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素直に感情移入できないラブ・ストーリー「3っの心あのときもしも」2014年制作 劇場未公開

2017-09-22 16:02:45 | 映画

          
 配給会社の営業マンもこの内容では劇場に掛ける値打ちがないと判断したに違いない。男と女が惹かれ合う公式はない。5分前に会って死ぬほど好きになる確率はどのくらいだろう。

 まして劇中の男マルクは、47歳。女シルヴィは6年後に40歳の誕生日だったから34歳ということになる。20代の若造でないことはハッキリしている。分別のある年代。後半に繰り広げられるのは分別も理性も喪失した男と女。

 そのマルクを演じるのはプノワ・ポールヴールド。額が広く禿げていて頭頂部が少し薄い。顔つきも特段に目を引くルックスでもない。

 税務署勤めのマルクは、出張先の最終電車に乗り遅れる。駅前の店じまいを始めたカフェでミネラル・ウォーターを飲んでいた。若い女性シルヴィ、

 これを演じるのはシャルロット・ゲンズブール。よくお目にかかる女優で、2009年「アンチクライスト」でカンヌ国際映画祭の女優賞を受賞した女優。すごい美人ではないが個性的と言ったらいいかも。

 そのシルヴィは、この店でたばこを買って出ていく。それを目で追っていたマルクは、すぐに追いかけて話しかける。「この辺にホテルはありますか?」「終電に乗り遅れちゃって」

 普通の男なら店主に聞くだろう。何の意図があるのか。ただ一夜の女を求めているのか。判然としないが、ホテルのカウンターでサイン直前に「ちょっと待って」とホテルマンに、歩道で待つシルヴィに「もう少し話がしたい」。
 二人は一晩中歩き回り、とある公園から朝の燭光を眺める。二人にとっては意思疎通の濃密な時間だったのかもしれない。

 別れのプラットフォーム、マルクは電車のデッキから「パリのチュイルリー公園噴水脇の並木道で次の金曜日午後7時に会おう。いいかい?」シルヴィ「必ず行くわ」

 別れの場面を文章からロマンティックに想像できそうだが、私には「ええっ、また会うの?」という違和感が漂った。理由は簡単、マルク役の俳優に好感が持てないからだ。私には嫌いな男優が何人かいるんですよ。この俳優が一人追加となる。

 我慢して映画を観ていると、約束の時間にマルクは現れなかった。1時間も早く行って待っていたシルヴィ。このシルヴィもちょっと変わっていて、夫を振り切って出てきたにも拘わらずマルクが現れなかったために傷心の帰宅。夫にすがりついて「お願い助けて」なんのこっちゃ、ずいぶん身勝手な女。

 マルクが待ち合わせに遅れたのも、肉体は健康でもストレスのせいなのか心臓がパクパクと動悸が激しくなる自覚症状を抱えている。デートの日もその影響で時間に間に合わなかった。

 情熱を傾けた二人が会えないまま数年が過ぎた。その間、マルクは結婚して子供を授かる。妻ソフィ(キアラ・マストロヤンニ)は、実はシルヴィの妹。ソフィは母(カトリーヌ・ドヌーヴ)の経営するアンティーク店を手伝っている。

 時折、アメリカにいるシルヴィとチャットで近況を話し合うが、マルコの耳には聞き覚えのある声だった。ソフィが寝入った夜中に確かめてみるとまさにシルヴィだし、シルヴィも驚きの表情で見つめてくる。会話もなくマルクは逃げるようにその場を離れる。ここのところがどうしても理解できない。なんで逃げるんだ。時間に遅れた理由の説明に絶好の機会ではないか。

 そしてシルヴィの40歳の誕生祝いが行われる。食卓でも目を合わさないマルクのシルヴィ。ところがテラスに出るシルヴィを見て追っていくマルク。そして見つけた納屋にいるシルヴィ。無言の激しいセックス。

 なんでこうなるの? 手順を間違えていないかい? 身勝手な男と女がテーマ? いずれにしても理解できないところが多々あって、これでは劇場公開はムリ。共感を得られない。女優は揃えてあるが主役の男優が問題あり。素敵なラブロマンスに出来たのに……残念! 

 それにしてもカトリーヌ・ドヌーヴ、71歳にして他の女優を圧倒する美しさ。もっとカッコいい男優を配してカトリーヌ・ドヌーヴとの不倫も面白いかも。流れる音楽もミステリー向きで合わなかった。
  
監督
ブノワ・ジャコー1947年フランス、パリ生まれ。

キャスト
ブノワ・ポールヴールド1964年9月ベルギー生まれ。
シャルロット・ベンズブール1971年7月イギリス、ロンドン生まれ。
キアラ・マストロヤンニ1972年5月フランス、パリ生まれ。母カトリーヌ・ドヌーヴ、父マルチェロ・マストロヤンニ。
カトリーヌ・ドヌーヴ1943年10月フランス、パリ生まれ。


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