ローアン・ブリゼンディーン著 吉田利子訳 草思社
男性と女性が違うという経験は、誰もが持ったことがあるだろう。
まず、肉体的特徴が違うのだから、いくらか違うのは当然だと思うが、考え方や性格となると、正確に言い表すことが難しく漠然とした表現になる。ましてや、何故という原因にまで追究されると、生理的なことだろうと、これまた霧の中に茫漠と消えてしまいそうだ。
ある程度人生を生きてきて、何人もの女性と接し、何人かの女性と恋をし、それに関する多少の本を読み、少しは女性を知ったつもりになっていた。
しかし、やはり女性の行動や考えは分からないのであった。分かったと思えば思うほど分からないと言ったほうがいいかもしれない。
この本は、男と女の違いは、すでに遺伝子で決定されていて、その違いは脳に起因しているという視点で書かれたものである。
特に女性は、年齢によっていくつもの変化を遂げるが、中でも最も大きい変化は、思春期、子供を産んで母親になる時期、それに更年期だという。
男と女の違いは、赤ん坊のときから違うという。
「女児は生まれたときから情動の表現に関心を持っている。相手の表情や触れ合い、反応から、自分がどんな意味を持つ存在であるかを感じとる。
女児は男児に比し10~20倍も母親の顔をうかがい、自分がしていることがいいことかどうかを確認した。
男子は、母親を無視しているのではなく、警告の音調を聞きとることができない。
だから、女の子の社会、言語、人間関係のスキルは男よりも何年も早く発達する」
言葉を早く喋るのは女の子だし、女の子は相対的に早熟なのは脳の違いだったのだ。
男と女の違いは、十代で顕著に現れる。
「女の子は人間関係のストレスに、男の子は自分の権威への挑戦に強く反応するようになる。
思春期の女の子がおしゃべりなのは、おしゃべりを通じた繋がりは少女の脳の快楽中枢を活性化するのだ。それに、女の子の方が孤立することに強いストレスを感じるのだ」
男と女の恋愛の基本的システムは、男が追い、女は選択する。この形は石器時代からそうであるし、ほとんどの動物も同じである。オスが求愛し、メスが選択し受け入れる。
恋に陥るとは、男女双方にとって、最も不合理な行動だという。つまり、相手の欠点が見えなくなるのだ。
「恋の典型的な初期症状は、アンフェタミン、コカイン、ヘロインのようなアヘン系物質やモルヒネ、オキシコンチンなどの薬物の最初の頃の効果と似ている」
脳の状態はほぼ6か月から8か月続くという。
恋人の不在は、禁断症状なのだ。だから、遠距離恋愛も恋には悪いとは言えない。
興味深いのは、ボディランゲージの効果だ。
寄り添い、抱き合っていると、特に女性は脳にオキシトシンが放出されて相手を信じやすくなる。
「抱擁に関する実験から、オキシトシンはふつう一人の相手と22回の抱擁ののちに脳内に放出されることが分かっている」
だから、相手を信頼するつもりがなかったら抱擁はしないほうがいいし、相手を信頼させたかったら、頻繁に抱擁することである。
片時も離れたくないといった情熱的恋愛も、いつしか静かな恋に変わる。
脳に放出されたドーパミンは、だんだん鎮静化するのだ。ロマンチックな情熱的恋愛は、穏やかな愛着と絆の回路に変わっていく。
熱烈な情熱的恋愛が永遠に続かないことを、私たちは知っている。ずっと恋愛関係を保っているカップルは、違った脳に移行しているのだろう。
男と女の対応の違いも多々あり、おたがい戸惑うことも多い。
女性は、誰かがつらい思いをしていると、自然に傍にいてやろうと思うし、慰めの言葉をかけるものだ。だが、男性は意外とそっけない。
「男性は、自分が辛い思いをしているときには他者との接触を避けようとする。つまり、トラブルを一人で解決しようとする」
だから、女性も同じだろうと思うところで、男女のトラブルが起こる場合もある。
この本は女性神経精神科医により、女性を対象に書かれたものだが、男と女の違いを知るうえで興味深い部分も多かった。
脳の違いを知ったところで、女を知ったことにはならないだろうなという思いが残った。
男性と女性が違うという経験は、誰もが持ったことがあるだろう。
まず、肉体的特徴が違うのだから、いくらか違うのは当然だと思うが、考え方や性格となると、正確に言い表すことが難しく漠然とした表現になる。ましてや、何故という原因にまで追究されると、生理的なことだろうと、これまた霧の中に茫漠と消えてしまいそうだ。
ある程度人生を生きてきて、何人もの女性と接し、何人かの女性と恋をし、それに関する多少の本を読み、少しは女性を知ったつもりになっていた。
しかし、やはり女性の行動や考えは分からないのであった。分かったと思えば思うほど分からないと言ったほうがいいかもしれない。
この本は、男と女の違いは、すでに遺伝子で決定されていて、その違いは脳に起因しているという視点で書かれたものである。
特に女性は、年齢によっていくつもの変化を遂げるが、中でも最も大きい変化は、思春期、子供を産んで母親になる時期、それに更年期だという。
男と女の違いは、赤ん坊のときから違うという。
「女児は生まれたときから情動の表現に関心を持っている。相手の表情や触れ合い、反応から、自分がどんな意味を持つ存在であるかを感じとる。
女児は男児に比し10~20倍も母親の顔をうかがい、自分がしていることがいいことかどうかを確認した。
男子は、母親を無視しているのではなく、警告の音調を聞きとることができない。
だから、女の子の社会、言語、人間関係のスキルは男よりも何年も早く発達する」
言葉を早く喋るのは女の子だし、女の子は相対的に早熟なのは脳の違いだったのだ。
男と女の違いは、十代で顕著に現れる。
「女の子は人間関係のストレスに、男の子は自分の権威への挑戦に強く反応するようになる。
思春期の女の子がおしゃべりなのは、おしゃべりを通じた繋がりは少女の脳の快楽中枢を活性化するのだ。それに、女の子の方が孤立することに強いストレスを感じるのだ」
男と女の恋愛の基本的システムは、男が追い、女は選択する。この形は石器時代からそうであるし、ほとんどの動物も同じである。オスが求愛し、メスが選択し受け入れる。
恋に陥るとは、男女双方にとって、最も不合理な行動だという。つまり、相手の欠点が見えなくなるのだ。
「恋の典型的な初期症状は、アンフェタミン、コカイン、ヘロインのようなアヘン系物質やモルヒネ、オキシコンチンなどの薬物の最初の頃の効果と似ている」
脳の状態はほぼ6か月から8か月続くという。
恋人の不在は、禁断症状なのだ。だから、遠距離恋愛も恋には悪いとは言えない。
興味深いのは、ボディランゲージの効果だ。
寄り添い、抱き合っていると、特に女性は脳にオキシトシンが放出されて相手を信じやすくなる。
「抱擁に関する実験から、オキシトシンはふつう一人の相手と22回の抱擁ののちに脳内に放出されることが分かっている」
だから、相手を信頼するつもりがなかったら抱擁はしないほうがいいし、相手を信頼させたかったら、頻繁に抱擁することである。
片時も離れたくないといった情熱的恋愛も、いつしか静かな恋に変わる。
脳に放出されたドーパミンは、だんだん鎮静化するのだ。ロマンチックな情熱的恋愛は、穏やかな愛着と絆の回路に変わっていく。
熱烈な情熱的恋愛が永遠に続かないことを、私たちは知っている。ずっと恋愛関係を保っているカップルは、違った脳に移行しているのだろう。
男と女の対応の違いも多々あり、おたがい戸惑うことも多い。
女性は、誰かがつらい思いをしていると、自然に傍にいてやろうと思うし、慰めの言葉をかけるものだ。だが、男性は意外とそっけない。
「男性は、自分が辛い思いをしているときには他者との接触を避けようとする。つまり、トラブルを一人で解決しようとする」
だから、女性も同じだろうと思うところで、男女のトラブルが起こる場合もある。
この本は女性神経精神科医により、女性を対象に書かれたものだが、男と女の違いを知るうえで興味深い部分も多かった。
脳の違いを知ったところで、女を知ったことにはならないだろうなという思いが残った。