3月31日、いつも通り月末日曜の14:00から読書交流会。年度末で皆さん忙しく初の波風氏とママヨさん2人だけの熱い(笑)集まりが行われた。
ママヨ
『荒野の胃袋』(井上荒野著:潮文庫)、2014年刊行の単行本、冷やし中華、牡蠣の炊き込みご飯、コンビーフサンド・・・身近な食卓のおいしいもの50品目にまつわる思い出の風景。火宅の井上光晴家で食卓が『家族』だった記憶。普段着で行ける間に合わせ的な店が無い悩ましい外食の話や、父は許さなかっただろうカニカマ使った「秘密のカニ丼」が可笑しかった。食に惹かれて図書館で偶然手に取る★4。
『木霊草霊』(伊藤比呂美著:岩波書店)、詩人の著者がこんなに植物が好きだと思わなかった。植物の科名を調べて水や光を知る育て方に驚いた。熊本からカリフォルニアに移り見たこと無い植物に季節毎に出会い、動物と違って名前を知るのも簡単で無く、草木をとことん育てたくさん殺して観察して彼らに仏性を感じ、死んだと思っていたら春に生えてきて簡単に死なないんだとあった。
私は蒲の穂、ヤチブキ、独活、蕗、蕨、山葡萄、こくわ、胡桃など植物に囲まれて育ったのでこの種の本に惹かれる。『キツネフリ』という種を飛び散らせる生存戦略で生き延びている野草が大好きだったが、大人になって礼文で名前を知って嬉しかった。自分は深入りしなかったがトコトン調べ詩人の巧みな言葉で表現して貰い嬉しい★5
『続 窓ぎわのトットちゃん』(黒柳徹子著:講談社BOOKクラブ)、42年ぶりの続編、笑いながら「えっ、もう終わりなの」と読み終えた。前作より「戦争は絶対にダメだ」という訴えが強く響く。著者が自分を成功者だと思っていない生き方を尊敬する★5。
波風立男
作品集『柚木沙弥郎ノ100年』(女子美柚木沙弥郎展実行委員会:青幻社)、このブログで紹介した『喜び鳥』の作家作品集。変哲無いものに触発された色と形の粋さ斬新さ、平面の親しみやすさと民芸の職人気質に見とれる。101歳で亡くなるまで持続した時代を超える表現性とエネルギーに圧倒される。普段使いから離れず、いつも身近にいてくれる優しさをこの本で確信した。
小学校の図工の時間、茶色の手提げ紙袋にデザインしたとき、思いつきで「かみぶくろです。」という文字を大きく裏表につなげて描いた。絵の好きな先生が褒めてくれた。その時の興奮を、この本の全作品から感じた。実際、文字だけの作品が何点もあった。「こういうので良いんだな」と思ったし、「こういう職業選択もあったかもなあ」と考えたりした。★5
絵本『希望の牧場』(森絵都作:吉田尚令絵)、テレビ(2024年3月10日のNHK「こころの時代~宗教・人生~」、『185頭と1人 生きる意味を探して 𠮷沢正巳』)を見てハッっとした「これは、あの絵本の現場じゃないか?」。原発事故で売ることの出来ない肉牛をあれから13年間も飼い続けていたのか。急いで本棚からこの絵本を抜き出し読んだ。
あしたもエサをやるからな。もりもり食って、クソたれろ。
えんりょはいらねえ。おめえら、牛なんだから。
オレは牛飼いだから、エサをやる。
きめたんだ。おまえらとこにいる。
意味があっても、なくてもな。
胸が詰まった。黒い肉牛はどれもツヤツヤの毛並みだった。全国からこの牛たちにカンパが寄せられていることを知った。牛が生きる意味、牛飼いが生きる意味、そして自分たち人間が生きる意味を思った。★5
『続 窓ぎわのトットちゃん』、その時々の細かな情景と感情を忘れずぴったりの言葉で綴る才能に驚く。疎開先の青森で、芸能人の演芸があり「♪銀座の柳」に家族で月に1度食事や買い物した懐かしさを思い出すが、「私、銀座知っている」なんて言ってしまったら親切にしてくれる友だちが悲しくなってしまうというように。作者の凄さは、出自でも仕事でも人生でも運の良し悪しを承知しながら、価値あるものは平和で優しい人間性という哲学を様々な体験から言葉として記憶し、ぶれずに暮らしの心棒にしていることだろう。★5
漁師のNIさんが、『苦海浄土』でわからなかったことが若松英輔著『100分de名著 悲しみの中の真実「石牟礼道子 苦海浄土」』を読んで納得したと教えてくれた。ママヨさんも同じようなことを言っていた。俺もそろそろ読み始めなければだめだなあ、と思った 鹿よけ網の隙間から入られてチューリップとムスカリを全部食べられた(涙)。使い古した楢の原木に昨年秋に椎茸菌(売れ残りえ半額)を埋め込んだ。運が良ければ・・・・と期待していなかったがニョキニョキ出ている(笑)。1勝1負、網は増設終了。