波風立男氏の生活と意見

老人暮らしのトキドキ絵日記

コメの学習帳 最終回【34頁目】

2020年04月02日 | 【保管】こめの学習帳

売っているものは作れる~稚内の暮らしを振り返る【下】~

祖父は作る人だった。動物が好きで、犬・鳩・チャボ等飼っていたが、その小屋は祖父の手作りだった。祖母はいつも木目込み人形を作っていた。作品は今でも実家の玄関を飾ることがある。父から定年間際に、近所に売ってないからネットで買ってくれと頼まれたのは木工に関する本だった。その後、実家に帰るたびに椅子やベンチなどの作品が増えた。母は編み物の資格を持っており、仲間と展示会をして販売もしていた。そういえば、姉は家庭料理を習いに、極短期間だが単身イタリアに渡っていた。今は高校で歴史を教えている。

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タイトルは私の言葉ではない。稚内で聞いた言葉だ。納得しつつ困惑するような、しかしとても魅力的なことだと思った。売っている物は誰かが作った物なのだから、自分でも作れると思った方が楽しいはずだ。出来合いのものを消費するのもいいのだが、自分で作ることも魅力あることだと感じた。自分も何か作ってみたいと考えた時に、冒頭の家族のことが思い出された。それまでに家族が何かを作っていることに意識的でなかった。

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4歳になる息子も、よく何かを作っている。通っている幼稚園の影響も多大だが、テレビや図鑑で見た恐竜を描いたり作ったりしているのを見ると、自分が見た物を再現するということが彼にとって心地よいなことなのかもしれないと思う。子どもが夢中でやっていると、何か人間の根源的な欲求に基づくものなのかもしれないと感じる。必要だから作らざるを得ないこともあるだろうが、作ることで心の安定や安心感も得ているのではないかと思う。作るって素敵だ。自分はこの先、何を作りたいと思うのだろう。長期にわたる短いこのコラムヒントを得られたような気がする。


【波風氏談】コメさんから「ママヨさんの言葉(「売っているものは作れる」)をお借りしました」、「ケイコさんからの学びもあって『身構えないけど向き合う』ような書く姿勢を得られ・・・・・・「文章を作る」ことを自分のブログでもやっていきたい」と本記事送信時にコメント。長い間のご協力、ありがとうございました。

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コメの学習帳33頁目【残りあと1回】

2020年03月26日 | 【保管】こめの学習帳

言葉に守られる~稚内の暮らしを振り返る【中】~

大学教育に興味がある。その延長に1960年代における学生運動への関心もある。最初は集団心理として興味を持ち、その後、学生が大学のあり方や学生の位置付けについて議論を繰り返したのだと知った。引越し際に訪れた札幌で『三島由紀夫vs東大全共闘~50年目の真実~』を観た。映画の評価には触れないが、最後に重要なこととして「熱、敬意、言葉」とあった。言葉についてはこの映画の冒頭から示されていた。自分にとって「言葉」がフォーカスされるのはタイムリーなことだった。

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稚内以前の暮らしの中で、言葉について考えたことはあまりなかった。それまで意識してこなかったわけではないが、正確に使う道具としての意味で言葉があったし、専門性を獲得するものとして言葉があった。特に研究として言葉を使う中で、そうした言葉の位置付けが確定していったと思う。ただし、過去に読んだ小説や小論においては、自分にとって「落ちる」言葉に何度か触れていたのだと思う。いつのまにかそれが損なわれていたのかもしれない。

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稚内で過ごした諸先輩方からいただいた言葉は自分に「落ちる」ものが多く、大変な時や困った時に思い出すことがたびたびあった。稚内で過ごした後半は「ほんのおつきあい」で自分が読まない類の本を知り、馴染みのない言葉にもたくさん触れた。そういう言葉に囲まれて、面白いと思ったり落ち着いたりしたことで、稚内での暮らしが支えられていたと思う。前回の最後に「自身」と表現したが、「安心」が正しいかもしれない。

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コメの学習帳32頁目【残り2回】

2020年03月16日 | 【保管】こめの学習帳

処分すべき大量の不安~稚内の暮らしを振り返る【上】

引越し作業が佳境である。職場もそれなりの広さをいただいているため、職場と自宅を行き来しつつ、物を延々と段ボールに詰める日々である。相方さんの物もあり、Facetimeで処分の可否を訪ねる夜がしばらく続いた。半分くらい終わっていると信じたいが、職場を見た同僚は苦笑いであった。全て片付くまで、泣きながら作業する日が続くかもしれない。

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それにしても物が多い。「『暮らす』論への研究ノート」の最後に、よくもまあミニマリストが気になっていると書いたものである。ミニマリストは自分の所有物を数えられるくらいしか持っていないというが、私の場合、少し目線を上げると数えきれないほど物がある。そのせいだろうか。物を丁寧に扱っておらず、前回の投稿では恩田陸『恐怖の報酬』を『恐怖の代償』と間違えるミスを犯した。整理していて本が出てきて赤面した。お詫びして訂正いたします。

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昔読んだダイエット本に、太るのは不安だから脂肪を蓄えて防壁を作っているのだと書いてあった。ストレス太りがその典型だろう。正否はともかく物も同じではないかと思っている。初めて学会で発表した時、発表時に取り出せるはずもないのに文献を大量に持ち込んだことが思い出される。過去の資料を捨てられないのは、常にやり残しの不安があるからだろう。私にとって、物の多さは不安の大きさということらしい。捨てていいと思えているのは、稚内での経験がわずかでも自分の自信につながっているからかもしれない。(つづく)

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コメの学習帳31頁目【残り3回】

2020年03月09日 | 【保管】こめの学習帳

タイトル難民

タイトルをつけるのが苦手である。論文を書くときも、寄稿するときも、何ならメールを打つときも、しばらく悩む。特に論文などはしばしば相方さんに相談して、色々と提案してもらってようやく決めることが多い。文章全体を掴めていないのだろうかとも思うが、そういうわけでもないと思う。タイトルで上手いこと言いたくて執着している、というのが正確だろう。
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たまに自分でも良いタイトルをつけられたと思う時があるが、後から小説などのタイトルから拝借したのだと気付くことがある。意図せず気に入ったリズムや並びがあるのだろう。少し前に投稿させていただいた「沈黙の代償」は、恩田陸『恐怖の代償』からだと後で気付いた。代償の意味は反対だ。他にも気付かず使っているかもしれない。苦手な身としては、各方面に頼るべきタイトルがあるのは助かる。

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小説のタイトルといえば、最近読んだ恩田陸の『終わりなき夜に生れつく』について調べていた時に、アガサ・クリスティーの同名の小説があると知った。恩田が同著から付けたのだろうが、こういう出会いがあるから面白い。タイトルが大事だとわかる。今回のタイトルは2秒で決めたが、いかがだろうか…。


【波風氏談】ひゃあ、コメさんブログ、残り3回なんだ。貴重なコメの味わい、最初から読んでみようっと。

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コメの学習帳30頁目【残り4回】

2020年03月02日 | 【保管】こめの学習帳

裏方気質

時々思い出すこと。相方さんと結婚したとき、いわゆる披露宴はせずに、友人を中心に招いたパーティーと親戚を集めた式を別々で行ったのだが、そのパーティーでのこと。私も相方さんも裏方が好きな性格で、高砂でじっとしているのに違和感があった。何かしていたい、ということで、司会を二人ですることにした。プランナーにはギリギリまで反対されたが、姉の友人もしていたらしいし、打合せもしなくていいし、お金もかからない、遠くから来てくれる友人にお願いしなくてもいい、ということで押し切った。

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台本のデータが残っているので見てみたが、自分でいうのも何だがケッサクであった。「新郎新婦の入場です!」と自分たちで言って自分たちで出ていく。「それでは入刀します!」と言って入刀する。司会というか実況であった。一番よく覚えているのは締めのシーン。相方さんがご家族への感動的な手紙を読み終え、新郎がご挨拶をし、会場はしんみりとしている。台本には「退場」としか書いていなかった。どうしよう。「どうするの?」という会場の空気。どうしようもない。司会なので「それでは、新郎新婦の退場です!」と言って出ていった。大爆笑であった。

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後になって、笑いの法則として「緊張と緩和」があると聞いた。締めないといけないシーンで緊張が生まれ、「退場です」と自分たちで言って退場したのが緩和になったのだろう。本来は「緊張の緩和理論」であり、意味もちょっと違うらしいが、笑いにおいて「緊張」「緩和」がキーワードになるのは納得できる。とにかく結果的に笑ってもらえて良かった。プランナーは「これもアリですね」と認めた。終わり方って大事だ。


【波風氏談】コメ氏からこの記事送ってもらった時、添付メモがついていた。勉強になるので勝手に転載させてもらう。「松本人志が言っていた『緊張と緩和』について一応調べておこうと思って検索したら、『緊張の緩和理論』が正しく、桂枝雀が提唱したものだと知りました。説明している動画の中で、上岡龍太郎が『奇抜な言葉を使って笑わせるな、ふつうの言葉でも組み合わせでおかしくなる』というようなことを言っていました・・・(以下略)」。残り4回か・・・

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