出雲国風土記に「くにひき」という神話がある。八束水臣津野命(やつかみずおみつののみこと)が、出雲の国の狭さを補うために、新羅や北陸地方の余っている部分に綱をつけて、「国来、国来」(くにこ くにこ)といって引き寄せ、これを出雲の国に縫いつけたという。
そんな出雲神話のようなことを奥さんと2人でやってみた。午後2時から広島カープ対巨人戦をテレビ観戦した。先発した九里亜蓮の好投と鈴木誠也の2ランホームランなどがあってカープが快勝し、満足のいく試合であった。直後、裏庭のバラ園に出ると、奥さんが何か言いたそうな顔をして私を見る。
「なにか?」というと「この東屋の向きを南向きにしてほしいの」と言うではないか。バラを植えているエリアに対面するように西向きにしている東屋を、90度回転移動させなければいけない。我が家では東屋と呼んでいるが、実は足場用の鉄パイプで骨格を作り、アクリルの波板で屋根をふいた構造のものである。
突風で吹き飛ばされないように4本柱にはコンクリートの土台を取り付け、総重量は120~130kgはあろう。そんな重量のある建物を持ち上げて向きを変えることが果たして奥さんと2人でできることなのか。試しに柱の1本を腰を入れて持ち上げてみると、何とか持ち上がらなくはない。
「よし、やってみようか」、柱を持ち上げコンクリートの土台の下に奥さんが細い丸太を滑り込ませる。ピラミッドの巨石を運ぶ要領でジワリ東屋の位置を移動させ始めて30分後、思っていた場所に希望していた向きに無事移動させることができた。
まさに「くにひき」の神話さながらの大仕事を終えた時にはくたくたの体であったが、「くにひき」もやってみればいろいろ知恵が出て、思ったよりは簡単にできた。さあ、カープも連勝し「くにひき」も完了したことだし、今宵は思いっきり祝杯を上げよう。