波風立男氏の生活と意見

老人暮らしのトキドキ絵日記

続々 『言葉と戦車を見すえて』を読む。

2017年11月28日 | 読書

(前号から続く)
藤の明晰な言葉の全容、膨大な中身を理解するのは無理だ。還暦後、詩は分からないところは飛ばし、わかるところを楽しめればそれで良いと落ち着いた。これで詩や古典が楽になった。加藤周一も同じだ。だが評論だから飛ばしどころを間違えると全然わからなくなり、迂回どころや読みどころの指南、荒海を渡る案内役が必要だ。加藤周一の案内書を何冊か読んでいるが、この本にある2人の巻末解説が一番分かりやすいと思った。

日のブログに書いた小森陽一と成田龍一の巻末解説だ。どうでもよいことだが、加藤周一に合わせたように全員『一』の名前だね。小森陽一氏は「9条の会」事務局長で、一昨年当地に来ていただき話しを聞いた。明るく圧倒的な説得力、嬉しかった。昔、北大の友人から、大学に凄い奴が2人いると聞いたのがこの人と井上ユリ氏(故井上ひさし夫人、旧姓米原ユリ)。同時代の人が、この国のあり方の真っ当な案内人であることが嬉しい。姉があの故米原万里氏。11年前に亡くなった彼女のブログ(「米原万里公式サイト」)が亡くなってからスタートしていたことに驚く。この人のエッセーもこのブログもとても面白い。老後は、漱石・周一・ひさしを読むと退職前から決めている波風立男氏。小森氏は漱石研究の第一人者。時代も空間も超えてそれらの人々が波風氏と繋がっているような不思議さ。

さて、小森陽一著『コモリくん、ニホン語に出会う』。『言葉と~』と併読中。ウーム、教員生活時代に、いや、20年前の国語教師時代に読みたかった。(終わり)

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続 『言葉と戦車を見すえて』を読む。

2017年11月27日 | 読書
(前号から続く)
の時代が、今に続く生き方の地図と磁石を手にした最初だと思う。そして、これまでの人生はいつだって犬かきの連続で、いつも『こと』の後で地図と磁石を使いそれでもやっぱり迷いは解決できず、何とか生き延びてきた。この評論集を読み、もう仕事の緊張感からやっと抜け出たのだから、ここらで少し息を整え、もう少し伸び伸びと『近くて遠きもの・極楽』へ向かいたいと思った。必死なあがきで得た微かな成功体験を老人生活にまで引きずるわけにはいかない。古い地図と磁石を手にした時の初心を忘れたくないのだ。
 
いた言葉がある。 「『遠くて近きもの』を判じるために、私は私の実感や、想像力や、生活に即した感情を、一切信用しない。ただ新聞雑誌の記事を通じて、私の会ったことの無い人々が、見たことも無い場所で、何をしているかと言うことについて、いくらかの情報を得、その情報の検討から私に最も確からしいと思われる結論を描き出す。その結論の多くはこういうことがおこるだろう、という強いものでは無く、こういうことがおこり得る、という程度の弱いものである」(「遠くて近きもの・地獄」)。この文章の意味がつかめず、この論の最初から読み直したり、この文章の前後含めて何度か読み、今までの加藤の印象が少し変わった。政治と社会、知性と思想、現実理解の客観的・科学的な拠りどころだ。文化系で無く理科系(医学)の徒だったとしても、こういう証言はあまりに正直で少し特別な感じがした。一貫した信条の知識で無く、一貫した観察と分析の結果としての知識に。(次回に続く)


 
画像は、この文庫本の巻末解説者、成田龍一の著書『加藤周一を記憶する』(講談社現代新書)。文庫の解説がわかりやすいので発注した一冊。標題がマル、現代知識人についての解説をこんなふうに時々読むのは加藤周一だけだな。難しさついでに、カズオ・イシグロ著『わたしを離さないで』も買ってしまった昨日は朝6時~夜11時間まで送迎・発表会・友人宅訪問・来客・祝賀会と忙しく、今日が日曜日みたいな気分でいたら… 
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『言葉と戦車を見すえて』を読む。

2017年11月24日 | 読書

しい小説に続き、もっと難しい評論集を読んでいる。『言葉と戦車を見すえて』(ちくま学芸文庫:加藤周一著、小森陽一、成田龍一編)。厳密な言葉の海を犬かきで泳いでる感じ。必死にもがきながらも爽快なのは、圧倒的な知性、それも庶民の側の、をひしひし感じるからだ。

んな言葉で立ち止まる。「1968年の夏、小雨に濡れたプラハの街頭に相対していたのは、圧倒的で無力な戦車と、無力で圧倒的な言葉であった。」(「言葉と戦車」)。詩と評論の言葉が通じ合う驚き。7月に国連で採決された核禁止条約と70年入学の学生時代のことを思い出していた。
 チェコスロバキアへのソ連侵略(加藤は『侵攻』)を少し遅れて知った大学生活は、安保反対、ベトナム戦争反対、沖縄返還の言葉が溢れかえる政治の時代。帝国主義への怒りと恐怖、社会主義・共産主義への不信と幻滅、日本の従属的現状に愕然とした波風立男君、18歳だった。(次回に続く)


 
少し長くなりそうなので3回に分けて掲載予定公式裏ブログ「波風食堂、準備中です」。珍しく、昨日(「連続の親子丼」)と今日(「冬場のリズム」)の予定で更新。
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『日の名残り』読む。

2017年11月19日 | 読書

しそうな英国文学。まず読まない種類の本、「日の名残り」(早川書房:カズオ・イシグロ著)。外国ものはカタカナの人名地名に疲れ、翻訳が今ひとつ信用できず、昔から敬遠してきた。今回は、世界的評価を受け、長崎生まれ64歳の著者カズオ・イシグロ氏、ということで敬意と興味で読む。最初に書いておくと、60歳前後の方々に強くすすめたい一冊。

人公の、ご主人に忠実で品格ある仕事ぶりが、実は人間として極めて鈍感であり公私ともに失敗していたことを冷厳に吐露させる。そこに至るまでを、繊細で丁寧な表現で薄皮を剥いでいくように納得させる。なるほど、「大英帝国の栄光が失せた今日のイギリスを風刺」(丸谷才一解説「旅の終わり」から)する文学なのかもしれない。が、すべての登場人物に対して優しく、とりわけ本格的な老人生活に入る波風立男氏には、実人生の『日の名残り』の意味を深いところで導いてもらう気分で楽しんだ。とても読みやすかったのは優れた訳者だからだろう。
終わり方がいい。旅の最後に出逢った老人の一言、その後の主人公の一言。真に人間的な人生とは何かを木工作業の合間合間にうつらうつら考えた354頁。純粋に活字の言葉だけで過ごした時間、いわゆる『読書』を久しぶりに。

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中級老人の特典

2017年11月14日 | 日記・エッセイ・コラム

ンフルエンザのワクチン接種が1.500円(実勢価格3.400円)ぽっきり、近くのスーパー銭湯が500円(同750円)。2つとも65歳以上のサービス価格。電車や飛行機も65歳以降かなり安い。今後10年、スタスタ歩けて、シャンシャン暮らせるなら、かなり楽しい老人生活。もしもの時は認知症装い巧に切り抜けているうちに、本当にそうなったりして(笑)。

じ中級老人の友だちと昼間からスーパー銭湯に浸かり、電動按摩機後にランチいただき極楽極楽。もう一人の風呂友だちは大腸ポリープ(良性)切除につき「調子戻ったら退院祝い風呂ということに」と話しはつけた。当たり前だった夜の集まりは、今はもっぱら昼。夜は夜で9時には転た寝状態を楽しみ4時半爽やか起床の老人リズムが確立している。義理ある通夜と楽しい会食と出っぱなしのパチンコ以外はご遠慮だ。ここらが機嫌よく暮らす奥義かも。

平鍋の柄をつけ替える。30年目の現役選手の鍋。ちょちょいのちょいの工作。苦労した『折りたたみテーブル』は完成したと歓声を上げても「あっそう」と乾性なママヨさんが、「すごーい、ありがとう」なんて喜んでいる。外からは見えないが、差し込まれた柄の先端が黒く腐食し3つに割れていた。何かの拍子に大やけどでもするところで危ない危ない。
冒頭の画像は、最近の朝食から。最近目覚めた『珈琲を美味しく飲む』に特化したパン朝食。ピザパンとアンパン、ヨーグルト、シナモンステックで風味つけるミルク、そしてコーヒ。


  最高気温10度。今日が今年最後の外仕事日和かもしれないなあ。やっぱり鉄線を囲ってやるか  裏ブログも「ドラマ嫌いのドラマ視聴」で更新。「わたり・ずらし」で更新したいが気分次第だからなあ教え子のBARへ久しぶりに。そこを愛するお客さんと静かな時間と空間を共有ネットに「アルミ鍋は認知症の原因」の書き込み。色々な言説に中級老人は舞う。

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