文字というか、字を書くのが好きだ。手書き文字の手紙をもらうのも嬉しい。その人らしさを感じる。自分の書いた字はどんなふうに感じてもらうのかなあと思う。AIは教えてくれるが感じてはくれない。画一的書体のワープロ文字氾濫の今、手書き文字の価値はますます上がっているのでないかな。
歴史的な名筆をたどる『文字に美はありや。』(伊集院静著:文藝春秋)を興味深く読みながら、波風氏はどんな文字が好きなのか思い浮かべていた。
2人いる。1人は緒方拳の筆文字。実物を旅館桜井(礼文)の食堂で見て「好き」を確信。もう独りは伊丹十三で、明朝体のレタリングにひかれた。後で「日本一の明朝体の描き手」と言われているのを知った。宮本信子氏宛に原稿用紙に書いた漢字とカナ文字の『愛スルノブコ』も良いなあ。
こういう文字を書く(描く)人間の素性はどんなだろうと思う。俳優としての演技、映画監督やエッセイストなど多才な表現者の奥底で光っている魂みたいなものを想像したりする。
画像は波風食堂製造の『燻り柿の種』用の袋用シールのロゴ。用紙の大きさに惑わされノビノビ感が薄い。小筆の先を切って墨汁で 2人の間に気まずいことがあり夫の出した手紙を妻が読んで破り捨てしばらくしてゴミ箱から拾い箱に。それから何十年も経ち夫が亡くなり、忘れていた箱を開け読み直し、糊と和紙で丁寧に補修したのが手紙『愛スルノブコ』。 手描きだったからこそ、と思う。