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犯罪者を抱える家族や恋人に、冷徹な第三者の目でみつめる「愛について、ある土曜日の面会室’09」

2014-01-29 16:04:04 | 映画

                 
 若き女性監督レア・フェネールの処女作で評価の高い作品。それぞれの人生で犯罪者を抱える家族や恋人たちの愛の形に冷徹ともいえる視線が注がれる。

 冒頭、D5棟の面会者に子供を連れた女が叫ぶ。「お願いです。助けてください」朝、夫が連れ去られどこの刑務所にいるのかわからないという。面会者たちは無言で入り口に向かう。どんよりとした曇り空に寒風が木の枝を波打たせている風景が残る。多分、これがこの映画のテーマなのだろう。身内や知り合いの誰かが犯罪者となったとき、戸惑い混乱してどうしていいか分からなくなる。そして、誰かに助けを求めたくなる。

 三者三様の物語がこの面会室に持ち込まれ、それは決して交錯しない。ゾラ(ファリダ・ラウアジ)は殺された息子を空港で受け取った。犯人はゲイ関係だった不動産業を営むセリーヌ(テルフィーヌ・シュイヨー)の弟だった。ゾラはセリーヌに近づき、その弟との面会を実現させたいと思っていた。

 ステファン(レダ・カテブ)と同棲の恋人エルザ(ディナーラ・ドルカーロフ)とは金銭のことでしょっちゅう口喧嘩が絶えない。そんなある日、エルザが地下鉄の出口でいきなり四人の男に襲われた。その窮地を救ったのが、ピエール(マルク・バルベ)だった。ところが意外な提案をステファンに提供した。ピエールの友人が服役中でその男とステファンが瓜二つ。刑務所の面会室で入れ替わってくれれば1年後には弁護士が出してくれる。そのために大金を用意してある。

 サッカーの練習の帰りのバスの中で16歳のロール(ポーリン・エチェンヌ)は、アレクサンドル(ヴァンサン・ロティエ)と出会った。
 ところが警官に暴行を働いたとして逮捕、刑務所に収監される。16歳のロールが彼に面会するには肉親の同道が求められていて単独では無理。ひどい雷雨の雨宿りに献血車のテントのひさしの下に立っていると医師のアントワン(ジュリアン・リュカ)の「中に入れば?」の言葉とともにやがてアレクサンドルとの面会に同道を求めていた。

 ゾラは、息子を殺した相手と話し合ったが時間切れでもっと聞きたいことが中途半端に終わる。

 ステファンは首尾よく入れ替わった。

 ロールは、妊娠していることやアレクサンドルの俺の女だという不遜な態度や嫉妬心に嫌気が差し「もう会いたくない」と面会はアントワンに任せる。アレクサンドルは「一時的だ。いずれ面会に来る」と相変わらずの態度。

 面会時間が終わり、ぞろぞろと出てくる面会者。みんな大きな手提げの袋をぶら下げて西日が顔にあたっている。

 ゾラは、無表情にバス停に急ぐ。

 ステファンの入れ替わりに出てきた男は、レンジローバーの横に立つピエールを見て満面の笑顔。

 ロールは、感謝のキスをアントワンに。

 この人たちのこれからの人生はどのようなものになるのか。それは誰にも分からない。もし、フランスの刑務所が映画の通りだったら身代わりも可能だろう。囚人専用のジャンプスーツもない。いつもの街着を着ている。手錠も足かせもない。ちょっと信じられない。

 それはさておき身代わりに刑務所に入ったステファンは一年で出てこられるのか。それも分からない。少なくともエルザの愛を失うことはないだろう。

 このステファンを演じたレダ・カテブは、囚人と身代わりになる男の二役を演じるが、それぞれの立場を表情にうまく表していたように思う。アメリカ映画にも端役として出ている作品もある。いずれにしても考えさせられるラストシーンで何の変哲もないのが印象に残る。フランス映画、劇場公開2012年12月
            
            
            
監督
レア・フェネール1981年10月フランス、トゥールーズ生まれ。製作当時若干28歳。

キャスト
ファリダ・ラウアジ出自不明ながら、1986年からの芸暦。
レダ・カテブ 
デルフィーヌ・シュイヨー 
ディナーラ・ドルカーロフ1976年1月ロシア、サンクトペテルブルグ生まれ。
マルク・バルベ1961年5月フランス、ローレイン生まれ。
ポーリン・エチェンヌ1989年6月ベルギー・ブリュッセル生まれ。
ヴァンサン・ロティエ1986年7月フランス生まれ。
ジュリアン・リュカ
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