田舎に住んでる映画ヲタク

「映画大好き」の女性です。一人で見ることも多いけれど、たくさんの映画ファンと意見交換できればいいなぁと思っています。

アンチクライスト(antichrist)

2012年06月07日 01時25分03秒 | 日記
 
 
 愛し合っている最中に愛する息子を事故で失った夫婦。深い悲しみと自責の念からしだいに神経を病んでいく妻。セラピストの夫はそんな妻を森の中の山小屋に連れて行き治療しようと試みるが、事態は更に悪化してゆく。彼らが「エデン」と呼ぶ山小屋に救いを求めた現代のアダムとイヴが、愛憎渦巻く葛藤の果てにたどりついた驚愕の結末とは・・・。


 これ、wowowで放映されていたので録画してありました。しかし、冒頭、「この作品は家庭鑑賞用にR18からR15に修正してあります」みたいな意味の表示が出るのです。劇場で見逃した私は、もともとの作品を知らないこともあり、一抹の不安を抱きながらも鑑賞しました。

しかし、あれだけの評判だったにもかかわらず、大した衝撃ではないんですね。もちろん、ハリウッド娯楽作を思えばかなりの衝撃作ですが、どうにもいままでのラース監督の域を出ないように思えたのです。

そこで、ネットでいろいろ読みました。すると、全然記憶にないシーンのことをみなさん述べられているんです。「you tubeで見た」との記述も。

早速動画を探し、多くはすでに削除されていたけれど、なんとか一番の衝撃シーンを探し出し、鑑賞することができました。

これはすごい!実際の映画ではどこまで映してあったのかわからないけれど、少なくともwowowの放映では、なにがなんだかまったくわからなくなっていたものばかりでした。

これは確かに物議を醸すだろう。すごすぎる。


どうしても女目線で見てしまうので、子供を不慮の事故で失って正気を失ってゆく妻には共感できました。そして、かなり年上であるだろうセラピストの夫が、「自分が治してやる」とばかりに上から目線で接してくるのをイライラしながら見ていました。まるでなにもかも見透かしたつもりでいるそのセラピストぶりは、私だったら絶対拒否したいものです。まぁ、同じ立場になってみないとわからないですが。

それにしてもウィレム・デフォーはいつまでも若いですね。なにか画面に処理してある?妙に若々しかったように思います。

そして痛々しいほど細くてデリケートなシャルロット・ゲンズブール。彼女の演技はすごすぎた。個人的には「シャルロット、そこまでやらなくても・・・」って思ってしまいました。監督は、この二人の組み合わせ、どこから思いついたのかな。

もちろん、ラース監督ですから、ほとんど意味不明な幻想的な場面や音楽もよく出てきます。冒頭も、夫婦が愛し合っている(モノクロ)場面を映しながら、大仰なアリア(?)を流しています。だから、起きていることが悲惨でもなぜか美しく見えたりするのです。


妻のほうは、この山小屋に一年ほど前、論文を書くためにこもったことがあるようです、子供と一緒に。そして、結果的には途中で意味を見失ってしまったその論文は、「悪魔」や「中世の魔女裁判」などがテーマだったようです。最初は魔女裁判などは、女性が被害者だと思っていた妻も、調べてゆくうち彼女たちも悪魔な部分もあったのではないか、いや、人間とは根源的にみな悪魔なのではないか・・・そう気付いて書く意味を見失ったようです。


ともかく、夜中に落ちてくるドングリの異様な音や、出産しかけのシカ、巣から落ちて虫に食べられているヒナなど、抽象的な表現が多発です。ラース監督は本当に非凡です。





ここからネタバレ。過激な表現、ご容赦を。耐えられないと思う方は読まないでください。




 妻と山小屋で暮らすようなって、夫もいろいろ気付きます。妻の研究材料、そして息子に靴を左右逆にはかせて虐待していたかもしれないことなど。

そして、そんなことを追求し始めると、元気になりかけていた妻が「私を捨てるつもりなのね。このやろう!」と叫んで夫を襲うようになります。
突然セックスをしかけたかと思うと、固くて大きな木切れで局部を強打したり(あまりの痛みに夫は気絶)、その後、大きいままの局部を手で愛撫して血の射精を行わせたり、あげくに足にドリルで穴をあけ重い砥石をねじ止めしてしまったり。

そして、自分でも自傷行為に及びます。ハサミを持ちだし、気絶と朦朧の境目のような夫の手を使って自分のクリトリスを触らせたかと思うと、息子が亡くなった瞬間に自分がセックスしていたことを思い出し、自分で自分のクリトリスを切断してしまうのです(こんなことができるものなのでしょうか)。さすがに目を覆う場面です。

その後、放置してあった夫が足を引きずりながらも逃げたと知り、罵りながら捜しまわります。ここからは夫婦の戦い。最終的には、夫がレンチを探し出して砥石を外し、反撃に出ます。

そして最後には、手に負えないと思ったか、あるいはもうすでに夫も血迷っていたか、妻の首を絞めて殺し燃やしてしまうのです。

一人になった夫は、メタファーである鹿・カラス・キツネを目撃しながらも山を降りようとします。しかし、そこへ無数の(多分)女たちがこちらに向かって登ってくるのです。茫然と立ち尽くすウィレム・・・。

果たして、夫は救われたのでしょうか。

この映画は、キリスト教に詳しくないと、本当の意味で理解できないのかもしれません。しかし個人的には、エグいとは思いながらも、なんとはなしに「そうよなぁ」と同調できるシーンもあって、また森や動物などのメタファーもうまく挿入されているので、それほど嫌悪感を抱くことなく見ることができました。

ちなみに、wowowでカットされてしまっていたのは、シャルロットが裸のまま飛び出して大きな木の根元で自慰行為をするシーン、血の射精のシーン、シャルロットがクリトリスを切断してしまうシーン、などでした。

切りすぎですよねぇ、意味がわからなくなってしまいます。

ともかく、賛否両論あるでしょうが、私は考えさせられました。
コメント
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