流域は入れなくなってしまっています。非常に残念なことで、先ほど申し上げました数が多いという植物なんかもそこに集中しているものもあるものですから、そういったところが見られないのは非常に残念だなというふうに思っております。
 次に、一観光客の立場として申し上げたいことなんですけれども、こういった自然の観察記録を続けていきますと、私独自に発見したことなんかもあったりしますので、これを多くの方に見ていただきたいなと思いまして、2013年から、自分で独自なんですが、参加費無料の現地の散策ツアーを始めるようになりました。この右側の写真がそういった写真なんですけれども、非常に皆さんが喜んでくださって、いろんなものを発見してくださり、こちらのほうも非常におもしろい体験をさせていただいております。
 大体これはそうですね、年に4回ぐらい、参加者が1人でもいれば、その方とご一緒に歩くということをやっているんですけれども、やっぱり参加者が増えれば増えるほど、目線が、視線、目の数が増えるものですから、考え方もいろんな方、いらっしゃいますし、目のつけどころもいろいろあるんですね。そうしますと、あそこの吾妻渓谷の大曲の滝のところの非常に岩が非常に雄大なところであるというような評価があったりとか、あとは、川原湯神社のあたりの石仏ですね。あとは、川原畑などのほうの石碑などもよく皆さん、見つけてくださって、こういうところが観光資源になり得るんではないかというふうな声をよく聞きます。
 今後も多くの方にこの自然のすばらしさ、吾妻渓谷の美しいところ、それから、吾妻川周辺の景観のよく皆さんに知っていただくために、今後ともぜひツアーをやっていきたいなと思っているんですけれども、参加者の方からはいろんな声をいただいておりまして、非常に、吾妻渓谷に関して言えば、非常に静かでゆっくり歩けるところだということと、それから、杉やヒノキ林が非常に少ないので、落葉樹林がとっても多くて、非常に四季の変化を感じられて、すばらしいところだという声もあります。
 あとは、真夏、8月のお盆の時期に歩いても、吾妻渓谷の森の中は涼しい。これは九州の方からいただいたお声なんですけれども、九州出身の方が、その方は大分県なんですけれども、大分県の耶馬渓よりもこちらの吾妻渓谷のほうが雄大で、要するに、上毛かるたにもあるとおり、「耶馬渓しのぐ吾妻渓」というのはほんとなんでねというお声をいただいたりもしています。
 あとは、吾妻渓谷の上流側に天然記念物の昇竜岩ですとか臥竜岩という天然記念物があるんですが、こちらもダムに沈んでしまうというのは非常にもったいない、天然記念物をどうしてダムに沈めてしまっていいのかという声もいただいております。
 また、今は歩けないんですが、国道145号、吾妻川沿いに国道145号があるんですけれども、こちらも実際にずっと歩いていきますと、歩道がついていて、わりと歩きやすい道なんですね。ですので、高齢者や車椅子の方でも気軽に歩けて、自然を散策できる非常にいい道だ、なぜこれが通行止めになってしまうんだというような声もいただいておりますし、あとまた、吾妻渓谷を見おろせるところなんかは、背の高い木、非常に例えばケヤキとかカエデなんかはふだんですと背が高くて到底手が届かないところなんですけれども、そういった木でも、葉っぱや花や実を見おろすことができて、触ったりもできて、観察ができる、非常にすばらしいいい道だというふうな声もいただいております。
 皆さん、大体口をそろえておっしゃるのは、ダム湖にしたら、もう来ないというふうにおっしゃっています。ここの吾妻渓谷のこの険しい景観がつくり出す、険しい自然がつくり出す景観がいいのであって、ダム湖にして温泉を移転させても、あんまり来たくないというふうに、皆さん、おっしゃっております。私も同じ思いでおります。
 ここの写真にありますところ、右上の写真は、これは吾妻渓谷の東吾妻町と長野原町の境目にあります見晴台、小蓬莱という岩のてっぺんのところなんですけれども、ちょうどこれはダムサイトのところを見おろしている、ダムサイトの工事現場を見おろしているところなんですが、ここの見晴台は今でも歩けるところなんですけれども、ぜひここがダム工事を見学する場所というふうにならないように、切にお願いをしたいと思います。
 ここはもう既に仮排水トンネルで水が締め切られてなくなってしまって、非常に残念な景観になってしまっているところなんですけれども、ここは以前は2013年、2014年の春までは水がとうとうと流れて、サクラも、ヤマザクラも咲いたりですとか、秋は紅葉の美しい非常にすばらしいところでした。ここの見晴台からダムサイトを見おろすというふうにならないように、切にお願いをしたいと思います。
 以上です。時間がちょっと早くなってしまったんですが、これで私の八ッ場ダム建設反対についての立場からの意見を陳述を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
【議長】 ありがとうございました。 降壇してください。
          (公述人降壇)
【議長】 次は、市民オンブズマン群馬、小川賢さんから公述をしていただきます。
 小川さんは壇上に上がり、公述人席に着いてください。
 また、公述人からは、起業者への質問の希望がありますので、国土交通省関東地方整備局の方も、壇上に上がり、起業者席に着いてください。
          (公述人・起業者登壇)
【公述人(小川)】 すみません、よろしいですか。
【議長】 ちょっと待ってください。いいですね。
 現在の時刻は1時35分です。ただいまから公述を開始し、30分間で終了するようお願いします。また、終了の10分前、5分前、1分前に呼び鈴で合図をするとともに、表示によりお知らせしますので、目安にしてください。
 なお、終了時間までに終了しない場合には、公述の中止を命ずることとなります。
 それでは、公述を開始してください。
【公述人(小川)】 公述人、小川賢でございます。私は現在、市民オンブズマン群馬の代表をしております。
 我々市民オンブズマン群馬は、群馬県におきまして、行政を外部から監視し、行政による税金の無駄遣いや行政及び関連する権限を不当に行使することによる住民関係者の権利、利益の侵害に対する調査及び救済の勧告を図る活動をしておるボランティア団体でございます。
 我々市民オンブズマン群馬では、平成16年、西暦2004年から、八ッ場ダムをめぐる公金支出差止等請求住民訴訟事件の群馬原告団事務局として、八ッ場ダム工事にかかる公金の無駄遣いについて追及をしております。
 本日は時間の制約上、次の手順で公述したいと思います。
 最初に、既に提出済みの公述の申出書に従って、私の意見の要旨を改めて述べた後、国土交通省に対する6項目の質問について質疑応答の時間とし、その上で、時間に余裕が生じた場合、私の意見の詳細について触れたいと思います。
 では、私の意見の要旨について述べます。
1、土地の収用は、公共の利益となる事業において、民法上の手段だけではその事業の目的を達成するのが困難な場合に、私人の財産権を強制的に取得するものですけど、国土交通省が起業している一級河川利根川水系八ッ場ダム建設工事事業は公共の利益に反するものです。
2、八ッ場ダムに関しましては、平成17年当時、萩原昭朗水没関係5地区連合対策委員長の誕生日を祝うため、丸岩会という行政関係者と業者が一堂に会して、ゴルフ大会や宴会を毎年開催していたこともあり、当時の県知事、小寺弘之や八ッ場ダム工事事務所長、安田吾郎も出席して、業者との癒着ぶりを見せつけていました。
3、さらに、平成18年には、斎藤烈、これはタケシと読むんですけども、国交省の工事事務所の中でもレツと呼んでいる、呼んでいたそうですけど、斉藤烈事件が発覚しました。この刑事事件は、国交省関東地方整備局八ッ場ダム工事事務所に勤務していた用地第一課長だった斉藤レツ、斉藤烈が、同事務職が発注する用地調査業務などをめぐり、便宜を図った見返りに、無利子無担保で業者から710万円を借りていた収賄事件のことです。
4、このように公金を長年にわたり投入しながら、その実態は政官業民の癒着のみならず、国交大臣が所管する国交省の職員らにとっても、公金をふんだんに扱える利権の場に化していました。
5、これまでのこうした不祥事に加えて、さらに、平成26年初頭から、大同特殊鋼渋川工場由来の有害スラグが大量に八ッ場ダムの現場及びその周辺に不法投棄されていた実態が明らかになりました。
6、しかも、環境基準値を超えるこの有害スラグは、この計画に協力をした地元住民の代替地の造成にも不法投棄されております。この結果、一般住民の居住する敷地内にも不法投棄されている実態が判明いたしました。これにより、別の、これにより、住居の直下にも不法投棄されている可能性が強く指摘されております。
7、にもかかわらず、国交省は一部の場所だけを調査しただけで、有害スラグを使った盛り土材による造成場所については全く調査しようとしませんでした。
8、こうしたルール無視の違法状態を放置したまま、八ッ場ダムの本体工事を着工することは断じて容認できません。
9、行政の信頼を取り戻すには、有害スラグを完全に撤去することが最優先課題です。
10、この有害スラグの不法投棄について、排出者の大同特殊鋼も、有害スラグを一手に引き受けてスラグ混合砕石という代物を独占的に製造、出荷していた佐藤建設工業も、産業廃棄物中間処理業の許可が必要なのに、無許可で大量の産廃を八ッ場ダム工事現場等で使い続けてきました。
11、これらの工事は全て国交省土木工事標準積算基準書、いわゆる赤本と呼ばれるものですけども、これに基づき積算され、リサイクルの観点から、再生砕石の使用を前提に工事予定価格として設定されたものです。 -126-
12、ところが、落札した業者は好んでこの違法な有害スラグ混合砕石を佐藤建設工業から仕入れて、あるいは、佐藤建設工業自体が、自身が工事請負業者として使用していました。
13、にもかかわらず、国交省は無許可で違法な有害スラグ混合砕石を大量に出荷したり、直接工事に使っていたりしていた佐藤建設工業や、違法な有害スラグ混合砕石を大量に佐藤から仕入れて使用していた地元の土建業者、池原工業、沼田土建など多数を毎年度、優良工事等事務所長表彰として表彰してきました。
14、本来、建設リサイクル法に基づく再生砕石を使用するべきところ、産廃を原料とし、大同特殊鋼から運搬費等多額の補塡を受けて無許可で製造された有害スラグ混合砕石の原価はただ同然であり、この違法資材を使用すればするほど、佐藤建設工業をはじめ、その他の請負業者は巨額の利益を得ることができました。
15、そうした不当利得の一部は、八ッ場ダム工事請負業者から、ドリル事件で名をはせた地元の女性代議士に政治献金として、ダムマネーですね、還流されてきました。
16、もはや八ッ場ダムの建設工事事業は、国交省をはじめ、群馬県、地元自治体などの官と地元代議士を中核とする政、政治の政、有毒スラグを好んで使い、国交省から毎年度、表彰対象となっている業との間の利権の草刈り場としての意義しかございません。
17、さらに、前日の地元住民の代表として、八ッ場ダム利権を享受してきた萩原昭朗等の一部の民も絡んで、政官業民として多額の税金をむさぼっています。
18、こうした実態を放置したまま、土地収用などという強制力を伴う公権力の発動で、さらに血税を無駄遣いすることは許されません。
19、国交省は行政の信頼よりも、八ッ場ダムの本体工事を優先してはなりません。このまま土地収用を強行する場合には、当会は国交省が住民の安全や行政への信頼よりも八ッ場ダム工事を優先すると見なさざるを得ません。このことを指摘して、土地収用が強行された場合、強く抗議いたします。
20、あわせて、税金をこれ以上無駄な事業に注ぎ込むことを直ちに再考するように強く要請いたします。
 続きまして、Q&AのQのほうに行きます。クエスチョンのほうですね。
 続いて、国交省への質問として、次の6項目、6項目あるので、時間的な、どのぐらい誠実に答えていただけるかどうかわからないんで、残り時間がよくわかりませんけども、まず最初の質問。
 八ッ場ダム工事で路盤材、盛り土材、埋め土材などで、中間処理業の許可を得ずに製造、出荷されてきた有害スラグの所在、不法投棄先ですね、とその量を把握しておられますか。お願いします、ご回答を。
【議長】 では、起業者、回答してください。
【起業者(土屋)】 お答えします。平成13年度以降に八ッ場ダムで施工した工事について、大同特殊鋼渋川工場に聞き取り調査を行い、鉄鋼スラグを出荷した記録があることが判明した15工事の施工箇所と、鉄鋼スラグが混入の可能性がある材料が露出した状態になっている38工事の施工箇所ごとに調査を行い、大同特殊鋼の聞き取り調査による鉄鋼スラグを出荷した記録があることが判明した工事、及び、表面に露出し、鉄鋼スラグと類似する材料が認められた工事の計19カ所を対象に、有害物質の含有量を確認すること、調査、実施しております。
 その結果、八ッ場ダム工事事務所では、8工事、施工箇所は13カ所でありますけれども、において、基準に定める基準値を超えた材料の使用を確認しております。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(小川)】 場所と量、投棄量を聞いたんですけどね。ちょっとはぐらかされたですね。
 続きまして、質問2。これまで中間処理業の許可を得ずに使用されてきた有害スラグにより、本来使用されるべき再生砕石の積算基準金額との差額により、血税が何年間に幾ら、不当に佐藤建設工業はじめ八ッ場ダム工事に関与した請負業者に使用されたのでしょうか。回答をお願いします。
【議長】 起業者側、回答願います。
【起業者(土屋)】 ご質問の趣旨が必ずしも明らかではございませんが、八ッ場ダム工事事務所において、再生砕石の使用に関し、不当な積算を行った認識はございません。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(小川)】 いいですか。この点については後でまた時間が余ったら述べます。質問3。なぜ有害で、無許可で有害なスラグの大量使用をしてきた請負業者に対して、国交省は毎年、優良工事等事務所長表彰の対象としてきたのでございましょうか。ご回答をお願いします。
【議長】 起業者側、回答願います。
【起業者(土屋)】 優良工事表彰は、関東地方整備局発注の工事を受注し、その施工が優秀であって、他の模範となり得るものを表彰することにより、技術の向上及び円滑な事業の進捗に資することを目的としたものです。
 なお、工事目的物の仕様に反して、材料などに瑕疵がある場合は、受注者に対してその瑕疵の補修を請求するか、損害の賠償をすることができることから、今回の事案についても、群馬県における調査結果などを瑕疵の程度を判断する材料の一つにして、総合的に検討してまいる所存でございます。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(小川)】 だまされているんですよ。質問4。後でこの件についてはまとめてコメントいたします。
 質問4。八ッ場ダム工事事務所長が、これは当時ですけども、なぜ地元対策委員長の誕生日に、知事や請負業者が集う宴会場に顔を出して、八ッ場ダムの事業説明をする必要があったのでございましょうか。ご回答をお願いします。
【議長】 起業者側、回答ください。
【起業者(15)】 回答いたします。過去に補償交渉委員長より、地元の研修会で八ッ場ダム工事の進捗状況について講師依頼を受けたことがございます。委員長からの依頼であり、広報活動の一環として有益と判断し、職員を派遣したところです。なお、地元の研修会の出席者で工事関係者がいたかどうかについては当方で把握しておりません。
 以上です。 【議長】 公述を続けてください。
【公述人(小川)】 トータル100人以上いて、そうそうたる会社の方がいらしたというふうに私は確認しております。でも、これも後でコメントします。 それでは、質問5番目。スラグ問題について、今後の対応策をお聞かせくださいませ。
【議長】 起業者側、回答願います。
【起業者(土屋)】 大同特殊鋼渋川工場から出荷された鉄鋼スラグについては、群馬県内の公共事業に広く使用されてきたところでございます。今回の問題を受けて、国土交通省はこれまでに同社への聞き取り調査による使用箇所の特定、使用された鉄鋼スラグに含まれる有害物質の分析等を実施し、その結果を公表するとともに、群馬県に報告してまいりました。今回の事案につきましては、廃掃法に基づく調査が群馬県において行われており、群馬県の調査結果を踏まえ、関係機関と連携し、適切に対応していきたいと考えております。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(小川)】 それだけですか。
 では、続きまして、質問6。政官業民、先ほど申しました、政治、官僚、業界、民、住民ですね、一部の、癒着問題について、見解をお聞かせください。
【議長】 これは先ほど、16でご説明いただいたようなことについてどう思うかということでよろしいんでしょうか。
【公述人(小川)】 先ほどの16。
【議長】 16番と言ってお話しされた。
【公述人(小川)】 ちょっと待ってくださいね。16番は、ええ、そういう構図だと思っておりますので、よろしくお願いします。
【議長】 では、それについてお答えください。
【起業者(小宮)】 では、お答えいたします。八ッ場ダム建設事業についても、公共事業等の発注に係る事務については、関係法令を遵守して公正な入札ですとか、そういった手続を適切に実施しているところです。今後もそういった関係法令を遵守するということについては変わりはございません。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(小川)】 議長、再質問とかそういうことについて、もう一回折り返し確認を求めてもよろしゅうございますかね。
【議長】 質問の要旨の範囲内でご質問いただいてまして、その関連ということであれば、質問していただければと思います。
【公述人(小川)】 そうですか。面倒くさいな。じゃあ、いずれにしても、どうせ再質問してもはぐらかされるのが目に見えているような感じがいたしますので、今のお答えを踏まえまして、ちょっと、特に私が重要だと思ったのはこのスラグ問題なんですけども、スラグ問題について、もう少し解説がてら、この場をおかりして、この問題の根深さをご説明したいと思います。
 なぜこのスラグ問題が浮上したかと。これは昨年の1月26日に、27日だったかな、群馬県の環境森林部が、突然というか、どこかから情報を得たんでしょうね。多分、その前の渋川市のスカイランドパーク駐車場問題だと思いますけども、とんでもない生スラグがまき散らされていて、それがエージングといって、きちんとほんとうは、スラグは水を吸うと中にCa、つまり、炭酸カルシウムが入っているもんで、膨らむんですよね。そのため、その上に舗装してしまって路盤材として埋めている、舗装してしまった後に水を吸ったもんだから、もうでこぼこになっています。もうジェットコースターのようになっているというお話で。
 それが新聞沙汰になって、おそらく群馬県の環境森林部は、大同特殊鋼に、きちんと廃棄物処理法ですね、廃掃法とも言われますけども、これにのっとって立ち入り検査をしたわけです。そうしたら、いろいろと、例えば逆有償取引をしていたとか、そのほか、いろいろ問題があるようなんですけども、それに、その以後、いろいろ違法、不当な問題があるんですが、いまだに刑事告発をしてないですね、廃棄物処理法についての。しょっちゅう私も県に行くんですけども、そのうちするんだろう、するよ、するよと青木という部長は言うだけで、いまだに何もしません。
 これを契機に、私どもはどのぐらいこのスラグというやつが打ち捨てられているのかと、この群馬県の水源地帯ですね、下流の皆様にとってはこれは水源地帯です。いろいろ調べました。それで、鉄鋼スラグというのはどういうものか、東京の江東区にある、江東区だったかな、とにかく、鉄鋼スラグ協会という業界団体があるんですけど、そこにも行っていろいろ聞いたんです。
 そうすると、鉄鋼スラグというのは、特に大同特殊鋼の場合は、特殊鋼、つまり耐熱鋼とか、いろいろ超かたい、高温でもかたく強度を持つとか、いろいろ難しいのがあるんですけども、そのために、スクラップの中にいろんな含まれている不純物をとるために、フッ素、螢石というやつを使わなくちゃいけないんですよねと、こういうことらしいんですよ。螢石の中にはフッ素がいっぱい入っている。少量であれば、虫歯予防になるとか言って、我々、子供のころ、聞かされましたけどね。今でもそれなりに賛否が分かれていますけども、それが大量に含まれているわけです。
 もう一つは、クロム鋼といって、高温で強度を保つ、いろんなそういう特殊鋼を生産しておるわけですね。ジェットエンジンのタービンとか、タービンのブレードとか。そういうときに、どうしてもいろいろ鼻薬で、クロムだとかモリブデンだとか、そういうやつを入れるときに、それが要するにカスとして、スラグとして排出されると。これを長年続けているわけです。少なくとももう二十数年間やっていたらしいんですけどね。
 新聞沙汰になってから、群馬県に情報公開もしました。それから、大同特殊鋼にも、一体これまでどのぐらいどこに捨てたんだと、佐藤建設工業を介してたということがほとんどらしいけども、しかし、情報公開しないんですよ。群馬県もしません。
 だから、今、国のほうでも聴取したというんで、ぜひこの後、情報公開を、最後の頼みの綱で、国の公務員の皆さんであれば、こういう違法行為に対しては、住民のこういった願いを聞き届けて、情報公開に応じてくれると思うんです。だから、大同特殊鋼のそれはどういうふうになっているかということは今まだわからないんですよ。
 いろいろ申したいんですけどね。その廃棄物処理法でなぜこれが取り締まれないのかということなんです。同じ国の機関でも、水資源機構、これは群馬用水を管理していますけども、この管理道路にやはり大量のスラグ入りの産廃が投棄されました。これはいちはやく、下流に上水道の浄水場もあるということで、水資源機構は排出者責任として大同特殊鋼にかけ合って、全部、あと10分ね、全部大同の負担で撤去しました。
 ところが、この八ッ場ダム、それから、もう一つは上武国道、上武国道というのは熊谷から渋川のところまで国道17号のバイパスということで今、相当工事は進んでいますけどもこの工事現場にもたくさん埋まっています。八ッ場ダムにもたくさん埋まっています。
 こうしたものが、水資源機構が、要するに、環境基準値よりも高いところがいっぱいあるわけですよ。それよりも何よりも、住民への安全という観点から、本来そういうものがあってはならない物質がそこにまかれているということね。私は安中市の東邦亜鉛の安中製錬所のすぐ近くに住んで、子供のころから、降下煤塵等によるカドミウム汚染の、農地がみんな、畑地とか水田は汚染されてきた。そういうところで、何とかしてきれいにしたいというところを、あろうことか、有毒物質のまじったそういうものが公共事業で大量に使われている。
 しかも、ただ同然のやつに対して、いわゆる再生砕石。本来、再生砕石というのはコンクリート構造物を壊して、またスクラップ・アンド・ビルド等をするときに、そのまま捨てると資源の無駄だから、しっかり砕いてもう一回それを骨材として、コンクリート骨材として再生すると。だから、単価、高いんですよ。詳しいことは赤本で、幾らあるというのは私、知りませんけど、例えば3,000円ぐらいだとしますよね。これを大同スラグは今、年間2万数千トン、排出しておるんです。佐藤建設工業は実はこれを一手に、渋川工場、大同の渋川工場から引き受けて、大同はちゃんとはかっているんです。例えばこのスラグのロットは4万ppmだと。これ、社内基準だと4万ppm以下ならいいと言っているらしいですね。ところが、環境基準は8,000ppm、さらに5分の1なんですよ。
 そこで、誰が考えたか知らんけども、5倍に薄めりゃいいんだと。つまり、JISではかるときにはみんな粉々に砕いて、それを振とう器に入れてはかるわけなんですけども、そうすると、4万ppmのやつでも、天然砕石と薄めれば、佐藤建設工業は村上というところに採石場を持っていますから、そこで天然のやつで薄めれば、8,000ppm以下になると。こういうことでインチキの試験成績書を行政に出しておったわけです。
 群馬県が出すのはわかります。癒着していますから。それがいいという証明書を平成22年の6月と10月に出していますから、今、県の土木、県の整備、何ていったかな、県土整備部長の倉嶋というお方ですけども、お墨つきを出しているんですよ。だけど、そんなもういいかげんなルール違反のない群馬県じゃなくて、ここにいらっしゃる方は、全然レベルの違う、ハイレベルな国家公務員の方なんですよ。
 それが廃掃法、廃棄物処理法でそんな中間処理の免許も持ってないような、大同にしろ、佐藤にしろ、そういう危ないやつを、高い値段の見積もりで予定価格で、実際にはそこに入っている業者、今言った池原とか沼田とか、いろいろあるんですけども、そういうのが、しかも、談合して落札率は95%以上のばっかりですからね。それで、原価は購入するとき、ものすごい安いわけですよ。3,000円と例えば見積もったやつをただ、しかも、大同がもしかしたら運送費まで負担してくれるかもしれないと。これはもうかりますよね。
 例えば、1万、毎年2万5,000トンですけども、これは全く仮の話で、そのうち1万トンが公共事業、例えば国の上武国道と八ッ場ダム、私はどのぐらい使われているかというのはそこを聞きたかったんだけど、それは返事がもらえてないんですけどね。1万トンを使ったとすれば、差額の3,000万、だから、3,000万円浮くわけですよ。それが業者に還流する。そうすると、業者は、一時、民主党がとったときに、どのぐらい保守政党に金が還流したかと、ダムマネーとして還流したかというと、やっぱり数年間で四、五千万還流しているわけです。あと5分間ね。
 今話題のドリル事件で有名な地元のさる高名な女性政治家の場合、ついこの間、検察審査会で審査申し立てしてきましたけども、こういうところに銭が回るということは、やっぱり、談合でつり上げているということもあるかもしれんけども、大きな打ち出の小づちの一つはこの有害スラグなんです。
 この有害スラグを、だから、こういう有害スラグを多く使ったほうが優良企業なんですよ。おかしいでしょう。これを手本としなさいとさっき言いましたよね。こういう企業を手本としなきゃいけないというのが、この群馬県に来られて八ッ場工場事務所に勤めておられると、そういう考えになっちゃうんですよ。群馬県におると、みんなおかしくなる。スラグで、これ、やられたんじゃないかと思いますよね。
 だけど、このままずっとだんまりで、この責任の所在、まず、真相の追及ね。これから大同スラグがどこにどう埋めたというやつを情報公開でお願いしますけども、それでどのぐらいそういった銭が還流して、業者経由で政治家のほうへ渡って、そのスパイラルがどんどん、どんどん大きくなって、もう右も左も、保守、もう民主党でさえも、今は全くここでは対抗する候補も出せないほど、この金の力、それから、スラグによる有害物質による頭脳汚染、これは深刻なものがあります。
 したがいまして、この問題については7月10日に、まず、東吾妻町の萩生地区というところで、あろうことか、南波建設という、この方の社長さんでしたかね、これは県会議員で、また自民党の県連の幹事長もされているようですけども、大量に、農業地帯ですよ、農道にたくさんまいておるんです。
 その後、去年の6月に、生スラグがいっぱいあるのを発見して、これ、何とか撤去しなさい、してくださいというふうに群馬県の農政部に言った。そうしたら、農政部は、これは吾妻農業事務所がやっているんだと。じゃあ、これ、今、もう大同に言えばすぐ撤去してくれるはずだから、それをまず撤去してから、まず撤去してくださいと言ったんです。そうしたら、そのときはもう入札準備が始まっていて、上に簡易のアスファルト舗装するんだと。つまり、くさいものにふたをしようとするんで、私は事務所長に何回も電話して、私が住んでいる安中では、東邦亜鉛のカドミウム公害できれいな土にしてくださいと言っているのに、おたくのところではきれいな農地の中に重金属入りのやつを入れるんですかと、まず撤去してから農道整備を、舗装するんだったら舗装してくださいと、こう言ったにもかかわらず、強行されました。
 7月10日金曜日午後1時15分から、前橋地裁201号法廷、2階にありますから、そこで第1回口頭弁論、つまり、群馬県知事に対して、その農業事務所の所長さんが、その決裁の裁量は数百万単位だと農業事務所の所長さんになるらしいですから、一部お気の毒と思うかもしれませんけども、私があれだけ電話しても知らんぷりだったので、やっぱりきちんと法廷で、これはあなたの責任ですよということで損害賠償請求をやります。
 では、残り1分間になりましたので、エンディングとさせていただきます。
 今後とも、この有害スラグ問題、これ、お手本になっちゃうわけですよ。つまり、前例になって、どういうことかというと、群馬県でこれがおとがめないんだったら、じゃあ、俺のところもそうしてくれと、こういう波及効果が出てしまいます。私はこれ、詳しくブログに載っけていますけども、もう鉄鋼業界が毎日のように見てますよ。どういうふうになるのかと。
 だから、一刻も早く、群馬県の後押しをして、これを刑事告発をするように、エリートの皆さんには、よろしくお願いしたいと思います。
 以上。ありがとうございました。
【議長】 ありがとうございました。
 降壇してください。
          (公述人・起業者降壇)
【議長】 それでは、14時25分までの間、休憩といたします。
          ( 休 憩 )
【議長】 それでは、公聴会を再開します。
 次は、埼玉県副知事、岩街�h廚気鵑�C藐�劼鬚靴討い燭世④泙后
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八ッ場ダム建設工事に係る土地収用法に基づく6.26公聴会の模様(その5)

2015-11-02 23:39:00 | 八ッ場ダム問題
■公聴会は2日目の6月27日に入りました。

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     一級河川利根川水系八ッ場ダム建設工事に係る公聴会(2日目)
                    平成27年6月27日
【議長】 ただいまから、一級河川利根川水系八ッ場ダム建設工事に関する事業認定申請に係る公聴会を開催します。
 私は本日の議長を務めます国土交通省総合政策局総務課土地収用管理室長の藤田と申します。議長として本公聴会を主宰いたします。よろしくお願いいたします。
 本公聴会は、土地収用法第23条第1項の規定に基づき、起業者である国土交通大臣(代理人 関東地方整備局長)から、平成27年4月10日付けで事業認定申請があった事業について開催するもので、事業認定庁として、当該申請に係る事業の認定の可否を判断するに当たり、勘案すべき情報を収集することを目的としております。
 長時間の会となりますが、円滑な議事進行にご協力いただきますようよろしくお願いいたします。
 それでは、鈴木郁子さんから公述をしていただきます。
 鈴木さんは壇上に上がり、公述人席に着いてください。
 また、公述人からは、起業者への質問の希望がありますので、国土交通省関東地方整備局の方も、壇上に上がり、起業者席に着いてください。
          (公述人・起業者登壇)
【議長】 準備はよろしいでしょうか。
【公述人(鈴木)】 この席ですね。
【議長】 そこで。
【公述人(鈴木)】 ちょっとお待ちください、すいません。何かあらかじめ上がらせていただいたほうがよかったですね。すいません。
【議長】 まだ時間はありますので、どうぞ準備してください。
【公述人(鈴木)】 これ、お借りします。ちょっとシャープペン、ペンシルケースを置いてきちゃったみたいで。
【議長】 筆記用具がないということですか。あれでしたら、こちらの。
【議長補助者(�后法
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