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長期計画がムリな年代は過去に固執する「ブロークン過去に囚われた男」2014年制作 劇場未公開

2017-09-02 16:21:14 | 映画

                   
 2014年当時アル・パチーノは74歳、そのまま役柄にはめ込んだ鍵屋のアンジェロ・マルグホーンは、遠い昔に別れたクララという女性を忘れることが出来ない。寸暇を見つけて手紙を書く。その手紙はいつも蜂が群れるポストに、受取人不明なのか受取拒否なのか判然としないが戻ってくる。

 書く文章は「親愛なるクララ、ああクララ。君に会いたい。君を思わない日は1日もない。君の手をとり希望に満ちた瞳で世界を救えそうだ」とか「君は今どこにいるのだろう。どこで何をしているのか知りたい。明日はまた訪れるが、その明日に希望が持てない。毎日がただつらいだけ。君との美しい想い出がよみがえる。でもそれが毎日私を苦しめる。君ほどの人はどこを探してもいない。覚えているかい? 寝る前に将来の夢をささやく君が好きだった。君は未来を占い、私の心を読む。そんな君に私は支配されている」愛惜の言葉の羅列。

 毎週金曜日は、地元の銀行へ行ってコーヒーとドーナッツにありつき窓口のドーン(ホリー・ハンター)と愛猫のファニーが元気だとかドーンの飼い犬の話とかチョットした軽口を交わす。

 そして転機が訪れる。マルグホーンとドーンがレストランで夕食を摂っている。ドーンが聞く「食事のあと映画にでも行かない?」マルグホーンは「猫のファニーがいるから」と曖昧な返事。さらに「じゃあ、一緒にお風呂に入ってもいいのよ」ここまで言われても反応が薄いマルグホーンは、クララのことを話す。

 「あんな女性には二度と会えない」ドーンの前でドーンが見たこともない女性の話しを聞かされても興ざめでしかない。当然のごとくドーンは怒り心頭、椅子を蹴って立ち去る。残されたマルグホーンはというと、ドーンが残した料理を食べ始める。

 これじゃ見込みがないなあと思っていると、郵便受けにクララに出した手紙が返っていた。小さなキッチンの奥にある部屋が映し出される。観客は初めて見る場所。そこには何百通というクララ宛てで返ってきた手紙がぎっしりと棚に詰め込まれている。写真や想い出の品々。

 金庫の中の手紙を改めて読む。「アンジェロ ごめんなさい あなたは長い間私を遠ざけた。一方的に説明もなく理由も分からない。残された私は困惑するばかり」そうマルグホーンは、どうしようもない自分勝手な男だった。

 何十年経ってやっと気づいたマルグホーンは、過去を清算する。すべてを趣味のセーリングのボートに積み上げ廃船置き場へ。ドーンの前に現れたマルグホーンは、詫びを入れてドーンを褒め称える。そんなことで許されるはずがない。
 「証明して」とドーン。「分かった。120%証明するよ。また金曜日に……」去りかけて「明日も来るよ」本来女性はこんなに甘くない。絶対に許せない人が多い筈。

 マルグホーンは、孫に詩を語って聞かせる。「風は誰にも見えない あなたにも私にも でも枯葉が頭を垂れるとき 風は通り過ぎる」孫はそんなのどうだっていいという風に「絵ではくるくると描かれているよ」秋の公園での点描。孫に接するときは、誰でもやさしく心の広い人になる。マルグホーンも心優しい男になれるんだ。

 今回は、ネタバレ一杯だった。最後に褒め言葉。二人が食事している場面。クララの話を聞きながら徐々に表情を変化させていくホリー・ハンター。何気ないゼスチャーを混ぜて素知らぬ顔で延々と喋るアル・パチーノ。あらゆるところで年季を感じさせる二人だった。
  
監督
デヴィッド・ゴードン・グリーン1975年4月アーカンソー州リトルロック生まれ。

キャスト
アル・パチーノ1940年4月ニューヨーク市サウスブロンクス生まれ。1992年「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」でアカデミー主演男優賞受賞。その他に主演・助演が7本ノミネートされている。
ホリー・ハンター1958年3月ジョージア州生まれ。1993年「ピアノ・レッスン」でアカデミー主演女優賞を受賞。

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