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波風立男氏の生活と意見

老人暮らしのトキドキ絵日記

氷の張るようなもの

2025年02月27日 | 日記・エッセイ・コラム

読書でものがわかるとはどういうことか、と問う娘(幸田文)に対して、父(幸田露伴)の答えが「氷の張るようなものだ」。1つの知識がつつと水の上に直線の手を伸ばす、その手からまた別の知識の直線が派生する、どんどん派生しある時に牽き合い伸びあって結合し、直線の環に囲まれた内側の水面に薄氷が行き渡り、それが「わかる」ということ。
凍る天塩川のTV映像(「NHKスペシャル 北海道凍る大河」)と水面が凍る大実験映像を見ていて、読書の「わかる」の一文を思い出した。なるほどこんな感じだ。読書と映像が結んで分かる、ということもあるなあ。

 

先週の読書交流会で、通院体験を交流した。驚いた、自分より若い人が躊躇無く診て貰っている。コロナの後遺症専門外来、認知症の心配で物忘れ外来、眼の不調で複数眼科、ぎりぎりまで我慢(ただ病院が怖いだけ)する自分と比べて感心した。決めた、来月の誕生日来たら痛くないうちに歯医者さんに通う。あっ、書いちゃったよ、こんな恐ろしいこと。

 

TVドラマが面白い。まず『御上先生』(TBS)、学習指導要領と教科書問題、金融問題が生徒の話し合いやプレゼンとして扱われる。昨年末の『宙わたる教室』(NHK)もそうだったが、本当の『生きる力』をつける教師像と生徒集団への期待感じる。逆に言うと、どうしょうもない学校、崩れるこの国が透けて見える怖さも。次に『東京サラダボウ』(NHK)、外国人労働者の生々しい差別や偏見の実態とそれに寄り添う人間性に目を開かせられる。権力と差別の構造に抗する魂、出来ることを粛々と為す倫理が嬉しい。そして『バニラな毎』(NHK)、甘いお菓子作りを軸に、世の中はこんなに病んでいる人がいるのかと思う渋くて深い連続短編ドラマ。「人は誰も辛い体験をしているが口にしないだけ」が持論の波風氏は「こういうドラマがもっとあってよいなあ」と思う。


画像は、祭りの夜店で買ったベンジャミン。成長点を切って40年ぐらいになる。この木が波風家に来たのは運命、水遣りを忘れられたり、ホコリがついたまま放っておかれたり、そうした宿命を黙って受け入れている。「簡単に、生まれ変わったら木になりたいとは言えない」とママヨさん談。※参考、ここら辺のことを書いて新聞掲載したエッセー 『親友

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雑巾ひとつ絞れないで

2025年02月22日 | 日記・エッセイ・コラム

掃除を教えて貰ったことがない。母は掃除好きだったが忙しく、もたもたする息子に教えるより、雑巾取り上げて自分でやる人だった。教室の掃除で先生から習った記憶も無い。「べちゃべちゃの雑巾で机を濡らすのを掃除だと思っている」と小学校で教えていたママヨさん、波風氏も最近まで「雑巾でも布巾でも絞りが足りない」とママヨさんから言われていた。

 

拭き掃除ひとつ出来ないというより、雑巾もまともに絞れない奴が偉そうなことを言うな、と思うようになった。自分に対して。古稀迎えてだから相当な馬鹿だ。今がちゃんと出来るかというと出来ない。絞りはできても、床を拭く膝つく姿勢がなってない。汚れ加減で雑巾を折ったり洗ったり、バケツの水を6割にし汚れを直ぐに見つけて入れ替えるなんてことも身についてない。本番遠くただただ永遠の稽古中。それでも終われば気持ち清々する。掃除は気分を変える。

 

暮らし方のすべてを父・幸田露伴に教わった幸田文の『幸田文 しつけ帖』、掃除の心と方法が詳しい。感心するが近づけない厳しさがある。先週、夜行列車で読んだ同著者の『老いの身じたく』で笑った。「この頃、ろくに掃除なんかしない。二日も三日もほっぽっておく。すると綿埃のような小さな玉が、ふわふわとものの隅にひそむ・・・・・なんと図々しい奴だと思うが憎めない・・・・なぜ無精(掃除をしないの意味)をするかと言えばらくだからだ」なんて言っている。家に帰り前著探して開いたら44歳、掃除しないのは楽だが63歳。文筆家として名を成す忙しさか、躾け親爺のいない独り身のせいか。(※次回に続くはず)


画像は30年近く前にいただいたパキラ。吹き抜けの高窓の光が好きなようだ。集まった観葉植物それぞれに物語があり老いた主人たちの同居人 幸田文の随筆読む心は、生きる厳しさ強さ繊細さと智恵を歯切れ良く味わえるから。自分は何も知らないことを知ることが謙虚さ、そう思ったのも幸田文を読んで。

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雪ほろって珈琲

2025年02月16日 | 日記・エッセイ・コラム


恩師
の没後1年記念追悼会に参加した。協会の清潔な空間で賛美歌を歌い牧師の話を聞く。主催者のご家族から、遠くから来たお礼の言葉いただき恐縮。案内いただいたことに感謝するばかり。恩師に時々送っていた絵はがきをこれからもいただけないかとお願いされる。恩師に美術を教えて貰い教職に憧れた。そのご遺族からのお願い、人生の縁の不思議。

 

ふるさとの繁華街に若者が大勢歩いていた。店屋にも食堂にも喫茶店にも。聞こえてくるのは日本語と違う言葉。そう思い耳に集中してみるとカップルや友人どうしの若者が。シャッターの目立つ街はこうやって保っているのだろうか。行きつけの喫茶店も声を潜めて洒落た服装の旅行者が知らない言葉を交わしている。小説『氷点』にも出てくるこの店、恩師が三浦綾子さん葬儀の司会をされた。

 

帰りの汽車でこんなことを考えた。「私は何も知らない」ことを知ることで謙虚に生きられるのかもしれない。ヒトを上下で値踏みするのは恥ずべき精神だが、他から持ち上げられると「何も知らない」を忘れてしまう。もう1つは、73歳を記念して(笑)、他人に忠告しない人生を送ろう。過剰な親切も善意の押し売りも。知らず知らずに自分を持ち上げてしまう。
周りは知らなくても、恥ずべき心を本人はわかっている。「自分を大事にする」とは、自分に納得出来る自分でいるということ。これ、協会に足運んだ影響だろうか。


画像は、『ちろる』の洗面所に飾ってあったイラスト。こんな感じの土曜午後だった 迷うほど本棚が並んだ本屋で幸田文『父・こんなこと』と『おとうと』を求め、持っていった同作者の『老いの身じたく』帰りの座席で読む。不味いモノ食べた後悔を、さっぱりして深みと快いリズムある随筆で口直し。

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新しい寿命

2025年02月10日 | 日記・エッセイ・コラム

(前回ブログ『もうすぐ寿命』の続編です)
仮寿まで生きてみて(まだ1ヶ月と16日あるが)わかったのは、「健康」と「自由」と「人間関係」と「お金」のありがたさ。
健康は、痛く辛い最後でなく世に言うポックリで逝くため。「今日は楽しかった、明日は何して遊び何を食べるかなあ」と床につき亡くなっていた、なんてのが最高だ。大病しても保険診療の範囲でやってもらい80歳以上なら手術もどうするか考えるな。波風氏に無理は似合わない。新しい寿命は、平均寿命の少し手前の『79歳』にしておこう。

自由、これ以上に自由だと神様から叱られる気がする。行動の自由は引き続くとして、精神の自由をもっと広げたい。老いるほど自分は何も知らないとわかる日々だが、これを時々忘れる。身をもってこなす家事の大事さを実はまだ知らない。80歳までには一通りの家事ができるヒトになって終わりたい。

人間関係、縁を結んでくれた方々を同輩老人として敬愛する人生が素敵だ。元々出不精だし体力的にも逢いたい人に年々逢えなくなっているが「人生最大の後悔に、逢いたい人に逢わなかったことがある」と聞く。まだ足腰動くうちに・・・だな。最も身近なママヨさん、前まで波風氏が先に逝くのが筋と思っていたが、そうと限らないのが人生みたいだ。なるようにしかならないが「もしもの時」は必ず来る。出たとこ勝負、覚悟は全然無い(涙)。波風夫妻は「痛く辛くない健康的結末」を願って久しい。

お金、これがないと健康も自由も人間関係も消耗戦にならざるを得ない。必要分あれば足りることで、願っても入ってこないので余分は望まない。前に宝くじで1等3億円当たった夢を見た。オドオドビクビクで嫌な汗が出た。それ以来、宝くじは買わない。間違って当たったら(絶対に当たらないとは言い切れない/笑)。老後は、今日の暮らしを明日も続けられるのが幸せというもの。脂汗は人生を縮める。


スクワット始めて4ヶ月、ふくらはぎが太くなり両手の親指と人差し指で輪を作って計るサルコペニア(筋力減少)危険指標を易々と突破。三途の川までスタスタ歩けるな 今日は手紙を書こう。画集を送ってくれた方と、チョコレート付きの手紙をくれた方に。 

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もうすぐ寿命

2025年02月09日 | 日記・エッセイ・コラム

最初が13年前で、ブログ開始してそんなに経っていない。ブログは、意見表明と、自分の安否報告と、生活リズム確保の疑似仕事で始めた老後の慰み。だから『老い』の話題満載だが想像より『72歳』話題が多い。それは、「72歳まで生きられたら満足だな」が強い本心だから。「立男さんは病気なんだとずうっと思っていましたよ」と数日前にママヨさんから言われた。そう言われても不思議でない健診結果だし手術も10年おきにしている。

『72歳』を話題にした記事一覧
『天野祐吉編「隠居大学」』(2011.09.11)
『エッセイ集「死ぬ気まんまん」』(2012.05.27)
『上野千鶴子著「おひとりさまの老後」』(2021.08.25)
『「加賀乙彦自伝」(加賀乙彦著:集英社)』(2013.03.22)
『70歳代の波風氏【プロローグ】』(2021.07.11)
『70代はこう生きるよ』(2021.09.05)
『あと2年で満期(上)』(2021.12.02)
『あと2年で満期(下)』(2021.12.03)
『この前の買い物』(2022.11.18)
『ロウゲのイタリ』(2023.01.11)
『時間を所有する』(2023.01.12)
『「今も君を想う」を読む』(2023.03.02)
『勘違いオジサン論(下)』(2023.5.10)
『「楽しい人」を考える』(2023.12.02)
『新しい時が始まる』(2024.01.01)
『今日72歳』(2024.03.26)
『平均寿命で思うこと』(2024.7.28)
『習慣という時間使用』(2024.10.07)

寿命72歳が妥当なのは、自分より健康的で馬力もある知人がその歳ぐらいに次々と亡くなり始めたのと、自分なりに満足して仕事から身を引くことができたからだ。後で知った「健康寿命は72歳ぐらいまでが平均」も、仮寿命の信憑性を後押ししてくれた。では、73歳以後の仮寿命設定はどうするか・・・・(次回に続く)


TBS日曜劇場ドラマ『御上先生』、現職の文科省官僚が担任教師になり、自分の問題解決と重ねながら生徒に理不尽な状況打破を考えさせる。こういう事件設定、権力の悩み持つスーパー教師、比較的話し合える教室と同僚性希薄な職員室・・・学園ドラマを成り立たせる難しさをドラマの種にする面白さ 映画『PERFECT   DAYS]』を解説する全てのYouTube動画、どれひとつとして「トイレ掃除が面白くなった」が無い。感覚的な幸福論振りまく評論家と、トイレ掃除を真剣にやってみるかなと思う庶民の違い。トイレ用の小型ブラシ新調した波風氏。

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