田舎に住んでる映画ヲタク

「映画大好き」の女性です。一人で見ることも多いけれど、たくさんの映画ファンと意見交換できればいいなぁと思っています。

私の、息子(Pozitia Copilui)

2014年07月27日 11時15分34秒 | 日記

 

子離れできない母親と交通事故で子供を死なせた息子との親子の葛藤を描き、第63回ベルリン国際映画祭にて金熊賞を受賞したヒューマンドラマ。監督は、初の長編作『マリア(英題)/Maria』でロカルノ国際映画祭審査員特別賞を受賞したルーマニアの新鋭、カリン・ペーター・ネッツアー。『4ヶ月、3週と2日』などのルーマニアを代表するベテラン女優ルミニツァ・ゲオルジウが、30歳を過ぎている息子に過度に干渉する母親を演じる。辛辣(しんらつ)かつ感動的に描写される母子の姿と、ラストに示される意外な展開が心に響く。(シネマトゥデイより)

 

 

 ルーマニア映画と言うと、ありきたりですが「4か月、3週と2日」くらいしか知りません。気付かずに見ているかもしれませんが。かの映画もなかなかに見応えがあったと記憶しているのですが、この作品もルーマニアではここ20年で国内最高のヒットと聞いて興味が湧きました。

物語はシンプル。要するに、過保護な母親と、一人で何もできないくせに度の過ぎた反抗を繰り返すバカ息子とのお話です。どこの国でもあるであろう永遠のテーマに、今回はどんな切り口が用意されているのか。予想外な展開を見せるのか。興味は尽きなかったのですが、結論から言うと、平凡な展開でした(ルーマニアのみなさん、ごめんなさい)。

意外だったのは、母親が一人息子にかかりきりの専業主婦ではなく、成功した建築士であり、今は舞台芸術も手がけていて、医師の夫がいるにはいるが、今ある地位と名声は自分が築いたものであったこと。そして、自分が出過ぎていることも(多分)認識している。「息子に嫌われていること」も理解しているし、息子のあまりな口答えにも、そう感情的にならずに理論的に反論したり、夫に対して「バカだ。妻の言いなりになっているだけのバカめ」と言ったのに対しても(明らかに言い過ぎだとは思うけど)、息子が帰ってから「そうね、当たっているわ」と認めたりする。

つまりは、今まであったような「マザコン映画」よりは、はるかに母親に自覚と認識があり、「どうしてわかってくれないのよ(泣)」的な感情表現はないということです。そこが新鮮でした。

しかし、過保護なことに変わりはなく、それが過ぎて同棲相手の悪口を言ったり、どんな生活をしているか内情を探ろうとするところは、ただのバカ親に見えます。

そして、最愛の息子が交通事故を起こして他人の子供を殺してしまったと知った時の、行動の素早さ。ルーマニアの内情に詳しくはないのですが、どうやら汚職警官も多いようで、暗に見返りを求められる場面も。そんなチャンスも逃しません。どうにか息子の罪を軽くするため奔走します。この辺はお金のある人独特のいやらしさも露呈します。

そもそも、冒頭では彼女の誕生日パーティーが華やかに開かれています。これだけのパーティを(60歳にもなって)開くというセレブ感が、なにかの風刺かもしれませんね。

そしてラストでは、被害者宅へと3人(母・息子・その恋人)で向かいます。ところがアホ息子はビビって降りて来ません。仕方なく母と恋人(つまり女性ばかり)で訪ねます。「○○さんのお宅ですか。このたびは申し訳ございません。私が母親です」とはっきり告げる母。さすがの度胸ですね。父親の存在感は皆無です。

しかしそこはそれ、息子しか見えてない母親ですから、向こうの両親を前にしても、お金の話こそすれ、自分の息子を守ることばかり口にし、やはり常人ではない印象を与えます。ここが不思議ですね。あれだけプロとして成功し、世間を見て来たはず、そして頭もいいはずの女性が、こういうことがわからないんですね。ふぅぅぅん、って感じでした。これ、たくさん子供がいると、また変わったのかしら。わからないですけど。

そして、帰途につく母親。車に乗っても泣きじゃくっていて、なかなか出発できません。相手の父親が見送っています。と、何を思ったか、息子が降りて向こうの父親に近づきました。車に乗っている母と恋人には何も聞こえません。が、最後には握手しているようです。

そして、突如原題「Pozitia Copilui(胎児の体勢)」が映り、そのままエンディングとなります。胎児の体勢とは、母親の胎内に丸まっている状態を意味するらしいです。

さて、ここをどう読むかです。これを持って、息子が母親から自立したと読む向きも多いようです。あるいは、二人がもう一度親子の絆を取り戻したとか。しかし、私個人的なことを言わせてもらうと、そんな簡単ではないと思うのです。確かに、自ら降りてなんらか謝罪(だと思う)できたことは進歩ですが、それはそれだけのことであって、それ以上ではないと思うのです。この二人の関係はまだまだ続くんじゃないでしょうか。あくまで私個人の考えですが。

 

 

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