写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

見届ける

2017年04月12日 | 生活・ニュース

 気温の低い日が多かったせいか、今年の桜はどこも持ちがよかったようである。3日ぶりに錦帯橋の桜を見に出かけてみた。「今日が今年最後の花見だろう」と言いながら出かけてみたが、満開を過ぎたばかりというか、散り始めた直後といおうか、花見の客も多く、上河原の駐車場もいっぱいの盛況であった。

 ここかしこにシートを敷いて花見弁当を食べている。その中に座ってわれら二人も握飯をほお張った。周りの緑の芝生の上には散ったばかりの花びらが、岩国出身の作家・宇野千代デザインの着物の柄のように、見事なまでに均等にちりばめられている。

 自然が作った大きな着物の上に座っているような錯覚に陥った。しばらくして立ち上がって眺めてみると、今度は違ったものに見えた。昨年の夏、沖縄に旅行した時に立ち寄った、美ら海水族館の巨大水槽にいたジンベイサメの背中の模様によく似ている。

 川面に落ちた無数の花びらは「花筏」と呼ばれるが、芝生の上に落ちたものは何と呼べばいいのだろう。「花ジンベイサメ」とでも命名したくもなってきた。3月21日から通い詰めた錦帯橋の桜も、こうしてついにフィナーレの時を迎えようとしている。

 今年は、今日で10回目の花見をした。十二分に満足させてもらった錦帯橋の桜、しかと見届けて帰ってきた。桜が散った後、今度は何をして過ごそうか。それが問題である。