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かりそめの旅

うるわしき 春をとどめるすべもなし 思えばかりそめの 旅と知るらむ――雲は流れ、季節は変わる。旅は過ぎゆく人生の一こま。

20. ヴェネツィア②

2005-10-13 10:56:42 | * フランス、イタリアへの旅
<2001年10月17日>ヴェネツィア
 ヴェネツィアの街は、毛細血管のように、あるいは土中に伸びる植物の毛根のように、路地が延び、繋がり、分かれている。ビルとビルの間の人が一人通れるような空間も、貴重な通路というより道路となっている。狭い路地を伝って急に景色が広がると、そこは広場だったり教会だったり、あるいは運河の行き止まりだったりする。
 思わぬところまで水路の運河は掘られていて、思わぬところにも橋があり、思わぬことに橋の下にゴンドラが通ったりする。ひらひらとリボンを風になびかせたカンカン帽をかぶった、舟漕ぎの色男が旅人を見つけるとにっこりと笑う。
 この青空のようなドンファンは、どんな老人になり、どんな老後を送るのだろうかと考えた。

 ヴェネツィアは路地の街だ。地図を見ながら歩いていても、なかなか地図どおりに進むことが難しい。気がつくと、予期せぬところに来ていたりする。しかし、この街には、各路地にリアルト橋やサン・マルコ広場方面を表した矢印の表示板がある。そうなのだ、この街はこの二つが基点なのだ。リアルト橋かサン・マルコ広場へ出れば、何とかなるのだ。

 私は、終日路地を歩きまわり、疲れたらヴォパレットと呼ばれている乗り合い船に乗り、この街を徘徊した。
 この街は、どこを歩いても心が弾む。その訳は、どこにでも張り巡らされた、どこに出るか分からない迷路のような路地がつくりだしているといってもいい。子どもが街や山を冒険するときのときめきに似ている。パズルのような路地が胸を躍らせるのだ。
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