俺の明日はどっちだ

50歳を迎えてなお、クルマ、映画、小説、コンサート、酒、興味は尽きない。そんな日常をほぼ日替わりで描写

「初恋」

2006年06月21日 02時04分21秒 | 時系列でご覧ください
1968年12月10日朝、東京都府中市にある東芝府中工場の従業員4600人分のボーナス2億9430万7500円が、日本信託銀行国分寺支店から現金輸送車で運ばれる途中の東京府中刑務所横で、追ってきた白バイ警官に変装した男に停車を命じられた。ダイナマイトが仕掛けてあるといって、行員4人を避難させ、輸送車を検分する仕草をみせたあと孟スピードで走り去った。「負傷者ゼロ、犯行時間3分。犯人の数は不明」という謎めいた犯罪は、人々の話題を独占したーーーー。
そしてそれから7年の時が過ぎ、その事件が時効を迎えようとしていた1975年、日本テレビ系列で「悪魔のようなあいつ」というその事件をモチーフにしたテレビドラマが作られ放映されていた。

演出は当時「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」で絶好調だった久世光彦、脚本は後に「太陽を盗んだ男」「青春の殺人者」で一世を風靡することとなるご存知ゴジこと長谷川和彦という強力タッグ。

そして登場する出演者がこれまた凄い。
主演の犯人役に沢田研二、妹役に三木聖子(といっても知らないだろうなあ)、元エリート刑事で裏世界に転じた男に藤達也、犯人を執拗に追いかける刑事には若山富三郎、さらにはバイク屋の主人に荒木一郎、オカマやくざに伊東四郎がというのもかなりびっくりもので、他にも浦辺粂子、篠ヒロコ、安田道代、那智わたる、デイブ平尾、岸部修三、尾崎紀代彦、細川俊之、長谷直美と、とにかく今ではとても考えられないそうそうたる顔ぶれが揃ったテレビドラマだった。



実のところ当時、久世演出があまり得意でなく、テレビそのものもあまり見ていなかったため世の中の多くの人たちが高く持ち上げるだけのドラマだったかは不確かではあるけれど、全17話のうちいくつか見た印象で語るなら、かなり興味を惹くドラマであったことに間違いはないと思う。
それにしてもこうした骨っぽいというかクセのあるドラマって、今の時代ではとんと見かけなくなってしまった。

なんていうことはさておき、すっかり前置きが長くなってしまったけれど、そんな60年代後半のあの時代を描くことはいろんな意味で大変であると改めて認識した映画、それがこの「初恋」だ。

とにかくもしかしたら魅力的な青春群像劇になったかもしれない設定の中、ここで描かれる登場人物のあまりにステロタイプ的で、その上っ面をなぞっただけの描写は、あまりに浅薄で、失望を通り越して困ってしまうほどだった。

そして女子高生が「三億円事件」の実行犯だったという秀逸な発想は生かされることなく、とにかく脚本、演出、演技、いずれもが残念ながらあまりに稚拙すぎた。

ただこうした描かれ方というのは、逆から見れば、あの時代を全く知らない世代にとって、あの時代はこんな風に映るのかと思ったら、ある意味愕然とさせられもした。

そんな中、あえてモチーフとなっている「三億円事件」のことや時代背景のことはさておき(たくはないけれど、しょうがないとして)、題名にあるように宮崎あおい演じる主人公みすずのラブストーリーとして見ようとした場合でも、恋する相手の東大生をはじめ他の登場人物それぞれがあまりにも魅力的に見えず、少女が抱くであろうときめき感も伝わってこなくて、結果、無理は承知で「時代」に恋して見事に大人になっていく少女みすずの物語として観るしかないかと思った次第。ウーム。
ただそう観るには勿論、みすずを演じた宮崎あおいの好演ぶりに由るところ大だったりするのだけれどね。

それにしても、ランボーの詩集で、ドラッグで、○機がいて、ジャズ喫茶という見事に短絡的な青春像には、やっぱ絶句。してしまうぞ!



今日の1曲 “ 時の流れるままに ” : 沢田研二

阿久悠作詞 大野克夫作曲 沢田研二唄による1975年のヒット曲。
英訳すると“ As Time goes by ”となるのが可笑しいというか、さすが阿久悠であります。
とにかくジュリーこと、沢田研二が一番輝いていた頃の1曲であることに間違い無しです。


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4 コメント

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三木聖子! (山品@仙台)
2006-06-21 10:21:02
懐かしいですね。「悪魔のようなあいつ」この頃のジュリーは怖いものなかったでしょうね~!

三木聖子さんですが、現在は仙台の繁華街・国分町で『聖子』というお店を営んでいらっしゃいます。知人が大阪から来た某菓子メーカーの方を接待で連れて行ったら、三木さんの大ファンで取引きが思った以上にスムーズに運んだことがありました。

「時の過ぎ行くままに」カラオケで歌ってしまいます。歌詞は見なくても
返信する
時効まで。。。 (ツボヤキ)
2006-06-22 05:43:27
おお、当方もあの方は得意ではなかったデス(苦笑)。

で、この流れはよお~くわかりますわ。

僅かに薄汚れて見えるんです、60年代は。

外見上も僅かに垢抜けない、とこがないといけない。

けれども演じる役者が耀いて見えないと、イカンの

だと思うのですが。

その微妙なバランスにこそ、時代が蘇る、かも。

そこがセンスですか。

それ、欠けているのが多くて腹たちますわ(涙)。



「グッドナイト&グッドラック」なんぞ

もーシビレタですよ。



外されたらどーしよーと思いながらも

期待してしまっているのは・・・・

やっぱり、その…飛んでしまいますが

「すきだ!」を見ましょうか(笑)
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こんにちは♪ (ミチ)
2006-06-22 08:56:58
あの時代の雰囲気を描くのはやはり至難の技なのかもしれませんね。

私は微かに覚えているくらいなので、ふーん、こんな感じだったのかな?位に思ってしまいました(汗)

リアルタイムであの時代を経験した人にとっては薄っぺらく感じられてしまうという予感はありましたが。

nikidasuさんは「光の雨」はご覧に(もしくはお読みに)なりましたか?
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祝・イタリア決勝T進出決定! (nikidasu)
2006-06-23 01:14:30
■山品さんへ



国分町では何度か飲んだことあるんですが、

そうだったんですか、世の中狭いというか、

びっくりですね。

ただ、自分から行く勇気はちょっとないかも(笑)



■ツボヤキさんへ



「グッドナイト&グッドラック」まだ観てません。

なんだか来週あたりようやく観ることが出来そう

なので楽しみにしています。

とにかくセンスと知識は何事においても必要不可欠

ですよね。



■ミチさんへ



時代考証的なことで言えば、多分頑張っていたと

思うのですが、いかんせん「あなとなら時代を変

えられると信じていた」なんてコピーがあって、

反権力などという言葉が出てきてしまうと、つい

大人気なく反応してしまいます。汗ってやつです。



ちなみに「光の雨」は偉そうなことを言いつつ、

実は原作も読んでなく、映画も観ていません。

ただ、この映画の監督である高橋伴明は古くから

の友人なので、いろいろ話は聞いていました。

是非近々見てまた感想を書きたいと思います。
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