やはり、地方には地方の特色がある。
佐賀に帰ってきて、12月28日朝、テレビをつけたら、NHKで「今日は一日佐賀城から公開生放送」と銘打って、佐賀の特番をやっていた。
もちろん全国放送ではない。NHK佐賀の開局70周年記念番組として企画されたもので、内容は、「未来に残したい佐賀遺産ベスト70」というもの。番組は朝10時に始まり、途中ニュースなどをはさみながら夜7時に終わる、正味延べ6時間に及ぶものだった(あまりにも長いので録画しておいた)。
佐賀を知るには、いい企画だ。
この日、他の地方や東京では、何を放送していたのだろう。東京ではまさか、「未来に残したい東京遺産ベスト70」ではあるまい。
ゲストに、佐賀出身の女優中越典子と、「佐賀のがばいばあちゃん」の原作者で元B&Bの島田洋七を交えての、佐賀の魅力をランキング発表するものだった。
佐賀城本丸の庭に面した障子の前で、進行係のアナウンサーとゲストが並んでのトークである。前庭には椅子が並べてあり、やって来た観客が座っている。
のっけに、島田洋七が「70もあるのかいな、40ぐらいでいいんじゃないの」と茶々を入れると、地元の文化人(特に食に関して)である筒井ガンコ堂が、「いやいや、僕はその倍ぐらい150ほどリストアップしましたよ」と反撃する。
筒井は、元雑誌「太陽」の編集者で、嵐山光三郎と一緒に机を並べて雑誌作りをやっていて、平凡社を辞めたあと佐賀に Uターンした人である。
始終にこやかな中越は人の良さが窺えるし、洋七は相変わらず笑いをとる。
余談だが、最近人気の武井咲は中越典子の柔和な目つきをきつくした感じだと、見るたびに思うのだが、まだ誰も言っていないようだ。
*
ちなみに、私の「佐賀遺産のベスト10」をあげると以下のようになった。
1.有田・伊万里焼
2.吉野ヶ里遺跡
3.佐賀城
4.唐津くんち
5.名護屋城跡
6.祐徳神社
7.虹の松原
8.築地反射炉、三重津海軍所跡などの幕末期の近代化産業遺産
9.筑後川の昇降橋
10.旧高取伊好邸
この番組を見ていないのなら、各自が自分のランキング(例えばベスト10)を書いてみるのも面白い(これから以降に番組ランキングを列挙していくので)。
*
番組は、70位から漸次順位を上げて発表するというものであった。
いきなり70位に出てきたのは、意表をつく「嘉瀬川」だった。う~ん、川が出てくるのは佐賀らしい。これだと私がいつも見る六角川も出てくるかなと、ちらと頭をよぎったが、それはないだろうと思いなおした。嘉瀬川の河川敷では、インターナショナル・バルーンフェスタもやっているし、県のほぼ中央を走っている。
番組に沿って、佐賀遺産を70位からあげておこう。
<70~51位>
70.嘉瀬川
69.浜野浦の棚田
68.ヒシの実 (食)
67.ワラスボ (食)
66.鳥栖ジャンクション
65.辰野金吾 (人)
64.新鳥栖駅
63.江崎利一 (人)
62.太良みかん (食)
61.佐賀空港
60.大興尊寺
59.中里太郎右衛門 (人)
58.武雄の大楠
57.鹿島の面浮立
56.佐賀錦
55.ベストアメニティスタジアム
54.シシリアンライス (食)
53.蕨野の棚田
52.伊万里トンテントン祭り
51.佐賀のり (食)
70位から51位まであげたのを見ると、遺産とは言いえない人物や食べ物も入っているし、ナニコレと首をかしげるものもある。遺産にこだわらず、佐賀といえば浮かんでくるものをあげたとしか思えない。ここでは、人物には(人)、食べ物には(食)と付加した。
辰野金吾は、東京駅や日本銀行を設計した、明治・大正期に活躍した建築家。江崎利一は、製菓会社グリコの創立者。中里太郎右衛門は、唐津焼の有名な名跡(人)。
食べ物で、有明海にしかいない怪魚のワラスボはいいとしても、最近できたB級グルメのシシリアンライス(テレビ「ケンミンショー」でこれは何の料理?と紹介されていた)は遺産とは言えないだろう。
鳥栖ジャンクションやできたばかりの新鳥栖駅は、何と言ったらいいのだろう。佐賀にも高速道路や新幹線が通っていますよ、と言っているのか。これでは、水増しだと言われても仕方ないだろう。
次の50位以内に期待しよう。
*
<50~31位>
50.三瀬そば (食)
49.丸ぼうろ (食)
48.佐賀の定番アイス (食)
47.多久聖廟
46.唐津のご当地バーガー (食)
45.下村湖人 (人)
44.副島種臣 (人)
43.今泉今右衛門 (人)
42.七つ釜
41.三瀬生まれのブランド鶏 (食)
40.中島潔 (人)
39.天山
38.竹崎ガニ (食)
37.鍋島直茂 (人)
36.佐賀県立宇宙博物館
35.名護屋城跡
34.嬉野茶 (食)
33.佐野常民 (人)
32.鍋島直正 (人)
31.佐嘉神社
50位から31位まであがったのを見ると、ほとんどが食べ物と人物である。これでは、「佐賀といって思い浮かべるのは何?」である。他に佐賀遺産と呼ばれるものはないとでも言うのだろうか。
私が5位にあげた名護屋城跡が35位にランクアップしている。
*
次に30位以内にいってみよう。
<30~11位>
30.呼子の朝市
29.酒井田柿右衛門 (人)
28.佐賀城下の栄の国まつり
27.佐賀城下ひなまつり
26.唐津焼
25.伊万里牛 (食)
24.有明海
23.江藤新平 (人)
22.シチメンソウ
21.古湯温泉
20.祐徳神社
19.唐津焼
18.ガタリンピック
17.九年庵
16.虹の松原
15.小城羊羹 (食)
14.武雄温泉
13.佐賀城
12.有田陶器市
11.カチガラス
20位まで来ると、佐賀遺産らしくなってきた。小城羊羹は食べ物といっても、そのシュガーロード(長崎街道)の歴史から佐賀遺産と言っていいだろう。
私がベスト10にあげた、佐賀城、祐徳神社、虹の松原が出てきた。
カチガラスは豊臣秀吉の朝鮮出征の際連れてきた鳥で、佐賀特有の呼び名である。一般名はカササギで、今は佐賀の県鳥である。
ガタリンピックは、潟(がた)の汚いイメージを変えてくれたアイディアの勝利である。
*
いよいよ最後に、NHK佐賀がリストアップした、「未来に残したい佐賀遺産ベスト10」を見てみよう。
<10~1位>
10.サガン鳥栖
9.伊万里・有田焼
8.呼子のイカ (食)
7.大隈重信 (人)
6.吉野ヶ里遺跡
5.嬉野温泉
4.ムツゴロウ (食)
3.佐賀牛 (食)
2.唐津くんち
1.佐賀インターナショナル・バルーンフェスタ
10位のサッカーチーム、サガン鳥栖は、J1に昇格したばかりのご祝儀ランクインであろうが、遺産と言えるだろうかという疑問はぬぐえない。
ムツゴロウは食べ物とはいえ、有明海特有のハゼ科の魚で、絶滅は避けたいので遺産としたのはいいアイディアだ。しかし、呼子のイカと佐賀牛は美味いもの(人気グルメ)でしょう。
1位のバルーンフェスタは、意外で思いつかなかった。唐津くんちを抜いて、佐賀が最も誇れる祭りに成長したのだろうか。佐賀では珍しいインターナショナル(国際的)な祭りではあるので、期待を込めての1位だろう。それにしても、私があげた世界に誇る有田・伊万里焼を抜いて未来に残したい佐賀遺産1位とは。
インターナショナルといえば、今年2011年から始まった鳥栖のクラシック音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ」が遺産に育ってくれればいいが。
私のベスト10と重なったのは、伊万里・有田焼、吉野ヶ里遺跡、唐津くんちの3つである。20位以内の祐徳神社、虹の松原、佐賀城、さらに35位の名護屋城跡を加えると、7つが番組70位内に入っていたが、残りの3つはどこへ行ったのだろうか。
私が8位にあげた、「築地反射炉、三重津海軍所跡などの幕末期の近代化産業遺産」は、本当は最も残しておきたい遺産群である。
近年、世界遺産の暫定リスト入りが決まった、幕末から明治にかけての製鉄や石炭採掘など日本の近代化を担った「九州・山口の近代化産業遺産群」の中に、幕末佐賀藩の最先端の近代技術の足跡が抜けているのである。
であるから、築地反射炉、多布施反射炉、三重津海軍所、佐賀藩精錬方跡などの佐賀藩近代化産業遺産群の世界遺産暫定リスト入りのために、佐賀県は開発・研究・PRに最も力を入れないといけないはずなのに、70位以内に影も形もないのはどういうことだろう。誰も関係者や審査員は、これを入れようと言い出さなかったのだろうか?
9位にあげた筑後川の昇降橋は、旧国鉄佐賀線(今は廃線)の筑後川の諸富から大川にかかる鉄橋で、高い船が通ると(時間によって)橋の中央部が一部上る珍しい昇降橋である。昭和10年にできた日本唯一の昇降橋で、これは貴重な建築遺産であり産業遺産でもある。
しかし、筑後川が福岡県との県境であるので、佐賀県だけとは言えないかもしれない。とは言え、静岡県と山梨県にまたがる富士山は、どちらも自分の県だと言い張るのも面白い。
10位にあげた旧高取伊好邸は、邸内に能舞台をも持つ近代和風建築で、唐津市にある国指定の重要文化財である。建てた高取伊好は、唐津、多久、大町などの杵島炭鉱の基を築いた明治から昭和初期まで活躍した、佐賀の炭鉱王と呼ばれた人物ある。
この邸宅は、「九州・山口の近代化産業遺産群」の中に当初リストアップされた県内で秀逸の建築物である。現在は、観光客用に公開されている。
*
放送のあった翌日12月29日に酒席で、番組を見ていないという今は隣の長崎県在住で有田出身の友人に、佐賀遺産のベスト10をあげてもらった。
佐賀城・鯱の門、武雄温泉・楼門(辰野金吾設計)、多久聖廟、祐徳神社、鹿島の江戸時代の赤門などの建築群をあげた。さらに、私と同じく筑後川の昇降橋、佐賀藩の近代産業遺産としてカノン砲も入れた。
私が知らない「石井桶」とあったので、これは何だと訊いた。
石井桶は佐賀市にある、“治水の神様”と言われた佐賀藩の成富兵庫茂安が築いた灌漑用の石の水門である。
さらに、「神籠石」(こうごいし)をあげた。これは、あまり知られていないが、武雄市の南のおつぼ山にある、1300年前ぐらいに造られたといわれる朝鮮式山城である。
これらも番組ではランク(70位)外であった。
*
いささか不満が残った「未来に残したい佐賀遺産ベスト70」であったが、何も世界遺産ブーム(特にNHKは世界遺産が大好きだ)に絡んで「佐賀遺産」と銘うたずに、「私の好きな佐賀=ベスト70」とでも題すれば、今回のように何を入れてもよかったと思うのだが。
また改めて、純粋な「佐賀遺産=ベスト40」(番組の初めに島田洋七が言っていた40ぐらいで)をやってもらいたい。
佐賀を知り、佐賀をアピールするには、格好の企画と思う。
佐賀に帰ってきて、12月28日朝、テレビをつけたら、NHKで「今日は一日佐賀城から公開生放送」と銘打って、佐賀の特番をやっていた。
もちろん全国放送ではない。NHK佐賀の開局70周年記念番組として企画されたもので、内容は、「未来に残したい佐賀遺産ベスト70」というもの。番組は朝10時に始まり、途中ニュースなどをはさみながら夜7時に終わる、正味延べ6時間に及ぶものだった(あまりにも長いので録画しておいた)。
佐賀を知るには、いい企画だ。
この日、他の地方や東京では、何を放送していたのだろう。東京ではまさか、「未来に残したい東京遺産ベスト70」ではあるまい。
ゲストに、佐賀出身の女優中越典子と、「佐賀のがばいばあちゃん」の原作者で元B&Bの島田洋七を交えての、佐賀の魅力をランキング発表するものだった。
佐賀城本丸の庭に面した障子の前で、進行係のアナウンサーとゲストが並んでのトークである。前庭には椅子が並べてあり、やって来た観客が座っている。
のっけに、島田洋七が「70もあるのかいな、40ぐらいでいいんじゃないの」と茶々を入れると、地元の文化人(特に食に関して)である筒井ガンコ堂が、「いやいや、僕はその倍ぐらい150ほどリストアップしましたよ」と反撃する。
筒井は、元雑誌「太陽」の編集者で、嵐山光三郎と一緒に机を並べて雑誌作りをやっていて、平凡社を辞めたあと佐賀に Uターンした人である。
始終にこやかな中越は人の良さが窺えるし、洋七は相変わらず笑いをとる。
余談だが、最近人気の武井咲は中越典子の柔和な目つきをきつくした感じだと、見るたびに思うのだが、まだ誰も言っていないようだ。
*
ちなみに、私の「佐賀遺産のベスト10」をあげると以下のようになった。
1.有田・伊万里焼
2.吉野ヶ里遺跡
3.佐賀城
4.唐津くんち
5.名護屋城跡
6.祐徳神社
7.虹の松原
8.築地反射炉、三重津海軍所跡などの幕末期の近代化産業遺産
9.筑後川の昇降橋
10.旧高取伊好邸
この番組を見ていないのなら、各自が自分のランキング(例えばベスト10)を書いてみるのも面白い(これから以降に番組ランキングを列挙していくので)。
*
番組は、70位から漸次順位を上げて発表するというものであった。
いきなり70位に出てきたのは、意表をつく「嘉瀬川」だった。う~ん、川が出てくるのは佐賀らしい。これだと私がいつも見る六角川も出てくるかなと、ちらと頭をよぎったが、それはないだろうと思いなおした。嘉瀬川の河川敷では、インターナショナル・バルーンフェスタもやっているし、県のほぼ中央を走っている。
番組に沿って、佐賀遺産を70位からあげておこう。
<70~51位>
70.嘉瀬川
69.浜野浦の棚田
68.ヒシの実 (食)
67.ワラスボ (食)
66.鳥栖ジャンクション
65.辰野金吾 (人)
64.新鳥栖駅
63.江崎利一 (人)
62.太良みかん (食)
61.佐賀空港
60.大興尊寺
59.中里太郎右衛門 (人)
58.武雄の大楠
57.鹿島の面浮立
56.佐賀錦
55.ベストアメニティスタジアム
54.シシリアンライス (食)
53.蕨野の棚田
52.伊万里トンテントン祭り
51.佐賀のり (食)
70位から51位まであげたのを見ると、遺産とは言いえない人物や食べ物も入っているし、ナニコレと首をかしげるものもある。遺産にこだわらず、佐賀といえば浮かんでくるものをあげたとしか思えない。ここでは、人物には(人)、食べ物には(食)と付加した。
辰野金吾は、東京駅や日本銀行を設計した、明治・大正期に活躍した建築家。江崎利一は、製菓会社グリコの創立者。中里太郎右衛門は、唐津焼の有名な名跡(人)。
食べ物で、有明海にしかいない怪魚のワラスボはいいとしても、最近できたB級グルメのシシリアンライス(テレビ「ケンミンショー」でこれは何の料理?と紹介されていた)は遺産とは言えないだろう。
鳥栖ジャンクションやできたばかりの新鳥栖駅は、何と言ったらいいのだろう。佐賀にも高速道路や新幹線が通っていますよ、と言っているのか。これでは、水増しだと言われても仕方ないだろう。
次の50位以内に期待しよう。
*
<50~31位>
50.三瀬そば (食)
49.丸ぼうろ (食)
48.佐賀の定番アイス (食)
47.多久聖廟
46.唐津のご当地バーガー (食)
45.下村湖人 (人)
44.副島種臣 (人)
43.今泉今右衛門 (人)
42.七つ釜
41.三瀬生まれのブランド鶏 (食)
40.中島潔 (人)
39.天山
38.竹崎ガニ (食)
37.鍋島直茂 (人)
36.佐賀県立宇宙博物館
35.名護屋城跡
34.嬉野茶 (食)
33.佐野常民 (人)
32.鍋島直正 (人)
31.佐嘉神社
50位から31位まであがったのを見ると、ほとんどが食べ物と人物である。これでは、「佐賀といって思い浮かべるのは何?」である。他に佐賀遺産と呼ばれるものはないとでも言うのだろうか。
私が5位にあげた名護屋城跡が35位にランクアップしている。
*
次に30位以内にいってみよう。
<30~11位>
30.呼子の朝市
29.酒井田柿右衛門 (人)
28.佐賀城下の栄の国まつり
27.佐賀城下ひなまつり
26.唐津焼
25.伊万里牛 (食)
24.有明海
23.江藤新平 (人)
22.シチメンソウ
21.古湯温泉
20.祐徳神社
19.唐津焼
18.ガタリンピック
17.九年庵
16.虹の松原
15.小城羊羹 (食)
14.武雄温泉
13.佐賀城
12.有田陶器市
11.カチガラス
20位まで来ると、佐賀遺産らしくなってきた。小城羊羹は食べ物といっても、そのシュガーロード(長崎街道)の歴史から佐賀遺産と言っていいだろう。
私がベスト10にあげた、佐賀城、祐徳神社、虹の松原が出てきた。
カチガラスは豊臣秀吉の朝鮮出征の際連れてきた鳥で、佐賀特有の呼び名である。一般名はカササギで、今は佐賀の県鳥である。
ガタリンピックは、潟(がた)の汚いイメージを変えてくれたアイディアの勝利である。
*
いよいよ最後に、NHK佐賀がリストアップした、「未来に残したい佐賀遺産ベスト10」を見てみよう。
<10~1位>
10.サガン鳥栖
9.伊万里・有田焼
8.呼子のイカ (食)
7.大隈重信 (人)
6.吉野ヶ里遺跡
5.嬉野温泉
4.ムツゴロウ (食)
3.佐賀牛 (食)
2.唐津くんち
1.佐賀インターナショナル・バルーンフェスタ
10位のサッカーチーム、サガン鳥栖は、J1に昇格したばかりのご祝儀ランクインであろうが、遺産と言えるだろうかという疑問はぬぐえない。
ムツゴロウは食べ物とはいえ、有明海特有のハゼ科の魚で、絶滅は避けたいので遺産としたのはいいアイディアだ。しかし、呼子のイカと佐賀牛は美味いもの(人気グルメ)でしょう。
1位のバルーンフェスタは、意外で思いつかなかった。唐津くんちを抜いて、佐賀が最も誇れる祭りに成長したのだろうか。佐賀では珍しいインターナショナル(国際的)な祭りではあるので、期待を込めての1位だろう。それにしても、私があげた世界に誇る有田・伊万里焼を抜いて未来に残したい佐賀遺産1位とは。
インターナショナルといえば、今年2011年から始まった鳥栖のクラシック音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ」が遺産に育ってくれればいいが。
私のベスト10と重なったのは、伊万里・有田焼、吉野ヶ里遺跡、唐津くんちの3つである。20位以内の祐徳神社、虹の松原、佐賀城、さらに35位の名護屋城跡を加えると、7つが番組70位内に入っていたが、残りの3つはどこへ行ったのだろうか。
私が8位にあげた、「築地反射炉、三重津海軍所跡などの幕末期の近代化産業遺産」は、本当は最も残しておきたい遺産群である。
近年、世界遺産の暫定リスト入りが決まった、幕末から明治にかけての製鉄や石炭採掘など日本の近代化を担った「九州・山口の近代化産業遺産群」の中に、幕末佐賀藩の最先端の近代技術の足跡が抜けているのである。
であるから、築地反射炉、多布施反射炉、三重津海軍所、佐賀藩精錬方跡などの佐賀藩近代化産業遺産群の世界遺産暫定リスト入りのために、佐賀県は開発・研究・PRに最も力を入れないといけないはずなのに、70位以内に影も形もないのはどういうことだろう。誰も関係者や審査員は、これを入れようと言い出さなかったのだろうか?
9位にあげた筑後川の昇降橋は、旧国鉄佐賀線(今は廃線)の筑後川の諸富から大川にかかる鉄橋で、高い船が通ると(時間によって)橋の中央部が一部上る珍しい昇降橋である。昭和10年にできた日本唯一の昇降橋で、これは貴重な建築遺産であり産業遺産でもある。
しかし、筑後川が福岡県との県境であるので、佐賀県だけとは言えないかもしれない。とは言え、静岡県と山梨県にまたがる富士山は、どちらも自分の県だと言い張るのも面白い。
10位にあげた旧高取伊好邸は、邸内に能舞台をも持つ近代和風建築で、唐津市にある国指定の重要文化財である。建てた高取伊好は、唐津、多久、大町などの杵島炭鉱の基を築いた明治から昭和初期まで活躍した、佐賀の炭鉱王と呼ばれた人物ある。
この邸宅は、「九州・山口の近代化産業遺産群」の中に当初リストアップされた県内で秀逸の建築物である。現在は、観光客用に公開されている。
*
放送のあった翌日12月29日に酒席で、番組を見ていないという今は隣の長崎県在住で有田出身の友人に、佐賀遺産のベスト10をあげてもらった。
佐賀城・鯱の門、武雄温泉・楼門(辰野金吾設計)、多久聖廟、祐徳神社、鹿島の江戸時代の赤門などの建築群をあげた。さらに、私と同じく筑後川の昇降橋、佐賀藩の近代産業遺産としてカノン砲も入れた。
私が知らない「石井桶」とあったので、これは何だと訊いた。
石井桶は佐賀市にある、“治水の神様”と言われた佐賀藩の成富兵庫茂安が築いた灌漑用の石の水門である。
さらに、「神籠石」(こうごいし)をあげた。これは、あまり知られていないが、武雄市の南のおつぼ山にある、1300年前ぐらいに造られたといわれる朝鮮式山城である。
これらも番組ではランク(70位)外であった。
*
いささか不満が残った「未来に残したい佐賀遺産ベスト70」であったが、何も世界遺産ブーム(特にNHKは世界遺産が大好きだ)に絡んで「佐賀遺産」と銘うたずに、「私の好きな佐賀=ベスト70」とでも題すれば、今回のように何を入れてもよかったと思うのだが。
また改めて、純粋な「佐賀遺産=ベスト40」(番組の初めに島田洋七が言っていた40ぐらいで)をやってもらいたい。
佐賀を知り、佐賀をアピールするには、格好の企画と思う。