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1970年代の同性愛者の悲哀「チョコレートドーナッツAny Day Now’12」劇場公開2014年4月

2015-02-19 17:01:21 | 政治

               
 今でこそ同性愛者を奇異な目で見なくなったようだが、今から40年以上前となると事情が異なる。

 1970年代カリフォルニア州ウェストハリウッドのゲイバーで、口パクの女装の歌手ルディ(アラン・カミング)が歌っているとき、カウンターに座る男ポール(ギャレット・ディラハンド)と目が合い、まるで電流が触れたように心に火花が散った。

 ルディのアパートの隣の部屋には、麻薬常習者の女と子供が住んでいて、毎日のように大音量の音楽を流している。苦々しく思っているルディは、ドアが開いたままの部屋に入りスイッチを切った。振り返ったとき、子供が一人ベッドに座っていた。母親はどこへ行ったか分からない。子供の名前は、マルコ(アイザック・レイヴァ)。しかもダウン症の子供だった。

 ポールは地方検事局の検事で、ルディは助けを求めた。こうして男のカップルは、麻薬所持で逮捕起訴され入所中の母親に監護権を一時的にもらいうける。マルコに愛情を注ぎながら、自分たちで育てる手続きを始めるが、意外に壁が厚かった。法律というよりも、当時の人々の心のありようがすべてを支配していた。

 ポールも同性愛者だと発覚、検事局はクビ。窮地に陥った二人は、白人の弁護士は誰も引き受けなかったが、黒人の弁護士に頼む。そして、個人に対し平等保護を否定してはならないという合衆国憲法修正第14条が強い味方になるはずだった。

 ところが地方検事局は、母親に監護権の回復申請を条件に出所させる。明らかにポールを狙った検事局の嫌がらせだった。しかし、腕利きの弁護士も母親が出てきてはお手上げだ「あきらめろ!」だった。

 自宅に戻った母親は相変わらず薬と男に溺れ目障りなマルコを自分の都合で外へ追い出す。 当てどもなくさまようマルコ。

 ポールは判事や検事に手紙を送った。「新聞記事を同封します。知的障害のあるマルコという少年が、3日間、家を捜し歩いた末、橋の下で独り死んだそうです。マルコは心の優しい賢く楽しい子供でした。チョコレートドーナッツに目がなくディスコダンスの達人でした。寝る前の物語が好きでせがむのはハッピーエンド。ハッピーエンドが大好きでした」そう、マルコは愛に飢えていたんだ。

 二人のゲイは、医師の「大学へ行けないし就職もできない。今の状態が続くよ」という言葉にもひるまず一途にマルコを愛し続けた。

 地声で歌うルディ。
「人は誰でも守られるべきだと言い 
 その一方で打ちのめされるという 
 はっきり見えるもう一人の私が 
 この壁を越えた遥か向こうに 
 私の光がやって来るのが見える 
 西から東へ輝きながら 
 だから もうすぐ今日にでも(Any Day Now) 
 私は解き放たれる」

 他人の辛苦は忘れがちになる。ポールとルディが住むアパートの部屋をあてがわれて、マルコが「ここは僕の家?」と聞く。ルディが「そうだよ」と言ったとたんマルコが泣き出す。嬉し涙だ。

 こちらも鼻の奥がつんとして涙もろくなる。時にはこういう映画を観て、今一度噛み締めるのもいいだろう。どんなに堅牢な涙腺でも、この映画にかかれば瞬時に崩れてしまう。
          
          
          
          
          
          

 印象的なテーマ曲をアラン・カミングが歌う「I shall be released」を、誰かの気の利いた字幕でどうぞ!
ついでながら、日記の歌詞は映画の字幕からの引用で、気の利いた字幕のほうが意味が分かりやすい。
 追って、この曲はボブ・ディランの作詞・作曲になるようだ。       
          
監督
トラビス・ファイン1968年6月ジョージア州アトランタ生まれ。

キャスト
アラン・カミング1965年1月イギリス、スコットランド生まれ。
ギャレット・ディラハンド1964年11月カリフォルニア州生まれ。
アイザック・レイヴァ出自不明
コメント
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