チャーリー(ジャック・ニコルソン)は中年男で、ニューヨーク最大のマフィア、プリッツイ一家の殺し屋だった。そしてファミリーの幹部の娘メイローズ(アンジェリカ・ヒューストン)とは結婚したこともあったが、今は家名を汚したとして勘当の身のメイローズとは慰め慰められる間柄で、いうなれば浅からぬ因縁がある。
マフィアのドン・コラード・プリッツイ(ウィリアム・ヒッキー)の孫娘の結婚式当日、チャーリーはラベンダー色の服の女アイリーン(キャスリーン・ターナー)に一目惚れ。このアイリーンも殺し屋であることが判明する。殺し屋という同業の男と女。しかも結婚までした殺し屋同士。
プリッツイが25%の株を持つ銀行の頭取の横領が密告される。策を講じるマフィアは、頭取誘拐をチャーリーに命じる。アイリーンは適切なプランを提供する。その実行当日アクシデントが起こる。不意にエレベータが開き中年の女性が現れる。顔を見られたといってアイリーンは即座に射殺する。
ところがこの女性は、警察幹部の妻だった。警察は仲間の不幸を見逃すはずがない。執拗な捜査が行われる。頭取の誘拐がプリッツイの疑惑とほのめかされる。
ここから話はややこしくなるが、映画ではすっきりと語られる。結論は、チャーリーとアイリーンの騙しあいの末殺し合いにまで発展する。この終盤がなかなかいい。
アイリーンは化粧室で拳銃に消音器をつける。チャーリーは、ベッドでナイフを隠し持つ。化粧室から出てきたアイリーンは、即座に銃を発射する。寸刻も置かずアイリーンの喉にチャーリーのナイフが突き刺さる。
自宅でチャーリーの電話を受けるメイローズの口元がかすかに微笑む。そう彼女が名誉のために画策した結末だった。 と、私は理解している。
ドン・コラード・プリッツイを演じたウィリアム・ヒッキーの老いぼれてよぼよぼの男が鋭い目とあまり舌が廻らない独特の口調で存在感があった。
メイローズ役のジョン・ヒューストンの娘アンジェリカ・ヒューストンも顔立ちがいわゆるアメリカ人とは少し違う感じがある。アジアのDNAが混じったようなフランス的な風貌は、あでやかな服装をするとかなり目立つ。
そしてキャスリーン・ターナーの演じるアイリーンの乗る車は、真っ赤なクラシックな感じのオープンカーで、説明によると日本が中東向けに作った車だという。そういう車があったのかなあ、とは思う。
このギャングとかやくざという人種は、日ごろ穏やかで笑ってはいてもいざ真剣な状況になると目の鋭さが増す。刑事も同様だが。ジャック・ニコルソンもその辺は心得たもので瞬時に険しい表情に変わる。
とにかく皆さん役者じゃのう。とにかく面白い映画だった。
監督
ジョン・ヒューストン1906年8月ミズーリ州ネバダ生まれ。1987年8月没
キャスト
ジャック・ニコルソン1937年4月ニュージャージー州ネプチューン生まれ。
キャスリーン・ターナー1954年6月ミズーリ州スプリングフィールド生まれ。
アンジェリカ・ヒューストン1951年7月カリフォルニア州サンタモニカ生まれ。
ウィリアム・ヒッキー1927年9月ニューヨーク市ブルックリン生まれ。1997年6月没。