「汽笛一声新橋を はや我汽車は離れたり 愛宕の山に入り残る 月を旅路の友として」という歌は、子どものころ意味もよく分らずに冒頭の1節だけを歌っていた。これは「鉄道唱歌」といい、「地理教育鐵道唱歌」として明治33年に第1集が出版されたものである。
歌詞は、沿線に沿って作者の好んだ場所や歴史的な場所を七五調で順々に詠っている。「山陽道編」の「岩国駅」では「岩国川の水上に かかれる橋は算盤の 玉をならべし如くにて 錦帯橋と名づけたり」と歌われている。この頃から岩国といえば錦帯橋であったことがよく分る。
そんな懐かしい鉄道唱歌のメロディに載せて、岩国ご当地の鉄道唱歌として「錦川清流線唱歌」というものが発表され、同時にCDも発売された。錦川清流線のイメージアップと利用促進を目的とし、清流線各駅とその周辺の魅力を称えた歌詞となっている。「清流線を育てる会」が製作し、清流線全12駅の各駅名を、1番から12番までに歌い込み、8月29日、岩国駅の0番ホームで岩国の女声合唱団・コール錦の歌声で披露された。
1番は錦町駅で「ここは山代錦町 秘密ヶ岳に寂地山 高峰仰ぐ節分草 清流線の始発駅」、12番は川西駅で「鵜飼の篝火に招かれて 川西駅から宇野千代邸 城下町抜け錦帯橋 世界遺産の巧み技」と歌われている。
CDに吹き込んである歌声は、コール錦のほか、岩国に縁のあるテノールとソプラノ歌手の3者が分担して歌っている。歌詞は元岩国高校の教師であった尾川政之さん。12駅のそれぞれの土地の売り物が歌い込まれ、まるで観光案内をしてもらっているような歌詞である。
これからは清流線に乗れば、事務的な車内アナウンスではなく、この鉄道唱歌が流れることによって、次の到着駅を案内してもらえるようになるかもしれない。これにより、錦川清流線がより一層活性化されることを願っている。
ところでこのCD、一体どこに行けば手に入るんだろう。知人に聞いてみると、横山ロープウェーきっぷ売り場で、1枚500円で販売されているとのこと。買い求めて是非聞いてみてください。錦川のせせらぎで鳴く河鹿のように澄んだ歌声が聞こえてきます。