波風立男氏の生活と意見

老人暮らしのトキドキ絵日記

波風流 2021読書ベスト10

2021年12月31日 | 読書

ログにUPしたのを『波風立男氏の本棚』で整理し、さてさてどの本が良かったかなあと考える。評価基準は、①そもそも読んだことを覚えている(笑)、②読了したが再読したい、③強く印象に残る言葉や文章の有無。読み終わってもブログに記録しておかないと(読書感想交流会も含めて)、結果としてただの読みっぱなし・暇つぶしにしかならないことを痛感する。


10位 随筆『すごいトシヨリBOOK』(池内紀)
10位 随筆『モーロクのすすめ』(坪内稔典)
10位 評論『定義集』(大江健三郎)
9位 漫画『北極百貨店のコンシェルジュさん』(西村ツチカ)
8位 随筆『愛は魂の奇蹟的行為である』(なかにし礼)
7位 小説『水を縫う』(寺地はるな)
6位 評論『ル・ボン 群集心理』(武田砂鉄)
5位 詩集『希望』(杉山平一)
4位 小説『クララとお日さま』(カズオ・イシグロ)
3位 評論『くらしのための料理学』(土井義晴)
位 随筆『ぼくの伯父さん』(伊丹十三)
位 歴史『昭和史』(半藤利一)

 

ログ上の本棚にUPした今年分(12/31時点で、上から6段目の漫画『見晴らしが丘にて それから』の左から上部分)よりも実際に読んだ本はかなり多い気がする、思い出せないけど(涙)。つまんないのはブログに載せない。
1位は今年亡くなった作者に敬意も表して。10位3つはどれも強く記憶に残ったから(何が?と聞かれると答えられないが、読んでてうなずく回数が多かった)。順位は全然必要なかったなあ、棚にあるのは一冊除いて全部面白かったから。


明日は正月、気持ちぐらいは古いのを脱いで新しいのに履き替える感じで 1年で一番見たい番組が無い大晦日。ささやかなご馳走食べて録画の「カールさんとティーナさんの古民家村だより」や「72時間」を見るとしよう。厳かな気分にあわない寺山修司はしばらく置いといて画像は整理してすっきりした書棚。欲しい本が分からなくなったのは売ったり捨てたり場所移動したせい(涙)

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第29回『ほんのおつきあい』記録

2021年12月29日 | 読書

先月28日の読書交流会記録。前回はメールによる誌上交流、実際に集まる交流は4月以来、実に7ヶ月ぶり。現地集合者4名、メール1名、手紙1名、合計6名の読書感想交流。

SN    『人間が知らない生き方』(麻生羽呂・篠原かをり著:文響社 )、20種類の動物の生態について漫画と解説で構成された本。いろんな発見があり、人間のあり方について考えさせられる。
どのエピソードも面白かったが、特に印象に残ったのは「カピパラ」。
温厚でどの動物たちとも仲良くできるし、カピパラ同士でも血縁関係のあるメスが共同で子どもを育てるらしい。些細なことは気にせず、愛情深い。
欲や争いにあふれた人間社会より、カピパラの世界の方が素敵だなと思った。
「カピパラ」という言葉の意味は「草原の支配者」。名前をつけた人のセンスもGood!キリンやペンギンなどについても意外な面が描かれていて面白かった。評価は★5。 ※メールによる参加


MS 『原野に飛ぶ橇』(加藤多一著、佐藤忠良画:偕成社)、学校の授業で開拓のことを学んでも興味を持てなかったことを後悔。馬とともに暮らすこと、馬がいなければ生きられないが役に立たなければ殺されてしまうこと知った。今から少し前の時代のことなのに自分は何も知らないと思った。稚内から札幌に行ったTさんからいただいた本だがこういうのを読んでいるのかと思った★5。 ※著者は稚内の大学で教えていた。


KK
 『コンビニ兄弟 ーテンダネス門司港こがねむ村店ー』(町田その子著:新潮文庫)、ハートフルな人間的なお話、母から読んでみたらと勧められて。柔らかい文体でとても読みやすい★4。『息子のボーイフレンド』(秋吉理香子著:U-NEXT)、LGBTを考える取っかかりになると思う。そして、いつかこうなったら良いなあの世界観★4。マンガ『昨日何食べた 全19巻』(よしながふみ作:講談社)、2DK男2人暮らし 食費、月3万円也。筧史朗(弁護士)と矢吹賢二(美容師)の「食生活」をめぐる物語でテレビドラマの原作にあたる。史朗の母がゲイ=悪と考えるなどテレビと少し違うが抜群に面白く考えさせられる★5以上。『利終活写真館』(芦沢央著:小学館)、用意する人が珍しい遺影を撮る写真館が舞台。未だ先のことだが終活を考える。自分は昔から早く歳をとりたい、余命を知りたい、それがわかっていればダイエットしなくても良い(笑)★5。

TT 三浦綾子著『天北原野』を読み、「宗谷に住む農家の人たちの気質に触れたような気がしました。(MSさんに)お送りした本も、何年も前に読んだもので、内容もきちんと覚えていません。でも、どれも、読んで良かったと思える本でした。それは、、天北の地に住む者には必読の書であるように感じておりました。また、心を揺さぶられるような本でもありました・・・・本に限らず、音楽・映画・絵画・なども理屈ではなく胸に響く触れた時は、人生そのものが豊かに感じられますね。何故?と問われてもわかりません。なぜかな ―。※MSさんに届けられた手紙をTTさんの了解のもとに、波風氏が読書感想に関する部分を抜粋して掲載。


ママヨ
 友だちから聞いて読んだ、『すぐ死ぬんだから』(内館牧子著:講談社)と『今度生まれたら』(前同)。前者は60代で「人は中身より外見」とアンチエイジングに目覚めた主人公が・・・夫のとんでもない事実に直面して・・・人生100年時代の終活小説★4。後者は順風満帆のはずの老後がガラガラと崩れて・・・自分の人生に疑問持つ専業主婦の主人公・・・果たして自分は何をやりたかったのか、前者と同じく高齢者小説★4。2冊とも、自分なりの生き方を見つけることが大事という内容に文句はないが、現実離れしているところが減点理由。

波風  この間の読書は本ブログで書いているので略。代わりに、2021年に読んで良かった本のベスト10を明日掲載予定。


今日は良い日。年越しウドンを作った。読書交流会の記録をブログにUPできた。除雪車が家の前の雪を片付けてくれた  3人の方から来年用の手作りカレンダーいただく。波風氏より年上、ウーム、負けてる(涙)。

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美しい暮らし

2021年12月28日 | 日記・エッセイ・コラム

い学校、良い会社に入り人並み以上の生活を送るのが人生の目的じゃあつまらない。『創造』が必要だ、生活と創造を両立させてきた人生だとしみじみ語る小椋佳。前に見たテレビで、若い時からずうっと死ぬことが頭から離れずそれは今もだという言葉に驚いたが、生きずらさと生きる喜びは少しの違い、裏表なのかもしれない。一番好きな『さらば青春』、前からそういう雰囲気があるような感じがしている。

 

 

美しい暮らし
          小椋佳
真顔して 背負うには
重すぎる 人生に
時に  容易い
幸せに 寄りかかる

諦めは 諫めよう
真実を 求めよう
胸に  留まる
少年を 裏切らず

その仕草 舞いのよう
その言葉    歌のよう
君が 救いさ
その心 海のよう

解けぬまま 人生を
終わろうと する時も
せめて 言いたい
美しく 暮らしたいと

 

この直裁的な詩。ラストアルバムの『もういいかい』の率直な言葉に驚いたが、2連めの「胸に 留まる 少年を 裏切らず」に、この詩人の揺るぎない美学を感じた。「少年を 裏切らず」に生き続けることが引き続き「美しく 暮ら」すことだと。完成された詩とは感じない、が人生の本質を濃縮した言葉で創造しているのは確かだ。今日たまたま見たテレビで、寺山修司との出会いが創造の出発点だったことを知った、面白いなあ。


画像は、礼文島の桃岩一帯の植物群を国天然記念物へと答申する先々月の新聞記事。波風氏は礼文島桃岩辺りの景観が今までで一番美しいと思っている。『キャンサーギフト』(北海道新聞社)は10月に亡くなられた杣田美野里さんの最後の写真・歌集。「美しい暮らし」と礼文を写真と歌で創造し続けた杣田さんが重なる。

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つながる読書

2021年12月26日 | 読書

ったことも忘れていた『大江健三郎・再発見』(2001年発行、大江健三郎他編:集英社)。書棚の陰に隠れていてこの間の片付けで出てきた。「どうして買ったのかなあ?」と開いてみたら面白かった。
この作家は、エッセーに比べてどうして小説が難解なのか、エッセーで強く憲法や民主主義の大切さを語りながら、小説は全くそれを感じさせないのはなぜだ・・・この理由を解き明かすのが波風氏の卒論テーマだったが・・・本人の口から明かされていた。その理由が面白い。人生の難題を持続して綱渡りしていた。30代から読まなくなり、60代で『燃え上がる緑の木』をやっと読み、「やっぱり凄いや」と思った。50歳の頃、あの大江さんは今どうしているのかなあ?と求めたのだろう。

 

井上ひさし氏、小森陽一氏との対談で作家が波風氏の長年の疑問に率直に答えているのだが、言葉が大変分かりやすい。構えなくても読めるのが凄い(笑)。
この3人の本をバラバラに読んで(小森氏は当地で講演を聴いた)いたが、随分時間がかかってつながった。『憲法9条の会』の呼びかけ人と事務局長とは前から知っているが、大江健三郎について、深く読み解いてくらるのが嬉しい。井上さんも波風的老後読書の必須の1人、この人も読書再開しなければ。足腰がまだ使えるうちに『こまつ座』の劇も見ておかなくては。残り時間があるうちに「続 東京散歩」だね。


年話題の『人新世の「資本論」』を読んでいる。一旦休むと訳が分からなくなるから時間がかかる。同時進行で、『カムイ伝講義』(田中優子著:小学館)読み、当然にマンガ『カムイ伝』再読。この同時進行読書は楽しい。人間は地球に存在するものだけを資源に豊かな暮らしを作って来た歴史を思う。カムイ伝の格差・差別構造に目奪われず、江戸時代の圧倒的多数が従事していた畑や海山の産業と経済の発達を考えさせてくれる。そこから、資本主義と封建主義のシステムの違いがもたらす物質消費と経済発達の違い、目に見えない地球的(これをグローバルと言うんだね)な、隠された格差・差別構造を想像する。江戸時代の資源再生・循環のことを知りたくなってきた。こういうふうに、意識しないで本と本がとながっていくのも読書の醍醐味だね。


段ボール箱10箱で約2000円。古本買い取ってもらった金額。本を捨てると残した本が愛おしくなる(笑)『人新世の「資本論」』が今年の新書売れ行き1位らしい。こんな小難しい本を買う人がたくさんいる(驚)。この国、たいしたものだなあ。波風氏はこの本の感想を語りあえる友人がいるので読み続けられる 大江健三郎氏と義弟と義弟の記念館の表札文字とのつながりはいつか今度。

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『とにもかくにもごはん』を読む

2021年12月23日 | 読書

子ども食堂をとりまく小説『とにもかくにもごはん』(小野寺史宜著:講談社)を一気に読み、最後に目頭熱くなる。しんしんと雪降る平日の午前、今日一回目の除雪終わり珈琲を飲みながら本を開く罪悪感+贅沢感がたまらない。老人はこうやって大人しく冬ごもりするに限ると自分で自分を納得させる。

 

登場人物ごとの章立てで立体的に物語をすすめるのは、寺地はるな著『水を縫う』と同じ。群像劇みたいな筋立てだが、小説技巧が無ければ訳が分からなくなる。本書は、主題に関わる伏線をさりげなく張りつつ人物どうしの意外な関係で回収する上手さでユートピア的温もり小説にギリギリで陥らない。
子ども食堂は親が怠けるという意見に対して、主催者の母親が「やる側の自己満足。いいじゃない。それでもやるわよ。結果として誰かが助かるなら」、「ただ一つ決めているのはね、何かしてあげていると思わないこと。人の力になりたいからやっている」ときっぱり。
こうも言う、「子どもにありがとうと言うのを望まない。言われたら嬉しいけれど期待しないです。いつの間にか言わせたいに変わっちゃいそうだから」

 

子ども食堂を題材にした何冊かの小説を読んだ。現代社会の人間性を切り取るのに格好なのだろう。どれも押し付けでなくやりたいからやるは共通。だが、子ども食堂の存在意義に無理なく迫まるのは今のところ本書。人間の善意描写に無理がない。「子ども食堂にゴールなんてない。強いて言えば、ゴールを先へ先へと遠ざけていくことがゴール。すなわち続けるそのものがゴール」という母親の言葉、波風氏が子ども食堂応援を思う時にいつも浮かぶ言葉。


当地の子ども食堂に応援費を届けたら、あいさつに伺いますという丁重なメールが主催者の方から。断っても断っても毎年土産持参でお礼をしてくれていた。今年、「(お礼は)勘弁してください」と返信した。ここらへんの気持ちがこの小説にはっきり書いてある 「画材の処分に目処が立たない。お世話になった複数の方からいただいたもの。ウーム。」に対して、うちからの物ではないですかと手紙来る。違いますから安心してください。

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