俺の明日はどっちだ

50歳を迎えてなお、クルマ、映画、小説、コンサート、酒、興味は尽きない。そんな日常をほぼ日替わりで描写

「ポー川のひかり」 CENTO CHIODI

2009年10月22日 10時11分29秒 | 時系列でご覧ください

カンヌ国際映画祭グランプリに輝いた『木靴の樹』から30年、イタリアの名匠エルマンノ・オルミ監督が、自身の映画人生、最後の長篇劇映画と位置づけた作品。

最初の舞台は夏休みがはじまったばかりのボローニャ大学。
何らかの異変に気付いた老いた警備員が古文書をおさめた部屋へ向かい『惨劇』を目にし、取り乱して通報し、警察や検察官が駆けつけるといったミステリーテイストたっぷりな冒頭のシーン。



そしてその惨状に対して警察官が「まるでテロだ」と言い切るのに対して、遅れてやってきた女性の検察官が「失礼を顧みず言うならばこれは見事なアート作品のようにも思える」と話すシーンが印象的。

そのあと「書を捨て町に出よう」ならぬ、人生のあらゆるしがらみをも捨て町から出た主人公が川辺でひっそりと、だけど豊かに暮らしている人々と出会い、生きることに対する本来あるべき姿をキリスト教の教えを背景に描かれていくのだけど、観ているこちら側がまだまだ生臭さたっぷりな分だけ(良い映画だと思うけれど)どこか物足りなさも。



抑圧される老人たちに対して、工事用のショベルカーに立ち向かう反権力闘争を喚起させるほどでもなくとも、せめて解放への道しるべを示してあげて欲しかったと思うのは青臭い正義感でしかなく、この映画の中ではお門違いなんだろうなぁ。むむむ。

ある意味、そんな物事の枝葉末節に拘泥することなく大きな哲学的テーマを抱合し、映画としてもきちっとした隙のない極めて映画的な映画で、かつ人生に対する諦観というより達観としてみるならば大いに見応えがあると思うので、機会があれば是非!


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