市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

オサカベ自動車への「至れり尽くせり」道路工事に対して監査請求

2008-10-28 01:37:00 | 協立精工北の市道工事の摩訶不思議
■東邦亜鉛の東、協立精工㈱安中工場の北側の資材置き場だったところに高崎のオサカベ自動車の修理工場の計画があります。今年はじめ、安中市はこの資材置き場と協立精工の間の馬入れから奥に連なる道路改良・拡幅工事を施工しました。

この道路工事については、岡田市長は、2月15日(金)午後7時から岩野谷公民館で開催された市政懇談会で、「協立精工の裏に今度企業が進出してくるので、どうしても進出前に、きちっと道路を開けなくちゃなんねえ」として、進出企業に便宜を図る目的であることを強調しました。
そこで、当会では、この不可解な道路工事の詳しい内容と経緯を調べるために、2月12日付けで安中市長宛に情報開示請求を行い、2月26日付けで情報開示された情報を分析してきました。
その結果、この道路工事事業は税金の無駄遣いであり手続き的にも問題があることが判明したため、このたび10月21日(火)に、安中市監査委員に対して住民監査請求を行いました。

**********
安中市職員措置請求書
安中市長に関する措置請求の要旨
1 請求の要旨
第1 対象行為
安中市長による平成20年1月25日執行分の市道岩35号線道路改良工事事業。
第2 違法・不当の理由
 この事業に関して、平成20年2月26日付で開示された公文書の内容、および同年4月8日付の請求人の質問状に対する4月16日付の市長からの回答書並びに追加開示情報をもとに、慎重に分析、検討した結果、次のような違法・不当性のあることが判明した。対象行為である本件事業にかかる出来事を時系列で示す。

19年9月27日:岩野谷地区第3区(岩井第3区)加部勝巳区長から市道整備の要望書が市役所に提出される。同意書には、7名の黒塗りの住民らしき氏名が書かれているが、その下にとってつけたように㈱オサカベ自動車と協立精工㈱の代表取締役の印が押してある。同意書には何のための同意なのか記載されていない。
19年9月28日:安中市の秘書行政課がこの要望書を収受。
19年11月26日:有限会社セキネ開発が、市道計画設計図作成のための測量を実施。
19年12月5日:有限会社セキネ開発が、市道計画設計図を作成。
19年12月6日:安中市土木課大沢秀夫課長から、安中市教育委員会学習の森小島成公課長あてに、埋蔵文化財に関する意見照会書を提出。
19年12月10日:オサカベ自動車工業代表取締役長壁憲から安中市長岡田義弘あてに、「道路改修について、測量が無事終了したと聞いている。当社として敷地の一部を道路用地として寄附したいと考えている。ついては手続き上のことについて指導願いたい」という書面が提出される。
19年12月25日:当該道路予定地の土地測量に当たり、所有者の道路管理者である安中市長岡田義弘/土木課田中富之と隣接所有者の㈱オサカベ自動車が立会し、土地筆界確認を行なう。同様に、安中市長岡田義弘/土木課田中富之と反対側の隣接所有者である協立精工㈱が立会し、土地筆界確認を行なう。
20年1月7日:安中市長岡田義弘名で、上記の立会証明書が発行される。
20年1月7日:オサカベ自動車工業代表取締役長壁憲から安中市長岡田義弘あてに市道岩35号線道路用地として、岩井西ノ平874-1、879-1、882-2、885、888の一部の雑種地/原野を寄附するための「寄附採納願」が提出される。
20年1月8日:安中市教育委員会学習の森小島成公所長(文化財係)から建設部土木課大沢秀夫課長宛に、埋蔵文化財に係る意見照会への回答書を提出。
20年1月10日:安中市長岡田義弘からオサカベ自動車工業代表取締役長壁憲宛に、「寄附受納書」が発行され、オサカベ自動車から道路用地の寄附を受け入れる。
20年1月25日:この日09時30分に市道岩35号線道路改良工事の入札が実施され、(有)内田組が765万円(消費税含まず)で落札。なお、予定価格は857万円。
20年2月13日:道路新設改良工事に伴う埋蔵文化財立会を土木課と文化財係が実施。
20年2月14日:安中市教育委員会学習の森小島成公課長から建設部土木課大沢秀夫課長宛に、埋蔵文化財立会結果について、埋蔵文化財は確認されなかった旨の報告書を提出。
20年2月15日:安中市長岡田義弘が、地元岩野谷地区の市政懇談会で、この道路工事に触れて、「今度企業が進出するので、いまのうちに道路を拡幅しておく必要がある」などと口走る。
20年3月5日:安中市が嘱託登記により、オサカベ自動車から寄附された道路用地の所有権移転登記を申請し、同日完了する。
20年3月31日:市道改修工事が完了。その後、未だに開通していない。
 以上の経緯を見ると、この市道改良工事は、正当な手続きを経ておらず、地元住民にとってまったく役に立たず、市外の特定業者だけが便宜を受けるだけの事業であることが分かる。本事業の履行は、次の事由により、無駄な事業に対する公金支出にあたり、違法・不当である。

【要望書等】
 道路を公金で作るには、地元の要望書等が必要だが、岩井第3区の加部区長が、住民に説明もせず、あたかもダマシ討ちのような手口で要望書を昨年9月に岡田市長に上げた。区長は「安中市に言われてやっただけ」と言っている。
【同意書】
 要望書に添付されている同意書には、同意の目的が記載されていない。安中市が良くやる手口として、区長が住民に「とにかくここに署名押印してくれ」と訳の分からない住民に適当な口実で署名押印を求めるケースが多く、この手口で、ゴルフ場やサンパイ場の手続きが住民の知らないうちに進められてきた前歴がある。
【境界確認】
 隣接境界確認は、安中市いわく「土地建物実地調査要領により隣接者の立会を行った」としているが、当事者は安中市とオサカベ自動車だけなので、両者間で確認を勝手に行なっただけ。
【道路法90条と8条】
 また、安中市は、この馬入れだった官地を、「道路法第90条第2項の規定により平成16年6月30日に国から市に譲与され、道路法第8条による認定路線だ」と主張している。違法手続きを進めようとするとき、行政は常に法律の条項を持ち出す。道路法90条第2項というのは「普通財産である国有財産は、都道府県道又は市町村道の用に供する場合においては、国有財産法(昭和23年法律第73号)第22条又は第28条の規定にかかわらず、当該道路の道路管理者である地方公共団体に無償で貸し付け、又は譲与することができる」というもので、道路法第8条は「市町村道とは、市町村の区域内に存する道路で、市町村長がその路線を認定したものをいう」という内容だ。
 しかし、地元住民が誰も通らない道路を、進出企業だけが便利な専用道路として使用し、しかも、東邦亜鉛側の斜面の法面整備まで公費でやってくれるのだから、安中市からオサカベ自動車への便宜供与は異常だ。もともと、この馬入れは平成16年までは国の所有地だったが、地方分権の名の下に、各自治体に移譲されることで、業者と癒着し易い安中市の体質から、私物化されてしまうのではないかと市民の間では懸念されていた。今回、その懸念が現実のものとなってしまった。
【建築基準法42条第2項】
 安中市は「既設道路は建築基準法第42条第2項の道路」だと説明している。建築基準法第42条第2項は「この章の規定が適用されるに至った際現に建築物が立ち並んでいる幅員4メートル未満の道で、特定行政庁の指定したものは、前項の規定にかかわらず、同項の道路とみなし、その中心線からの水平距離2メートル(前項の規定により指定された区域内においては、3メートル(特定行政庁が周囲の状況により避難及び通行の安全上支障がないと認める場合は、2メートル)。以下この項及び次項において同じ。)の線をその道路の境界線とみなす。ただし、当該道がその中心線からの水平距離2メートル未満でがけ地、川、線路敷地その他これらに類するものに沿う場合においては、当該がけ地等の道の側の境界線及びその境界線から道の側に水平距離4メートルの線をその道路の境界線とみなす」という内容だ。
 建築物が立ち並んでいない場所の馬入れを、幅員5mの道路にするには、この建築基準法は使えないはずだが、岡田市長は、この建築基準法を捻じ曲げて、わざと3000㎡未満の土地に分筆させて県の許可を免れさせた。
 岡田市長は、本来、県道に隣接していなかった田圃に、立派なエアコン付きの牧草小屋を建てて、選挙事務所に活用している経験をお持ちである。今回も同じテクニックを駆使したのではないのか。
【議会の議決】
 市道の新設や改良工事では、通常、議会の議決を経なければならないはず。この点について、安中市は「議決については既に平成19年度の予算書で議会の議決を受けている」と説明している。
 だが、予算書の作成段階では、この「オサカベ道路」は計画に載っていない。地元区長からの陳情書が提出されたのは平成19年9月だった。平成19年度の補正予算も開示されていない。なぜオサカベ道路が議会の議決を受けたといえるのか、岡田市長の説明はチンプンカンプンだ。
 しかも、岡田市長は「なお、道路整備については、道路管理者の裁量権の範囲で行なっております」と述べている。この論法だと、道路管理者の国や県や市町村は、首長が勝手に道路をそこら中に作れることになる。
 いずれにしてもこの事業は議会の議決を経ておらず、違法・不当である。
【不動産の寄附採納】
 オサカベ自動車は、安中市に対して、平成19年12月10日に突然寄附したいと言い出した。ところが、安中市はずっと前の平成19年1月26日に、オサカベ自動車からの道路用地寄附を前提とした道路計画を立てて測量を行い、12月5日には設計図まで描いている。
 また、オサカベ自動車から岡田市長あてに平成20年1月7日に寄附採納願が出されているが、その僅か3日後の1月10日に、岡田市長は寄附を受け入れている。
 通常は、個人や法人が所有する不動産を無償で取得する場合は、それが安中市として公共の用に供し、有益若しくは有用な財産でなければならない。
 また、寄附申出書を受理したときは、現地踏査、公図及び登記簿の調査を行い「寄附物件の調査表(不動産)」を安中市が作成し、当該寄附申出物件が真に有益等財産であるか、寄附に起因して財政負担が伴わないか等について、必要に応じて有識者又は関係機関、関係団体の意見を聴くなどして受諾決定の参考にするとともに、結果を市長に報告させることが必要だ。
 その上で、調査及び審査が完了したときは、関係資料を添えて市長の決裁を得て、寄附採納を決定し寄附申出者に寄附受諾書を交付するのが通常のパターン。寄附受諾書の交付が完了した場合は速やかに不動産及び登記に必要な書類の引渡しを受けて嘱託登記を行なう。
 ところが、今回は、たった3日で調査及び審査が完了し、まだ寄附を受けた土地が安中市のものになっていない1月25日に入札を行い業者が工事に着手している。嘱託登記が済んだのは3月5日となっており、手順がメチャクチャだ。
 しかも、1月10日付けの岡田市長からオサカベ自動車宛の「寄附受納書」には、寄附として受け入れた物件の土地の地番が「安中市岩井字西ノ平874番1の一部」というのが4箇所も記載されており、明らかに事実と反している。よほど慌てて書類を準備した模様だ。
【寄附物件の工事の起工及び契約締結】
 寄附物件に関する工事の起工及び契約締結をしようとする場合、寄附申出書(採納願)並びに寄附受諾書(受納書)を決裁文書に添付しなければ成らないと思われるが、そうした決裁文書は開示されなかった。安中市の説明では「庁議は開催しておりません」ということから、庁議記録は不存在なので、当然ながら決裁をしていないものと見られる。決裁なしで行なわれた事業は、明らかに違法だ。

第3 回復不可能な損害発生
すでに同事業に関する公金支出が計上されており、無駄な支出が確定している。

第4 監査委員に求める措置
安中市監査委員は、安中市長ないし全ての支出手続担当者は、違法な公金支出を行なったにもかかわらず、損害回復の措置を怠っているので、違法に支出した全額の返還を命じること。

2 請求人
  住所  安中市野殿980番地
  職業  会社員
  氏名  小川賢(自署)印

地方自治法第242条第1項の規定により別紙事実証明書を添え必要な措置を請求します。

平成20年10月21日
安中市監査委員あて

【事実証明書】
対象行為に関する情報
1 平成20年2月26日付で安中市長が開示した資料一式
2 平成20年2月26日付で安中市長が部分開示した資料一式
3 平成20年4月8日付で請求人が安中市長宛に出した質問状
4 平成20年4月16日付で安中市長からの回答FAXと追加開示資料一式
**********

■安中市の監査委員は、請求書が提出された後、請求の要件審査を行い、要件を備えている場合には、監査の実施を行ないます。監査の手順としては、暫定的停止勧告の要件のチェック、請求人の陳述、執行機関等の陳述、関係書類等の調査、事情聴取等を経て、監査結果の決定を行い、請求書の受付日から60日以内に、請求人に通知をすることになっています。

■地元住民の同意書を、地元区長を使ってでっち上げ、岡田市長のシンパの協立精工所に隣接地権者としての協力を求めれば、必要な書類は容易に完備できます。公有地をからめた、特定の法人や個人に対する土地や道路の便宜供与は、岡田市長の得意とするところです。今回、あまりにも露骨な、オサカベ自動車への便宜供与は、岡田市長と同社とのあいだに何らかの取引があったことをうかがわせます。安中市の2名の監査委員には、再発防止の意味でも、しっかりと監査してもらいたいものです。

なお、請求人への陳述の機会は11月下旬に与えられるものと見られます。

【ひらく会事務局】


写真上:雑草が茂る未舗装の市道。市役所のバリケードで半年以上も通行止め。左が協立精工の敷地。右側がオサカベ自動車の所有地。


写真上:オサカベ自動車の進出予定地。東邦亜鉛による重金属汚染土地がこうして開発されると、東邦亜鉛の土壌浄化対象地がその分減少し、東邦亜鉛にとっては大きなメリット。岡田市長への政治献金が奏功していると言えよう。
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多胡運輸親族の語る「出来る限り・誠心誠意の償い」の真の意味?

2008-10-26 22:11:00 | 土地開発公社51億円横領事件
■8月3日に起きた多胡運輸所有のタンクローリー横転炎上事故で損傷を受けた東京都板橋区の首都高速5号線が10月14日正午に全面復旧したことが報じられました。

首都高速道路会社は10月14日、事故を起こした高崎市に本社がある多胡運輸に損害賠償を請求することを発表しました。賠償金の試算の基になるのは復旧工事費約20億円。08年8月、9月の通行止めや渋滞などから発生したと考えられる25億4千万円の減収分で、合計45億4千万円にもなります。

首都高広報はマスコミの取材に対し、「支払い能力のある無しにかかわらず、賠償請求はきっちり行います」と話しています。ただし今回の事故による減収分の請求に関しては、景気の動向や原油高の影響を考慮することになるとし、請求額が決定するのは今度中としています。

■一方、マスコミから賠償金を支払う能力があるかどうか訊かれた、今回事故を起こした多胡運輸は、「まだ確定した賠償請求が来ていないため(支払えるかどうか)わからないが、誠心誠意対応していきたい」と話したが、同社がどれだけの保険に入っているかについては、「担当者が不在でわからない」ということでした(J-CASTニュース)。

他のマスコミの報道によると、多胡運輸は「被害額を聞いて驚いている。できる範囲で誠心誠意、対応させていただきたい」と話しています(スポニチ)。

この2社の取材結果を見ると、多胡運輸は「まだ確定した賠償請求が来ていない」「被害額を聞いて驚いている」「出来る範囲で誠心誠意対応したい」というコメント内容だったことになります。ただし「担当者が不在で分からない」ということから、多胡茂美社長自身のコメントだったかどうかは定かではありません。

■平成7年に発覚した前代未聞の安中市土地開発公社51億円事件では、単独犯とされた多胡邦夫・元職員の刑事裁判で、元職員とその配偶者は次のように発言しています。

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出典:平成7年(わ)第333号被告人供述調書(第6回公判調書)平成8年2月1日
【検察官】今民事訴訟行なわれてますけど、群馬銀行、被害者か、あるいは安中市が負担することになりますね。
【多胡邦夫】はい。
【検察官】あなたは、これについては、どうしようと思ってますか。
【多胡邦夫】一生かけて誠心誠意償っていくつもりでおります。
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出典:平成7年(わ)第333号被告人供述調書(第5回公判調書)平成8年1月18日
【裁判長】もう半年以上たっているじゃないですか。
【配偶者】まず骨董品の処分をどうにするか、(夫である多胡邦夫の弁護士の)穂積先生にいろいろ、どういう処分の仕方がいいのか。骨董品というのはふだん我々の生活にないものですから、処分の仕方が非常に難しかったんですね。そういうこともあって、時間がかかってしまいました。一つ一つやっていったら、結局時間が足りなくなってしまったんです。
【裁判長】自宅はまだ持ち家ですか。
【配偶者】今は貸家に住んでます。
【裁判長】質問だけ受けていたわけですが、あなたのほうから言いそびれたような点ありませんか。
【配偶者】特にないと思います。
【裁判長】こういうことを話しておきたいということはありませんか。
【配偶者】ご迷惑をおかけした皆様には大変申し訳ないと思ってます。できるかぎりの償いをさせていただきたいと思います。
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このように、安中市土地開発公社51億円横領事件の刑事裁判で、元職員とその配偶者が「償い」について前橋地裁で語ったキーワードは「誠心誠意」「出来る限り」でした。今回、多胡運輸の関係者がマスコミに語った言葉にも「誠心誠意」「出来る範囲で」というフレーズがあります。

■安中市民は、こうした言葉を信用することができません。なぜなら、元職員をはじめ、その親族からは51億円事件の償いは、刑事事件、民事事件とも判決後すでに10年ちかく経過していますが、1000万円程度の償い、それも安中市土地開発公社が渋々(?)参加した元職員の所有していた不動産の一部を差押え参加して得られた金額であり、親族から積極的に償われたものではないからです。元職員の親族の頭からは、当の昔に「賠償」という言葉は消えていることでしょう。

■現在、元職員は仮出所中ですが、所在は明らかではありません。元職員の配偶者も同様です。従って、唯一、所在の確かな親族は多胡運輸の社長と、同社役員の母親だけです。実兄であり実子が起こした世紀の巨額詐欺横領事件の尻拭いが、全て安中市民により行なわれている現状を横目に、大物政治家の息のかかった元請から安定した仕事を得て社業を伸ばしてきた多胡運輸ですが、安中市土地開発公社51億円事件の賠償の傘から逃れた経験があるだけに、今度の首都高炎上事故による巨額損害賠償に対して、どうやってスルリと身をかわそうとするのか、或いは、果たして身をかわす事が出来るのかどうか、今後の展開に注目したいと思います。

【ひらく会情報部】
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首都高完全復旧!著しく小額の「被害額」が物語る今後の行方

2008-10-19 01:47:00 | 首都高炎上とタゴ運輸
■8月3日の日曜日の早朝、タンクローリーの横転炎上事故で甚大な損傷を受けた首都高5号線の熊野町ジャンクション付近の現場が、10月14日に完全復旧しました。その報道内容は次のようなものでした。

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首都高5号炎上事故から2ヶ月半で全面復旧 被害額は最大45億円
 首都高速道路会社は10月14日、首都高5号線で8月3日にガソリンを積んだ大型トレーラーが横転し炎上した事故による被害額は、最大45億円に上る見通しと明らかにした。本年度内に賠償請求額を確定し、事故を起こした群馬県高崎市の多胡運輸に求める方針。
 一部通行止めが続いていた5号線は、復旧工事が終わり10月14日、約2カ月ぶりに全面復旧した。首都高速道路会社は当初、全面復旧を11月上旬と見込んでいたが、天候に恵まれたことや工程の工夫で、予定より約1ヶ月早まった。
 事故は8月3日に発生。復旧工事では一部を通行止めにしながら、熱でゆがんだ橋げたを40メートルにわたり架け替えた。首都高速道路会社によると、今回の工事は「首都高史上最大の改修」(広報担当者)という。
 首都高によると、通行止めがあった8、9月の料金収入は25億円減少。さらに熱でゆがんだ橋げたの掛け替えなどの復旧工事費は20億円となる見込み。
 ただ料金収入の減少は、ガソリン高でマイカー利用が減ったなどの要因もあるとみられ、首都高は事故の影響でどれだけ減ったかを精査、請求額を確定する。
 記者会見した首都高の佐々木克己社長はガソリン運搬を依頼した荷主にも賠償請求できるかどうかも検討する方針を示した。
 事故は8月3日、東京都板橋区の首都高速池袋線下りと中央環状線外回りの合流地点付近で発生。一部区域の通行止めなどで、迂回路の一般道が渋滞し、バス会社や運送業者に打撃を与えた。
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■このニュースの翌日の10月15日(水)午後4時47分に、当会の事務局長の携帯電話に、首都高速道路会社から電話がありました。しかし事務局長はその際、携帯電話を身につけていなかったため、午後6時50分まで気付かずにいました。午後7時前に、電話を入れたところ、首都高速道路からの電話であることを知りました。既に担当者が帰ったとのことで、再度連絡を依頼したところ、翌16日(木)午前8時41分に電話がありました。

既報のとおり、当会では、9月後半に地元で「最近、多胡運輸の代表者が雲隠れしたらしい。18億円の請求が舞い込んだからだ」という非公式情報を入手したため、事実関係を確認すべく、9月28日付けで首都高速道路会社あてに、情報公開請求を行っていました。

請求の内容は「8月3日早朝の首都高速道路熊野町ジャンクション付近のタンクローリー横転炎上事故に起因する貴社の収入減と復旧工事に要した費用のうち、タンクローリーの所有会社に請求することを決めた金額」でした。同社が、この請求情報についてどう判断したのか、事務局長は、携帯電話を耳に押し当て、首都高の回答をじっと待ちました。

■首都高速道路会社の情報開示担当部署は総務・人事部の総務グループだと思っていましたが、電話に出たのは営業部の担当者でした。回答の趣旨は次のとおりです。
1)まだ(多胡運輸への)請求額が決まっていない。従って、請求情報は不存在という扱いになる。
2)不存在という形で通知をすると手数料がかかる。取り下げにするのであれば、頂いた開示請求書を返送したい。

このように、首都高速道路会社では、まだ多胡運輸に請求を出していないことが判明しました。請求を出す時期について、質問したところ、「工事費用については、まだ復旧に伴う工事が残っているので確定していないこと。また、減収分については、燃料高騰による減少要素など、さらに分析を加える必要があるので、未確定であること。復旧工事費が20億円で、減収分が約25億円という数字については、報道でそのような数値だけが先走りしてしまっている感がある」と困惑気味の説明でした。

当会事務局長は、「そういう状況であれば、仕方がないので、異議申立はせずに、取り下げに同意したい。しかし、今後、経過を見てから、再び情報開示の必要があれば、相談させていただくかもしれない」と述べて、「きちんと精査してから、請求できるようになる時期はいつごろか」と質問しました。首都高速道路側は、この質問には答えず、「ホームページなどで、常に状況についてはお知らせしてゆく」との方針を示しました。

■電話での回答と、先に報道された首都高速道路会社の見解などをみると、次のことが推測されます。

8月28日の記者会見で、同社の藤井敏雄常務執行役員は「事故に起因する収入減と復旧工事に要する費用は、タンクローリーの所有会社に請求する」と話しました。当時から、交通量の減少は、天候やガソリン高の影響も勘案して、同社は事故による減少分を精査していたはずです。にもかかわらず、復旧工事が終わって、ほぼ損害額が確定した現時点でも、いまだに、請求をせずに、慎重な対応をしているところをみると、それなりの理由があると見られます。当会は、この理由はやはり多胡運輸を取り巻く特殊環境にあるのではないか、と考えています。

■8月29日の日経BPの報道では、「首都高速道路会社が多胡運輸に損害賠償を請求した場合、多胡運輸が加入している関東交通共済協同組合の共済を使って賠償額を支払うとみられる。ただし、危険物を搭載するタンクローリーの損害保険や共済は、無制限の契約であっても、支払い条件を定めた様々な特約が付くのが一般的。多胡運輸や同組合が首都高速道路会社の請求に対してどこまで応じられるのかどうかは不明」としています。

一方、この事件を報じている数少ないメディアとして、「マガジンX」11月号に、「損害賠償を請求されたら保険会社は支払ってくれるの?」という見出しで、この問題について詳しい記事を掲載しています。

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 一説には「100億円にのぼるのではないか」とまで言われ、その巨額の賠償額に注目が集まる首都高速タンクローリー炎上事故。詳しい事故原因は現在(9月14日)も調査中ながら、タンクローリー運転手に過失がある可能性が高いという。そこで、もしこのような事故を一般ドライバーが起こしてしまった場合、このように巨額な賠償金を保険会社が支払ってくれるのかを調査した。

事故以外の請求が多く非常に難しい立証問題

 マスコミ各社でも報道されているように、今回の事故による物理的、経済的損失はとんでもない金額になると言われている。もちろん、世間で騒がれているような賠償請求が実際に行われ、それらを支払う義務が生じた場合には恐ろしい金額を支払うことになるのだが、実はこの請求は非常に難しい問題でもある。とくに「通行止めが原因と思われる利用者の減少による売上げの損失」に関しては、過去の高速道路事故においても賠償事例が極めて少ない。これは、請求する側に「損失を受けたことを立証する責任」があり、立証することが非常に難しい問題だからだ。今回の事故においても、お盆時期と重なっていることもあり、現在のクルマ乗り控えの影響なども原因の一つとして考えられる。そうなると、「絶対にこの金鎖が損失額です」という理由付けが困難になってくるのだ。
 とはいえ、今回は「実際に保険会社から支払われるのか」ということが課題。それを調査したところ、今回の事例について、某大手保険会社一からは「支払う」という返答を得た。
 同社の話しでは、まず事故を起こした場合、当事者には「原状回復義務」というものが発生する。これは事故を起こす前の状態に回復しなければならない責任、つまり事故により物を壊してしまえば元に戻す責任が生じるというもの。対物無制限の任意保険とは、この原状回復義務によって当事者が賠償の責任を負ってしまった場合、それが物であれば、その物損の回復にかかる費用を保険会社で支払います、というものであり、それが例え数十億円であろうと、被保険者に法的に支払う義務が生じた場合は、保険の適用内容と過失割合に応じて支払うという話しであった。
 今回の事故のケースを照らし合わせると、微妙な返答があった。それは、事故によって起きた火災に関しての賠償だ。実は自動車保険の多くは、この火災に関して、事故によって起きたとしても保険の適用外となっているケースが多い。簡単に説明すると、火災によって生じた損害は任意保険が適用されない場合がある。事故後、積み荷などが炎上し燃え移ったことによって起きた損害は、対物賠償の対象外になっているのだ。よって、保険会社が「支払う」と言っているのは、事故により直接的に被害の出たものだけ。それ以外、火災などの特殊な二次被害に関しては支払われないと考えて間違いなさそうだ。・・・
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■おそらく、首都高速道路会社も、こうした立証責任をはじめ、多胡運輸の賠償能力等についても、詳しく調べているからこそ、完全復旧としながらも、依然として多胡運輸への対応には慎重になっているのだと思われます。10月14日の記者会見で、同社の佐々木克己社長が「ガソリン運搬を依頼した荷主にも賠償請求できるかどうかも検討する方針」を示したのも、多胡運輸の賠償能力に対する懸念によるものだと思われます。

本来、貨物自動車運送事業法の第26条(事業改善の命令)によれば、「国土交通大臣は、一般貨物自動車運送事業の適正かつ合理的な運営を確保するため必要があると認めるときは、一般貨物自動車運送事業者に対し、次に掲げる事項を命ずることができる。 一、事業計画を変更すること。 二、運送約款を変更すること。三、自動車その他の輸送施設に関し改善措置を講ずること。四、貨物の運送に関し生じた損害を賠償するために必要な金額を担保することができる保険契約を締結すること。 ・・・(以下略)・・・」とあります。

このことから、事業免許の交付を受けている多胡運輸は、貨物運送で生じた損害を賠償するのに必要な金額を担保できる保険契約を締結しているはずです。しかし、首都高速道路会社は、国交省の事業免許が不十分な審査のまま交付されたことを知っているようです。

■ところで、首都高速道路会社が季刊で発行している「ネットウェイ」という広報誌の2008年秋号(第80巻)に、佐々木社長の挨拶が載っています。

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新社長ごあいさつ
平成20年6月27日、首都高速道路株式会社社長に佐々木克己が就任しました。
<Profile:東京都出納長、東京都住宅供給公社理事長などを経て、平成15年6月から首都高速道路公団副理事長、平成17年10月から首都高速道路株式会社専務取締役を歴任。68歳>
 民営化後2年半が経過し、ネットワーク整備、機構への賃借料の支払い等、基礎的な経営基盤が整った段階を迎え、当面の重要な課題は距離別料金割への移行です。現在、できる限り早い時期の移行をめざして関係機関と調整中です。
 その最中、首都局では過去最大の5号池袋線タンクローリー炎上事故が起き、街路にまで多大のご迷惑をかける事態が生じました。全面復旧までなお時間を要しますが、この事故で改めて首都高の果たす役割の大きさも理解されました。
 それゆえ今後一層使いやすく、より愛される首都高であると同時に首都圏の経済・社会を支えつつ、グローバルな都市間競争に打ち勝つ美しい首都高速道路の構築にむけ、努力していかなければと決意しております。
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■新任挨拶で前代未聞の首都高破損の大事故に触れざるを得なかった佐々木社長にとって、また民営化後僅か2年余りでこのような面倒な事件に遭遇した同社にとっても、まことに不運と言わざるを得ませんが、さらに運の悪いことに、事故を起こした運送会社やその元請会社が、一筋縄ではいかない会社であることです。

勿論佐々木社長は、既にそのことはご存知のはずです。もともと天下りですから役所とのパイプも充分お持ちでしょうし、国交省が多胡運輸に出した処分についても、事前に情報を得ていたことでしょう。それだけに、国交省が出した処分の軽さや、世間では100億円は下るまいと予想された賠償額が半分以下だったことなど、早くも、多胡運輸を取り巻くバリアーの存在を強く意識しているのではないか、と推察する声もあります。

どのように多胡運輸及びその元請の運送会社、さらには業務発注元のアポロマークの企業を絡めて、首都高速道路会社が、どのような戦略を立てて、賠償請求をするのかどうか、そして法廷に持ち込んでの争いも視野に入ってくるのか・・・。損害額のツケを税金やユーザー利用料で賄うことのないよう、目の離せない展開が今後待ち受けていることは確かです。当会では、今後のこの問題の行方について、引続き分析予測を行なってまいります。

【ひらく会特別調査班】

写真上:首都高速道路会社の本社がある日土地ビル(霞が関1-4-1)
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安中フリマ中止問題で、未来塾が岡田市長と安中市を提訴

2008-10-13 10:44:00 | 安中フリマ中止騒動
■9月18日の新聞各紙の朝刊に次の趣旨の記事が掲載されました。当会では、さっそく安中市に対して「この事案に関する一切の情報(訴状、起案書もしくは回議書、マスコミ発表原稿、答弁書、準備書面等を含む)」の情報開示請求を9月27日付けで行いました。

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安中市長らを名誉毀損で提訴 フリマめぐり市民団体

 1992年から安中市でイベント「フリーマーケットinあんなか」を主催していた任意団体「未来塾」と松本立家代表は17日、同イベントの2007年10月の中止などをめぐり、「事実と異なる内容の記事を市の広報紙に掲載され、名誉を棄損された」などとして、同市の岡田義弘市長と市を相手取り、総額800万円の損害賠償と謝罪記事の掲載などを求める訴訟を前橋地裁高崎支部に起こした。
 訴状などによると、同イベントは1992年から市施設を使って年2回開催していたが、施設利用料は免除されていた。市側がこの免除方針を変更したため、原告の松本代表は、岡田市長を含む市関係者と2007年9月10日に「意見交換会」を行なったが、その後、そのやり取りの内容を岡田市長が執筆して、市が同年12月21日付の広報紙「おしらせ版あんなか」に掲載した。
 原告側は「掲載内容は虚偽。不正な活動をしているよう印象付けられ、原告らの社会的信用や評価を不当に低下させられた」と主張。損害賠償のほか、広報紙への謝罪記事掲載などを求めている。
 提訴に対し、岡田市長は「訴状を見ていないので詳細は言えないが、(広報紙で)事実と異なることは述べていないので、裁判でその点に関してはっきりさせたい」とコメントを出した。
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■ところで、9月17日に名誉毀損で提訴後、未来塾代表らが記者会見をしましたが、当初は群馬テレビで午後6時台のニュースで放映される予定でした。ところが、予定の時間になっても放映されません。たまたま、その時間に、岡田市長の地元の岩野谷地区で集会がありました。秋の行事について、あれこれ打合せをしていた最中に、岩野谷地区の区長代表の携帯電話が鳴りました。なんでも「岡田センセイが提訴されたが、とりあえず記者会見はテレビに出なかったよ」というような内容だったそうです。地元で岡田市長の覚えめでたい代表区長に、誰かがさっそく報告したようです。岡田市長が得意とする政治的圧力とやらで、実際には、岡田市長のコメントやら表情やら、都合の悪いところを修正したバージョンが、当初より遅れて、午後9時半のニュースで放送されたものと見られます。

■9月27日付の当会からの情報公開請求に対して、安中市は10月10日付で情報を部分開示しました。開示された情報によると、次のことが判明しました。

訴状は本文のほか、証拠書類として甲第1号証から第31号証まで添付されており、全部で150数ページにもなる大作です。9月17日に原告の未来塾側から前橋地裁高崎支部に訴状が提出されて受理されたあと、9月29日付で、前橋地裁高崎支部合議2係の裁判所書記官から「被告 安中市代表市長岡田義弘」宛に、「口頭弁論期日呼出及び答弁書催告状」が発送されました。それによると、事件番号は「平成20年(ワ)第492号」で、事件名は「損害賠償等請求事件」となっています。裁判書に出頭する期日及び場所は、平成20年11月13日(木)午前10時00分口頭弁論期日、前橋地裁高崎支部3階第1号法廷で、被告岡田義弘に対して、答弁書を平成20年11月6日(木)までに提出するよう指示がなされています。

安中市役所の事務担当者らの話によると、「市長は『弁護士を起用せず、自分でやる』と言っているそうです。どうやら、新聞記事にもあるように、岡田市長は、売られたケンカを買うつもりのようです。もっとも、最初に未来塾にケンカを売ったのは岡田市長でしたが・・・。

■安中市には渡辺明男という新島学園出身で同校の同窓会長も務める顧問弁護士がいます。事務方としては、弁護士を起用したほうがよいという意見があるようですが、いまや市役所で怖いものなしのワンマンの岡田市長の意向は尊重せざるを得ないのでしょう。しかし、弁護士を起用しないで裁判をして、果たして勝てるのか。そうでなくとも、明らかに市側に分が悪そうな裁判です。事務担当者らはハラハラしています。でも、岡田市長のクビに鈴を付けられる者は誰もいないでしょう。

今回の提訴で、岡田市長と一緒に訴えられている安中市としては、「岡田市長が敗訴して、安中市は勝訴する」という判決が望ましいのでしょうが、そうはいきません。下手に裁判で敗訴したら、今度は敗訴に伴う出費について、市民から住民監査請求で追及されるかもしれないためです。

■当会では、かつて安中市土地開発公社51億円横領事件の責任を問うべく、当時の公社理事・監事、そして単独横領犯とされた服役中の元職員やその上司らを対象に、損害賠償請求訴訟を行なったことがあります。そのとき、服役中の元職員は、裁判所が勝手に被告から外し、その他の被告らは「以後、二度とこのようなことが起こらないように強く反省している」として和解をしましたが、ただひとり、岡田市長(当時は県議)だけが、「和解に応じたのは、原告住民の主張に正当性がないためだ」として裁判官に圧力をかけ、当会メンバーら住民側敗訴の判決を出させたことがあります。早速、当会は東京高裁に控訴しましたが、当日、岡田市長が自分で書いた答弁書を事前に提出したはずですが、裁判所は口頭弁論の席上、なぜかそのコピーを当会によこしませんでした。遺憾ながら裁判長は、原告の控訴を退け、前橋地裁での一審判決を支持して、住民側敗訴の判決を出しましたが、岡田市長が自分で書いたとされる答弁書を原告に渡さなかったところをみると、よほどその内容を原告に見せるのをはばかったものとみられます。

■このときは、岡田市長(当時は県議)は弁護士を起用しませんでしたが、今回は、首長として訴えられており、使用者責任として安中市を巻き込んでいます。弁護士の起用をするのかどうか、最終的に、岡田市長がどう判断するのかが注目されます。

一方、原告の未来塾とその代表者は、東京の弁護士を起用しています。群馬県の弁護士は、大なり小なり、群馬県の自治体との関わりを持っているため、しがらみの少ない東京の弁護士を起用したことは、有効な判断と見られます。

■訴状を読む限り、原告の主張の理論構築は相当強固だと感じますが、裁判は水物です。しかも被告は、マスコミや司直も自由自在に操れる政治力を持っていますので油断はできません。
51億円事件の損害賠償請求訴訟の場合、当会が起用した原告弁護士にさえ内緒で、裁判所が被告の岡田市長に突然の勝訴判決を出しました。今回の未来塾による名誉毀損の損害賠償請求の場合も、地裁高崎支部が原告勝訴判決を出した場合、あるいは裁判所から和解勧告が出された場合、負けず嫌いな岡田市長のことですから、和解にも応じないで、必ず東京高裁に控訴するはずです。その場合に備えて、原告側が東京の弁護士を予め起用しておくことは、それなりの意味があると思われます。

それにしても、このような裁判は、全国でもはじめてだと思われます。この事件は、安中市の市政の異常さを象徴する一例と言えるでしょう。

11月6日までに、岡田市長と安中市がどのような答弁書を裁判所に出すのか、また、訴訟代理人を誰にするのか、引続き注目していきます。

【ひらく会情報部】
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大甘の行政処分で浮かぶ多胡運輸を取り巻くバリヤーの存在

2008-10-11 23:15:00 | 首都高炎上とタゴ運輸
■10月10日(金)の午後9時過ぎから深夜にかけて、多胡運輸に行政処分が出たというニュースがネット上に報じられ、翌11日の新聞の群馬版でも掲載されました。各紙が報じた内容は次のとおりです。(記事内容は東京新聞記事をもとに、各紙の報道内容を一部加味してあります)

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多胡運輸に行政処分 国交省関東運輸局 首都高炎上事故で

 国土交通省関東運輸局は10月10日、東京都板橋区の首都高速道路で8月、タンクローリーが横転・炎上した事故で、運転手の男性(45)が勤める運送会社「多胡運輸」(群馬県高崎市、多胡茂美社長)に貨物自動車運送事業法違反などに基づく行政処分を出した。本社営業所の車両5台を55日間使用停止とし、運行管理者の一人である多胡社長に資格者証の返納を命じた。
 事故を端緒として運輸局が特別監査を行った結果、運転手への指導・監督不足や過労運転の防止義務違反、初任者に対する指導教育が実施されていないなど計8件の違反が分かった。
 事業免許の取り消しや停止などの処分に至らなかった理由について、同運輸局は「事故の死亡者はおらず、運転者に飲酒などの悪質行為がなかったため」としている。
 同社をめぐっては、8月3日午前3時50分ごろ、同社員が運転する大型タンクリーリートレーラーが、東京都板橋区の首都高池袋線の下りと中央環状線外回りの合流地点付近で横転。漏れ出したガソリンや軽油が炎上し、道路が熱で変形し一部区間が通行止めとなる事故が起きていた。10月14日全面復旧の予定で、運転手は腰の骨を折る重傷を負い、入院中。
 同社は「下された処分は厳粛に受け止め、再発防止に努めたい。異議申し立てなどは考えていない」としている。
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■そこで、関東運輸局が多胡運輸に行政処分を出した根拠とされた「貨物自動車運送事業法」なる法律をチェックしてみました。

●貨物自動車運送事業法とは、道路運送事業法からトラックの事業規制を切り離し、1989年に施行された道路運送事業法のことです。トラック事業について、事業の免許制を許可制に改めるなど、経済的な規制が緩和され、輸送の安全確保を目的に社会的規制を強化し、事業の自己責任を明確としました。従来の路線トラックと、区域トラックの事業区分を廃止するとともに、区域トラックでの貨物積合せが可能となりました。
●貨物自動車運送事業を始めるには、経営許可を取得する必要があります。会社や個人の方から貨物の運送の依頼を受け、自動車を使用して運送し、その対価として運賃や料金を受け取る仕事がこの事業にあたります。
●運送に使用するトラックは小型貨物車(4ナンバーのトラック)、普通貨物車(1ナンバーのトラック)、冷凍食品、石油類などの運送に使用する特種車(8ナンバーのトラック)、またいわゆる軽トラックと呼ばれている軽自動車(40ナンバーのトラック)などを使用して貨物を運送します。
●貨物自動車運送事業に使用する車両のナンバープレート(自動車登録番号標)の色は、軽自動車であれば黒地に黄色の文字、これ以外は緑色地に白文字になっています。通常これらは総称して「営業ナンバー」または、「青ナンバー」と呼ばれ、自家用自動車と区別されています。
●一般貨物自動車運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を受ける必要があります。実際の書類の提出先は、営業所を管轄する運輸支局に提出します。
●許可の基準は、「事業計画が過労運転の防止その他輸送の安全確保に適切」「事業遂行上適切な計画を有する」「事業を自ら適確に遂行するに足る能力を有する」こととされています。さらに、これに加えて、一般貨物自動車運送事業の許可を受けるためには、貨物自動車運送事業法及び運輸局長が定め公示した基準に適合しなければなりません。この基準は大きくわけて次の項目から構成され、項目毎に細かな基準が定められています。①営業所 ②車両数 ③事業用自動車 ④車庫 ⑤休憩睡眠施設 ⑥運行管理体制 ⑦資金計画 ⑧法令遵守 ⑨損害賠償能力
●この場合、欠格要件は次のとおりです。
・1年以上の懲役または禁錮の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
・一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可の取消しを受け、その取消しの日から2年を経過しない者(当該許可を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しに係る聴聞の通知が到達した日前60日以内にその法人の役員であった者で当該取消しの日から2年を経過しないものを含む)。
・営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者又は成年被後見人であって、その法定代理人が上記2つのいずれかに該当するもの。
・法人であって、その役員のうちに上記3つのいずれかに該当する者のあるもの。

ここで、安中市民としては、当然、次の疑問が生じます。

【疑問その1】
安中市土地開発公社51億円事件で、安中市元職員の多胡邦夫から、多額の横領金を受け取った親族らが設立した運送会社に、なぜ一般貨物自動車運送事業法による許可が出されたのでしょうか?

●貨物自動車運送事業法では、輸送の安全性を確保するため、同法第16条で、「事業の運営方針」「事業の管理体制」「事業の管理方法」「安全統括管理者の選任」からなる安全管理規程等を定めています。

【疑問その2】
今回の処分では、「運行管理者」が処分対象となっていますが、「安全統括管理者」に対しては何も処分がなかったようです。多胡運輸では誰がこの安全統括管理者だったのでしょうか?

【疑問その3】
国土交通大臣は、安全管理規程が前項の規定に適合しないと認めるときは、当該一般貨物自動車運送事業者に対し、これを変更すべきことを命ずることができる(第16条第3項)はずですが、「運行管理者」の一人に過ぎない多胡茂美社長の資格証を返納させただけで、安全管理規定の変更は命じたのでしょうか?

【疑問その4】
国土交通大臣は、安全統括管理者がその職務を怠った場合であって、当該安全統括管理者が引き続きその職務を行うことが輸送の安全の確保に著しく支障を及ぼすおそれがあると認めるときは、一般貨物自動車運送事業者に対し、当該安全統括管理者を解任すべきことを命ずることができる(第16条第7項)はずですが、なぜ「安全統括管理者」については、おとがめがないのでしょうか?

【疑問その5】
多胡社長は、「安全統括管理者」の資格をもっていなかったのでしょうか?

●同法第17条第1項では「一般貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の数、荷役その他の事業用自動車の運転に附帯する作業の状況等に応じて必要となる員数の運転者及びその他の従業員の確保、事業用自動車の運転者がその休憩又は睡眠のために利用することができる施設の整備、事業用自動車の運転者の適切な勤務時間及び乗務時間の設定その他事業用自動車の運転者の過労運転を防止するために必要な措置を講じなければならない」、また、第2項では「過積載指示」の禁止について定めてあります。

【疑問その6】
報道によれば「事故を端緒として運輸局が特別監査を行った結果、運転手への指導・監督不足や過労運転の防止義務違反、初任者に対する指導教育が実施されていないなど計8件の違反が分かった」とあります。どうやら過労運転による運転(居眠り運転?)が、横転炎上事故の直接原因であることを示唆していますが、その他の7件と、事故との関係は一体なんだったのでしょうか?
例えば、初任者に対する指導教育不足として、過積載、速度超過、わき見運転などが背景にあったのでしょうか? となると、初心者を運転手として雇用していたのでしょうか?

●同法第18条は「一般貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の運行の安全の確保に関する業務を行わせるため、国土交通省令で定めるところにより、運行管理者資格者証の交付を受けている者のうちから、運行管理者を選任しなければならない」と定めています。この運行管理者資格者証は、「運行管理者試験の合格者」で「運行の安全確保に関する業務について国土交通省令で定める一定の実務の経験その他の要件を備える者」に交付されています。また、同条第2項では、「運行管理者資格者証」は返納を命ぜられて2年以内の者や、この法律に違反したり、この法律の規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年以内の者には交付しないとあります。

【疑問その7】
となると、多胡社長は、平成22年10月11日に、運航管理者資格証を再交付されることになります。あれだけの事故を起こしておきながら、運行管理者の一人の多胡社長だけが、2年間、運行管理者になれないだけで、事がすまされるのでしょうか?

●同法第20条は「国土交通大臣は、運行管理者資格者証の交付を受けている者がこの法律若しくはこの法律に基づく命令又はこれらに基づく処分に違反したときは、その運行管理者資格者証の返納を命ずることができる」と定めています。同法第22条第3項では「一般貨物自動車運送事業者は、運行管理者がその業務として行う助言を尊重しなければならず、事業用自動車の運転者その他の従業員は、運行管理者がその業務として行う指導に従わなければならない」とあります。

【疑問その8】
運送事業者の多胡社長は、運行管理者である自分に対して、必要な権限を与えていたにもかかわらず、このような大事故を引き起こしたわけだから、運送事業者としての責任は重大だと考えられる。しかし、多胡社長は、単なる「運行管理者」としての資格剥奪だけで処分が済まされたのはなぜでしょうか?

【疑問その9】
また、運送事業者(=多胡運輸)としては、多胡社長の運行管理者資格者証を取上げられても、この資格を持っている従業員の中から管理者を選任すれば、従来どおり営業が可能ということになるのでしょうか?

●同法第24条では「事故の報告」として、「一般貨物自動車運送事業者は、その事業用自動車が転覆し、火災を起こし、その他国土交通省令で定める重大な事故を引き起こしたときは、遅滞なく、事故の種類、原因その他国土交通省令で定める事項を国土交通大臣に届け出なければならない。」と定めています。

【疑問その10】
多胡運輸がこの法律を守っているすれば(国交省はこの件では多胡運輸を処分していない模様)、いつ、どのような原因で事故が発生したのか、国交省はきちんと把握しているものと見られます。いまになっても未公表なのはなぜでしょうか?

●同法第24条の2では「国土交通大臣は、毎年度、第23条の規定による命令に係る事項、前条の規定による届出に係る事項その他の国土交通省令で定める輸送の安全にかかわる情報を整理し、これを公表するものとする。」とあります。また同法第24条の3では「一般貨物自動車運送事業者は、国土交通省令で定めるところにより、輸送の安全を確保するために講じた措置及び講じようとする措置その他の国土交通省令で定める輸送の安全にかかわる情報を公表しなければならない」とあります。

【疑問その11】
国交省に聞いてみたいのですが、これまでに多胡運輸は、輸送の安全について何か公表した形跡があるのでしょうか?

●同法第26条は「国土交通大臣は、一般貨物自動車運送事業の適正かつ合理的な運営を確保するため必要があると認めるときは、一般貨物自動車運送事業者に対し、次に掲げる事項を命ずることができる。
 1.事業計画を変更すること。
 2.運送約款を変更すること。
 3.自動車その他の輸送施設に関し改善措置を講ずること。
 4.貨物の運送に関し生じた損害を賠償するために必要な金額を担保することができる保険契約を締結すること。
 5.運賃又は料金が利用者の利便その他公共の利益を阻害している事実があると認められる場合において、当該運賃又は料金を変更すること。
 6.前各号に掲げるもののほか、荷主の利便を害している事実がある場合その他事業の適正な運営が著しく阻害されていると認められる場合において、事業の運営を改善するために必要な措置を執ること。」と定めています。

【疑問その12】
今回の大事故を踏まえて、国交省は多胡運輸にどんな改善命令を出したのでしょうか? その内容は公表されるのでしょうか?

●同法第33条は資格の取消について定めています。「国土交通大臣は、一般貨物自動車運送事業者がこの法律若しくはこの法律に基づく命令等、若しくは道路運送法の規定による処分又は許可若しくは認可に付した条件に違反のいずれかに該当するときは、6月以内において期間を定めて自動車その他の輸送施設の当該事業のための使用の停止若しくは事業の全部若しくは一部の停止を命じ、又は第3条の許可を取り消すことができる。」

【疑問その13】
事業免許の取り消しや停止などの処分に至らなかった理由について、同運輸局は「事故の死亡者はおらず、運転者に飲酒などの悪質行為がなかったため」としています。ということは、大事故であっても経済・社会・生活等に及ぼす影響は考慮の対象外、ということになり、今後、これが前例となるのでしょうか?

■このように、事故発生直後の8月5日に、無通告で行なわれた多胡運輸への特別立入監査の結果、仰天するほど甘い行政処分が出されました。この状況は、13年前の安中市土地開発公社51億円事件で、長期間、多数の関係者が関与したにもかかわらず、結局、元職員ただ一人だけが逮捕起訴されたときの、安中市役所周辺に渦巻いた安堵の声を想起させます。
10月14日に迫った首都高の完全復旧を目前にした現時点で、多胡関係者としての次なる最大の関門は、巨額の損害賠償請求をどうやって乗り切るか、今回の行政処分が「想定内」だったことから、次の関門に向けて、大いに自信を深めていることでしょう。
ちなみに、当会が9月28日付けで首都高速道路会社に出した「多胡運輸への請求金額」に関する保有情報開示請求の回答は、まだ来ていません。

■この処分が出た翌日の10月11日(土)、多胡運輸の事務所には照明が輝き、整備庫では点検清掃作業らしく、圧縮エアの音が響いていました。いつもは敷地内にすき間なく駐車してあるローリーやトラックも、何台か稼動中らしく、空きスペースが見られました。行政処分を難なくクリアした多胡運輸の目下の関心事は、巨額と目される損害賠償請求への対応ですが、国交省が事業停止や免許取消処分を出さなかったことは、我々の知らないところで、多胡運輸存続に関する何らかの措置がなされていることをうかがわせます。



また、出光興産やその関連会社の業務を多胡運輸に孫請けさせていた元請会社も、事務所内には煌々と照明が灯り、関係者の出入りが頻繁に行なわれていました。


【ひらく会特別調査班】

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