波風立男氏の生活と意見

老人暮らしのトキドキ絵日記

「粋なクロベエ」外伝

2011年05月31日 | 新聞掲載

 40日間隔で書いている北海道新聞「朝の食卓」。1月「あいさつ」、2月「バナナの教え」、4月「白い道」、5月「いきなクロベエ」、主題は教育にまつわることだが、キーワドならぬキーカラを意識している。最初のは空の青と血の赤だ。以下、黄、白、少し苦しいが黒。6月は「青い花」を考えている。日々の「教育」を、少し違う次元から眺めてみたい。「偉い人」からではなく、「エライこと」の遭遇をさりげなく書いてみたい。


  ところで、「粋なクロベエ」では、「♪粋なクロベエ、みこしのまーつに…」と書いたら著作権の扱いが発生し費用がかかるので書き直して欲しいと編集の方から言われた。驚いたことがもうひとつある。「あの歌のくろべえというのは犬のことだったんですね」という話を何人かから聞いたことだ。子どもの知恵で、「黒塀」を犬のクロベエに、お富さんをその飼い主にと思って歌っていた、と書いたが、それは間違いですとは書かなかった。まさか、大人でそう誤解される人がいるとは思わなかった。この誤解、私の年齢ぐらいの方に多い。私と同じく意味を考えないで歌っていたのだ。みんなが歌っていたもんなあ、調子の良い歌だもんなあ。ママヨさんが言っていたが、学校の先生は正しいことを書くという誤解があるのかもしれない。ここが怖い。


  まさかとは思うが、 「田舎の波」(こいのぼり)、「うさぎオイシい」(ふるさと)、「重いコンダラ」(巨人の星)をこの字句通りに間違って覚えている方は…いないよね?

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恍惚な夢

2011年05月30日 | 日記・エッセイ・コラム

 この夢にはどんな深層心理が隠されているのだろう?

   一人で外食していた。太くて黒光りする柱、床も幅広の板間の洒落た作りの食べ物屋さん。注文をとりに来たお姉さんも着物を着ている。藍染めの前掛けが似合ってる。まず、ご飯と味噌汁が来た。碗の趣味も良い。ところが次が来ない。待つこと1時間、やっと鍋が着た。お姉さんが慣れた手つきで野菜と肉を焼き始める。一言の詫びもない。おいおい、ちょっと待てよ、なんでこんなに…と声が出そうになって目が覚めた。夢だった。

  妙に生々しいので起き抜けにママヨさんに話をした。「いつも食べ物の夢だよね。だけで、おかずが来ないっていうところがポイントかも」と言った。そう、そう、そうなんだよ。来ないんだよ(笑)周りはごはんと鍋があって美味しそうになのに俺のとこだけないんだよ(笑)それでいて悲しいのとも少し違うんだよな。もう少しで幸せというか…(笑)
    日曜日のTV「恍惚の人」(「山田洋次監督が選ぶ名作100選ー家族編ー」から)で認知症がすすむ老人(森繁久弥59歳の熱演)を他人事とは思えなかった。息子の嫁さんの目を盗み、鍋の芋を手づかみで食べているところなんか…。

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【その12】 人としての軸足 

2011年05月26日 | 【保管】一寸凡師コラム
 この話、前にも書いたかもしれないが…、凡師は毎日、万歩計をつけて12_2 生活している。朝の小 さな目標「決められた歩数で出勤する」は未だ達成できていないが、徒歩通勤は続いている。手首のやせ細りやウエストのサイズダウンは収まり、「安定期」に入った。安定していないのは、「財布の中身」と「人としての軸足」だろうか。


   さて、凡師の好きなものに「フライトジャケット」がある。フライトジャケットとはいわゆるミリタリー物で、昔のパイロットが着ていた服。(映画「トップガン」でトムクルーズが着ていたジャンバーをイメージしたらわかりやすいか?)フライトジャケットには、「パッチ」と呼ばれるワッペンが施されている物もあり、自分の所属を表したり、乗っている飛行機を表したり様々。このパッチが実に興味深い。「財布の中身」が不安定な凡師は、眺めるだけで実際に購入することはほとんどないのだが、今回ビビッときて、すぐにクリックしてしまった「パッチ」がある。その「パッチ」とは、東日本大震災の援助活動で訪れた米軍に対し、「航空ファン」という雑誌の編集員が感謝の気持ちを込めてデザインし、無償で配布されたもの。その後このパッチは多くの部隊や自衛隊、国内の救援団体にも普及したらしい。パッチの真ん中に大きく「友」と書かれ、「Don't give up!」、「がんばろう日本」の文字が書かれている。パッチの利益は、日本赤十字社を通じて義援金として寄付されるということで、東北出身の凡師は3枚も買ってしまった。


   
この「パッチ」を胸に自分にできること、そして、今やらなければならないことをしたい。東北を見て、今自分の立っている場所を見て。「人としての軸足」がぶれないように…。
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ハガネの女

2011年05月21日 | 読書

 「ハガネの女」(深谷かほる作:集英社)現在9巻目。「教育現場Photo_2 のリアルを描く」と帯に。芳賀稲子(はが いねこ)通称・ハガネ。35歳。独身。剣道三段。小学校教師になり結婚決まり仕事を辞めるが破談。その後、公立小学校に臨時採用され、問題の子どもと親に体当たりの指導。生徒指導の基本がきちんと描かれているのがすごい。絵が上手い。若い先生たちへ推薦したい。変な教育書より実践的。


     苦悩する子どもと親の姿がリアルだ。我が子主義の典型が次々に。生まれてから一度も「ごめんなさい」を言ったことのない子も。まだ若いが一定の経験のある有能な女性教員ハガネの生活が凄まじい。自分の時間がほとんどない。女性漫画誌のリアルとはこういったものかと思った。深刻な話ばかりだがどこか明るい。必ず救われる話のまとめ方もあるが、作者の人間信頼の深さだと思う。先生たちのチームワークというか、人間関係が何か温厚で気持ちよい。登場場面は少ないがほんわかした味があり、ハガネの指導力を信頼し、一人一人の子どもをよく見ている校長先生が出てくる。この校長を主役にした「松山 六助(まつやま ろくすけ)の初恋(1967年)」という番外編もあるそうな。この人物、作者の思い入れがあるようだ。


    作者のブログがものすごくおもしろい。読ませるエッセーを書く人。さらに、実の父親のエッセーや脚本のページまであるHPに入れる。福島の人で3.11の影響が掲示板にも。この漫画も、教育界に詳しいから脚本家集団かなんかがついているのではないかと思ったがそうではないようだ。
    歯の浮くようなお世辞、相手によって変える態度、大物ぶった大仰な口ぶり、肩書と出たがりへの異様なこだわり、他人の実践の巧みな利用…この漫画には、そういう恥知らずな先生が一人も出てこない。次々に登場する「モンスター」ペアレンツも、チルドレンもよくもここまでという最悪さだが姑息とは少し違う。その分凄まじいのだが変に飾ってはいない。品性のある爽快感の源泉は意外にここらへんなのかと思った。 

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金曜日に熱が39度出た。病院で診てもらったら風邪だった。3月に罹ったインフルエンザがまたかと思っていたからヨカッタ、ヨカッタ。最近、夜の会議が続くと危ない。年のせいか耐久力が弱っているのだろう。先週も中間あたりで具合が悪くなり20時間寝て回復した。「ご飯いらない」と言ったらママヨさんが真剣に心配した夜、「小説家に出あったら」を最後まで、「パイレーツオブカリビアン」も最後まで見てしまった。微熱で高揚していたからか…治るわけ無いな。

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粋なクロベエ  №4

2011年05月19日 | 新聞掲載

   私の小学生時代だから、もう半世紀前になる。春日八郎の「お富さん」Photo が、学校の行き帰りに歌う定番曲だった。校舎が見えてきたら小声にした。学校で流行歌が禁止されていたし、児童会でもきまりになっていた。先生たちはそうでもないが、キョウイクイインカイというとても偉い人がだめだと言っているらしかった。子どもと文化をめぐる人生初の問題提起が、私には「お富さん」だったような気がする。
 粋なクロベエという犬と、あだ名がオトミサンという死んだはずの飼い主の歌のどこが悪いんだろう、「お楽しみ会」で先生も一緒に歌ったじゃないか。ありったけの知恵を総動員し、垣間見た大人社会の理不尽さを背伸びして話し合った。
 漫画禁止のうわさも広がった。今度はピーテー工ーも加わったらしい。漫画家志望の友達は、もしそうなったら学校やめて手塚治虫先生のいる東京で修業すると涙声で宣言した。将来は忍者志望で、母に黒装束一式をねだっていた私はとても同情した。
 この前、ケータイは諸悪の元凶、子どもの使用を何とか禁止できないかなあと家でふと口にした。すると、「ほーっ、■●▲校長先生でもそんなふうに考えるんですか?」と妻の一言。大人になって忘れていたオトミサンの響きがどこかから…。教育者の道ははるか遠い。【平成12年5月19日】


…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………余韻があり、そこにキョウイクらしきものが漂ってくれれば…のつもりで書く「朝の食卓」も4回目。「多く飾らず、身の丈で語られる文章。『クロベエ』について、他の筆者の方から面白かった!!と反響がありました」と編集者からメール。役目で激励してもらっているとしても、「評価」が意欲につながるものだ。

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