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映画 「ワンス・アンド・フォーエバー(‘02)」リアルな戦闘場面で描く。

2006-05-25 14:14:09 | 映画
 1960年から1975年にかけて戦闘を繰り広げたベトナム戦争の初期、1965年11月14日朝鮮戦争で武勲のあったハル・ムーア中佐(メル・ギブソン)が率いる第7航空騎兵連隊第一大隊は、南ベトナム中央高地イア・ドランの渓谷に降り立った。
               
 この大隊に二つの問題点があった。一つは現代の馬ともいうべきHU-1Dヘリコプターは実戦で初めて使用されること。もう一つは、大統領は派兵を決めたものの非常事態宣言はまだ出していなかった。そのため兵役の延長が必要な熟練兵は残され、訓練経験の浅い兵士ばかり戦場へ送り込まれた。

 そしてもっと問題なのが中央高地を北ベトナム正規軍の精鋭が包囲していたことだった。餌に喰らいつく魚のようにやすやすと目の前に米軍が現れる。これの勝敗は明らかだった。
 しかし、指揮官次第ではそうとは言えない。ハル・ムーア中佐は、ベトナム軍の動きを読んで先手を打っていく。戦いは米軍の勝利で終わる。

 この映画の売り物の戦闘場面は、リアルで凄惨そのもの、銃弾が飛び交う音や肉に食い込む弾丸の音、ナパーム弾の炸裂、爆風で飛び散る兵士など間断なく繰り広げられる戦闘に観るほうもかなり疲れる。実際にあった戦闘で、ハル・ムーアとUPI戦地特派員のジョー・ギャロウェイ共著が原作。
                
 それにしてもベトナム戦争ほど帰還兵が見向きもされなかったのも例を見ないのではないだろうか。この映画のナレーションは語る。“家族が待つ者、戦友が唯一の家族である者。いずれも帰還を祝う旗も歓迎式もなかった。国の命令でみな戦場へ、戦ったのは国のためでなく戦友のためだ”

 この映画を監督したランドール・ウォレスは“この映画で表現したのは、ベトナム戦争を直接体験し、そして乗り越えた多くの人の気持ちだ。国の政策など兵士たちには関係ない。頭にあるのは自らの命と国に残す家族のことだった”という。それはナレーションに現れている。

 敵対する北ベトナム軍や国に残る妻たちも描いていて、従来からよくある一方的な米軍オンリーの描写に終わっていないところは好感が持てる。が、唯一つ納得できない点がある。それは死体の処理の仕方だ。戦闘のあと戦死者を集める作業があるが、米軍側の死体は地面に並べられ死体袋で覆われているが、北ベトナム軍の死者はまるでごみのように積み上げられている。米軍側から見れば敵兵の死体まで集めてやったと言いたいのだろうが、せめて死体を並べるという配慮があってもよかったのでは?と思うのは私だけだろうか。たかが映画であっても。

 うがった見方をすれば、アメリカ人の根底には友好の仮面の裏に潜む独善が覗いているということか。アメリカ大好き人間でもそんなことを思ったりする。細かいことを気にしなければ、男の子としてエンターテイメントを楽しめばいい。監督はランドール・ウォレス、テネシー州生れ。もともと脚本家で、‘95年「ブレーブハート」でアカデミー脚本賞にノミネートされた。’01年の「パールハーバー」も脚本を担当している。キャストメル・ギブソン1956年1月ニューヨーク州生れ。’95年「ブレーブハート」でアカデミー監督賞受賞があるが俳優としての受賞がない。マデリーン・ストー(メル・ギブソンの妻役)1958年8月ロスアンジェルス生れ。サム・エリオット(ムーア中佐の副官)1944年8月カリフォルニア州サクラメント生れ。鬼副官として存在感を示していた。バリー・ペッパー1970年4月カナダ ブリティッシュコロンビア生れ。UPI戦地特派員ジョー・ギャロウェイを演じて好演。
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