正しさとは(上)
いつものスーパーの駐車場。買い物を終えて車へと戻ると、隣に大きな車が。着いたばかりらしく、降りてきたのは若い夫婦。エンジンをかけたままだ。暑いからかなとぼんやり思いつつ、荷物を載せるべく後部座席へ。はたと、隣の車の助手席でぐっすり眠る子どもの姿を目が目の端に映る。ああ、もしかして子どもを置いて買い物に行くのかな。そう思ったのに身体はいつもの動きをして、何事もないように車に荷物を載せてしまう。そうしている間に少し離れたところから夫婦が戻ってきて、眠っている子どもを降ろし始めた。起こされてぐずる子どもは父親に抱かれ、エンジンの切られた車から家族が離れていく。ケイコはその光景を間近で見ながら、あの夫婦はケイコに見られたと思って戻ってきたのかなぁと考えた。もちろん、そもそも置いていくつもりなどなかったのかもしれない。隣の車のケイコが戻ってきたから、ケイコの車が出て行くまで待とうとしたのかもしれない。色々とぐるぐる考えているうちに、果たしてケイコは、もしもあの夫婦がいないところで子どもが車に残されているのを見たときに、どう対応するだろうと考える。もしも何かあったらと考えて店の人に言うだろうか。そのまま静かに子どもの見張りをしているだろうか。それとも、エンジンがかかっているということはエアコンも効いているから大丈夫だろうしすぐに戻るだろうと、何事もなかったかのように家に帰るだろうか。
どうすれば正しいのかということはわかっていても、そう動けるかどうかがわからない自分に愕然とする。まずどうして考えることがあるだろう。そもそも考える必要などないことなのに。(来週火曜日掲載の下に続く)
【波風氏談】画像処理の難しいスマホ環境で作成した今回。シンプル過ぎて物足りない感じもするが、言葉を味わうには悪くない感じ