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かりそめの旅

うるわしき 春をとどめるすべもなし 思えばかりそめの 旅と知るらむ――雲は流れ、季節は変わる。旅は過ぎゆく人生の一こま。

年の瀬告げる、浅草の羽子板市

2014-12-23 01:22:04 | 気まぐれな日々
 いつの間にか冬至である。もうすぐ今年も終わる。
 先日、12月19日に浅草に行ったら、浅草寺の境内で羽子板市をやっていて出店が並んでいた。新宿の花園神社の酉の市で熊手の出店が並ぶのは見たことがあるが、羽子板市は初めてだった。
 もともとここ浅草寺では、この時期行われていた正月の品や縁起物を売る「歳の市」が、「羽子板市」として形をとどめているというものだ。
 そもそも羽子板を見たのは何年振りだろうか。
 そういえば、僕の子どもの頃は、新年の正月になると、近所の通りや空き地で羽根つきをしていた。外での遊びといえば、女の子は羽根つきで、男の子は凧揚げか独楽(コマ)遊びだった。もちろん、羽根つきは大人の人もやっていた。
 そんな光景は、今では地方でも見られなくなった。
 今では、羽子板は飾りもの、縁起ものなのだ。出店に並べてあるのを見るだけで、華やかな気分になる。(写真)
 どこかの店前から、三本締めの手拍子が聞こえる。お買い上げの景気音頭だ。
 こんなきらびやかな羽子板なら、羽根つきなどしないのは道理だ。すっかり、飾っておくもの、見るものになっているのだ。
 もともとは中国で羽を蹴りあう遊びが日本に伝わり羽根つきになったという。羽の付いた球を相手に向かって板でもって突きあう遊戯としての羽根つきは、バトミントンやテニスにとって代わられたのだろうか?
 漢字で書けば、バトミントンは羽球、テニスは庭球となる。

 球を蹴りあう競技の蹴鞠(けまり)は、やはり中国から入ってきて平安時代に貴族の間で流行したというから古い遊びである。
 球を蹴るといえばフットボール(football=蹴球)であり、サッカーをすぐに思い浮かべるが、もともとサッカーもラグビーも一緒だった。両方ともフットボールである。19世紀になり、ボールを持って走るラグビーは、ゴールキーパーを例外に手を使わなくなるサッカーと袂を分かった。
 だいぶん前だが、フットボールのルーツという番組を見た。
 近代スポーツの発祥の多くはイギリスだが、フットボールもイギリスだった。17世紀からアッシュボーンという田舎町に今でも伝わる行事で、町に流れる川を間に南北に分かれたチームが、おたがい川の離れた地点に設けられた自軍のゴール点にボールをタッチするという競技であった。
 球は、持っても、蹴っても、投げてもよく、町で選ばれた何人もの男たちがそれを奪い合いながら、自軍のゴールへ運ぶのである。さらに付け加えるならば、球は草むらや川の中に隠しても、袋の中に入れて運んでもいい。ルールはとても大雑把なものである。そもそも遊びや祭りは、細かい規則などなかったはずだ。
 このアッシュボーンは町全体がフィールドとなり、球を運ぶ競技は2日間にわたって行われ、町をおこしての祭りであった。ゴールを獲得した男は、その年のヒーローとなり、町の酒場で語り継がれることになる。
 素朴な競技だが、見ているだけで熱狂させるものがあった。

 しかし見渡してみると、素朴な遊びはだんだん廃れている。いや形を変えていると言っていい。
 遊びは規則が細分化され、グローバル化され、スポーツとなっている。
 羽根つきも、絶滅危惧種の一種なのかもしれない。
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2014年多摩映画祭の、第15回「 TAMA NEW WAVE コンペティション」

2014-12-02 00:47:29 | 気まぐれな日々
 多摩映画祭である、2014年「第24回映画祭 TAMA CINEMA FORUM」(東京都多摩市、多摩センター・永山・聖蹟桜ヶ丘で開催)が11月30日終わった。
 多摩映画祭は、一般市民によって運営されている映画祭で、新しい映画人の輩出を応援するとして、毎年新人のためのコンペティションを行っている。
 その第15回 「TAMA NEW WAVE コンペティション」が、11月29日(土)行われ、グランプリはじめ受賞作品が決定した。
 僕は、今年も一般審査員として参加した。
 ノミネート作品は、以下の6作品で、11月29日、朝の10時30分より19時過ぎまで一挙上映、引き続き選考、受賞作品発表が行われた。
 以下に上映順に、個人的感想を書いてみた。

 □あがきのうた /56分
 •監督・脚本=中村有里、撮影=関春菜、松本充、音楽=黒木ちひろ
 •出演=長谷川葉生、草野秀勝、立脇理絵、末柄拓郎、日高七海
 学生の演劇サークルのなかでの、女性の感情の流れを描いた作品。何かを訴えたい叫びは聞こえてくるが、それが未消化のじれったさも伝わってくる。

 □ガンバレとかうるせぇ /1時間10分
 •監督・脚本=佐藤快磨、撮影=加藤大志、音楽=山城ショウゴ
 •出演=堀春菜、細川岳、布袋涼太
 男子サッカー部員のなかの女子マネージャーの、孤独な心の推移を描いた作品。マネージャーというもののやりがいや苦悩が伝わりにくいが、田舎の高校の雰囲気や景色が叙情的に描かれている。

 □知らない町 /1時間39分
 •監督・脚本=大内伸悟、撮影=安藤広樹、音楽=俺はこんなもんじゃない、石橋英子
 •出演=柳沢茂樹、細江祐子、松浦祐也、富岡大地
 男の部屋に、前の住人だという女が訪ねてくることから物語は展開していく。日常の何気ない生活がふと変容していく、不思議な後味を残すミステリー風物語。素材として発展性を秘めた作品である。

 □ひとまずすすめ /30分
 •監督=柴田啓佑、脚本=小森まき、撮影=佃友和、音楽=中野哲郎
 •出演=斉藤夏美、山田雅人、小林優斗、矢崎初音
 地方都市(群馬県藤岡市)で父親と暮らす市役所で働く30路前の女性の前に、結婚したという弟夫婦が現われる。平凡な生活に少し波風が立ち始める。いわば、短編小説のような作品である。

 □みちていく /1時間29分
 •監督・脚本=竹内里紗、撮影=松島翔平、音楽=金光佑実
 •出演=飛田桃子、山田由梨、鶴田理紗、西平せれな、崎田莉永
 同じ高校の陸上部のエースと部長の二人の女性の、微妙な心と体の揺れを描いている。メインは二人だが、中原俊監督の「櫻の園」を彷彿させる女子高生の群像劇を目指しているのか、女性監督特有の思春期のひりひりした女学生の生態が伝わる作品となっている。

 □ふざけるんじゃねえよ /41分
 •監督・脚本・編集=清水俊平、撮影=廣瀬有紀、音楽=風の中の牝雞
 •出演=金正允、橋本馨、小出水賢一郎
 在日をテーマにした、最近では少なくなった骨太の作品である。映像は力強く、すでにできあがった大人の作品と思わせる。

 6作品のうち、半分の3作品が部活(クラブ活動)をテーマにしたものであったのは、監督が卒業作品として制作したり、卒業してからさほどたっていない、若いということもあろうか。しかも、クラブでは脇役的存在とも思えるマネージャーを主役に置くというのも時代の流れを感じる。
 こうした傾向は、かつてベストセラーとなり映画にもなった、「もし高校野球の女子マネージャーが ドラッカーの『マネジメント』を読んだら」や「桐島、部活やめるってよ」の影響なのか。
 しかし、もっと思春期あるいは青春期特有の新鮮なテーマが見たかったという思いが残った。「みちていく」は、舞台は陸上部というクラブ活動だが、それが成功していると思った。

 選考の結果、本年度の「TAMA NEW WAVE コンペティション」の結果は下記の通りである。
 ◇グランプリ
 ・「みちていく」竹内里紗監督
 ◇特別賞
 ・「知らない町」大内伸悟監督
 ◇男優賞
 ・「ふざけるんじゃねえよ」金正允さん
 ◇女優賞
 ・「みちていく」山田由梨さん

 *写真は、受賞関係者による記念写真
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