俺の明日はどっちだ

50歳を迎えてなお、クルマ、映画、小説、コンサート、酒、興味は尽きない。そんな日常をほぼ日替わりで描写

「未来を生きる君たちへ」 IN A BETTER WORLD

2011年11月16日 20時16分53秒 | 時系列でご覧ください

デンマークとアフリカの難民キャンプを舞台に、善と悪、愛と憎しみの線上で揺れ動く主人公たちが苦悩する姿を映し出し第83回アカデミー賞、第68回ゴールデン・グローブ賞で外国語映画賞をダブル受賞した話題作でもある本作、人間が持つ心の葛藤が見事に描かれていて、深く深く心に残る作品でありました。



アフリカとデンマークという対称的な場所を交互に舞台としているのみならず、映画の中では、子供と親、夫と妻、いじめをする側とされる側、報復と赦し、あるいは愛と憎しみといった具合にまるで物事の裏表のごとく次々と様々なものが対称的に描かれていく。



そんな中、医師として難民キャンプとデンマーク本国とを行き来する医師の姿を通して学校でのいじめと武装集団による凌辱が(つまるところ)同質であることが描かれ、暴力の連鎖に拮抗するものは?と問いかけてくる。

そしていじめた生徒に対して受け手側が反撃し、力でねじ伏せた時、あるいは多くの女性を犠牲者としていた暴力集団のリーダーが民衆によって袋叩きにあって死に至った時、それを観ている観客側が少なからず感じてしまう『カタルシス』をも提示し、さらに深く問い詰めてくるといった構成の妙。



とにかくこの映画の中ではそうした世の中の暴力の構図を改めて見せたうえで、そこから声高に非暴力を訴えるのではなく、そうした暴力を否定するところから生まれてくるジレンマを顕在化させることにより、非暴力の姿勢を貫く難しさを描き出しているのだ。



そしてそんな中、そうした暴力の連鎖だけではなく、未来へ繋がるかすかな希望を感じさせるエンディングが用意され映画は終わり、邦題や英語の題名の「IN A BETTER WORLD(より良き世界で)」と相通じるものを感じさせてくれるけれど、実はデンマーク語の原題はズバリ「HÆVNEN(復讐)」。
ウ~ム、突き付けられたテーマはどこまでも深くて重く、とにかく大いに考えさせられた作品だったのでありました。

金沢での上映は明日で終わってしまうのですが、機会があれば是非。
決して口当たりの良い映画ではないかもしれませんが、その骨太な映画力を感じさせてくれる秀作であります。




今日の1曲 “ Come Down In Time ” : Elton John 

映画を観た後、ふと1970年にリリースされたアルバム「 Tumbleweed Connection 」の中に収録されていたこの曲を何故か思い出してしまったのでした。




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2 コメント

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どこでも隣国は (エージ)
2011-11-17 11:31:54
子役も含めてみんないい顔してましたね。特にあのお父さん。向こうでは名優なんでしょうね。

これを観るとアフリカは普通の国々になるのにまだまだ時間がかかりそうですねぇ。こんな場所ばかりではないんですが。 
スウェーデンとデンマークも日本と韓国みたいな関係なんですね。いろいろ興味深かった。
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◇エージさんへ (nikidasu)
2011-11-18 18:06:09
そうでした、両国の歴史的背景はよく知らないので、日本と韓国との比較はちょっとわかりかねますが、隣国といった意味では確かにそうなのかもしれませんね。

人の表情に関して言えば、無邪気で明るいアフリカの子供たちの顔つきに較べ、どこか陰を持つ子が多かったデンマークの子供たちといった比較も興味深かったです。

ともあれ、光差す未来が隔てなく訪れる世界になって欲しいものです。
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