俺の明日はどっちだ

50歳を迎えてなお、クルマ、映画、小説、コンサート、酒、興味は尽きない。そんな日常をほぼ日替わりで描写

「ハーブ & ドロシー アートの森の小さな巨人」 HERB & DOROTHY

2011年02月19日 13時50分46秒 | 時系列でご覧ください

Art is mute when money talks. (Patrick Mimran)
ニューヨークに住む元郵便局員のハーブとその妻で元司書のドロシー夫妻が少ない生活費をやりくりしてこつこつと自分たちの好きなアート作品を買い集め、やがて世界屈指の現代アートコレクターになっていったという実話を、そんな現在80代後半になった夫妻の日常を追い、そして多くのアーチストや美術関係者のインタビューも織り交ぜながら描いた、なんとも心温まる作品。

まずは是非ともこの映画の予告編を見てほしい



見ての通り、何ともキュートでチャーミングなご夫婦なんだけど、例えば一部お金持ちの日本人がニューヨークのポップカルチャー作品を金に飽かして買い求めていた時代に、ミニマルアートやコンセプチュアル・アートといった難解な作品を、難しいことは何も言わず自分たちの価値観で買い求めていた姿はある意味、その後拝金主義となるアートシーンに対して何とも痛快。
要するに
You don't have to be a Rockefeller to collect art.
ということなんだよね。


そしてこの映画のもう一つの魅力はやはり仲良く手をつなぎ画廊を歩くハーブとドロシーの姿。
残念ながら二人には子どを授かることがなかったけれど、彼らが歳を重ね合わせるにつれて、所蔵するアート作品も評価が高まり、点数も増え、やがて1LDK のアパートの部屋に収まりきらなくなった作品をナショナルギャラリーへ寄贈するときに、そのことをまるで自分の子供が大学進学で自分たちのもとを離れるがごとく捉えている姿に思わずウルッ。

売ろうと思えばいつだって売れたのに、結局1点も売らず、すべてを寄贈した彼ら夫婦には、アートに対する紛れもない無償の愛がそこにはあったのだ。


もしかしたら途中冗漫に感じるところもあるかもしれませんが、過去のアーカイヴ探し、編集、音楽と、とても素敵に仕上がっていて、観終わった後にほんのりと温かい気持ちになる作品であります。


機会があれば是非ともこの稀なる魅力的な人生を送る夫婦の姿を見に行ってください。
自由に生きる素晴らしさ、そして人生とは、夫婦とは、そんなことすらも考えさせてくれて、とにかく強くオススメであります。

それにしても彼らの生活を心配したナショナルギャラリーが生活費の足しにと贈ったお金でさらにアート作品を買い足す二人、本当に筋金入りだぁ!



今日の1曲 “ My back Pages ” : Bob Dylan

時代的に言ってハーブ & ドロシー夫妻が作品収集のためソーホーにも向かい始めていた頃と時代的に多分重なる頃に発表されたディランの4枚目のアルバム『 Another Side of Bob Dylan 』(1964年)の中から今でも大好きなこの曲を



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4 コメント

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良かった~ (やじ)
2011-02-19 20:06:52
ご無沙汰してます。

ウチらも先週観てきました。
前日につまらない夫婦げんかをしていたのですが、映画を観終わって快復しました(笑

またお店伺いMARS。
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◇やじさんへ (nikidasu)
2011-02-20 11:33:16
ご夫婦で鑑賞というのも、特にこの映画の場合素敵ですね。
そして関係修復できて何よりです。

またのご来店、待っちょりマンモス。
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サンタ夫婦 (エージ)
2011-02-20 15:57:37
私はまだ観てないのですが  
先日こちら関西の、ちわきまゆみさんのFM番組
にこの日本人女性監督が出ていて
「ご夫婦に絵画を買ってもらった芸術家の話を
聞くたびこれは映画にしなければという使命感が
生まれてきた」と言ってました。この人も素晴らしいですね。 来週観てみようと思います。
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◇エージさんへ (nikidasu)
2011-02-21 00:32:00
ちわき まゆみのFM番組があるんですね。知りませんでした。
それはともあれ、この作品が日本人の女性が監督をし、
しかも初の監督作品だというのも驚きでした。

ちなみに個人的には「ミリキタニの猫」と相通じるテイストを
感じてしまいました。
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