俺の明日はどっちだ

50歳を迎えてなお、クルマ、映画、小説、コンサート、酒、興味は尽きない。そんな日常をほぼ日替わりで描写

「4カ月、3週間と2日」 4 luni, 3 saptamani si 2 zile

2008年05月14日 02時29分01秒 | 時系列でご覧ください
舞台は1987年、チャウシェスクが大統領だったルーマニア。
かつての日本同様、「産めよ、増やせよ」が国策となっていて中絶が厳しく禁じられたいた中、ルームメイトが望まぬ妊娠をし、その非合法の中絶を手伝う女子大学生の1日を思い切り丹念に描き、当時の社会主義国家が持っていたヒリヒリとする「冷たさ」を充分感じさせてくれる、圧倒的存在感のある力作。

官僚主義が蔓延っていたあの時代の社会主義国家ならではの建前と本音の二重構造。
それは本来あるはずのない闇タバコの流通であり、供給側(強者)が利用者(弱者)を翻弄するホテルの予約であり、はたまた非合法を逆手にとって理不尽極まりのない要求をする極悪医者が体現するものだったりするのだ。



実際のところ映画の中では確かに「堕胎」というものがメインで描かれて入るけれど、本来監督が伝えたかったのはあの時代の重く苦しかった社会の現実なんだろう。

そういった意味では、例えば「処置」を終えた友達を一人ホテルの部屋に残し恋人の母親の誕生日祝い(ここでの当時の勝ち組のいやらしさを延々とワンカットで描くシーンも秀逸)に行っている間の音信不通の不安感、あるいは産み落とされた胎児を携えて暗闇の街を怯えながら彷徨う恐怖感、それらが第一級のサスペンス映画並みの緊張感を強いらせてくれて、本当にお見事のひと言。



決して口当たりの良い映画ではないから万人受けはしないだろうし、また女性から見るとまた違った視点を感じるであろう作品ではあるけれど、とにかく見応えのある力作であります。
機会があれば是非。
変な言い方だけれど、しびれてしまいました。


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4 コメント

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こんばんは~ (mimia)
2008-05-14 22:00:10
>当時の勝ち組のいやらしさ・・・

恋人の実家のことですよね。ルーマニアにあってセレブな家庭といえば、チャウシェスクの傘下にあって裕生活をしているのでしょうね。その中で「心あらず」の彼女に共感しました。何も考えていないおぼっちゃま君とは多分うまくいかないんだろうな~なんて。

バスのチケットをさりげなく渡して助け合うシーンのように、この映画は虐げられた人たちが互いに助け合う、その逞しさがいいのだなぁ。身体はともかく心は犯されないぞ~みたいな…女は強い!
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Unknown (koichi)
2008-05-15 08:46:49
ヒロインのコマネチはなぜに何も考えていない馬鹿女のために身体を張って頑張るのでしょうか?
そこがイマイチわかりませんでした。まぁそんなことはどうでもいいのかな?

極悪医者ですが甘ちゃんな二人に大人の事情を説教し処理方法等を丁寧に指導し、5000を2000にまけてあげるスケベな小悪人だと思いました。IDカードをホテルに忘れる間抜けでもあるし・・・。彼も負組の一員だと思います。
ってことを書く俺は女性の気持ちを考えない極悪人です。とほほ。
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こんにちは♪ (ミチ)
2008-05-16 11:21:36
たしかにね、女性と男性ではちょっと見方がちがってくるだろうな~と思います。
恋人とのやり取りには普遍的な男女間の埋められない溝を感じました。
日本がバブルで騒いでいた時、こういうことをしている国もあったのんですよね。
「善き人のためのソナタ」とか「サルバドールの朝」とか、今になって知る近代ヨーロッパ史はとても興味深いです。
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こんばんは (nikidasu)
2008-05-17 04:16:36
◇mimia さん

あの恋人の実家の彼の部屋でのやり取り。
実は結構身につまされるものが合ったりもしました(汗)。
~ ボロは着てても心は錦 ♪(ん?ちょっと違うか)
ともあれ女性のたくましさを改めて知らされた作品でもありました。

◇kouichi さん

確かにあそこまで面倒見てしまうというのは、
仲の良いルームメイトの域をはるかに超えていました。
ただそこから逆に、例えばバスのチケットのやり取りとも
通じる相互扶助的なやりきれないけれどたくましい、
みたいなものが見えてきたりもしました。
エロさ満開の闇医者に関しては、彼に正論を吐かせている分
(値引きの代わりに行う行為意そのものはさておき)
思わず理解してしまう気持ち、確かにわからないでもない、
かな?

◇ミチさん

ルーマニアの映画は個人的にはお初だったと思います。
例えば「あなたになら言える秘密のこと」や「サラエボの花」
あたりも、それまで知りえなかった世界を「見せて」くれる
といった意味で、映画の力を感じさせてくれ、どんどん
興味が湧いてきています。
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