アカデミー長編アニメーション賞を受賞した「ベルヴィル・ランデブー」や、ジャック・タチの遺稿をもとに映画化した「イリュージョニスト」などで知られるフランスのアニメーション作家シルバン・ショメが、初めて手がけた実写長編作。「ベルヴィル・ランデブー」のサントラで使われた楽曲「アッティラ・マルセル」に着想を得て、仏文豪マルセル・プルーストの小説「失われた時を求めて」のエッセンスも織り交ぜながら、孤独な主人公が不思議な女性との出会いから失われた過去の記憶が呼び覚まされ、少しずつ変化していく人生を描いたファンタジックな物語。幼い頃に両親を亡くし、そのショックで言葉を話すことができなくなったポールは、伯母のもとで世界一のピアニストになるよう育てられる。友だちもいない孤独な人生を歩み、大人になったポールは、ある日、同じアパルトマンに住む謎めいた女性マダム・プルーストと出会う。彼女のいれたハーブティーを飲むと、固く閉ざされた心の奥底の記憶が呼び覚まされていき、ポールの人生に変化が訪れる。(映画.comより)
楽しいファンタジーでした。いくらハーブにはいろんな効果があるからと言って、こんなことはあり得ないと思うけれど、とってもおしゃれな画と、口は悪くともいい人ばかりなのとで、安心して見られる映画でした。
それにしても、画がおしゃれでしたね~。インテリアやピアノ、小さい庭から街並みまで、まるで北欧のような感じでした。でも、フランスなんだものね(文化に詳しくなくてバカなこと言ってるかもです。すみません)。
主人公のポールは、二人の叔母に愛情いっぱいに育てられてはいますが、両親を2歳の時に失い、しかも目の前で失ったようで、そのショックから口がきけなくなっています。音楽の才能があり、ピアニストとして日々美しい曲を奏でていますが、若手のためのコンクールではなぜか優勝できずにいます。
そんな彼も今年で33歳。もうそのコンクールに出場できるギリギリの年齢になるという年。交流のある盲目のピアノ調律師が落としたレコード(!)を届けるべく、彼の後を追ううち、不思議なおばさんに出会います。というか、調律師もここへ来ていたのです。
彼女は、違法かもしれないけれど、アパートの中(ベランダ?)に庭を作り、ハーブを植えています。そして、かなりいろいろ勉強してあるようで、依頼人に合ったハーブを調合し、記憶を呼び戻したり、リラックスさせてくれたりします。
幼い頃の不鮮明な記憶がトラウマになっていたポールは、彼女のおかげでいろんな想い出の玩具と共に、正確な記憶を紐解くようになります。そしてやがて幸せな記憶へと導かれてゆくわけです。
彼は2歳だったのですから、きちんと記憶していなくても当然です。しかし、人間って、自分の都合のいいように無意識に記憶をすり替える、とはよく聞きますから、こんな療法、自分自身は少し怖いような気もします。
映画はファンタジーですから、少しのハーブティーで「バン」と昏睡したり、失敗することなく記憶を次々取り戻したりと、あり得ないことの連続です。でも、どこか癒される雰囲気を纏っているのは、実写初、本当はアニメ監督のショメ氏の力量によるものでしょうね。映画の中には、アニメではないけれど、着ぐるみが演奏したり踊ったりするシーンもあり、ポールの回想シーンでは父も母も歌って踊ります。
終盤、着ぐるみ達のおかげでコンクールに優勝したポールですが、その後ピアニストとしてあるまじきハプニングが襲います。でも、それは不幸なことではなく、新たな人生への再出発となるのです。
ファンタジーに満ちたこの映画でも、怖かったのは家の違法改造。建物の強度は保ちましょうね(笑)。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます