田舎に住んでる映画ヲタク

「映画大好き」の女性です。一人で見ることも多いけれど、たくさんの映画ファンと意見交換できればいいなぁと思っています。

きっと地上には満天の星(Topside)

2022年08月12日 18時17分32秒 | 日記

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 ニューヨーク地下鉄の廃トンネルで暮らす母娘の地上への逃亡を描いた人間ドラマ。実在した地下コミュニティへの潜入記「モグラびと ニューヨーク地下生活者たち」を原案に、テレビドラマ「モダン・ラブ」の一編を手がけたセリーヌ・ヘルド&ローガン・ジョージが長編初監督を務めた。

ニッキーと5歳の娘リトルは、ニューヨーク地下鉄の下に広がる廃トンネルで、貧しくも仲むつまじく暮らしていた。そんなある日、廃トンネルで不法居住者の摘発が行われ、母娘は地上への逃亡を余儀なくされる。生まれて初めて外の世界に出たリトルを連れて街をさまようニッキーだったが……。

ヘルド監督が自らニッキーを演じ、ヒップホップミュージシャンのファットリップ、「アメリカン・アニマルズ」のジャレッド・アブラハムソンが共演。(映画.comより)

 

 

<2022年8月11日 劇場鑑賞>

 地下鉄の廃トンネルで暮らす人々。それなりの人数があって、それなりのコミュニティを形成しています。今回の主人公は若い母親と幼い娘だけれど、人情に篤そうなおばちゃんもいるし、かなりの教養があるのではないかと思わせる男性もいたりします。それはそれで秩序があって、本人たちさえイヤでなければ生きてゆけると思われる世界です。でも、主人公のニッキーは、5歳の娘を連れているので、なんとか地上での普通の生活を手に入れたいともがいています。娘を愛しているし、この子のためにも何とかしたいと。しかし、現実は厳しい。学校へもやってもらえない娘は、計算を理解することもできないし、母親も意志の弱さゆえか、少ない収入をヤクにつぎ込んだりしている。結局、お金もなく「必ず払うから」と前借してでもヤクを買おうとするようなことでは、生活なんて立て直せるわけがないのです。ニッキーは、ますます自分の要求ばかりを周りにぶつけるようになり、地下生活すら行き詰まるばかり。

 そのうち、地下鉄で不法居住者の摘発が行われます。もちろん、逮捕・取り締まりすることが目的ではなく、行政側はなんとか福祉につなげたいと思っているので、「私たちは強制しません」とか「逮捕したりしません。助けたいのです」とか、いろいろアナウンスしているのですが、ニッキーはハナから聞いてません。「見つかったら子供を取り上げられる」この一点で思考が停止しているのです。同じように地下に住む仲間の男性が、どれだけ子供のためになるよう考えるよう進言しても、拒否するばかり。取り上げられるのではないのです。一時的にはそうかもしれません。でも、母娘を保護し、まず子供を保護したうえで、母親の社会復帰も応援してくれるはずなんです。今の自分の姿を見てください。なんとか少し稼いでも、ヤクで消えてるじゃないですか。子供は、一時的に施設に収容されてしまうかもしれません。でも、それは仕方がないこと。自分がしっかり自立できれば、いつでも迎えに行けばいいのです。審査はあるかもしれませんが。いくら子供は母親と一緒にいることが幸せだとは言え、これではダメだときちんと認識しなければなりません。自分の二の舞をさせないためにも、きちんと教育を受けさせてあげないと。仲間の男性(教養があると思われる)が、そういうことを進言してくれてるのに、聞いてないというか、理解しようとしてないんですね。「ダメ、ダメ、ダメ」の一点張り。

 急に上に出たところで、助けてくれるような知り合いがいるわけでもない。行くところも、寝るところもない。行きあたってはトラブル。とうとう、いっとき売春を斡旋してもらってた男を頼ることに。しかし、ニッキーはここでも何かトラブルを起こしてあったみたいで「よくのこのこと来れたな」と罵られる始末。最初は入れてすらもらえなかった売春宿ですが、しかし客を取る約束で部屋に入れてもらいます。まだ若くてきれいな女性は、なんだかんだ言っても商売になるのです。子供を別の部屋に来させ、食事などをさせる男たち。ニッキーは、食事もとってないのにすぐ商売をやらされます。気が張ってるって、すごいですね。こなしてしまいます。でも、可愛らしい子供は高く売れる、みたいなことを話され、また走って逃げる羽目に。それはそうですよね。食べてない、寝てない。でも逃げるしかない。でも、どこへ?ヘタる場所すらない。お漏らしした子供の身体を拭くのも駅のトイレ。でも、拭いたあとに着せる着替えもない、下着もない。

 もうこの辺まで来ると、見ているほうも息ができないほどつらくなってきます。どう転んでも助かる道なんてない。あてもなく地下鉄に乗ろうとする親子。で、どうするの?さすがにふらつき、車両に乗ると同時に吐いてしまう母親。朦朧としている間に閉まる扉。あ!子供は乗ってない!駅にいる!扉をたたいても後の祭り。すぐに次の駅で乗り換えて戻って来る母親ニッキー。でも、いない。どこにもいない。何度も地下鉄に乗りまくるニッキー。でも、いない。いないのです。どうしていいかわからずに古巣に戻って来るニッキー。取り乱しているニッキーに、例の仲間の男性が話しかけます。「数時間も経つのなら、とっくに保護されてる。あの子にとってはチャンスなんじゃないか。冷静に考えてみるんだ」・・・また地下鉄に舞い戻るニッキー。

 

 

<ここからネタバレ>

 再びあてもなく車両に乗りまくるニッキー。ふと、座席の下に子供が潜っているのを発見します。遠目に確認すると、どうやら娘。しばらく黙って迷っていましたが、次の駅で降り、駅員に報告します。「座席の下に子供がいる」と。すぐに駆け付ける警官たち。子供は無事に保護されました。ニッキーは遠目に眺めています。

 

 よかった。少なくとも、女の子は寝食を与えられ、文字や計算も覚えるでしょう。女の子はそこに生きて待っているのだから、ニッキーも身軽になった分、がんばれるでしょう。あれほど娘を愛していたのですから。

 実は、見ている間、あまりの救いのなさ、母親の判断力のなさにイラっとしていました。母親も精一杯だっただろうし、それ以上のことができない環境にいたことは頭で理解できても、それでも「そんなに逃げてどうする」と思っていました。でも、よかった。二人とも助かって、本当によかった。やっと呼吸ができました。

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