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読書 巨大製薬会社と戦う投資銀行家と美貌の科学者「VS Sweet Talking Money」

2006-05-13 14:19:32 | 読書
 大金持ちになりたいという野心に燃える投資銀行家ブライン・ヒューズと将来ノーベル賞は確実といわれている弱冠29歳の科学者キャメロン・ワイルドが顔を合わせたのはキャメロンの研究室で、ブラインはインフルエンザの処方を依頼することだった。

 ブラインにとってハンガーに白衣をぶら下げたような印象しかないキャメロンだし、キャメロンから見たブラインは、単に大男というだけならいいが何の印象もない。それが会社やクリニックを立ち上げ、巨大製薬会社と特許を巡る争いに血眼になる。そして二人は愛し合うというハッピーエンドの物語。

 適度のユーモアで飽きさせず、エンターテイメント性も加味されていて楽しませてもらった。ただ、製薬会社側の描写が殆どなくやや迫力に欠ける。
 著者は日本の住友にも勤務の経験があるそうで、この本にも日本の代表的な食べ物「すし」の描写がある。皮肉ととりかねないユーモアで次のようなくだりがある。
 “米と死んだ魚を頬張りながら”“黒い皿のすしに目をやった。まるで漆黒のパレットに絵の具がのせられているようだ”死んだ魚というなら、ステーキは死んだ牛になるなーと思いながら読んでいた。

 私のもう一つの読書の楽しみ方は、例えばこの本で、“「来てくれて本当にうれしいわ」とケイティが言った。「僕もだ」ブラインはうなずいた。そして両手で彼女の頬を包み、おそるおそる唇を重ねた。彼女が受け入れてくれるかどうか、自信がなかった。彼女は受け入れた。彼女もまた寂しい日々を過ごしており、初めて会ったときからブラインに惹かれていた。彼女はキスを返した。最初は優しく、それから情熱的に。”
 さて、このキスの場面を自分なりの文体で品性を落とさず刺激的に書くことなのです。何十通りの文体を編み出せるのでしょうが「ケイティの舌先が歯の間に遠慮がちに侵入してきた。ブレインは舌先で彼女のふっくらとして滑らかな上唇をなぞった。熱い吐息を伴ってケイティの舌が猛然と突進してきた。受け止めたブレインの舌と絡み合い、もう世界は光も音も全くないかのようだ」というのはいかがでしょうか?

 いろいろと考えるのは楽しいものですね。さて、この本を書いた人はハリー・ビンガムで、二冊目になる。1967年イングランドに生れ、オックスフォード大学を卒業後、十年にわたりロンドンとアメリカの投資銀行に勤務。そして日本の住友に転職、妻の難病のため職を離れる。現在はオックスフォードで妻とたくさんの犬とともに生活、執筆活動に専念している。
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